76. 学校に行きたがらず、理由を聞いても答えない

不登校の状態にあるお子さまに、「なぜ学校に行けないのか?」と聞いてもほとんどの場合はっきりとした答えは返ってきません。お子さまの口から「クラスでいじめられているから」「○○先生にひどい怒られ方をしたから」などのはっきりとした答えが返ってくることは稀です。私も長年不登校のお子さまの支援に関わってきましたが、いじめや不適切な指導などが不登校の原因であることが最初から分かっていて、いじめっ子を転校させたり担任を代えたりしたらすぐに学校復帰できたというケースはほとんど聞いたことがありません。

お子さまに不登校の兆候が表れると、多くの保護者さまは「不登校になるようなきっかけや理由があるはずだ」と考えてしまうと思います。ですが、大人に置き換えて考えてみると分かるように、「会社に行きたくない」「家事をやりたくない」と感じる原因は何か一つではなく、業務の負担が大きい・上司との人間関係が良くない・休みが無い・家族が労ってくれないなどのストレスが徐々に積み重なって、「もうしんどい」と感じてしまうことがほとんどだと思います。

また、家事や仕事に対するしんどさやモヤモヤは、いずれかの要因が無くなればすべてスッキリ解決するというものでもなく、複数の要因が重なっていて、それらを一つずつ取り除いていくことでしか解決できないものであることも、多くの方が実感していると思います。

お子さまの不登校の場合も同様で、何か一つの原因があるわけではなく、勉強についていけない・なかなか友達ができない・何となく先生と相性が合わないなど、様々な要素が関係しています。

また、大人はある程度経験があり思考力も発達しているため、一つ一つの事象を整理して言葉で表現できますが、子どもは思考力も未発達ですので、「何となくイライラ・モヤモヤする」「学校に行きたくない」という感情や行動でしか悩みやストレスを表現できないことがあります。

保護者さまがお子さまに対して、「どうして学校に行きたくないの?」と尋ねても明確な答えが返ってこないのは、こうした要因の複雑さや、子どもの言語化能力が未熟であることが原因です。また、「親に心配を掛けたくない」「大人に相談しても解決しない(特に人間関係など)」と考えていて、お子さまが悩みを打ち明けないケースもあります。こうした前提を踏まえ、お子さまが学校を休みたがるときは無理に登校させず、また原因を聞き出そうとあれこれと詮索せず、まずはゆっくりと休ませることが大切です。

一方で、状況を改善していくためには、不登校の要因を明らかにすることも重要です。お子さまに聞いても不登校の原因がよく分からない場合は、学校の先生や仲の良いお友だち、そのお友だちの保護者さまなどから、お子さまの普段の様子をできるだけ詳しく聞き取り、ストレスやプレッシャーにつながるような事象は無いかを調べていきましょう。

例えばお友だちから、「中間テストの後くらいから口数が減った」などの話があれば、学力不振がストレスとなっている可能性が考えられます。もし学力不振が不登校の主な要因である場合は、個別指導塾や家庭教師を利用して、本人に合った勉強法を身に付け、失ってしまった自信を回復させることで少しずつ学校復帰へと導いていくことが可能です。

プロ家庭教師メガジュンでも、これまで多くの不登校のお子さまをサポートしてきましたが、人間関係と学力不振の両方が不登校の要因になっているケースが非常に多くありました。学力面に関しては、難易度の低い課題からチャレンジしてもらい、「自分にもできる」という自信を回復させながら、勉強に前向きになれるようサポートをしていきます。

人間関係の悩みについては、家庭教師の立場から解決することは難しいものの、お子さまがクラスメイトとどのような関係性にあり、どのような点で悩んでいるのかを丁寧に聴き取り、学校の先生や保護者さま以外の第三者的な立場からアドバイスすることで状況が改善に向かうことがあります。

例えば、

①お子さまがあるクラスメイトのことを苦手だと感じている場合は、「休み時間は他の人としゃべったり、別の場所で過ごしたりして、できるだけ接触を避けるのはどうかな?」と距離の取り方をアドバイスする
②お子さまがクラスのあるグループに所属することにこだわっている場合は、「そのグループに所属できない場合に、どんな困ったことが起きそうかな?」と客観的な思考を促し、そのグループに所属できなくても、実は大した困りごとは起こらないのだと気付かせる
③クラスのやんちゃな子が授業中にうるさくてイライラしてしまう場合は、「うるさい!」と注意して相手を変えようとするのではなく、「自分がどう変われば快適に過ごせるか?」を考えるようにする


といったアドバイスをしたところ、気持ちが落ち着き、学校への復帰を検討できるようになったお子さまがたくさんいらっしゃいました。

あるいは、「進学すれば環境も変わるよ」など、将来を見据えた長期的な視点を示してあげることで、「じゃあ、勉強を頑張って○○高校に進学すれば良いんだ」とお子さまが現実的な解決策に向かって頑張れるようになることもありました。

実際にメガジュンを利用いただいたお子さまにおかれては、受験を機に不登校から復帰する方が非常に多く、「自分に合った環境を見つけ、そこに行けるように頑張る」という道筋は、不登校の解決において非常に効果が高いと感じています。

併せて、現代の日本の学校教育は、“普通の子”を基準として制度が組み立てられていることも、不登校の原因が見えづらくなっている理由の一つであると考えられます。“普通の子”とは、IQが90~110程度で、発達に凸凹が無く、先生の言うことを素直に聞く子を指します。

ここからはみ出る子は、「皆で同じ内容を、同じペースで学ぶ」という学校教育とは相性が合いづらく、学校に行くこと自体がストレスやプレッシャーにつながりやすくなります。ただし、発達障害や知的障害グレーゾーン、ギフテッドの場合に必ず不登校になるというわけではありませんし、定型発達であれば不登校にならないというわけでもありません。“普通”であるかどうかはあくまで目安として捉えていただければと思います。

また、不登校をきっかけに発達障害や軽度の知的障害、ギフテッドであることが判明するケースもあります。ご家庭の様子だけでなく、学校での様子についても先生からよく聞き取り、気になることがある場合は発達検査や知能検査を受けてみると良いでしょう。何かしらの障害があることが分かってしまうとレッテルを貼られるようで嫌だと感じる方もいるかもしれませんが、検査はレッテルを貼るためではなく、これからのお子さまの支援の方針を検討するため、ひいてはお子さまの今後の人生をより良くするために受けるものです。大人になってから対応するよりも、子どものうちに特性を知り対処していく方が二次障害などのリスクも抑えられますので、必要に応じて検査を受けることをおすすめします。

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