LD(学習障害)の読み書き障害対処法 | 書いて覚えるは逆効果? ICT活用と勉強法

何度練習させても同じ漢字を毎回間違える、音読の宿題になると急に別人のようにたどたどしくなる。そんなお子さまの様子に頭を抱えたことはありませんか。

会話はスムーズで理解力も高いのに、読み書きだけがどうしても追いつかない。この矛盾したように見える状態は、お子さまの努力不足でも保護者の関わり方のせいでもありません。

この記事では、読み書きに困難を抱えるLD(学習障害)のお子さまの脳の特性を解説するとともに、従来の反復練習に頼らない家庭での勉強法と、ICTツールを活用した具体的なアプローチをご紹介します。

【執筆・監修】 医学部受験の専門家 妻鹿潤
・16年以上1500名以上の指導実績あり
・個別指導塾の経営・運営でお子様の性質・学力を深く観る指導スタイル
・yahooやSmartNews、NewsPicksなどメディア向け記事も多数執筆・掲載中

▼目次

LD(学習障害)における読み書き障害とは?家庭で気づくサイン

LD(学習障害)における読み書き障害とは?家庭で気づくサイン
宿題の漢字ドリルを1ページ終わらせるのに2時間かかる、低学年で習うような簡単な字が覚えられない……

学習障害の中でも、そういった読み書きに特化した困難を抱えるケースは決して珍しくありません。

まずは、日常生活の中で保護者さまが気づきやすいサインを3つの角度からご紹介しますので、お子さまの様子と照らし合わせながら読んでいただければ幸いです。

読む苦手(ディスレクシア):行を飛ばす・”ろ”と”る”を間違う・拾い読みになる

音読の時間になると、すらすら読めていた子が急にことばを詰まらせる。本の行を指でなぞらないと読めない。「る」と「ろ」、「わ」と「ね」のように形が似ている文字を読み間違え、毎回同じ箇所で止まる。こうした様子が続く場合、ディスレクシア(読字障害)の特性が関係している可能性があります。

ディスレクシアの読み方にはいくつかのパターンがあります。代表的なものは以下の例です。

  •  文字を一文字ずつ拾いながら読む
  •  文の途中で意味のない区切りを入れてしまう
  •  読んでいるうちに行がずれて前の行に戻ってしまう

他にも、読むこと自体にエネルギーをほぼ使い果たしてしまって内容が頭に残らないというのも特徴的な悩みです。

周囲からはもっと練習すれば読めるようになると見られがちですが、このたどたどしさは練習量の問題ではなく、文字と音を結びつける脳の処理経路に特性があることが原因とされています。

なお、読み間違えが多いことは知的な能力の低さとは別の問題です。会話の理解力や推論する力、語彙の豊かさはまったく別の経路で発揮されるため、読みが苦手でも知的な水準は同年代と変わらないのが読字障害の特徴となっています。

書く苦手(ディスグラフィア):鏡文字になる・枠からはみ出す・黒板を写せない

鉛筆を持つこと自体は問題なくても、書いた文字が枠に収まらない、「b」と「d」を反転して書く、「雷」と「電」のように細部が違う漢字をいつも混同してしまう。こうした状態は、書字障害(ディスグラフィア)の特性として見られることがあります。

特に小学校に上がってから顕著になるのが、黒板の板書です。先生が書いた文字を見てノートに写すという作業は、視線移動・文字の記憶保持・手を動かすという3つの処理を同時に行う必要があります。書字能力に課題があるお子さまにとってこの作業は想像以上に高い負荷がかかるため、他の子が写し終わった頃にまだ1行目という状態になりやすいです。

鏡文字になる・字が乱れるという現象も、視覚認知の処理に特性があることと関連していると考えられています。大人の目には、もっと丁寧に書けば良いのに、と映ることがありますが、本人は精一杯集中して書いた結果であることが多いのです。

また、書字の苦手さがあるお子さまは、読みにも困難が重なっているケースが多いとされています。漢字テストで答えが頭の中にあるのに書けない、作文で言いたいことがあるのに文字に起こせないというもどかしさは、本人が最もつらく感じている部分です。

