学習・生活面のお悩み相談 虎の巻

学力の伸び悩み、発達障害、不登校、浮きこぼれ...お子さまに関するお悩みは多岐にわたります。

一人でも多くのお子さまのお力になれるよう、プロ家庭教師としてのこれまでの知識と経験を集約し、よくあるお悩みに一問一答形式でお答えする「学習・生活面のお悩み相談 虎の巻」を作成しました。

メガジュンの社外秘のノウハウとして、講師達と共有・蓄積していたもので、数多くのお困りごとをこちらのノウハウで解決してまいりました。
皆様からよくいただくご質問をジャンル別に5つにまとめました。
各項目を選択すると、質問一覧が表示されますので、お困りごとに合わせてご確認ください。
  • 勉強について
  • 発達障害について
  • ギフテッドについて
  • 不登校について
  • 生活について

1. 勉強に集中できていない

勉強に集中できない原因は非常に多岐にわたります。

その中でもよくある原因として「①勉強に興味ややる気が持てない」「②勉強に対する自信の無さ、無力感」「③勉強以外に興味を惹かれるものがある」「④集中しづらい環境にある」「⑤発達障害の特性がある」「⑥体力が無い、睡眠不足である」などが挙げられます。

実際にはこれらの要因が複合的に重なっている場合がほとんどであるため、お子さまの性質をよく分析し、一人一人に合った対策を講じていく必要があります。

要因①:勉強に興味ややる気が持てない

勉強に集中できない要因の一つが、「勉強が楽しくない、やる気が出ない」というものです。この場合は、勉強が楽しくなるような工夫(好きなアニメに関する英単語から覚える、パズル的な問題から数学を考えるなど)をするほか、勉強をしたくなるような動機付け(先生に褒められたい、良い点を取ると自分に自信が持てる)を行うことが有効です。

また、どんな動機付けが効果的であるかはお子さまによって異なります。お子さまが興味を持っているものや遊び方に注目することによって、それぞれのお子さまにとって効果的な動機付けの方法を見つけることができます。

例えば、ゲームの遊び方一つとっても、

・弱い敵をサクサク倒すのが好き
・強い敵を工夫して倒すのが好き
・誰よりも早くクリアして周りから称賛されるのが好き


など、お子さまによって楽しみ方はそれぞれ違います。

弱い敵をサクサク倒すのが好きなお子さまの場合は、簡単な問題をたくさん解いて「サクサク解けて楽しい!」と感じてもらうことで勉強に前向きになれますし、強い敵を工夫して倒すのが好きなお子さまの場合は、少しレベルの高い問題を敢えて解かせることで「勉強って面白い!」と感じて勉強に前向きになることができます。

お子さまがなぜそのゲームや遊びが好きなのかを分析し、お子さまの心が動くポイントを見つけることが、動機付けを行う際には非常に重要ですので、ぜひ意識していただければと思います。(関連項目→19. ②「点数を上げたい」というモチベーションを上げる)

また、勉強へのやる気が起きない背景には、「勉強に自信が無い」「勉強しても点数が上がる気がしない」という自信の無さや無力感があることが多いため、次の1. 要因②:勉強に対する自信の無さ、無力感もぜひ併せてご覧ください。
★オススメの実例コラム→<プロ家庭教師メガジュンでの解決例#2:学習習慣が身に付かず、志望校に受からない可能性が出てきたBさん>

要因②:勉強に対する自信の無さ、無力感

「勉強すれば点数が上がる」という実感があると、お子さまは「もっと点数を伸ばしたい」と感じて自主的に勉強できるようになれることがほとんどです。

しかし、いくら勉強しても成果が出ず、自分が成長できているという実感が持てないと、「勉強したところで無駄、意味が無い」「自分は勉強が苦手なのだ」と感じて勉強を避けるようになり、結果として勉強に集中しづらくなってしまいます。

こうした状態を改善するためには、「勉強すれば成果が出る、成長できる」とお子さまに実感してもらうことが大切です。

まずはお子さまにとって難しすぎない課題にチャレンジさせ(覚えやすい漢字や簡単な計算問題、歴史の暗記など)、少しでも机に向かって勉強すれば点数が上がる(できることが増える)と感じてもらうことが大切です。あるいは、学校の授業の予習を行い、「授業が分かる」という状況を作り出してあげることも効果的です。

授業を聴いても理解できないことで自信を失っているお子さまもいらっしゃるため、塾や家庭教師の授業で学校の予習をし、「授業を理解できている自分」を自覚させてあげることで自信アップにつなげることができます。

さらに、お子さまが自分の成長を自覚できるようにすることも、自信を付けるためには重要です。「前よりも解ける問題が増えているよ。例えばこの問題、前は解けなかったよね」といったように、お子さまがどれだけ成長しているかを示してあげることで、「自分も成長しているんだ」「頑張れば成果ができるんだ」と感じることができ、自信が回復し勉強に前向きになれることがあります。

ですので、もし個別指導の塾や家庭教師を利用している場合は、「まずは自信をつけさせたい」と伝え、お子さまに合った難易度の小テストなどを用意してもらったり、学校の授業の予習を中心とした内容にしてもらったりするのがおすすめです。

要因③:勉強以外に興味を惹かれるものがある

ゲームや動画など、ほかに気になるものがある場合も勉強に集中できません。

この場合は、「宿題が終わったらゲームや動画視聴をして良い」と条件を付けたり、「ゲームで次のボスを倒したら勉強する」など区切りを付けることが効果的です。ルールが曖昧だと「守らなくてもいいや」と思ってしまうので、最初から厳密に運用するようにしましょう。

ただし、いきなりルールを作るとお子さまが抵抗を感じてしまうこともあります。ですので、ルールを作る際には必ずお子さまと保護者さまとで事前にしっかりと話し合うことが大切です。

またその際、「なぜルールが必要なのか」「ルールが無いとどうなるのか」といった大人側の考え方を伝えるだけでなく、「ルールを守ることでテストの点が上がる」「宿題を気にしながらゲームするより、先に宿題をしてしまった方が思い切りゲームを楽しめる」など、お子さまにとってのメリットも併せて伝えると良いでしょう。

あるいは、「ルールが無くてもちゃんとできる」とお子さまが主張して話が平行線になってしまうような場合には、「1度はあなたの言葉を信じるけれど、2度守れなかったらこのルールにするよ」などと条件を付けることで、お子さまがルールを受け入れやすくなるよう工夫することも大切です。

ルールが守れず、どうしてもダラダラとゲームや動画を続けてしまうようなお子さまの場合は、ご飯やお風呂の時間など、生活の中で必然的かつ物理的に集中が途切れるタイミングで区切りを付け、「ご飯/お風呂の後は必ず机に向かう」というルーティンを作るのも良いでしょう。

また、お子さまの言い分を頭ごなしに否定するのではなく、なぜルールが必要なのか、ルールがしんどいと感じる理由は何なのかについて、しっかりと話し合うことが大切です。「ゲーム(動画)をやめなさい」という言葉を繰り返すだけでは、お子さまもそのうち慣れて聞き流すようになってしまいます。

加えて、声を掛けるタイミングも大切です。例えば、お子さまがゲームに夢中になっているときに声を掛けると、たとえ「わかった」と返事が返ってきたとしても反射的に返事をしているだけで意図は伝わっていない(=聞こえてはいるが頭に入っていない)状態になってしまいます。何かしながらではなくお互いにきちんと向き合い、お子さまが保護者さまの言葉を聞ける態勢になれるタイミングを見計らって声を掛けるようにしましょう。

伝え方についても、柔らかく交渉するように話した方が良いのか、それとも真剣に厳しい口調で話した方が良いのかなど、お子さまの性質や保護者さまとの関係を踏まえて工夫していくことが大切です。(関連項目→88.ゲームやスマホばかりしている

要因④:集中しづらい環境にある

テレビがつけっぱなしになっていたり、視界の端にゲームやスマホが目に入ったりする状態では、そちらに意識がいってしまい集中しづらくなります。

勉強している間はゲーム機やスマホを別の部屋に置くなどして、勉強だけに集中しやすい環境を整えましょう。兄弟姉妹などがいて家の中が賑やかな場合は、学校や塾の自習室を活用するのがおすすめです。

★もっと詳しく知りたい方にオススメの記事→【受験のプロの技、全公開】すぐに使える、効率的な勉強法13選 | 発達障害・ギフテッド専門のプロ家庭教師 メガジュン (pro-megajun.com)

要因⑤:発達障害(ADHD・ASD・LD)の特性がある

発達障害の特性がある場合、要因①~③がより顕著に表れやすくなります。

ADHDの方の場合は自制が利きづらく、ついついゲームに手を伸ばしてしまうなどがありますし、ASDの場合は細かなことが気になって勉強に集中できないことがあります。また、LDの場合は読んだり書いたり、計算したりすること自体に非常にエネルギーを使うため、脳が疲れやすく集中しづらくなることもあります。

いずれの場合も、①~③の要因をできるだけ取り除き、少しでも集中しやすいよう環境を整えることが大切です。(関連項目→39.勉強に集中できないのは、発達障害(ADHD・ASD・LD)のせい?

★もっと詳しく知りたい方にオススメの記事→発達障害をお持ちのお子さんへのおすすめ勉強法/教え方と勉強環境とは? | 発達障害・ギフテッド専門のプロ家庭教師 メガジュン (pro-megajun.com)

要因⑥:体力が無い、睡眠不足である

集中力を保つためには体力が必要です。しっかり頭を使った後に、ぼーっとして身体もしんどくなったことがある方は多いと思います。脳を使うとたくさんのエネルギーを消費するため、適度に運動して体力を付けることも集中力を保つためにはとても重要です。

小学生のお子さまの場合は、身体が未発達であり体力も未熟です。そのため長い時間机に向かっているだけで疲れてしまったり、そもそも勉強に集中するための体力が身に付いていなかったりします。

このような場合は、勉強に取り組ませるのと同時に体力を付けることも意識し、外遊びやジョギングなどの軽い運動にも取り組むと良いでしょう。

私がこれまで指導してきたお子さまの中にも、体力を付けることで学力が大きく伸びたお子さまがたくさんいらっしゃいました。一部の進学校では「文武両道」を掲げて長距離走や遠泳に取り組んでいる場合がありますが、学力の向上の土台として体力を身に付けることは非常に重要であると言えます。

また、中学生・高校生のお子さまの場合は一定の体力が身に付いてきますが、一方で部活動などによって体力の消耗も激しくなります。遅くまで部活をした後にさらに塾に行き、家に帰るのは20時を過ぎていて、ご飯を食べてお風呂に入ったら気絶するように眠ってしまうというお子さまも多いのではないでしょうか。

このような場合に家でも勉強をさせるとなると、睡眠時間を削るしかありません。ですが、睡眠を削ると翌日の集中力が格段に落ちてしまい、結果として勉強の効率が大幅に悪くなってしまいます。

また、昼間に体力をたくさん消耗しているにも関わらず、睡眠による十分な回復ができないと怪我や病気のリスクも上がってしまいます。

部活動を頑張っておられるお子さまの場合は、睡眠時間を削るような勉強の仕方は避け、しっかりと睡眠を取って脳と身体のエネルギーを回復させることを優先しましょう。

これまで私が指導してきたお子さまの中にも、しっかりと睡眠を取ることで集中力が大幅にアップした方がたくさんいらっしゃいます。こうしたお子さまの場合は、元々の集中力が低いわけではなく、睡眠不足ゆえに集中力が落ちていたということになります。

睡眠不足は集中力を大幅に低下させるため、勉強においては大きなデメリットをもたらします。ですので、平日に机に向かうのが難しい場合は、通学時などのスキマ時間に参考書や単語帳に目を通すなどし、土日にしっかりと机に向かうといった形でメリハリを付けて勉強するのがおすすめです。(関連項目→85.朝起きられない、生活リズムが不規則である)

<プロ家庭教師メガジュンでの解決例#1:英語への苦手意識が強く、集中が続かないAさん>

中学生のAさんは、英語の定期テストの点が少しずつ下がってきていました。中1の頃は少しだけ勉強すれば80点程度は取れていたのに、今では平均点を下回っています。テスト勉強はしていますが、苦手意識が強いためか英語はいつも後回しにしてしまい、集中力も続かず別のことをしてしまうという状況が続いていました。

そこで私は、Aさんの好きなものを保護者さまや本人から聞き取ることにしました。AさんはK-POPアイドルが好きとのことでしたので、彼らの英語の曲の歌詞をプリントアウトし、次のテスト範囲で出てくる単語や文法に蛍光ペンで線を引いてAさんに見てもらいました。

「この歌詞ってこの単語だったんですね!もしかして、この『’d』って過去分詞…?」というように、Aさんにとって身近なアイドルの曲も学校の英語の勉強と関連していることを感じてもらいました。また、次の授業までにその曲の歌詞の中で授業の内容と関連している箇所を覚えてくるように言い、穴埋めテストをすることを予告しました。

いつも英語を後回しにするAさんでしたが、この時は率先して英語の勉強をしていたと保護者さまから伺いました。予告どおり穴埋めテストをしたところ、Aさんは見事に全問正解することができました。以降、Aさんは英語に対する苦手意識が和らぎ、また、日頃から好きな曲の歌詞に出てくる単語や文法に注目する習慣も付けることができました。

このケースでは1. 要因①:勉強に興味ややる気が持てないに着目し、英語に対する心理的なハードルを下げるために、Aさんの好きなアイドルの曲の歌詞の穴埋め問題というスモールステップから始めることで、集中力や意欲に対する問題を解決することができました。

2. 勉強が長続きしない

要因①:勉強の目的や意味を理解できていない

勉強が長続きしない理由の一つに、「『なぜ勉強しなければならないか』という目的や意味を理解できていない」ということがあります。「第一志望に合格するため」と頭では理解していても、入学してからやりたいことや将来就きたい職業などが具体的に描けていないとモチベーションが上がりづらく、勉強が長続きしません。

このような場合には、具体的な目標を立てることのほか、勉強の意義そのものについてしっかりと話し合うことも大切です。目標に向かってコツコツと頑張ることや、勉強のやり方を身に着けること(課題を見つけ改善する、分からないことの調べ方や聞き方を知るなど)は大人になってからも役に立つスキルであることを伝えると良いでしょう。

また、勉強の意義を伝えるだけでなく、お子さま自身に「勉強することには意味がある」という実感を持ってもらうことも非常に大切です。目の前で取り組まなければならない宿題の内容と、志望校に合格することが上手く結びついていないお子さまも多いです。コツコツと日々の勉強に取り組むことが、目標の達成(=志望校への合格)につながることをお子さまに理解してもらうためには、長期的な勉強の計画について納得感のある形で示す必要があります。

例えば、志望校の過去問をお子さまと講師が一緒に分析し、どの教科のどの分野で何点取れば良いのかを具体的に調べていきます。目標点数が分かれば、「あと何点伸ばせば良い」ということが分かり、目の前の勉強の必要性もぐっと納得感のあるものになります。そこからさらに、一日に必要な勉強量も逆算できるため、お子さまが「この勉強は志望校合格のために必要なのだ」と理解した上で勉強に取り組めるようになります。

またこの際、全てを網羅的に学習するのではなく、志望校への合格において優先度が低いものについては「そこまで力を入れなくても良い」などとメリハリを付けることで、さらに納得感が増し、前向きに勉強に取り組むことができるようになります。

★もっと詳しく知りたい方にオススメの記事→勉強する意味・目的って?大人は何と答えるべきか、プロ家庭教師が教えます! | 発達障害・ギフテッド専門のプロ家庭教師 メガジュン (pro-megajun.com)

要因②:勉強の成果や自分の成長が実感できていない

勉強の成果が実感できないと、「勉強が楽しくない」と感じて長続きしません。できていない部分を指摘するのではなく、できていることをしっかりと褒め、「自分でもできる」「勉強すれば成果が上がる」という実感を持ってもらうことが大切です。

そのためには、大きな成果を求めるのではなくスモールステップを意識し、昨日は解けなかった問題が解けるようになったり、以前より少しでも学校の授業が理解できるようになったりといった小さな成長の実感を積み重ねていきましょう。周りが褒めるだけでなく、お子さまが自分で自分の成長を発見し、自己肯定感を身に着けていくことが大切です。

自分に自信が無く、成果や成長を実感しにくいタイプのお子さまの場合は、点数の伸びをグラフで表してみたり、「1年前の自分と比べたら、解ける問題はすごく増えているんだよ」などの声掛けをしたりすることによって、お子さま自身が成長しているということを教えてあげると良いでしょう。

要因③:問題の難易度が不適切

実力以上に難易度の高い問題を解こうとすると、なかなか解けず「もう無理!」となって勉強が嫌になってしまいます。お子さまにとって程よい難易度の問題を解いていくことで、自分にも解けるのだという自信を持ち、前向きに勉強を続けることができるようになります。

特に家庭学習はお子さま一人だけで解かなくてはならないため、難易度の高い問題だと気持ちが折れてしまいやすくなります。ご家庭では学校や塾で習った問題の反復演習を中心に取り組み、難易度の高い問題は1~2問程度にしておくか、分からなければ無理に解こうとせず印を付けておき、「あとで先生に聞けばOK」などのルールを設けると良いでしょう。

また、丁寧な塾や家庭教師であれば、家庭学習のフォローアップをしてくれるところもあります。日々の勉強の内容を報告し、それに対して「よく頑張りましたね」「○○の問題は今の時点で解けなくても大丈夫ですよ」などのコメントがあれば、お子さまも前向きに自信を持って勉強を続けていくことができます。

私たちプロ家庭教師メガジュンでは、こうした学習のフォローについても丁寧に対応していますので、ご関心のある方は是非お問合せいただければと思います。(参考:学習フォローサービス | 発達障害・ギフテッド専門のプロ家庭教師 メガジュン (pro-megajun.com)

要因④:勉強に対するやる気が出ない

勉強が長続きしない理由が「やる気が出ない」というものである場合は、要因①:勉強の目的が持てていないで解説したように目的を持って勉強に取り組む方法のほか、興味のあるものに関連付けながら勉強することも効果的です。漫画やアニメ、ゲームの中には教科学習と関連した要素(漢字、文法、英単語、歴史上の人物、化学反応など)がたくさんありますので、お子さまがハマっているものの中に勉強のきっかけになるものが無いか探してみると良いでしょう。

★もっと詳しく知りたい方にオススメの記事→【受験のプロの技、全公開】すぐに使える、効率的な勉強法13選 | 発達障害・ギフテッド専門のプロ家庭教師 メガジュン (pro-megajun.com)

★オススメの実例コラム→<プロ家庭教師メガジュンでの解決例#1:英語への苦手意識が強く、集中が続かないAさん>

要因⑤:体力が無い、睡眠不足である

勉強を長続きさせるためには、体力も必要です。体力が無いと勉強に集中できず、やる気も湧いてきません。食事・運動・睡眠といった生活の基本が整っていることは、学習習慣を身に付けるための前提条件ですので、生活習慣や運動習慣についても丁寧に見直していきましょう。

小学生のお子さまの場合は、まだまだ身体も成長途上のため、基礎的な体力も未熟な状態にあります。運動不足が続くとたちまち体力も衰えてしまいますので、意識的に外遊びを取り入れ、勉強を続けられる基礎体力を身に付けるようにしましょう。

中学生や高校生のお子さまの場合は、勉強や塾で忙しく、睡眠時間が不足することで体力が回復できていないケースがよく見られます。睡眠不足だと集中力もかなり落ちてしまいますので、しっかりと睡眠を取ることを意識しましょう。

「家に帰ったらすぐに寝てしまう」というご相談もよくお伺いしますが、それだけ昼間の部活や勉強で消耗しているということですので、無理に睡眠を削って勉強するのはおすすめできません。

平日に勉強するのが難しいようであれば、土日やテスト期間にしっかりと勉強するなどしてスケジュールにメリハリを付けると良いでしょう。また、電車やバス通学の場合は、移動中に単語帳や参考書を読むようにするなど、スキマ時間を活用するのもオススメです。(関連項目→1. 要因⑥:体力が無い、睡眠不足である85.朝起きられない、生活リズムが不規則である)

<プロ家庭教師メガジュンでの解決例#2:学習習慣が身に付かず、志望校に受からない可能性が出てきたBさん>

Bさんは自宅での学習習慣が身に付いておらず、保護者さまが「勉強しなさい」と言っても、「塾で勉強している」「部活で疲れている」と言ってなかなか机に向かおうとしません。学校の成績やテストの点が徐々に下がってきており、当初の志望校からランクを下げなければいけないかも…と保護者さまは心配されていました。

メガジュンの講師がBさんの問題の解き方や特性を観察したところ、今の勉強量にプラスして2時間程度の自宅学習の習慣が付けられれば、当初の志望校には十分合格できると思われました。

そこで講師は、Bさんが本当に今の志望校に合格したいと心の底から思えているかを確認することにしました。ですが、会って間もない講師に対してBさんがすぐに本心を話してくれるわけではありません。そこで講師は、まずはBさんとの関係づくりから始めることにしました。

授業の初めや休憩時間の雑談で、他愛無い話からそれとなく将来の夢や、クラスメイトがどれくらい受験モードになっているか(思春期の子どもたちにとって、周りがどんな雰囲気かは非常に重要です)、高校に入ってやりたいことはあるかなどを聞き取りました。併せて、講師自身の学生時代のエピソードとして、「頑張らなければいけないときに頑張ることができたから、今の自分がある」という話や、志望校のランクを下げなかったからこそ恩師や仲間にも出会えたというお話をしました。

Bさんと講師の間に信頼関係が築けた段階で、改めてBさんに「今の志望校に心から行きたいと思いますか?このままの勉強量では、正直なところ、志望校に合格するのは難しいです」とはっきりとお伝えしました。「勉強量が増やせないのであれば、志望校を変えることも選択肢の一つになります。最終的には、Bさん自身がこれから頑張るかどうか、第一志望に行きたいと思うかどうかです。Bさんの人生なので、Bさんが決めることが大切です。Bさん、これからどうしますか?」

これらの言葉は、Bさんの内面に強く踏み込むものであり、Bさんにとっては耳の痛い言葉であるはずです。こうした厳しい言葉を掛ける際には、あくまでお子さまの意識や行動に問題があるということを伝え、お子さまの人格を否定するような言葉にならないよう気を付ける必要があります。

また、最後には必ず「どうしますか?どうしたいですか?」という形でお子さま自身の意思を確認し、こちらの考えを一方的に押し付けないようにすることも大切です。さらに、こうした言葉は非常に厳しいものであるが故に、せっかく築いた関係性が壊れてしまう可能性もあります。張り詰めた雰囲気を引きずることなく、勉強の内容や休憩時間の雑談の際には普段通りの表情とトーンで話すなどし、これまで通りの関係性を保てるよう工夫する必要があります。

Bさんはその場で「頑張りたいと思っています」と答えてくれたため、そのつもりでこちらも全力でサポートするから応えてほしいとお伝えしました。その日以降、Bさんの勉強に対する姿勢は大きく変わり、保護者さまに言われずとも机に向かうようになり、授業にもより真剣に参加するようになりました。

大人が一方的に「勉強しなさい」というだけでは、お子さまに勉強の大切さを伝えることはできません。しっかりとお子さまと信頼関係を築き、「この人の言葉なら信じられる」と思ってもらえることが重要です。

プロ家庭教師メガジュンでは、このように『信頼関係』を土台とした指導を行っています。お子さまと講師の信頼関係の築き方や方針については、こちらの記事(不登校・発達障害指導で大切な、「教える側の人間性と信念」 | 発達障害・ギフテッド専門のプロ家庭教師 メガジュン (pro-megajun.com))も併せてぜひご覧ください。

3. 話を聞いていない、同じことを何度も繰り返して言っているのに聞かない

話を聞いていなかったり、同じことを何度も繰り返し言っているのに伝わらなかったりするお子さまがいらっしゃいます。原因としては、

・集中するのが苦手な性質を持っている(=ADHD(注意欠如・多動症))
・耳で聞いた情報を処理するのが苦手な性質を持っている
・ゲームやスマホなど、他のものに気を取られている
・同じことを言われ過ぎて聞き流すようになっている


といったものが挙げられます。
こうしたお子さまにおいては、

①集中しやすいように環境を整える
②イラストなどを使って視覚的に伝達する
③本人が聞く態勢になったのを確認してから話す
④伝え方に変化をつける


などの工夫によって、「話を聞かない/聞けない」という困りごとを改善していくことができます。それぞれの方法について、以下で具体的に解説していきます。

①集中しやすいように環境を整える

お子さまの中には、「集中しづらい」という性質を生まれつき持っている方がいます。ADHD(注意欠如・多動症)の不注意特性がこれに該当しますが、ADHDの確定診断には至らないグレーゾーンや定型発達のお子さまの中にも、「集中するのがそもそも苦手」という性質を持った方はいらっしゃいます。

このように「集中しづらい」という性質を持っているお子さまの場合は、集中しやすいように環境を整えてあげることが大切です。
例えば、

・テレビがつけっぱなしになっている
・手遊びできるもの(紙切れ、消しゴム、鉛筆・ペンなど)が手に届く範囲にある
・外出中などで、周りがザワザワしている


などの状況では集中することが難しくなります。

こうした状況では、保護者さまの話よりも、周りの音や視覚的な刺激、「手遊びしたい」という誘惑に気を取られてしまい、話半分で聞いてしまうことが多くなってしまいます。

ですので、お子さまにしっかりと話を聞いてほしいときには、こうした不要な刺激を取り除いてあげる必要があります。具体的には、

・テレビを消す
・机の上を片付ける
・大事な話については、普段と違う場所でする(ダイニングからリビングのテーブルに移動する、子ども部屋のベッドに座りながら話をする 等)
・フードコートや売り場の中ではなく、トイレの前や休憩スペースなど静かな場所に移動してから話す


などの方法が挙げられます。また、いつもと場所を変えて話すことで「大事な話なのだ」とお子さまが気付くことができ、より話が頭に入りやすくなるという効果も期待できます。

生まれつき集中しづらい性質を持っているお子さまに対して、「ちゃんと話を聞いて」と口頭で注意するだけではなかなか改善が難しく、お子さまも心の中ではちゃんと話を聞こうと思っているものの、どうしても他のことに気を取られてしまっているというケースも多くなっています。

そのため、お子さまに話をするとき、特に大事な話をするときには「集中しやすい環境を整える」ということをぜひ意識していただければと思います。

②イラストなどを使って視覚的に訴える

人にはそれぞれ、処理しやすい感覚があります。例えば、目で見た情報を処理するのが得意な人もいれば、耳で聞いた情報を処理するのが得意な人、言葉や文字の情報を処理するのが得意な人などがおり、その人が得意とする感覚のことを「優位感覚」と呼びます。

また、視覚情報の処理が得意なことを「視覚優位」、聴覚情報の処理が得意なことを「聴覚優位」と呼ぶことがあり、発達障害の方は目で見た情報を処理することが得意な「視覚優位」である場合が多いとされています。(ただし例外も多く、発達障害であっても視覚以外の感覚が優位である場合もあるため、お子さまの優位感覚については十分に見極める必要があります)

「話が聞けない/聞かない」という困りごとを持っているお子さまの場合は、耳で聞いた情報を処理するのが苦手であることが多く、視覚的な情報を処理するのが得意であるケースが多くなっています。そのため、口頭で指示する(=聴覚によって情報を伝達する)ことに加え、イラストなどで指示を出す(=視覚によって情報を伝達する)ことで、話の内容が伝わりやすくなる場合があります。

例えば、

・洗面所に「歯を磨きます→顔を洗います→水が跳ねてしまったら最後に拭きます」という指示をイラストで表した紙を貼っておく
・玄関に「忘れ物チェック:筆箱・給食袋・水筒」とイラスト付きのチェック表を貼っておく
・学習机のデスクマットに「国語30分・算数45分・理科20分」と自習の時間割を書いたグラフを挟んでおく


などの方法が挙げられます。

ご家庭でいろいろなイラストを用意するのは負担も大きいため、既存の絵カードなどを活用するのもオススメです。インターネットで「発達障害 絵カード(イラストカード)」などと検索すると、市販品から無料でダウンロードして使えるものまで様々なものが見つけられますので、お子さまの性質に合ったものを見つけていただければと思います。

また、絵カードによる伝え方の工夫は発達障害のお子さまだけではなく、耳で聞いた言葉や情報を処理するのが苦手な方に広く活用できるものですので、発達障害の診断を受けていない方も含めて積極的に活用していただければと思います。

③本人が聞く態勢になったのを確認してから話す

話を聞かないお子さまや、同じことを繰り返し伝えているはずなのになかなか伝わらないお子さまの場合は、「お子さまがちゃんと聞く態勢になっているか」を確認することが非常に需要なポイントとなります。

例えば、ゲームをしながらであったり、お子さまが他のことに気を取られていたりするなど、お子さまが「聞く態勢」になっていないまま話をしてしまうと、話の内容はなかなかお子さまに伝わりません。「わかった」と返事は返ってくるかもしれませんが、反射的に返事をしているだけであり、話の内容を本当に理解した上で「わかった」と言っているのではない場合がほとんどです。いわゆる「耳では聞いているけれど、頭には入っていない状態」であると理解すると良いでしょう。

こうしたお子さまに、話の内容をしっかりと頭に入れて理解してもらうためには、お子さまにきちんと「聞く態勢」になってもらう必要があります。具体的には、

①ゲームやスマホなど“~しながら”の状態で話をしない
②保護者さまとお子さまの目が合っている状態で話す
③静かで落ち着いた環境で話す


などが挙げられます。

まず、「①ゲームやスマホなど“~しながら”の状態で話をしない」については、ゲームをしながら、スマホを見ながらといった状態では、ゲームやスマホに気を取られて話の内容に集中できません。なので、お子さまがゲームやスマホから目を離すようなタイミング(トイレやお風呂、食事の前など)を見計らって話すのがポイントとなります。

話を聞いてほしいタイミングでゲームやスマホをやめさせる(例:「話があるからゲームをやめなさい」と言う)方法もありますが、この場合は保護者さまに言われてゲーム・スマホを中断しているため、「早くゲームをしたい」「LINEの返信をしなきゃ」ということで頭がいっぱいになって話に集中できないことがあります。

ですので、ゲームやスマホを中断させて話をするのではなく、お子さまが自然とゲームやスマホから離れるタイミングを見計らって話す方がより伝わりやすくなります。

「②保護者さまとお子さまの目が合っている状態で話す」については、例えば、スマホを見ているお子さまに対して、背中越しに「宿題をしなさい」と声を掛けているようなケースです。この場合、お子さまはスマホに夢中になっていて、保護者さまの話の内容にはほとんど注意が向いていません。

ですので、お子さまに声を掛けるときには「○○ちゃん/○○くん」と最初に名前を呼び、お子さまがこちらに顔を向けてから必要なことを伝えるなど、まずは保護者さまの方に注意を向けさせてから話すと伝わりやすくなります。

また、お子さまの視界の中に保護者さまが入ることもポイントです。名前を呼びかけても振り向かない(顔をこちらに向けない)お子さまの場合は、本人の目の前に保護者さまが移動し、お子さまの視界に入るようにしましょう。

注意力の低いお子さまは、聴覚だけ(声だけ)で情報を与えられても上手く処理できないことがありますが、視界に入って話すことで情報が「聴覚+視覚」となり、より伝わりやすくなる場合があります。

お子さまの中には、声だけの情報だと処理しづらいという特性を持っている方もいるため、お子さまの性質に合わせて工夫していただければと思います。(関連項目→3. ②イラストなどを使って視覚的に訴える

お子さまに聞く態勢になってもらうためには、「③静かで落ち着いた環境で話す」ことも重要です。ザワザワした環境だと話に集中しづらいだけでなく、「そんなに重要な話ではないのかな?」とお子さまが受け取ってしまう可能性もあります。

私たち大人の間でも、大切な話をするときには静かな場所に移動し、改まった雰囲気を敢えて作ることがありますが、お子さまに対しても同様に「この話は重要そうだ」とお子さまが感じられるような雰囲気を作ってあげることがポイントになります。

ですので、テレビやスマホの動画、音楽などが流しっぱなしになっている場合は一旦切り、外の物音が気になるときは窓やカーテンを閉めるなどして、静かな環境を用意しましょう。静かな環境を整えることで、お子さまが自然と聞く態勢になり、保護者さまの言葉に耳を傾けてくれることも多くなっています。

④伝え方に変化をつける

お子さまに繰り返し話をしても伝わらない理由の一つに、「同じことを言われ続けているために慣れてしまい、聞き流すようになっている」というものがあります。

例えば、「宿題をしなさい」という言葉を、いつも同じタイミング・声色・トーンで言い続けていると、お子さまは「いつものことだ」と捉えて、その指示をさほど重要だと思わなくなり、聞き流してしまうようになります。

このような場合においては、伝え方に変化を付け、「いつもと違う…なんだろう?」とお子さまが感じ、保護者さまの言葉に注意が向くように工夫する必要があります。

例えば、「宿題をしなさい」という言葉をいつも厳しめのトーンで伝えている場合は、

・「先に宿題をしようよ」と優しめのトーンで伝える
・「今日の宿題は何?」と問いかけの形にする
・「ゲームはあとどれくらいで終わりそう?」など視点を変えた声掛けをする


といった変化を付けてみるなどの方法があります。

「厳しく言わないと伝わらない」と考えている保護者さまもいらっしゃいますが、厳しく言われることが当たり前になっていると、お子さまが厳しく言われることに慣れてしまったり、厳しく言われるが故にお子さまが反抗してしまったりしているケースもよく見られます。

ですので、敢えて「優しいトーンで伝える」「本人の気持ちを聞く」といったアプローチを取り入れ、指示に緩急を付けることが、お子さまに指示を聞いてもらうためには非常に効果的となりますので、ぜひご家庭でも実践していただければと思います。

4. ケアレスミスが多い

要因①:思い込みで問題を解いている

ケアレスミスの最も大きな要因は「思い込み」です。問題の細部を読み込まずに解いてしまっているために、「当てはまらないものを選べ」という問題で当てはまるものを選んでしまったり、文字や数字を見間違えたり、あるいは問題文の意味を大幅に捉え損ねたりして解答を誤ってしまいます。

思い込みで問題を解いてしまうお子さまには2つのパターンがあり、1つは性格的にせっかちでパッと見た印象で「こういう問題に違いない」と早とちりしてしまうケースと、もう一つは読解力が低いために「多分こういうことだろう」と曖昧なまま解き進めてしまうケースです。

前者のケースにおいては、何よりもまず落ち着いて問題を解くことが大切です。限られた試験時間の中で焦ってしまうこともありますが、早とちりによるミスが多い人は制限時間の有無にかかわらず「早く答えなきゃ!」と焦っているケースがほとんどです。

まずは落ち着いて問題文を見るようにし、問題文を指でなぞりながら読んだり、声に出しながら読んだりするなどすれば、「解答欄に飛びつかない」「まずは考える」という癖を付けることができます。特に発達障害のある方は、こうした思い込みに陥りやすい傾向がありますので、自分の特性を理解し、丁寧に対策していくことが大切です。

後者の「読解力が低く、『多分こういうことだろう』」と曖昧なまま解き進めてしまうお子さまの場合は、読解力を底上げしていく必要があります(厳密にはケアレスミスとも言い難いケースになります)。問題文をちゃんと理解できているか確認するために、例えば問題文を自分の言葉で口に出して説明してみたり、図で表してみたりする練習に取り組みましょう。

理解が曖昧なまま解き進めることが癖になってしまっていることも多いため、癖になってしまっている場合は「自分の言葉で説明する」「図に落とし込む」という練習を根気よく続けていくことが大切です。

★もっと詳しく知りたい方にオススメの記事→【受験のプロ監修】ADHD注意欠如多動性のケアレスミス対策7選 | 発達障害・ギフテッド専門のプロ家庭教師 メガジュン (pro-megajun.com)

要因②:見直しができていない

ケアレスミスの対策として、「見直しをしましょう」ということがよく言われます。ですが、ケアレスミスの最も大きな原因は4. 要因①:思い込みで問題を解いているで解説したとおり“思い込み”ですので、「これが正しい!」と思い込んだ状態でいくら見直しをしても間違いに気付けないケースがほとんどです。

ケアレスミスの対策として見直しをする場合は、自分がどんなケアレスミスをしやすいのかを分析し、ミスしやすい箇所を重点的に見直すようにしましょう。

例えば、「当てはまるものを選べ」で当てはまるものを選んでしまうことが多い人は、そうした出題形式の問題を重点的に見直すようにします。単位の記入漏れが多い人は、問題を解き始める前に、計算用紙の最初に「単位を付ける!」とメモ書きしておけば、見直しするときに意識しやすいでしょう。計算式や解答を転記する際に間違えることが多い場合は、重要な数字や単語に○を付けたり、問題用紙と解答用紙をできるだけ近づけて、見比べやすい(転記しやすい)ように工夫するのも良いでしょう。

ケアレスミスの対策においては、ミスの傾向を知ることが大きなポイントになりますので、意識して取り組んでいただければと思います。

★もっと詳しく知りたい方にオススメの記事→【受験のプロ監修】ADHD注意欠如多動性のケアレスミス対策7選 | 発達障害・ギフテッド専門のプロ家庭教師 メガジュン (pro-megajun.com)

要因③:字を雑に書いている

ケアレスミスの要因として「思い込み」の次に多いのが、「字が雑」であることです。数字の0と6や1と7、アルファベットのqと数字の9などを計算式の途中で見間違えて、そのまま解答を誤ってしまうケースです。

お手本のようなきれいな字を書く必要はありませんが、途中式であっても丁寧に書くことを心掛け、特に見間違えやすい字については意識して書きましょう。

字を丁寧に書くだけで、多ければ10点ほど点数が上がります。字を書くのがそもそも面倒臭いと感じる人も多いかもしれませんが、それだけで点数が上がるのであれば安いものだと考え、しっかりと対策していきましょう。

要因④:実はケアレスミスではない

ケアレスミスの中で意外に多いのが、「実はケアレスミスではない」というものです。

例えば、「(語彙の意味を知らないことから間違いが生じた場面で)『玉石』という言葉は、玉(宝石)のように優れたものと石ころのようにつまらないものという意味で、『玉のような宝石』という意味ではないよ」と指摘した際に、「なんだ、そういうことか!“うっかり”間違えちゃった」とお子さまが発言することがあります。さて、このケースにおける間違いは、お子さまが言うように“うっかりミス”なのでしょうか…?

多くの方がお考えのとおり、これはうっかりミスではなく、知識の不足による間違いであり、ケアレスミスとは言えません。数学でも同様に、「円周角の定理を使うことを思いつかなかった」ことに対して、「“たまたま”思いつかなかったから間違えた」とお子さまが言ったとしても、それはケアレスミスではなく知識の引き出しが足りない、あるいは練習が足りないことによるシンプルな実力不足ということになります。

間違いを指摘されたお子さまが「ついうっかり…」と発言してしまうのは、知識や練習量の不足を指摘されるよりも、たまたま間違えたことにした方が心のダメージが少ないためです。ですが、実力不足ではなくケアレスミスのせいだと思っている限りは、今の自分に不足している力が何であるかが自覚できないため、これから伸ばしていくこともできません。ケアレスミスではなく、根本的な学力の問題であることを認識し、真っすぐに問題に向き合う必要があります。

ケアレスミスを言い訳にしてしまうことが癖になってしまっているお子さまに対しては、「それはうっかりミスじゃなくて、知識(練習)が足りなかったからだと思うよ」と伝え、「語彙を増やすために○○の単語帳を頑張ろう」「図形問題が苦手だね。ちょっと課題の量を増やしてみよう」など具体的な改善策を提案してあげると良いでしょう。

言い訳を責めるだけではなく、改善策も同時に伝えることがポイントです。「間違えたことが悪いのではなく、改善すること(努力すること)から逃げない」という姿勢をお子さまに身に着けてもらうことが一番の目的ですので、お子さまがミスに対して前向きになれるよう“応援する”“サポートする”という気持ちで声掛けしていただければと思います。

要因⑤:自分の計算力を過信している

自分の計算力に自信があるお子さまほど、暗算でミスをしてしまったり、途中式の見直しをおざなりにしてしまったりすることがあります。暗算しなければ解ききれないほど計算量が多いという場面はそれほどありませんので、基本的には「筆算をする」「途中式を書く」というルールを忠実に守ることが最も効果的です。

ただ、それでも「面倒くさい」「筆算は格好悪い」と言って指示に従わないお子さまもいらっしゃると思います。そういった場合は「それでもいいけど、次のテストでは計算ミスをゼロにしてね」と約束させましょう。プライドのあるお子さまであれば、自然と丁寧に計算をするようになりますし、もし計算ミスをしてしまったら「先生のアドバイス通りにした方が良いと思わない?」と交渉する材料にすることができます。

ただ、これらの指導は講師とお子さまの間でしっかりと関係が構築できている場合にのみ有効です。お子さまと講師(保護者さま)の関係性が揺らいでいると、お子さまは「放っておいて!」と態度を硬直化させてしまうこともあります。

もしお子さまとの関係性がしっかりと築ききれていない場合は、「筆算や見直しをしたら点数が上がると思う。1度やってみない?」と提案型の声掛けを中心に行い、「先生の指示に従ったら点数が伸びた」という実感を持ってもらうことから始めると良いでしょう。「丁寧に計算をする=点数が上がる」という成功体験が得られると、自発的に筆算や見直しができるようになるお子さまも多くいらっしゃいます。

<プロ家庭教師メガジュンでの解決例#3:ケアレスミスが極端に多いCさん>

Cさんは高校生で、二次試験で記述問題のある大学を志望していました。Cさんはケアレスミスで失点することが多く、学校の定期テストでもケアレスミスによって多いときは20点近く失点してしまっていました。保護者さまや塾の先生は口をそろえて「見直しをしなさい」と言っていたそうですが、なかなか改善されず、模試などでも同じようなミスが続いていたそうです。

そこでプロ家庭教師メガジュンの講師は、Cさんのこれまでの定期テストを見せてもらい、ケアレスミスで失点した箇所を全てリストアップすることにしました。リストアップすることでCさんのケアレスミスの傾向を見つけ、問題を解くとき・見直すときに、特に何に気を付ければ良いかをCさんに知ってもらおうと考えたからです。講師がケアレスミスの箇所を調べ上げたところ、Cさんのミスは以下の順に多くなっていました

・問題の指示の読み間違い(「当てはまらないものを選べ」で当てはまるものを選んでいる、「3つ選べ」で1つしか選んでいない 等)
・単位の書き忘れ
・問題の解き忘れ(大問の最後の小問や穴埋め問題の最後の欄が空欄)


そこで講師は、Cさんの最も多いミスである「問題の指示の読み間違い」を減らすために、テストの最初に問題文の文末に下線を引くように指示しました。元々下線が引かれている問題文であっても、さらにその上からCさん自身で線を引いてもらうことで、問題の指示に意識が行くようにしました。

また、単位の書き忘れについても、単位が明らかなものについてはテストの最初に解答欄に記入しておくように指示しました。問題を解き始めると、計算に夢中になってしまって単位のことがすっかり頭から抜けてしまうことが多いため、最初に記入しておくことでそうしたミスを防ごうと考えたからです。

問題の解き忘れについては、見直しの際に、問題を一問ずつ見直す前に解答用紙全体を見渡し、空欄が無いかを確認するように指示しました。

Cさんは、色々なことに気を付けようとするとどれかが抜け落ちてしまう性質(マルチタスクの苦手さ=ADHD的性質)があったため、

①問題文に下線を引く
②単位を先に記入する
③見直しの際は、まず空欄が無いか確認する


というように、タスクを一つずつ切り分けて手順をパターン化する方法を取ることにしました。

「見直し」と一言で言っても、問題文を見直す・検算する・単位をチェックするなど複数のタスクが含まれています。マルチタスクが苦手な方は、こうした複合的な手順になると上手く頭の中が整理できず、検算に夢中になってしまって単位を書き忘れたり、そもそも何をどう見直して良いのか分からず、解答を眺めているだけで実は見直しになっていなかったりするなどのケースがよくあります。

ADHDの特性を持っている方はどうしてもケアレスミスが多くなってしまいますが、Cさんのようにケアレスミスの傾向を分析し、ケアレスミス防止の手順をパターン化することで対策することが可能です。上述の対策を行ったところ、Cさんのテストの点は10~20点ほど上がり、無事に第一志望にも合格することができました。

5. 問題文を最後まで読まない

問題文を最後まできちんと読まずに解答して、答えを間違えてしまうお子さまがいらっしゃいます。原因としては、

・性格がせっかちである
・問題をパッと見て反射的に解くクセが付いてしまっている
・複数の情報を同時に処理するのが苦手で、問題文の最初の情報しか頭に入っていない(視野が狭い/ADHD的な性質)
・さっさと勉強を終わらせたくて、急いでいる


などが挙げられます。これらの原因は重複していることもありますが、いずれの場合も以下の方法によって改善していくことができます。

<改善方法>

①読み飛ばしたことによってミスをしていることを自覚させる
②問題文を声に出して読む/線を引きながら読む/大事なところに丸を付けながら読むなどの工夫をする
③問題文をしっかり読むことで点数が上がったら、「落ち着いて問題文を読んだから点数が上がったね」などと、問題文をしっかり読むことのメリットに気付けるように声掛けをする


それぞれについて、以下で詳しく解説していきます。

①読み飛ばしたことによってミスをしていることを自覚させる

問題文を最後まで落ち着いて読むことができないお子さまは、「問題文を落ち着いて読めていないことがミスにつながっている」という認識を持てていない場合があります。問題を間違えても、「たまたま間違えてしまった」といううっかりミスであると認識しており、「問題文を慌てて読む」という自分の性質が原因となっていることに気付けていないようなケースです。

こうしたケースにおいては、まずは問題文を読み飛ばしてしまっていること、そしてそれによってミスをしてしまっていることをお子さまに自覚させる必要があります。

具体的には、「『赤玉と黒玉が出る確率』を聞かれているのに、『赤玉が出る確率』を答えてしまっているのは、問題文を読み飛ばしたからだよね」と、読み飛ばしによるミスが発生する度にしっかりと指摘していきます。

「自分は読み飛ばしによってミスをしている」という自覚を持つことが、問題文を落ち着いて読めるようにするための第一歩となりますので、まずはしっかりとミスの原因を指摘していきましょう。

②問題文を声に出して読む/線を引きながら読む/大事なところに丸を付けながら読むなどの工夫をする

①でミスの原因が読み飛ばしであることを自覚させることと併せて、読み飛ばしを防ぐ方法についても伝えていきましょう。

例えば、「問題文をきっちりと最後まで声に出して読む」という方法があります。問題文を半分までしか読まずに「あとは大体こういう話だろう」と思い込んで解いてしまうお子さまも多いため、最後まで声に出して読ませることでそうした思い込みや読み飛ばしを防ぐことができます。

また、「声に出せば良いんだろう」と適当に流して読んでしまうお子さまの場合は、読み終わった後に「どういう話だった?」「何を聞かれている?」「条件を要約してみて」など、その問題がどんな問題であったのかを確認するなどして、単に声に出すだけでなく、考えながら読むように誘導していきましょう。

「問題文に線を引きながら読む」という方法も効果的です。線を引きながら読むことで、1行飛ばして読んでしまったり、文章を最後まで読まなかったりといったミスを防ぐことができます。「とにかく線を引けば良いのだろう」と、文章を読まずただ線だけ引いて形式的に終わらせようとするお子さまに対しては、声に出して読ませる場合と同様に、「どんな話だった?」と後から確認するようにして、単に線を引くだけでなく内容を把握しながら読めるように誘導していきましょう。

「大事なところに丸を付けながら読む」という方法もあります。これは、「いつ/誰が/何を/どうした」など、文章の中で特に重要な要素に丸を付けながら読むという方法になります。まずは上述の「声に出して読む」「線を引きながら読む」に取り組み、慣れてきたら大事なところに印を付けながら読むなど、他の方法と併せて取り組むのがおすすめです。

③問題文をしっかり読むことで点数が上がったら、「落ち着いて問題文を読んだから点数が上がったね」などと、問題文をしっかり読むことのメリットに気付けるように声掛けをする

①や②の指導を行うことで読み飛ばしが減り、点数が上がった際には「落ち着いて問題文が読めているね。だからミスが減って点数も上がったね」と声を掛け、問題文を落ち着いて読むことのメリットをお子さまが自覚できるようにアシストしていきましょう。落ち着いて読むことのメリットをお子さまが自覚できるようになると、大人が逐一「声に出して読もう」「大事なところに印を付けて」と指示しなくても、自分なりに工夫しながら問題文を読めるようになっていきます。

問題をパッと見て解くことが癖になっているお子さまや、生まれつきの性質(ADHD)によって視野がどうしても狭くなってしまうお子さまもいるため、すぐに改善するのが難しいケースもありますが、①~③の方法を組み合わせて根気よくサポートすることで改善していきますので、ぜひご家庭でも取り組んでいただければと思います。(関連項目→4. 要因①:思い込みで問題を解いている

6. 勉強を始めるまでに時間が掛かる

解決方法①:簡単な問題や得意な教科から手を付ける

勉強を始めるのに時間が掛かるタイプのお子さまは、軽めの問題や自分の得意な教科から手を付けると良いでしょう。最初の10~20分程度はウォーミングアップと捉え、頭を勉強モードに切り替えるために使います。

長めの長文読解や数学の大問など、いきなり重めの問題を解こうとすると「大変そう、面倒くさい」という気持ちになってなかなか勉強を始めることができません。また、あまり得意ではない教科も、「どうせつまずくから、やりたくないな」と気持ちにブレーキが掛かってしまいます。

人間は一度始めたことはやり続けたくなる習性がありますので、ひとたび勉強を始めさえすれば、しばらくは勉強を続けることができます。その中で、「次は重めの問題/苦手な教科に進もうかな」という勢いも付けられますので、ぜひ試してみていただければと思います。

解決方法②:とにかく教科書や参考書を開く

勉強時間になったら、とにかく教科書や参考書を開いて1ページ読むという習慣を付けるのも良いでしょう。こちらも6. 解決方法①と同様に、一度始めたことを続けたくなる人間の習性を利用したものになります。

教科書を1ページ読み進めると、折角だからもう1ページ読んでみようかな?という気持ちになったり、章末の問題を解いてみようかな?と問題に手を伸ばしてみたくなったりします。また、そうした気分にならず教科書を1ページ読んだだけで終わってしまった場合でも、次の日に「昨日も1ページ読んだし、今日も1ページだけ読んでみよう」という習慣につながることもあります。

ほんの僅かな勉強量であったとしても何もしないよりは断然良いですし、そこから勉強の習慣が作れることもありますので、まずは1ページ読んでみることから始めてみましょう。

解決方法③:一度にやろうとせず、少しだけ先に手を付ける

例えば、明日やらなければならない課題があったときに、その日に全てやってしまうのではなく、前日のうちに少しだけ手を付けておくという方法も効果的です。

一度に全てやらなければいけないと考えると見通しが持ちづらく、なかなか勉強に手を付けようという気持ちになりませんが、前日のうちに少しでもやり始めておけば、「残り4問だけなら頑張れそう」と感じて一度に全部解くよりも気持ちが楽になります。「1問解くのに20分かかったから、明日は1時間くらいで終わらせることができるな」などの見通しを持つこともできるようになるため、勉強への抵抗感を大幅に和らげることができます。

