「課題が多すぎてもう無理」──超管理型中学校で心が折れた高IQ児の支援と再起の物語
進学校に通う高IQ中学生が、なぜ“勉強しているのに点数が取れない”状態に陥ったのか──。
その理由は、単なる「努力不足」ではありません。その背景には、課題と小テストに追われる管理型の学校の方針と、本人の性質とのミスマッチがありました。
今回ご紹介するのは、実際に私たちの元にご相談をいただいたご家庭の事例です。
入学当初は期待に胸をふくらませていたご本人さまが、なぜ「もう無理かもしれない」と感じるまでになったのか。
そして、支援を通じて少しずつ自分のペースを取り戻していく過程を丁寧に描いていきます。
「課題が多すぎて、何をやっても空回りしている」
そんな状況に心当たりがある方に、ぜひ読んでいただきたい実例です。
▼目次
高IQの性質と学校のしくみが噛み合わない──見えにくいミスマッチの背景
今回ご紹介するのは、FSIQ138という非常に高い知的能力を持つ中学生のAくんのケースです。
実は彼は、小学生の頃から学校生活に強いストレスを感じ、体調を崩して不登校気味になっていました。
授業が面白くない、友達とも話が合わない──「学校に行く意味がわからない」とまで感じていた彼の様子に、お母さまは発達特性が関係しているのかもしれないと考え、WISC-IVの検査を受けることにしました。
その結果は、以下のようなものでした。
- FSIQ:138
- 言語理解(VCI):120
- 知覚推理(PRI):136
- ワーキングメモリ(WMI):126
- 処理速度(PSI):133
WISC-IVの検査では、特に「知覚推理」と「処理速度」のスコアが際立って高く、論理的思考力やパターン認識、情報処理の速さに優れた特性が見られました。
また、「ワーキングメモリ」も高めで、一時的な情報を保持しながら複数の操作を行うような場面でも力を発揮しやすいタイプだと考えられます。
「言語理解」は相対的に控えめではあるものの、平均を大きく上回っており、語彙や読解に対しても一定の力を持っていることが分かりました。
小学生時代から見えていた“興味の偏り”と生活上の困りごと
Aくんは、特に数字や構造に対する興味関心が強く、算数や物理のようにルールやパターンを読み解いていく教科では、深く集中しながら楽しく学ぶことができていました。
一方で、国語や生物・化学といった教科には苦手意識があり、小学生時代から成績に凹凸が見られていました。
ただし、読書自体は好きで、語彙や理解力にも特段の問題はありません。
「好きなことにはとことん集中できるが、興味がないことには注意が向きにくい」という傾向が強く、知的な能力は十分にあるにもかかわらず、テストの点数にはつながりにくいという状況でした。
また、集中していると周囲の声が聞こえなくなるほど没頭する一方で、課題を切り替える・複数の予定を見通すといった場面には苦手さが出ることもありました。
加えて、普段からゲームをしながらiPadとテレビでYouTubeを同時に流すなど、強い刺激を求めてマルチタスク的な行動をとる傾向も見られました。
さらに、視野が狭く忘れ物や無くし物が多い、字が汚い・手先が不器用といった特徴が日常的な困りごととして積み重なっていたようです。
食に対するこだわりもあり、好き嫌いや食べず嫌いが多いという特徴もありました。
このようにAくんは、「高い知的能力」と「生活上の凸凹」が併存するタイプのお子さまでした。
高IQ児のAくんが“超管理型”の進学校で感じたミスマッチ
こうした特性を持つAくんが選んだ進学先は、県内でも屈指の難関校で、課題・提出物・小テストの頻度が非常に多い“超管理型”の私立B中学校でした。
毎日3〜4科目分の課題や提出物が課される上に、週明けには小テストが続き、「すべてをきっちりこなすこと」が前提となる教育方針に、Aくんは負担を感じるようになっていきます。
得意なことを自分のペースで深めていくことに喜びを感じるタイプのAくんにとって、B中学校のような管理型の学習スタイルは息苦しいものでした。
もちろん、Aくんも保護者さまもB中学校が管理型で課題が多いことはご存知でした。それでもB中学校への進学を決めたのは、学校の特色ある取り組みのひとつであるeスポーツ部の存在でした。
「好きな部活ができる環境なら、頑張れるかもしれない」という前向きな気持ちでの選択でしたが、実際には、日々の生活は課題と小テストに追われるばかり。放課後まで学習課題がみっちりと課される中で部活に参加する余裕はなく、その点でも期待とのギャップが生じてしまっていました。
現状の困りごとと体験授業で見えた“今”の姿
現在Aくんが直面している最大の困りごとは、定期テストの成績が著しく振るわないことです。
ほとんどの教科で30〜50点台と低空飛行が続いており、数学で一部分だけ90点を取ることもあるものの、学年順位は下から数えた方が早い状況でした。
お母さまからは「ここまで勉強ができなくなってしまった原因は何なのか、どうすれば点数が上がるのかを知りたい」という切実な声も寄せられました。
お母さまからのお話を伺う限り、Aくんは、