知的遅れはないのに、国語(漢字)や英語だけ極端に点数が低い

算数の文章題は解けるのに漢字テストだけ毎回10点台。授業の内容は理解しているのに英単語のスペルがまったく定着しない。こうした教科・分野による極端な得点差が生じている場合、LDの特性が影響している可能性があります。

LDの特徴の一つは、全体的な知的発達の遅れはないという点です。そのため、成績表を見ると算数や理科は平均以上なのに、国語の漢字や英語のライティングだけ極端に低いというアンバランスな状態が生まれます。この状態を周囲が苦手教科はやる気がない・練習不足だと見てしまうことで、本来支援が必要なお子さまへの対応が遅れてしまいます。

英語のアルファベットも、日本語と同じく音と文字の対応関係を処理する音韻処理の力が求められます。そのため、日本語の読み書きに困難があるお子さまは、アルファベットの習得でも同様の難しさを感じやすいです。単語が書けなくても音で聞けば意味はわかる、スペルは出てこなくても英語の文章を聞いて理解できるというケースは、決して珍しくありません。

得意分野と苦手分野の差が大きいことは、お子さまの可能性の狭さではなく、特性があることのサインです。このアンバランスさに気づいた段階で、反復練習を増やす前に別の対応をすることが、お子さまの自己肯定感を守ることにつながります。

もしかして、うちの子もそうかもしれないと感じた保護者さまへ

「ただの苦手ではなく、特性が関係しているのかもしれない」
と感じられた保護者さまも多いのではないでしょうか。
読み書きの困難は、周囲からは見えにくく、気づいた頃にはお子さま自身が強い苦手意識を持ってしまっていることも少なくありません。
だからこそ大切なのは、無理に練習量を増やすことではなく、まず「どこでつまずいているのか」を整理することです。

「うちの子の場合はどうなのだろう」と感じられたら、まずは無料相談でご状況を整理してみてください。

なぜ読めない・書けない?怠けではなく脳のタイプの違い

なぜ読めない・書けない?怠けではなく脳のタイプの違い
読み書きの困難が努力不足でないとすれば、なぜ起きているのでしょうか。

ここでは、LDの背景にある脳の処理特性を3つの観点から解説します。

音韻処理の弱さ:文字を音に変換するのが難しい

私たちが文字を読むとき、脳の中ではこの文字はどんな音かを瞬時に変換する作業が行われています。この働きを音韻処理と呼び、読み書きの根幹を支える機能です。ディスレクシアのお子さまは、この音韻処理がスムーズに機能しにくいという特性を持つことが多いとされています。

たとえば「か」という文字を見たとき、多くの人は「か」という音を意識することなく自動的に読み取ります。しかし、音韻処理に弱さがあるお子さまにとっては、この変換に時間とエネルギーが必要になります。一文字ずつ音を確認しながら読むため読むスピードが落ち、内容の理解まで頭が回らなくなってしまうのです。

大人でも、キリル文字やアラビア文字を突然読めと言われれば、すらすら読めるものではありません。勉強しても、形を見分けて音を思い出すまでにとてつもない脳のエネルギーを使うと思います。ディスレクシアのお子さまは、それが『ひらがな』『カタカナ』『漢字』など、ごく一般的な日常の日本語に常に起きていると想像してください。

書くことにおいても同じことが起きています。聞こえた音を文字に変換するという作業は、音韻処理の逆方向の働きです。漢字の書き取りや英語のディクテーションテストで特につまずきやすいのは、この音から文字への変換が不得意なためであることが多く、練習量の問題ではありません。

音韻処理の弱さは生まれつきの特性とされており、トレーニングで完全に克服するよりも、音韻処理を使わずに学べる迂回ルートを設計することのほうが、お子さまの負担を大きく減らすことができます。

視覚認知の弱さ:文字が図形として歪んで見えている可能性

視覚認知の特性:文字が歪んで認識されるまでの流れ

視力は正常でも、脳の処理段階に特性があると情報が正確に整理されない


読み書きの困難には、視覚認知の弱さが関わっているケースもあります。視力そのものは正常でも、見えた文字を脳で正しく処理する段階に特性がある場合、文字が揺れて見える・反転して見える・行が重なって見えるといった状態が起きやすくなります。