また、6. 解決方法①6. 解決方法②で解説したように、1度始めたことについて人間は継続したくなる習性を持っています。前の日に手を付けておくと、次の日も「昨日もやったし、今日もやるか」という気持ちになりやすく、そういった点においても勉強に対する心理的なハードルを下げることができます。

解決方法④:好きなものを入り口にする

気分が乗らないときは、漫画やアニメ、ゲームやアイドルなど自分の好きなものに関することを入り口にするのもオススメです。例えば、漫画のセリフを英訳してみたり、登場人物の名前の漢字を覚えてみたりするなど、何でも良いので勉強らしいことをしてみましょう。テストの点数に直接はつながらないかもしれませんが、勉強する姿勢を作ることはできますし、手に入れた雑学が意外な場面で役に立つこともあります。

また、そうした勉強を続けていくと、教科書の内容と重なる部分が見えてくることもあります。「この文法はこういう場面で使うのか!」といったことが分かると勉強も楽しくなってきますので、勉強にやる気が出ない人は勉強がどんな場面で役立つのかを知るためにも、こうした方法を取り入れるのがおすすめです。

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解決方法⑤:集中しやすい時間帯を見つける

お子さまによっては、朝一番や寝る前など、特定の時間帯だと集中しやすい場合があります。いわゆる朝型人間/夜型人間といったものになりますが、こうしたバイオリズムに合わせて勉強に取り組むことも非常に効果的です。

以前メガジュンでサポートしたIさんは、夕食後から夜に掛けてはどうしてもダラダラしてしまって勉強に向かえなかったのですが、朝早めに起きて勉強することを提案すると、無理なく机に向かう習慣を付けることができました。Iさん曰く、「自分はてっきり夜型の人間だと思っていたけど、実は朝型で朝活が合っていたみたい!」と仰っており、本人さえも気付かない特性を持っている場合も往々にしてあります。

お子さまに合った生活リズムはどんなものか、試行錯誤しながら見つけていただければと思います。

7. 自分で勉強の計画を立てることができない

お子さまが自分で勉強の計画を立てられない場合、原因としては以下の4つが考えられます。

①計画的に勉強する必要があることは理解できているが、どのように計画を立てればよいかわからない
②計画を立てて勉強すれば成績が上がる(志望校に合格できる)というイメージが持てていない
③目標点や志望校合格などの目標が無い。もしくは、持てていても本気で達成しようと思えていない(何となく目標を決めているだけで、本人の気持ちが伴っていない)
④親や先生など、周りの大人に計画を立ててもらえばいいやと思っている


それぞれの原因に対する解決策について、以下で解説していきます。

①計画的に勉強する必要があることは理解できているが、どのように計画を立てればよいかわからない

「計画的に勉強する必要があることはわかっているけれど、どのように計画を立てればよいかわからない」というお子さまは非常に多くいらっしゃいます。このようなお子さまの場合は、まずは大人がお子さまと一緒に計画を立ててあげ、少しずつ自分で計画が立てられるようにするという方法が効果的です。

以下では、計画の立て方の具体的な手順の一例をご紹介しますので、ご家庭で勉強の計画を立てる際の参考としてもお役立ていただければと思います。

 ①目標点を決める …本人が心から取りたい!と思っている点数を目標にすることが大切です。「何となく」「周りに言われたから」といった理由で目標を立ててしまうと、計画どおりに勉強しようというモチベーションを保ちにくくなるため注意が必要です。

 ②テストを分析する …「目標点に到達するためには、何問完答できれば良いのか」「どんな問題が出題されるのか(授業でやったプリントの問題がそのまま出題される/問題集から出題される 等)」など、テストの傾向を分析していきましょう。

 ③対策を考える …例えば、ケアレスミスが多いお子さまの場合は、これまでのテストの結果を見直し、「ケアレスミスによって何点くらい失点してしまっているか」「どんなケアレスミスが多いか(単位の書き忘れ、問題文の読み間違い 等)」を調べ、「単位の書き忘れを無くすだけで10点取れる」などを具体的に分析していきます。ほかにも、苦手な分野がある場合は「大問2は少なくとも小問(1)までは解けるようにする」など、できるだけ具体的に対策を考えることが大切です。

 ④スケジュールを立てる …③で立てた対策を実行するために、全体でどれくらいの時間が必要かを考え、そこから1日当たりに取り組むべき勉強量を逆算していきます。部活などで忙しいお子さまの場合は、1日に勉強に充てられる時間も少ないため、その分長い期間を掛けて少しずつ計画的に勉強していく必要があります。例えば、学校の定期テストの場合はテスト範囲が発表されるのを待たずに、テストの3~4週間前からコツコツと対策を進めていきましょう。また、アクシデントなどで計画どおり勉強が進められない可能性もあるため、テストの日の1週間前までには勉強が完了できるようなスケジュールが立てられるとより良いでしょう。

②計画を立てて勉強すれば、成績が上がる(志望校に合格できる)というイメージが持てていない

「計画的に勉強をすれば、成績が上がって志望校に合格できる」というイメージが持てていないために、計画を立てて勉強することに対するモチベーションが上がらないというお子さまの場合は、計画を立てることが志望校への合格や成績の向上につながるというイメージが持てるようにサポートしていく必要があります。

計画的に勉強することが志望校への合格や成績の向上につながるというイメージをお子さまが持てない原因としては、

・「計画的な勉強が志望校への合格や成績の向上につながる」という発想がそもそも無い
・「計画的に勉強すれば、自分は志望校に合格できるはずだ」という自信が持てていない
・「計画的に勉強すること」と「志望校への合格」の間のステップが具体的に想像できていない


などが挙げられます。

ですので、お子さまに対しては「計画的に勉強すれば、志望校に合格できるよ(成績が上がるよ)」と声を掛けるだけでなく、実際に計画を立てて勉強してみて、「確かに、この計画どおりに勉強を進めれば成績が上がって志望校に合格できそうだ」と実感してもらうことが大切です。

そのためにはまず、負担が大きすぎず、お子さまが確実に実行できるレベルの計画を立て、お子さまに少しでも良いので計画に沿って勉強してもらいます。そして、小テストなどでその成果を確認し、「計画どおりに勉強することで、成績を上げることができそうだ」という実感をお子さまが持てるようにします。

「負荷の大き過ぎない計画を立てる→計画に沿って勉強する→小テストで成果を実感する」というプロセスを繰り返していくと、お子さまはやがて「計画的に勉強することで成績が上がるのだ」という確かな実感を得ることができるようになります。また、少しずつ成績が上がっていくことで、「このまま計画的に勉強を続ければ、志望校に合格することができる」という道筋も見えてきます。

お子さまが計画を立てて勉強することの効果を実感できず、計画的に勉強することの意義が理解できていない場合には、このように少しでも良いので計画を立てて勉強して、その成果を実感するというプロセスを繰り返すことが大切です。

小さな成果の実感を積み重ねることで、やがてお子さまは計画的に勉強することの意義を理解し、実際に計画を立てて勉強できるようになっていきますので、ぜひ実践していただければと思います。

③目標点や志望校合格などの目標が無い。もしくは、持てていても本気で達成しようと思えていない(何となく目標を決めているだけで、本人の気持ちが伴っていない)

計画的に勉強を進めることができないお子さまの中には、「テストで○点以上取りたい」や「志望校に合格したい」という目標が無かったり、あるいは目標があったとしても、お子さま自身がそれほど強くその目標を達成したいと思えていなかったりするために、計画どおりに勉強するモチベーションが保てていないケースがあります。

このようなケースにおいては、学校見学やオープンキャンパスなどに足を運び、志望校に合格した後のイメージを具体的に持てるようにしてモチベーションを高めていく必要があります。

テストの目標点についても、何となく目標の点数を決めるのではなく、その点数を取ったときの自分の姿、例えば、「先生や保護者さまに認められる自分」「クラスのライバルよりも高い点数を取れた自分」などを想像することでモチベーションを上げることができます。

また、目標設定の際には、お子さまが心から「○点以上取りたい」「○○中学(高校・大学)に行きたい」と思えることが大切です。「保護者さまや先生など、周りの人に言われたから」「友達もその学校を志望しているから」という理由で目標を設定してしまうと、どうしてもモチベーションは上がりづらくなってしまいますので、まずは目標設定の際にお子さま本人の気持ちを丁寧に聞き出し、お子さまの本心に基づいて目標を設定するようにしましょう。

④親や先生など、大人に計画を立ててもらえばいいやと思っている

これまで周りの大人(保護者さまや先生)が勉強の計画を立てていたため、これからも周りの人に計画を立ててもらえば良いと感じているお子さまもいらっしゃいます。

ですが、高校・大学と進学するにつれて、自分で計画を立てて勉強することが求められるようになります。また、大学生にもなれば、勉強だけでなく生活全般のスケジュールを自分で組み立てて日々の生活を送っていくことが当たり前のように求められるようになります。

いつまでも周りの人が助けてくれるわけではないという実感が薄いお子さまに対しては、「いつまでも先生がいるわけじゃないから、自分でできるようになろう」と率直に伝え、自分で計画を立てられるようにサポートしていく必要があります。

これまで計画を立てたことが無いお子さまは、いきなり「自分で計画を立てて」と言われても戸惑ってしまうため、最初は大人が一緒になって計画を立ててあげ、少しずつ自分でも計画が立てられるようにしていきます。

計画の立て方が分からないお子さまに対するサポート方法については「7. ①計画的に勉強する必要があることは理解できているが、どのように計画を立てればよいかわからない」で具体的に解説していますので、併せてご覧いただければと思います。

8. 勉強しなさいと言うと機嫌が悪くなる

「勉強しなさい」と言われて機嫌が悪くなるのは、単純に勉強したくないからというよりは、自分でも勉強しなければならないのは分かっているのに、さらに保護者さまから指摘されることでストレスを感じてしまうのが原因です。

解決方法としては、

①日頃からしっかりとコミュニケーションを取る
②言い方や伝えるタイミングを工夫する
③親以外の大人から伝える
④勉強しなさいと言わず、可能であれば家庭内で「勉強タイム」を作る


などがありますので、以下で詳しく解説していきます。

解決方法①日頃からしっかりとコミュニケーションを取る

直接的に「勉強しなさい」と言うのではなく、「最近どう?部活は忙しい?」など、勉強だけではなくお子さまの存在そのものに関心を持ち、声を掛け、関わることが大切です。声掛けの際には、言葉遣いなど表面的なものに気を遣うこと以上に、お子さまの成長に伴いお子さまへの関わり方自体を柔軟に変えていくことを意識すると良いでしょう。

例えば、日頃からあまりコミュニケーションが取れていない中で「学校はどう?」と聞いても、お子さまは何を話せば良いか分からず、なかなか心を開いてくれません。日頃からしっかりとコミュニケーションを取るとともに、忙しい中でもお子さまの心身を思いやり、「あなたが学校でどんな過ごし方をしているのか、本当に知りたい」という誠実な気持ちで声をかけ、お話ししていくことが大切です。

日頃からコミュニケーションが取れていれば、「そろそろテストだから勉強しなきゃだね」「数学が難しそうだね。塾の時間増やしてみる?」など自然な会話の中で勉強にも触れることができます。

「口を開けば勉強のことばかり」という状態ではお子さまも保護者さまに本音を話しづらくなってしまいますので、勉強以外のことについても日頃からたくさんお話しし、本音を言い合える良い関係を築いていきましょう。

解決方法②言い方や伝えるタイミングを工夫する

例えば、お子さまがゲームに夢中になっているときに「勉強しなさい」と伝えても、耳に入らないか、「今いいところなのに!」と反抗されてしまうことが多いと思います。大人で考えてみても、ドラマを見ていて丁度良いシーンのときに、「○○してよ」「ご飯はまだ?」「洗濯物はどうするの?」と声を掛けられると、ドラマに夢中で気付かないかもしれませんし、もしかしたらイラっとしてしまうかもしれません。

お子さまに勉強してほしい場合に声を掛けるタイミングとしては、お子さまが「何をしようかな?」と考えるような間が空くようなタイミングが最適です。例えばご飯やおやつを食べた後であれば、一息ついて「さて、何をしようかな?」と誰もが考えると思います。ご家庭ごとに一日のスケジュールは異なると思いますが、そういった“一瞬の間”が空くタイミングは探せばきっとあるはずですので、ぜひその“間”を見つけてタイミングよく声を掛けていただければと思います。

また、言い方についても、お子さまそれぞれに合った言い方があります。強く言わないと指示を聞けないお子さまもいれば、敢えて穏やかに話しかけた方が相手の話を聞きやすいタイプのお子さまもいらっしゃいます。強く言わないと伝わらないと思っていた保護者さまが、たまたま穏やかな言い方で「勉強するのも良いと思うよ」と伝えたところ、すんなりと机に向かったので驚いたというエピソードも伺ったことがあります。

もし、いつも同じ伝え方やタイミングになってしまっている場合は、少し言い方やタイミングを変えてみて、お子さまの心に響きやすい伝え方を研究してみるのも良いかもしれません。

解決方法③親以外の大人から伝える

保護者さまから「○○しなさい」と言われると、どんな言い方・タイミングでも反抗してしまうお子さまも中にはいらっしゃいます。親から自立したいという気持ちが芽生える時期、いわゆる反抗期のお子さまによく見られるケースであり、お子さまはお子さまなりに自立しようとしている証拠であるとも言えます。

また、「お母さん/お父さんはどんなにわがままを言っても受け入れてくれる」という甘えの裏返しである場合もあります。このようなお子さまの場合は、ご家庭の外では周りに合わせて一生懸命頑張っているので、お母さん/お父さんには甘えたいという思いが強く出てしまっていると考えられます。

反抗期の場合や、外で頑張っている反動で甘えている場合においては、「○○しなさい」と保護者さまがいくら伝えても上手くいかないケースがほとんどです。こうした場合は、お子さまなりに考えや思いがあるのだなと受け止め、できる限りおおらかに見守ることが最善策と言えます。

お子さまに勉強に向かってほしいときには、保護者さまではなく他の大人から伝えてもらうと良いでしょう。学校や塾の先生、家庭教師など、保護者さま以外の大人が「勉強するべきだよ」と伝えると、すんなりと机に向かえるケースが非常に多くなっています。

ただし、保護者さま以外の大人であれば誰でも良いわけではなく、お子さまが「この人の言うことなら聞きたい(聞いた方が良い)」と思えるような信頼関係や尊敬の気持ちがある人に指示を出してもらうと良いでしょう。

ちなみに、私たちプロ家庭教師メガジュンでも、保護者さまから講師にご連絡をいただき、「勉強するよう伝えてほしい」「○○の約束を守ってほしい」といった内容を保護者さまに代わってお子さまにお伝えする場合があります。これは、お子さまとの関係構築を重視するメガジュンだからこそできるサポートとなっていますので、ぜひ参考にしていただければと思います。

★もっと詳しく知りたい方にオススメの記事→不登校・発達障害指導で大切な、「教える側の人間性と信念」 | 発達障害・ギフテッド専門のプロ家庭教師 メガジュン (pro-megajun.com)

解決方法④勉強しなさいと言わず、可能であれば家庭内で「勉強タイム」を作る

保護者さまの口から「勉強しなさい」と伝えることにそれほど大きな効果はありません。学校や塾でも四六時中「勉強しなさい」と言われていますし、お子さま自身も決して「勉強しなくていいや」と思っているわけではありません。

勉強しなければならないのは分かっているけれど、実際の行動に移せないことにお子さま自身もモヤモヤを感じていますので、敢えてそれを指摘して険悪なムードになるのではなく、良好な親子関係を保ちながらお子さまを上手く勉強に誘導してあげることが大切です。

例えば、「8. 解決方法①日頃からしっかりとコミュニケーションを取る」で解説したように、家庭内でのコミュニケーションの中で、お子さまの「勉強しなくちゃ」という気持ちを親としてバックアップする姿勢を見せ、「お父さん/お母さんが応援してくれるのだから、頑張ろう」とお子さまが自然に思えるような雰囲気を作ることが大切です。

さらに、もし可能であれば保護者さま自身がお子さまと時間を合わせて資格の勉強をしたり、読書をしたりするなどして、家庭の中で「勉強タイム」を作るのがオススメです。保護者さまはスマホやテレビを見ているのに、お子さまにだけ勉強を強いるのは、お子さまからしてみればとても理不尽に感じてしまいます。1日のうち数時間は液晶画面から離れて教養を身に付けるという習慣を作れば、お子さまにとっても保護者さまにとっても大きなメリットが得られると思いますので、ぜひ取り組んでみていただきたいと思います。

9. 自分から勉強をしようとせず、勉強に対して主体性が無い

保護者さまや先生に「勉強しなさい」と言われれば勉強するものの、自分から勉強することがなく、勉強に対して主体性が持てないお子さまがいらっしゃいます。

お子さまが勉強に対して主体的に取り組めない原因としては、

①勉強が嫌い、面倒くさい(=勉強が苦手(問題が解けない)なので楽しくない)
②勉強をしても成果が出るという期待を持てない(=自信が無い)
③自習のやり方が分からない
④自分でやろうとしなくても、周りに言われるとおりにしていれば良いと思っている


などが挙げられます。

以下ではそれぞれに対する効果的なアプローチについて解説していきますが、これらの原因は重複している場合も多く、相互に関連していることもあるため、どれか一つだけではなく複数のアプローチを並行して行うことで、より大きな効果を期待することができます。

①勉強が嫌い、面倒くさい(=勉強が苦手(問題が解けない)なので楽しくない)

お子さまが勉強が苦手で、問題を解く楽しさを実感できていない場合、問題が解けるようになる楽しさよりも勉強に対する苦手意識が勝ってしまい、自ら勉強しようという意欲が持てないことがあります。

このような場合においては、問題が解けるようになる楽しさや喜びをお子さまに実感してもらうことがポイントになります。

具体的には、まずは簡単な問題から取り組み、「サクサク解けて楽しい」という感覚をお子さまに知ってもらいます。簡単な問題であればお子さまだけで十分自主的に取り組めるようになったら、少しずつ問題の難易度を上げていきます。簡単な問題にお子さまが自主的に取り組めるようになるまでは、大人が傍についてヒントを出したり、次に取り組むべき課題を示してあげたりするようにしましょう。

また、難易度の高い問題については、お子さまだけで取り組まず、塾の先生や家庭教師と一緒に取り組むようにしましょう。お子さまだけで難しい問題を解こうとすると、「やろうとしたけど、できなかった」という失敗体験につながり、苦手意識がより強くなってしまう可能性があります。そうした失敗体験を避けるためにも、難しい問題については先生が一緒にいるときに取り組むようにしましょう。

ほかにも、お子さまが問題を見たときに「量が多くてしんどそう」「難しくて解けなさそう」と感じると、勉強に対するモチベーションが下がってしまうことがあります。

お子さまに課題を示す際には、「今日勉強した○○の公式を使ったら解けそうだね」と解答の道筋を示してあげたり、あるいは「この問題は志望校の難易度をはるかに越えているから、解かなくても大丈夫」と問題に×印を付けてあげたりするなどして、「自分で解けそうだ」「それほど分量は多くないようだ」とお子さまが感じられるように工夫することも大切です。

ただし、問題のヒントを出したり、「この問題は解かなくても良い」などと問題の取捨選択をするという手法は、お子さまによっては「自分は頭が悪いから先生が気を遣っているんだ」と受け取って、自信や自己肯定感が下がってしまう場合があります。

ですので、勉強の負担感を軽減するための工夫を行う際には、お子さまの性格や性質をしっかりと見極め、それぞれのお子さまにあった言い方や伝え方をするように留意していただければと思います。

②勉強をしても成果が出るという期待を持てない(=自信が無い)

「勉強をすれば、きっと成績は上がるはずだ」という自己信頼感(自分を信じる気持ち)が無いと、勉強を頑張ろうというモチベーションを保つことが難しくなります。自己信頼感が低いお子さまは「勉強したところで、どうせ自分の成績は上がらない」と心の底で感じていて、勉強しても無駄だという思いから自主的に勉強に取り組むことが難しくなってしまっています。

このようなお子さまにおいては、「勉強をすれば成果が出る」という実感を得させてあげ、「自分もやればできる、だから頑張ろう」という気持ちを呼び起こしていくことが大切です。

具体的には、まずは簡単な内容の演習を行い、その成果を測るための小テストに取り組んでもらいます。するとお子さまは、「演習をした→解ける問題が増えた→小テストで点数が取れた」という小さな成功体験を得ることができます(=スモールステップ)。

このような「簡単な演習をする→小テストで点が取れる」といったスモールステップを積み重ねていくうちに、お子さまは「勉強すると、確かに成果が出るのだ」と実感することができ、「勉強しても、どうせ成績は上がらない」という自信の無さを少しずつ克服することができます。

ちなみに、このようなスモールステップの積み重ねによって自己信頼感の回復を図る際には、お子さまの実力に見合った課題と小テストを用意することが非常に大切です。というのも、学校の定期テストや模試などは、出題範囲が広く、結果が返ってくるまでに時間もかかります。そのため、「勉強をしたから点数が上がった」という実感が持ちづらくなってしまいます。

また、学校の定期テストや模試は、必ずしもお子さまの実力に合った難易度であるとは限りません。そのため、「頑張って勉強したけれど、思ったように点数が伸びなかった」という結果になる可能性もあり、逆にお子さまの自己信頼感にマイナスの影響を与えてしまう可能性があります。

ですので、お子さまが自己信頼感を持てておらず、勉強へのモチベーションが湧いてこないといったケースにおいては、定期テストや模試ではなく小テストによってスモールステップを積み上げ、「勉強すれば成績が上がる→勉強には意味がある」という実感を得させてあげることが大切です。

③自習のやり方が分からない

自習のやり方がそもそも分からないために、自主的に勉強に取り組めないというお子さまも多くいらっしゃいます。この場合は、塾や家庭教師を利用するなどして、自分に必要な勉強は何かを分析し、そこから勉強の計画を立てていくというスキルを身につけていく必要があります。

具体的には、まずは講師と一緒に定期テストや模試の振り返りをして、苦手な単元やよくやってしまう間違い、ケアレスミスの傾向などを分析していきます。改善点が見つけられたら、それらを改善していくためにはどのような対策が必要かを検討していきます。

「教科書から復習する」「演習量を増やす」「演習問題の難易度を上げる/下げる」「ケアレスミスをチェックする手順を身につける」といった勉強内容のほか、それぞれにトータルで何時間かけるのか、そこから逆算して1日当たりにどのくらい勉強する必要があるのか(あるいは1日にできる勉強量から逆算して、いつまでにどの対策を完了させることを目指すのか)といったことを細かく決めていきます。

このようなプロセスを最初から完璧にできるお子さまは非常に少ないため、まずは「テスト結果の振り返り→改善点の洗い出し→対策方法の検討→具体的なスケジュールへの落とし込み」といった一連の流れについて、講師と一緒に進めていきます。

何度かこのプロセスを繰り返していくうちに、お子さまは「計画を立てて勉強する」ということがどういうものか理解できるようになり、やがて講師の補助が無くても自分で計画が立てられるようになっていくことが多いです。

このように、テストの結果を振り返って改善点を見つけ、対策を考えて実行するというプロセスはまさに「PDCAサイクル」そのものとなっています。PDCAサイクルを実行する力は大人になってからも非常に役立ちますので、勉強を通してぜひ身につけていただきたいと思います。

④自分でやろうとしなくても、周りに言われるとおりにしていれば良いと思っている

これまで周りの大人(保護者さまや先生)が、勉強すべきときには「勉強しなさい」と指示してくれていたため、これからも周りの人に指示してもらえば良いと感じているお子さまもいらっしゃいます。

ですが、いつまでも周りの人が「○○しなさい」と丁寧に指示を出してくれるわけではありません。大人になれば、何をすべきかを自分で考え、物事に自主的に取り組むことが当たり前のこととして求められるようになります。

いつまでも周りの人が助けてくれるわけではないという実感が薄いお子さまに対しては、「いつまでもお父さん/お母さんがいるわけじゃないから、自分でできるようになろう」と率直に伝え、自分で判断し行動することの大切さを実感できるようにサポートしていきます。

「今、勉強すべきかどうか」とこれまで考えて行動したことが無いお子さまは、いきなり「自分で考えて」と言われても戸惑ってしまうため、最初は大人が「次のテストで何点取りたいと思う?」「この前の定期テストの振り返りはした?」などと声を掛け、お子さまが「どうするべきだろう?」と考えるきっかけを与えていきましょう。

徐々に声掛けの量を減らしていき、お子さまが主体的に判断できたときには「自分で勉強しようと思えたんだね」と褒めるような声掛けをし、逆に声掛けをしないと行動できなかったときは「今度からは先生に言われなくても行動できるようにしようね」と丁寧に指導していきましょう。

お子さまの中には、「自分で考えて行動する」という発想がそもそも薄い方もいらっしゃるため、まずは「自分で考える」という発想がお子さまの選択肢の一つとなるようにサポートしていくことが大切です。

また、勉強の進め方や計画の立て方が分からないお子さまについては「9. ③自習のやり方が分からない」で解説したとおり、まずは講師と一緒に計画を立て、少しずつ自分でも計画が立てられるようにしていくと良いでしょう。

10. 反復練習を嫌がる

パターン①:反復練習は面倒くさいだけで、意味が無いものと思っている

基本的に反復練習は面倒くさいものです。それでもなぜ大人が「反復練習しなさい」と言うのかといえば、何度も練習することで知識が定着することを私たち大人は知っているからです。

ですので、「面倒くさい」という感情よりも、「知識が定着した方がメリットが大きい」ということが実感できれば、子どもたちも前向きに反復練習に取り組めるようになっていきます。反復練習の効果をすぐに実感することは難しく、また、効果が表れていてもお子さまが自覚できていないことも多いため、「ちゃんと練習したから点数が上がったね」など周りの大人が言葉で伝えて、「反復練習には意味がある」とお子さまが感じられる機会を積極的に作っていくことが大切です。

その際のポイントは、最初は少ない練習量や易しい内容から始め、できるだけすぐに効果が表れるような低めのハードル(スモールステップ)から挑戦させてあげることです。いきなり高いハードル(例:テスト範囲の英単語を全部覚える 等)をクリアしようとすると、目標が達成できず、お子さまは逆に「反復練習をしてもしなくても一緒だ」と思ってしまうかもしれません。

また、そもそも反復練習の量も膨大になるため、試してみる前に面倒くさくなってしまうお子さまも多いことでしょう。

英単語を覚える場合であれば、お子さまの能力に応じた単語数(3~5単語程度。うち1~2単語は既に覚えかけている単語があるとさらに良い)の小テストを課し、反復練習の量もお子さまの能力に応じて授業中と宿題とで各5回ずつなど、ごくごく簡単で負荷の低いもの(とはいえ、練習しないと覚えられないもの)から始めましょう。

「反復練習したら点が上がった」という経験が一度でもあるのと無いのとでは、反復練習に対する意識が格段に違ってきます。反復練習で点が上がるという経験がさらに積み重なると、やがてお子さまは「反復練習には意味がある」と感じて自主的に取り組めるようになっていきます。

「反復練習には意味がある」と感じるためのきっかけ作りが最も重要になりますので、『まずは低いハードル(スモールステップ)から』を合言葉に実践していただければと思います。

パターン②:反復練習せずとも習得できている

生まれつき知能が高いお子さま(ギフテッド児など)の場合は、反復練習をしなくても計算ができたり、漢字を覚えられたりします。基本的に反復練習は知識を定着させるために行うものですので、既にしっかりと知識が定着している以上、「練習しなくてもいいじゃないか!」というお子さまの意見は筋が通っています。

このような場合は、

①今は覚えているかもしれないが、長期記憶として定着させるためにはたくさん練習した方が良いこと
②もし練習しない場合、意欲や関心の面で成績が下がったり、先生に叱られたりするかもしれないというデメリットを受け入れる覚悟があるか


の2点からお子さまと話し合うと良いでしょう。

①については、今の時点では記憶が新鮮でしっかり覚えられていることでも、時間が経つと徐々に忘れてしまうことを説明し、たくさん練習することで忘れにくくなったり、大人になってからも思い出せたりするという意義があることを伝えましょう。

実際に、習ってから1か月後にテストをしたら忘れていたというような場面があれば、「習ってすぐは覚えていられたけど、時間が経つと忘れちゃうよね。反復練習をしておくと、忘れにくくなるよ」などとアドバイスしてあげると良いでしょう。

この際、「だから反復練習しなさいって言ったでしょ!」というようにお子さまを責めるような言い方をする必要はありません。論理的に考えられるお子さまの場合は、感情的になるよりも論理的に話した方が伝わりやすいため、この点についても意識していただければと思います。

②については、漢字や計算の練習をしないことから生じるデメリットを伝え、「覚えているから練習しない」という選択をお子さまが取る以上、それによって生じるデメリットも受け入れる必要があることを説明しましょう。

もちろん、反復練習が無意味であるにもかかわらず、それをしないことで怒られるというのは理不尽ではあります。ですが、残念ながら世の中は理不尽なことだらけであり、子どものうちから清濁を併せ呑む経験をすることも大切です。

特にギフテッドのお子さまの場合は、これからの人生において、周りのレベルに合わせなければならないという点での困難やストレスを感じることが多くなります。お子さまの言い分が正しいことは認めてあげながらも、正しさだけでは世の中は渡れないことを子どものうちからから少しずつ学んでおくことが大切です。

また、このケースにおいては、「反復練習をしないと覚えられない人がほとんどである」ということにお子さまが気付いていないこともあります。世の中には、生まれつき記憶力が高く、一度見ただけで覚えられる人もいれば、何度も練習しないと覚えられない人もいます。

もしお子さまが一度見ただけで覚えられるタイプである場合は、「世の中の平均的な能力の人は、これくらいの練習が必要なのだ」ということを知るためにも、身を持って反復練習をしておくことも大切であると伝えても良いでしょう。

なお、①②のような長期的・俯瞰的な視点からの説明は、小学生くらいのお子さまには難しい内容のように感じますが、ギフテッドのお子さまであれば問題無く理解できますので、お子さまの発達段階や知能レベルに合わせて説明していただければと思います。

★もっと詳しく知りたい方にオススメの記事→【ギフテッドの不登校】才能ある子どもたちが抱える課題と解決策(浮きこぼれへの対応) | 発達障害・ギフテッド専門のプロ家庭教師 メガジュン (pro-megajun.com)

11. 文字を手書きすることを嫌がる

要因①:「書くことがしんどい」と感じている

手書きを嫌がるお子さまに、字を書きたくないと感じる理由を聞いてみると、「手が疲れる/しんどい/だるい」という言葉が返ってくることが多いのではないでしょうか。ですがこの場合、お子さまは手を動かすこと自体が本当にしんどいと感じているのではありません

というのも、ゲームや手遊びをしているときにお子さまが「手が疲れた」と発言することはほとんど無いと思います。したがって、お子さまの「しんどい、だるい」という発言は、手書きすること自体がしんどいと感じているのではなく、勉強に対する拒否感ゆえに発せられているものと考えられます。

つまり、楽しいこと(ゲーム、手遊び)であれば「疲れた」とは感じず、お子さまにとって楽しくないこと(勉強)であるがゆえに「疲れた」という発言をしてしまっているということになります。

こういった心理的な背景を踏まえると、「疲れるから」といって手書きを嫌がるお子さまに対しては、勉強に対する心理的なハードルを下げてあげることが非常に効果的であることが分かります。“心理的なハードルを下げること=勉強が楽しいと思えること”ですので、お子さまが勉強を少しでも楽しいと思えるようなきっかけを作ってあげるようにしましょう。

具体的には、

①「自分にも勉強ができる」という自信を持つ
②勉強をすると良いことがある(周りから褒めてもらえる、点数が上がる等)


の2つが挙げられます。

「①『自分にも勉強ができる』という自信を持つ」については、勉強に対して自信が無く、「自分は勉強が苦手だ」と思っているお子さまに対して特に効果的な方法になります。自分は勉強が苦手だと思っているお子さまは、「勉強したってどうせ点数は上がらない」「どれだけ勉強を頑張っても効果は現れないだろう」と心のどこかで感じていて、机に向かおうというモチベーションが低くなってしまっている状態にあります。

自分はできる!という前向きな気持ちが無いために、本当は頑張ればできることでも、できないと思い込んで頑張れないケースもあります。こうしたお子さまの場合は、「自分もやればできる」という自信を付けるために、簡単な課題からチャレンジし、やればできるという実感を持ってもらうことから始めます。

例えば、漢字の書き取りであれば、日常生活で馴染みがある語句を中心とした小テストを作成し、敢えて点が取りやすい状況にしてあげます。小テストで点が取れたら「習ったばかりの語句も多いけれど、書き取り練習のお陰で点が取れたね!」としっかりと褒め、“書き取り練習には意味がある”“練習すれば自分もできるようになる”とお子さまが自覚できるような声掛けをしていきましょう。

テストで点が取れたり、そのことで褒められたりすると、お子さまは少しずつ「勉強って楽しいかも?」「自分にもできるかも?」と思えるようになり、勉強に対して前向きに取り組めるようになります。

「②勉強をすると良いことがある(周りから褒めてもらえる、点数が上がる等)」については、勉強は必ずしも苦手ではないものの、書き取り練習などをコツコツと頑張ることを嫌がってしまうお子さまに効果的です。このようなお子さまは、書き取り練習によるメリットが実感できておらず、「面倒くさい、しんどい」という気持ちが勝ってしまっている状態にありますので、しんどさ以上にメリットがあることを実感してもらうことが大切です。

指示された課題がこなせたらまずはしっかりと褒め、場合によっては「1日のゲームの時間の上限をプラス30分してあげる」などのご褒美を設けても良いでしょう。また、しっかりと書き取り練習をした後にテストの点が取れていたら、「書き取り練習したから点が上がったんだね、すごい!」のように、『テストの点が上がった』という結果と『書き取り練習をした』という過程が結びついていることにお子さまが気付けるように声掛けをしてあげると良いでしょう。

要因②:書字障害(ディスグラフィア)

書字障害(ディスグラフィア)とは学習障害の一つで、文字を書くことに困難がある状態を指します。字がマス目からはみ出してしまったり、筆圧が極端に弱かったり、何度も練習しても文字の形が覚えられなかったり、鏡文字になってしまったりと、困難の現れ方は人によって異なります。

書字障害を持つお子さまの字が汚くなってしまうのは、本人の努力が足りないせいではありません。にも関わらず、「もっと練習しなさい、きれいに書きなさい」といつも叱られていると、字を書くこと自体が嫌いになってしまいます。

また、単純な反復練習を繰り返しても書字障害は改善しませんので、ストレスが溜まって学校に行きたがらなくなったり、「何回練習しても覚えられないなんて、自分はダメなんだ」と自己肯定感が下がってしまったりします。

書字障害のあるお子さまは、字を書くだけでも人一倍エネルギーを使っています。書字障害の原因の多くは、手と目の協調(目で見た情報と手の動きを連動させる能力)の弱さ、あるいは音韻処理(文字と音を結び付ける能力)の不全と呼ばれています。

平仮名を一文字書くのも一苦労である状態を理解し、「字が書けた」ということだけで充分であると捉えましょう。「一生懸命書いたんだね」というような声掛けを行い、本人の努力を認めてあげることがとても大切です。

書字障害の具体的な改善方法としては、

○大きなマス目のノートを使う
○一マスの中が色分けされているノート(カラーマスノート)を使う(参考:小児科医と言語聴覚士が考えたノート。文字を正確に書き写せます。 | tobiraco(トビラコ)
○画用紙に大きく字を書いて、塗り絵や飾りつけをしながら文字の形に親しむ
○背中に文字を書きあって、文字の形と手の動きを学ぶ


などがあります。

通級指導教室では個々に合わせた指導を受けることができるほか、療育施設ではこれらのトレーニングに加え、手と目の協調を鍛えるビジョントレーニングなどによって書字障害の改善を図る場合もあります。

また、大人になるにつれ文字を手書きする機会は減っていきますので、文字を書くことのストレスが大きい場合は、無理に改善しようとせず、学校でもキーボード入力に切り替えるなどの対応を検討することも大切です。

★もっと詳しく知りたい方にオススメの記事→学習障害(LD)とは?読めない、書けない、計算できない子どもの特徴と対処法を紹介 | 発達障害・ギフテッド専門のプロ家庭教師 メガジュン (pro-megajun.com)

要因③:「手書きにこだわっても意味が無い」と主張する

大人になったらどうせパソコンやスマホで文字を入力するのだから、手書きにこだわるのは意味が無いはずだ、と主張するお子さまもいらっしゃいます。確かに一理あるのですが、一方で「漢字を書ける人は、作文能力も高い」という研究結果もあります。(参考:漢字書ける人、文章も上手 京都大学グループが中高生分析「手書き教育大切」|文化・ライフ|地域のニュース|京都新聞 (kyoto-np.co.jp)

もちろん、闇雲に難解な漢字を覚えることには意味が無いかもしれませんが、漢字の成り立ちを知ることや、場面に合わせた熟語を記憶の中から引き出して使いこなすことは、単に漢字テストで良い点を取ること以上に意義があります。

また、ChatGPTの登場により、人間よりもAIの方が文章作成に長けている可能性が示唆されています。「パソコンで変換できるから漢字は覚えなくてよい」という考え方の先には、「AIが作文してくれるから、人間は文章を書けなくてよい」という主張もあり得るでしょう。

人間は、言葉で考え、言葉で表し、言葉で意思疎通する生き物です。言葉をすべて機械に任せてしまうとしたら、人間が人間である所以(アイデンティティ)はどうなるのでしょうか?手書きにこだわる意味、ひいては自分で文章を紡ぎ出す意味について、お子さまとじっくり話し合ってみるのも良いかもしれません。

また、もし中学受験を考えておられる場合は、漢字のとめ・はね・はらいが重要な得点ポイントとなります。男子校などでは細かいところまで見られない場合もあるようですが、とめ・はね・はらいができていないと減点する学校も5~6割はあるとされています(参考:『進学レーダー(2020年11月号)』みくに出版)。

そのため、手書きであることが実社会で役に立とうが立たまいが、中学受験をする場合は否が応でも漢字の書き取り練習は必須と言えます。いくら記憶力に優れてお子さまであっても、とめ・はね・はらいといった細かい部分について完璧に定着させようと思えば、実際に手を動かして書き取り練習をするしかありません。

中学受験する場合は、そのことをお子さまにもしっかりと説明し、とめ・はね・はらいなど細かい部分にも気を配りながら、コツコツと漢字の書き取り練習に取り組んでいきましょう。

12. 字が汚く、「とめ・はね・はらい」をきちんと書かない

お子さまの字が汚かったり、「とめ・はね・はらい」を丁寧に書かなかったりする場合、以下のいずれかが原因として考えられます。

①字を書くのが面倒で、丁寧に書かなくても良いと思っている
②学習障害のうち、書字障害(ディスグラフィア)に該当する


それぞれの解決策について、以下で解説していきます。

①字を書くのが面倒で、丁寧に書かなくても良いと思っている

字を書くのが面倒で「丁寧に書かなくても良いや」と感じてしまっているお子さまの場合は、字を丁寧に書くことのメリットを実感させてあげることで字を丁寧に書けるようになる場合が多くなっています。

字を丁寧に書くことの第一のメリットとしては、テストの点数が上がることが挙げられます。これまでのテストでとめ・はね・はらいなどがきちんと書けていないことで減点されている箇所を見直し、「字を丁寧に書けばテストの点が〇点上がるよ」と具体的に示しましょう。

「丁寧に字を書けば点数が上がるよ」といった一般的なことを伝えるだけではなく、過去のテストを一緒に振り返り、「〇点上がるよ」とそのお子さまの実態に合わせて具体的に示すことがポイントになります。具体的に示すことで、お子さまは字を丁寧に書くことのメリットをより実感できるようになります。

また、お子さまが丁寧に字を書けた際には、「丁寧に書けているね。だから丸がもらえたね」といった声掛けをし、字を丁寧に書くと良いことがあるのだとお子さまが気付けるようにサポートしていくと良いでしょう。

さらに、お子さまが中学受験を考えている場合は、とめ・はね・はらいまでしっかり書くことが必須となります。漢字のとめ・はね・はらいについてどこまで細かくチェックするかは中学校によって差がありますが、丁寧に書いておくに越したことはありません。

中学受験を目指しているお子さまで、字を丁寧に書く習慣がまだ身に付いていない場合は、模試などの結果を見直し、字を雑に書いてしまったことで減点されていたら「この部分は字を丁寧に書かないことで減点されてしまっているね。本番でも減点されてしまう可能性があるから、今から丁寧に書く習慣を身につけよう」といったように、字を丁寧に書かないと減点されるということをお子さまに実感してもらいましょう。

加えて、字を丁寧に書くことのメリットには、字が綺麗なだけで「この子は賢そうだ」「きちんとしている人だ」と思ってもらえるということもあります。周りからしっかりした子だと思われたいという気持ちが強いお子さまの場合は、「字が綺麗だと、それだけで賢い子だと思ってもらえるよ」などの声掛けをして、字を丁寧に書くことに対するモチベーションを上げていくのも良いでしょう。(関連項目→11. 要因①:「書くことがしんどい」と感じている

②学習障害のうち、書字障害(ディスグラフィア)に該当する

書字障害(ディスグラフィア)とは学習障害の一つで、知能指数においては問題が無いものの、文字を書くことのみに大きな困難がある状態を指します。字がマス目からはみ出してしまったり、筆圧が極端に弱かったり、何度練習しても文字の形が覚えられなかったり、鏡文字になってしまったりと、困難の現れ方は人によって異なります。

「丁寧に書きなさい」と何度言っても極端に形の崩れた字を書いてしまうお子さまや、時間を掛けて書いているのに字が汚くなってしまうお子さまの場合は、書字障害の可能性を検討する必要があります。

書字障害の要因は、一般的に「手と目の協調の問題」であると考えられています。「手と目の協調」とは、目で見た情報を処理しながら手先を動かす脳の働きのことで、書字障害を持つお子さまは生まれつきこの能力に困難があると考えられています。

したがって、書字障害を持つお子さまの字が汚くなってしまうのは、本人の努力が足りないせいではありません。にも関わらず、「もっと丁寧に書きなさい」「たくさん練習すれば書けるようになるから」と言われ続けると、「いくら頑張っても綺麗に字を書けない自分はダメなんだ」と自己肯定感が下がってしまうこともあります。

また、単純な反復練習を繰り返しても書字障害は改善しませんので、授業や宿題で反復練習を強要されることがストレスとなり、学校に行きたくなくなってしまうこともあります。ですので、書字障害の可能性が考えられる場合は、早めにスクールカウンセラーや特別支援コーディネーターの先生など、発達障害や書字障害について理解のある学校の先生に相談するようにしましょう。

学校に相談しづらいと感じる場合は、お住まいの地域の教育相談センターや発達支援センターにも窓口が設けられている場合が多いため、そちらに問い合わせてみると良いでしょう。

書字障害のあるお子さまは、字を書くだけでも人一倍エネルギーを使っています。一文字書くだけでも大きな労力が必要であるという状態を理解し、お子さまが字を書くことに取り組んでいるときには「一生懸命書いたんだね」というような声掛けをし、本人の努力を認めて応援していくようにしましょう。

また、書字障害の具体的な改善方法としては、

○大きなマス目のノートを使う
○一マスの中が色分けされているノート(カラーマスノート)を使う(参考:小児科医と言語聴覚士が考えたノート。文字を正確に書き写せます。 | tobiraco(トビラコ)
○画用紙に大きく字を書いて、塗り絵や飾りつけをしながら文字の形に親しむ
○背中に文字を書きあって、文字の形と手の動きを学ぶ


などがあります。

通級指導教室や発達障害のあるお子さまを受け入れている放課後等デイサービスでは、個々に合わせた指導を受けることができます。また、これらのトレーニングに加え、手と目の協調を鍛えるビジョントレーニングなどによって書字障害の改善を図る場合もあります。

なお、大人になるにつれ文字を手書きする機会は減っていきますので、文字を書くことのストレスが大きい場合は、無理に改善しようとせず、学校でもキーボード入力に切り替えるなどの対応を検討することも大切です。(関連項目→11. 要因②:書字障害(ディスグラフィア)

★もっと詳しく知りたい方にオススメの記事→学習障害(LD)とは?読めない、書けない、計算できない子どもの特徴と対処法を紹介 | 発達障害・ギフテッド専門のプロ家庭教師 メガジュン (pro-megajun.com)

13. 暗記が苦手

パターン①:ストーリーやまとまりで覚えていない

暗記をする際に最も重要なことは、「ストーリーと関連づけて覚える」ことです。というのも、人間の脳の仕組みとして、独立した要素としてではなく、それに関連する物語やエピソードと併せて覚えた方が覚えやすいというものがあります。

例えば、『A氏』の顔と名前を覚えるとき、ただ写真と名前を見せられるよりも、「猫と鳥を飼っているA氏」といった付属の情報があった方が覚えやすいというようなケースです。

勉強でも同じで、単に年号と事象名を覚えるのではなく、「サンフランシスコ平和条約は第二次世界大戦の講和条約で、日本とアメリカの間で結ばれた」というストーリーを覚えておけば、1951年という年号を必死で覚えなくても「終戦の少し後」という感覚が分かりますし、共通テストでよくある並び替え問題でも間違えることが無くなります。

特に歴史に関しては、「history=his(彼の)+story(物語)」という語源のとおり、ストーリーを理解し解釈することが勉強の根本的な意義になります。人物名や事件名を丸暗記するのは非常にナンセンスであり、歴史を学んだことにはなりませんので、暗記するにしても「ストーリーを覚える」という視点で取り組むようにしましょう。

英単語や漢字の場合は、「ストーリー=成り立ち」と捉えると良いでしょう。例えば、「disagree(反対する)」という単語は、否定を表す接頭語のdisと賛成するのagreeを組み合わせたものであると理解できれば意味も綴りも覚えやすいですし、漢字においては部首が意味を、旁(つくり)が音を表していることが多いということを理解すれば覚えやすくなります。

ちなみに、語呂合わせにすると覚えやすいのも本質的には同じで、「数字だけ」「文字だけ」よりもダジャレや節と組み合わせることで覚えやすくなるという人間の性質を利用したものになります。化学の周期表など丸暗記するしかないものについては、有名な「水平、リーベ…」の節に合わせて覚えてしまいましょう。

パターン②:ゲームなど好きなものに関するものなら覚えられる

ゲームの武器の性質はいくらでも覚えられるのに、勉強のことになるとさっぱり覚えられない…というのはよくあるお悩みです。両者の違いは、「武器の性質を覚えればゲームで強くなれるというメリットがある(=ゲームで強くなりたい)が、漢字や英単語を覚えることにはメリットを感じない(=成績が上がることに興味が無い)」ということになります。

こうしたお子さまの場合は、勉強をゲーム的に楽しめるよう上手く誘導してあげると良いでしょう。「勉強すれば成績が上がって嬉しい」という経験を一度すると、ゲームのレベルを上げる感覚で自然と「もっと勉強したい(覚えたい)」というモチベーションが湧いてきます。

学校のテストだとなかなか良い点が取れず成功体験につながらない場合は、ご家庭で学校よりも易しいレベルのテストを用意してあげると良いでしょう。成功体験は、暗記だけでなく勉強全般のモチベーションにも繋がりますので、意識して機会を作ることが大切です。

パターン③:時間を掛けていないか、やり方が間違っている

一度見ただけですぐに覚えられる人もいれば、時間を掛けても覚えられない人もいます。記憶力は生まれつきの面もありますので、なかなか覚えられない人はまずはしっかりと時間を掛けて覚えることから始めましょう。

それでもなかなか覚えられない人は、暗記のやり方が間違っているか、自分の性質に合っていない覚え方をしている可能性があります。

「記憶」というのは“情報をインプット”することであると捉えている人が多いですが、正しくは“情報を引き出す”ことを指します。人間の脳には、これまでにインプットしてきた全ての情報が蓄積されています。その膨大な情報の中から、必要なものを引っ張り出す行為が「記憶」ということになります。

従って、何時間も単語集を眺めていても暗記できないのは当然で、単語集から目を離して「思い出す」という行為を繰り返すことが大切です。ですので、赤シートや単語アプリなどを使って何回も繰り返し「思い出す」練習をするようにしましょう。

パターン④:優位感覚に合っていない方法で覚えようとしている

学校の先生の中には、「書けば覚えられる」「声に出せば覚えられる」という人もいますが、どんなやり方が覚えやすいかは人それぞれ違います。耳で聞いた情報を処理するのが得意な人や、目で見た情報を処理するのが得意な人、言葉で考えたり記憶したりするのが得意な人など、人はそれぞれ「優位感覚」と呼ばれる得意な感覚を持っています。

「書けば覚えられる」という先生は、恐らく目で見た情報を処理するのが得意なタイプ(視覚優位)か、手を動かした感覚を記憶するのが得意なタイプ(身体感覚優位)であると考えられますし、「声に出せば覚えられる」という先生は、耳で聞いた情報を処理するのが得意なタイプ(=聴覚優位)であると考えられます。

お子さまも先生と同じ優位感覚のタイプを持っているのであれば問題ありませんが、聴覚優位のお子さまに「書けば覚えられる!」と指示しても、手先を動かすのが苦手で書くことに気を取られて覚えるどころではなくなってしまうかもしれませんし、視覚優位のお子さまに「声に出せば覚えられる!」と言っても、耳で聞いた情報の処理が苦手なのであれば、ノイズが入ることによって暗記の効率はむしろ下がってしまうかもしれません。

優位感覚は人それぞれで異なるということを意識し、自分にあったやり方を見つけていくようにしましょう。

パターン⑤:復習のタイミングが不適切である(翌日に復習する習慣が無い)

人間の記憶は時間が経つにつれ薄れていきます。そのため、適切なタイミングで復習を行い記憶を定着させていくことが大切なのですが、このタイミングが適切でないことにより「覚えたつもりでも、すぐ忘れてしまう」といった状態になってしまっている場合があります。

復習のタイミングは、基本的に、徐々に間隔を開けていくことが望ましいとされています。例えば、ある内容を学習したら、まず翌日に復習し(1日)、次に1週間後に復習し(7日)、さらに1か月後に復習する(30日)といったパターンです。1週間後や1か月後にまとめて復習しようとするお子さまは一定いらっしゃる一方で、「習った翌日に復習する」という習慣が確立できていないお子さまが非常に多くなっています。

確かに毎日復習するのは大変ですが、サッとでも良いので昨日習った内容に目を通しておくと、1週間後や1か月後の復習の際に記憶が蘇りやすく、定期テストや受験の際に焦らずに済みます。部活や塾など忙しい日々ではあるとは思いますが、教科書をサッと読み返すだけでもかなり効果がありますので、スキマ時間などを活用して取り組んでいただきたいと思います。この「習った次の日に軽く復習する」という勉強法はかなり効果が実感しやすいため、ぜひ今すぐ取り組んでいただくことをオススメします。