という、負のサイクルに陥っているようにも見えました。
実際に、Aくんはまったく勉強していないわけではありません。夜遅くまで課題や提出物に取り組んでいる様子もあり、保護者さまも「やっている方だと思う」と仰っていました。
ただ、その学習が成果に結びつかない背景には、「課題をこなす」ことが目的化してしまい、内容の理解や定着につながっていないという問題があると考えられました。
あまりにも課題が多いために、公式や意味を理解する前に演習問題だけを機械的に解いていたり、単語や漢字の暗記が苦痛に感じられて定着しなかったりと、時間をかけていても学びが“残らない”状態に陥っているケースは、管理型の進学校で頑張っておられるお子さまによく見られるケースです。
また、そんな状況ですので、毎週実施される小テストでも点数が取れず、放課後や次の日の朝には追試を受けることになります。
すると、追試でますます時間が取られてしまい、先ほどの負のスパイラルが以下の形でさらに加速してしまうことになります。
また、時間が足りないからと夜遅くまで勉強することで、朝起きるのがつらくなって欠席が増え、さらに内容が分からなくなるという身体面での負のスパイラルにも巻き込まれている状況もありました。
つまり、今のAくんは、
- 時間が足りず理解が定着しないという「学習内容の定着における負のスパイラル」
- 睡眠時間を削って勉強してしまい欠席が増えるという「身体面での負のスパイラル」
の2つの負のスパイラルに巻き込まれている状態でした。
そんな中で、お母さまは「このまま進学校でやっていくのはしんどそうだけれど、公立に転校しても上手くやっていけそうにないので、どうしていいのか本当に悩んでいる」と切実な心の内を明かしてくださいました。
私たちからのご提案|まずはAくん自身が見通しと希望を持てるようにサポート
私たちはまず、体験授業でAくん自身の率直な気持ちに耳を傾けることにしました。
Aくんがこれからどこまで頑張りたいと思っているのかをしっかりと聞きとった上で、現実的なラインを提示していくことが私たちの責務だと考えたからです。
というのも、前述のように負のスパイラルが重なっている状況においては、今のAくんがどれだけ「テストで100点を取りたい」と思っていても「まずは75点を目指そう」ということを伝えなければなりません。
また、Aくん自身が「もう無理。公立でも良いから転校したい」と考えているなら、公立中学校で直面しそうな課題もしっかりと伝えた上で、一緒にその決断について考えていくことが必要だと考えました。
実際に、Aくんは初回の体験授業で以下のように語ってくれました。
- 正直しんどいと思っている
- 特に「やっても成果に結びついている感じがしない」のがしんどい
- 少しでも「やった、できた」と思えたらまた頑張れそう
- eスポーツがやりたいと自分で選んだB中学校なので、ここで頑張りたい
お母さまが感じておられるのと同じように、Aくんもどうしていいか分からず五里霧中の状況であるように見えました。
一方で、Aくんの心の灯はまだ消えきっておらず、「自分で選んだB中学校で頑張りたい」という思いもしっかり持ってくれていることが分かりました。
そこで講師は、まずは「時間が無い」という負のスパイラルを抜け出そうと提案しました。
具体的には、Aくんと一緒に定期テストの内容を分析し、どのような準備をすれば効率よく点数に結びつくのかを、一緒に考えていくことにしました。
- どんな問題が出ているのか
- どの教材・プリントから出題されているのか
- 目標点を取るには、どの問題を解き、どの問題は捨てて良いのか
などを“作戦会議”形式で整理し、本当に必要な課題から順に取り組んでいく形です。
また、Aくん自身は「やっても成果が出ないこと」にしんどさを感じていましたが、このように点数に直結する内容から順に取り組んでいけば、必ず成績は上がっていくはずだよということを講師からしっかりと説明させていただきました。
このように説明していく中で、体験授業の終盤ではAくんの表情に少し変化が見られました。
これまで、どこから手をつければいいか分からず立ち尽くしていたAくんが、ほんの少しではありますがこれからの方向性が見えたことで、霧が晴れたような、すっと肩の力が抜けた表情を見せてくれたのが印象的でした。
お母さまも、「今まではとにかくどうしていいか全く分からず、不安ばかりだったけれど、少し希望が見えた気がする」と、安堵の混じった笑顔で話してくださったのがとても印象に残っています。
Aくんのように、「努力しているのに報われない」という苦しさを抱えたまま、一人で暗中模索を続けている生徒さんは少なくありません。
次章では、こうしたお子さまに対して私たちがどのようなステップで伴走していくのか、実際のアプローチ内容について詳しくご紹介していきます。
「がんばってるのに結果が出ない」「どこから手をつけていいか分からない」と感じているお子さまをこれまで数多くサポートしてまいりました。
もしよろしければ、お子さまの状況について一度お話を聞かせていただけませんか?