この視覚認知の弱さは、鏡文字になる・似た漢字を混同する・行を飛ばして読むという現象につながります。たとえば「る」と「ろ」、「わ」と「ね」、「b」と「d」といった形が似た文字の区別が難しかったり、「雷」と「電」のように細部が異なる漢字を毎回取り違えたりします。本人はできる限り正確に文字を見て書いているつもりでも、脳での処理の段階で情報がうまく整理されないため、外から見ると不正確な読み書きに見えてしまうのです。

視覚認知に特性があるお子さまは、静止した文字より動画や音声から情報を得ることが得意なケースもあります。教科書を読むより授業の説明を聞くほうが理解しやすい、テキストより図やイラストのほうが頭に入りやすいという傾向がある場合、視覚認知の特性が学習スタイルに影響している可能性があります。

なお、お子さまによっては視覚認知や音韻処理ではなく、言葉と意味の結びつきそのものに弱さがある場合もあります。たとえば、算数の文章題はスムーズに読めるのに国語の文章だけたどたどしいというケースでは、文字の見え方ではなく言葉の概念理解が根本にある可能性が考えられます。見た目の症状が似ていても原因が異なることがあるため、特性の見極めを先に行うことが重要です

こうした特性を把握すると、保護者さまとしての関わり方は大きく変えることができます。なぜ見ているのに書けないのかと責めるより、この子は見えた文字を処理するところに特性があると理解することが、適切なサポートの入り口です。

書いて覚える反復練習が、LDの子にとっては苦行でしかない理由

10回書いて覚えなさいという学習法は、多くの家庭で当たり前のように行われています。しかし、読み書きに特性があるお子さまにとって、この練習方法はほとんど効果を発揮しません。

音韻処理や視覚認知に特性があるお子さまは、書くたびに正しい変換処理を繰り返すことが難しいため、10回書いても脳内に正しい情報が積み重ならないのです。さらに、書くこと自体に大きなエネルギーを使い果たしてしまうため、練習後には疲弊感だけが残り、漢字そのものへの嫌悪感が高まってしまいます。

もっと深刻なのは、努力して練習しても結果が出ないという経験が積み重なることで、お子さまが自分はどれだけやってもできない人間だという無力感を抱えてしまうことです。この感覚が蓄積されると、やがて勉強そのものを諦めるきっかけになるリスクがあります。

反復練習の量を増やすことよりも、お子さまの脳の特性に合った別の覚え方を見つけることが、成績と自己肯定感の両方を守るために本当に必要なことです。

がんばらせ方を変えたほうがいいかもしれない、と感じたときは

何度も書かせているのに覚えられない。
練習しているのに、毎回同じところでつまずいてしまう。

その状態が続くと、保護者さまとしても
「もっとやらせたほうがいいのか」「でも、このままで本当にいいのか」
と迷われると思います。
実際には、読み書きに特性があるお子さまほど、努力の方向が合っていないことで苦しさが大きくなっているケースがあります。
大事なのは、がんばる量を増やすことではなく、合うやり方に切り替えることです。
ご家庭だけで抱え込まず、一度方向性を確認してみませんか。

 

無理に書かせない!家庭でできる読み書き障害の子の勉強法とツール

無理に書かせない!家庭でできる読み書き障害の子の勉強法とツール
書いて覚えることに限界があるなら、どうすればいいのでしょうか。ここでは、読み書きに特性があるお子さまが家庭で今日から取り入れられる、3つの実践的なアプローチをご紹介します。

ICT活用:タブレットの読み上げ機能と音声入力を使い倒す

読み書きに特性があるお子さまに最も効果的な迂回ルートの一つが、ICTツールの活用です。タブレットやスマートフォンに標準搭載されている読み上げ機能(テキスト読み上げ・TTS)を使えば、教科書や問題文を目で追わなくても音声で内容を理解できます。教科書を音読する代わりに端末に読み上げてもらうだけで、読みにかかっていたエネルギーを内容の理解に使えるようになるのです。

読みが苦手なお子さま向けに工夫がされた電子教科書サービスとして代表的な例が以下の2つです。

  •  マルチメディアデイジー教科書
  •  Access Reading

マルチメディアデイジー教科書は、テキストをハイライトしたうえで音声で喋ってくれるので、どこを読んでいるかがわかることが大きな特徴です。

Access ReadingはWordの機能を利用したサービスのため、自分で読みやすいようにレイアウトや表示を変更することができる点が魅力です。
両方とも基本的に無料で利用できるサービスのため、ぜひ一度利用を検討してみてください。