パターン⑥:自信が無く「自分には覚えられない」と思い込んでいる

暗記に対する自信が無いことで、無意識に脳の働きにブレーキが掛かってしまっている場合があります。「イメージトレーニングが大切」という話を聞いたことがある方も多いかもしれませんが、実際に私たちがお子さまたちを指導していても、「私/僕にはこれぐらい覚えられる!」と自信を持っているお子さま(覚えきった自分をイメージできるお子さま)と、「こんなにたくさん覚えるなんて、私/僕には無理だ」と思っているお子さま(覚えきった自分をイメージできないお子さま)では、勉強の効率が何倍も異なる場合があります。

暗記に対して自信が無く、なかなか覚えられないお子さまは、「自分は暗記が苦手である」という自己暗示に掛かってしまっています。こうしたお子さまに自信を持ってもらうためには、「①周りが褒める」「②自分にもできたという経験を積ませる」の2つの方法が効果的です。

まず、「①周りが褒める」については、お子さまが何かを覚えられたら「すごいね、記憶力あるんじゃない?」など少し大げさでも良いので声を掛けてあげるという方法になります。基本的に子どもは大人よりも記憶力が良いですし、好きなゲームやアニメ、アイドルのことならスポンジのように知識を吸収できる子もたくさんいます。

そうした自分の一面に気付いていないお子さまも多いため、周りの大人が言葉にして褒めてあげながら、お子さまの自己認識(自分が持っている能力の自覚)を変えていくことがポイントになります。

「②自分にもできたという経験を積ませる」については、ごく簡単な暗記テストなどを用意してお子さまに覚えてもらい、自分にもできたという実感(成功体験)を得させるという方法になります。「①周りが褒める」は周りからの働きかけによってお子さまの自己認識を変容させますが、「②自分にもできたという経験を積ませる」については、成功体験によってお子さまの自己認識を変えていくという方法になります。

①②どちらも非常に効果的な方法ですので、ぜひ並行して実践していただきたいと思います。また、暗記以外においても自信を持つことはとても大切ですので、「①褒める」「②成功体験を持たせる」は、お子さまに関わる際の合言葉としてぜひ心に留めていただけると嬉しく思います。

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14. 本人は「勉強している」と言うが、親から見ると不十分だと感じる

本人が「十分勉強している」と主張している場合は、保護者さまが何をもって“不十分”と捉えているかがポイントになります。お子さまと保護者さまの間で適切な勉強量のすり合わせができていないと、お子さまは十分勉強していると思っているのに、保護者さまはそう思っていないという行き違いが生じてしまいます。このようなケースにおいては、お子さまに「適切な勉強量とはどれくらいか」をきちんと理解してもらうことが大切です。

この項目では、お子さまと保護者さまが勉強量のすり合わせを行う際のポイントについて、「①定期テストで平均点を下回る/赤点を取る」「②このままのペースでは志望校に受からない」「③もっと勉強すれば、もっと良い成績が取れる」の3つのパターンに分けて解説していきます。

パターン①:定期テストで平均点を下回る/赤点を取る

定期テストで平均点を下回る場合は、内申点に影響して希望通りの進学が叶わないのではないかという心配がありますし、赤点の場合は留年するかもしれないという心配があります。いずれにしても、保護者さまは先々のことを考えて心配しているのに、お子さま本人にはその危機感が無いように見えるというのがお悩みの根本にあると考えられます。

まずは、保護者さまがなぜ勉強量が不十分だと感じているのかをお子さまに丁寧に説明してみましょう。「もっと勉強しなさい」と伝えるだけでは、お子さまは危機的な状況にあることを理解できていないかもしれません。

進学や留年の懸念を踏まえた上で、お子さまが「志望校を落としても良い」「留年しても良い」と言う場合はそれらの選択のデメリットと、その責任は最終的にはお子さま自身が背負わなければならないことを伝えると良いでしょう。就職が厳しくなるかもしれないこと、留年するような経済的な余裕はないこと…ご家庭によって生じるデメリットは様々あると思いますが、感情的にならず、あくまで客観的な事実として伝えることが大切です。

お子さまはまだ人生経験が浅いため、勉強しないとどうなってしまうかについて具体的にイメージできていないだけかもしれません。大人が丁寧に説明してあげると、「勉強しないとヤバい!」と理解して自分から勉強に取り組めるようになる場合も多いため、ぜひ試していただければと思います。

また、お子さまの側も、勉強しなければいけないのは分かっているけれど、やる気が出なかったり集中できなかったりするために、「勉強しなさい」という言葉に対して「勉強してるよ!」と反射的に返してしまっている場合もあります。こうしたケースにおいては、「あなたに勉強したいという気持ちがあるのであれば、親としてはできるだけ応援するよ」と伝えてあげましょう。

やる気が出ないときや集中できないときの対処方法は『1.集中できない』『2.勉強が長続きしない』で解説していますのでぜひ参考にしていただければと思います。

★もっと詳しく知りたい方にオススメの記事→発達障害をお持ちのお子さんへのおすすめ勉強法/教え方と勉強環境とは? | 発達障害・ギフテッド専門のプロ家庭教師 メガジュン (pro-megajun.com)

パターン②:このままのペースでは志望校に受からない

志望校に受からないかもしれないような場合においては、お子さま自身も十分危機感を持っている場合がほとんどです。お子さまなりに危機感を感じながら勉強に取り組んでいるときに保護者さまから「もっと勉強しなさい」と言われると、当然ながら「勉強してるよ!」と言い返したくなってしまいます。

このようなケースにおいては、まずお子さまの不安感や危機感を聞き取るようにしましょう。思春期で保護者さまになかなか本音を話してくれないときは、学校や塾の先生から聞いてもらうのも良いでしょう。まずは「心配だよね、大丈夫だよ」と周りの大人が伝えてあげることが大切です。

その上で、勉強時間を増やして志望校への合格を目指すのか、あるいは勉強の方法を見直して勉強の効率を上げるのか、それとも志望校のランクを落とすのかといった具体的な選択をしていくことになります。

この際、必ずお子さまの意思を尊重するようにしましょう。大人が決めてしまうと勉強のモチベーションが上がりませんし、主体性も身に付きません。厳しい受験に立ち向かうためには、「自分で決めて、自分でやる」という姿勢が大切です。

★オススメの実例コラム→<プロ家庭教師メガジュンでの解決例#2:学習習慣が身に付かず、志望校に受からない可能性が出てきたBさん>

パターン③:もっと勉強すれば、もっと良い成績が取れる

頑張ればもっと良い成績が取れるはずなのに、お子さまがなかなか勉強に向かわないことでお悩みの保護者さまも多いかと思います。保護者さまや先生が「もう少し勉強量を増やせば、もっと良い点数が取れるよ」とアドバイスをしても、お子さまには今一つ言葉が届かず、なかなか勉強量が増えないようなケースです。

このようなケースにおいては、お子さま自身が「自分の実力はこれくらいだろう」と自分の限界を決めてしまっていて、「これ以上頑張らなくてもいいや」と心の底で感じていることが根本的な原因である場合が多くなっています。

つまり、周りからはまだまだ伸びしろがあるように見えるのですが、お子さま本人は「これが自分の限界だ」「もう伸びしろは無い」と考えており、「これ以上頑張る必要は無い」「頑張っても意味が無い」と思ってしまっているようなケースです。

このような状況を解決するためには、お子さま自身に「自分はもっと伸びることができる」という“自信”や“自分を信じる力”を付けてもらう必要があります。

具体的な方法としては、まずは少しでも良いので今の勉強量に+αして演習などに取り組み、その結果「少しでも点数が伸びた」という経験をお子さまに得させてあげます。するとお子さまは、「自分はこれ以上伸びない」と思い込んでいたにもかかわらず点数が伸びたため、「もしかして、まだ限界ではないのかも?」と気付き始めることができます。

このように「今よりもう少し頑張る→点数が上がる」という経験を繰り返していくうちに、やがてお子さまは「自分はまだまだ伸びていける」という確かな実感を持つことができるようになり、「もっと勉強して、もっと良い点を取ろう」と思えるようになっていきます。

ただし、お子さまの中には「自分の実力はこんなもの」「頑張っても意味が無い」という諦めや虚無感、自信の無さに強く囚われている方もいらっしゃいます。そうしたお子さまが自信を回復していくためにはかなりの時間が掛かるため、じっくりとお子さまと向き合い、「あなたはもっと伸びていけるよ」と根気強く伝え続けていく必要があります。

併せて、勉強すればもっと良い成績が取れるのだから、もっと頑張って勉強してほしい!と思うのは保護者さまとして当然のことですが、一方で“良い成績”にどこまで価値を見出すかは人それぞれであり、たとえ親子であっても価値観が異なる場合があることも心に留めておく必要があります。

また、何を以って「良い成績」とするのかも人それぞれで異なります。それほど頑張らなくてもオール5が取れるお子さまもいれば、目一杯頑張ってやっとオール3が取れるお子さまもいます。お子さまが精いっぱい頑張ってオール3が取れたのなら、まずはその頑張りと結果を受け止め、たくさん褒めるようにしましょう。そして、次の目標を設定する際には、お子さま本人としっかり相談していくことが大切です。

お子さまが「もう限界!」と感じているにもかかわらず、周りが「もっと頑張れ」と指示すると、「期待される結果を残せていないのだ」とお子さまが感じて自信を喪失してしまうこともあります。(自信を喪失すると、前述のように「自分には無理なのだ」という諦めの気持ちが生まれて、「もっと頑張ろう」という意欲を無くしてしまうこともあります)

ですので、次の目標を設定する際には、例えば「このままオール3を維持しよう」「少しでも4が増えるようにもっと頑張ろう」など具体的な方向性を示しながら、お子さまとしっかりと話し合って決めていくようにしましょう。その際に、お子さまの言葉だけでなく表情などにも気を配り、お子さまが本心から前向きに目標に向かって進めるかを丁寧に確認していくことが大切です。

目標を設定することは、お子さまのモチベーションや自信、自己肯定感に大きく影響する非常に重要なステップとなります。ですので、十分に配慮しながら進めていただければと思います。

また、勉強以外に夢中になれることがあり、なかなか勉強に心が向かないお子さまにおいては、最低限の勉強量(宿題はやる、留年しない等)は決めつつも、お子さまのやりたいことを応援してあげるのも時には必要な選択肢となります。

スポーツや芸術、プログラミングなどの才能は、勉強以上にお子さまの身を助け、人生をより良いものにする可能性を秘めています。ご家庭においては勉強だけにこだわりすぎず、その子なりの頑張りと個性を、ありのままに認めてあげていただければと思います。「頑張れば大好きなお母さん/お父さんが褒めてくれるんだ」とお子さまが感じられれば、これからもお子さまは自信を持って挑戦し、頑張れる子として成長していくことができます。

勉強でも、そして勉強以外のことでも、頑張っていることそのものを大好きなお母さん/お父さんに褒めてもらえると、お子さまは「頑張ることは価値のあることなんだ」と感じて、どんなことに対しても努力し、さらに上を目指す姿勢を身に付けられるようになります。ですので、ご家庭においては、ぜひお子さまの頑張りを積極的に見つけて褒めるようにしていただければと思います。

15. 志望校の選び方が分からない

志望校の選び方が分からない場合は、以下の8つのポイントに注目しながら検討を進めると良いでしょう。また、志望校を検討する際には、以下の8つのポイントについてお子さまと保護者さまが一緒に確認しながら話し合って決めるようにすると、親子とも志望校合格に向けて一丸となって頑張れる場合が多いです。

さらに、発達障害やギフテッドなどの特性を持っているお子さまについては、1~8のポイントのほか、「発達障害のお子さまの志望校の選び方」「ギフテッドのお子さまの志望校の選び方」でさらに詳しく志望校の選び方を解説していますので、ぜひご覧ください。

併せて、志望校を決める際にはパンフレットやホームページを見るだけでなく、必ず現地に足を運び、学校の雰囲気を肌で感じるようにしましょう。入学した後に「思っていた雰囲気と違う」となってしまっては、せっかく合格したにもかかわらず充実した学校生活を送ることが難しくなってしまいます。

ですので、学校説明会やオープンキャンパス、そしてできれば普段の学校の姿(在校生の振る舞いや登下校の様子など)も現地に足を運んで確認するようにしましょう。

ポイント①自由度は高いか

校則が厳しくなく自由に過ごせる学校もあれば、規則正しく学校生活を送ることを重視している学校もあります。自由度の高い学校と低い学校、どちらとの相性が良いかはお子さまによって異なりますが、

・自由度の高い学校 →学校や社会のルールに疑問を感じることが多く、ルールが無くても自律的に考え行動できるお子さまと相性が良い
・規律を重んじる学校 →ルールがあった方が勉強や部活を頑張れるお子さまと相性が良い


という場合が多くなっています。

お子さまの性質やそれぞれの学校の校風をしっかりと分析して判断していただければと思います。

ポイント②偏差値

志望校を選ぶ際には、偏差値も大きなポイントとなります。偏差値は高ければ良いというものではなく、お子さまがどれだけ勉強を頑張りたいと思っているか、あるいは勉強自体にアイデンティティを感じているかどうかなどを踏まえて判断していく必要があります。

一般的には、

・より偏差値の高い学校 →「自分は勉強が得意だ」と自負していて、勉強自体にアイデンティティを感じているお子さまと相性が良い。ただし、入学した後に平均点以下の成績になると、アイデンティティの崩壊が起こることが多いため、入学後も平均点以上の点数が取れるような学校に入る方が良いことも多くございます。
・実力に見合った偏差値の学校 →勉強への苦手意識が強いお子さまや、勉強以外に頑張りたいことがあるお子さまと相性が良い


と言えますが、これらの傾向を踏まえながらも、お子さまの性質に応じて個別に判断していただければと思います。

ポイント③課題の多さ

課題の量がどれくらいであるかも、志望校を選ぶ際には大きなポイントとなります。課題が多すぎると課題をこなすことで精一杯になってしまい、自分の苦手に応じた学習をすることが難しくなってしまうことがあります。

一方、課題が少なすぎると家でなかなか勉強しないというお子さまもいらっしゃいますので、お子さまの性格や性質を見極めて判断していく必要があります。

課題が多い学校と少ない学校について、それぞれ相性の良いお子さまの傾向は以下のとおりとなります。

・課題が多い学校 →自学自習が苦手で、課題を示されないと勉強に取り組めないお子さまと相性が良い
・課題が少ない学校 →指示されなくても自学自習できるお子さまや、勉強以外にやりたいことがあるお子さまと相性が良い

ポイント④通学時間

志望校を選ぶ際には、通学時間も非常に重要です。基本的には通学時間が短い方が時間や体力を節約できるためメリットが大きいと言えますが、人間関係を一新したいと考えているお子さまの場合は、自宅から離れている学校の方が過ごしやすいこともありますので、お子さまの状況に応じて判断していくと良いでしょう。(一般的には中学生・高校生では乗り換えが1回以内、片道1時間以内を基準とされることが多いです)

・通学時間が短い →出身校が同じ子がいると安心できるお子さまや、自由時間を確保したいお子さま、体力が少ないお子さまと相性が良い
・通学時間が長い →人間関係を一新したいと考えているお子さまや、通学時間を有効活用できるお子さまと相性が良い

ポイント⑤小中高一貫校や大学付属校であるか

小中高一貫校や大学付属校である場合、受験を気にせず自由に過ごせるなどのメリットがある一方で、受験を通して大きく成長してほしいと保護者さまが考えている場合はその機会が得られなかったり、私立の場合は経済的な負担が非常に大きくなったりするというデメリットがあります。

小中高一貫校や大学付属校のメリットとデメリットについては以下のとおりですので、これらを踏まえて検討していただければと思います。

・メリット →受験を気にせず自由に過ごせる/早い段階から進路を確定させられるため安心
・デメリット →「受験のために頑張る」という経験が得られない/私立の場合は経済的な負担が大きい

ポイント⑥共学・男子校・女子校

共学を選ぶか、男子校や女子校を選ぶかについては、その学校の伝統や校風も踏まえながら検討していくようにしましょう。

現存している男子校・女子校のほとんどは長い歴史を持つ伝統校であり、その学校ならではの色濃い教育方針を持っている場合が多くなっています。「男子校・女子校だと、異性の目が気にならず勉強に打ち込めそう」という一般的なイメージがあるかもしれませんが、それ以上にその学校が持っている雰囲気や教育方針を詳しく調べておくことが大切です。

パンフレットやホームページを見るだけでなく、必ず学校に足を運び、学校説明会やオープンキャンパス、そして普段の学校の様子をよく見ておくようにしましょう。

ポイント⑦受験科目の配点

志望校を選ぶ際には、受験科目の配点にも注目しましょう。基本的には、得意科目の配点が高く、不得意科目の配点が低い学校を選ぶのがお勧めとなります。

ただし、倍率が高い学校の場合などは、配点だけでなく難易度まで踏まえて対策を考えていく必要があります。受験科目の配点や難易度を踏まえた志望校選びについては専門的な知識が必要になりますので、受験に詳しい塾や家庭教師の先生に相談しながら検討していくようにしましょう。

ポイント⑧出題形式

志望校を検討する際には、入試問題の出題形式にも注目しましょう。字を書くのが苦手なお子さまの場合は、記述式ではなくマーク式の学校を選んだり、作文が苦手なお子さまの場合は作文や小論文の出題が無い学校を選んだりすると良いでしょう。

また、特定の単元が頻出である学校も多くなっています。立体図形や確率など、特定の単元が苦手なお子さまの場合は、それらの単元が頻出となっている学校は避け、逆に自分が得意な単元からよく出題される学校を選ぶようにしましょう。

発達障害のお子さまの志望校の選び方

発達障害のお子さまの場合は、お子さまの特性に合わせた丁寧な指導を受けられるかどうかが非常に重要なポイントになります。

画一的な指導を行う学校の場合、発達障害のお子さまは周りについていけなかったり、適切な配慮を受けられなかったりして、大きなストレスを感じてしまうことがあります。結果として学力不振や自信・気力の低下につながり、不登校の状態に陥ってしまう場合もあります。
ですので、入学前には一人ひとりの特性に合わせた丁寧な指導が受けられるかどうかをしっかりと確認しましょう。具体的には、

・発達障害の特性を持っている在校生がいるかどうか(もしくは、個性的な生徒が多いかどうか、その土壌となる自由な雰囲気かどうか)
・その子たちが楽しく前向きに学校生活を送れているどうか


などについて、口コミ等も踏まえながら判断するのが大切です。

学校説明会や事前相談会などでは、「一人ひとりに合わせてフォローする」といった説明をしてもらえるかもしれませんが、残念ながら実態が伴わず、十分な配慮が受けられなかったり、勉強についていけない子をフォローする体制が整っていなかったりする学校もありますので注意しましょう。

勉強についていけなかったり、ストレスから不登校になり出席日数が足りなくなったりすると、内部進学できず、せっかく合格できたのに途中で退学しなければならなくなってしまうケースも実際にあります。

ですので、学校側の説明だけでなく、実態についても事前に十分確認することが大切です。

ギフテッドのお子さまの志望校の選び方

ギフテッドのお子さまの場合は、「ポイント①自由度は高いか」や「ポイント③課題の多さ」、「入学後に学力が平均以上の立ち位置でいられそうか」が特に重要なポイントになります。

ギフテッドのお子さまは、周りからあれこれと指示されるよりも、自分で考えて自由に学び、行動することを好む場合が多いです。そのため、規則が厳しかったり、課題が多かったりする堅い校風の学校とは相性が悪い場合が多いです。

特にギフテッドのお子さまが目指すような偏差値の高い学校は、ほとんどの場合、

A.課題をたくさん出し、厳しい環境に耐えさせることで生徒を伸ばす(→勉強が苦手な子でも一定は成果が出せる。ただし、完全にドロップアウトしてしまう子もいる)
B.課題は最低限しか出さず、生徒の自主性を重んじる(→完全にドロップアウトする子は少ないが、勉強をする子としない子の差が開きやすい)


の2タイプに分かれます。

ギフテッドのお子さまはBタイプの学校の方が過ごしやすい一方、自分に合った勉強方法が見つけられないと、進学の際に苦労する場合もあります。

基本的にはBタイプの学校を選びつつも、個別指導塾やプロ家庭教師などを利用し、お子さまが適切な学習習慣を身に付けられるようサポートすると良いでしょう。

また、ギフテッドのお子様は勉強ができることをアイデンティティーに感じておられるお子様も多く、学校の母集団の中で平均点以下を取られると大きなショックを受けることも多いです。

そのような逆境の中で、「這い上がる力」を持っているギフテッドのお子様は問題ございませんが、這い上がる経験をされていない場合、大きなショックを受けられたストレスから大きく自己肯定感が低下して、不登校にまで至ることも多くございます。(受験業界では「深海魚」というワードで呼ばれているほど、よくある実例です)

そのため、這い上がる経験をされていない場合、「入学後も成績が平均点以上に位置しそう」な学校を選ばれることで、その様な事態を防ぐことができるので、学校選びのご参考にいただければと思います。

16. 授業に集中できない、先生の話を聞けない

授業に集中できなかったり、先生の話を落ち着いて聞くことができなかったりするお子さまがいらっしゃいます。その原因には、

・生まれつき集中するのが苦手な性質を持っている(=ADHD(注意欠如・多動症))
・集中しづらい環境である(うるさい、校庭での体育の様子が気になる、黒板の横の掲示物が多い、文房具で遊んでしまう 等)
・先生の話し方が合わない(声が大きすぎる/小さすぎる、早口である、ゆっくりと話し過ぎる 等)
・耳で聞いた情報を処理するのが苦手である


などが考えられます。

いずれの場合も、本人が集中しやすいように環境を整えてあげたり、話し方や伝え方を工夫したりすることで「話が聴けない、集中できない」という困りごとは改善していくことができます。

お子さまが話に集中できるようにするための工夫としては、

○周りが静かになってから話し始めるようにする
○カーテンを閉めて、校庭の様子が見えないようにする
○黒板横の掲示物は片付ける、またはカーテンなどで覆って見えないようにする
○必要な文房具以外は机やカバンの中にしまう
○口頭だけでなく、プリントや板書でも説明する(視覚的にも情報を伝達する)
○教室の席を一番前にしてもらう


などが挙げられます。

これらの対応は、生まれつき集中するのが苦手な性質(不注意特性)を持っているADHDのお子さまだけでなく、定型発達のお子さまにとってもより集中しやすくなるというメリットがあるため、こうした環境の調整ができないか学校と相談してみると良いでしょう。

また、担任の先生は必ずしも発達障害に関する知識が豊富であるとは限らないため、こうした配慮について相談する際には、保健室の先生やスクールカウンセラー、特別支援コーディネーターの先生など、発達障害に関して理解がある先生も同席してもらえると、よりスムーズに話を進められる場合があります。

ですので、学校に相談する際には、例えば「発達障害の特性についても詳しく相談したいので、保健室の先生(スクールカウンセラー、特別支援コーディネーター等)に同席してもらうか、別で相談の場を設けてもらえると嬉しい」と面談の際に伝えてみたり、あるいはスクールカウンセラーの教育相談を利用して、スクールカウンセラーを通して「集中しづらいので教室の環境を調整してほしいと思っている。担任の先生を交えて話す機会を設けてもらえないか」と相談してみたりするなど、具体的な希望を伝えることによって、学校にもスムーズに対応してもらえる場合が多くなっています。

逆に、例えば「集中しづらいようなので何とかしてほしい」のように、こちらの希望を漠然とした形で伝えてしまうと、担任の先生は「他にも集中しづらい子はいるし、この子にだけわざわざ対応しなくても大丈夫だろう」と考えてしまうかもしれません。また、「黒板横の掲示物を無くしてほしい」などのように結論だけ伝えてしまうと、「掲示物はクラス運営に必須なもの。無くすことはできない」と判断されてしまうかもしれません。

こうしたケースを避けるためにも、「希望を具体的に伝える」「保健室の先生やスクールカウンセラー、特別支援コーディネーターを交えて話す」という点は非常に重要ですので、ぜひ参考にしていただければと思います。

集中のしづらさの要因が先生の話し方によるものである場合は、保護者さまが担任の先生に「もう少しゆっくり話してほしい」などと伝えても良いですが、直接伝えるのは難しいと感じる方も多いと思います。その場合は上述のように、担任の先生以外で発達障害に理解のある先生に同席してもらったり、スクールカウンセラーを通して対応を依頼してみたりすると良いでしょう。

ただし、教室にはお子さま以外の子どもたちもいます。お子さまにとってはちょうど良い声の大きさ・話すスピードであったとしても、ほかの子にとっては大きすぎたり小さすぎたり、早すぎたり遅すぎたりする可能性があり、全員にとって聞きやすい話し方というのがそもそも存在しないようなケースもあります。

また、クラスの中にやんちゃな子がいる場合は、どうしても大きな声で叱らざるを得ない場合もあります。そのような場合には、「怖いと感じたら教室の外に出る(保健室や別室に行く 等)」も選択肢となりますので、担任の先生やスクールカウンセラーの先生などとよく話し合い、お子さまにとってより良い対応について検討していただければと思います。

さらにお子さまの中には、「そもそも他の子がいる状況では集中できない」というタイプの子もいます。そういったケースにおいては、集中しなければいけない国語や算数などの教科については別室で授業を受け、学活や総合的な学習の時間など、ほかの子どもたちと一緒に活動する必要があるものについてはクラスの教室で授業を受けるなど、さらに柔軟な対応が必要になる場合もあります。

別室で授業を受ける場合などは、そのために追加で先生を配置するなどの対応も必要になり、調整に時間が掛かったり、予算や人が足りないために実現できなかったりする可能性もあります。もし対応が難しいと学校に言われた場合は、その理由を確認し、やむを得ない事情がある場合は別の手段を検討する必要があります。

また、学校に対して相談や交渉をする際には、普段から学校と良好な関係を築いておくことが大切です。学校行事やPTAなどに普段から積極的に参加・協力していると、学校側も「あの保護者さまの希望なら叶えてあげたい」と感じて前向きにお子さまの支援に取り組んでくれる場合が多いです。ですので、お仕事などが忙しい中であるとは思いますが、できるだけ学校行事等には参加し、学校と良好な関係を築いていただければと思います。

(関連項目→81.不登校の状態にあるが、学校の対応に納得できない

17. 机に向かっている時間が長く、毎日コツコツ勉強しているのに成績が上がらない

要因①:解法パターンを暗記するだけの勉強になっている

単純に時間を掛ければ問題が解けるようになるのは、基礎~標準レベルまでです。これらのレベルの問題であれば、パターンを暗記することで解けるため、どんなに暗記が苦手なお子さまであっても時間を掛ければいずれは解法を覚えて点数が取れるようになります。

一方、発展問題や応用問題については、基本的な概念を本質的に理解し、それらを使って自分で考えながら解く必要があるため、当然ながら丸暗記では太刀打ちできません。

また、小学校までは丸暗記の勉強法でもテストで100点が取れますが、中学校に上がり内容が難しくなってくると、上述の理由から丸暗記では点数が取りづらくなります。「中学校に上がってから成績が落ちた」というお子さまの多くは、このパターンに当てはまります。

対策としては、問題を見たときに反射的に解くのではなく、基礎問題であっても「何を問われているのか」を落ち着いて考えるクセを付けることが大切です。有名な学習塾の中には、ひたすら反復練習をさせて反射的に解かせることを指導方針としているところもありますが、小学校まではそれで点数が取れても後々になって苦労することが多いため、あまりオススメはできません。

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要因②:分かっている問題ばかりを解いている

分かる問題や簡単な問題を解くのが楽しく、そうした問題ばかりを解いて勉強した気分になっているお子さまもいらっしゃいます。当然のことではありますが、分からない・解けない問題を解けるようになるから点数は上がるのであり、解ける問題ばかり解いていても点数は上がりません。

もちろん、私たちプロ家庭教師もお子さまのモチベーションを上げるために、取っ掛かりとして簡単な問題から入ることはありますが、その後は必ず難易度を上げて難しい問題にもチャレンジしてもらいます。

お子さまが簡単な問題ばかり取り組んでしまう原因としては、

①「自分が解くべき問題(苦手な問題)」が何かを考えず手当たり次第に解いていて、結果として分かっている問題ばかり解いてしまっているから
②分かっている問題をサクサク解く方が気持ちが良いから
③「間違えることや分からないことは恥ずかしい」と思っていて、難しい問題を避けるから


といったものが挙げられます。

「①『自分が解くべき問題(苦手な問題)』が何かを考えず手当たり次第に解いていて、結果として分かっている問題ばかり解いてしまっている」というタイプのお子さまの場合は、解くべき問題を大人が一緒に選んであげることで、お子さまにとって本当に必要な問題に絞って取り組むことができるようになります。

「②分かっている問題をサクサク解く方が気持ちが良いから」というお子さまの場合は、簡単な問題を解くことが勉強するモチベーションの一部にもなっています。そのため、いきなり難しい問題を解かせると勉強自体が嫌になってしまう可能性があるため、ある程度は簡単な問題を解かせつつも、たまに難しい問題を混ぜることで、少しずつレベルアップできるようにしていきます。

「③間違えることや分からないことは恥ずかしい」と思って難しい問題を避けてしまうお子さまの場合は、「間違えても大丈夫、失敗しても受け入れてもらえる」という自己肯定感を育むことがポイントになります。幼少期から失敗に慣れさせるとともに、「失敗しようが成功しようがあなたは大切な存在だよ」ということをご家庭においても言葉と態度でこまめに示すようにしましょう。

また、間違えた際には「ここまで解けているのはすごい!」など間違いを否定しないような声掛けを意識することで、間違いを恐れず難しい問題にも挑戦できるようになっていきます。

要因③:机に向かってはいるが勉強に集中できていない

机に座って教科書とノートを開いていても、ぼーっとして集中していない時間が長い場合があります。周りがうるさかったり、窓の外の景色に気が取られてしまったりすることが原因の場合もありますし、ADHD(注意欠如・多動症)の特性によってどうしても集中するのが苦手というお子さまもいらっしゃいます。

こうした性質を持っているお子さまの場合は、タイマーを鳴らして勉強時間を細かく区切ったり、1問解くごとに部屋を一周歩いてみたりするなどして、集中のリズムを作ってあげると良いでしょう。

また、集中しやすい環境を整えることも大切ですので『1. 勉強に集中できていない』の内容なども参考にしていただければと思います。

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要因④:勉強に対する自信が無い

「自分は必ずこの問題が解けるようになる」と自分を信じて勉強に取り組んでいるお子さまと、「勉強したとしても自分にはこの問題は解けないだろう」と最初から諦めてしまっているお子さまとでは、学習の定着率は驚くほど異なります。長時間勉強しているにもかかわらず学力が伸び悩むお子さまの場合は、自信が無く「できるようになった自分」を上手くイメージできていないことが伸び悩みの原因である可能性があります。

自分に自信が無く、勉強に対して後ろ向きになってしまっているお子さまの場合は、まずは自信を付けるために簡単な課題からチャレンジし、「自分にもできる」「勉強すれば点数が上がる」という実感を持ってもらうことが大切です。

例えば、英単語であれば耳なじみのある単語を中心とした小テストを作成し、敢えて点が取りやすい状況にします。その小テストで点が取れたり、上がったりしたら「習ったばかりの単語も多いのに、ちゃんとできたね!すごい!」としっかりと褒め、自分にもできるのだとお子さまが思えるよう手助けしてあげると良いでしょう。

あるいは、宿題や課題に取り組む際に、講師と一緒に問題の内容を事前に確認し、必要に応じて講師が問題について軽く解説するなどして、「これなら解けそう」とお子さまが思えてから問題に取り組むという方法も効果的です。

自信が無いお子さまは、問題に対する苦手意識が強いため、本当はじっくり考えれば自力で解ける問題でも、「難しそう、解けなさそう」という感情に負けてすぐにギブアップしてしまうことがあります。

ですが、事前に講師が解法の道筋をある程度示すことで、「自分にも解けそうだ」と感じ、いつもはすぐに諦めてしまう問題に対しても、粘り強く取り組めるようになります。

テストで点が取れたり、いつもは解けない問題が解けたり、そしてそのことで褒められたりすると、お子さまは少しずつ「勉強って楽しいかも?」「自分にもできるかも?」と思えるようになり、勉強に対して前向きに取り組むことができるようになります。

逆に勉強に対して自信が持てない状況が続くと、今は勉強ができていても、いずれ「いくら勉強しても意味がない」と感じて勉強時間自体が減ってしまうこともあります。勉強に対する自信の無さはスマホやゲームに逃げてしまう原因の一つにもなりますので、お子さまが自信を持てるような仕掛けづくりについて、ぜひ意識していただければと思います。

要因⑤:定期テストや模試の分析ができていない

テストや模試の分析が不十分で、点数を上げるために必要な勉強ができていない場合があります。極端な例を挙げるとすれば、二次関数のテストなのに、図形問題の練習ばかりしていて点数が上がらないというようなケースです。

ここまで極端なケースは稀ですが、例えば、

・記述式のテストなのにマーク式の演習ばかりしている
・難易度が低すぎる(または高すぎる)問題を解いている
・特定の問題集やプリントからの出題がほとんどなのに、教科書ばかり参照している
・応用問題でよく間違えるのに、基礎・標準問題ばかり解いている(関連項目→17. 要因②:分かっている問題ばかりを解いている


などは非常によくあるケースとなっています。

このように、テストの内容に応じた対策が行えていないと、本番で上手く点数を取ることができなくなってしまいます。こうした問題を解決するためには、定期テストや模試の出題傾向や自分がどんな問題で間違えやすいかをしっかりと分析し、出される問題の内容や難易度をある程度予想しながら対策していく必要があります。

テスト前になると、「とにかく手を動かして問題を解かなければ!」と焦ってしまうことも多いと思いますが、まずは何を勉強すべきかをしっかりと理解した上で計画的に勉強に取り組みましょう。そうすることで、勉強の効率は格段に上がります。

お子さま本人やご家庭だけでテストの分析を行うことが難しいと感じる場合は、塾や家庭教師の先生と一緒に取り組むと良いでしょう。特に学年が上がり、勉強の内容が広く・深くなると、テストの分析は一筋縄ではいかなくなってきます。テストの分析は勉強の質を大きく左右しますので、もし塾や家庭教師を利用される場合は、テスト分析のサポートが充実しているかどうかもチェックポイントの一つとなります。

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18. 間違えた問題の見直しをしたがらない/間違いを指摘すると怒る

要因①:自分の間違いを認めるのが怖い

間違えたところを復習するように言っても「面倒くさい」「嫌だ」と手を付けたがらないお子さまの心理として、「自分の間違いを認めたくない、怖い」というものがあります。

幼少期から「間違えると怒られた」という経験や、逆に「上手くいったときだけお母さん/お父さんは褒めてくれる」という経験が積み重なると、“間違い=悪”と刷り込まれてしまい、自分の間違いを認められない子になってしまいます。

こうした経験は、間違えた部分の見直しができないだけでなく、完璧主義や白黒思考(物事を良いか悪いか、ゼロか百かなど両極端に捉えてしまうこと)にも陥りやすくなり、大人になってからの生きづらさにもつながります。

自己肯定感という人格形成の最も大切な部分に関わることですので、失敗しようが成功しようが、あなたはそこにいるだけで価値があるということを幼い頃から言葉と態度でしっかりと示してあげることがとても大切です。

また、既に自己肯定感が下がってしまい自分の間違いから目を背けたがるお子さまの場合は、お子さまの態度を否定せず、それとなく間違えた箇所に関する問題を解かせるなどして対症療法的に対応していきましょう。

併せて、下がってしまった自己肯定感をケアするためにも、答えの無い問い(例:理想の学校とは?/人々の便利な暮らしと環境保全は両立するか?など)を話し合い、「自分の意見を聞いてもらう」「人の意見を受け入れる」という経験をさせてあげると良いでしょう。その際、決してお子さまの話を遮ったり否定したりせず、また、他の子どもや保護者さまの意見と自分の意見が違っても構わないということを伝えていきましょう。

要因②:間違い直しはしなくても良いと思っている

間違い直しをやりたがらないお子さまは、「問題を解いたのだからそれで良い」と考えている場合があります。根本には「勉強が面倒くさい、嫌だ」という思いがあり、

①勉強のメインは問題を解くことである
②間違い直しはオマケのようなもの
③少しでも勉強の負担を減らしたい
④オマケである直しは省略してしまおう


といった思考回路で間違い直しを避けようとする傾向にあります。

このような場合には、「間違いを直すからこそ、次に間違わないようになって点数が上がる。つまり、間違い直しこそ大切であり勉強のメインである」ということを丁寧に繰り返し伝えるとともに、お子さまが「間違い直しは大切である」という実感を持てるようにすることが重要です。

例えば、間違い直しをした後に、似たような問題に正解できたり点数が上がったりした場合は、「間違い直しをしたから正解できたね!」など、間違い直しの重要性にお子さまが気付けるような声掛けをしていくと良いでしょう。このようなお子さまの場合は、間違い直しの重要性に気付くことができれば、自分から前向きに間違い直しができるようになりますので、ぜひ実践していただければと思います。

要因③:完璧主義である、こだわりが強い(特にASDの場合)

発達障害のうち、特にASDの特性があるお子さまの場合は、×マークが付くこと自体に不快感を覚えたり、完璧であることに強いこだわりを感じたりすることがあります。曖昧な概念を理解するのも苦手で、答えの無い問いに拒否感を示すこともあります。

そうした場合は無理をせず、18. 要因①で述べたように間違えた箇所に関する問題をそれとなく解かせるようにして対応しましょう。見直しを強要すると、勉強自体が嫌なものとしてトラウマになってしまい、そもそも机に向かわなくなってしまう場合もあります。

さらにASDのお子さまは、特定の教科の見直しだけを嫌がったりする場合があります。苦手な教科の場合は「苦手さを突き付けられているようで嫌だ」と感じたり、逆に得意な教科の場合は「得意な数学で間違ったことを認めたくない」といったプライドから見直しを避けたりすることがあります。似た理由で、ケアレスミスの見直しはできるけれど、問題の難易度が高くて解けなかった場合の見直しができないお子さまもいらっしゃいます。

このような場合は、見直しのストレスが少ない問題から少しずつ慣れていくとともに、見直しをした後に点数が上がるなどの効果が見られた場合には「見直しをしたから点数が上がったね」などの声掛けを行い、「見直し=良いこと」というイメージを持ってもらえるように働きかけていきましょう。

また、保護者さまや先生と一緒に見直しを行う際には、「間違っている」とはっきり伝えるのではなく、「こうした方がもっとスマートに解けるよ」など伝え方をマイルドにすることで見直しに対する抵抗感を和らげることも効果的です。

★もっと詳しく知りたい方にオススメの記事→アスペルガー(ASD)の性質を活かした、オススメ勉強法7選 | 発達障害・ギフテッド専門のプロ家庭教師 メガジュン (pro-megajun.com)

19. 問題を解きっぱなしで、どこを間違えたのかチェックをしない

問題を解きっぱなしで、どこを間違えたのか見直さないというお子さまは、「勉強をさっさと終わらせること」が目的になってしまっています。勉強の本来の目的は、間違いを見直して次に間違わないようにすること(=点数を上げること)なのですが、間違いのチェックをしないお子さまは、そうした本来の目的よりも「勉強が面倒くさい、嫌だ。だから早く終わらせたい」という気持ちが勝っているために、解いたら解きっぱなしの状態になってしまっています。

また、中には「点数を上げたい」というモチベーションがそもそも低く、「間違い直しをすれば点が上がることは分かっているけれど、特に点を上げたいとも思わない」というお子さまもいらっしゃいます。この場合は、お子さまが「点数を上げたい、テストで良い点を上げたい」と心から思えるように、上手く誘導してあげる必要があります。

そこで、問題を解きっぱなしで間違い直しをやりたがらないお子さまに対しては、

①間違い直しをするメリット(=点数が上がる)ことを実感させ、「面倒くさい」という気持ちよりも、「間違い直しをしよう」という気持ちが上回るようにする
②「点数を上げたい」というモチベーションを上げる


という2つのアプローチが効果的になりますので、以下で詳しく解説していきます。

①間違い直しをするメリット(=点数が上がる)ことを実感させ、「面倒くさい」という気持ちよりも、「間違い直しをしよう」という気持ちが上回るようにする

間違い直しをするとメリットがある、すなわち、問題を解きっぱなしにするよりもきちんと間違い直しをした方が点数が上がるということをお子さまに実感してもらうためには、小テストなどのボリュームの少ない課題からチャレンジしていくのがおすすめです。

というのも、小テストであればボリュームも少なく、「解く」「見直す」という作業の負担が少なくて済みます。そのためお子さまも、保護者さまや先生から「とにかくやってみよう」と勧められた際に、「これくらいの量ならやっても良いかな」と気持ちが動く場合が多くなっています。

また、小テストであれば、

問題Aを間違えた
  ↓
問題Aの見直しをした
  ↓
次の小テストで、問題Aを間違えなかった=点数が上がった


というように、「間違い直しをすれば、次のテストで問題を間違わなくなって点数が上がる」というプロセスをより分かりやすく短期間で実感することができます。

逆に、定期テストや模試の場合は、範囲が広いことに加え、結果が返ってくるまでに時間もかかるため、「間違い直しをしたから点数が上がった」ということが実感しづらくなります。ですので、お子さまに間違い直しのメリットを実感させる際には、小テストを用いるのが非常にオススメとなります。

このような「小テストの間違い直し→点数アップ」のプロセスを何度も繰り返していくことによって、お子さまは“間違い直しをすれば確かに点数が上がる”と実感することができ、間違い直しについて嫌がらずに取り組めるようになっていきます。

また、中には「間違い直し」と「点数アップ」を原因と結果として上手くつなげられず、「今回はたまたま上手くいった/上手くいかなかった」と捉えてしまうお子さまもいらっしゃいます。ですので、間違い直しの成果が出ていたら必ず「前回のテストでは問題Aを間違ってしまっていたけど、今回は解けているね。きちんと間違い直しをきちんとしたからだね」と声を掛け、間違い直しが点数アップにつながっているということにお子さまが気付けるようサポートしてあげることも大切です。

②「点数を上げたい」というモチベーションを上げる

テストで点を取りたいというモチベーションが低いお子さまに対しては、その子がどのようなことであれば頑張りたくなれるかを見極めることが重要です。お子さまが興味を持っているものや、勉強以外で積極的に取り組んでいること(過去にハマっていたものなども含む)を詳しく分析し、その子が何に魅力を感じ、どのような状況で努力しやすいかを見極めていきましょう。

例えば、ゲームに熱中できるお子さまであれば、どんなゲームが好きで、どのように遊んでいるかをよく観察します。難易度の低いステージで快適にプレイするのが好きな子もいれば、他のプレイヤーよりも早くそのステージをクリアして周囲から称賛されたい子、ゲームの世界を探索するのが好きな子、アイテムをコンプリートしたい子、対戦ゲームで勝つのが好きな子など、ゲームの遊び方はお子さまによって実に様々です。

それゆえに、ゲームの遊び方にはその子の個性が表れており、それぞれの性質に合わせたアプローチで「頑張ろう(頑張りたい)」という気持ちを引き出すことがポイントになります。

例えば、「難易度の低いステージで快適にプレイするのが好き」というお子さまの場合であれば、勉強でも、まずは難易度の低い簡単な問題から取り組ませます。

このようなお子さまは、行動の根底に「弱い敵をストレスなく倒していく快感」があり、その快感を得るためにゲームをしていると考えられます。したがって、勉強にもこの「ストレスなく進める快感」を取り入れることで、勉強に向かう気持ちを引き出すことができます。

まず第一段階として、本人がスムーズに解ける問題から始めて、勉強でもゲームと同様に「サクサク進められる」という快感を体験させます。お子さまが勉強でも「サクサク進める快感」を感じることができ、「勉強もやってみると意外と楽しいかも」と思い始めたら、次に簡単な問題の中に、本人に分からないように「少し難易度の高い問題」や「志望校の入試で実際に出題された問題」(ただし、現在の本人の実力でも必ず解けるもの)を混ぜて出題します。

本人が問題をひととおり解き終えたら、「実はこの問題は難しい(志望校の実際の問題)んだよ」と伝えます。すると本人は、スムーズに解ける問題の流れで難しい問題が解けたため、「難しい問題も怖くない」「意外と自分にも解けるのだ」と感じ、他の難しい問題や入試問題にも挑戦しようというモチベーションが持てるようになっていきます。

難易度の低い問題以外にも挑戦しようというモチベーションが湧いてきたら、さらにやる気を奮い立たせるために、「この調子で難易度が上がれば、クラスで○位以上になれるかも/次のテストで○点取れるかも/ライバルの○○くんに勝てるかも」など、本人が意識している目標や基準点を示しながら、難易度の高い問題に挑戦する動機をさらに誘導していきます。

ここまで来ると、「テストで点を取りたい」という欲求が少なかったお子さまも、ほとんどが自ら「テストで良い点を取りたい」と思えるようになっています。ここで初めて、「テストで点を取るためには、問題を解きっぱなしにするのではなく、間違えた問題はきちんと見直して、次に間違わないようにする必要がある」という言葉がお子さまにとって意味を持つようになっていきます。

問題を解きっぱなしで間違い直しをしないお子さまの中には、そもそもテストで点を取りたいというモチベーションが低く、「別に学力が身に付かなくても良い」と思っている子もいるため、まずは本人が「テストで点を取りたい」と思えるように気持ちを誘導してあげることが大切です。

また、ここでは「ゲームが好きで、特に難易度の低いステージを気持ちよくプレイするのが好きな子」を例に挙げましたが、ゲームでも他の遊び方を好む子や、ゲーム以外の趣味を持っている子についても、「なぜその子がその遊び方や趣味を好むのか」を詳しく分析することで、お子さまのモチベーションを上手く誘導することができます。

お子さまの気持ちが勉強に向かない時には、お子さまが何に対してであれば頑張れるのか、その根本にある動機は何かを分析し、気持ちが勉強に向くように上手くサポートしていただければと思います。(関連項目→34.勉強でとにかく楽をしようとする、答えを写す

20. 提出物やテスト範囲の把握、大事な約束などでうっかりミスが多い

提出物やテスト範囲の連絡、大事な約束などでうっかりミスが多いお子さまの場合、その原因としては、

・ADHDの不注意特性
・メモを取る習慣が無い
・大事なことでも、「大事ではない」と誤って認識してしまっている


などが考えられます。

いずれの場合もこまめにメモを取ることによって改善できますが、こうしたお子さまはそもそもメモの取り方やメモを取るタイミング自体が分かっていないことも多いため、「メモを取るように」と指示するだけでなく、

①筆箱に入るサイズのメモ帳を用意して、いつでもメモできるようにする
②メモ帳はあちこちに移動させず、筆箱の中やカバンのポケットなど、定位置を決める
③「宿題」や「テスト範囲」など、何をメモするか(何が重要であるか)を最初から決めておく


など、具体的な対策を行うことが大切です。

例えば、「①筆箱に入るサイズのメモ帳を用意して、いつでもメモできるようにする」については、「メモをしなきゃ!」と思ってメモを探しているうちに大事なところを聞き逃してしまう…といったミスが多いお子さまに対する工夫として効果的です。筆箱の中にメモ帳を入れておけば、メモをしたいときにすぐに取り出してメモできるようになります。

「②メモ帳はあちこちに移動させず、筆箱の中やカバンのポケットなど、定位置を決める」も同様に、メモをしたいときにすぐにメモできるようにするという目的のほか、メモした紙自体を失くしてしまうお子さまも多いため、定位置を決めることでメモを失くさないようにするという効果が期待できます。

「③『宿題』や『テスト範囲』など、何をメモするか(何が重要であるか)を最初から決めておく」については、何をメモすべきか(何が重要か)を判断するのが苦手なお子さまに対して効果的な方法となります。メモすべきかどうかをその都度判断していると、重要なことでも「メモしなくてよい」という判断ミスをしてしまったり、「メモすべきかどうか」を悩んでいるうちに話の内容を聞き逃してしまったりするかもしれません。そのため、「宿題の内容」「テストの範囲」「授業変更」など、メモすべきことをあらかじめ決めておくという方法になります。

特にADHDの方はワーキングメモリー(情報を保持しながら次の処理を行う脳の働きのこと。詳しくはこちらの項目(→22(エ)③ワーキングメモリー指標(WMI))で解説しています)が低いため、「この話はメモすべきか」と考えていると脳のワーキングメモリーが圧迫されて、肝心の話の内容に集中できない場合があります。そのため、何をメモすべきかあらかじめ決めておき、メモすべきかどうかを考えるプロセスを省略できるこの方法が非常にオススメとなります。

★もっと詳しく知りたい方はこちら→発達障害のメモの取り方の工夫とは?仕事を覚えられない人にオススメの方法10選 (pro-megajun.com)

21. 塾以外で勉強しない

要因①:スケジュールが過密なため、家では勉強する余裕が無い

まずはスケジュールが詰まり過ぎていないか確認しましょう。学校から帰ったら習い事があり、さらにその後は塾に行って、家に帰ってからも夜遅くまで勉強し、睡眠時間は6時間、自由時間は寝る前の30分だけ…というような余裕の無いスケジュールは望ましくありません。

ギチギチに詰まったスケジュールでもこなせるお子さまも中にはいらっしゃいますが、全員ができることではありません。そもそも小中学生の子どもに、働き盛りの大人のような生活を強いるのは無理があり、心身の調子を崩して病気になってしまうこともありますので注意が必要です。

ただし、高校生以上になればある程度体力や精神力が付くため、受験期の1~2年だけであればそうしたハードな生活でも耐えられるお子さまが増えてきます。お子さまの発達段階や特性に応じてスケジュールを調整してあげるのは周りの大人、特にご家庭の役割になりますので、食事や睡眠をしっかり取らせるとともに、その他の休養や遊びの時間も確保するようにしましょう。

勉強よりも心身の健康が大切であることは言わずもがなですので、スケジュールに余裕が無い場合は無理に家庭学習をさせず、学校と塾でしっかり勉強すれば大丈夫です。(関連項目→85.朝起きられない、生活リズムが不規則である

要因②:家の中に誘惑が多い

塾や学校では自習できるのに、家庭での学習になると身が入らない場合は、家の中にゲームやYouTubeといった誘惑が多いことが原因と考えられます。特に親や兄弟がゲームやスマホを触っている姿が目に入ると、ついつい自分もやりたくなってしまいます。

勉強するときはゲームやスマホが目に入らないよう別の部屋に置くなどして、まずは集中できる環境を作りましょう。また、保護者さまもお子さまの勉強時間に合わせてスマホから目を離し、読書や資格の勉強などをしたり、少なくとも家事をしたりするなどして、お子さまが「うらやましい、ズルい」と感じないようにすることが大切です。

要因③:予習・復習の方法が分からない

家庭学習ができないお子さまの中には、そもそも自習の仕方が分からない、何をすれば良いのか分からないという子もいます。宿題以外の家庭学習の方法が分からないという場合は、まずは大人が横について何をすれば良いか指示してあげましょう。

その場合は、復習から始めるのがオススメです。その日授業でやったことを聞き取り、同じ問題をもう一度解かせてみてください。「一度解いた問題を解いても意味が無い」と考えるお子さまは多いのですが、先生の解説無しで自力で解いてみると案外解けなかったりします。また、解けた場合でも「どうやって解いたのか、お母さん/お父さんに説明してみて」とお子さま自身に解説させることで、さらに理解を深めることができます。