見通しと達成感をつくるための伴走|Aくんと共に進めた具体的ステップ
実際の指導においては、Aくん自身が「これならやれそう」と感じられる形で、現実的な作戦を一緒に立てていくことを重視しました。
まず取り組んだのは、定期テスト全教科の問題と解答の分析です。
Aくんと一緒に出題傾向を確認しながら、目標点数を科目ごとに設定し、「どの問題は取るべきで、どこは捨ててもいいか」を具体的に線引きしました。
本人も「全部やらなきゃ」と抱え込んでいた状態だったため、捨てることが前提になるだけでも負担感がかなり軽減されたようでした。
次に、小テストと日々の課題の整理です。
小テストで再試験になると負荷が跳ね上がるため、「何点取れば再試験にならないか」「そのためにはどのような準備が必要か」を科目ごとに逆算し、Aくんと意見をすり合わせながらルートを描いていきました。
課題についても、「毎週どの教科からどれだけ出るのか」「週によってどれくらいの波があるのか」をAくんと一緒に書き出し、教科ごとの負荷や優先順位を整理しました。
これまでは、とにかく量が多すぎて全体像が把握できない状態でしたが、全体像が可視化されたことで、気持ちにも少しずつ余裕が生まれていきました。
その上で、Aくんの毎日の生活スケジュールも丁寧にヒアリングしました。
「睡眠時間はできるだけ確保したい」「部活もやりたい」という本人の希望を踏まえて、「じゃあ1日にどれくらい勉強に使える?」という話し合いを重ねていきました。
こうして作成したのが、“毎週・毎日、これだけやれば大丈夫”という行動計画です。
小テスト対策・課題対応・定期テスト準備を1週間の中に無理なく配置し、1日単位でどの教科をどのくらいやるかを明確にしました。
最初の1週間は試運転として、「これならできそう」「これはちょっときつい」などAくんの感覚をもとに微調整し、本人にとって“ちょうどいい”計画に仕上げていきました。
また、すべてを完璧にやろうとするのではなく、「この科目は今は捨てる」「応用問題はひとまず捨ててOK」と割り切ることも共通の方針としました。
その上で、「この科目のこの部分は頑張ろう」という的を絞った戦略を立てることで、Aくんのやる気や集中力を高めることができ、手応えにもつながっていきました。
伴走のなかで見えてきた変化
指導を始めて2か月ほど経つと、「このリズムならいけそう」「これだけこなせたら合格」という見通しを、Aくんが自ら少しずつ持てるようになってきました。
指導を始めた当初、Aくんの英語の定期テストは32点。
どれだけ勉強しても思うように成果が出ず、「やってもムダなんじゃないか」という無力感を口にしていました。
しかし、作戦会議を通して「まずは75点を目指す」「応用問題は潔く捨てる」と戦略を明確化した結果、次の定期テストでは英語が68点に上昇。
本人としては「満点じゃないけど、やった分だけ点数が伸びた」という実感が強く、「次はあと2問取れれば目標クリアだ」と前向きに話すようになっていきました。
また、小テストについても、当初は週3〜4科目で追試になっていたのが、今ではほぼ0回に。
「今週の小テストは何が出るか」を事前に整理しておくことで、復習の負担も減り、テスト前に焦ることもなくなってきました。
さらに、生活面でも変化が現れてきました。
最初の頃は課題に追われて毎日平均6時間台の睡眠しか取れておらず、朝も起きられず遅刻気味になることがありました。
ですが、現在では毎晩8時間の睡眠時間を確保。
「部活ができる日が週に2日ある」という約束を作ることで、モチベーションとリズムを両立させることができています。