そして、書くことへの代替として使えるのが音声入力です。iOSやAndroid、Googleドキュメントなどに搭載されている音声入力機能を使えば、話したことがそのまま文字として入力されます。

具体的には、以下のような方法で機能が使えます。

  •  iOSのキーボードにあるマイクボタンを押して入力する
  •  Googleドキュメントを開き、「ツール」からマイクボタンを押す
  •  WindowsのWindowsキーを押しながら H キーを押し、タッチ キーボードのマイクボタンから入力する

作文や読書感想文のように考えはあるのに書けないという場面でとくに力を発揮し、音声入力で下書きを作ってから細かく修正する流れにするだけで、書くことへの心理的ハードルを大幅に下げることができます。

ICTはあくまでツールですが、特性があるお子さまにとっては眼鏡や補聴器と同じ、あることで本来の力が発揮できる道具として積極的に使ってあげてください。

なお、学校によっては授業中のタブレット使用や録音・撮影を認める合理的配慮を受けられる場合があります。次の項目で詳しく解説しますので、あわせて参考にしてみてください。

漢字対策:形と意味で覚える(パーツ分解・唱えて覚える)

書いて覚えることが難しいお子さまに対しては、漢字の意味と部品(パーツ)を起点にした覚え方が有効なことがあります。たとえば「晴」という漢字であれば、日(太陽)+青(青い空)=晴れた空というように、漢字を構成するパーツと意味をセットにして理解する方法です。音と形の変換が苦手でも、意味と視覚的なイメージを結びつける力が得意なお子さまは多く、このアプローチが記憶の定着に役立つことがあります。

語呂合わせや唱え言葉を使う方法も有効です。「品」という漢字なら、口が3つ並んでいる=人が品定めしているといったように、声に出して繰り返せる短いエピソードにすることで、書き順や形ではなくストーリーとして記憶に残せます。反復の書き取りと違い楽しんで取り組めるため、覚えることへの拒否感が生まれにくいのも大きなメリットです。

さらに、漢字フラッシュカードや市販のアプリを使って見て読む・意味を確認するという練習を繰り返すだけで、書けなくても読める漢字を増やすことができます。テストで読みが問われる問題であれば、書けなくても対応できます。まず読める漢字を増やすことを優先し、書くことは後回しにすることで、お子さまの自信を守ることにつながります。

漢字の書き取りが苦手でも、読める漢字・意味がわかる漢字が増えることで国語の読解問題への対応力は上がります。書けないことを課題にし続けるより、読めることを積み上げていく方向に親子でシフトしていきましょう。

学校連携:板書の撮影・代筆・拡大教科書などの「合理的配慮」を求める

学校でICTなどを活用して対策を講じたい場合、お子さまに読み書きの特性があることが明らかであれば、学校に対して合理的配慮の申し出を行うことができます。(参考:障害種別の学校における「合理的配慮」の観点(案))

具体的に申し出ることができる配慮の例としては、板書の写真撮影許可や、ノートを手書きでなく機械で入力する、使いやすい文房具を持ち込むことを認める、などです。こうした配慮は特別扱いではなく、お子さまが本来持っている学力を公平に発揮するための環境整備です。

学校への申し出に際しては、医療機関や専門機関での検査結果(知能検査の結果や発達検査の記録など)があると話がスムーズに進みやすいです。ただし、正式な診断がなくても、お子さまの困り感を具体的に説明し、担任や特別支援コーディネーターと相談する形で進められる場合もあります。まずは学校に相談したいと声をかけることから始めてみてください。

合理的配慮を受けながら学ぶことは、お子さまにとって自分は工夫すれば学べるという体験になります。苦手を無理に克服しようとするよりも、できる手段を使って学習を継続できる環境を整えることが、長期的な自己肯定感の維持にもつながります。

また、学校との連携を通じて、家庭だけで抱え込んでいた課題を学校と分担できるという安心感も保護者さまにとって大きな支えになるはずです。

メガジュン流・読み書きの壁を越える迂回ルートの指導

並べられた洋書
家庭での工夫と並行して、読み書きの特性があるお子さまの指導に精通したプロが関わることで、取り組める内容の幅と深さが大きく変わります。

ここでは、メガジュンが実際に行っているアプローチをご紹介します。

読めないを前提にしたテスト対策(耳からの学習・選択問題の攻略)