家庭学習をさせるために、学校の教材に加えてドリルなどに取り組ませる方法もありますが、中学受験などを目指しているのでなければ教科書の内容だけで充分です。同じような問題をたくさん解くのを嫌がるお子さまも多いため、家庭学習をする場合は「量」ではなく「質」を深める方向で取り組むと良いでしょう。

もし保護者さまがお仕事などで忙しく勉強を見てあげることが難しい場合は、家庭教師を利用するか、もしくはスタディサプリなどのサービスを利用するのも良いでしょう。予習・復習のやり方が分からないお子さまでも、アプリがお子さまの苦手を分析して適切な問題を出してくれますし、タブレットを使った学習の方が楽しく取り組めるお子さまもいらっしゃいます。(参考:【公式】スタディサプリ|大人の英語も、受験勉強も。 (studysapuri.jp)

中学生以上の場合も方針は同じで、その日やった授業の内容をまずは振り返り、同じ問題を自力で解くことから始めましょう。中学生以上の場合は親が相手役にならずとも、先生になったつもりで口に出して問題を解説してみると良いでしょう。上手く説明できない部分は理解が曖昧ということですので、教科書に戻ってもう一度見直すと良いでしょう。

★もっと詳しく知りたい方にオススメの記事→【受験のプロの技、全公開】すぐに使える、効率的な勉強法13選 | 発達障害・ギフテッド専門のプロ家庭教師 メガジュン (pro-megajun.com)

要因④:宿題や課題のレベルが高すぎたり、量が多すぎたりする

学校や塾の課題になかなか取り掛かれなかったり、サボってしまったりするお子さまの場合は、宿題や課題の内容がお子さまの今のレベルに合っているかを確認してみましょう。あまりにも宿題の量が多かったり、内容が難しすぎたりすると、「やりたくない、しんどい」「終わらせられる気がしない」という気持ちが勝って勉強に向かえなくなってしまいます。

大人で置き換えて考えてみると、入社したての新入社員に重大なプロジェクトを任せたり、到底こなせるはずの無い膨大な量の事務作業を命じられたりしているということになります。当然、逃げたいという気持ちになってしまうでしょうし、実際に仕事を休んでしまう人もいるかもしれません。

お子さまの場合も同じように、負担が大きすぎると自己防衛のために宿題や課題を避けるようになってしまいます。前向きに課題に取り組むためには、本人にとって適切な量や難易度の課題を用意してあげることが大切です。

個別指導の塾や家庭教師を利用している場合は、先生に依頼して、本人のレベルに合った課題を出してもらうようにすると良いでしょう。また、学校や集団指導塾の場合は、本人に合った課題の範囲はどこまでかを見極め、例えば問1~5が宿題で出されている場合は、「問3まで解ければ大丈夫。問4と5はまだあとでじっくりやろう」などの声掛けをして、本人の負担感やプレッシャーを和らげてあげると良いでしょう。

お子さまのレベルに合った量や難易度をご家庭で見極めるのが難しいと感じる場合は、学校の先生や塾、家庭教師に相談し、専門的な視点から問題の取捨選択をしてもらうことをオススメします。

22. 宿題以外の勉強をしない

お子さまが宿題以外の勉強をしない原因には、以下の3つが考えられます。

①宿題以外に何を勉強して良いのか分からない
②宿題以外の勉強をするメリットを理解していない(面倒臭さが上回ってしまう)
③自分は勉強が苦手だから、宿題以外の勉強をしても意味が無いと感じている


お子さまがなぜ宿題以外の勉強をしないのか、まずは原因を突き止めるが大切です。また、これらの原因は重複していることもあるため、様々な角度からアプローチすることも重要です。

以下では、それぞれの原因に対するアプローチについて詳しく解説していきます。

①宿題以外に何を勉強して良いのか分からない

宿題以外に何を勉強して良いのか分からないお子さまの場合は、宿題以外の勉強方法について具体的に教えていく必要があります。

宿題以外の勉強の方法としては、「間違えた問題をもう一度解く」「自分に合った方法で暗記する(具体的な暗記の方法については「13. 暗記が苦手」をご覧ください)」などがありますが、さらに具体的に、

・いつ →例:学校から帰ったら/夕飯の後/土曜日の午前10時から など
・何を →例:算数のドリル/漢字の書き取り練習/日本史の暗記 など
・どのように →例:3問解いて自分で丸付けをする/10回ずつノートに書く/用語集2ページ分を赤シートで隠しながら覚えて、完全に答えられるようにする


などのように、計画と手順を明確に決めることで、宿題以外の勉強により取り組みやすくなります。

またこのとき、計画した勉強の量が多すぎると、計画どおりに勉強ができず「そもそも無理な計画なのだから、計画どおりにやらなくていいや」と気持ちが折れてしまうことがあります。ですので、計画を立てる際には、お子さまが確実にできる量や難易度の課題とすることがとても大切です。

加えて、保護者さまから「夕食後に算数のドリルを3問解こう」と具体的に伝えても、お子さまは「勉強しなさい」といつも言われているのと同じようのものだと感じて聞き流してしまい、なかなか指示通りに机に向かってくれない場合があります。(関連項目→8. 勉強しなさいと言うと機嫌が悪くなる

そのような場合には、保護者さま以外でお子さまが信頼や尊敬をしている大人(塾講師や家庭教師など)から具体的な勉強の計画を示して、「先生との約束だよ。必ずやってね」などと伝えると、お子さまが自分から勉強に取り組める場合が多くなっています。

②宿題以外の勉強をするメリットを理解していない(面倒臭さが上回ってしまう)

宿題以外の勉強に取り組むことのメリットを理解できておらず、勉強に対する面倒臭さが上回ってしまうお子さまは、「宿題以外の勉強に取り組むメリット」を実感させてあげることで、勉強に前向きに取り組めるようになる場合が多いです。

お子さまに「宿題以外の勉強に取り組むメリット」を実感してもらうためには、まずは少量かつ簡単な勉強に取り組み、その成果を小テストで測るという方法が効果的です。

学校のテストや模試の場合は、勉強の成果が出るまでに時間が掛かってしまうため、「勉強したから点数が上がった」という実感をお子さまが持つことが難しくなります。ですが、「簡単な演習→小テスト」という流れであれば、勉強の成果が短期間で分かりやすく現れるため、お子さまも「勉強にはメリットがあるのだ」と実感しやすくなります。

勉強するメリットが実感できておらず、ついつい勉強を後回しにしてしまうタイプのお子さまにおいては、小テストなどでスモールステップを設け、勉強の成果を実感しやすくするという方法が非常に効果的ですので、ぜひ実践していただければと思います。(関連項目→2. 要因②:勉強に対する自信の無さ、無力感

このほかにも、宿題以外の勉強として学校の授業の予習に取り組み、「いつもより授業が分かる」「問題が速く解ける」という状況を作ってあげることも、お子さまに宿題以外の勉強のメリットを実感してもらう方法としては効果的です。

塾や家庭教師を利用されているご家庭においては、「勉強に対して前向きな気持ちを持てるように(=「内容が分かることが楽しい」とお子さまが感じられるように)、学校の授業の予習を中心に取り組んでほしい」など、講師の先生に相談してみると良いでしょう。

③自分は勉強が苦手だから、宿題以外の勉強をしても意味が無いと感じている

自分は勉強が苦手なので、「宿題以外の勉強に取り組んでも意味が無い」とお子さまが感じている場合は、「勉強することで点数が上がる」ということをお子さまに実感してもらう必要があります。

「勉強することで点数が上がる」ということを実感させる方法としては、22. ②宿題以外の勉強をするメリットを理解していない(面倒臭さが上回ってしまう)で解説したように、「少量かつ簡単な勉強をする→小テストで成果を上げる」といったスモールステップを繰り返すことが効果的です。スモールステップを繰り返すことでお子さまは勉強の成果を実感することができ、「勉強には意味があるのだ」と思えるようになる場合が多くなっています。

また、個別指導の塾や家庭教師を利用している場合は、お子さまが自分で問題を解く前に、以前に解いたことのある類題を見せたり、講師が解答の大まかな道筋を示したりして、お子さまが「これなら解けそう」という気持ちになって自信を付けた状態で問題演習に挑むという方法も効果的です。「自信のある状態で問題を解く」という経験を積み重ねることで、勉強に対する苦手意識を払拭し、少しずつ前向きに勉強に取り組めるようになる場合が多くなっています。

また、講師が傍にいない状況で自学自習に取り組むときには、お子さまが自力で解ける問題や得意な科目の問題だけに絞って取り組むことで、勉強に対する自信や前向きな気持ちを保ったまま勉強できる場合が多いです。

このケースにおいては、「講師が横について、適宜解説しながら解くべき問題(=難易度が高めの問題)」と「講師がいない状況でもお子さまが自力で解ける問題(=難易度が優しめの問題)」をあらかじめ講師が選別しておくことがポイントになります。

勉強に対する苦手意識が強いお子さまの場合は、「自分にも解ける」という実感をまずは持ってもらうことが大切ですので、ぜひ実践していただければと思います。

23. 答えを出すことはできるが、時間が掛かる

時間を掛ければ答えは出すことができるものの、非常に時間が掛かってしまうというお子さまがいらっしゃいます。

その原因には、

①時間制限に対する意識が低い
②細かいところにこだわり過ぎる(ASD的性質)
③演習量(計算量、読書量)が少なく、問題を解く(計算する、問題文を読む)のに時間が掛かる


などがあります。以下では、それぞれの原因に対する改善策について解説していきます。なお、①②③の原因は重複していることもあるため、改善策についても複数の方法を組み合わせて取り組むことで、より高い効果が期待できる場合があります。

ですので、お子さまの状況や特性を分析しながら、それぞれに合った方法で取り組んでいただければと思います。

原因①:時間制限に対する意識が低い

時間制限に対する意識が低く、「いくらでも時間を掛けて解けばよい」と思ってしまっているお子さまの場合は、実際に時間を測りながら問題を解かせ、いつも通りのスピードで解いてしまうと本番の試験では間に合わないということを実感させることが重要です。

ただし、ただタイムオーバーするだけだと、「自分には時間内に解ききることができないのだ」と自信を喪失してしまう場合もあるため、時間を測りながら解く前に「今日は本番どおり60分で解いてみよう。大問が5つだから、1問あたり10分くらいで解くのが目標だね」と、事前に時間配分の目安を伝えておきます。

実際に解いてみた後には、「大問2でかなり時間を掛けてしまったね。でも、他の問題は大体10分くらいで解けていたよ。ということは、大問2のベクトルの問題を早く解けるようになれば60分以内で全部の問題を解ききれるから、これからはベクトルの問題を重点的に頑張ろう」など、どこに時間が掛かったかを講師と一緒に振り返り、これからきちんと対策すれば時間内に解けるようになることを伝えて、お子さまが前向きな気持ちで頑張れるようにサポートしていくことが大切です。

原因②:細かいところにこだわり過ぎる(ASD的性質)

「字の形が気に入らないからと、何度も書き直す」「問1から順番に解くことにこだわる」など、こだわりが強く、細かい部分に時間を掛け過ぎてしまうタイプのお子さまがいらっしゃいます。これは、発達障害のうちASD(自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群)の特性である「こだわりの強さ」とも関連があり、ASDの診断を受けているお子さま、あるいはASDのグレーゾーンのお子さまに特によく見られる傾向となっています。

細部へのこだわりは生まれつきの性質ですので、「気にしなくてよい」と声を掛けるだけではなかなか改善が難しいです。そのため、細かい部分に時間を掛け過ぎないよう、別のルールを設けてそれを守ってもらうという方法が効果的です。

具体的には、

・1問あたりに掛ける時間を事前に決めておき、その時間が過ぎたら必ず次の問題に進むようにする
・問題を解く順番を事前に決めておく


などの方法があります。

例えば、過去問を分析して、比較的得意な単元や難易度の低い問題が多い大問1と3は各9分、中くらいの難易度の大問2は12分、苦手な単元が出題されやすい大問4は15分、大問5は難易度が非常に高いため残りの時間で解けたら解く(ただし、5分は見直しに使う)など、難易度や得意不得意に応じて、問題ごとの時間配分をきっちりと具体的に決めていきましょう。

また、問題を解く順番についても、1から順番ではなく、難易度順に「3→1→2→4→5」というように事前に決めてしまうと良いでしょう。

問題を解く順番に関しては、「まずは問題用紙全体を見渡して、簡単そうな問題から解きましょう」ということがよく言われますが、こだわりが強いタイプのお子さまは「大問3から解くのは気持ち悪い」「いつも通り大問1から解きたい」と感じて最初から解いてしまったり、あるいは全体を見てもどれが簡単なのか判断できなかったりして、簡単なものから手を付けるということが難しい場合があります。

また、「難しいと感じたら別の問題を解きましょう」と指示しても、こだわりが強いお子さまは「問題を解いている途中で別の問題に移るのは、中途半端で気持ち悪い。この問題を解ききりたい」というこだわりが出てしまい、柔軟に対応することが難しい場合があります。

ですので、こだわりの強いお子さまにおいては、事前に「このテストは『3→1→2→4→5』で解くものだ」というルールを作ってしまい、そのルールに従って解くことにした方がストレスが少なく、効率良く問題を解き進めることができるようになります。

なお、各問題に掛ける時間配分や問題を解く順番については、過去問から難易度や出題傾向を分析し、お子さまの得意・不得意も踏まえながら決めていく必要があります。ご家庭だけで過去問を詳しく分析することは非常に難しいため、学校や塾の先生、家庭教師にアドバイスを受けながら決めていくようにしましょう。

原因③:演習量(計算量、読書量)が少なく、問題を解く(計算する、問題文を読む)のに時間が掛かる

問題を解く量(=演習量)や計算練習の量、読書をする量が少なく、問題を解くことや計算すること、問題文を読むことに時間が掛かってしまうお子さまの場合は、不足している練習量をいかに増やしていくかということが重要です。

「もっと練習(勉強)しなさい」と言うだけでは、お子さまにとって勉強は楽しいものではありませんので、なかなか言うとおりに勉強してくれることは少ないでしょう。お子さまを勉強に向かわせるためには、お子さま自身が「勉強すると問題が速く解けるようになる=勉強にはメリットがある」と実感する必要があり、加えて「勉強は面倒くさい、苦手だ」という拒否感も和らげていく必要があります。

「勉強すると問題が速く解けるようになる=勉強にはメリットがある」と実感させるためには、とにかく何かしら勉強をしてもらい、それによって速く問題が解けるようになったという経験をしてもらう必要があります。ですが、「勉強が面倒くさい、苦手だ」と感じているお子さまは、『とにかく何かしら勉強する』というステップすらしんどく、やりたくないと言うケースもあります。

ですので、勉強のメリットをまず実感させる段階においては、お子さまにとって簡単で取り組みやすい問題から始めることが非常に重要です。少しやってみて簡単に解き進められると、「サクサク解けて楽しい」「自分にもできるんだ」とお子さまが感じ、勉強に対する苦手意識を和らげていくことができます。

お子さまが簡単な問題を解けたら「勉強しているね、偉い」と声を掛け、勉強に対する前向きな気持ちをさらに応援してあげましょう。簡単な問題をたくさん解いているうちにお子さまは「思ったほど勉強は難しくないかもしれない、しんどくないかもしれない」と感じ始めて、以前よりも前向きに勉強に取り組めるようになっていきます。

また、問題をたくさん解いているうちに、解答のスピードも上がっていきます。問題を解くスピードが上がってきたら、「前よりも早く解けるようになっているね。たくさん練習したからだね」というように声を掛け、練習することで解くスピードが上がるということをお子さまが自覚しやすいようにアシストしてあげましょう。

文章を読む量(読書量)が少ないお子さまの場合も、最初は簡単な内容や比較的短い文章のものなど、ハードルの低いものから挑戦し、「長い文章=読むのが面倒くさい、難しそう」という先入観や苦手意識を和らげていくことが大切です。

また、お子さまが興味のある分野に関する本を1冊読ませて、「分厚い本でも読むことができた」という成功体験を得させてあげることも効果的です。1度でも1冊の本を読み切れたという経験があると、勉強で文章の長い問題に当たったときでも、「あの本が読めたのだから、この問題文くらいはきっと読める」という自信がつき、問題文を読む前から解くのを嫌がるといったことも少なくなっていきます。

24. いつもテストで時間が足りない

本番のテストでいつも時間が足りなくなってしまい、最後まで問題が解ききれなかったり、見直しができなかったりするお子さまがいらっしゃいます。

原因としては、

①時間を意識しながら解けていない
②1問目から順番に解いている
(最初に全体を見渡して、「どの問題に○分掛ける」という時間配分をしていない)
③問題を解くのに時間が掛かり過ぎている
④緊張している、自信が無いなど心理的な要因で精神キャパを取られている


などが挙げられます。それぞれの解決方法について、以下で順に解説していきます。

①時間を意識しながら解けていない

テストのときに時間を意識しながら解くことができていないお子さまの場合は、普段の演習のときから時間を測りながら問題を解くようにし、時間を意識しながら解く感覚を身に付けていくことが大切です。

時間を意識しながら問題を解くという感覚や習慣が無いと、テストのときにも制限時間を意識できず時間が足りなくなってしまいますので、普段から時間を測りながら問題を解き、「これくらいのボリュームの問題なら○分かかる」という感覚や、「解き始めてから何分経ったかな?」と確認する習慣を身に付けていくことが大切です。

また、過去問などの演習をするときには、本番どおりの時間制限をして取り組むようにします。その際には、問題を解き始める前に1問あたりに掛けられる時間(例:60分のテストで大問が5問あれば、1問あたり10分程度)を決めておき、それに従って解き進めるようにします。

もし時間をオーバーしてしまったら、どの問題で予定より時間を掛けてしまったのかを分析し、その問題についてはより速く解けるように重点的に演習するといった対策を立てていきましょう。(関連項目→23. 原因①:時間制限に対する意識が低い

②1問目から順番に解いている

テストに挑む際には、まずは問題全体に目を通し、解きやすそうな問題から手を付けていくのが望ましいとされています。というのも、難しい問題から解き始めてしまうとその問題に時間を掛け過ぎてしまい、他の問題を解く時間が無くなって点を逃してしまう可能性があるためです。

ですが、お子さまによっては「1問目から解きたい」というこだわりがあったり(ASD的性質)、どれが簡単な問題で、どれが難しい問題であるがわからなかったりして、1問目から順番に解いてしまうお子さまがいらっしゃいます。

また、問題を解いてみて難しいと感じたり、手が止まってしまったりすれば別の問題に移るという方法もありますが、「問題を解くのを中途半端にやめて別の問題に行くのが気持ち悪い」「1問目から順番に解ききりたい」というこだわりが強いお子さまもいらっしゃいます。

こうしたお子さまにおいては、「1問目から順番に解く」というルールに代わる新しいルールを作り、それを守ってもらうという方法が効果的です。

具体的には、

・1問ごとに掛ける時間を決めておき、その時間が過ぎたら必ず次の問題に進むようにする(時間配分を決める)
・問題ごとの難易度を予想し、試験に挑む前に解く順番を決めておく


などの方法があります。

例えば、時間配分については過去問を分析して、比較的得意な単元や難易度の低い問題が出されることの多い大問1と4は各10分、中くらいの難易度の大問2は12分、苦手な単元が出題されやすい大問3は16分、大問5は難易度が非常に高いため残りの時間で解けたら解く(ただし、5分は見直しに使う)など、難易度やお子さまの得意・不得意に応じて、分刻みできっちりと時間配分を決めていきましょう。

また、問題を解く順番についても、1から順番ではなく、難易度順に「4→1→2→3→5」というように事前に決めてしまうと良いでしょう。

時間配分や解く順番を最初からルールとして明確に示してあげると、こだわりの強いお子さまやASD的な性質を持っているお子さまの場合でも、決められたルールを守るだけで時間内にテストを解ききることができるようになっていきます。

なお、各問題に掛ける時間配分や問題を解く順番については、過去問から難易度や出題傾向を分析し、お子さまの得意・不得意も踏まえながら検討していく必要があります。ご家庭だけで過去問を詳細に分析することは難しいため、学校や塾の先生、家庭教師など専門的な知識のある人にアドバイスを受けながら決めていくようにしましょう。

③問題を解くのに時間が掛かり過ぎている

時間内にテストが解ききれないのは、単純に問題を解くスピードが遅いためである場合もあります。問題を解くスピードが遅くなってしまっている原因としては、

①制限時間を意識しながら解くことに慣れていない
②問題の練習量が足りない


のいずれかである場合が多くなっています。

まず、「①制限時間を意識しながら解くことになれていない」については、テスト以外の問題演習でも時間を測りながら解き、「これくらいのボリュームの問題なら○分かかる」という感覚や、「解き始めてから何分経ったか」など時間を意識しながら解く習慣を身に付けていくことが大切です。

「②問題の練習量が足りない」については、とにかくたくさん練習問題を解くことが大切なのですが、お子さまに「もっと勉強しなさい」と言ってもなかなか素直に机に向かってくれることはありません。

お子さまを勉強に向かわせるためには、お子さま自身が「たくさん練習問題を解くと、問題を速く解けるようになること」を実感し、勉強することにはメリットがあるのだと心から思えるようになる必要があります。また、そもそも「勉強は面倒くさい、苦手だ」という拒否感を持っているお子さまも多いため、「勉強もやってみれば楽しい」という感覚を覚えてもらうことも大切です。

練習問題をたくさんこなせば速く問題が解けるようになる、すなわち「勉強にはメリットがある」とお子さまが実感できるようにするためには、とにかく何かしら勉強をしてもらい、それによって速く問題が解けるようになったという実体験を得させることが大切です。ただし、「勉強が面倒くさい、苦手だ」と感じているお子さまは、『とにかく何かしら勉強する』というステップすらしんどく、やりたくないと言って勉強を避けてしまうケースもあります。

ですので、勉強のメリットをまず実感させる段階においては、お子さまにとって簡単で取り組みやすい問題から始めることが重要です。少しやってみて簡単に解き進められると、「意外とサクサク解けて楽しい」「自分にもできるんだ」とお子さまが感じて、勉強に対する苦手意識を和らげていくことができます。

お子さまが簡単な問題を解けたら「勉強しているんだね、すごい」と声を掛け、勉強に対する前向きな気持ちをさらに後押ししてあげましょう。簡単な問題をたくさん解いているうちにお子さまは「思ったほど勉強は難しくなく、しんどくないかもしれない」と感じ始めて、以前よりも前向きに勉強に取り組めるようになっていきます。

また、たくさん解いているうちに問題を解くスピードも上がっていきます。問題を解くスピードが上がってきたら、「前よりも速く解けるようになっているね。たくさん練習したからだね」というように、練習することで解くスピードが上がるということをお子さまが自覚できるように声掛けしてあげると良いでしょう。

お子さまの気持ちを勉強に向けさせるためには、できるだけハードルの低いものから始めて勉強に対する苦手意識を払拭し、「自分にもできる」という自信を持ってもらうことが非常に大切です。問題を解くスピードを高めるという目的以外の様々な場面でも効果的な方法になりますので、ぜひ意識していただければと思います。

④緊張している、自信が無いなど心理的な要因で精神キャパを取られている

試験の時に緊張や不安で頭がいっぱいになり、思ったように問題が解けないというお子さまがいらっしゃいます。こうしたお子さまにとっての一番の解決策は、「試験に慣れること」です。何度も模試などを受けることによって、そのうち段々と緊張しなくなってきますので、まずは場数を踏むようにしましょう。

場数を踏むことと併せて、「時間が足りなくなったらどうしよう」と不安になってしまうお子さまの場合は、問題を解き始める前に全体にサッと目を通し、全体のボリューム感を把握しておくことで、「解ききれるかどうかわからない」という漠然とした不安を和らげることができます。

試験会場の雰囲気で緊張してしまうお子さまの場合は、試験前に会場を見渡したりして、「緊張しているのは自分だけではない」、あるいは「そんなに緊張している人はいなさそうだ。自分も気楽に受ければ良い」などと、緊張している自分を客観視して気持ちを落ち着けるようにすると良いでしょう。

また、模試の場合はそもそも本番のテストではありませんので、緊張する必要もありません。「○点以上取ろう」と意気込めば意気込むほど緊張してしまうかもしれませんが、所詮は模試であり、失敗したところで実害はないということを冷静に捉えることも大切です。

「練習は本番のように、本番は練習のように」という言葉がありますが、入試も同じです。練習である模試では気を引き締め、本番さながらのつもりで受けることで、逆に入試本番では練習と同じような気持ちで落ち着いて挑むことができるかもしれません。

緊張することは必ずしも悪いことではなく、大切なのはいつもベストなパフォーマンスを出すことです。ですので、“練習”である模試を上手く使って、気持ちを落ち着ける方法についても身に付けていただければと思います。

25. 好きな教科ばかり勉強している

好きな教科だけ勉強してしまうお子さまに対しては、ついつい「日本史だけじゃなく、他の教科も勉強しなさい」と指摘したくなってしまうかもしれません。ですが実は、どの教科も満遍なく勉強することは、生きていく上で必ずしも必須であるわけではありません。

もちろん、公立高校の入試などではオールマイティさが求められますが、大学受験、就職においては「何かしら尖った人」の方が評価されやすく、五教科でまんべんなく点数が取れる人よりも、「日本史が大好き!」という人の方が試験官の目に留まって合格しやすいことさえあります。

苦手を指摘するのではなく、得意を褒めて伸ばしてあげるのが教育においては非常に大切です。そもそも自分から勉強できているだけでも素晴らしいことですので、「歴史が大好きなんだね」などと声を掛け、まずはお子さまの好きなことを肯定していきましょう。自分の好きなものを周りに肯定してもらえると、自己肯定感がグッと高まります。自己肯定感は、苦手なことや嫌いなことに対しても失敗を恐れずチャレンジできる心の土台になりますので、ぜひ肯定的な声掛けを意識していただければと思います。

もしほかの教科にも興味を持ってもらいたい場合は、好きな教科と関連付けながら、教科横断的な学びを取り入れていくと良いでしょう。例えば、「戦国時代の武将ってどうやって兵の数や年貢の量を計算していたんだろうね?」など、ちょっとした疑問を入り口に親子でいろいろ考えてみるのも楽しいでしょう。

もし、受験が目前に迫っているなどでどうしても他の教科の勉強をしなければいけないときは、「なぜ勉強しなければいけないか」を丁寧に説明し、お子さまと一緒に勉強の計画を立てていくと良いでしょう。その際、無理な量や難易度の高い計画を立ててしまうと、「勉強したくない!」となってしまいますので、少しずつ他の教科の勉強を取り入れていくような計画にすることが大切です。

好きな教科しか勉強しないお子さまは、他の教科が嫌い/苦手であるという場合もありますが、単に興味が持てなかったり、必要性が感じられていなかったりするだけの場合も多くなっています。元々得意な教科に関しては机に向かえるお子さまですので、ほかの教科の場合も、興味が持てたり、必要性が感じられたり、あるいは頑張って取り組んだことを褒めてもらえたりすれば、自発的に勉強できるようになるお子さまもたくさんいらっしゃいます。

モチベーションの維持が難しい場合は、「○○の教科以外も最近頑張っているんだね、すごい!」などの声掛けをこまめに行うと良いでしょう。ご家庭だけでこうしたフォローを行うのが難しいと感じる場合は、授業以外の学習サポートを行っている塾や家庭教師を利用し、先生からもLINEなどで声掛けをしてもらうと良いでしょう。

26. 嫌いな科目や苦手科目の勉強をしない

お子さまが嫌いな科目や苦手な科目を勉強しない理由には、

・「頑張って点数を伸ばそう」という気持ちよりも「面倒くさい」「やりたくない」という気持ちが勝ってしまっている
・苦手な科目の勉強の仕方が分からない
・苦手な科目を勉強しても、どうせ成績は上がらないと思っている


などが挙げられます。

これらの理由は重なり合っていることも多いのですが、いずれの場合も苦手意識を払拭し、「苦手な科目でも、勉強すれば点数が上がる」という実感をお子さまに持ってもらうことで、嫌いな科目や苦手な科目についても勉強ができるようになることが多いです。

具体的なアプローチとしては、
 

①簡単な課題から少しずつ難易度を上げ自信をつける(スモールステップ)
②学校の授業の予習をし、「いつもより分かる!」という感覚を得ることで前向きな気持ちを取り戻す
③塾や家庭教師の先生と一緒に課題に取り組み、補助してもらいながら少しずつ自信を回復させる
④お子さまがやる気のある時間帯やタイミングを見計らって勉強に取り組ませる


などが挙げられます。それぞれについて、以下で解説していきます。

①簡単な課題から少しずつ難易度を上げ自信をつける(スモールステップ)

苦手科目に対する自信の無さや、「勉強してもどうせ成績は上がらない」という後ろ向きな気持ちを払拭するためには、まずは小さな課題から始めて「自分もやればできる!」とお子さまに実感してもらうこと(スモールステップ)が非常に効果的です。

具体的には、苦手科目に関する簡単な問題(今のお子さまの学力でも少し練習すれば解けて、量も多すぎないもの)に取り組み、その後で小テストを行います。

すると、「苦手な科目の問題であっても、練習することで点数が取れた」という小さな成功体験をお子さまは得ることができ、「勉強してもどうせ成績は上がらない」というマイナスな気持ちを少しずつ和らげていくことができます。

このようなスモールステップの手法においては、お子さまの現在の実力に応じた課題と小テストを用意することが非常に重要なポイントとなります。というのも、学校の課題や定期テスト・模試などは、現在のお子さまにとっては難易度が高過ぎる場合が多いです。

お子さまにとって難易度の高い問題に挑戦させても、結局解くことができず、「自分にはやっぱり無理なんだ」と苦手意識が一層強くなってしまうことが多いため、お子さまの現在の実力に応じた課題を用意することが必須と言えます。

また、定期テストや模試だと結果が戻ってくるまでに時間が掛かるだけでなく、テスト範囲も広いため、「勉強したから成果が出た」という実感が持ちづらくなります。ですので、お子さまに「勉強したから成果が出た」という実感を持たせるためには、その場で結果が分かり、範囲も限定されている小テストが最適であると言えます。

「難易度の高すぎない課題+小テスト」というスモールステップを積み重ねていくと、嫌いな科目に対する苦手意識が少しずつ軽減され、お子さまの中に「苦手な科目も頑張ったら成績が上がるかもしれない」という気持ちが芽生えてきます。

苦手な科目に対する前向きな気持ちが芽生えることで、お子さまはやがて苦手な科目や嫌いな科目にも自発的に取り組めるようになっていきます。短期間で自信を回復させることはなかなか難しく、最初のうちは「こんなに少しずつで大丈夫かな?」と感じるかもしれませんが、スモールステップを根気良く続ければ、いずれは苦手意識を克服できる場合がほとんどですので、じっくりと取り組んでいただければと思います。

②学校の授業の予習をし、「いつもより分かる!」という感覚を得ることで前向きな気持ちを取り戻す

嫌いな科目や苦手な科目があるお子さまは、学校の授業を聴いても理解が難しく、「授業を聴いても分からない。だからこの科目は嫌い/苦手だ」と思っていることがあります。授業が理解できないと、授業に参加しようという意欲も下がり、ますますその科目が苦手になってしまうという悪循環が生まれてしまいます。

このようなお子さまの場合は、塾や家庭教師を利用して学校の授業の予習を行い、あらかじめ内容を理解した上で授業に挑むという方法が効果的です。塾や家庭教師による予習で内容をしっかりと理解してから学校の授業に参加すると、お子さまは「いつもより授業の内容が分かる!」という感覚を得ることができます。

「いつもより授業が分かる」という感覚が得られると、お子さまは普段より前向きに授業に参加することができるようになります。また、塾や家庭教師での予習と学校の授業という二段構えで学習することができるため、知識や理解の定着もより進みます。

学校の授業が分かるようになることで、お子さまの苦手意識を軽減することができ、勉強にも前向きに取り組めるようになっていきますので、塾や家庭教師を利用している方は「自信をつけるために、学校の授業の予習をしたい」と伝えるなどしてカリキュラムを検討してもらうと良いでしょう。

③塾や家庭教師の先生と一緒に課題に取り組み、補助してもらいながら少しずつ自信を回復させる

苦手な科目の問題に取り組んでも、どのように解いて良いかが分からず正答にたどり着けないため、より苦手意識が強くなってしまう場合があります。このような場合においては、塾や家庭教師の先生とまずは一緒に問題を解き、補助してもらいながら取り組むという方法が効果的です。

「さっき説明した○○の公式を使ってみよう」「前に解いた問題と○○が違うだけで、あとは一緒だよ」と講師が声を掛けながら問題を解くことで、「何から手を付けて良いかわからない」という状態を解消することができます。

また、「わからなかったら先生が助けてくれる」という安心感があることによって、「どうせ解けないから、解きたくない」という拒否感も和らげることができます。

問題が解けることで、お子さまは「自分にも解けた」という自信をつけることができます。さらに、授業の最初では講師が隣に付きながら一緒に問題を解いていき、「残りの問題も同じ方法で解けるよ」と声をかけた上で後半はお子さまだけで問題を解くといった形で授業を進めれば、「最後には一人で解けるようになった」という大きな自信を得ることができます。

ほかにも、授業では講師と一緒に問題を解き、同じような問題を宿題として出すといった方法も効果的です。既に解き方が分かっている問題であれば、お子さまも嫌がらず前向きに取り組める場合が多くなっています。

総じて、苦手科目や嫌いな科目の勉強をお子さまが避けてしまう背景には、“解き方が分からないために、手の付けようが無い”といった場合も多くなっています。そのため、講師があらかじめ解き方の道筋を示したり、似た問題を一緒に解いたりして、「自分にも解けそうだ」という感覚をお子さまに持ってもらうことが非常に重要です。

④お子さまがやる気のある時間帯やタイミングを見計らって勉強に取り組ませる

①~③では、お子さまの自信を回復させ、苦手科目や嫌いな科目に対するモチベーションを上げていく方法をご紹介しました。

この他にも、お子さまが勉強に取り組みやすい時間帯を見つけ、そのタイミングで「○○の科目も少しやってみたら?」などの声掛けを行うといった工夫も効果的です。

朝の方が集中しやすいお子さまや、夜の方がやる気が出るお子さまなど、お子さまによって性質は違いますので、お子さまの様子をよく観察しながら声を掛けていくことが大切です。
また、好きな科目を先にやりたいお子さまや、嫌いな科目を先に終えてしまいたいお子さまなど、勉強に取り組む順番も重要です。

得意な科目から取り組むことで気分を上げ、仕上げとして苦手な科目に取り組むという順番の方がモチベーションを保ちやすいお子さまもいらっしゃいます。「苦手科目を後回しにしているのでは?」と感じたときは、そのまま苦手科目に手を付けずに勉強を終えてしまうのか、それとも後からちゃんと取り組むのかを十分見極めてからお子さまに対して声を掛けるようにすると良いでしょう。(関連項目→8. 解決方法②言い方や伝えるタイミングを工夫する

27. 問題文が長くなるとミスをする

問題文が長くなると、内容を読み間違えたりしてミスをしてしまうお子さまがいらっしゃいます。

原因としては、

①文章を正しく読む力が弱い
 (=理解が曖昧なまま、勝手に「こういう意味だろう」と解釈してしまっている)
②問題をパッと見ただけで、最後まで読まずに解いている
 (=細部を読み飛ばし、「多分こういう意味」という思い込みで文章を読んでしまっている)
③文章が長いだけで「難しそう」と拒否感を覚え、そもそも解こうとしない


などが挙げられます。それぞれの対策について、以下で解説していきます。

①文章を正しく読む力が弱い

文章を正しく読み取る力が低いために、問題文の意味がよく理解できず「まあ多分、こういう意味だろう」と勝手に内容を解釈して読んでしまうお子さまの場合は、何よりもまず“文章を正しく読み取る力”を身に付けていく必要があります。

こうしたお子さまの場合は、自分が文章を正しく読めているかどうかも分からない(=正しく読めていないことに自分で気付けない)ケースも多いため、その都度自分の言葉で文章の内容を説明させたり、図で表させたりして、文章で表されている内容を逐一確認しながら読む習慣を付けることから始めましょう。

こうしたタイプのお子さまは、理解が曖昧なまま読み進めることがクセになってしまっていることもあるため、「確認しながら読む」「理解できるまで勝手に読み進めない」という習慣を身に付けることが非常に大切です。

また、この「確認しながら読む」という練習については、できるだけ短く簡単な文章からチャレンジするようにしましょう。まずは簡単なものから挑戦して、「自分にもできた」という自信を付けることが大切です。「自分にもできた」という自信が持てると、「もう少し難しいものにもチャレンジしてみよう」「苦手を克服しよう」というモチベーションが少しずつ湧いてくるようになります。

逆に、いきなり難しい文章から挑戦してしまうと、上手くできずに挫折してしまい、「どうせ自分には無理だ」「もうやりたくない」という気持ちになって、ますます文章を読むのが苦手になってしまう可能性があります。

ですので、文章を丁寧に読む練習をする際には、必ず低いハードルのものからスタートし、スモールステップで少しずつ難易度を上げていくようにしましょう。(関連項目→50. 要因①:思い込みで問題を解いている

②問題をパッと見て、最後まで読まずに解いている

問題文が長いと、文章を最後までしっかりと読まずにパッと見た印象で「こんな問題だろう」と決めつけて解いてしまうお子さまがいらっしゃいます。こうしたお子さまの場合は、問題文を最後までしっかり読まないとミスしてしまうという自覚を持たせることが重要です。

ミスを指摘すると、「たまたま、うっかり間違えただけ」とお子さまが答えることも多いのですが、「赤玉が出る確率を求める問題で、黒玉が出る確率を求めてしまっているよね。これは、『たまたま』や『うっかり』ではなく『問題文を最後まで読めていないこと』が原因だよ」と、読み飛ばしによるミスが生じる度にきちんと指摘しましょう。

ミスの原因が読み飛ばしであることを指摘するのと併せて、読み飛ばしを防ぐための工夫についても教えていきます。例えば、問題文を声に出して読んだり、下線を引きながら読んだり、大事な部分に丸を付けながら読んだりすると良いでしょう。

文章を最後までしっかり読むことでミスが減った際には、「落ち着いて読むことで点数が上がったね」と声を掛け、問題文を最後まで落ち着いて読むことが点数アップにつながることをお子さまが自覚できるようにアシストしていきましょう。落ち着いて読むことが点数アップにつながるというメリットが実感できると、やがてお子さまは、自発的に落ち着いて最後まで文章を読めるようになっていきます。(関連項目→55.問題文を最後まで読まない

③文章が長いだけで「難しそう」と拒否感を覚え、そもそも解こうとしない

問題文が長いと「難しそう」という苦手意識を持ってしまい、問題を解こうというモチベーションが湧かないというお子さまもいらっしゃいます。「難しそうだから」と問題に手を付けないことも多く、当然ながら大きな失点につながってしまいます。

こうしたお子さまの場合は、長い問題文に対する苦手意識を解消していくことが大切です。具体的には、問題文はやや長いものの、内容自体はむしろ易しいくらいの難易度の問題をまずは解かせ、「問題文が長くても簡単に解けることがある」という実感をお子さまに持ってもらいます。

それから「問題文は長いけれど、難しくはない問題」を何度も解かせ、お子さまが持っている「問題文が長いと難しいはず」という先入観を少しずつ和らげていきます。

また、問題文が長くても解けたときには、「問題文が長かったけどちゃんと解けたね!すごい!」と声を掛け、問題文が長くても解けるのだという自信をお子さまが持ちやすいように励ましていきます。

また、本人が興味のある分野に関する分厚めの本を読ませるのも、苦手意識の解消には非常に効果的です。例えば、ロボットが好きなお子さまであれば、ロボット開発に関するノンフィクションの本などを1冊買い与えて読ませます。すると、「こんなに分厚い本なのに読めた!」という自信につながり、長い文章に対する苦手意識を一気に解消できる場合があります。

分厚い本を一冊読み切ったという経験があると、「この前読んだ○○の本に比べれば、この問題の分量くらいは大したことが無い」と感じられるため、長い文章の問題でも前向きにチャレンジできるようになっていきます。

文章が長い問題に対する苦手意識が和らいでくると、お子さまは問題文が長くても「解こうかな」「挑戦してみよう」という気持ちが湧いてくるようになり、解く前から諦めるということも少なくなっていきます。

お子さまの自信の無さや苦手意識はお子さまの学力の伸びに大きな影響を与えますので、ぜひ意識して「苦手意識の解消」や「自信の回復」に取り組んでいただければと思います。

28. 言葉使いが幼い、語彙が少ない

周りの子に比べて「言葉遣いが幼い」「語彙が少ない」といったことでお悩みを感じておられる方がいらっしゃいます。

その原因や背景としては、
 

①生まれつきの言語能力が低い(音韻処理が苦手/WISC検査(※)で言語理解の数値が低い)
②言葉遣いや語彙が少ないというよりは、コミュニケーションの取り方が幼い
③その子と話すとき、周りの大人が難しい語彙や言い回しを避けてきた
④本を読まないか、読んでいる本の対象年齢が低い


などが挙げられます。(※WISC検査…知能検査のこと。詳しくはこちらの項目「46.WISC-IVの見方を知りたい」をご覧ください)

このうち、①は生まれつきの性質によるものであり、発達障害などの診断を伴う場合があります。②については、同年代の子どもと交流する機会が少ないなどの環境が原因である場合もありますが、背景に発達障害の特性が関係していることもあります。

③と④はその子が育ってきた環境によるものと考えられますが、その背景に①に挙げた生まれつきの言語能力の低さがあり、結果として、「難しい本を避ける」「周りの大人が過度に配慮してしまう」などの現象が二次的に生じている可能性もあります。

総じて、言葉遣いが幼かったり、語彙が少なかったりする場合には、その子の生まれつきの性質をよく分析し、「言葉による情報の処理が苦手」という性質を持っているかどうかを見極めていくことが重要です。

単に難しい言葉に触れる機会が少ないことが原因である場合は、周りの大人が積極的に難しい語彙や慣用句を使うなどすれば、自然と語彙力を伸すことができますが、生まれつき言語の力が弱い場合は、無理に言葉を覚えさせるとかえってストレスになり、より苦手意識が強まって、読む・書く・聞く・話すという力が伸び悩んでしまうケースもあります。

ただし、生まれつき言語の力が弱いからといって、必ずしも語彙力や話す力が成長しないわけではなく、適切なサポートを行うことで、お子さまの語彙力や話す力を伸ばすことは十分可能です。

以下では、言語能力を伸ばすためのアプローチとして、
 

①自分の言葉で説明する練習をする
②言葉による表現に興味を持たせる
③ソーシャル・スキル・トレーニングに取り組む


の3つの方法について詳しく解説していきます。

①自分の言葉で説明する練習をする

言語とは、ある概念を記号で表すものです。つまり、「赤くて、丸くて、甘酸っぱくて、木に生っていて、秋が旬の果物」という“ある概念”を頭に思い浮かべたときに、「りんご」という記号をいかに正確に結び付けられるかが言語を操る能力ということになります。

言語能力が低いお子さまは、“ある概念”を示されたときに、それを適切な記号(言語)で表すことができず、違う記号と結び付けてしまったり、あるいはそもそも記号が思いつかなかったりします。

ですので、お子さまの言語能力を伸ばしていくためには、概念と記号を結び付ける練習を積み重ねていく必要があります。

具体的には、「自分の言葉で説明させる」という方法が効果的です。例えば、お子さまが「宿題、ヤバい!」と発言したら、「ヤバいんだね。どういうことがヤバいの?」と問いかけてみて、“ヤバい”という言葉に含まれている様々な概念(量が多い/難しい/時間が無い 等)をお子さま自身がそれぞれの記号と結び付けられるようアシストしていくなどの方法があります。

ほかにも、勉強で新しい語彙が出てきたときに、「『関心』ってどういう意味かな?自分の言葉で説明してみて」など、自分の言葉で言い換えさせるのも効果的です。概念と記号を行き来する練習を積み重ねることで、少しずつではありますが、概念⇔記号の結びつきを強化していくことができます。

また、こうした「概念⇔記号」の行き来の練習をする際には、上手くいかなかったときに決してお子さまを責めないことが大切です。「その言葉は間違っている」と否定してしまうと、お子さまは「言葉を使ったり言葉で考えたりすることは、辛くてしんどい」と感じてしまい、楽しく学習を進めることができなくなってしまいます。

ですので、「概念⇔記号」の練習に当たっては、お子さまの自尊心を傷つけないよう注意を払い、お子さまが適切ではない語彙しか使えなかった際には、「○○という表現もあるよ、使えたらカッコいいかも!」など前向きな声掛けをするように意識していただければと思います。

②言葉による表現に興味を持たせる

生まれつき言語の力が弱いお子さまは、文章を読んでもなかなか理解しづらいことから、本や活字にあまり興味が持てず、幼少期から本や活字を無意識的に避けてしまっている場合があります(逆に、生まれつきの言語能力が高いお子さまは、幼少期から本や活字を自然と好むことが多く、元々高い言語能力がさらに伸びていくケースが多いです)。

このようなお子さまの場合は、「本を読むのは面白い」という経験をさせ、文字に対する忌避感を和らげていくことがポイントになります。

具体的には、対象年齢を気にせずお子さまが面白いと思える本をまずは読ませ、「読んでみたら面白かった!」と感じてもらうことから始めます。そこから徐々に対象年齢を上げ、語彙は多少難しくても、展開が面白くてワクワクするような本にもチャレンジできるようにしていくと良いでしょう。

また、このアプローチにおいてはとにかく本に親しむことがポイントになりますので、お子さまの好みを尊重し、できるだけ好きな本を読ませてあげることが大切です。ライトノベルや漫画のノベライズは相応しくないのでは?と考えてしまうかもしれませんが、ライトノベルでも漫画のノベライズでも「文章を読む」という点においては変わりなく、語彙も十分伸ばすことができますので、安心して読ませてあげていただければと思います。

<本に親しむためにオススメの書籍>
かいけつゾロリ オフィシャルサイト(ポプラ社公式) (poplar.co.jp)
 …言わずと知れた名シリーズ。対象年齢は小学1~2年生程度ですが、活字が苦手なお子さまの場合は小3以上でも十分オススメです。
「はれときどきぶた」とくしゅうサイト (iwasakishoten.co.jp)
 …印象的な挿絵と奇想天外で笑える展開がオススメのシリーズ。子どもの頃に読んだことがある保護者さまもいらっしゃるかもしれません。とにかく面白い本が読みたいときにオススメです。
名探偵 夢水清志郎 – 青い鳥文庫 (kodansha.co.jp)
 …笑いが随所に散りばめているのに、本格的な推理も楽しめる名作シリーズです。筆者のはやみねかおる氏による「怪盗クイーン」「都会のトム&ソーヤ」などの他シリーズも読みやすい名作揃いですので、本に慣れてきたお子さまはぜひチャレンジを!
「バッテリー」あさのあつこ [角川文庫] – KADOKAWA
 …実写化・アニメ化もされている名作。野球を題材にしているので、読書に興味が無いお子さまも手に取りやすいシリーズ。先にアニメを見ておくなどしてノベライズとして楽しむのも一策です。

③ソーシャル・スキル・トレーニングに取り組む

ソーシャル・スキル・トレーニング(SST)は、言葉遣いや語彙というよりは、コミュニケーションの取り方自体が幼いお子さまの場合に効果的なアプローチとなります。

ソーシャル・スキル・トレーニングとは、主に発達障害のあるお子さまを対象とした、コミュニケーションの取り方など、社会生活を送る上で必要なスキルを身に付けていくためのトレーニングであり、療育センターや放課後デイサービス、通級指導教室などで実施されていることもあります。
コミュニケーションの幼さは、発達障害のうち、ADHD・ASDのいずれの場合にも表れる可能性がある困りごととなっています。

ADHDの方の場合は、特性として「衝動性」を持っているため、怒りの衝動を抑えられずに大きな声を出してしまったり、ものに当たってしまったりする場合があります。また、衝動性の他に不注意の特性も関係しますが、思いついたことをすぐに口に出してしまって、「相手を傷付ける発言」や「場にそぐわない発言」をしてしまうなどのケースがあります。

ASDの方の場合は、相手の気持ちを想像したり、微妙なニュアンス(行間)を読み取ったりすることが苦手であることから、
 

・友達の「最近太っちゃって…」という発言に対し、「そうだね、太ったね」と答える
・「様子を見てきて」と言われて、本当にただ見るだけで報告や対処をしない


といったミスコミュニケーションが生じる場合が多くなっています。

ソーシャル・スキル・トレーニングでは、このようなコミュニケーションに関わる困りごとを改善するために、ロールプレイングで様々な立場の人を演じたり、よくある困った場面についてみんなで話し合ったりして、適切なコミュニケーションの方法を身に付けていくことになります。

なお、ソーシャル・スキル・トレーニングについては、市販の教材などを用いてご家庭で取り組むこともできますが、心理士などの資格を持った先生にサポートを受けることでより高い効果を期待することができます。

コミュニケーションの困りごとが多くソーシャル・スキル・トレーニングを受けたい場合は、地域の発達支援センターなどに問い合わせ、療育センターや通級指導教室が利用できるか相談してみると良いでしょう。(関連項目→43.人間関係のトラブルが多い

29. 応用問題が解けない

「基本問題は解けるのに、応用問題になると解けなくなる」というお悩みはよく伺います。応用問題が解けないという状態をもう少し具体的に表すと、「その問題を解くために必要な知識はあるにも関わらず、目の前の問題においてその知識をどう使って良いのか分からない」ということになります。

では、なぜ必要な知識があるにも関わらず、問題に対して適切に使うことができないのでしょうか。それは、応用問題が解けないお子さまは「知識の表面的な部分」しか習得できていないためです。

つまり、「底辺が4cm、高さが3cmの三角形ABCの面積を求めなさい」という問題であれば、“底辺×高さ÷2″という公式に数字を当てはめるだけで解くことができ、公式の意味、あるいは4cm、3cmという長さが具体的に何を示しているかを理解していなくても、「6cm2」という答えにたどり着くことができます。

一方で、「三角形ABCにおいて、底辺ABの長さが4cm、面積が6cm2であるとき、三角形ABCの高さCHを求めよ」という問題の場合は、型通りに数字を当てはめるだけでは解けません。問題で聞かれていること(高さCH)が具体的にどんなものであるのかを理解する必要がありますし、三角形の面積の公式について、単に“底辺×高さ÷2″という表面上の形式だけでなく、底辺や高さ、面積といった概念が具体的にどんなものであるかを理解できていないと、この問題に答えることは難しくなります。

応用問題に答えられるお子さまの場合は、頭の中で、あるいは実際に紙に三角形ABCの図を描きながら、「聞かれている高さCHとはこの部分の長さだな。底辺はABで4cmということが分かっていて、面積は6cm2だから、公式から逆算して…」と自分で既存の知識(=三角形の面積の公式)をどのように当てはめれば良いかを考えていくことができます。なぜならば、この場合にお子さまは、三角形という図形の性質についてきちんと理解できており、公式が何を意味しているのかを自分なりに解釈できているからです。

一方、公式に数字を当てはめる方法でしか問題を解いてこなかったお子さま(公式を丸暗記しているお子さま)の場合は、こうした応用問題においても「どのように数字を当てはめれば良いか」という視点でしか問題を見ることができません。そのため、「底辺と面積だけが分かっている場合の公式は知らない=自分には解けない」と感じて諦めてしまうか、4cmと6cm2という数字を使って当てずっぽうで計算するという場合がほとんどになってしまいます。

お子さまが応用問題を解けるようになるためには、「一見すると見たことが無いような問題でも、既存の知識を駆使すれば解けるようになる」という実感を持たせることが第一歩となります。もちろん、お子さまが公式を丸暗記せず、その意味を理解しながら学べるようになることが最終的なゴールではあるのですが、公式の意味をきちんと理解して使うことは公式を丸暗記するよりも労力が要る(=面倒くさい)と感じるお子さまも多く、「丸暗記ではダメだよ。ちゃんと理解しよう」とだけ伝えても、面倒くささが勝ってそのまま丸暗記を続けてしまう場合が多くなっています。

ですので、お子さまが「丸暗記よりも、ちゃんと理解した方がメリットが大きい」と感じられるように、
 

①「初見の問題でも、公式(既存の知識)を使えば解ける」という実感を持たせる
②初見の問題でも公式(既存の知識)を使うと解くことができるが、そのためには公式を丸暗記するのではなく、きちんと意味を理解した方がより問題が解きやすくなることに気付かせる


という2つのステップで指導を進めていくことがポイントになります。

上述の三角形の面積の公式の例で言えば、まずは先生が実際に問題を解いてみせて、既に習っている三角形の面積の公式だけで解けるということを示します。それから類題や他の応用問題を何度か解かせて「典型的な問題以外でも、三角形の面積の公式だけで解ける問題はたくさんある」という実感を持ってもらいます。(ステップ①)

続いて、台形やひし形の面積の単元に進んだら、公式を教える際に「丸暗記するのではなく、なぜそうなるのかをきちんと理解しよう」とアドバイスしながら基本問題から応用問題へと進みます。もし三角形の面積で応用問題を解いた時(ステップ①)よりもスムーズに解けていたら、「丸暗記じゃなく、きちんと公式の意味を理解しているから応用問題も解けたね」などと声を掛け、公式の意味を理解することのメリットをお子さまがより実感しやすいようにアシストしていきます。

公式を丸暗記ではなく理解しながら習得することは、一朝一夕にできるようになることではありません。お子さまが「丸暗記しない方が良い。ちゃんと理解しよう」と心から思えるまで、ステップ①と②を根気良く続けていく必要があります。

また、公式をきちんと理解した上で習得したからといって、すぐにどんな応用問題でも解けるようになるわけではありません。公式を理解できたら、次は応用問題をたくさん解いて、公式を使いこなす力(アウトプット力)を高めていく必要があります。

ただし、公式の意味を理解していない状態で応用問題をたくさん解いても、アウトプット力はなかなか伸びません。アウトプット力を伸ばす際には、「まずは公式の意味を理解する→その上でたくさん応用問題に当たる」という順番が非常に大切です。

というのも、知識の土台が無いままに応用問題をひたすら解いてしまうと、結果として「応用問題のパターンをただ丸暗記する」という勉強方法になってしまいます。お子さまや保護者さまの中には、“応用問題が解けないのは、応用問題の演習量が足りないからだ”と考えて、土台となる知識理解が無いままにひたすら演習に取り組む方もいらっしゃいます。ですが、この方法だと既存の応用問題の膨大なパターンをただ覚えていくだけになってしまうため、学習の効率も非常に悪く、オススメできる勉強法とは言えません。

もちろん、旧帝大レベルの難関校くらいまでであれば、こうして虱潰しに問題のパターンを暗記していく方法でも時間さえかければ何とかなる場合はあります(ただし、膨大な時間が必要です)。ですが、東大・京大などの超難関校になると、これまで一度も出題されたことの無い、完全にオリジナルの超高難易度の問題が出題されるため、これまでに出題された応用問題のパターンをいくら暗記したとしても太刀打ちできません。

つまり、「知識の土台が無いまま、応用問題のパターンを暗記していく」という勉強方法は、

・膨大な時間が掛かってしまう
・超難関校には太刀打ちできない


という理由からあまりオススメできませんので、ぜひ基本に忠実に、「しっかりと公式や定理を理解する→応用問題で使いこなす」という順序で勉強を進めていただきたいと思います。

30. マイペース過ぎて危機感が無い我が子…受験モードにさせるにはどうすれば良い?

