71. 先取り学習をしたいが、学校にダメだと言われた

幼稚園の頃からひらがなやカタカナ、足し算・引き算の勉強を始めているお子さまの場合、小学校に上がってからしばらくは既に勉強したことの復習になってしまうため、勉強が退屈に感じることが多いと思います。また、発達が早いお子さまや知能指数が平均よりも高めなお子さまの場合も同様に、学校の勉強を持て余してしまうことがあります。

こうしたお子さまへの対応として、「教科書を先取りして勉強する」という方法があります。確かに、既に覚えているひらがなや、分かっている計算問題を繰り返し解くよりも、先の内容に進んだ方が効率が良く、中学受験の予定があれば受験にも有利であると考えるご家庭も多いと思います。

ただ、単純に「うちの子だけは授業の進度に合わせず、先取り学習をさせてほしい」と伝えても、学校側もすんなりと「良いですよ」とは言わない場合が多いと思います。学校は集団生活を学ぶ場でもあるため、一人だけ特別扱いすることはできないと言われることが多いと思いますし、それでは授業が成り立たないと言う先生もいるでしょう。

周りに迷惑をかけるものでもないのに、なぜ許可してくれないのだろう?と感じる保護者さまもいらっしゃるかもしれませんが、学校の言い分も全く間違っているわけではありません。というのも、先取り学習を許可してしまうと、クラス内での格差がどんどん広がってしまう可能性があるからです。

例えば、勉強が得意な子はどんどん先に進んでいる一方で、勉強が苦手な子はずっと最初の単元で止まっているという状況を想像してみるとどうでしょうか。勉強が得意な子がどんどん先に進んでいく様子を、勉強が苦手な子が間近で見てしまうと、「自分は勉強ができない」「あの子とは違って私/僕は馬鹿なんだ」と感じる子もきっといるはずです。

またその逆で、勉強ができる子ができない子の様子を見て、「自分は賢いから、勉強ができない子よりも偉いんだ」と見下してしまうこともあるかもしれません。
恐らく先生は「それぞれのスピードで良いんだよ」とフォローし、「勉強ができるから偉いわけではない」という指導も行うでしょうが、その言葉だけでその子たちの心を救いきれるかというと、なかなか難しいものがあるように思います。

もちろん、非常に高い指導力を持った先生であれば、教室内で格差が大きく開いてしまっても、上手くフォローを行い、クラス全員が楽しく前向きに勉強できる雰囲気を作れるかもしれません。したがって、「先取り学習を禁じるのではなく、先生の指導力を上げればよい」というのも論理的には正しいのですが、先生の指導力は一朝一夕に上がるものではありませんので、現実的な解決策とは言い難いように思います。

「先生の指導力が低いのが問題。うちの子には関係無い」と割り切るのも一つの考え方ですので一概に否定はできませんが、お子さまもクラスの一員である以上、クラスのまとまりや子どもたちの社会性を顧慮しないという判断が本当にお子さまの成長に良いものなのか、今一度じっくりと考えていただけると、教育者の一人としては嬉しく思います。

もし学校で先取り学習をしたい場合は、

・授業で出された課題が終わってから取り組む
・周りの子でつまずいている子がいたら、自分の学習よりも教えてあげることを優先する
・自分より進度が遅い子を絶対にからかったり、馬鹿にしたりしない


といった約束事をご家庭でもしっかり指導することを条件とした上で先生と交渉すると、上手くいく場合が多いかと思います。特に、「周りの子に教えてあげること」については、周りの子だけでなくお子さま自身にとっても非常に大きなメリットがあります。他者に説明することで自分の中での理解がより深まりますし、教えるという行為自体がコミュニケーション能力であったり、プレゼンテーション能力であったりと、これから生きていくために必要な力を伸ばすことにもつながります。

「周りの子に教えてあげる」というと、リソースを他人のために使っているようで損をしていると感じてしまうかもしれませんが、「情けは人の為ならず」という言葉のとおり、周りの子に教えるという経験は、周りの子のためだけでなく必ずお子さま自身の糧になりますので、ぜひ積極的にチャレンジしていただけると嬉しく思います。