メガジュンでは、書いて・読んでという一般的な学習プロセスが難しいお子さまに対し、最初から別の経路で知識を入れる設計を行います。

具体的には、教科書の内容を講師が口頭で解説し、お子さまは聞いて理解することを優先する、などです。社会や理科の用語も、黙読で覚えるより講師との対話や音声で繰り返すほうが定着しやすいお子さまが多く、授業の時間自体が耳からの学習の場になるよう工夫しています。

テスト対策においても、読み書きの負荷を下げる工夫を細かく組み込みます。選択問題は読む量が少なく書く必要がないという点で、LDのお子さまにとって最もパフォーマンスを発揮しやすい形式です。選択肢の消去法や問題文の構造を読む練習は、反復書き取りとは比べ物にならないほど短期間で成果が出やすいため、まずはここから自信をつけるサポートを行います。

問題を解く優先順位も、選択問題を優先させます。受験の際も、記述や小論文が重視される学校はできるだけ避け、選択問題の多い学校を受験させるのが攻略法の一つです。
こうした耳からの学習とテスト攻略法の組み合わせは、書き取り練習を重ねても成果が出なかったお子さまが、初めて自分でも点数が取れるという感覚をつかむきっかけになることが多いです。

書くことでの消耗を防ぎ、本来の思考力を伸ばすアプローチ

読み書きに多大なエネルギーを使ってしまうお子さまは、書くことに集中しているうちに何を考えていたかを忘れてしまうことがあります。頭の中にあった良いアイデアや正しい答えが、文字に起こす作業の途中で消えてしまうのです。メガジュンでは、こうした状況を避けるために、考えることと書くことを意図的に分離した指導を行います。

例えば、小学校低学年の国語でよくある「主人公はなぜ泣いたのでしょう。理由を書きなさい」という記述問題。書くことに特性があるお子さまの場合、答えが分かっていても、鉛筆を持った瞬間から消耗が始まります。どの漢字を使うか、どこで区切るか、はみ出さないように書かなければ、という意識が一気に押し寄せ、最初に浮かんでいた「悲しかったから」というシンプルな答えが、書き終える前に頭から消えてしまいます。

そこで講師はまず、鉛筆を置いたまま話しかけます。「主人公、なんで泣いたと思う?」とひと言聞くだけで、お子さまは「お母さんがいなくなったから寂しかったんだと思う」などと正しい答えが返ってくることがほとんどです。講師はその言葉をそのままメモに書き留めます。次に「じゃあ今言ったこと、そのまま書いてみよう」と伝えると、お子さまはゼロから考え直す必要がなく、手元のメモを写す作業に集中できます。書くためのエネルギーだけを使えばよい状態になるため、最後まで書き切れることが増えていきます。

考えることと書くことを分離するこのアプローチを繰り返すうちに、お子さまは自分の考えをまず声に出してから書くという習慣が身についていきます。書くことへの消耗が減り、思考のエネルギーを問題の本質を考えることに使えるようになることで、本来持っている理解力や発想力が答案に現れやすくなります。

思考力・推論力・語彙力は十分に備わっているお子さまが、自分は考えることができるという実感を取り戻していくケースが多いアプローチ方法です。書けないという事実が長く続くと、考えること自体をあきらめてしまうお子さまも少なくないため、早い段階で思考と書字を切り離す体験をさせることが重要です。

また、中学・高校と進む中で記述問題の比重が高まりますが、音声入力やタブレット活用のスキルを早期に習得しておくことで、進学後も自力で対応できる力をつけることができます。書けないことを補う技術を身につけることも、メガジュンが指導の中で大切にしているポイントの一つです。

読み書き障害を乗り越え中学受験に成功した指導事例

実際にメガジュンで指導を受けたお子さまの事例をご紹介します。

小学5年生のSくんは、ASDとLDの診断を受けており、読み書きに大きな困難を抱えた状態でご相談にいらっしゃいました。

算数の文章題はスムーズに解けるのに、国語の答案用紙はほぼ白紙という状態が続いており、漢字を一画ずつのパーツとして捉えてしまうために書くのに非常に時間がかかる、音読も単語の途中で切れ切れになってしまう、という状況でした。