周りが受験モードになりつつあるのに、本人はいつまでものんびりしていて心配…というご相談もよくお伺いします。このようなお子さまの場合、大抵は幼少期からのんびり屋さんで、流行りの漫画やゲームよりは自分の興味があることに夢中であったり、お友だちと競争したり喧嘩したりしたこともほとんどないというケースが多くなっています。

のんびり屋さんであることは決して悪いことではなく、せわしい世の中でマイペースを貫けることは大きな強みでもありますので、それだけで心配する必要はありません。恐らく保護者さまの心配の根幹は、「受験も近いので、そろそろ本格的に勉強を始めてほしい」というものだと思います。

さて、こうしたのんびり屋さんタイプのお子さまに、志望校に合格できるように勉強を頑張ってもらう方法としては、以下の3つが挙げられます。

①このままでは志望校に合格できないことを具体的に説明し、危機感を持たせる
②コツコツと勉強する習慣を付ける
③志望校に対するモチベーションを上げる

①このままでは志望校に合格できないことを具体的に説明し、危機感を持たせる

まず「①危機感を持たせる」についてですが、のんびりタイプのお子さまは本気で焦った経験がこれまでに無く、心の底から「最終的には何とかなる」と考えている場合があります。「最終的には保護者さまや周りの人が助けてくれるだろう」「これからどこかのタイミングで頑張れば間に合うだろう」と考えてしまっていて、“今、自分が頑張らなければならない”という自覚がありません。
そのため、まずは現在の状況をしっかりと説明するようにしましょう。

これまでと違い、受験はお子さま自身が本気で頑張ろうと思わないとどうにもならないことや、もし経済的な事情で私学に行くことが難しく、何とか公立に受かってほしいという場合は、そのことを冷静に伝えましょう。

ただし、経済的な事情で公立を勧める場合は、「お金が無いから公立にして」と親の考えを押し付けるのではなく、公立と私学のメリットとデメリットを併せて伝え、それでも私学でしかできないことがある場合は特待生枠を目指すなどの落としどころを見つけましょう。

公立に比べると私学は資金が潤沢なため、校舎も綺麗で設備が整っていますし、広告や宣伝にもお金を掛けられるため、一見すると私学の方が魅力的に見える場合があります。一方で、私学の場合は独立性が強く、行政の監視の目が届きづらいという面があります。いじめや体罰、不適切指導などは新聞に載る前に示談や被害生徒の退学で済まされてしまうケースもあり、問題事象の暗数は公立に比べて多いのではないかという見方もあります。

これらの情報を踏まえながら、お子さまの意思で志望校を決めることが、危機感を持ってもらう上では非常に重要です。

②コツコツと勉強する習慣を付ける

「②コツコツと勉強する習慣を付ける」に関しては、お子さまの頑張り方のタイプに注目する方法になります。人によって集中力やモチベーションの上がり方は異なり、短期間でぐっと集中して頑張るのが得意な人もいれば、長期間かけてコツコツ頑張るのが得意な人もいます。陸上競技と同じように、頑張り方や集中力にも短距離型・中距離型・長距離型があると考えると良いでしょう。

のんびりタイプのお子さまは、往々にして中距離~長距離型の頑張り方である場合が多くなっています。じっくりコツコツ取り組むことが向いているお子さまに、短期間に集中して頑張れ!と強いることはストレスも大きく、そもそもできなかったり、効率が悪かったりします。

保護者さまや先生自身が短期集中タイプであるが故に、お子さまにもそうした頑張り方を強いてしまうことがあるかもしれませんが、一度冷静にお子さまの頑張りのタイプを分析し、お子さまに合った頑張り方を提案することが大切です。

長期的にコツコツ頑張ることが向いているお子さまの場合は、周りよりも早めに受験を見据えた勉強に取り掛かる必要があります。できれば2年生になるまでには志望校を決め、長期的な勉強の計画を立てていきましょう。なお、志望校については勉強を進める中で変更しても構いません。2年生時点での志望校は、ひとまずの目標とマイルストーンを置くために決めるものであり、「一度決めたら絶対に変えてはいけない」という性質のものではありません。もし志望校のランクを落とすことになった場合に本人の挫折感を最小限に留めるためにも、あまりガチガチに決め過ぎないようにしましょう。

志望校が決まれば、毎日短時間でも構いませんので学習習慣を付けていきましょう。一日一回は机に向かうという習慣ができると、受験が近づいて勉強時間を増やさなければいけないときでも比較的スムーズに受験モードに移行することができます。のんびりタイプのお子さまの場合は、一気に勉強時間を増やすよりも徐々に増やしていく方が向いていますので、いきなり本格的な受験勉強をするのではなく、少しずつウォームアップしていくイメージで取り組むと良いでしょう。

例えば、「2年生の間は1日1時間の自宅学習をする。3年生になったら1時間半に、部活を引退したら2時間と少しずつ時間を増やしていく」という計画を、お子さまが信頼・尊敬している講師と約束するなどは非常に効果的です。

お子さまと講師との間に信頼や尊敬の関係があると、「先生との約束を守ろう」というモチベーションが保てるため、スムーズに受験モードに移行することができます。(参考:【塾・家庭教師の選び方】勉強しないお子さま必見!良い先生は「関係作り」に長けている (pro-megajun.com)

また、勉強の計画を立てる際には、その計画がきちんと実行できることが非常に重要です。無理な計画を立てて実行できないと、「計画どおりにできなかった」という失敗体験から自信を無くしてしまい、モチベーションも下がってしまいますので、まずは無理なく実行できる計画から始め、計画を実行するという習慣を身に付けることから始めましょう。

また、のんびりタイプのお子さまは、「まあいいや」と計画を先延ばしにしてしまうことがあります。こうした先延ばし癖を防ぐために、計画はできるだけ具体的に立てるようにしましょう。

例えば、計画が「今月中に問題集を終わらせる」といった大雑把なものだと、「今日できなくても明日頑張ればいいや」と先延ばしにしてしまいますが、「毎日2ページ問題集を解く」という具体的なものだと、その日にやり切るしかなく、先延ばしを防ぐことができます。

このように計画を立てる際には、いつまでに/何を/どこまで/どのように勉強するかについて、具体的に決めることがとても大切です。

③志望校に対するモチベーションを上げる

「③志望校に対するモチベーションを上げる」については、受験に対して実感が持てず、何となく志望校を選んでしまっているお子さまに対して効果的なアプローチになります。学校の先生や保護者さまから「志望校を決めなさい」と言われて何となく決めたお子さまは、その学校に行きたいという思いがそれほど強くないため、合格するために頑張ろうというモチベーションが上がりづらくなってしまいます。

できれば志望校を決める前の段階で、色々な学校のオープンキャンパスや学校説明会、文化祭・学園祭などに足を運び、お子さまが自らの意志で「この学校に行きたい」と志望校を決めることが、モチベーションを上げるためには最も効果的です。

ただし、学校を見て回る際には、全てをお子さまに任せてしまうのではなく、保護者さまが一緒に学校に足を運び、見るべきポイントを上手く誘導してあげることも大切です。お子さまだけに任せてしまうと、色々と見て回るのが面倒に感じて早い段階で「ここで良いや」と決めてしまったり、友だちに合わせてしまったり、あるいは学園祭の出店の1~2か所だけを見て「ここが楽しそう/つまらなさそう」などの印象で決めてしまったりと、大人からすれば見当外れの決め方をしてしまう場合があります。

もちろん、親の意向どおりに志望校を決める必要はありませんが、「通学に○分くらいかかるけど、大丈夫そう?」「部活の先輩が○○高校に行っていたよね。話を聞いてみたら?」などお子さまの視野や選択肢を広めるようにサポートしてあげると、本人の意思で本人に合った学校を選べる場合が多くなっています。

中学受験を目指す場合は、敢えて公立中学校の様子を見学してみるのも良いでしょう。がやがやした雰囲気が苦手なお子さまであれば、「ここ(公立中学校)よりも、受験を頑張って私立中学校に進学したい」というモチベーションにつなげることができます。

危機感を持たせた方が良いのか、それともプラスのモチベーションを高めた方が良いのかはお子さまの性格や性質によって異なりますので、お子さまの個性をじっくりと分析し、お子さまに合った方法でサポートしていただければと思います。

★もっと詳しく知りたい方にオススメの記事→【受験のプロの技、全公開】すぐに使える、効率的な勉強法13選 | 発達障害・ギフテッド専門のプロ家庭教師 メガジュン (pro-megajun.com)

31. (重要語句以外で)漢字を使わない、ひらがなで良いと思っている

解答を漢字で書かず、ひらがなで構わないと考えているお子さまがいらっしゃいます。特に、重要語句は漢字で書くものの、それ以外の一般用語に関しては漢字で書くことをしないというケースが多くなっています。
 

(例)歴史の記述問題で、「足利義満が南北朝を“とういつ”する」など、重要語句ではない単語(=統一)はひらがなで書く


「『統一』も漢字で書こうね」と指摘すると、「別にいいじゃん」「面倒くさい」と反論し、言うとおりに漢字を覚えて書いてくれないことも多いかと思います。
漢字で解答を書きたがらないお子さまの心理的な背景としては、
 

・単純に面倒くさい
・重要語句については「必ず漢字で書くもの」と何となく認識できているが、それ以外の語句については、漢字で書かなければいけないというルールが今一つピンときていない


といったものが挙げられます。

こうしたお子さまに対しては、「重要語句以外も漢字で書くべきである」ということについて、本人が納得できるように説明していくことが大切です。例えば、志望校の過去問の模範解答を見せ、「“統一”も漢字で書かれているよ」「漢字じゃないと減点されるよ」と、具体例を示しながら漢字でなければ減点されるということをはっきりと説明しましょう。

あるいは、講師とお子さまとの間にしっかりとした信頼や尊敬の関係が築けている場合は、「“統一”くらいは漢字で書けないとダメだよ」「次からは漢字で書くって約束できる?」など、講師との関係性を上手く使って漢字を書くように誘導するという方法もあります。

お子さまが講師のことを信頼・尊敬しており、「この人に失望されたくない」「この人との約束は守らなければいけない」と感じている場合は、こうした声掛けだけで十分に行動を変えていくことができます。ですので、保護者さまから漢字で書くように言っても聞かない場合は、お子さまが信頼・尊敬している先生から伝えてもらうのも良いでしょう。

32. 中学校に上がって成績が落ちた

要因①:解法パターンを暗記することで問題を解いてきた

公立小学校の場合、授業や宿題の内容でそれほど難解なものはなく、手順に従って問題を解けば必ず正解できます。言い換えれば、“手順(解法)”を丸暗記すれば100点を取れるのが、公立小学校までのテストです。(なお、私立小学校の場合はこの限りではなく、小学生段階から難易度の高い課題が課される場合が多いです)

一方、中学校に上がると、解法の丸暗記だけで解ける問題は少なくなり、公式や定理を応用して自分で解法を見つけたり、本文を読み込んで自分の言葉で記述したりすることが求められるようになります。また、中学校に上がると勉強の量も膨大になるため、そもそも暗記では間に合わないという場合もあります。

小学校まで丸暗記の勉強方法しかしてこなかったお子さまは、自分で考えたり、定理や公式を本質から理解したりすることに慣れていないため、中学校に上がったタイミングで大きくつまずくことになります。

ですので、できれば小学生の段階から、問題を反射的に解くクセがついてしまわないよう、なぜその答えになるのかを自分の言葉で説明させるなどのトレーニングを行うのが望ましいでしょう。問題文を見たら慌てて解こうとするのではなく、「何を聞かれて、何を答えれば良いのか」を落ち着いて考えることを習慣づけるのが大切です。

既に解法を丸暗記したり反射で解いたりするクセがついてしまっているお子さまの場合は、小学校までの勉強と中学校からの勉強は全く性質が違うものであることを説明し、「覚える」のではなく「分かる」ことが大切であることを伝えましょう。

「分かる」ことの大切さを伝えつつ、上述のように、問題文を見たら慌てて解くのではなく、「何を聞かれて、何を答えれば良いのか」を落ち着いて考えるという練習を地道に続けていくことで、中学校以降の「自分で考えて解く問題」にも対応できるようになっていきます。

とはいえ、自分の頭で考えるよりも覚えたことをそのままアウトプットする方が楽なので、どうしても暗記頼りになってしまうお子さまもいらっしゃいます。このような場合は、「難易度は低いが、暗記だけでは解けない問題(少し捻りの利いた問題など)」や「暗記だと時間が掛かるが、定理を理解すれば暗記の手間が省ける問題」を解かせて、暗記よりも本質的な理解の方が応用が利いて便利であることをお子さまに実感してもらうことが大切です。

小学生までの成功体験(=暗記で上手くいった!)を塗り替えるのはなかなか難しく、すぐには効果が表れないかもしれません。ですが、「暗記よりも本質的な理解が役に立つ」という実感が積み重なれば、いずれお子さまの価値観も変わり本質から理解しようという姿勢に変わってきますので、根気よくサポートしていただければと思います。

また、本質的な理解の重要性を実感してもらうための問題をご家庭で用意するのが難しい場合は、塾や家庭教師の先生に相談して、「暗記だけで解けない問題(とはいえ今のお子さまにとって難しすぎず、本質的理解の重要性を実感できるレベルの問題)」を見つけてもらうようにすると良いでしょう。

要因②:忙しくて予習や復習ができない、睡眠が取れない

小学生と中学生で、可処分時間は大きく異なります。部活や塾、習い事など、中学生は思いのほか忙しく、勉強の内容が難しくなっているにも関わらず予習や復習の時間が取れない場合があります。また、夕方まで部活で体力を使い果たした後に、塾で夜遅くまで勉強しているような生活サイクルになると、十分な睡眠が取れず、昼間の授業で眠くなってしまって集中できないというケースもあります。

ご家庭においては、ただ「勉強しなさい」と言うだけではなく、生活リズムの変化にお子さまがついていけているか、また、塾や部活が過度な負担になっていないかを丁寧に見守り、必要に応じてスケジュールの見直しを図りましょう。

ただし、保護者さまから一方的に「部活をやめなさい」「塾の時間を減らすよ」と言うのではなく、まずはお子さまの意思を確認することが大切です。大人の視点から見た問題点を冷静に伝え、「こんな選択肢があるけれど、あなたはどう思う?」と必ずお子さまの意見を聞くようにし、自己決定の機会を設けることが非常に大切です。

自分で責任を持って判断することを中学生の頃から経験しておくと、高校・大学と進学しても自分で物事の優先順位を考えて自律的に取り組むことができるようになり、大人になってからもたくましく生きていくことができます。自己決定することは自己肯定感の成長にとっても非常に大切ですので、ぜひ意識していただけると嬉しく思います。

中学生になると、人間関係もどんどん複雑になります。時間が無いことは自分でもわかっているけれど、先輩やお友だちとの関係もあるので部活がどうしてもやめられないというケースもあります。本人の意思を尊重して部活を続けさせるのか、それとも辞めた後のフォローを親や先生がしっかりすると約束してやめさせるのか、様々な可能性を検討して最適解を見つけるようにしましょう。(関連項目→85.朝起きられない、生活リズムが不規則である

33. 中学受験をすべきか悩んでいる

「もっとレベルの高い教育を受けさせたい」「公立中学校が荒れている」「内部進学できるため、受験に追われず伸び伸び過ごせる」など、中学受験を検討する理由はご家庭によって様々あると思います。

特に2E型ギフテッドなど、発達障害と高知能の両方の性質を持っているお子さまの場合は、いろいろな学力層の子どもたちが集まる公立中学校よりも、一定の学力レベル以上の子どもたちが集まり、保護者の教育関心も高い私立中学校の方が落ち着いて過ごせる場合がほとんどであるため、私たちも中学受験をお勧めすることが多くなっています。

また、ギフテッドの性質を持っていない発達障害のお子さまの場合も、公立中学校のガヤガヤしだ雰囲気が合わない可能性が高いため、お子さまの学力レベルに合った私立中学校に進学することをお勧めすることがあります。

さらに、高校受験を見据えると、ギフテッドや発達障害のお子さまにとって中学受験は非常にメリットが大きいものと言えます。ギフテッドや発達障害のお子さまは、全ての教科(副教科含む)の定期テストで満遍なく点を取ったり、提出物の期限を守ったり、きちんとした授業態度で出席したりといった、内申点に関わること全般が苦手な傾向にあります。

都道府県ごとに若干の違いはあるものの、公立高校を受験する場合は内申点の比率が非常に高く、内申点が配点の50%以上を占めるケースも非常に多くなっています。ですので、公立中学校で内申点を伸ばせる自信が無い人は、
 

・私立中学校から大学まで内部進学する
・私立中学校から高校に内部進学し、大学は得意教科を活かして一点突破型で受験する


といったパターンが非常にオススメとなります。

ちなみに、内申点は「定期テストの点数>実力テストの点数>提出物・実技>授業態度」の順に配点が高い場合が多くなっています。テストで点が取れるタイプのお子さまはある程度内申点にも期待を懸けることができるため、公立中学校から公立高校への進学も選択肢にできますが、そうでない場合は中学受験をした方が高校受験においては圧倒的に有利であると言えます。

ただし、中学受験をする場合は、どんな偏差値の学校を目指すにしてもそれなりに受験に向けた勉強をする必要があります。受験勉強がお子さまにとって大きな負担になってしまう場合は、無理に高いランクの学校を目指さず、より受験勉強の負担の少ないランクの学校を選ぶことも選択肢の一つとなります。また、無理に偏差値の高い学校に進学してしまうと、入学後に周りについていけずしんどい思いをしてしまう場合もあります。

私たちプロ家庭教師メガジュンにおいても、受験勉強が過度な負担にならず、また、お子さまが入学後に楽しく学校生活を送れることを重視していることから、お子さまの特性や学力レベルをしっかりと分析した上で、志望校のランクを下げるご提案をさせていただく場合があります。ただしその際には、お子さまが挫折感を感じてしまわないよう細心の注意を払い、お子さまにとってより良い選択肢であることをご本人にも丁寧に説明するようにしています。

中学受験をすると決めた場合は、お子さまの学力と受験勉強に対するストレス耐性をしっかりと分析し、お子さまにとって最適な志望校選びを進めることが大切です。また、多くのお子さまは、受験勉強をとおして粘り強さやセルフコントロール力、PDCAサイクルを実行していく力や自信・自己肯定感など、生きていく上で大切な力を身に付けることができます。登る山が高いほど、登り切ったときに人は大きく成長しますので、成長と負担のバランスを周りの大人が見極め、中学受験がお子さまにとってかけがえの無い経験となるようにサポートしてあげることが何よりも大切です。

また、当然ですが「良い学校に通わせたい」というのが親の一方的な思いであってはいけません。中学受験をさせるのは、お子さまにとってより良い環境を整えること、あるいはお子さまが大きく成長する機会とすることが目的です。受験が迫ってくるとどうしても合格できるかどうかがばかりを考えてしまいますが、中学受験の本来の目的を忘れず、親子のコミュニケーションを大切に、お子さまの心と身体の状態を丁寧に見守っていただければと思います。

お子さまは周囲の大人の影響を受けやすく、また、大人が思っている以上に大人の言動をよく見ています。「受験を頑張りたい」というお子さまの言葉も、もしかしたら「お母さん/お父さんの期待に応えたい」という気持ちから出ているものかもしれません。もちろん、保護者さまの期待に応えることがモチベーションであることは悪いことではありませんが、それが過度なプレッシャーに繋がってしまうケースもあります。お母さん/お父さんのために頑張るのではなく、まずは自分のために頑張ることが大切であることや、無理をして期待に応える必要が無いことについては折に触れてお話ししておくと良いでしょう。そのためには、受験以外のことについてもたくさんコミュニケーションを取り、お互いに本心を伝えあえる関係性を築いていくことが大切です。

★もっと詳しく知りたい方にオススメの記事→中学受験でギフテッドの才能を最大限に生かす方法|準備のコツと成功のポイント | 発達障害・ギフテッド専門のプロ家庭教師 メガジュン (pro-megajun.com)

34. 勉強でとにかく楽をしようとする、答えを写す

問題を解くときに、自分で考えずにすぐに答えを見て写してしまうお子さまがいらっしゃいます。これは、勉強があまり得意ではなく、「勉強が苦手だ、嫌だ」と感じているお子さまによく見られるケースとなっています。あるいは、勉強がそれなりに得意なお子さまでも、「この問題は自分には必要無い」と勝手に判断して、答えを写してしまう方もいらっしゃいます。

年齢的には、答えをすぐに見て写してしまうお子さまは小学生において最も多く、中学生・高校生と学年が上がるにつれて少なくなっていきます。

お子さまがすぐに答えを見て写してしまうのは、

・自分で考えるのが面倒くさい
・その問題を自力で解ける自信が無い
・勉強以外にやりたいことがあり、早く勉強を終わらせたい
・自分で考えて解くことが学力の向上(点数アップ)につながることを理解していない


などの理由によるものです。

お子さまに答えを写さず自分の頭で考えて解くようにさせるためには、「答えを写しても点数は上がらない。自分で考えて解いて初めて知識が身に付き、点数を上げることができる」ということを実感してもらう必要があります。

また、中には「点数を上げたい」というモチベーションがそもそも低く、「勉強すれば点が上がることは分かっているけれど、特に点を上げたいとも思わない」というお子さまもいらっしゃいます。このようなお子さまの場合は、お子さまが「点数を上げたい、テストで良い点を上げたい」という意欲を持てるようにサポートしていく必要があります。

以下では、それぞれの場合における解決策、すなわち、

①「答えを写すと点数が上がらない。自分で解くことが大事である」という実感を持たせる
②「点数を上げたい」というモチベーションを上げる


ためのアプローチについて解説していきます。

「答えを写すと点数が上がらない。自分で解くことが大事である」という実感を持たせる

“自分の頭で考えるからこそ、学力が身に付き点数が上がる”ということが実感できておらず、「面倒くさいから」「早く終わらせたいから」と答えを写してしまっているお子さまの場合は、答えを写してしまっているせいで点数が伸びていないということを、実際のテストの結果などを見ながら具体的に示す方法が効果的です。

例えば、定期テストが返ってきたら、そのテストで間違えた箇所に注目し、「これはこの間の宿題で出ていた問題だよね。あの時答えを写さずに自分で解いていたら、この問題は解けていて、あと10点取れていたかもしれないよね?」とできるだけ具体的に指摘していきます。

答えを写したために解けていない問題については、見逃すことなく全てを逐一指摘し、また、同じ問題で何度も間違える場合も、「自分の頭で考えて解く練習をしていないからだよ」とその都度根気良く指摘していきます。

逆に、自分の頭で考えて解く練習ができていて、本番のテストでも正解できている問題については、「これはしっかり練習できたから解けているね」と指摘し、「自分で考えて問題を解くことには意味がある」という自覚を促すようにします。

このアプローチにおいては、
 

・「自分で解かないと身に付かないよ」と言葉で説明するだけでなく、実際のテストを見ながら指摘することで、確かにそうであることを実感させる
・一度伝えるだけでなく何度も繰り返し伝え、本人が納得し、実感を得て行動が変わってくる(答えを写さないようになる)まで続ける


の2点がポイントとなります。

「答えを写しても意味が無いよ」と伝えるだけでは、実感や納得感が持てないため、なかなかお子さまの行動は変わりません。「実際のテストなどを用いて実感を持たせること」「本人の行動が変わるまで続けること」が重要ですので、ぜひ意識して取り組んでいただければと思います。

「点数を上げたい」というモチベーションを上げる

テストで良い点を取りたいというモチベーション自体が低い子に対しては、その子がどんなことであれば頑張ろうと思えるのかを分析することがポイントになります。その子がハマっているものや、勉強以外で頑張れていること(過去に頑張れていたことを含む)を詳しく分析し、何がその子を突き動かす原動力になっているのか、何に対してどんなシチュエーションであれば頑張れるのかを見極めていきます。

例えば、ゲームであれば熱中できるというお子さまであれば、どんなゲームが好きで、どんな遊び方をしているかを分析します。難易度の低いステージで気持ちよくプレイするのが好きなお子さまもいれば、誰よりも早くそのステージをクリアし周りから「すごい!」と称賛されたいというお子さまや、ゲームの中の世界をあちこち探索するのが好きなお子さま、アイテムを全て集めたいお子さま、対戦ゲームで相手に勝つのが好きなお子さま等々、ゲームの遊び方は千差万別です。

であればこそ、ゲームの遊び方にはそのお子さまの個性が現れており、その個性に対して上手くアプローチすることで「頑張ろう(頑張りたい)」という気持ちを引き出すことができます。

例えば、「難易度の低いステージで気持ちよくプレイするのが好き」というお子さまの場合であれば、勉強においても、まずは難易度の低い簡単な問題を気持ちよく解いてもらうことから始めます。

「難易度の低いステージで気持ちよくプレイするのが好き」というお子さまは、その行動の根本に「弱い敵をサクサクと倒していく快感」があり、その快感を得るためにゲームをしていると考えられます。そのため、この“サクサクと倒していく快感”を勉強にも当てはめることで、お子さまの気持ちを勉強に向かわせることができるようになります。

したがって、第一段階としては、本人がサクサクと解くことのできる問題を解かせ、勉強においてもゲームと同じような快感を得られることをまずは実感させます。本人が勉強においてもサクサクと進められる快感を覚えることができたら、次に簡単な問題の中に、本人に分からないように「少し難易度の高い問題」や「志望校の入試で実際に出題された問題」(ただし、難易度が高くなく今の本人でも解けるもの)を混ぜて出題します。

本人が問題を解き終わったら、「実はこの問題は難しい(志望校の本番の問題である)んだよ」と伝えます。すると本人は、サクサクと解ける問題の流れで難しい問題が解けたため、「難しい問題も怖くない」「案外自分にも解けるのだ」と感じることができ、他の難しい問題や志望校の問題にも挑戦しようというモチベーションが湧いてくるようになります。

難易度の低い問題以外にも挑戦しようというモチベーションが湧いてきたら、さらにやる気を奮い立たせるために「この調子で難しい問題が解けるようになれば、クラスで○位以上になれるかも/次のテストで○点取れるかも/ライバルの○○くんに勝てるかも」など、本人が意識している目標や基準点を示しながら、難易度の高い問題に挑戦するモチベーションをさらに高めていけるようアシストしていきます。

ここまで来ると、「テストで点を取りたい」という欲求が少なかったお子さまも、ほとんどが「テストで良い点を取りたい」と思えるようになっています。ここで初めて、「テストで点を取るためには、答えを写すのではなく自分の頭で考えて解く必要がある」という言葉がお子さまにとって意味のあるものになっていきます。

自分で考えずに答えを写してしまうお子さまの中には、そもそもテストで点を取りたいというモチベーションが低く、「別に学力が伸びなくても良い」と思っている子もいるため、まずは本人が「テストで点を取りたい」と思えるように気持ちを上手く誘導してあげることが大切です。

ここでは「ゲームが好きで、特に難易度の低いステージを気持ちよくプレイするのが好きなお子さま」を例に挙げました。ですが、ゲームでも他の遊び方を好むお子さまや、ゲーム以外の趣味を持っているお子さまについても、「なぜお子さまがその遊び方や趣味を好むのか」を詳しく分析することで、そのお子さまのモチベーションを上手く誘導することが可能です。

お子さまの気持ちがなかなか勉強に向かずお困りの方は、お子さまが何に対してであれば頑張れるのか、その根本にある動機は何かを分析し、上手く気持ちが勉強に向かうようにサポートしていただければと思います。

35. 「解けたからこれで良い」とより適切な解法を知ろうとしない

より良い解法(手順が少なく間違いにくい/計算量が少なくて済む/時間が掛からない 等)があるにも関わらず、「解けたからこれで良い」と適切な解法を知ろうとしないお子さまがいらっしゃいます。ここでは、以下の例題を用いながら詳しく解説していきます。

===================================
(例題)
「11, 14, 17, 20, 23, 26, ……,」のようにある規則にしたがって数が並んでいるとき、30番目の数字を答えなさい。
<A:適切な解法>
○番目の数字は「11+3×(○-1)」であることに着目し、11+3×(30-1)=98を導く
<B:正解はできるが、時間が掛かる解法>
数字が3ずつ増えているので、29, 32, 35, ……, と30番目まで書き連ねていく
===================================

この例ではAでもBでも正解に辿り着くことはできますが、Bの方法では時間が掛かったり、途中で計算間違いをしてしまったりする可能性があります。また、「1000番目の数字を答えなさい」など数字が大きくなると、Bの解法では時間内に解くことが難しくなるでしょう。

そのため、もしBの解法で答えにたどり着けたとしても、今後同じような問題が出たときにはAの解法を使えるように、別解を見直し、適切な解法を知ることがとても大切です。

ですが、「別解でも解いてみよう」「より適切な解法を知っておこう」と声を掛けても、「Bの解き方で解けたのだから、Aの解き方は知らなくても大丈夫なはずだ」と主張し、適切な解法を習得しようとしないお子さまもいらっしゃいます。このようなお子さまは、心の中で、
 

・新しい解き方を習得するのが面倒くさい
・今までの方法でも解けたのだから、新しい解法を習得する必要は無い
・とにかく解ければ良く、より正確に、効率的に解けるかどうかはどうでもいい


と考えている場合がほとんどです。

こうしたお子さまが、別解を参照し、適切な解法を習得できるようにするためには、適切な解法を習得することのメリットについてお子さまが心から納得し、その重要さを実感する必要があります。適切な解法を習得するメリットには、
 

・より高度な問題が解けるようになる(上の例だと、30番目ではなくn番目も解けるようになる)
・計算量を減らせる
・問題を解く時間が節約できる
・いろいろな解法を知ることで、未知の問題にも太刀打ちできるようになる


といったものが挙げられます。こうしたメリットについては、言葉だけで説明してもなかなか伝わりづらいため、実際に問題を解きながらお子さまに実感してもらうことが大切です。

例えば、時間制限を設けて問題を解かせてみて、今まで通りの解法だと時間が足りなくなることを実際に体験させます。その後、適切な解法を用いて講師と一緒に問題を解いてみると、時間内で解ききることができるため、お子さまは「自分のやり方だと解けなかった問題も、先生に教えてもらった解き方なら時間内に解けるんだ」と適切な解法のメリットを身をもって実感することができます。

そこでお子さまが「適切な解法って意味があるかも?実はすごいのかも?」と気付き始めたら、
 

・今までの解法よりも手順が少なく、実は楽に解けること
・手順が少ないため、ケアレスミスの可能性も減ること
・いろいろな解法を知ることで、解ける問題の種類も増えること


などを併せて伝えていきます。講師が実際に問題を解いて見せながら、「ここをこうするだけ、計算1回だけで解けちゃうんだよ!ラクチンだよね!」などと適切な解法のメリットをどんどんアピールしていきましょう。

ただし、適切な解法を習得することを避けるお子さまは、基本的に面倒くさがりであることが多く、いくら適切な解法のメリットが実感できたとしても、自分ひとりで新しい解法を習得するまでには至らないケースがあります。このようなお子さまの場合は、授業中に先生と一緒に新しい解法や適切な解法の練習を繰り返し、「授業を受けていたら、いつの間にか新しい解法を習得できていた」という状態を目指すと良いでしょう。

36. 先生のことを舐めていて、言うことを聞かない

生まれつき知能の高いギフテッドのお子さまは、議論をしても大人が負けてしまったり、お子さまの意見に対して大人が論理的に反論できなかったりすることがあります。こうした経験が積み重なると、「大人なんて大したことが無い」とお子さまが感じて、大人を下に見てしまったり、言うことを聞かなくなったりする場合があります。

こうしたお子さまに対しては、

①お子さまに対して、きちんと論理的に反論できる先生に出会わせる
②知識が無い・論理的思考力が低い人との折り合いの付け方を知る


といった2つのアプローチによって、大人に対する態度を改めていくことができます。

まず、「①お子さまに対して、きちんと論理的に反論できるに出会わせる」に関しては、ギフテッドのお子さまは論理的な正しさにこだわることが多いため、大人の側も論理的に対応していくことで解決を図るという方法になります。

例えば、場合の数を求める問題において、学校では全ての場合を書き出して答えを求めるように指示されている一方、お子さまは既にnCrの公式を知っているため、「nCrを使って解きたい」と主張するようなケースがあったとします。

この場合、「とにかくnCrの公式は使っていけない」と一方的で非論理的な伝え方をすると、お子さまは強く反発し、「先生は頭が固い」「nCrも教えないなんて、学校は頭が悪い人が集まっているんだ」と周りを見下してしまうことがあります。

もし、お子さまがnCrの公式を使いたいと主張した場合には、「塾では習っているんだね。どういう使い方をすれば良いか、先生に教えてくれる?」と公式の意味を説明させます。

このとき、「nとrに数字を当てはめればよい」という表面的な説明しかお子さまができない場合は、公式を丸暗記しているだけであり、後々の勉強で非常に苦労することになります(関連項目→29.応用問題が解けない)。

お子さまが「5枚のカードから2枚引くから、5と2を当てはめれば答えが出る」というような表面的な操作の手順しか説明できないときは、「なぜそうすると10通りということになるの?先生に分かるように説明してみて」と何度か問いかけ、それでも答えが出てこない場合は、講師がnCrの公式について一から証明して見せます。

当然ながら、nCrの公式の説明をする際には、5枚のカードから2枚を引き出す場合の例をいくつか挙げつつ、そこから「カードを引く全てのパターンは5×4×3×2×1(5の階乗)」「順番は加味しないから『÷2』」など、順を追って説明していくことになります。

その説明を踏まえて、さらに、

・場合の数を一つずつ数えることは、nCrの公式を理解するための基礎になっている
・先生がしたような説明が自分でできないということは、nCrの公式が本当の意味で身に付いていないということ
・本当の意味で公式を理解せず表面的に使っていると、今後応用問題に出会ったときに解けなくなる
・自分で公式の説明ができないのであれば、公式を使うのはやめるように。使いたいのであれば、自分で公式の説明ができるようになること。


と順を追って説明していきます。

このように、お子さまに対して「論理的に説得する」というアプローチを行うためには、指導者がお子さまを上回る論理的思考力と説明力を持っていなければなりません。また、当然ながらnCrを分かりやすく解説するための知識や指導力も必要です。

こうした技量のある指導者は決して多くはありませんが、「nCrを使いたい」というお子さまに対して感情的に「ダメなものはダメ」と言うだけでは、お子さまの「大人を舐めてかかる」という態度はなかなか改善しません。

また、こうした態度のまま大人になってしまうと、上司や同僚や配偶者を見下してしまったり、「自分が絶対に正しいと譲らない」「謝るべきときに謝れない」「プライドが高い」などの振る舞いが染みついてしまい、後々の人生で非常に苦労するかもしれません。

ですので、知能が高く大人を見下しているお子さまに対しては、早いうちにお子さまよりもさらに知識や思考力が上回る大人と対峙させ、自分の考えや主張が絶対では無いという経験を得させてあげることが大切です。

また、上述の例で「公式の意味を説明して」と言った際に、お子さまがしっかりと公式の意味を説明できた場合は、もう一つのアプローチである「②知識が無い・論理的思考力が低い人との折り合いの付け方を知る」によってお子さまの態度の改善を図っていくことになります。

nCrの公式の意味がしっかりと説明できるのであれば、公式の使用を禁止する理由はありません。ですので、学校においても「自分は公式の意味をきちんと理解して使っているから問題は無いはずだ」と主張し、学校の先生と論戦を交わすことも一つの方法になります。

ただ、学校の先生は必ずしも論理的に考えられる人ばかりではなく、「ダメなものはダメ。場合の数を全部書かないなら減点する」と、お子さまの主張を聞き入れてもらえない可能性も十分にあり得ます。

その場合は、残念ですが「大人の中にはそういう人もいる」とお子さまに理解してもらう(端的に言えば、“諦めてもらう”)ことが必要になります。

ギフテッドのお子さまは、周りの人も自分と同じように論理的に考えて行動できると思っている場合が多いのですが、実際のところ、ギフテッドのお子さまと同じレベルで論理的に考えられる人はほとんどいません。ギフテッドの出現率は人口の2%とされており、ギフテッドのお子さまに比べれば、ほとんどの人は論理的思考力が低く、感情に左右されて行動していると言えます。

この「ほとんどの人間は論理的に考え行動する力がお子さまよりも低く、感情に左右されて生きている」という事実について、お子さまに率直に伝えることも、ギフテッドのお子さまが生きていく上では必要なことになります。その上で、ギフテッドではない人たちとどのように折り合いを付けていくかをお子さま自身が考えていくことが大切です。

上述の例で言えば、

・周りに合わせてnCrの公式は使わず、場合の数を全て書き上げて解く
・周りに合わせずnCrの公式を使って解く(ただし、点数は得られない)
・nCrの公式を使って解いても点数を得られるよう、先生と交渉する


など、折り合いの付け方は様々あり、どれが正解ということはありません。それぞれのメリットやデメリット、先生との相性を考えながら、最終的にはお子さま自身が判断していくことになります。

折り合いの付け方までをお子さまに選択させるのは気の毒なようにも思いますが、お子さま自身が考え選択しないと、いずれにせよ「与えられた選択」となってしまい納得感を得ることができません。また、ギフテッドのお子さまが生きていく上で、このような折り合いの付け方を選択する場面にはいつか必ず直面しますので、子どもの頃から少しずつ慣れておくと良いでしょう。

ただ、「周りの人は皆、あなたほど論理的に思考する力を持っていない」と説明することは、「周りは皆、自分より頭が悪いのだ」と周りを見下してしまう態度をさらに増長させてしまう可能性があります。伝え方には十分配慮し、「周りもあなた自身も、両方が納得できるやり方を見つけることが大切」ということについても、併せてしっかりと伝えていただければと思います。

37. このままでは志望校に受からないと思うので、親が付きっきりで勉強を見ている。それでも学力が伸びないので困っている。

観点①:志望校のレベルが適切か

まずは、志望校のレベルが適切かどうかを確認しましょう。現在の学力だけでなく、お子さまの性質(辛抱強さやストレス耐性、メンタルの強さ)を踏まえて考えていく必要があります。

身の丈以上の学校を目指すことは、受験勉強が大きな負担になるだけでなく、学校に入ってからも周りに追いつくために必死に勉強しなければならず、劣等感やストレスから不登校になってしまう可能性もあります。

もちろん、心身ともたくましく育ってほしいという保護者さまの思いも十分理解できますし、受験をきっかけに大きく成長されるお子さまもいらっしゃいます。ですが、勉強のストレスによって疲弊し心身を病んでしまっては、受験が成長の機会どころかお子さまにマイナスの影響を与えてしまうことになります。

お子さま本人が「○○中学(高校・大学)に行きたい」と言っている場合も、自分の実力や性質を客観的に見ることができていなかったり、周りに勧められるがままに志望校を選んでいたりすることがあります。そういったケースにおいては、お子さまのプライドを傷つけることの無いよう気を付けながら現状を伝え、実力以上の学校を目指すことのデメリットを冷静にお話しするようにしましょう。

観点②:親子の関わり方は健全か

親が付きっきりで勉強を見ているがゆえに、親子ともにストレスが溜まってしまっていないかという点も重要です。たとえ保護者さまが教育関係者の方であり、高い指導力を持っていたとしても、ご自身のお子さまに対してほかの子と同じように教えられるかと言えばそうではないと思います。

お子さまにとって保護者さまは先生である前に「お母さん/お父さん」であるため、勉強に関して指示を受けるモードにどうしてもなりづらく、「問題集は3周するのが当たり前」「英単語は基礎中の基礎」といった勉強に関するアドバイスも、すんなりと受け入れるのが難しくなります。

親子の関係を急に変えるのは難しいため、勉強のアドバイスに関しては、“勉強を教えてくれる人”としてお子さまが認識しやすい塾講師や家庭教師に任せる方が前向きに勉強に取り組める場合が多くなっています。

また、家庭の一番の役割は、お子さまが心と身体を安心して休ませられる場であることです。勉強が原因で親子仲が悪くなってしまっては、心も身体も回復せず、結果として勉強の効率も落ちてしまうかもしれません。勉強のせいで親子関係が悪くなってしまうようであれば、勉強は塾や家庭教師に任せ、保護者さまはお子さまに安心と(心理的な面も含めた)安全を与えるという役割に徹することで、結果としてより効果的に勉強を進めることができます。

観点③:思春期特有の問題

また、思春期に差し掛かると親の言うことを素直に聞けなくなってきます。これはお子さまに自立心が芽生えつつある証拠であり、とても健全な反応です。

そこで「親に歯向かうなんて」「親が付いてないと勉強できないくせに」といった対応をしてしまうと、親への反抗心が一層強くなったり、お子さまの自立心を阻害してしまったりします。親子であっても別の人格ですので、一定の距離を保ち、お互いが一個人として自立しながら関わることを意識しましょう。

観点④:子どもの失敗を見守ることの大切さ

さらにこういったケースでは、「親がいつまで子どもの勉強の面倒を見るのか」という問題もあります。高校生や大学生になっても親が勉強のスケジュールを立ててあげていると、大人になってから自分でスケジュールやタスクの管理ができず、社会人として働くときにとても困ってしまいます。

子どもに失敗してほしくないという親心は十分理解できますが、「自分でやってみて失敗する」という経験がお子さまを成長させますので、心配でつい口を出したくなる気持ちをぐっと抑えて見守ってあげることが大切です。

もし失敗してしまっても「だから言ったじゃない」「あなたには無理」と言わず、自分で挑戦したという事実をまずは褒めてあげるようにしましょう。「ナイスチャレンジだったよ!」とお子さまの挑戦を受け入れるとともに、お子さまが助けを求めてきたときにだけ「こうしたらいいんじゃない?」とアドバイスしてあげれば大丈夫です。

また、勉強面以外でも、お子さまの言動を過度に制限しないことが大切です。好奇心の強い男の子の場合に多いのですが、放っておくと何をやりだすかわからないため、「あれはダメ」「やめておきなさい」と保護者さまがついつい口出ししてしまうことがあるかと思います。

ですが、保護者さまがお子さまの行動を制限しすぎると、「挑戦することは悪いことなのだ」という考え方が染みついてしまい、思春期以降に自発的に物事に取り組むことができなくなってしまう場合があります。

例えば、志望校を検討する際に「将来やりたいことは?」と尋ねると「特に何も…」と答えるお子さまがいらっしゃるのですが、しっかりと話を聞いてみると本当は何かしらやりたいことがある場合がほとんどです。なぜ最初からやりたいことを答えなかったのか聞くと、「どうせ無理だと思ったから」と答えるお子さまも意外と多く、自信を持って挑戦する姿勢を身に付けることの大切さをプロ家庭教師として日々痛感しています。

幼少期の過ごし方はその後の人生に大きく影響します。もちろん、大きな怪我や命の危険があるような行為は周りの大人がしっかりと止めなければいけませんが、それ以外の行動に関しては、お子さまの好奇心を尊重し、どんどん挑戦させ、失敗を受け止めていくように意識していただけると嬉しく思います。

38. 公立にすべきが私学にすべきか悩んでいる(高校、大学)

高校

高校を公立にすべきか私学にすべきかについては、経済的な面で悩まれているご家庭が多いのではないでしょうか。大阪府や京都府など一部の都道府県では、私立高校に通う場合の助成金制度があるため、公立高校と同等程度の経済負担で通学できる場合があります。ただ、特段の助成制度が無い地域においては、当然ながら私立高校を選ぶと経済的負担は大きくなります。

私立高校は公立高校に比べると資金が潤沢です。そのため、校舎がきれいで最新のICT機器が揃っており、部活動でもトップレベルの指導者が招聘できて遠征費も学校負担となると、私立高校は非常に魅力的に見えるかもしれません。また、広告宣伝にもしっかり費用をかけているため、ホームページやパンフレットも公立高校に比べると華やかで見ごたえがあるでしょう。

一方で、私立高校は独立性が非常に高く、「建学の精神」が尊重されます。そのため、行政の監視の目が届きづらく、問題事象なども表に出づらい側面があります。いじめや不登校、体罰や不適切指導についても、新聞沙汰になる前に被害生徒が退学したり、示談で終わったりして、統計上の数字に表れていないとする見方もあります。

少し前には京都の名門私立高校の附属小学校で、「宿題を忘れた児童の机を廊下に出し、授業を受けさせない」などの不適切な指導があったとして問題になりましたが、この場合は、附属小は2014年開校と比較的新しく、また被害を受けたのが小学生ということもあり問題が表沙汰になりました。

ですが、有名進学校であったり、部活動の強豪校であったりした場合は、「せっかく合格できたのだから」「部活が厳しいと分かっていて入学したのだから」と、生徒本人や保護者も問題を敢えて指摘せず、我慢してしまうケースも多くなっています。行政としても、私立学校に対してはその学校の建学の精神を尊重する必要があるため、積極的に介入することはありません。

結果として、「合わない学校を選んでしまった」という生徒側の問題として、退学や泣き寝入りになってしまうケースが多い点については留意しましょう。

また、私立高校の魅力の一つとして、受験が早く終わるという点があります。近年では少子化が進んでいることもあり、私立高校としても生徒の獲得に躍起になっています。そのため、前倒しで試験を実施したり、近隣の中学校へのあいさつ回りを積極的に行ったりして、「この子とこの子なら、推薦で受けてもらえば大丈夫です」というようなグレーな情報提供をしている場合もあると聞きます。

もちろん、私立高校に進学して、楽しく充実した高校生活を送っている方もたくさんいらっしゃいます。ですが、私学を選ぶ場合は表向きの華やかな面だけを見るのではなく、裏側にある問題点や思惑にも目を向け、冷静に判断することが大切です。

例えば、インターネットの口コミサイト(受験情報の掲示板 – 受験の口コミならインターエデュ (inter-edu.com)など)を参照してみたり、オープンキャンパスだけでなく普段の学校の様子を見学させてもらったり、あるいは現役生の登下校の様子などを観察してみたりして、“よそいき”ではなくその学校の普段の姿に注目してみるのも一つの方法になります。

公立高校については、私学のように問題事象が見えづらいということは無いものの、資金面・人材面ともに私学に比べると圧倒的に脆弱であることは否めません。先生の指導力のバラつきも大きく、まともにICT機器を扱えない先生や、時代遅れの指導(男は男らしく、女は女らしく/生徒が教師に意見することは許さない/我慢は美徳で、体調不良は甘え 等)をする先生も残念ながら存在しています。

一方で、非常に指導力が高く、生徒のために日々頑張っておられる先生もいます。発達障害や不登校に対して真摯に向き合ってくれる先生や、探究活動と受験勉強のバランスをいかに取っていくか、日々頭を悩ませながら生徒のことを思ってくれている先生もたくさんいます。そして、一人一人の先生が指導に対して向上心を持っている高校は雰囲気も良く、生徒も落ち着いています。

公立高校を選ぶ際は、ぜひ学校説明会やオープンキャンパスにたくさん足を運んでいただければと思います。学校説明会では、校長・教頭・教務主任・進路指導部長などの先生が順番にプレゼンを行うことが多いと思いますが、話の内容から「その学校が何を大切にしているのか」が一貫して伝わってくる学校は良い学校と言えます。

逆に、それぞれの話の方向がバラバラで、学校全体としての思いが伝わってこない場合は、学校がチームとして動けておらず、悩みを相談したり、何か問題があったりしたときの動きも悪いことが予想されます。

学校も、言い換えてみれば組織であり、会社と同じです。優秀な社員が一人いたとしても会社が回らないように、優秀な先生がいるだけでは良い学校とは言えません。「我が子を預けるに当たって信頼できる組織がどうか」という視点で学校を見てみるのがオススメです。

★もっと詳しく知りたい方にオススメの記事→【発達障害別】合格しやすい高校受験、充実した高校生活を過ごせる学校選び | 発達障害・ギフテッド専門のプロ家庭教師 メガジュン (pro-megajun.com)

大学

大学の場合は高校と違い、入学後の過ごし方や校風との相性について、それほど神経質に考える必要がありません。高校までのように毎日教室に通う必要もありませんし、クラスメイトや担任の先生と毎日顔を合わせるわけでもありません。単位が取りやすい/取りにくいなどの差は多少ありますが、近年ではどの大学も単位取得に関しては厳しくなっているため、敢えて注目する必要も無いでしょう。

大学を国公立にするか私立にするかで迷う場合は、「①経済面」と「②入りやすさ(入試との相性)」に注目すると良いでしょう。

①経済面
当然ながら、私立大学の学費は膨大です。奨学金は学生ローンであり、いわば借金です。奨学金を借りる前提で進学するのも一つの選択肢ではありますが、奨学金があるから結婚できない/子どもを持てないという若者が多いことは社会問題の一つになっています。

奨学金を借りるとその後の人生に大きな影響があることを踏まえ、結婚や子どもを持つことを積極的に考えている人や、しっかりとお金を貯めたいと考えている人は慎重に検討するようにしましょう。(参考:奨学金の返済に充てるお金がない…。手取り「18万」でも奨学金用にお金を残すことは可能? | ファイナンシャルフィールド (financial-field.com)

②入りやすさ(入試との相性)
公立大学の場合は入試に必要な教科数が多く、共通テストが必須である大学が多いことが特徴の一つになっています。特に、難関国立大学は文系科目・理系科目ともに満遍なく得点する必要がある場合がほとんどで、「理系科目の点数がどうしても上がらない」というような人には不向きと言えます。

また、推薦入試や総合型選抜(AO入試)を実施しているのも私立大学に多いため、早めに進路を決めたい人には私立の方がオススメとなります。ただ、国公立大学の中にも総合型選抜を実施する大学は増えてきていますので、「国公立大学=難しい」という先入観にとらわれず、各大学の入試制度をしっかりとリサーチして志望校を選びましょう。

一方で、入りやすい大学は偏差値も低く、就職の際に不利になってしまうというデメリットもあります。特に有名企業の場合は、毎年膨大な量のエントリーシートを捌く必要があるため、どうしても学歴で選別せざるを得ません。大企業に就職したいと思っている人は一定の偏差値以上の大学に入ることが前提条件となりますので、その点も踏まえて志望校選びと受験勉強に挑みましょう。

★もっと詳しく知りたい方にオススメの記事→勉強する意味・目的って?大人は何と答えるべきか、プロ家庭教師が教えます! | 発達障害・ギフテッド専門のプロ家庭教師 メガジュン (pro-megajun.com)

39. 勉強に集中できないのは、発達障害(ADHD・ASD・LD)のせい?