本人からも「朝、前よりスッキリ起きられるようになった」「部活でゲームができる日があると気持ちが軽くなる」といった言葉が出てくるようになり、顔色や表情にも変化が表れてきました。
また、学習計画が安定したことで、一時的に休んでいたスイミングについても、無理なく継続できるかどうかをAくん自身と一緒に見直しました。
毎週通うのはまだ難しそうでしたが、気分転換のためにも月1~2回のペースで再開することに。
課題の全体像を把握し、やるべきことの取捨選択をしていくことで、学校・生活・習い事を含めてバランス良く組み立てることができるようになっていきました。
このように、お子さまの特性や生活リズムに合わせて、「やること」「やらないこと」を整理するだけでも、状況は大きく変わることがあります。
プロ家庭教師メガジュンでは、学習計画の作成からメンタル面のサポートまで、それぞれのお子さまに合わせた柔軟な伴走を行っています。
「うちの場合はどうなんだろう?」と少しでも気になった方は、無料のご相談や体験授業をご検討ください。
似た状況のお子さまの事例も踏まえながら、具体的なご提案をさせていただきます。
次のフェーズへ|“上限値”を少しずつ引き上げていく
今後のAくんのサポートは、少しずつ「やれることの上限」を引き上げていく段階に入っていきます。
これまでは「ギリギリでもいいから最低限をクリアしよう」というフェーズでしたが、最近ではAくんからも「理科の暗記、ちょっと増やしてもいいかも」「今週はこの教科、いつもより頑張れそう」と、自発的に話してくれる場面が出てきています。
このように、まずは“自分の力で学校生活を回せている”という感覚を取り戻し、そこから少しずつ「もっとできるかもしれない」と思える瞬間を積み重ねていくことが、自信を失ってしまっているお子さまへのサポートにおいては何よりも大切だと考えています。
そして、このペースを丁寧に守りながら、中学3年生になる頃には、高校の学習、そして大学受験につながる勉強習慣をしっかり築けている状態を目指していく予定です。
当初は「やってもやっても希望が見えない」と暗い表情だったAくん。
そんなAくんが、「次はこれをやってみよう」と自分から思えるまでに回復してくれたことを、私たちはとても嬉しく思っています。
そして、これから先も一緒に見通しをつくり、挑戦を支えていけることに、大きなやりがいと責任を感じています。
まとめ|“今”の状況を肯定しながら、柔軟に未来を描く
今回のケースでは、Aくん自身が「できれば今の学校で頑張りたい」と感じていたため、まずは“無理なく続けていける状態”を一緒に整えていくことを目指しました。
生活のリズムを守りながら、やるべきことの優先順位をつけて取り組む――そのプロセスの中で、Aくんにも少しずつ見通しと達成感が芽生えてきています。
ただし、すべてのケースで「今の環境に留まること」が最適とは限りません。
勉強の話になると涙が出てしまう、体調不良があるなど、心身のサインが表れている場合には、環境そのものを見直すことも大切な選択肢の一つになります。
今は、フリースクールやホームスクーリング、通信制高校といった多様な学びの手段が広がっています。
大切なのは、「お子さまにとって“学び続けられる形”とは何か」を、ご家庭と丁寧に探っていくことだと考えています。
プロ家庭教師メガジュンでは、進路や学習環境の選び方を含めたご相談や無料体験授業を承っております。
もし今、ご家庭での対応や選択に迷われているようであれば、一度お話を聞かせていただけませんか?
ご希望の方には、無料の個別相談(電話またはZoom)や近日中の体験授業の候補日をご案内させていただきます。
お子さま一人ひとりに合った学び方を、無理なく、しかしながら確かな歩みで探していくためのお手伝いができれば幸いです。