担当講師がSくんの様子を丁寧に観察した結果、困難の根本には文字そのものが歪んで見えるといった視覚認知の問題ではなく、言葉と意味の結びつきの弱さがあることが見えてきました。

たとえば、朝(あさ)という言葉は、夜が明けてからお昼ごろまでのことです。しかし、『それぞれの単語は、あるものや概念を指している』という認識が弱いために、「朝」という言葉を見たときにぱっとイメージが浮かばず、「あ」「さ」と一つずつの文字で捉えてしまっているのです。

この見立てに基づき、Sくんの場合はICTに頼るのではなく、言葉と概念をつなぐことを優先した指導方針を設計しました。具体的には、Sくんの好きな電車の図鑑で絵と言葉を結びつける練習や、文章に区切りを入れながら音読を繰り返すアプローチを地道に続けました。

区切りを入れるとは、例えば、「ともだち/と/おやつ/を/食べ/まし/た」のように、単語と助詞との間に補助線を引いて読みやすくする方法です。

その結果、約4〜5か月後、Sくんの音読は定型発達のお子さまと遜色ないほど滑らかになり、文章を読むスピードも大きく向上しました。小6の秋頃には、かつてほぼ白紙だった国語の答案用紙に8割以上の記述ができるようになり、そのまま第一志望の私立中学校に合格しています。読み書きの困難を迂回するのではなく、その子の特性の根っこを見極めてアプローチしたことが、大きな変化につながった事例です。

お子さまに合う迂回ルートは、個別に見つけていくことができます

同じLDの読み書き困難に見えても、実際には

「音韻処理の弱さが強いのか」「視覚認知の特性が中心なのか」「言葉と意味の結びつきに課題があるのか」

によって、合う対策は大きく変わります。

つまり、「LDだからこの方法」と一律に決めるのではなく、どこに根本のつまずきがあるのかを見極めることがとても重要です。
「うちの子には、どんなやり方が合うのだろう」と感じられた保護者さまは、ぜひ一度ご相談ください。

まとめ:読み書きは手段にすぎない。学び方は選べる

読み書きに特性があるお子さまが苦しんでいるのは、努力が足りないからでも、保護者さまの教え方が間違っているからでもありません。音韻処理や視覚認知という脳の処理経路に特性があるために、文字を扱う作業に人より多くのエネルギーが必要になっているというだけです。そして、その特性は書き取り練習の量を増やしても変わりません。

大切なのは、書いて覚えさせるという一つの方法に固執するのをやめ、そのお子さまに合った迂回ルートを見つけることです。ICTツールを使う、パーツで漢字を覚える、学校に合理的配慮を申し出る。こうした選択肢はすでにあり、読み書きが苦手でも思考力・語彙力・推論力は十分に育てることができます。読み書きは学びのための手段の一つにすぎず、手段はいくつあっても構わないのです。
うちの子にはどんな方法が合っているのかわからない、学校への相談をどう進めればいいか不安、という場合は、ぜひメガジュンの無料相談をご活用ください。お子さまの特性を丁寧にヒアリングし、今の状況に合わせた具体的なアプローチを一緒に考えます。書けなくても、読めなくても、本来の力を発揮できる学び方は必ずあります。その道を、私たちと一緒に探しましょう。

読み書きの困難は、やり方を変えることで見え方が変わります

読み書きが苦手なお子さまに必要なのは、
「もっと書かせること」ではなく、
「合う学び方を見つけること」です。

ただ、その見極めはご家庭だけでは難しいこともあります。
読みの問題なのか、書字の問題なのか、理解の入り口に負荷があるのかによって、取るべき対応は変わるからです。

メガジュンでは、お子さまの特性や学習状況を丁寧にうかがいながら、
「家庭での関わり方」「ICTの使い方」「学校との連携の進め方」「今後の学習設計」まで具体的に整理しています。

「うちの子にはどんな方法が合っているのか知りたい」
「今の対応でいいのか不安がある」
些細なことでもお気軽に無料相談をご活用ください。

お子さまが無理なく力を発揮できる道を、一緒に整理していきましょう。