ADHD

お子さまが勉強に集中できないのは、発達障害(ADHD)だからではないか?というご相談をよくお伺いします。ですが、勉強に集中できない要因は様々であり、勉強に集中できない=発達障害であると決めつけるのは望ましくありません。

発達障害が原因で勉強に集中できないお子さまの場合は、勉強以外の面でも発達障害に起因する困りごとが現れます。例えば、ADHDのお子さまの場合は、
 

○勉強以外に関しても集中が続かない
○整理整頓が苦手(カバンや机の中がいつもぐちゃぐちゃ)
○極端に落ち着きが無い、貧乏ゆすりが激しい
○よくぼーっとしている
○頭の中が常に考え事でいっぱいで思考の整理が苦手
○思ったことをすぐに口に出してしまう
○順番が待てない、順番抜かしをする
○興味のあることに対しては過度に集中し、寝食を忘れることもある


などの特徴が現れます。

逆に、これらの特徴が現れず勉強にだけ集中できない場合は、ADHDの特性以外が要因になっている可能性が高いと考えられます。

そもそも人間は好きな事には集中できますが、嫌いなことや興味の無いことには集中できないものです。勉強が好きなお子さまはほとんどいないため、勉強に集中できないのは当然のことであるとも言えます。

お子さまに勉強に集中できるようになってほしいときは、勉強に前向きに取り組めるようにフォローすることが大切です。例えば、「勉強してテストの点が上がると嬉しい」という成功体験を得てもらうために簡単な問題を解かせる方法(スモールステップ)や、好きなゲームやアニメと関連付けながら勉強するなどの方法を取り入れると良いでしょう。(関連項目→1. 勉強に集中できていない

ASD(自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群)

集中できない原因に、ASD(自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群)の特性が関係していることもあります。ASDの方の場合は、集中すること自体が苦手なのではなく、特性の一つである「こだわりの強さ」が原因となって勉強に集中しづらいケースが多くなっています。

例えば、字をきれいに書くことに対してこだわりが強いお子さまの場合は、上手く書けるまで字を書きなおすなどして、肝心の勉強の内容が頭に入らないことがあります。

また、問題集の1問目から順番に解くことにこだわるお子さまも多く、「分からない問題は飛ばして次に進む」ということができずに勉強の効率が落ち、結果として後半になると集中力が持たないという場合もあります。

ASDのお子さまの場合は、こだわりを否定するのではなく、こだわりと上手く付き合っていくことが大切です。例えば、字をきれいに書くことにこだわってしまう場合は、記述式の問題は後半に解くようにし、選択式の問題から始めることで集中を保ちながら勉強することができます。問題を解く順番についても、本人が解きやすい順番になるようあらかじめ先生が問題を並べ替えておいたり、分からない問題に印をつけておけば、後で必ず先生が教えてくれるというルールを作ったりするなどの方法が考えられます。

ASDのお子さまの多くはコツコツ頑張ることが得意であり、一度ルーティンができると継続して勉強できるという強みがあります。一方で、こだわりを否定してしまうと勉強自体がトラウマになってしまい、いくら説得しても机に向かわないというケースもあります。

本人のこだわりを尊重することが何よりも大切ですので、周りにとっては些細に感じることでも、できるかぎり受容することを心掛けましょう。

★もっと詳しく知りたい方にオススメの記事→アスペルガー(ASD)のこだわり例と対処法、特性を勉強や就職に活かすには? | 発達障害・ギフテッド専門のプロ家庭教師 メガジュン (pro-megajun.com)

LD(学習障害/SLD(限局性学習症))

LDとは、知的な発達の遅れや視聴覚の障害が無いにもかかわらず、読む・書く・計算するといった特定の学習スキルに困難が生じる発達障害のことです。LDを持つお子さまの場合は、読むこと・書くこと・計算することそのものに人一倍エネルギーを使うため、定型発達のお子さまに比べて脳が疲れやすく、集中が保ちづらくなります。

また、字が汚かったり、簡単な計算ができなかったりすることで自信を失ってしまうことも多く、勉強に対する苦手意識が非常に強い場合もあります。苦手意識が強いと、当然ながらモチベーションが湧かず、集中もしづらくなります。「どうせ自分には無理だから」と最初から諦めているお子さまも多く、勉強しろと言われて渋々机に向かっているだけなので、内容もなかなか頭に入りません。

LDのお子さまが書くこと・読むこと・計算することが苦手なのは、本人の努力不足ではありません。また、その他の知的な発達には問題が無いため、お子さま自身もプライドが傷ついて落ち込んでいるケースも非常に多くなっています。まずはお子さまの努力を認め、苦手については少しずつ改善したり、たとえ苦手なままであってもツールを使うなどして対処できたりすることを伝えましょう。

通級指導教室や療育施設に通うことで苦手が改善できれば、本人の自己肯定感も上がり、前向きに勉強に取り組むことができますし、ツールを使うことでつまずきが無くなれば、定型発達の子と同じように学習を進めることは十分可能です。

学校の成績が伸びづらいため「大学に進学できないのではないか」と不安に思われることがあるかもしれませんが、大学共通テストや公立高校入試ではLDの子のための特別措置などがありますので、心配な場合は早めに調べ、必要な書類等についても今通っている学校と相談して準備を進めていくと良いでしょう。(参考:令和6年度 大学入学共通テスト受験上の配慮Q&A | 独立行政法人 大学入試センター (dnc.ac.jp)

★もっと詳しく知りたい方にオススメの記事→学習障害(LD)とは?読めない、書けない、計算できない子どもの特徴と対処法を紹介 | 発達障害・ギフテッド専門のプロ家庭教師 メガジュン (pro-megajun.com)

<プロ家庭教師メガジュンでの解決例#4:勉強をしていてもいつの間にか別のことに夢中になってしまうDさん>

Dさんは、自分の部屋で毎日コツコツ勉強しているにもかかわらず、勉強時間と反比例するように成績が落ちていっていました。自由時間を削って勉強しているため、これ以上どうアドバイスをして良いのか、保護者さまも途方に暮れていました。

そこで私は、Dさんが毎日どんな方法で勉強に取り組んでいるのかをまずは確認する必要があると考えました。勉強時間は十分であるのに成績が伸び悩む場合には、
 

・解ける問題ばかりを解いている
・分からない問題に時間を掛け過ぎている
・教科書や参考書を眺めているが、頭に入っていない


などの原因が考えられるからです。

Dさんにとある日の勉強内容を聞いてみると、「数学の○○の問題集を2ページ解きました」と答えました。勉強時間は3時間とのことでしたので、3時間で問題集2ページだとかなりペースが遅いように感じました。どの問題を解いたのか詳しく聞いたところ、それほど難易度は高くなく、内容もDさんが比較的得意な二次関数の問題でした。

1問あたりどれくらい時間を掛けているかと聞くと、Dさんは20分程度だと言います。ですが、問題は全部で6問であり、そのペースだと2時間で終えられる計算になってしまいます。このことから私は、Dさんは机に向かってはいるものの、勉強に集中できていない余白の時間が多いのではないかと考えました。

この仮説を確かなものにするために、Dさんには一度いつも通りに自学自習してもらい、「分からないところがあったら聞いてください」と伝えた上で、私はその様子をオンラインで見守ることにしました。すると、Dさんは始めはサクサクと問題を解き進めていたものの、一問解き終わったところで小休止が入りました。さらに、2問目の途中で分からないところがあったのか、教科書を開き始めました。すぐに問題集に戻るのかと思いきや、さらに教科書の別のページを読み進めてしまい、問題に戻るのに時間が掛かってしまっていました。

私の見立てどおり、Dさんは解かなければならない問題に集中できている時間が短く、結果としてその日も90分で3問しか問題を解くことができませんでした。このことを保護者さまに報告すると、「勉強の中身までは確認できていませんでした。もっと集中して勉強に取り組むように言った方が良いのでしょうか?」とのお返事がありました。

ですが、高校になると勉強の内容も高度になるため、保護者さまが全て把握するのは難しくなります。また、1時間当たり○問という基準があるわけでもなく、お子さまの現在の学力や問題の難易度を考慮して、適切な問題量やスピードを見極める必要があります。これらは高い専門性が求められ、保護者さまだけで判断・指導するのは至難の業ですので、私はDさんの保護者さまに「ぜひ私たちを頼ってください。保護者さまは今までどおり、Dさんが毎日しっかり勉強していることを認めて、褒めていただければ大丈夫です」とお伝えしました。

DさんにはややADHD的な性質があり、一つのことが気になって教科書に戻ると、そのまま芋づる式に色々なことが気になって問題集に戻れないことがあるようでした。そこで私はDさんに、タイマーを使って頭を切り替える方法を提案しました。例えば、「この問題を10分で解く」と最初に決めてタイマーをセットします。

問題を解いていて分からないことがあったときは、すぐに教科書を開くのではなく、分からなかったことをメモしておき、10分経ってタイマーが鳴ってから教科書を開きます。さらに、教科書を見る時間も、あらかじめ何分と決めておいてタイマーをセットします。そうすることで、調べすぎや思考の飛躍を防ぐことができ、効率的に勉強を進めることができるようになると考えたからです。

Dさんは勉強以外の場面でも、色々なことが気になってしまって話に集中できなかったり、頭の中がたくさんの考えで一杯になってしまって、段取り良く物事が進められないことがあると仰っていました。これらは典型的なADHDの不注意の特性であり、大人になってからタスクやスケジュールの管理で困難を抱えることも多いケースとなっています。

私はDさんに、タイマーによる勉強時間の管理のほかに、スケジュールやタスク管理についても今から練習しておくことをオススメしました。今はご家族がいらっしゃるため、片付けや食事、睡眠などのリズムが取れていますが、今後一人暮らしで家事をしなければならないとなると、段取りの苦手さは生活全般の困難に直結してしまいます。Dさんはご自宅から離れた大学を第一志望にしていましたので、それも含めてご提案をさせていただきました。

勉強の伸び悩みの原因が分かったことで、保護者さまもDさん自身もまずは一安心していただくことができました。また、上述のように具体的な対策が提案できたこと、さらにその効果がすぐに表れたことで、受験勉強にも前向きに取り組むことができ、Dさんは無事に第一志望に合格することができました。

合格後にDさんからお手紙をいただきました。そこには、成績が伸び悩んで落ち込んでいたけれど、原因と対策が分かったことでもう一度前向きになれたこと、さらに生活のアドバイスをもらえたことで、不慣れながらも一人暮らしができていることが書かれていました。受験は苦しいものではありますが、一方で人が大きく成長するきっかけにもなることを改めて感じ、Dさんが自身の特性に気付き上手に付き合えていることを非常に嬉しく思いました。

40. 発達障害(ADHD、ASD)ではないかと疑っている

ADHDの特性は「落ち着きが無い・衝動性がある・集中しづらい」など、ASD(アスペルガー症候群)の特性は「コミュニケーションが苦手・こだわりが強い」などです。お子さまの普段の様子からこれらの特性が見て取れたり、あるいは学校から指摘を受けたりして、「ひょっとして、うちの子は発達障害なのかも?」と悩まれている保護者さまもいらっしゃると思います。

お子さまが発達障害かもしれないと思ったときは、まずはお近くの発達支援センターに相談しましょう。発達障害についてインターネットで検索しても構いませんが、真偽があやふやな情報も多く、「発達障害は治る」「発達障害は育て方のせい」「発達障害だと人生が上手くいかない」など誤った情報もたくさん目に入ってしまいます。(参考:発達障害者支援センター・一覧 | 国立障害者リハビリテーションセンター (rehab.go.jp)

また、ネット上には簡易診断のようなものもありますが、あくまで受診の目安を測るものであり、それによって発達障害であるかどうかが分かるわけではありません。必ず医療機関を受診し、医師による診断を受けるようにしましょう。

診断の結果、発達障害であることが分かった場合は、特性に応じた対応を医師や心理士と相談しながら検討していきましょう。発達障害の方の支援方法に絶対的な正解はありません。学校とも情報共有し、家庭と学校、医療機関など様々な立場の人が一緒になって支援方法を考え、連携しながらお子さまをサポートしていくことが大切です。

確定診断には至らないグレーゾーンである場合や、発達障害でないという診断であった場合も、お子さまの困りごとが無くなったわけではありません。その他の精神疾患やギフテッドの過度激動などの可能性を考慮し、発達障害の場合と同様に、一人一人にあった支援方法を検討していく必要があります。(関連項目→86. 原因③:ギフテッドの過度激動

いずれにせよ、困りごとがある場合はご家庭だけで抱え込まず、学校や医療機関、発達支援センターなどに積極的に相談するようにしましょう。また、診断名にこだわり過ぎず、目の前のお子さまが今何に困っていて、どんな支援が必要なのかを冷静に見極めていくことも大切です。
★もっと詳しく知りたい方にオススメの記事→発達障害の相談先は?電話OKの窓口や大人向けの専門機関も紹介(http://…)、【WISC(ウィスク)-Ⅳと発達障害診断について】検査で見えるものと、それぞれへの対策 | 発達障害・ギフテッド専門のプロ家庭教師 メガジュン (pro-megajun.com)

41. 自分のルールやルーティンが崩れると機嫌が悪くなる

自分のルールやルーティンが崩れると機嫌が悪くなるのは、ASD(自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群)の特性の一つです。ASDの方は未来のことを想像するのが苦手なため、ルールやルーティンが崩れて不確定な要素が生じるとストレスを感じ、不機嫌になったり癇癪を起こしてしまったりします。

一方で、「ルーティンが崩れると不機嫌になる」というのは幼いお子さまの場合でも見られる行動です。幼いお子さまもASDの方と同様に、未来を予測する能力が十分備わっていないため、ルールやルーティンが崩れると不安を感じてしまいます。「いつもの靴じゃなきゃ嫌だ!」と幼い子どもが駄々をこねるのは、こうした心理的な背景が関係しています。

定型発達のお子さまの場合は、成長するにつれ未来を予測できる力が身に付くため、「いつもと違う靴でも困ったことは起こらない」ということが分かるようになり、駄々をこねることも少なくなってきますが、ASDの方はそうした力が身に付きづらく、年齢が上がってもいつもと同じであることにこだわり続ける傾向にあります。

ASDのお子さまに「もっと融通が利くようになってほしい」「臨機応変に対応してほしい」と感じるのは、保護者さまであれば当然のことです。特に、外出先でこだわりが出たりすると、周りの目などもあり気が気で無くなると思いますし、学校でのトラブルに関しても、学年が上がるほど「もう少し器用に立ち振る舞えば良いのに」と感じる場面が増えてくるかもしれません。

ただ、ASDの方の中にはそうしたこだわりを我慢し、頑張って“普通に”過ごそうとしている方もいます。特に女の子に多いと言われていますが、自分のこだわりや振る舞いが周りから浮いていないか常に気を使っていて、一見すると定型発達の子のように見えるのですが、内面ではいつも強いストレスを感じており、ストレスが限界に達してしまってうつ病や不安障害などを発症してしまう人も少なくありません(二次障害)。

ASDのこだわりに関しては、無理に直そうとするのではなく、「上手く付き合う」という視点が大切です。学校行事などのイレギュラーなイベントが苦手なのであれば、無理に参加せず教室で自習するなどの対応ができるか先生に相談してみたり、どうしてもルーティンが崩れてしまう日があるときは、その日の予定をできるだけ詳しく示してもらい、見通しが持てるようにするなどの対応が考えられます。

ほかにも、例えば学校で宿泊学習の予定がある場合は、事前に家族で下見に行ってその場所に慣れておいたり、文具の並べ方など他の人に迷惑が掛からない程度のこだわりであれば無理に直そうとしないなど、本人のストレスを少しでも減らせるように工夫すると良いでしょう。

不安になる気持ちそのものを無くすことはできませんので、我慢したり、無理に自分を変えたりしようとせず、自分自身を大切にしながら対応を考えていくことが大切です。

★もっと詳しく知りたい方にオススメの記事→アスペルガー(ASD)の子育てはどうする?子どもの特徴と接し方を解説 | 発達障害・ギフテッド専門のプロ家庭教師 メガジュン (pro-megajun.com)

42. ゲームやスマホばかりしている

ゲームやスマホに夢中で、なかなか勉強に気持ちが向かないお子さまはたくさんいらっしゃいます。ただ、勉強してほしいからとゲームやスマホを取り上げても、癇癪を起こしたり、保護者さまの目を盗んで何とかゲームをしようとしたりする場合が多く、事態は好転しないことがほとんどです。

ゲームや動画をやめて勉強してほしい場合の一番の解決策は、「お子さまの気持ちを自然と勉強に向かわせること」です。勉強よりゲームやスマホが楽しいのは当たり前ですので、お子さまに「勉強すれば良いことがある」、もしくは「勉強しないと嫌なことがある」という実感を持たせ、自発的に勉強に向かえるようにすることがポイントです。

また、ゲームやスマホを一切禁止するのではなく、「勉強が終わったらやっても良い」などの条件を付ける方法も効果的です。一切禁止にすると、「そんな約束は守りたくない」とお子さまは最初から反発してしまいますが、「宿題が終わってから」「1時間勉強してから」など現実的なルールにすれば、お子さまも「確かに守るべきルールである」と感じて、納得の上でルールを守れる場合が多くなっています。

勉強はきちんとしているが、ゲームやスマホ以外の趣味が無くて心配という保護者さまも中にはいらっしゃるかもしれません。この場合はそれほど心配する必要は無く、基本的にはお子さまの自由にさせてあげるのが良いでしょう。もし視力の低下や運動不足が心配なのであれば、スポーツやキャンプなど、保護者さまが楽しいと感じることを「一緒にやってみない?」と誘う形にすると良いでしょう。ゲームや動画のほかにもお子さまの興味・関心が広がり、家族で楽しめる趣味が持てると良いですね。

ちなみに、「ゲームなんてつまらないものはやめなさい」といった伝え方をすると、お子さまは自分の好きなものを否定されたように感じて、自己肯定感が下がってしまうことがあります。大人に置き換えて考えてみると分かりやすいのですが、例えば保護者さまに好きな俳優がいたとして、「あの俳優は演技が下手だ」「つまらないドラマばかり出ている。見るのはやめろ」と周りに言われたとします。すると、どのように感じるでしょうか?腹立たしい気持ちになるのはもちろんのこと、その俳優のことが好きであればあるほど、自分の根幹を否定されたような悲しい気持ちにもなるのではないでしょうかと思います。

お子さまの場合も同じで、自分が好きなものや夢中になっているものを否定されると、自分そのものを否定されたように感じて、自己肯定感が下がってしまうことがあります。このことからも、ゲームやスマホばかりしてほしくない場合は、ゲームやスマホを否定するのではなく、違うことにも興味を持てるように誘導してあげる方が上手くいく場合が多くなっています。

以下では、勉強をせずにゲームやスマホばかりしてしまうお子さまへの対応として、

①勉強するメリットを実感させる
②ルールを作る


の2つに分けて解説していきます。どちらもお子さまが前向きに勉強に取り組めるようになるための重要なポイントとなっていますので、ぜひご一読いただければと思います。

解決策①:勉強するメリットを実感させる

お子さまが勉強することで感じられるメリットとしては、
 

①志望校に合格できる
②テストの点が上がる
③尊敬できる人(先生、親)に褒めてもらえる


などが挙げられます。

「①志望校に合格できる」については、勉強を長期的に続けた結果としてもたらされるものであり、目の前のゲームやスマホの誘惑に負けてしまいがちなお子さまにとっては実感しづらいものになります。「ゲームばかりしていたら志望校に合格できないよ」と声掛けしてもお子さまがなかなか勉強に向かえないのは、“志望校に合格する/しない”ということに実感が持ちづらいためであり、同じような声掛けを続けてもあまり効果は期待できません。

もしお子さまに、「志望校に行きたい」というモチベーションを上げてほしい場合は、声掛けに加えて、学校説明会やオープンキャンパスに足を運んだり、文化祭や学園祭を見学してみたりして、その学校の魅力を肌で感じる機会を作ってあげると良いでしょう。言葉で説明するよりも、実際に足を運び、肌で雰囲気を感じた方がお子さまのやる気はアップしやすいため、ぜひ試していただければと思います。

「②テストの点が上がる」「③尊敬できる人(先生、親)に褒めてもらえる」については、「①志望校に合格できる」に比べると短期間で実感できるメリットであるため、お子さまの気持ちを勉強に向かわせるための効果も高くなります。

まず、「②テストの点が上がる」についてですが、どんなお子さまでも、テストの点が上がれば嬉しいと感じるものです。「テストの点が上がると嬉しい。じゃあテストの点を上げるために頑張って勉強しよう」となれば良いのですが、多くのお子さまはそうはならず、「勉強よりゲームの方が楽しいから、ゲームをしよう」とゲームの方に手を伸ばしてしまいます。

その原因は、お子さまが「勉強すれば点数が上がる」という実感を持てていないことにあります。勉強しても、それでテストの点数が上がったという経験が少ないために、“勉強してもどうせ点数は上がらない”という苦手意識を持ってしまっており、

「勉強しても点が上がるわけではない」
  ↓
「勉強をしてもしなくても一緒だ」
  ↓
「じゃあゲームをしよう」


という考えに至って、自発的に勉強に取り組めない状態になってしまっています。

この場合においては、「勉強したら点数が上がる」という実感をお子さまに持ってもらうことが非常に重要です。「勉強したら点数が上がる」という実感さえあれば、「もっと点数を上げるために勉強しよう」というモチベーションが湧いてくるようになります。

そして、勉強することでテストの点数が上がっていくと、「やればやるほど点数が上がって楽しい」「自分は勉強ができるんだ」と感じるようになり、勉強に対する苦手意識も払拭され、自発的に勉強に向かえるようになっていきます。

お子さまに「勉強したらテストの点数が上がる」という実感を持ってもらうための第一歩としては、「少しでも勉強したら満点が取れるような小テストにチャレンジさせる」という方法が効果的です。というのも、定期テストや模試のように範囲が広いテストだと、勉強の成果が点数として現れづらく、勉強の成果があったのか無かったのかが分かりづらいケースが多くなってしまうためです。

限られた範囲の小テストで、かつ勉強さえすれば必ず「満点」という分かりやすい結果が現れる程度の難易度のものであれば、お子さまも勉強の成果が実感しやすく、「勉強すれば点数は上がるのだ」「勉強には意味があるのだ」と認識を改めるきっかけとすることができます。

もちろん、これはあくまでお子さまのやる気を導くための入口(きっかけ)であり、ここから徐々にテストの範囲を広げたり、問題の難易度を上げたりして、本格的に学力を伸ばしていく必要がありますが、この「勉強すれば点数が上がる」という実感は、自発的に勉強ができるようになるための最も重要な土台の一つとなりますので、ぜひ意識していただければと思います。

また、ちょうど良い範囲や難易度の小テストをご家庭で用意することが難しい場合は、塾や家庭教師の先生に「勉強が点数につながるということを本人に実感させるために、範囲が広すぎず難易度も高くない、ちょうど良いテストを作ってほしい」と依頼すると良いでしょう。

ちなみに、テストの点数を上げることは、ある意味ではゲームにも似ています。攻略法を調べて良いスコアを出すというのは勉強もゲームも同じであり、自主的に勉強に取り組めるお子さまの中には勉強をゲーム感覚で捉えている方もいます。ですので、ゲーム好きのお子さまの場合はテストの点をゲームのスコアに例えてみたりして、上手く意欲を掻き立ててあげるのも一つの方法になります。

勉強は頑張れないけれど、ゲームはいくらでも頑張れるというお子さまの心理的背景として、「ゲームは練習すれば上手くなるけど、勉強をしてもテストの点は上がらない。だからゲームは楽しくて、勉強は楽しくない」というものがあります。勉強もゲームと同様に、成果が上がれば楽しい・嬉しいという点は共通していますので、「やれば点数(スコア)が上がる」という実感がいかに大切であることについては、こうした点からもお分かりいただけると思います。

「③尊敬できる人(先生、親)に褒めてもらえる」については、大前提として、先生や親がお子さまの尊敬の対象である必要があります。お子さまが「この先生は大したことないや」と感じていると、いくら勉強して「頑張ったね!すごいね!」と褒められたとしても心に響きません。ですが、お子さまが相手のことを心から信頼し尊敬していれば、「頑張ったね」という言葉はお子さまのモチベーションを何倍にも高めることができます。

「褒め言葉」が高い効果を持つためには、それを発する指導者が、“人格者である”“自分よりも知識が豊富である”など、お子さまが心から相手のことを尊敬し、「この人には敵わない」「この人に認められたい」「この人との約束は必ず守ろう」と思えることが重要です。また、こうした信頼や尊敬の関係は言うことを聞かせるために恐怖で支配することとも異なります。怒られるから言うことを聞くのではなく、あくまでお子さまが自発的に「この人の言うことを聞こう」と思えることが大切です。

優れた教育者は、この信頼や尊敬の関係を築くことに非常に長けています。お子さまの気持ちにしっかりと耳を傾けつつも、大人として言うべきことは言うという態度を積み重ねることが必要であり、一朝一夕に関係が構築できるわけではありません。ですが、この関係構築を意識しているかどうかで指導の質は大きく変わりますので、塾や家庭教師を選ぶ際には、ぜひこの点にも注目していただければと思います。

また、お子さまと指導者の相性も重要です。あるお子さまにとっては良い先生でも、別の子にとってはそうではないケースもあるため、先生の話し方や第一印象を含め、「うちの子と相性は合うだろうか」という視点で先生を選んでいくことも大切です。お子さまがその先生に心を開けそうか、気兼ねなく話している場面が想像できるかなど、具体的に授業の様子をイメージしながら検討していくと良いでしょう。

加えて、勉強ができるようになると、周りのクラスメイトからも「すごい!」「○○さんは頭が良いんだね」と称賛を受けることができます。相手を尊敬しているかどうかに関わらず、周りから褒めてもらえること自体がモチベーションにつながるお子さまもいますので、お子さまの性質に応じて「テストで点が取れる人ってカッコいいよね」などと声を掛けてやる気を出させてあげるのも良いでしょう。

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解決策②:ルールを決める

既にゲームや動画をどっぷり楽しんでしまっているお子さまにはあまり効果は期待できませんが、これからゲーム・スマホを手にするというお子さまの場合は、最初にしっかりとルールを決め、「ルールを守るのは当たり前」という環境を作ることが大切です。

保護者さまが一方的にルールを押し付けるのではなく、お子さまの意見も踏まえながら一緒にルールを作ると良いでしょう。最近はオンラインでお友だちと一緒に楽しむゲームも多いため、「9~10時はクラスのみんながログインするから、禁止されるのは辛い」「10時までゲームをしていると寝るのが遅くなるから、水曜日と金曜日だけにしよう」など、お互いの希望を伝えながら落としどころを見つけていくというプロセスが大切です。また、親子で一緒にルールを作ることで、お子さまにとっても“自分で決めたルール”となるため、守ろうという意思が働きやすくなります。

同時に、作ったルールについてはご家族全員で守ることも非常に大切です。お子さまには厳しく時間制限をしているのに、大人はゲームし放題であっては不公平感が強く、ルールを守ろうという気持ちも削がれてしまいます。

また、スマホに関するルールも同様に、お子さまにルールを課すのであれば、大人も同じようにルールを守って使用するようにしましょう。「食卓にはスマホを持ち込まない」「寝るときはリビングにおいておく」など、ちょっとしたデジタルデトックスとして家族みんなで取り組むと良いでしょう。

<プロ家庭教師メガジュンでの解決例#7:動画に夢中で深夜2時まで夜更かししてしまうGくん>

Gくんは小学4年生で、YouTubeが大好きです。布団の中にiPadを持ち込み、連日深夜2時ごろまで動画を見ているとのことでした。保護者さまも注意はするものの、Gくんは全く意に介せず夜更かしを続けています。そのためか、昼間は眠たくて勉強に集中できず、私たちの授業の最中にも寝落ちしてしまうような状態ででも眠そうなときがありました。

Gくんは中学受験を予定していますが、日々の勉強でも寝不足のためかなかなか内容が頭に入らず、このままでは志望校への合格は難しいと思われる状況でした。また、勉強だけではなく、極端な睡眠不足は身体の成長にも多大な悪影響を及ぼします。「私たちから注意をしても聞かないので、先生からもお話ししてほしい」という保護者さまからのご要望もありましたので、講師からも動画の見過ぎと夜更かしについてしっかりと指導していくことにしました。

講師の注意を聞き入れてもらうためには、お子さまとの信頼関係の構築が何よりも大切です。Gくんは元々人懐っこく、お調子者の面はあるものの、講師とも気軽にお話しできるタイプのお子さまでした。ただ、友達感覚になってしまうとこちらの指摘や注意を聞き流すようになってしまうため、授業中に寝落ちをしてしまった、しそうなときは真剣に注意するようにしました。また、Gくんは歴史が好きなので、Gくん以上に歴史の知識をたくさん蓄えておき、「先生は歴史に詳しくてすごい!」と感じてもらい、Gくんにとって講師が“尊敬に値する先生”であるように努めました。

さらに小学生の場合は、エネルギーが有り余ってしまって夜寝られないというパターンもありますので、夜ぐっすり寝られるよう、授業の前後に外で講師とキャッチボールや鬼ごっこをするなどして体力を使ってもらうようにしました。

勉強せず遊んでいるように見えるかもしれませんが、しっかりと睡眠を取ることで翌日の頭の回転が良くなり、結果として学力の向上につながることもあります。実際にGくんの場合も、昼間に運動するようになったことで体力が付いたこともあり、集中が続くようになって成績もぐんと伸びました。食事・運動・睡眠は生きていく上での基本であり、勉強においても非常に重要です。受験期においてはついつい運動が疎かになってしまいますが、年齢相応の運動量をこなすことは成長期の子どもたちにとってとても大切ですので、意識して取り組むようにしましょう。

Gくんの場合は、「夜更かしすると勉強の効率が悪くなるよ。せっかく勉強したのに、明日寝不足で頭がぼーっとしてテストで点が取れなかったら悔しいよね」「身体が成長する時期なのに、寝不足だと成長ホルモンが出なくて大きくなれないよ。そもそも、体調を崩してしまいそうで心配だよ」ということをこまめに伝え続け、さらに上述の日中の運動の効果もあってか、ある時期を境に夜更かしをしないようになりました。

保護者さまによると、Gくんは「先生が言うとおり夜寝るようにしたら点数が上がったし、寝不足で点数が下がるのは確かにもったいないと思ったから」と話していたそうです。夜にしっかり寝ると良いことがあるという成功体験と、この先生の言うことは信じられるという信頼関係の構築が功を奏したケースであると言えます。

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43. 人間関係のトラブルが多い

ADHDやASDなどの発達障害があるお子さまは、人間関係に関するトラブルやクラスメイトと頻繁に喧嘩してしまうなどの困りごとを抱える場合があります。

ADHDで衝動性が強い子の場合は、順番が待てなかったり、遊びのルールを守れなかったり、言うべきでないことをつい口に出してしまったりしてトラブルになってしまうことがあります。お子さま自身も、「順番は守らなくてはいけない」ということは分かっているのですが、ADHDの特性からつい順番抜かしをしてしまうという状態にあります。

そのような場合は、いきなりキツく𠮟りつけるのではなく、まずは「○○さんが先だね」というように事実を伝えて並びなおすように指示しましょう。あるいは、注意を別のところに向けておき、「早くやりたい!」という気持ちを抑えるという方法もあります。

ただ、学校ではほかの子どもたちもいますし、子ども同士で「○○さんが順番抜かしした!」と指摘される場合もあるでしょう。その際に、注意されたことをきちんと受け止め、「ごめんなさい」と言えるようにしておくことがとても大切です。他人から注意されたときの対応は、ご家庭でいつもどのように注意し、対応しているかが現れます。家でいつも頭ごなしに怒られていたり、逆に不適切な行動を取っても注意されていなかったりすると、学校で注意されたときにも、売り言葉に買い言葉で返して喧嘩になってしまったり、「なんで自分が注意されなければいけないんだ!」といわゆる逆ギレの状態になってしまったりします。

お子さまの社会性を育んでいくためには、学校だけでなくご家庭の役割も非常に重要です。できれば小学校に上がる前から、ご家庭において意識して「注意される→受け入れる」というプロセスをたくさん練習しておくようにしましょう。

ASDのお子さまのトラブル例としては、相手の気持ちが分からず「太っているね」と口に出してしまったり、「お金をくれたら友達になってあげる」という言葉を鵜呑みにしてトラブルに巻き込まれてしまったりといったケースが挙げられます。

まず、相手の気持ちを考えずに発言してしまうことについては、望ましくない発言の例を一つずつ覚えていく方法が効果的です。ASDの方は相手の気持ちを想像することが苦手ですので、「当たり前」「何となくわかるでしょ」という説明では理解が難しい場合がほとんどです。「こんな時はどうすれば良いか?」と具体的な例を挙げ、イラストなども使いながら丁寧に説明していきましょう。例えば、

○人と話すときは50cm以上離れる(=パーソナルスペースを守る)
○授業中に先生が質問をしたときには、答えをすぐに口に出すのではなく、「分かる人は手を挙げてください」という先生の指示に従って手を挙げ、先生が「○○さん」と指名してから答える 
○挨拶を無視されたと感じたときは、聞こえていなかったのかもしれないので、少し大きな声でもう一度挨拶する。それでも挨拶が返ってこないときは、「集中している」「心配事がある」など相手に事情があるかもしれないので、過度に返事を求めない


などの例が挙げられます。言葉だけの説明だとASDのお子さまには伝わりづらいことも多いため、場面が描かれたイラストや漫画などを使いながらレクチャーしていくことになります。

通級指導教室や療育センター、放課後デイサービスなどでは、ASDなどの発達障害のお子さま向けに、こうしたソーシャル・スキル・トレーニング(SST)と呼ばれる療育を受けることができます。ご家庭だけでソーシャル・スキル・トレーニングを行うのは難しい場合も多いと思いますので、これらの制度や施設を積極的に活用していただければと思います。

金銭的なトラブルについては、「他人にお金は貸さない/渡さない」というルールを作り、もし困ったことがあれば必ず大人に相談するように伝えましょう。またその際、保護者さまはいつもお子さまの味方であり、どんなことでも相談してほしいこと、何があってもお子さまを守ることを併せて伝えましょう。

さらにASDのお子さまの場合は、性的な被害にあったり、逆に加害者になったりする場合もあります。上手く言いくるめられて性的な行為をさせられたり、相手が自分に好意を持っていると思い込んで一方的にアプローチしてしまったりするなどのケースです。こうしたケースを未然に防ぐためには、「自分の身体は自分のものであり、むやみに人に見せたり触らせたりするものではないこと」「相手にとってもそれは同じであり、合意が無いのに他人の身体に触れてはいけないこと」などをご家庭でもお子さまが小さいうちから話せるようにしておきましょう。ご家庭でこうしたお話をするのが難しいと感じる場合は、『プライベートゾーン』『性的合意』といったキーワードで検索すれば様々な書籍や動画を見つけることができますので、お子さまの発達段階や特性に合ったコンテンツを活用すると良いでしょう。

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44. 同年代の子どもに比べて幼いように思う

発達障害とは、定型発達に比べて発達の凸凹が大きく、得意と不得意の差が大きい状態を指します。したがって、発達に関する様々な能力のうち、例えば言語の能力が不得意だと、同年代の子どもたちに比べて語彙が少なく子どもっぽく感じたり、手先の運動の能力が不得意だと、字が汚かったり絵が稚拙に見えたりして幼く感じることがあるかもしれません。

一方で、小学生くらいまでは発達のスピードも個人差が大きく、周りに比べて幼い部分があるからといって必ずしも発達障害であるとは限りません。乳幼児健診で指摘を受けても、その後何の問題も無く成長していく子もいれば、検診では何も引っかからなかったのに、中学生や高校生、大人になってから発達障害であることが分かったという人もたくさんいます。

お子さまが発達障害なのかもしれないと悩んだときには、周りと比べず、現状でどんな困りごとがあるのかを冷静に分析しましょう。発達障害の定義は、発達に凸凹があり、かつ、それによって困りごとが生じている状態です。特に困りごとが無い場合は悩む必要もありませんので、そのまま伸び伸びと過ごさせてあげれば大丈夫です。

どうしても心配なことがある場合は、地域の発達支援センターに相談すると良いでしょう。発達支援センターとは、発達に関わる問題を包括的に所管している機関であり、児童精神科や療育施設などにつないでもらうことができます。(参考:発達障害者支援センター・一覧 | 国立障害者リハビリテーションセンター (rehab.go.jp)

インターネットには様々な情報があふれていますが、その真偽を確かめることは困難です。困ったときはネットだけを頼らず、必ず専門機関に相談するようにしましょう。もしいきなり専門機関に相談するのはハードルが高いと感じられる方は、まずはこのQA集をご覧いただき、ご自身のお悩みについて整理する際の参考としていただければと思います。また、私たちプロ家庭教師メガジュンのお問い合わせフォームやLINE相談は、専門機関に電話するよりもお気軽にご利用いただけるかと思いますので、ぜひお役立ていただけますと幸いです。

★もっと詳しく知りたい方にオススメの記事→発達障害の相談先は?電話OKの窓口や大人向けの専門機関も紹介
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45. 薬を服用すべきかどうか迷っている

発達障害のあるお子さまを持つ保護者さまからいただくご相談で、「医師から服薬を勧められたが、どうすればよいか迷っている」というものがあります。基本的にプロ家庭教師の立場からは、お医者さまが服薬を勧めている以上、お医者さまのお話をよく聞いて、ご本人や保護者さまが納得できれば服薬を、どうしても気が進まないなら無理に服薬する必要は無いということをお伝えするようにしています。また、判断に迷う場合はセカンドオピニオンも検討するよう併せてお伝えしています。

その上でプロ家庭教師としては、イメージに惑わされずに判断しましょう、ということをお伝えしたいと思います。

「精神科で処方される薬には依存性があるのではないか」「精神科に入院したことのある人が、薬を飲んだらぼーっとしてしまって何も考えられなくなったと言っていた」など、薬に関しては様々なイメージや噂があり、何が本当の情報か分からないことも多いと思います。

ですが、例えば依存性に関しては、中枢神経に作用するかどうかが大きなポイントになります。中枢神経は、脳の中でも快楽をつかさどる場所であり、この部分の働きが悪くなると脳の思考にブレーキが掛かりづらくなります。生まれつきこのブレーキ機能が弱いのがADHDであると言われており、ADHDの処方薬の一つであるコンサータは中枢神経に作用して脳のブレーキを効きやすくすることで思考を整理し、頭をスッキリさせてくれます。

コンサータの成分自体は麻薬と似たようなものであるため、確かに依存性の懸念があります。一方で、コンサータは少しずつ成分が溶け出す“徐放剤”と呼ばれる設計になっているため、依存性は極めて低く、ほぼ心配の無いレベルであると言われています。

これに対し、かつてADHDの治療薬として処方されていたリタリンは、コンサータと主成分は同じですが、徐放剤ではありませんでした。リタリンは服用直後から中枢神経に作用し、依存性も高いことが問題視されたことから、現在ではADHDの治療薬としては処方されなくなっています。

精神科の薬には依存性があるという言説は、多くはこのリタリンの依存性を指している場合が多く、コンサータやストラテラ、インチュニブの成分によって依存が引き起こされる可能性は非常に低くなっています。ただし、薬を飲むとADHDの特性が治まるため、「薬が無いと不安」「薬が手放せない」という状態になることはあります。広義にはこれらの状態も依存と捉えることができますが、禁断症状が出るようなものではなく、徐々に薬の量を減らすことで十分対応できます。

また、「ぼーっとして何も考えられなくなる」という点については、コンサータは前述のように頭をはっきりさせる効果があるため当てはまりません。ストラテラは脳内ホルモンの分泌を調整し、気分を落ち着かせる働きがありますが、私が受け持ったお子さまの中で「ストラテラのせいで頭がぼーっとするようになった」という例は聞いたことがありません。

頭がぼーっとして何も考えられなくなるような薬は、極端に興奮状態にある患者さんを落ち着かせるために投与されるものであり、ADHDの特性を抑えるために処方されるようなコンサータ・ストラテラ・インチュニブのような比較的効き目が穏やかな薬では、そのような症状はまず現れないと考えて良いでしょう。

また、ADHDの処方薬については、少ない量から少しずつ増やしていくのが基本です。薬が合わないなと感じたり、気分が落ち着きすぎて何事にもやる気が起きない(ストラテラの副作用)、食欲の減退(コンサータの副作用)などが見られる場合は、すぐに医師や薬剤師に相談し、薬の種類や量を調整するようにしましょう。

「絶対に副作用が起きない」という保証はどこにもありませんが、一方で怖がり過ぎる必要もありません。薬を使って発達障害の特性を抑え、快適に日常生活を送っている人もたくさんいますので、正しい情報を参照し、適切に判断するようにしましょう。

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46. WISC-IVの見方を知りたい

発達障害の診断を行う際には、ほとんどの場合「WISC-IV」と呼ばれる知能検査を受けることになります。検査結果は4つの指標とそれらを総合した全検査IQ(FSIQ)で表されますが、その見方を知りたいという声もたくさんお伺いしますので、以下で順に解説していきます。

WISC-IVの概要

WISC-IVにおける4つの指標得点と全検査IQは「合成得点」と呼ばれる数値で表されており、これは平均を100、標準偏差を15とした偏差値となっています。120以上であれば高い、90~110であれば平均前後、80以下であれば低いといった大まかな感覚を知っておくと良いでしょう。

①言語理解指標(VCI)

言語理解指標とは、「言葉を認識し、言葉で思考・表現する力」を指します。簡単に言えば国語力ということになりますが、国語のテストの点ではなく、その前提となる言語を操るための能力であると捉えると良いでしょう。

この力が弱いと、言葉の意味を理解したり語彙を増やしたりするのが苦手になるほか、耳で聞いた情報が処理しづらく、人の話を理解するのに時間がかかったり、先生の指示が聞けなかったりといった困りごとが生じる場合があります。

逆に言語理解の能力が高い人は、言葉のニュアンスを読み取る力や語彙力が高く、抽象的な概念でもすぐに理解することができます。言語理解の能力が高いお子さまは、読書や語学を好む傾向にあるほか、言葉によって表現することも得意であるため、「作文が好き」というお子さまも多くなっています。

②知覚推理指標(PRI)

知覚推理とは、「視覚的な情報を認識・処理し、身体的な動作につなげる力」のことを指します。

すなわち、図形や空間を認識し、頭の中で再構成したり、実際に手を動かして操作したりする力であり、数学の図形問題や立体物の設計・組み立て、お子さまの場合は積み木遊びやブロック遊び、ジャングルジムなどの遊具で遊ぶときに使われる能力になります。

この能力が低いと、立体を頭の中で回転させて構造を考えたり、目的に沿って手先や体を動かしたりすることが苦手になります。また、言葉以外の情報を処理する力であるため、計算や推理が苦手になる場合があります。

逆に知覚推理の能力が優れている人は、平面や空間の把握が得意なため、作図や設計などで才能を発揮することがあります。また、物理や数学といった理数系の概念を理解するのも得意です。

お子さまの場合は、幼少期から積み木やレゴブロックなど立体物を組み立てるタイプの遊びを好んだり、文字よりも数字や図形に興味を示しやすかったりといった特徴が見られます。特に知能指数が高いお子さまの場合は、小学生の頃から物理の公式や数学の定理、化学式などに興味を示し、研究者を志すようなケースも多くなっています。

③ワーキングメモリー指標(WMI)

ワーキングメモリーとは、「情報を一時的に保持しながら処理する力」を指します。

例えば、不規則な文字列(=「qじるk6hく」など)を示され、「平仮名だけを抜き出して50音順に並べてください」という問題の指示があったとします。このとき私たちの頭の中では、

①文字列(qじるk6hく)を認識しながら、平仮名だけ(じ、る、く)を抜き出す
②「じ、る、く」の3文字を思い浮かべながら、五十音表を想像する
③頭の中で五十音表と比較しながら、3文字を並べ替える


といったプロセスが実行されます。

①~③のいずれも「~ながら、」という表現になっていることからわかるように、それぞれのプロセスは“直前に認識した情報を保持しつつ、次の処理を行う”という構造になっています。この「~しながら(直前に認識した情報を保持しつつ、次の処理を行う)」という脳の働きがワーキングメモリーであり、勉強だけでなく日常生活のあらゆる場面で必要な能力となっています。

ワーキングメモリーが低いと、複数のタスクが重なった際に上手く整理ができないため、

・次に何をすれば良いのかわからない
・段取り良く物事を進められない
・一度に複数のことを進められない(マルチタスクが苦手)
・集中しづらい


といった困りごとが生じやすくなります。これらの困りごとは発達障害の一つであるADHD(注意欠如・多動症)の特性と重なる部分が大きく、ワーキングメモリーが低い場合はADHDである可能性を検討することになります。

逆にワーキングメモリーが高い場合は、いわゆる“頭の回転が速い”状態になりますので、段取り良く物事をこなすのが得意で、会話のテンポが速かったり、理解力が高かったりといった要領の良さが現れます。

④処理速度指標(PRI)

処理速度とは、「単純な視覚情報をいかに速く取り込み、処理できるか」という力になります。

「②知覚推理指標」が視覚的な情報を取り入れ、思考した後にアウトプットする力を指すのに対し、処理速度は思考やアウトプットを考慮せず、情報そのものを正確にインプットする能力を指します。

処理速度の力が弱いと、視覚情報を取り入れる段階で時間が掛かったり、あるいは正確に情報を取り入れたりすることが難しくなります。そのため、単純な作業でも人より時間が掛かってしまったり、ミスが増えたりといった困難が生じることになります。ワーキングメモリーと同様、処理速度は勉強だけでなく生活全般において必要な能力であり、処理速度が低いと日常生活で様々な困りごとを抱える場合があります。

逆に処理速度の能力が高いと、瞬時に情報を認識して次の作業に移れるというメリットが得られます。例えば、ほかの人よりも個々の作業を早く進めることができるため、次のステップにより早く進んで思考を深めることに時間を使ったり、あるいは時間が節約できるため様々な分野に興味関心を広げられたりするなど、深く広い思考が可能になります。

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47.そそっかしいことや注意力が無いことを周りにからかわれる(ADHDの場合)

ADHDの特性は「不注意」「衝動性・多動性」の2つであり、それらの特性から学校生活では以下のような困りごとを抱える場合があります。

・忘れ物が多い
・机の中がいつもぐちゃぐちゃ
・授業中にぼーっとしていて、先生の質問に答えられない
・授業中に衝動的に発言する
・静かにしなければいけない場面でも、おしゃべりがやめられない
・先生の指示を聞いておらず、見当外れな行動を取る


これらの行動を、クラスメイトから(時には先生からも)揶揄われてしまうことがあります。必ずしも本人を蔑む意図はなく、周りの人は軽い気持ちで「おっちょこちょいだね」「うっかりしすぎでしょ」と発言していることも多いのですが、お子さまの心は深く傷ついてしまっている場合があります。

また、本人は「気を付けたい、直したい」と思っているにも関わらず、発達障害の特性ゆえに生じている行動であるため、本人が意識するだけではなかなか改善できない場合が多くなっています。

そのため、「いくら気を付けても改善できない。自分はダメなんだ」と自信を無くし、学校に行けば揶揄われてばかりなので行きたくない、と不登校になってしまうお子さまもいらっしゃいます。

このようなケースにおいては、まずは学校に相談し、本人の苦手なことや困りごとは発達障害の特性ゆえのものであり、揶揄うような発言は避けてほしいことをはっきりと伝えましょう。

ADHDのそそっかしさや注意力の無さについては、一昔前は「落ち着きのない子」で済まされていた部分もあります。残念ながら先生の中にも、ADHDのお子さまに関して「イジっても良い存在」「悪い見本として○○さんを挙げておけば、クラスがまとまる」程度の認識でしかない人もいます。生まれつきの特性をあげつらわれるのはとても辛く苦しいことですので、毅然とした態度で「やめてほしい」と伝えるようにしましょう。

また、学校におけるADHD由来の困りごとについては、様々な工夫を行うことで軽減していくことが可能です。具体的には、

・黒板横の掲示物を無くすか、カーテンなどで隠す(黒板の内容に集中しやすいようにするため)
・指示は一つずつ出す(一度にいろいろ言われると混乱してしまうため)
・机の中の整理のやり方は、先生が具体的に示す。週に1回みんなで机を整理する時間を作る。(机の左は道具箱、右は教科書・ノート。道具箱の中のレイアウトの例まで示す。みんなで取り組むことで劣等感を和らげる)
・授業変更や行事の際の手順などは、イラストで視覚的にも示す(耳からの情報だけでは集中しづらいため)


などが挙げられます。お子さまの特性に合わせた配慮はいろいろと考えられますので、学校と相談しながら検討していただければと思います。特に、最近では養護教諭(保健室の先生)やスクールカウンセラー、特別支援コーディネーターなど発達障害の知識や理解が豊富な人材が学校にも配置されていますので、担任の先生だけでなくそうした先生も交えながら支援方法について検討していくと良いでしょう。

48.クラスメイトを注意してから関係が悪くなり、学校に行きづらくなった(ASDの場合)

クラスメイトの悪ノリを注意したら、「ノリの分からない奴だ」と思われてしまい、それ以降クラスに馴染めず学校にも行きづらくなってしまった…というケースがあります。特にASDのお子さまによく見られるケースで、ASDの『ルールにこだわりすぎる』という特性が要因となっています。

ルールを守ることは決して悪いことではありませんが、一方で子どもたちにとっては「一緒にルールを破る」ことがコミュニティの一員である証のようになっていたりもします。また、「制服のボタンは一番上まで締める」というルールを真夏でも守るなどして、周りから特異な目で見られてしまうなどの場合もあります。空気を読むことや同調圧力が蔓延する学校の教室は、ASDのお子さまにとっては非常に過ごしづらく、時にはからかいの対象になってしまうこともあります。

こうした状況において、ASDのお子さまに対して周りに合わせるよう強いるのは望ましくありません。無理に周りに合わせるとストレスが溜まり、不登校やうつ病、不安障害といった二次障害を引き起こすこともあります。ASDのお子さまの場合は、本人のルールを守りたいという気持ちは尊重しつつ、周りに対して同じようにルールを守ることを求めないようにするという落としどころを見つけることが大切です。

例えば、自習時間にクラスメイトが騒いでいるというケースでは、「自習の時間は静かに勉強する」というルールはお子さま自身が守れていればOKで、他のクラスメイトに対してそれを守らせる必要は無いということを説明しましょう。この場合、他のクラスメイトを注意するのは先生の役割であり、お子さま自身が注意する必要はありません。

ASDのお子さまはケースバイケースで柔軟に対応することが苦手ですので、できるだけたくさん具体例を出し、それぞれの場面で適切な行動の例を示して覚えていくというトレーニングを積み重ねると良いでしょう。通級指導教室や療育センターではこうしたソーシャル・スキル・トレーニング(SST)を受けることができますので、積極的に参加してみると良いでしょう。

★もっと詳しく知りたい方にオススメの記事→アスペルガー(ASD)の高校生の特徴とは?チェックリストや勉強法を紹介! | 発達障害・ギフテッド専門のプロ家庭教師 メガジュン (pro-megajun.com)

49. 発達障害の診断を受けたが、知能は高いと言われた(2E型ギフテッド)

発達障害かもしれないと指摘を受け、WISC-IVなどの知能検査を受けた人の中には、思いのほか知能指数が高くて驚いたという方もいらっしゃいます。学校の成績は振るわないのに知能指数が高くて不思議…と思うかもしれませんが、知能検査の結果を詳しく見ることでその理由を知ることができます。

WISC-IVには「言語理解」「知覚推理」「ワーキングメモリー」「処理速度」の4つの指標がありますが、発達障害かもしれないと指摘されるお子さまの多くは、「ワーキングメモリー」や「処理速度」の数値が低くなっています。一方で、発達障害の特性はあるけれど全体の知能指数が高いお子さまの場合は、「言語理解」「知覚推理」のいずれか又は両方の数値が突出して高い場合が多くなっています(いわゆる凸凸凹凹型や凸凸口口型の検査結果)。

4つの指標のうち、「ワーキングメモリー」と「処理速度」は日常生活でも使われる能力である一方、「言語理解」と「知覚推理」は文章を理解する・計算するなど、特に勉強の場面において必要な能力となります。言語理解や知覚推理に長けていても、ワーキングメモリーや処理速度が低いと日常生活での困りごとが現れやすくなるため、結果として“全体として知能指数は高いが、日常生活で困りごとが多い(=2E型ギフテッド(※))”という状態になります。

※2E型ギフテッド…発達障害とギフテッドの両方の特性を持った人のこと。広義には、発達障害以外のハンデキャップも含む。2Eは「twice-exceptional(二重に例外)」の意味。

さらに、ワーキングメモリーや処理速度が低いと、「授業中に先生の話を聞く」「指示通りに課題をこなす」などが苦手になるため、長編小説はスイスイ読めるのに宿題の漢字ドリルを忘れたり、難易度の高い問題にじっくり取り組むのは得意でも、同じような計算問題を大量に解くのは苦手なためテストの点にはつながらなかったりします。そのため、言語理解や知覚推理が高かったとしても、その能力が学校の成績につながらないケースも非常に多くなっています。

こうしたお子さまの場合は、苦手に注目するのではなく得意なことに目を向け、長所を伸ばしていくことが必要です。ご家庭で小説の感想を話し合ったり、難易度の高いパズルを家族みんなで解いたりするほか、同じような趣味や特性を持った人たちが集まる習い事やサークル活動などに参加してみるのも良いでしょう。

なお、WISC-IVの各指標間の差(ディスクレパンシー)が大きいと発達障害であると言われることもありますが、全体の知能指数が高いとディスクレパンシーも大きくなりやすいため、一概にディスクレパンシーが大きい=発達障害と定義することはできません。

★もっと詳しく知りたい方にオススメの記事→ギフテッドの診断はどこで受けられる?IQテストやWISC-IV知能検査、偏差値との関係を解説 | 発達障害・ギフテッド専門のプロ家庭教師 メガジュン (pro-megajun.com)

50. ケアレスミスが多い

要因①:思い込みで問題を解いている

ケアレスミスの最も大きな要因は「思い込み」です。問題の細部を読み込まずに解いてしまっているために、「当てはまらないものを選べ」という問題で当てはまるものを選んでしまったり、文字や数字を見間違えたり、あるいは問題文の意味を大幅に捉え損ねたりして解答を誤ってしまいます。

思い込みで問題を解いてしまうお子さまには2つのパターンがあり、1つは性格的にせっかちでパッと見た印象で「こういう問題に違いない」と早とちりしてしまうケースと、もう一つは読解力が低いために「多分こういうことだろう」と曖昧なまま解き進めてしまうケースです。

前者のケースにおいては、何よりもまず落ち着いて問題を解くことが大切です。限られた試験時間の中で焦ってしまうこともありますが、早とちりによるミスが多い人は制限時間の有無にかかわらず「早く答えなきゃ!」と焦っているケースがほとんどです。

まずは落ち着いて問題文を見るようにし、問題文を指でなぞりながら読んだり、声に出しながら読んだりするなどすれば、「解答欄に飛びつかない」「まずは考える」という癖を付けることができます。特に発達障害のある方は、こうした思い込みに陥りやすい傾向がありますので、自分の特性を理解し、丁寧に対策していくことが大切です。

後者の「読解力が低く、『多分こういうことだろう』」と曖昧なまま解き進めてしまうお子さまの場合は、読解力を底上げしていく必要があります(厳密にはケアレスミスとも言い難いケースになります)。問題文をちゃんと理解できているか確認するために、例えば問題文を自分の言葉で口に出して説明してみたり、図で表してみたりする練習に取り組みましょう。

理解が曖昧なまま解き進めることが癖になってしまっていることも多いため、癖になってしまっている場合は「自分の言葉で説明する」「図に落とし込む」という練習を根気よく続けていくことが大切です。

★もっと詳しく知りたい方にオススメの記事→【受験のプロ監修】ADHD注意欠如多動性のケアレスミス対策7選 | 発達障害・ギフテッド専門のプロ家庭教師 メガジュン (pro-megajun.com)

要因②:見直しができていない

ケアレスミスの対策として、「見直しをしましょう」ということがよく言われます。ですが、ケアレスミスの最も大きな原因は50. 要因①:思い込みで問題を解いているで解説したとおり“思い込み”ですので、「これが正しい!」と思い込んだ状態でいくら見直しをしても間違いに気付けないケースがほとんどです。

ケアレスミスの対策として見直しをする場合は、自分がどんなケアレスミスをしやすいのかを分析し、ミスしやすい箇所を重点的に見直すようにしましょう。

例えば、「当てはまるものを選べ」で当てはまるものを選んでしまうことが多い人は、そうした出題形式の問題を重点的に見直すようにします。単位の記入漏れが多い人は、問題を解き始める前に、計算用紙の最初に「単位を付ける!」とメモ書きしておけば、見直しするときに意識しやすいでしょう。計算式や解答を転記する際に間違えることが多い場合は、重要な数字や単語に○を付けたり、問題用紙と解答用紙をできるだけ近づけて、見比べやすい(転記しやすい)ように工夫するのも良いでしょう。

ケアレスミスの対策においては、ミスの傾向を知ることが大きなポイントになりますので、意識して取り組んでいただければと思います。

★もっと詳しく知りたい方にオススメの記事→【受験のプロ監修】ADHD注意欠如多動性のケアレスミス対策7選 | 発達障害・ギフテッド専門のプロ家庭教師 メガジュン (pro-megajun.com)

要因③:字を雑に書いている

ケアレスミスの要因として「思い込み」の次に多いのが、「字が雑」であることです。数字の0と6や1と7、アルファベットのqと数字の9などを計算式の途中で見間違えて、そのまま解答を誤ってしまうケースです。

お手本のようなきれいな字を書く必要はありませんが、途中式であっても丁寧に書くことを心掛け、特に見間違えやすい字については意識して書きましょう。

字を丁寧に書くだけで、多ければ10点ほど点数が上がります。字を書くのがそもそも面倒臭いと感じる人も多いかもしれませんが、それだけで点数が上がるのであれば安いものだと考え、しっかりと対策していきましょう。

要因④:実はケアレスミスではない

ケアレスミスの中で意外に多いのが、「実はケアレスミスではない」というものです。例えば、「(語彙の意味を知らないことから間違いが生じた場面で)『玉石』という言葉は、玉(宝石)のように優れたものと石ころのようにつまらないものという意味で、『玉のような宝石』という意味ではないよ」と指摘した際に、「なんだ、そういうことか!“うっかり”間違えちゃった」とお子さまが発言することがあります。さて、このケースにおける間違いは、お子さまが言うように“うっかりミス”なのでしょうか…?

多くの方がお考えのとおり、これはうっかりミスではなく、知識の不足による間違いであり、ケアレスミスとは言えません。数学でも同様に、「円周角の定理を使うことを思いつかなかった」ことに対して、「“たまたま”思いつかなかったから間違えた」とお子さまが言ったとしても、それはケアレスミスではなく知識の引き出しが足りない、あるいは練習が足りないことによるシンプルな実力不足ということになります。

間違いを指摘されたお子さまが「ついうっかり…」と発言してしまうのは、知識や練習量の不足を指摘されるよりも、たまたま間違えたことにした方が心のダメージが少ないためです。ですが、実力不足ではなくケアレスミスのせいだと思っている限りは、今の自分に不足している力が何であるかが自覚できないため、これから伸ばしていくこともできません。ケアレスミスではなく、根本的な学力の問題であることを認識し、真っすぐに問題に向き合う必要があります。

ケアレスミスを言い訳にしてしまうことが癖になってしまっているお子さまに対しては、「それはうっかりミスじゃなくて、知識(練習)が足りなかったからだと思うよ」と伝え、「語彙を増やすために○○の単語帳を頑張ろう」「図形問題が苦手だね。ちょっと課題の量を増やしてみよう」など具体的な改善策を提案してあげると良いでしょう。

言い訳を責めるだけではなく、改善策も同時に伝えることがポイントです。「間違えたことが悪いのではなく、改善すること(努力すること)から逃げない」という姿勢をお子さまに身に着けてもらうことが一番の目的ですので、お子さまがミスに対して前向きになれるよう“応援する”“サポートする”という気持ちで声掛けしていただければと思います。

要因⑤:自分の計算力を過信している

自分の計算力に自信があるお子さまほど、暗算でミスをしてしまったり、途中式の見直しをおざなりにしてしまったりすることがあります。暗算しなければ解ききれないほど計算量が多いという場面はそれほどありませんので、基本的には「筆算をする」「途中式を書く」というルールを忠実に守ることが最も効果的です。

ただ、それでも「面倒くさい」「筆算は格好悪い」と言って指示に従わないお子さまもいらっしゃると思います。そういった場合は「それでもいいけど、次のテストでは計算ミスをゼロにしてね」と約束させましょう。プライドのあるお子さまであれば、自然と丁寧に計算をするようになりますし、もし計算ミスをしてしまったら「先生のアドバイス通りにした方が良いと思わない?」と交渉する材料にすることができます。

ただ、これらの指導は講師とお子さまの間でしっかりと関係が構築できている場合にのみ有効です。お子さまと講師(保護者さま)の関係性が揺らいでいると、お子さまは「放っておいて!」と態度を硬直化させてしまうこともあります。

もしお子さまとの関係性がしっかりと築ききれていない場合は、「筆算や見直しをしたら点数が上がると思う。1度やってみない?」と提案型の声掛けを中心に行い、「先生の指示に従ったら点数が伸びた」という実感を持ってもらうことから始めると良いでしょう。「丁寧に計算をする=点数が上がる」という成功体験が得られると、自発的に筆算や見直しができるようになるお子さまも多くいらっしゃいます。

<プロ家庭教師メガジュンでの解決例#3:ケアレスミスが極端に多いCさん>

Cさんは高校生で、二次試験で記述問題のある大学を志望していました。Cさんはケアレスミスで失点することが多く、学校の定期テストでもケアレスミスによって多いときは20点近く失点してしまっていました。保護者さまや塾の先生は口をそろえて「見直しをしなさい」と言っていたそうですが、なかなか改善されず、模試などでも同じようなミスが続いていたそうです。

そこでプロ家庭教師メガジュンの講師は、Cさんのこれまでの定期テストを見せてもらい、ケアレスミスで失点した箇所を全てリストアップすることにしました。リストアップすることでCさんのケアレスミスの傾向を見つけ、問題を解くとき・見直すときに、特に何に気を付ければ良いかをCさんに知ってもらおうと考えたからです。講師がケアレスミスの箇所を調べ上げたところ、Cさんのミスは以下の順に多くなっていました

・問題の指示の読み間違い(「当てはまらないものを選べ」で当てはまるものを選んでいる、「3つ選べ」で1つしか選んでいない 等)
・単位の書き忘れ
・問題の解き忘れ(大問の最後の小問や穴埋め問題の最後の欄が空欄)


そこで講師は、Cさんの最も多いミスである「問題の指示の読み間違い」を減らすために、テストの最初に問題文の文末に下線を引くように指示しました。元々下線が引かれている問題文であっても、さらにその上からCさん自身で線を引いてもらうことで、問題の指示に意識が行くようにしました。

また、単位の書き忘れについても、単位が明らかなものについてはテストの最初に解答欄に記入しておくように指示しました。問題を解き始めると、計算に夢中になってしまって単位のことがすっかり頭から抜けてしまうことが多いため、最初に記入しておくことでそうしたミスを防ごうと考えたからです。

問題の解き忘れについては、見直しの際に、問題を一問ずつ見直す前に解答用紙全体を見渡し、空欄が無いかを確認するように指示しました。

Cさんは、色々なことに気を付けようとするとどれかが抜け落ちてしまう性質(マルチタスクの苦手さ=ADHD的性質)があったため、

①問題文に下線を引く
②単位を先に記入する
③見直しの際は、まず空欄が無いか確認する


というように、タスクを一つずつ切り分けて手順をパターン化する方法を取ることにしました。

「見直し」と一言で言っても、問題文を見直す・検算する・単位をチェックするなど複数のタスクが含まれています。マルチタスクが苦手な方は、こうした複合的な手順になると上手く頭の中が整理できず、検算に夢中になってしまって単位を書き忘れたり、そもそも何をどう見直して良いのか分からず、解答を眺めているだけで実は見直しになっていなかったりするなどのケースがよくあります。

ADHDの特性を持っている方はどうしてもケアレスミスが多くなってしまいますが、Cさんのようにケアレスミスの傾向を分析し、ケアレスミス防止の手順をパターン化することで対策することが可能です。上述の対策を行ったところ、Cさんのテストの点は10~20点ほど上がり、無事に第一志望にも合格することができました。

51.話を聞いていない、同じことを何度も繰り返して言っているのに聞かない

話を聞いていなかったり、同じことを何度も繰り返し言っているのに伝わらなかったりするお子さまがいらっしゃいます。原因としては、
 

・集中するのが苦手な性質を持っている(=ADHD(注意欠如・多動症))
・耳で聞いた情報を処理するのが苦手な性質を持っている
・ゲームやスマホなど、他のものに気を取られている
・同じことを言われ過ぎて聞き流すようになっている


といったものが挙げられます。

こうしたお子さまにおいては、

①集中しやすいように環境を整える
②イラストなどを使って視覚的に伝達する
③本人が聞く態勢になったのを確認してから話す
④伝え方に変化をつける


などの工夫によって、「話を聞かない/聞けない」という困りごとを改善していくことができます。それぞれの方法について、以下で具体的に解説していきます。

①集中しやすいように環境を整える

お子さまの中には、「集中しづらい」という性質を生まれつき持っている方がいます。ADHD(注意欠如・多動症)の不注意特性がこれに該当しますが、ADHDの確定診断には至らないグレーゾーンや定型発達のお子さまの中にも、「集中するのがそもそも苦手」という性質を持った方はいらっしゃいます。

このように「集中しづらい」という性質を持っているお子さまの場合は、集中しやすいように環境を整えてあげることが大切です。

例えば、

・テレビがつけっぱなしになっている
・手遊びできるもの(紙切れ、消しゴム、鉛筆・ペンなど)が手に届く範囲にある
・外出中などで、周りがザワザワしている


などの状況では集中することが難しくなります。こうした状況では、保護者さまの話よりも、周りの音や視覚的な刺激、「手遊びしたい」という誘惑に気を取られてしまい、話半分で聞いてしまうことが多くなってしまいます。

ですので、お子さまにしっかりと話を聞いてほしいときには、こうした不要な刺激を取り除いてあげる必要があります。具体的には、

・テレビを消す
・机の上を片付ける
・大事な話については、普段と違う場所でする(ダイニングからリビングのテーブルに移動する、子ども部屋のベッドに座りながら話をする 等)
・フードコートや売り場の中ではなく、トイレの前や休憩スペースなど静かな場所に移動してから話す


などの方法が挙げられます。また、いつもと場所を変えて話すことで「大事な話なのだ」とお子さまが気付くことができ、より話が頭に入りやすくなるという効果も期待できます。

生まれつき集中しづらい性質を持っているお子さまに対して、「ちゃんと話を聞いて」と口頭で注意するだけではなかなか改善が難しく、お子さまも心の中ではちゃんと話を聞こうと思っているものの、どうしても他のことに気を取られてしまっているというケースも多くなっています。

そのため、お子さまに話をするとき、特に大事な話をするときには「集中しやすい環境を整える」ということをぜひ意識していただければと思います。

②イラストなどを使って視覚的に訴える

人にはそれぞれ、処理しやすい感覚があります。例えば、目で見た情報を処理するのが得意な人もいれば、耳で聞いた情報を処理するのが得意な人、言葉や文字の情報を処理するのが得意な人などがおり、その人が得意とする感覚のことを「優位感覚」と呼びます。

また、視覚情報の処理が得意なことを「視覚優位」、聴覚情報の処理が得意なことを「聴覚優位」と呼ぶことがあり、発達障害の方は目で見た情報を処理することが得意な「視覚優位」である場合が多いとされています。(ただし例外も多く、発達障害であっても視覚以外の感覚が優位である場合もあるため、お子さまの優位感覚については十分に見極める必要があります)

「話が聞けない/聞かない」という困りごとを持っているお子さまの場合は、耳で聞いた情報を処理するのが苦手であることが多く、視覚的な情報を処理するのが得意であるケースが多くなっています。そのため、口頭で指示する(=聴覚によって情報を伝達する)ことに加え、イラストなどで指示を出す(=視覚によって情報を伝達する)ことで、話の内容が伝わりやすくなる場合があります。

例えば、

・洗面所に「歯を磨きます→顔を洗います→水が跳ねてしまったら最後に拭きます」という指示をイラストで表した紙を貼っておく
・玄関に「忘れ物チェック:筆箱・給食袋・水筒」とイラスト付きのチェック表を貼っておく
・学習机のデスクマットに「国語30分・算数45分・理科20分」と自習の時間割を書いたグラフを挟んでおく


などの方法が挙げられます。

ご家庭でいろいろなイラストを用意するのは負担も大きいため、既存の絵カードなどを活用するのもオススメです。インターネットで「発達障害 絵カード(イラストカード)」などと検索すると、市販品から無料でダウンロードして使えるものまで様々なものが見つけられますので、お子さまの性質に合ったものを見つけていただければと思います。

また、絵カードによる伝え方の工夫は発達障害のお子さまだけではなく、耳で聞いた言葉や情報を処理するのが苦手な方に広く活用できるものですので、発達障害の診断を受けていない方も含めて積極的に活用していただければと思います。

③本人が聞く態勢になったのを確認してから話す

話を聞かないお子さまや、同じことを繰り返し伝えているはずなのになかなか伝わらないお子さまの場合は、「お子さまがちゃんと聞く態勢になっているか」を確認することが非常に需要なポイントとなります。

例えば、ゲームをしながらであったり、お子さまが他のことに気を取られていたりするなど、お子さまが「聞く態勢」になっていないまま話をしてしまうと、話の内容はなかなかお子さまに伝わりません。「わかった」と返事は返ってくるかもしれませんが、反射的に返事をしているだけであり、話の内容を本当に理解した上で「わかった」と言っているのではない場合がほとんどです。いわゆる「耳では聞いているけれど、頭には入っていない状態」であると理解すると良いでしょう。

こうしたお子さまに、話の内容をしっかりと頭に入れて理解してもらうためには、お子さまにきちんと「聞く態勢」になってもらう必要があります。具体的には、
 

①ゲームやスマホなど、“~しながら”の状態で話をしない
②保護者さまとお子さまの目が合っている状態で話す
③静かで落ち着いた環境で話す


などが挙げられます。

まず、「①ゲームやスマホなど、“~しながら”の状態で話をしない」については、ゲームをしながら、スマホを見ながらといった状態では、ゲームやスマホに気を取られて話の内容に集中できません。なので、お子さまがゲームやスマホから目を離すようなタイミング(トイレやお風呂、食事の前など)を見計らって話すのがポイントとなります。

話を聞いてほしいタイミングでゲームやスマホをやめさせる(例:「話があるからゲームをやめなさい」と言う)方法もありますが、この場合は保護者さまに言われてゲーム・スマホを中断しているため、「早くゲームをしたい」「LINEの返信をしなきゃ」ということで頭がいっぱいになって話に集中できないことがあります。

ですので、ゲームやスマホを中断させて話をするのではなく、お子さまが自然とゲームやスマホから離れるタイミングを見計らって話す方がより伝わりやすくなります。

「②保護者さまとお子さまの目が合っている状態で話す」については、例えば、スマホを見ているお子さまに対して、背中越しに「宿題をしなさい」と声を掛けているようなケースです。この場合、お子さまはスマホに夢中になっていて、保護者さまの話の内容にはほとんど注意が向いていません。

ですので、お子さまに声を掛けるときには「○○ちゃん/○○くん」と最初に名前を呼び、お子さまがこちらに顔を向けてから必要なことを伝えるなど、まずは保護者さまの方に注意を向けさせてから話すと伝わりやすくなります。

また、お子さまの視界の中に保護者さまが入ることもポイントです。名前を呼びかけても振り向かない(顔をこちらに向けない)お子さまの場合は、本人の目の前に保護者さまが移動し、お子さまの視界に入るようにしましょう。

注意力の低いお子さまは、聴覚だけ(声だけ)で情報を与えられても上手く処理できないことがありますが、視界に入って話すことで情報が「聴覚+視覚」となり、より伝わりやすくなる場合があります。

お子さまの中には、声だけの情報だと処理しづらいという特性を持っている方もいるため、お子さまの性質に合わせて工夫していただければと思います。(関連項目→51. ②イラストなどを使って視覚的に訴える

お子さまに聞く態勢になってもらうためには、「③静かで落ち着いた環境で話す」ことも重要です。ザワザワした環境だと話に集中しづらいだけでなく、「そんなに重要な話ではないのかな?」とお子さまが受け取ってしまう可能性もあります。

私たち大人の間でも、大切な話をするときには静かな場所に移動し、改まった雰囲気を敢えて作ることがありますが、お子さまに対しても同様に「この話は重要そうだ」とお子さまが感じられるような雰囲気を作ってあげることがポイントになります。

ですので、テレビやスマホの動画、音楽などが流しっぱなしになっている場合は一旦切り、外の物音が気になるときは窓やカーテンを閉めるなどして、静かな環境を用意しましょう。静かな環境を整えることで、お子さまが自然と聞く態勢になり、保護者さまの言葉に耳を傾けてくれることも多くなっています。

④伝え方に変化をつける

お子さまに繰り返し話をしても伝わらない理由の一つに、「同じことを言われ続けているために慣れてしまい、聞き流すようになっている」というものがあります。例えば、「宿題をしなさい」という言葉を、いつも同じタイミング・声色・トーンで言い続けていると、お子さまは「いつものことだ」と捉えて、その指示をさほど重要だと思わなくなり、聞き流してしまうようになります。

このような場合においては、伝え方に変化を付け、「いつもと違う…なんだろう?」とお子さまが感じ、保護者さまの言葉に注意が向くように工夫する必要があります。

例えば、「宿題をしなさい」という言葉をいつも厳しめのトーンで伝えている場合は、

・「先に宿題をしようよ」と優しめのトーンで伝える
・「今日の宿題は何?」と問いかけの形にする
・「ゲームはあとどれくらいで終わりそう?」など視点を変えた声掛けをする


といった変化を付けてみるなどの方法があります。

「厳しく言わないと伝わらない」と考えている保護者さまもいらっしゃいますが、厳しく言われることが当たり前になっていると、お子さまが厳しく言われることに慣れてしまったり、厳しく言われるが故にお子さまが反抗してしまったりしているケースもよく見られます。

ですので、敢えて「優しいトーンで伝える」「本人の気持ちを聞く」といったアプローチを取り入れ、指示に緩急を付けることが、お子さまに指示を聞いてもらうためには非常に効果的となりますので、ぜひご家庭でも実践していただければと思います。

52. 勉強に集中できていない

勉強に集中できない原因は非常に多岐にわたります。その中でもよくある原因として「①勉強に興味ややる気が持てない」「②勉強に対する自信の無さ、無力感」「③勉強以外に興味を惹かれるものがある」「④集中しづらい環境にある」「⑤発達障害の特性がある」「⑥体力が無い、睡眠不足である」などが挙げられます。実際にはこれらの要因が複合的に重なっている場合がほとんどであるため、お子さまの性質をよく分析し、一人一人に合った対策を講じていく必要があります。

要因①:勉強に興味ややる気が持てない

勉強に集中できない要因の一つが、「勉強が楽しくない、やる気が出ない」というものです。この場合は、勉強が楽しくなるような工夫(好きなアニメに関する英単語から覚える、パズル的な問題から数学を考えるなど)をするほか、勉強をしたくなるような動機付け(先生に褒められたい、良い点を取ると自分に自信が持てる)を行うことが有効です。

また、どんな動機付けが効果的であるかはお子さまによって異なります。お子さまが興味を持っているものや遊び方に注目することによって、それぞれのお子さまにとって効果的な動機付けの方法を見つけることができます。

例えば、ゲームの遊び方一つとっても、
 

・弱い敵をサクサク倒すのが好き
・強い敵を工夫して倒すのが好き
・誰よりも早くクリアして周りから称賛されるのが好き


など、お子さまによって楽しみ方はそれぞれ違います。弱い敵をサクサク倒すのが好きなお子さまの場合は、簡単な問題をたくさん解いて「サクサク解けて楽しい!」と感じてもらうことで勉強に前向きになれますし、強い敵を工夫して倒すのが好きなお子さまの場合は、少しレベルの高い問題を敢えて解かせることで「勉強って面白い!」と感じて勉強に前向きになることができます。

お子さまがなぜそのゲームや遊びが好きなのかを分析し、お子さまの心が動くポイントを見つけることが、動機付けを行う際には非常に重要ですので、ぜひ意識していただければと思います。(関連項目→19. ②「点数を上げたい」というモチベーションを上げる

また、勉強へのやる気が起きない背景には、「勉強に自信が無い」「勉強しても点数が上がる気がしない」という自信の無さや無力感があることが多いため、次の52. 要因②:勉強に対する自信の無さ、無力感もぜひ併せてご覧ください。

★オススメの実例コラム→<プロ家庭教師メガジュンでの解決例#2:学習習慣が身に付かず、志望校に受からない可能性が出てきたBさん>

要因②:勉強に対する自信の無さ、無力感

「勉強すれば点数が上がる」という実感があると、お子さまは「もっと点数を伸ばしたい」と感じて自主的に勉強できるようになれることがほとんどです。しかし、いくら勉強しても成果が出ず、自分が成長できているという実感が持てないと、「勉強したところで無駄、意味が無い」「自分は勉強が苦手なのだ」と感じて勉強を避けるようになり、結果として勉強に集中しづらくなってしまいます。

こうした状態を改善するためには、「勉強すれば成果が出る、成長できる」とお子さまに実感してもらうことが大切です。まずはお子さまにとって難しすぎない課題にチャレンジさせ(覚えやすい漢字や簡単な計算問題、歴史の暗記など)、少しでも机に向かって勉強すれば点数が上がる(できることが増える)と感じてもらうことが大切です。

あるいは、学校の授業の予習を行い、「授業が分かる」という状況を作り出してあげることも効果的です。授業を聴いても理解できないことで自信を失っているお子さまもいらっしゃるため、塾や家庭教師の授業で学校の予習をし、「授業を理解できている自分」を自覚させてあげることで自信アップにつなげることができます。

さらに、お子さまが自分の成長を自覚できるようにすることも、自信を付けるためには重要です。「前よりも解ける問題が増えているよ。例えばこの問題、前は解けなかったよね」といったように、お子さまがどれだけ成長しているかを示してあげることで、「自分も成長しているんだ」「頑張れば成果ができるんだ」と感じることができ、自信が回復し勉強に前向きになれることがあります。

ですので、もし個別指導の塾や家庭教師を利用している場合は、「まずは自信をつけさせたい」と伝え、お子さまに合った難易度の小テストなどを用意してもらったり、学校の授業の予習を中心とした内容にしてもらったりするのがおすすめです。

要因③:勉強以外に興味を惹かれるものがある

ゲームや動画など、ほかに気になるものがある場合も勉強に集中できません。この場合は、「宿題が終わったらゲームや動画視聴をして良い」と条件を付けたり、「ゲームで次のボスを倒したら勉強する」など区切りを付けることが効果的です。ルールが曖昧だと「守らなくてもいいや」と思ってしまうので、最初から厳密に運用するようにしましょう。

ただし、いきなりルールを作るとお子さまが抵抗を感じてしまうこともあります。ですので、ルールを作る際には必ずお子さまと保護者さまとで事前にしっかりと話し合うことが大切です。またその際、「なぜルールが必要なのか」「ルールが無いとどうなるのか」といった大人側の考え方を伝えるだけでなく、「ルールを守ることでテストの点が上がる」「宿題を気にしながらゲームするより、先に宿題をしてしまった方が思い切りゲームを楽しめる」など、お子さまにとってのメリットも併せて伝えると良いでしょう。

あるいは、「ルールが無くてもちゃんとできる」とお子さまが主張して話が平行線になってしまうような場合には、「1度はあなたの言葉を信じるけれど、2度守れなかったらこのルールにするよ」などと条件を付けることで、お子さまがルールを受け入れやすくなるよう工夫することも大切です。

ルールが守れず、どうしてもダラダラとゲームや動画を続けてしまうようなお子さまの場合は、ご飯やお風呂の時間など、生活の中で必然的かつ物理的に集中が途切れるタイミングで区切りを付け、「ご飯/お風呂の後は必ず机に向かう」というルーティンを作るのも良いでしょう。

また、お子さまの言い分を頭ごなしに否定するのではなく、なぜルールが必要なのか、ルールがしんどいと感じる理由は何なのかについて、しっかりと話し合うことが大切です。「ゲーム(動画)をやめなさい」という言葉を繰り返すだけでは、お子さまもそのうち慣れて聞き流すようになってしまいます。

加えて、声を掛けるタイミングも大切です。例えば、お子さまがゲームに夢中になっているときに声を掛けると、たとえ「わかった」と返事が返ってきたとしても反射的に返事をしているだけで意図は伝わっていない(=聞こえてはいるが頭に入っていない)状態になってしまいます。何かしながらではなくお互いにきちんと向き合い、お子さまが保護者さまの言葉を聞ける態勢になれるタイミングを見計らって声を掛けるようにしましょう。

伝え方についても、柔らかく交渉するように話した方が良いのか、それとも真剣に厳しい口調で話した方が良いのかなど、お子さまの性質や保護者さまとの関係を踏まえて工夫していくことが大切です。(関連項目→88. ゲームやスマホばかりしている

要因④:集中しづらい環境にある

テレビがつけっぱなしになっていたり、視界の端にゲームやスマホが目に入ったりする状態では、そちらに意識がいってしまい集中しづらくなります。勉強している間はゲーム機やスマホを別の部屋に置くなどして、勉強だけに集中しやすい環境を整えましょう。兄弟姉妹などがいて家の中が賑やかな場合は、学校や塾の自習室を活用するのがおすすめです。

★もっと詳しく知りたい方にオススメの記事→【受験のプロの技、全公開】すぐに使える、効率的な勉強法13選 | 発達障害・ギフテッド専門のプロ家庭教師 メガジュン (pro-megajun.com)

要因⑤:発達障害(ADHD・ASD・LD)の特性がある

発達障害の特性がある場合、要因①~③がより顕著に表れやすくなります。ADHDの方の場合は自制が利きづらく、ついついゲームに手を伸ばしてしまうなどがありますし、ASDの場合は細かなことが気になって勉強に集中できないことがあります。

また、LDの場合は読んだり書いたり、計算したりすること自体に非常にエネルギーを使うため、脳が疲れやすく集中しづらくなることもあります。いずれの場合も、①~③の要因をできるだけ取り除き、少しでも集中しやすいよう環境を整えることが大切です。(関連項目→39. 勉強に集中できないのは、発達障害(ADHD・ASD・LD)のせい?

★もっと詳しく知りたい方にオススメの記事→発達障害をお持ちのお子さんへのおすすめ勉強法/教え方と勉強環境とは? | 発達障害・ギフテッド専門のプロ家庭教師 メガジュン (pro-megajun.com)

要因⑥:体力が無い、睡眠不足である

集中力を保つためには体力が必要です。しっかり頭を使った後に、ぼーっとして身体もしんどくなったことがある方は多いと思います。脳を使うとたくさんのエネルギーを消費するため、適度に運動して体力を付けることも集中力を保つためにはとても重要です。

小学生のお子さまの場合は、身体が未発達であり体力も未熟です。そのため長い時間机に向かっているだけで疲れてしまったり、そもそも勉強に集中するための体力が身に付いていなかったりします。このような場合は、勉強に取り組ませるのと同時に体力を付けることも意識し、外遊びやジョギングなどの軽い運動にも取り組むと良いでしょう。

私がこれまで指導してきたお子さまの中にも、体力を付けることで学力が大きく伸びたお子さまがたくさんいらっしゃいました。一部の進学校では「文武両道」を掲げて長距離走や遠泳に取り組んでいる場合がありますが、学力の向上の土台として体力を身に付けることは非常に重要であると言えます。

また、中学生・高校生のお子さまの場合は一定の体力が身に付いてきますが、一方で部活動などによって体力の消耗も激しくなります。遅くまで部活をした後にさらに塾に行き、家に帰るのは20時を過ぎていて、ご飯を食べてお風呂に入ったら気絶するように眠ってしまうというお子さまも多いのではないでしょうか。

このような場合に家でも勉強をさせるとなると、睡眠時間を削るしかありません。ですが、睡眠を削ると翌日の集中力が格段に落ちてしまい、結果として勉強の効率が大幅に悪くなってしまいます。また、昼間に体力をたくさん消耗しているにも関わらず、睡眠による十分な回復ができないと怪我や病気のリスクも上がってしまいます。

部活動を頑張っておられるお子さまの場合は、睡眠時間を削るような勉強の仕方は避け、しっかりと睡眠を取って脳と身体のエネルギーを回復させることを優先しましょう。

これまで私が指導してきたお子さまの中にも、しっかりと睡眠を取ることで集中力が大幅にアップした方がたくさんいらっしゃいます。こうしたお子さまの場合は、元々の集中力が低いわけではなく、睡眠不足ゆえに集中力が落ちていたということになります。

睡眠不足は集中力を大幅に低下させるため、勉強においては大きなデメリットをもたらします。ですので、平日に机に向かうのが難しい場合は、通学時などのスキマ時間に参考書や単語帳に目を通すなどし、土日にしっかりと机に向かうといった形でメリハリを付けて勉強するのがおすすめです。(関連項目→85. 朝起きられない、生活リズムが不規則である)

<プロ家庭教師メガジュンでの解決例#1:英語への苦手意識が強く、集中が続かないAさん>

中学生のAさんは、英語の定期テストの点が少しずつ下がってきていました。中1の頃は少しだけ勉強すれば80点程度は取れていたのに、今では平均点を下回っています。テスト勉強はしていますが、苦手意識が強いためか英語はいつも後回しにしてしまい、集中力も続かず別のことをしてしまうという状況が続いていました。

そこで私は、Aさんの好きなものを保護者さまや本人から聞き取ることにしました。AさんはK-POPアイドルが好きとのことでしたので、彼らの英語の曲の歌詞をプリントアウトし、次のテスト範囲で出てくる単語や文法に蛍光ペンで線を引いてAさんに見てもらいました。

「この歌詞ってこの単語だったんですね!もしかして、この『’d』って過去分詞…?」というように、Aさんにとって身近なアイドルの曲も学校の英語の勉強と関連していることを感じてもらいました。また、次の授業までにその曲の歌詞の中で授業の内容と関連している箇所を覚えてくるように言い、穴埋めテストをすることを予告しました。

いつも英語を後回しにするAさんでしたが、この時は率先して英語の勉強をしていたと保護者さまから伺いました。予告どおり穴埋めテストをしたところ、Aさんは見事に全問正解することができました。

以降、Aさんは英語に対する苦手意識が和らぎ、また、日頃から好きな曲の歌詞に出てくる単語や文法に注目する習慣も付けることができました。このケースでは1. 要因①:勉強に興味ややる気が持てないに着目し、英語に対する心理的なハードルを下げるために、Aさんの好きなアイドルの曲の歌詞の穴埋め問題というスモールステップから始めることで、集中力や意欲に対する問題を解決することができました。

53. 提出物やテスト範囲の把握、大事な約束などでうっかりミスが多い

提出物やテスト範囲の連絡、大事な約束などでうっかりミスが多いお子さまの場合、その原因としては、

・ADHDの不注意特性
・メモを取る習慣が無い
・大事なことでも、「大事ではない」と誤って認識してしまっている


などが考えられます。

いずれの場合もこまめにメモを取ることによって改善できますが、こうしたお子さまはそもそもメモの取り方やメモを取るタイミング自体が分かっていないことも多いため、「メモを取るように」と指示するだけでなく、

①筆箱に入るサイズのメモ帳を用意して、いつでもメモできるようにする
②メモ帳はあちこちに移動させず、筆箱の中やカバンのポケットなど、定位置を決める
③「宿題」や「テスト範囲」など、何をメモするか(何が重要であるか)を最初から決めておく


など、具体的な対策を行うことが大切です。

例えば、「①筆箱に入るサイズのメモ帳を用意して、いつでもメモできるようにする」については、「メモをしなきゃ!」と思ってメモを探しているうちに大事なところを聞き逃してしまう…といったミスが多いお子さまに対する工夫として効果的です。筆箱の中にメモ帳を入れておけば、メモをしたいときにすぐに取り出してメモできるようになります。

「②メモ帳はあちこちに移動させず、筆箱の中やカバンのポケットなど、定位置を決める」も同様に、メモをしたいときにすぐにメモできるようにするという目的のほか、メモした紙自体を失くしてしまうお子さまも多いため、定位置を決めることでメモを失くさないようにするという効果が期待できます。

「③『宿題』や『テスト範囲』など、何をメモするか(何が重要であるか)を最初から決めておく」については、何をメモすべきか(何が重要か)を判断するのが苦手なお子さまに対して効果的な方法となります。メモすべきかどうかをその都度判断していると、重要なことでも「メモしなくてよい」という判断ミスをしてしまったり、「メモすべきかどうか」を悩んでいるうちに話の内容を聞き逃してしまったりするかもしれません。そのため、「宿題の内容」「テストの範囲」「授業変更」など、メモすべきことをあらかじめ決めておくという方法になります。

特にADHDの方はワーキングメモリー(情報を保持しながら次の処理を行う脳の働きのこと。詳しくはこちらの項目(→46. ③ワーキングメモリー指標(WMI))で解説しています)が低いため、「この話はメモすべきか」と考えていると脳のワーキングメモリーが圧迫されて、肝心の話の内容に集中できない場合があります。そのため、何をメモすべきかあらかじめ決めておき、メモすべきかどうかを考えるプロセスを省略できるこの方法が非常にオススメとなります。

★もっと詳しく知りたい方はこちら→発達障害のメモの取り方の工夫とは?仕事を覚えられない人にオススメの方法10選 (pro-megajun.com)

54. 勉強を始めるまでに時間が掛かる

解決方法①:簡単な問題や得意な教科から手を付ける

勉強を始めるのに時間が掛かるタイプのお子さまは、軽めの問題や自分の得意な教科から手を付けると良いでしょう。最初の10~20分程度はウォーミングアップと捉え、頭を勉強モードに切り替えるために使います。

長めの長文読解や数学の大問など、いきなり重めの問題を解こうとすると「大変そう、面倒くさい」という気持ちになってなかなか勉強を始めることができません。また、あまり得意ではない教科も、「どうせつまずくから、やりたくないな」と気持ちにブレーキが掛かってしまいます。

人間は一度始めたことはやり続けたくなる習性がありますので、ひとたび勉強を始めさえすれば、しばらくは勉強を続けることができます。その中で、「次は重めの問題/苦手な教科に進もうかな」という勢いも付けられますので、ぜひ試してみていただければと思います。

解決方法②:とにかく教科書や参考書を開く

勉強時間になったら、とにかく教科書や参考書を開いて1ページ読むという習慣を付けるのも良いでしょう。こちらも54. 解決方法①と同様に、一度始めたことを続けたくなる人間の習性を利用したものになります。

教科書を1ページ読み進めると、折角だからもう1ページ読んでみようかな?という気持ちになったり、章末の問題を解いてみようかな?と問題に手を伸ばしてみたくなったりします。また、そうした気分にならず教科書を1ページ読んだだけで終わってしまった場合でも、次の日に「昨日も1ページ読んだし、今日も1ページだけ読んでみよう」という習慣につながることもあります。

ほんの僅かな勉強量であったとしても何もしないよりは断然良いですし、そこから勉強の習慣が作れることもありますので、まずは1ページ読んでみることから始めてみましょう。

解決方法③:一度にやろうとせず、少しだけ先に手を付ける

例えば、明日やらなければならない課題があったときに、その日に全てやってしまうのではなく、前日のうちに少しだけ手を付けておくという方法も効果的です。

一度に全てやらなければいけないと考えると見通しが持ちづらく、なかなか勉強に手を付けようという気持ちになりませんが、前日のうちに少しでもやり始めておけば、「残り4問だけなら頑張れそう」と感じて一度に全部解くよりも気持ちが楽になります。「1問解くのに20分かかったから、明日は1時間くらいで終わらせることができるな」などの見通しを持つこともできるようになるため、勉強への抵抗感を大幅に和らげることができます。

また、54. 解決方法①54. 解決方法②で解説したように、1度始めたことについて人間は継続したくなる習性を持っています。前の日に手を付けておくと、次の日も「昨日もやったし、今日もやるか」という気持ちになりやすく、そういった点においても勉強に対する心理的なハードルを下げることができます。

解決方法④:好きなものを入り口にする

気分が乗らないときは、漫画やアニメ、ゲームやアイドルなど自分の好きなものに関することを入り口にするのもオススメです。例えば、漫画のセリフを英訳してみたり、登場人物の名前の漢字を覚えてみたりするなど、何でも良いので勉強らしいことをしてみましょう。テストの点数に直接はつながらないかもしれませんが、勉強する姿勢を作ることはできますし、手に入れた雑学が意外な場面で役に立つこともあります。

また、そうした勉強を続けていくと、教科書の内容と重なる部分が見えてくることもあります。「この文法はこういう場面で使うのか!」といったことが分かると勉強も楽しくなってきますので、勉強にやる気が出ない人は勉強がどんな場面で役立つのかを知るためにも、こうした方法を取り入れるのがおすすめです。

★もっと詳しく知りたい方にオススメの記事→【受験のプロの技、全公開】すぐに使える、効率的な勉強法13選 | 発達障害・ギフテッド専門のプロ家庭教師 メガジュン (pro-megajun.com)
★オススメの実例コラム→<プロ家庭教師メガジュンでの解決例#1:英語への苦手意識が強く、集中が続かないAさん>

解決方法⑤:集中しやすい時間帯を見つける

お子さまによっては、朝一番や寝る前など、特定の時間帯だと集中しやすい場合があります。いわゆる朝型人間/夜型人間といったものになりますが、こうしたバイオリズムに合わせて勉強に取り組むことも非常に効果的です。

以前メガジュンでサポートしたIさんは、夕食後から夜に掛けてはどうしてもダラダラしてしまって勉強に向かえなかったのですが、朝早めに起きて勉強することを提案すると、無理なく机に向かう習慣を付けることができました。Iさん曰く、「自分はてっきり夜型の人間だと思っていたけど、実は朝型で朝活が合っていたみたい!」と仰っており、本人さえも気付かない特性を持っている場合も往々にしてあります。

お子さまに合った生活リズムはどんなものか、試行錯誤しながら見つけていただければと思います。

55. 問題文を最後まで読まない

問題文を最後まできちんと読まずに解答して、答えを間違えてしまうお子さまがいらっしゃいます。原因としては、

・性格がせっかちである
・問題をパッと見て反射的に解くクセが付いてしまっている
・複数の情報を同時に処理するのが苦手で、問題文の最初の情報しか頭に入っていない(視野が狭い/ADHD的な性質)
・さっさと勉強を終わらせたくて、急いでいる


などが挙げられます。これらの原因は重複していることもありますが、いずれの場合も以下の方法によって改善していくことができます。

<改善方法>
 

①読み飛ばしたことによってミスをしていることを自覚させる
②問題文を声に出して読む/線を引きながら読む/大事なところに丸を付けながら読むなどの工夫をする
③問題文をしっかり読むことで点数が上がったら、「落ち着いて問題文を読んだから点数が上がったね」などと、問題文をしっかり読むことのメリットに気付けるように声掛けをする


それぞれについて、以下で詳しく解説していきます。

①読み飛ばしたことによってミスをしていることを自覚させる

問題文を最後まで落ち着いて読むことができないお子さまは、「問題文を落ち着いて読めていないことがミスにつながっている」という認識を持てていない場合があります。問題を間違えても、「たまたま間違えてしまった」といううっかりミスであると認識しており、「問題文を慌てて読む」という自分の性質が原因となっていることに気付けていないようなケースです。

こうしたケースにおいては、まずは問題文を読み飛ばしてしまっていること、そしてそれによってミスをしてしまっていることをお子さまに自覚させる必要があります。

具体的には、「『赤玉と黒玉が出る確率』を聞かれているのに、『赤玉が出る確率』を答えてしまっているのは、問題文を読み飛ばしたからだよね」と、読み飛ばしによるミスが発生する度にしっかりと指摘していきます。

「自分は読み飛ばしによってミスをしている」という自覚を持つことが、問題文を落ち着いて読めるようにするための第一歩となりますので、まずはしっかりとミスの原因を指摘していきましょう。

②問題文を声に出して読む/線を引きながら読む/大事なところに丸を付けながら読むなどの工夫をする

①でミスの原因が読み飛ばしであることを自覚させることと併せて、読み飛ばしを防ぐ方法についても伝えていきましょう。

例えば、「問題文をきっちりと最後まで声に出して読む」という方法があります。問題文を半分までしか読まずに「あとは大体こういう話だろう」と思い込んで解いてしまうお子さまも多いため、最後まで声に出して読ませることでそうした思い込みや読み飛ばしを防ぐことができます。

また、「声に出せば良いんだろう」と適当に流して読んでしまうお子さまの場合は、読み終わった後に「どういう話だった?」「何を聞かれている?」「条件を要約してみて」など、その問題がどんな問題であったのかを確認するなどして、単に声に出すだけでなく、考えながら読むように誘導していきましょう。

「問題文に線を引きながら読む」という方法も効果的です。線を引きながら読むことで、1行飛ばして読んでしまったり、文章を最後まで読まなかったりといったミスを防ぐことができます。「とにかく線を引けば良いのだろう」と、文章を読まずただ線だけ引いて形式的に終わらせようとするお子さまに対しては、声に出して読ませる場合と同様に、「どんな話だった?」と後から確認するようにして、単に線を引くだけでなく内容を把握しながら読めるように誘導していきましょう。

「大事なところに丸を付けながら読む」という方法もあります。これは、「いつ/誰が/何を/どうした」など、文章の中で特に重要な要素に丸を付けながら読むという方法になります。まずは上述の「声に出して読む」「線を引きながら読む」に取り組み、慣れてきたら大事なところに印を付けながら読むなど、他の方法と併せて取り組むのがおすすめです。

③問題文をしっかり読むことで点数が上がったら、「落ち着いて問題文を読んだから点数が上がったね」などと、問題文をしっかり読むことのメリットに気付けるように声掛けをする

①や②の指導を行うことで読み飛ばしが減り、点数が上がった際には「落ち着いて問題文が読めているね。だからミスが減って点数も上がったね」と声を掛け、問題文を落ち着いて読むことのメリットをお子さまが自覚できるようにアシストしていきましょう。

落ち着いて読むことのメリットをお子さまが自覚できるようになると、大人が逐一「声に出して読もう」「大事なところに印を付けて」と指示しなくても、自分なりに工夫しながら問題文を読めるようになっていきます。

問題をパッと見て解くことが癖になっているお子さまや、生まれつきの性質(ADHD)によって視野がどうしても狭くなってしまうお子さまもいるため、すぐに改善するのが難しいケースもありますが、①~③の方法を組み合わせて根気よくサポートすることで改善していきますので、ぜひご家庭でも取り組んでいただければと思います。(関連項目→50. 要因①:思い込みで問題を解いている

56. 字が汚く、「とめ・はね・はらい」をきちんと書かない

お子さまの字が汚かったり、「とめ・はね・はらい」を丁寧に書かなかったりする場合、以下のいずれかが原因として考えられます。
 

①字を書くのが面倒で、丁寧に書かなくても良いと思っている
②学習障害のうち、書字障害(ディスグラフィア)に該当する


それぞれの解決策について、以下で解説していきます。

①字を書くのが面倒で、丁寧に書かなくても良いと思っている

字を書くのが面倒で「丁寧に書かなくても良いや」と感じてしまっているお子さまの場合は、字を丁寧に書くことのメリットを実感させてあげることで字を丁寧に書けるようになる場合が多くなっています。

字を丁寧に書くことの第一のメリットとしては、テストの点数が上がることが挙げられます。これまでのテストでとめ・はね・はらいなどがきちんと書けていないことで減点されている箇所を見直し、「字を丁寧に書けばテストの点が〇点上がるよ」と具体的に示しましょう。

「丁寧に字を書けば点数が上がるよ」といった一般的なことを伝えるだけではなく、過去のテストを一緒に振り返り、「〇点上がるよ」とそのお子さまの実態に合わせて具体的に示すことがポイントになります。具体的に示すことで、お子さまは字を丁寧に書くことのメリットをより実感できるようになります。

また、お子さまが丁寧に字を書けた際には、「丁寧に書けているね。だから丸がもらえたね」といった声掛けをし、字を丁寧に書くと良いことがあるのだとお子さまが気付けるようにサポートしていくと良いでしょう。

さらに、お子さまが中学受験を考えている場合は、とめ・はね・はらいまでしっかり書くことが必須となります。漢字のとめ・はね・はらいについてどこまで細かくチェックするかは中学校によって差がありますが、丁寧に書いておくに越したことはありません。

中学受験を目指しているお子さまで、字を丁寧に書く習慣がまだ身に付いていない場合は、模試などの結果を見直し、字を雑に書いてしまったことで減点されていたら「この部分は字を丁寧に書かないことで減点されてしまっているね。本番でも減点されてしまう可能性があるから、今から丁寧に書く習慣を身につけよう」といったように、字を丁寧に書かないと減点されるということをお子さまに実感してもらいましょう。

加えて、字を丁寧に書くことのメリットには、字が綺麗なだけで「この子は賢そうだ」「きちんとしている人だ」と思ってもらえるということもあります。周りからしっかりした子だと思われたいという気持ちが強いお子さまの場合は、「字が綺麗だと、それだけで賢い子だと思ってもらえるよ」などの声掛けをして、字を丁寧に書くことに対するモチベーションを上げていくのも良いでしょう。(関連項目→57. 要因①:「書くことがしんどい」と感じている

②学習障害のうち、書字障害(ディスグラフィア)に該当する

書字障害(ディスグラフィア)とは学習障害の一つで、知能指数においては問題が無いものの、文字を書くことのみに大きな困難がある状態を指します。字がマス目からはみ出してしまったり、筆圧が極端に弱かったり、何度練習しても文字の形が覚えられなかったり、鏡文字になってしまったりと、困難の現れ方は人によって異なります。

「丁寧に書きなさい」と何度言っても極端に形の崩れた字を書いてしまうお子さまや、時間を掛けて書いているのに字が汚くなってしまうお子さまの場合は、書字障害の可能性を検討する必要があります。

書字障害の要因は、一般的に「手と目の協調の問題」であると考えられています。「手と目の協調」とは、目で見た情報を処理しながら手先を動かす脳の働きのことで、書字障害を持つお子さまは生まれつきこの能力に困難があると考えられています。

したがって、書字障害を持つお子さまの字が汚くなってしまうのは、本人の努力が足りないせいではありません。にも関わらず、「もっと丁寧に書きなさい」「たくさん練習すれば書けるようになるから」と言われ続けると、「いくら頑張っても綺麗に字を書けない自分はダメなんだ」と自己肯定感が下がってしまうこともあります。

また、単純な反復練習を繰り返しても書字障害は改善しませんので、授業や宿題で反復練習を強要されることがストレスとなり、学校に行きたくなくなってしまうこともあります。ですので、書字障害の可能性が考えられる場合は、早めにスクールカウンセラーや特別支援コーディネーターの先生など、発達障害や書字障害について理解のある学校の先生に相談するようにしましょう。

学校に相談しづらいと感じる場合は、お住まいの地域の教育相談センターや発達支援センターにも窓口が設けられている場合が多いため、そちらに問い合わせてみると良いでしょう。

書字障害のあるお子さまは、字を書くだけでも人一倍エネルギーを使っています。一文字書くだけでも大きな労力が必要であるという状態を理解し、お子さまが字を書くことに取り組んでいるときには「一生懸命書いたんだね」というような声掛けをし、本人の努力を認めて応援していくようにしましょう。

また、書字障害の具体的な改善方法としては、

○大きなマス目のノートを使う
○一マスの中が色分けされているノート(カラーマスノート)を使う(参考:小児科医と言語聴覚士が考えたノート。文字を正確に書き写せます。 | tobiraco(トビラコ)
○画用紙に大きく字を書いて、塗り絵や飾りつけをしながら文字の形に親しむ
○背中に文字を書きあって、文字の形と手の動きを学ぶ


などがあります。通級指導教室や発達障害のあるお子さまを受け入れている放課後等デイサービスでは、個々に合わせた指導を受けることができます。

また、これらのトレーニングに加え、手と目の協調を鍛えるビジョントレーニングなどによって書字障害の改善を図る場合もあります。

なお、大人になるにつれ文字を手書きする機会は減っていきますので、文字を書くことのストレスが大きい場合は、無理に改善しようとせず、学校でもキーボード入力に切り替えるなどの対応を検討することも大切です。(関連項目→57. 要因②:書字障害(ディスグラフィア)

★もっと詳しく知りたい方にオススメの記事→学習障害(LD)とは?読めない、書けない、計算できない子どもの特徴と対処法を紹介 | 発達障害・ギフテッド専門のプロ家庭教師 メガジュン (pro-megajun.com)

57. 文字を手書きすることを嫌がる

要因①:「書くことがしんどい」と感じている

手書きを嫌がるお子さまに、字を書きたくないと感じる理由を聞いてみると、「手が疲れる/しんどい/だるい」という言葉が返ってくることが多いのではないでしょうか。ですがこの場合、お子さまは手を動かすこと自体が本当にしんどいと感じているのではありません。

というのも、ゲームや手遊びをしているときにお子さまが「手が疲れた」と発言することはほとんど無いと思います。したがって、お子さまの「しんどい、だるい」という発言は、手書きすること自体がしんどいと感じているのではなく、勉強に対する拒否感ゆえに発せられているものと考えられます。つまり、楽しいこと(ゲーム、手遊び)であれば「疲れた」とは感じず、お子さまにとって楽しくないこと(勉強)であるがゆえに「疲れた」という発言をしてしまっているということになります。

こういった心理的な背景を踏まえると、「疲れるから」といって手書きを嫌がるお子さまに対しては、勉強に対する心理的なハードルを下げてあげることが非常に効果的であることが分かります。“心理的なハードルを下げること=勉強が楽しいと思えること”ですので、お子さまが勉強を少しでも楽しいと思えるようなきっかけを作ってあげるようにしましょう。具体的には、

①「自分にも勉強ができる」という自信を持つ
②勉強をすると良いことがある(周りから褒めてもらえる、点数が上がる等)


の2つが挙げられます。

「①『自分にも勉強ができる』という自信を持つ」については、勉強に対して自信が無く、「自分は勉強が苦手だ」と思っているお子さまに対して特に効果的な方法になります。自分は勉強が苦手だと思っているお子さまは、「勉強したってどうせ点数は上がらない」「どれだけ勉強を頑張っても効果は現れないだろう」と心のどこかで感じていて、机に向かおうというモチベーションが低くなってしまっている状態にあります。自分はできる!という前向きな気持ちが無いために、本当は頑張ればできることでも、できないと思い込んで頑張れないケースもあります。

こうしたお子さまの場合は、「自分もやればできる」という自信を付けるために、簡単な課題からチャレンジし、やればできるという実感を持ってもらうことから始めます。例えば、漢字の書き取りであれば、日常生活で馴染みがある語句を中心とした小テストを作成し、敢えて点が取りやすい状況にしてあげます。

小テストで点が取れたら「習ったばかりの語句も多いけれど、書き取り練習のお陰で点が取れたね!」としっかりと褒め、“書き取り練習には意味がある”“練習すれば自分もできるようになる”とお子さまが自覚できるような声掛けをしていきましょう。テストで点が取れたり、そのことで褒められたりすると、お子さまは少しずつ「勉強って楽しいかも?」「自分にもできるかも?」と思えるようになり、勉強に対して前向きに取り組めるようになります。

「②勉強をすると良いことがある(周りから褒めてもらえる、点数が上がる等)」については、勉強は必ずしも苦手ではないものの、書き取り練習などをコツコツと頑張ることを嫌がってしまうお子さまに効果的です。このようなお子さまは、書き取り練習によるメリットが実感できておらず、「面倒くさい、しんどい」という気持ちが勝ってしまっている状態にありますので、しんどさ以上にメリットがあることを実感してもらうことが大切です。

指示された課題がこなせたらまずはしっかりと褒め、場合によっては「1日のゲームの時間の上限をプラス30分してあげる」などのご褒美を設けても良いでしょう。また、しっかりと書き取り練習をした後にテストの点が取れていたら、「書き取り練習したから点が上がったんだね、すごい!」のように、『テストの点が上がった』という結果と『書き取り練習をした』という過程が結びついていることにお子さまが気付けるように声掛けをしてあげると良いでしょう。

要因②:書字障害(ディスグラフィア)

書字障害(ディスグラフィア)とは学習障害の一つで、文字を書くことに困難がある状態を指します。字がマス目からはみ出してしまったり、筆圧が極端に弱かったり、何度も練習しても文字の形が覚えられなかったり、鏡文字になってしまったりと、困難の現れ方は人によって異なります。

書字障害を持つお子さまの字が汚くなってしまうのは、本人の努力が足りないせいではありません。にも関わらず、「もっと練習しなさい、きれいに書きなさい」といつも叱られていると、字を書くこと自体が嫌いになってしまいます。また、単純な反復練習を繰り返しても書字障害は改善しませんので、ストレスが溜まって学校に行きたがらなくなったり、「何回練習しても覚えられないなんて、自分はダメなんだ」と自己肯定感が下がってしまったりします。

書字障害のあるお子さまは、字を書くだけでも人一倍エネルギーを使っています。書字障害の原因の多くは、手と目の協調(目で見た情報と手の動きを連動させる能力)の弱さ、あるいは音韻処理(文字と音を結び付ける能力)の不全と呼ばれています。平仮名を一文字書くのも一苦労である状態を理解し、「字が書けた」ということだけで充分であると捉えましょう。「一生懸命書いたんだね」というような声掛けを行い、本人の努力を認めてあげることがとても大切です。

書字障害の具体的な改善方法としては、

○大きなマス目のノートを使う
○一マスの中が色分けされているノート(カラーマスノート)を使う(参考:小児科医と言語聴覚士が考えたノート。文字を正確に書き写せます。 | tobiraco(トビラコ)
○画用紙に大きく字を書いて、塗り絵や飾りつけをしながら文字の形に親しむ
○背中に文字を書きあって、文字の形と手の動きを学ぶ


などがあります。通級指導教室では個々に合わせた指導を受けることができるほか、療育施設ではこれらのトレーニングに加え、手と目の協調を鍛えるビジョントレーニングなどによって書字障害の改善を図る場合もあります。

また、大人になるにつれ文字を手書きする機会は減っていきますので、文字を書くことのストレスが大きい場合は、無理に改善しようとせず、学校でもキーボード入力に切り替えるなどの対応を検討することも大切です。

★もっと詳しく知りたい方にオススメの記事→学習障害(LD)とは?読めない、書けない、計算できない子どもの特徴と対処法を紹介 | 発達障害・ギフテッド専門のプロ家庭教師 メガジュン (pro-megajun.com)

要因③:「手書きにこだわっても意味が無い」と主張する

大人になったらどうせパソコンやスマホで文字を入力するのだから、手書きにこだわるのは意味が無いはずだ、と主張するお子さまもいらっしゃいます。確かに一理あるのですが、一方で「漢字を書ける人は、作文能力も高い」という研究結果もあります。(参考:漢字書ける人、文章も上手 京都大学グループが中高生分析「手書き教育大切」|文化・ライフ|地域のニュース|京都新聞 (kyoto-np.co.jp)

もちろん、闇雲に難解な漢字を覚えることには意味が無いかもしれませんが、漢字の成り立ちを知ることや、場面に合わせた熟語を記憶の中から引き出して使いこなすことは、単に漢字テストで良い点を取ること以上に意義があります。

また、ChatGPTの登場により、人間よりもAIの方が文章作成に長けている可能性が示唆されています。「パソコンで変換できるから漢字は覚えなくてよい」という考え方の先には、「AIが作文してくれるから、人間は文章を書けなくてよい」という主張もあり得るでしょう。

人間は、言葉で考え、言葉で表し、言葉で意思疎通する生き物です。言葉をすべて機械に任せてしまうとしたら、人間が人間である所以(アイデンティティ)はどうなるのでしょうか?手書きにこだわる意味、ひいては自分で文章を紡ぎ出す意味について、お子さまとじっくり話し合ってみるのも良いかもしれません。

また、もし中学受験を考えておられる場合は、漢字のとめ・はね・はらいが重要な得点ポイントとなります。男子校などでは細かいところまで見られない場合もあるようですが、とめ・はね・はらいができていないと減点する学校も5~6割はあるとされています(参考:『進学レーダー(2020年11月号)』みくに出版)。そのため、手書きであることが実社会で役に立とうが立たまいが、中学受験をする場合は否が応でも漢字の書き取り練習は必須と言えます。

いくら記憶力に優れてお子さまであっても、とめ・はね・はらいといった細かい部分について完璧に定着させようと思えば、実際に手を動かして書き取り練習をするしかありません。中学受験する場合は、そのことをお子さまにもしっかりと説明し、とめ・はね・はらいなど細かい部分にも気を配りながら、コツコツと漢字の書き取り練習に取り組んでいきましょう。

58. 間違えた問題の見直しをしたがらない/間違いを指摘すると怒る

要因①:自分の間違いを認めるのが怖い

間違えたところを復習するように言っても「面倒くさい」「嫌だ」と手を付けたがらないお子さまの心理として、「自分の間違いを認めたくない、怖い」というものがあります。幼少期から「間違えると怒られた」という経験や、逆に「上手くいったときだけお母さん/お父さんは褒めてくれる」という経験が積み重なると、“間違い=悪”と刷り込まれてしまい、自分の間違いを認められない子になってしまいます。

こうした経験は、間違えた部分の見直しができないだけでなく、完璧主義や白黒思考(物事を良いか悪いか、ゼロか百かなど両極端に捉えてしまうこと)にも陥りやすくなり、大人になってからの生きづらさにもつながります。

自己肯定感という人格形成の最も大切な部分に関わることですので、失敗しようが成功しようが、あなたはそこにいるだけで価値があるということを幼い頃から言葉と態度でしっかりと示してあげることがとても大切です。また、既に自己肯定感が下がってしまい自分の間違いから目を背けたがるお子さまの場合は、お子さまの態度を否定せず、それとなく間違えた箇所に関する問題を解かせるなどして対症療法的に対応していきましょう。

併せて、下がってしまった自己肯定感をケアするためにも、答えの無い問い(例:理想の学校とは?/人々の便利な暮らしと環境保全は両立するか?など)を話し合い、「自分の意見を聞いてもらう」「人の意見を受け入れる」という経験をさせてあげると良いでしょう。その際、決してお子さまの話を遮ったり否定したりせず、また、他の子どもや保護者さまの意見と自分の意見が違っても構わないということを伝えていきましょう。

要因②:間違い直しはしなくても良いと思っている

間違い直しをやりたがらないお子さまは、「問題を解いたのだからそれで良い」と考えている場合があります。根本には「勉強が面倒くさい、嫌だ」という思いがあり、

①勉強のメインは問題を解くことである
②間違い直しはオマケのようなもの
③少しでも勉強の負担を減らしたい
④オマケである直しは省略してしまおう


といった思考回路で間違い直しを避けようとする傾向にあります。

このような場合には、「間違いを直すからこそ、次に間違わないようになって点数が上がる。つまり、間違い直しこそ大切であり勉強のメインである」ということを丁寧に繰り返し伝えるとともに、お子さまが「間違い直しは大切である」という実感を持てるようにすることが重要です。

例えば、間違い直しをした後に、似たような問題に正解できたり点数が上がったりした場合は、「間違い直しをしたから正解できたね!」など、間違い直しの重要性にお子さまが気付けるような声掛けをしていくと良いでしょう。このようなお子さまの場合は、間違い直しの重要性に気付くことができれば、自分から前向きに間違い直しができるようになりますので、ぜひ実践していただければと思います。

要因③:完璧主義である、こだわりが強い(特にASDの場合)

発達障害のうち、特にASDの特性があるお子さまの場合は、×マークが付くこと自体に不快感を覚えたり、完璧であることに強いこだわりを感じたりすることがあります。曖昧な概念を理解するのも苦手で、答えの無い問いに拒否感を示すこともあります。

そうした場合は無理をせず、58. 要因①で述べたように間違えた箇所に関する問題をそれとなく解かせるようにして対応しましょう。見直しを強要すると、勉強自体が嫌なものとしてトラウマになってしまい、そもそも机に向かわなくなってしまう場合もあります。

さらにASDのお子さまは、特定の教科の見直しだけを嫌がったりする場合があります。苦手な教科の場合は「苦手さを突き付けられているようで嫌だ」と感じたり、逆に得意な教科の場合は「得意な数学で間違ったことを認めたくない」といったプライドから見直しを避けたりすることがあります。似た理由で、ケアレスミスの見直しはできるけれど、問題の難易度が高くて解けなかった場合の見直しができないお子さまもいらっしゃいます。

このような場合は、見直しのストレスが少ない問題から少しずつ慣れていくとともに、見直しをした後に点数が上がるなどの効果が見られた場合には「見直しをしたから点数が上がったね」などの声掛けを行い、「見直し=良いこと」というイメージを持ってもらえるように働きかけていきましょう。

また、保護者さまや先生と一緒に見直しを行う際には、「間違っている」とはっきり伝えるのではなく、「こうした方がもっとスマートに解けるよ」など伝え方をマイルドにすることで見直しに対する抵抗感を和らげることも効果的です。

★もっと詳しく知りたい方にオススメの記事→アスペルガー(ASD)の性質を活かした、オススメ勉強法7選 | 発達障害・ギフテッド専門のプロ家庭教師 メガジュン (pro-megajun.com)

59. 志望校の選び方が分からない

志望校の選び方が分からない場合は、以下の8つのポイントに注目しながら検討を進めると良いでしょう。また、志望校を検討する際には、以下の8つのポイントについてお子さまと保護者さまが一緒に確認しながら話し合って決めるようにすると、親子とも志望校合格に向けて一丸となって頑張れる場合が多いです。

さらに、発達障害やギフテッドなどの特性を持っているお子さまについては、1~8のポイントのほか、「発達障害のお子さまの志望校の選び方」「ギフテッドのお子さまの志望校の選び方」でさらに詳しく志望校の選び方を解説していますので、ぜひご覧ください。

併せて、志望校を決める際にはパンフレットやホームページを見るだけでなく、必ず現地に足を運び、学校の雰囲気を肌で感じるようにしましょう。入学した後に「思っていた雰囲気と違う」となってしまっては、せっかく合格したにもかかわらず充実した学校生活を送ることが難しくなってしまいます。

ですので、学校説明会やオープンキャンパス、そしてできれば普段の学校の姿(在校生の振る舞いや登下校の様子など)も現地に足を運んで確認するようにしましょう。

ポイント①自由度は高いか

校則が厳しくなく自由に過ごせる学校もあれば、規則正しく学校生活を送ることを重視している学校もあります。自由度の高い学校と低い学校、どちらとの相性が良いかはお子さまによって異なりますが、

・自由度の高い学校 →学校や社会のルールに疑問を感じることが多く、ルールが無くても自律的に考え行動できるお子さまと相性が良い
・規律を重んじる学校 →ルールがあった方が勉強や部活を頑張れるお子さまと相性が良い


という場合が多くなっています。

お子さまの性質やそれぞれの学校の校風をしっかりと分析して判断していただければと思います。

ポイント②偏差値

志望校を選ぶ際には、偏差値も大きなポイントとなります。偏差値は高ければ良いというものではなく、お子さまがどれだけ勉強を頑張りたいと思っているか、あるいは勉強自体にアイデンティティを感じているかどうかなどを踏まえて判断していく必要があります。

一般的には、

・より偏差値の高い学校 →「自分は勉強が得意だ」と自負していて、勉強自体にアイデンティティを感じているお子さまと相性が良い。ただし、入学した後に平均点以下の成績になると、アイデンティティの崩壊が起こることが多いため、入学後も平均点以上の点数が取れるような学校に入る方が良いことも多くございます。
・実力に見合った偏差値の学校 →勉強への苦手意識が強いお子さまや、勉強以外に頑張りたいことがあるお子さまと相性が良い


と言えますが、これらの傾向を踏まえながらも、お子さまの性質に応じて個別に判断していただければと思います。

ポイント③課題の多さ

課題の量がどれくらいであるかも、志望校を選ぶ際には大きなポイントとなります。課題が多すぎると課題をこなすことで精一杯になってしまい、自分の苦手に応じた学習をすることが難しくなってしまうことがあります。

一方、課題が少なすぎると家でなかなか勉強しないというお子さまもいらっしゃいますので、お子さまの性格や性質を見極めて判断していく必要があります。

課題が多い学校と少ない学校について、それぞれ相性の良いお子さまの傾向は以下のとおりとなります。

・課題が多い学校 →自学自習が苦手で、課題を示されないと勉強に取り組めないお子さまと相性が良い
・課題が少ない学校 →指示されなくても自学自習できるお子さまや、勉強以外にやりたいことがあるお子さまと相性が良い

ポイント④通学時間

志望校を選ぶ際には、通学時間も非常に重要です。基本的には通学時間が短い方が時間や体力を節約できるためメリットが大きいと言えますが、人間関係を一新したいと考えているお子さまの場合は、自宅から離れている学校の方が過ごしやすいこともありますので、お子さまの状況に応じて判断していくと良いでしょう。(一般的には中学生・高校生では乗り換えが1回以内、片道1時間以内を基準とされることが多いです)

・通学時間が短い →出身校が同じ子がいると安心できるお子さまや、自由時間を確保したいお子さま、体力が少ないお子さまと相性が良い
・通学時間が長い →人間関係を一新したいと考えているお子さまや、通学時間を有効活用できるお子さまと相性が良い

ポイント⑤小中高一貫校や大学付属校であるか

小中高一貫校や大学付属校である場合、受験を気にせず自由に過ごせるなどのメリットがある一方で、受験を通して大きく成長してほしいと保護者さまが考えている場合はその機会が得られなかったり、私立の場合は経済的な負担が非常に大きくなったりするというデメリットがあります。

小中高一貫校や大学付属校のメリットとデメリットについては以下のとおりですので、これらを踏まえて検討していただければと思います。

・メリット →受験を気にせず自由に過ごせる/早い段階から進路を確定させられるため安心
・デメリット →「受験のために頑張る」という経験が得られない/私立の場合は経済的な負担が大きい

ポイント⑥共学・男子校・女子校

共学を選ぶか、男子校や女子校を選ぶかについては、その学校の伝統や校風も踏まえながら検討していくようにしましょう。

現存している男子校・女子校のほとんどは長い歴史を持つ伝統校であり、その学校ならではの色濃い教育方針を持っている場合が多くなっています。「男子校・女子校だと、異性の目が気にならず勉強に打ち込めそう」という一般的なイメージがあるかもしれませんが、それ以上にその学校が持っている雰囲気や教育方針を詳しく調べておくことが大切です。

パンフレットやホームページを見るだけでなく、必ず学校に足を運び、学校説明会やオープンキャンパス、そして普段の学校の様子をよく見ておくようにしましょう。

ポイント⑦受験科目の配点

志望校を選ぶ際には、受験科目の配点にも注目しましょう。基本的には、得意科目の配点が高く、不得意科目の配点が低い学校を選ぶのがお勧めとなります。

ただし、倍率が高い学校の場合などは、配点だけでなく難易度まで踏まえて対策を考えていく必要があります。受験科目の配点や難易度を踏まえた志望校選びについては専門的な知識が必要になりますので、受験に詳しい塾や家庭教師の先生に相談しながら検討していくようにしましょう。

ポイント⑧出題形式

志望校を検討する際には、入試問題の出題形式にも注目しましょう。字を書くのが苦手なお子さまの場合は、記述式ではなくマーク式の学校を選んだり、作文が苦手なお子さまの場合は作文や小論文の出題が無い学校を選んだりすると良いでしょう。

また、特定の単元が頻出である学校も多くなっています。立体図形や確率など、特定の単元が苦手なお子さまの場合は、それらの単元が頻出となっている学校は避け、逆に自分が得意な単元からよく出題される学校を選ぶようにしましょう。

発達障害のお子さまの志望校の選び方

発達障害のお子さまの場合は、お子さまの特性に合わせた丁寧な指導を受けられるかどうかが非常に重要なポイントになります。

画一的な指導を行う学校の場合、発達障害のお子さまは周りについていけなかったり、適切な配慮を受けられなかったりして、大きなストレスを感じてしまうことがあります。結果として学力不振や自信・気力の低下につながり、不登校の状態に陥ってしまう場合もあります。
ですので、入学前には一人ひとりの特性に合わせた丁寧な指導が受けられるかどうかをしっかりと確認しましょう。具体的には、

・発達障害の特性を持っている在校生がいるかどうか(もしくは、個性的な生徒が多いかどうか、その土壌となる自由な雰囲気かどうか)
・その子たちが楽しく前向きに学校生活を送れているどうか


などについて、口コミ等も踏まえながら判断するのが大切です。

学校説明会や事前相談会などでは、「一人ひとりに合わせてフォローする」といった説明をしてもらえるかもしれませんが、残念ながら実態が伴わず、十分な配慮が受けられなかったり、勉強についていけない子をフォローする体制が整っていなかったりする学校もありますので注意しましょう。

勉強についていけなかったり、ストレスから不登校になり出席日数が足りなくなったりすると、内部進学できず、せっかく合格できたのに途中で退学しなければならなくなってしまうケースも実際にあります。

ですので、学校側の説明だけでなく、実態についても事前に十分確認することが大切です。

ギフテッドのお子さまの志望校の選び方

ギフテッドのお子さまの場合は、「ポイント①自由度は高いか」や「ポイント③課題の多さ」、「入学後に学力が平均以上の立ち位置でいられそうか」が特に重要なポイントになります。

ギフテッドのお子さまは、周りからあれこれと指示されるよりも、自分で考えて自由に学び、行動することを好む場合が多いです。そのため、規則が厳しかったり、課題が多かったりする堅い校風の学校とは相性が悪い場合が多いです。

特にギフテッドのお子さまが目指すような偏差値の高い学校は、ほとんどの場合、

A.課題をたくさん出し、厳しい環境に耐えさせることで生徒を伸ばす(→勉強が苦手な子でも一定は成果が出せる。ただし、完全にドロップアウトしてしまう子もいる)
B.課題は最低限しか出さず、生徒の自主性を重んじる(→完全にドロップアウトする子は少ないが、勉強をする子としない子の差が開きやすい)


の2タイプに分かれます。

ギフテッドのお子さまはBタイプの学校の方が過ごしやすい一方、自分に合った勉強方法が見つけられないと、進学の際に苦労する場合もあります。

基本的にはBタイプの学校を選びつつも、個別指導塾やプロ家庭教師などを利用し、お子さまが適切な学習習慣を身に付けられるようサポートすると良いでしょう。

また、ギフテッドのお子様は勉強ができることをアイデンティティーに感じておられるお子様も多く、学校の母集団の中で平均点以下を取られると大きなショックを受けることも多いです。

そのような逆境の中で、「這い上がる力」を持っているギフテッドのお子様は問題ございませんが、這い上がる経験をされていない場合、大きなショックを受けられたストレスから大きく自己肯定感が低下して、不登校にまで至ることも多くございます。(受験業界では「深海魚」というワードで呼ばれているほど、よくある実例です)

そのため、這い上がる経験をされていない場合、「入学後も成績が平均点以上に位置しそう」な学校を選ばれることで、その様な事態を防ぐことができるので、学校選びのご参考にいただければと思います。

60. 中学受験をすべきか悩んでいる

「もっとレベルの高い教育を受けさせたい」「公立中学校が荒れている」「内部進学できるため、受験に追われず伸び伸び過ごせる」など、中学受験を検討する理由はご家庭によって様々あると思います。

特に2E型ギフテッドなど、発達障害と高知能の両方の性質を持っているお子さまの場合は、いろいろな学力層の子どもたちが集まる公立中学校よりも、一定の学力レベル以上の子どもたちが集まり、保護者の教育関心も高い私立中学校の方が落ち着いて過ごせる場合がほとんどであるため、私たちも中学受験をお勧めすることが多くなっています。

また、ギフテッドの性質を持っていない発達障害のお子さまの場合も、公立中学校のガヤガヤしだ雰囲気が合わない可能性が高いため、お子さまの学力レベルに合った私立中学校に進学することをお勧めすることがあります。

さらに、高校受験を見据えると、ギフテッドや発達障害のお子さまにとって中学受験は非常にメリットが大きいものと言えます。ギフテッドや発達障害のお子さまは、全ての教科(副教科含む)の定期テストで満遍なく点を取ったり、提出物の期限を守ったり、きちんとした授業態度で出席したりといった、内申点に関わること全般が苦手な傾向にあります。

都道府県ごとに若干の違いはあるものの、公立高校を受験する場合は内申点の比率が非常に高く、内申点が配点の50%以上を占めるケースも非常に多くなっています。ですので、公立中学校で内申点を伸ばせる自信が無い人は、

・私立中学校から大学まで内部進学する
・私立中学校から高校に内部進学し、大学は得意教科を活かして一点突破型で受験する


といったパターンが非常にオススメとなります。

ちなみに、内申点は「定期テストの点数>実力テストの点数>提出物・実技>授業態度」の順に配点が高い場合が多くなっています。テストで点が取れるタイプのお子さまはある程度内申点にも期待を懸けることができるため、公立中学校から公立高校への進学も選択肢にできますが、そうでない場合は中学受験をした方が高校受験においては圧倒的に有利であると言えます。

ただし、中学受験をする場合は、どんな偏差値の学校を目指すにしてもそれなりに受験に向けた勉強をする必要があります。受験勉強がお子さまにとって大きな負担になってしまう場合は、無理に高いランクの学校を目指さず、より受験勉強の負担の少ないランクの学校を選ぶことも選択肢の一つとなります。また、無理に偏差値の高い学校に進学してしまうと、入学後に周りについていけずしんどい思いをしてしまう場合もあります。

私たちプロ家庭教師メガジュンにおいても、受験勉強が過度な負担にならず、また、お子さまが入学後に楽しく学校生活を送れることを重視していることから、お子さまの特性や学力レベルをしっかりと分析した上で、志望校のランクを下げるご提案をさせていただく場合があります。ただしその際には、お子さまが挫折感を感じてしまわないよう細心の注意を払い、お子さまにとってより良い選択肢であることをご本人にも丁寧に説明するようにしています。

中学受験をすると決めた場合は、お子さまの学力と受験勉強に対するストレス耐性をしっかりと分析し、お子さまにとって最適な志望校選びを進めることが大切です。また、多くのお子さまは、受験勉強をとおして粘り強さやセルフコントロール力、PDCAサイクルを実行していく力や自信・自己肯定感など、生きていく上で大切な力を身に付けることができます。登る山が高いほど、登り切ったときに人は大きく成長しますので、成長と負担のバランスを周りの大人が見極め、中学受験がお子さまにとってかけがえの無い経験となるようにサポートしてあげることが何よりも大切です。

また、当然ですが「良い学校に通わせたい」というのが親の一方的な思いであってはいけません。中学受験をさせるのは、お子さまにとってより良い環境を整えること、あるいはお子さまが大きく成長する機会とすることが目的です。受験が迫ってくるとどうしても合格できるかどうかがばかりを考えてしまいますが、中学受験の本来の目的を忘れず、親子のコミュニケーションを大切に、お子さまの心と身体の状態を丁寧に見守っていただければと思います。

お子さまは周囲の大人の影響を受けやすく、また、大人が思っている以上に大人の言動をよく見ています。「受験を頑張りたい」というお子さまの言葉も、もしかしたら「お母さん/お父さんの期待に応えたい」という気持ちから出ているものかもしれません。もちろん、保護者さまの期待に応えることがモチベーションであることは悪いことではありませんが、それが過度なプレッシャーに繋がってしまうケースもあります。

お母さん/お父さんのために頑張るのではなく、まずは自分のために頑張ることが大切であることや、無理をして期待に応える必要が無いことについては折に触れてお話ししておくと良いでしょう。そのためには、受験以外のことについてもたくさんコミュニケーションを取り、お互いに本心を伝えあえる関係性を築いていくことが大切です。

★もっと詳しく知りたい方にオススメの記事→中学受験でギフテッドの才能を最大限に生かす方法|準備のコツと成功のポイント | 発達障害・ギフテッド専門のプロ家庭教師 メガジュン (pro-megajun.com)

61. 嫌いな科目や苦手科目の勉強をしない

お子さまが嫌いな科目や苦手な科目を勉強しない理由には、

・「頑張って点数を伸ばそう」という気持ちよりも「面倒くさい」「やりたくない」という気持ちが勝ってしまっている
・苦手な科目の勉強の仕方が分からない
・苦手な科目を勉強しても、どうせ成績は上がらないと思っている


などが挙げられます。

これらの理由は重なり合っていることも多いのですが、いずれの場合も苦手意識を払拭し、「苦手な科目でも、勉強すれば点数が上がる」という実感をお子さまに持ってもらうことで、嫌いな科目や苦手な科目についても勉強ができるようになることが多いです。

具体的なアプローチとしては、

①簡単な課題から少しずつ難易度を上げ自信をつける(スモールステップ)
②学校の授業の予習をし、「いつもより分かる!」という感覚を得ることで前向きな気持ちを取り戻す
③塾や家庭教師の先生と一緒に課題に取り組み、補助してもらいながら少しずつ自信を回復させる
④お子さまがやる気のある時間帯やタイミングを見計らって勉強に取り組ませる


などが挙げられます。それぞれについて、以下で解説していきます。

①簡単な課題から少しずつ難易度を上げ自信をつける(スモールステップ)

苦手科目に対する自信の無さや、「勉強してもどうせ成績は上がらない」という後ろ向きな気持ちを払拭するためには、まずは小さな課題から始めて「自分もやればできる!」とお子さまに実感してもらうこと(スモールステップ)が非常に効果的です。

具体的には、苦手科目に関する簡単な問題(今のお子さまの学力でも少し練習すれば解けて、量も多すぎないもの)に取り組み、その後で小テストを行います。

すると、「苦手な科目の問題であっても、練習することで点数が取れた」という小さな成功体験をお子さまは得ることができ、「勉強してもどうせ成績は上がらない」というマイナスな気持ちを少しずつ和らげていくことができます。

このようなスモールステップの手法においては、お子さまの現在の実力に応じた課題と小テストを用意することが非常に重要なポイントとなります。というのも、学校の課題や定期テスト・模試などは、現在のお子さまにとっては難易度が高過ぎる場合が多いです。

お子さまにとって難易度の高い問題に挑戦させても、結局解くことができず、「自分にはやっぱり無理なんだ」と苦手意識が一層強くなってしまうことが多いため、お子さまの現在の実力に応じた課題を用意することが必須と言えます。

また、定期テストや模試だと結果が戻ってくるまでに時間が掛かるだけでなく、テスト範囲も広いため、「勉強したから成果が出た」という実感が持ちづらくなります。ですので、お子さまに「勉強したから成果が出た」という実感を持たせるためには、その場で結果が分かり、範囲も限定されている小テストが最適であると言えます。

「難易度の高すぎない課題+小テスト」というスモールステップを積み重ねていくと、嫌いな科目に対する苦手意識が少しずつ軽減され、お子さまの中に「苦手な科目も頑張ったら成績が上がるかもしれない」という気持ちが芽生えてきます。

苦手な科目に対する前向きな気持ちが芽生えることで、お子さまはやがて苦手な科目や嫌いな科目にも自発的に取り組めるようになっていきます。短期間で自信を回復させることはなかなか難しく、最初のうちは「こんなに少しずつで大丈夫かな?」と感じるかもしれませんが、スモールステップを根気良く続ければ、いずれは苦手意識を克服できる場合がほとんどですので、じっくりと取り組んでいただければと思います。

②学校の授業の予習をし、「いつもより分かる!」という感覚を得ることで前向きな気持ちを取り戻す

嫌いな科目や苦手な科目があるお子さまは、学校の授業を聴いても理解が難しく、「授業を聴いても分からない。だからこの科目は嫌い/苦手だ」と思っていることがあります。授業が理解できないと、授業に参加しようという意欲も下がり、ますますその科目が苦手になってしまうという悪循環が生まれてしまいます。

このようなお子さまの場合は、塾や家庭教師を利用して学校の授業の予習を行い、あらかじめ内容を理解した上で授業に挑むという方法が効果的です。塾や家庭教師による予習で内容をしっかりと理解してから学校の授業に参加すると、お子さまは「いつもより授業の内容が分かる!」という感覚を得ることができます。

「いつもより授業が分かる」という感覚が得られると、お子さまは普段より前向きに授業に参加することができるようになります。また、塾や家庭教師での予習と学校の授業という二段構えで学習することができるため、知識や理解の定着もより進みます。

学校の授業が分かるようになることで、お子さまの苦手意識を軽減することができ、勉強にも前向きに取り組めるようになっていきますので、塾や家庭教師を利用している方は「自信をつけるために、学校の授業の予習をしたい」と伝えるなどしてカリキュラムを検討してもらうと良いでしょう。

③塾や家庭教師の先生と一緒に課題に取り組み、補助してもらいながら少しずつ自信を回復させる

苦手な科目の問題に取り組んでも、どのように解いて良いかが分からず正答にたどり着けないため、より苦手意識が強くなってしまう場合があります。このような場合においては、塾や家庭教師の先生とまずは一緒に問題を解き、補助してもらいながら取り組むという方法が効果的です。

「さっき説明した○○の公式を使ってみよう」「前に解いた問題と○○が違うだけで、あとは一緒だよ」と講師が声を掛けながら問題を解くことで、「何から手を付けて良いかわからない」という状態を解消することができます。

また、「わからなかったら先生が助けてくれる」という安心感があることによって、「どうせ解けないから、解きたくない」という拒否感も和らげることができます。

問題が解けることで、お子さまは「自分にも解けた」という自信をつけることができます。さらに、授業の最初では講師が隣に付きながら一緒に問題を解いていき、「残りの問題も同じ方法で解けるよ」と声をかけた上で後半はお子さまだけで問題を解くといった形で授業を進めれば、「最後には一人で解けるようになった」という大きな自信を得ることができます。

ほかにも、授業では講師と一緒に問題を解き、同じような問題を宿題として出すといった方法も効果的です。既に解き方が分かっている問題であれば、お子さまも嫌がらず前向きに取り組める場合が多くなっています。

総じて、苦手科目や嫌いな科目の勉強をお子さまが避けてしまう背景には、“解き方が分からないために、手の付けようが無い”といった場合も多くなっています。そのため、講師があらかじめ解き方の道筋を示したり、似た問題を一緒に解いたりして、「自分にも解けそうだ」という感覚をお子さまに持ってもらうことが非常に重要です。

④お子さまがやる気のある時間帯やタイミングを見計らって勉強に取り組ませる

①~③では、お子さまの自信を回復させ、苦手科目や嫌いな科目に対するモチベーションを上げていく方法をご紹介しました。

この他にも、お子さまが勉強に取り組みやすい時間帯を見つけ、そのタイミングで「○○の科目も少しやってみたら?」などの声掛けを行うといった工夫も効果的です。

朝の方が集中しやすいお子さまや、夜の方がやる気が出るお子さまなど、お子さまによって性質は違いますので、お子さまの様子をよく観察しながら声を掛けていくことが大切です。

また、好きな科目を先にやりたいお子さまや、嫌いな科目を先に終えてしまいたいお子さまなど、勉強に取り組む順番も重要です。

得意な科目から取り組むことで気分を上げ、仕上げとして苦手な科目に取り組むという順番の方がモチベーションを保ちやすいお子さまもいらっしゃいます。「苦手科目を後回しにしているのでは?」と感じたときは、そのまま苦手科目に手を付けずに勉強を終えてしまうのか、それとも後からちゃんと取り組むのかを十分見極めてからお子さまに対して声を掛けるようにすると良いでしょう。(関連項目→8. 解決方法②言い方や伝えるタイミングを工夫する

62.マイペース過ぎて危機感が無い我が子…受験モードにさせるにはどうすれば良い?

周りが受験モードになりつつあるのに、本人はいつまでものんびりしていて心配…というご相談もよくお伺いします。このようなお子さまの場合、大抵は幼少期からのんびり屋さんで、流行りの漫画やゲームよりは自分の興味があることに夢中であったり、お友だちと競争したり喧嘩したりしたこともほとんどないというケースが多くなっています。

のんびり屋さんであることは決して悪いことではなく、せわしい世の中でマイペースを貫けることは大きな強みでもありますので、それだけで心配する必要はありません。恐らく保護者さまの心配の根幹は、「受験も近いので、そろそろ本格的に勉強を始めてほしい」というものだと思います。

さて、こうしたのんびり屋さんタイプのお子さまに、志望校に合格できるように勉強を頑張ってもらう方法としては、以下の3つが挙げられます。
 

①このままでは志望校に合格できないことを具体的に説明し、危機感を持たせる
②コツコツと勉強する習慣を付ける
③志望校に対するモチベーションを上げる

①このままでは志望校に合格できないことを具体的に説明し、危機感を持たせる

まず「①危機感を持たせる」についてですが、のんびりタイプのお子さまは本気で焦った経験がこれまでに無く、心の底から「最終的には何とかなる」と考えている場合があります。「最終的には保護者さまや周りの人が助けてくれるだろう」「これからどこかのタイミングで頑張れば間に合うだろう」と考えてしまっていて、“今、自分が頑張らなければならない”という自覚がありません。

そのため、まずは現在の状況をしっかりと説明するようにしましょう。これまでと違い、受験はお子さま自身が本気で頑張ろうと思わないとどうにもならないことや、もし経済的な事情で私学に行くことが難しく、何とか公立に受かってほしいという場合は、そのことを冷静に伝えましょう。

ただし、経済的な事情で公立を勧める場合は、「お金が無いから公立にして」と親の考えを押し付けるのではなく、公立と私学のメリットとデメリットを併せて伝え、それでも私学でしかできないことがある場合は特待生枠を目指すなどの落としどころを見つけましょう。

公立に比べると私学は資金が潤沢なため、校舎も綺麗で設備が整っていますし、広告や宣伝にもお金を掛けられるため、一見すると私学の方が魅力的に見える場合があります。一方で、私学の場合は独立性が強く、行政の監視の目が届きづらいという面があります。いじめや体罰、不適切指導などは新聞に載る前に示談や被害生徒の退学で済まされてしまうケースもあり、問題事象の暗数は公立に比べて多いのではないかという見方もあります。

これらの情報を踏まえながら、お子さまの意思で志望校を決めることが、危機感を持ってもらう上では非常に重要です。

②コツコツと勉強する習慣を付ける

「②コツコツと勉強する習慣を付ける」に関しては、お子さまの頑張り方のタイプに注目する方法になります。人によって集中力やモチベーションの上がり方は異なり、短期間でぐっと集中して頑張るのが得意な人もいれば、長期間かけてコツコツ頑張るのが得意な人もいます。陸上競技と同じように、頑張り方や集中力にも短距離型・中距離型・長距離型があると考えると良いでしょう。

のんびりタイプのお子さまは、往々にして中距離~長距離型の頑張り方である場合が多くなっています。じっくりコツコツ取り組むことが向いているお子さまに、短期間に集中して頑張れ!と強いることはストレスも大きく、そもそもできなかったり、効率が悪かったりします。

保護者さまや先生自身が短期集中タイプであるが故に、お子さまにもそうした頑張り方を強いてしまうことがあるかもしれませんが、一度冷静にお子さまの頑張りのタイプを分析し、お子さまに合った頑張り方を提案することが大切です。

長期的にコツコツ頑張ることが向いているお子さまの場合は、周りよりも早めに受験を見据えた勉強に取り掛かる必要があります。できれば2年生になるまでには志望校を決め、長期的な勉強の計画を立てていきましょう。

なお、志望校については勉強を進める中で変更しても構いません。2年生時点での志望校は、ひとまずの目標とマイルストーンを置くために決めるものであり、「一度決めたら絶対に変えてはいけない」という性質のものではありません。もし志望校のランクを落とすことになった場合に本人の挫折感を最小限に留めるためにも、あまりガチガチに決め過ぎないようにしましょう。

志望校が決まれば、毎日短時間でも構いませんので学習習慣を付けていきましょう。一日一回は机に向かうという習慣ができると、受験が近づいて勉強時間を増やさなければいけないときでも比較的スムーズに受験モードに移行することができます。のんびりタイプのお子さまの場合は、一気に勉強時間を増やすよりも徐々に増やしていく方が向いていますので、いきなり本格的な受験勉強をするのではなく、少しずつウォームアップしていくイメージで取り組むと良いでしょう。

例えば、「2年生の間は1日1時間の自宅学習をする。3年生になったら1時間半に、部活を引退したら2時間と少しずつ時間を増やしていく」という計画を、お子さまが信頼・尊敬している講師と約束するなどは非常に効果的です。

お子さまと講師との間に信頼や尊敬の関係があると、「先生との約束を守ろう」というモチベーションが保てるため、スムーズに受験モードに移行することができます。(参考:【塾・家庭教師の選び方】勉強しないお子さま必見!良い先生は「関係作り」に長けている (pro-megajun.com)

また、勉強の計画を立てる際には、その計画がきちんと実行できることが非常に重要です。無理な計画を立てて実行できないと、「計画どおりにできなかった」という失敗体験から自信を無くしてしまい、モチベーションも下がってしまいますので、まずは無理なく実行できる計画から始め、計画を実行するという習慣を身に付けることから始めましょう。

また、のんびりタイプのお子さまは、「まあいいや」と計画を先延ばしにしてしまうことがあります。こうした先延ばし癖を防ぐために、計画はできるだけ具体的に立てるようにしましょう。

例えば、計画が「今月中に問題集を終わらせる」といった大雑把なものだと、「今日できなくても明日頑張ればいいや」と先延ばしにしてしまいますが、「毎日2ページ問題集を解く」という具体的なものだと、その日にやり切るしかなく、先延ばしを防ぐことができます。

このように計画を立てる際には、いつまでに/何を/どこまで/どのように勉強するかについて、具体的に決めることがとても大切です。

③志望校に対するモチベーションを上げる

「③志望校に対するモチベーションを上げる」については、受験に対して実感が持てず、何となく志望校を選んでしまっているお子さまに対して効果的なアプローチになります。学校の先生や保護者さまから「志望校を決めなさい」と言われて何となく決めたお子さまは、その学校に行きたいという思いがそれほど強くないため、合格するために頑張ろうというモチベーションが上がりづらくなってしまいます。

できれば志望校を決める前の段階で、色々な学校のオープンキャンパスや学校説明会、文化祭・学園祭などに足を運び、お子さまが自らの意志で「この学校に行きたい」と志望校を決めることが、モチベーションを上げるためには最も効果的です。

ただし、学校を見て回る際には、全てをお子さまに任せてしまうのではなく、保護者さまが一緒に学校に足を運び、見るべきポイントを上手く誘導してあげることも大切です。お子さまだけに任せてしまうと、色々と見て回るのが面倒に感じて早い段階で「ここで良いや」と決めてしまったり、友だちに合わせてしまったり、あるいは学園祭の出店の1~2か所だけを見て「ここが楽しそう/つまらなさそう」などの印象で決めてしまったりと、大人からすれば見当外れの決め方をしてしまう場合があります。

もちろん、親の意向どおりに志望校を決める必要はありませんが、「通学に○分くらいかかるけど、大丈夫そう?」「部活の先輩が○○高校に行っていたよね。話を聞いてみたら?」などお子さまの視野や選択肢を広めるようにサポートしてあげると、本人の意思で本人に合った学校を選べる場合が多くなっています。

中学受験を目指す場合は、敢えて公立中学校の様子を見学してみるのも良いでしょう。がやがやした雰囲気が苦手なお子さまであれば、「ここ(公立中学校)よりも、受験を頑張って私立中学校に進学したい」というモチベーションにつなげることができます。

危機感を持たせた方が良いのか、それともプラスのモチベーションを高めた方が良いのかはお子さまの性格や性質によって異なりますので、お子さまの個性をじっくりと分析し、お子さまに合った方法でサポートしていただければと思います。

★もっと詳しく知りたい方にオススメの記事→【受験のプロの技、全公開】すぐに使える、効率的な勉強法13選 | 発達障害・ギフテッド専門のプロ家庭教師 メガジュン (pro-megajun.com)

63. 同年代の子どもに比べて知能が高く、友達と話が合わない

ギフテッドのお子さまは強い知的好奇心を持っており、興味の対象もアイドルやアニメ、ゲームなどよりは、自然科学や哲学などの学問的なものである場合が多くなっています。精神的にも成熟が早い傾向にあり、クラスの同年代のお子さまと話が合わないという方が多くいらっしゃいます。

無理に周りに話を合わせようとするとストレスが溜まり、不登校の原因になってしまうこともあります。私たちの元に相談に来られたギフテッドの方の中にも、ストレスが原因である日突然頭痛と吐き気が止まらなくなり、学校に行けなくなったという人がいらっしゃいました。

こうした事態を避けるために、以下の2つの方法をご紹介します。

解決策①:ギフテッドではない人と付き合う練習だと納得してもらう

まず1つ目は、ギフテッドではない人と付き合う練習だと割り切って対応する、という方法です。

ギフテッドの割合は全人口の2%と言われています。つまり、お子さまのこれからの人生において、ギフテッドではない人と関わる機会の方が圧倒的に多いということになります。ギフテッド教育を受けていて、周りもギフテッドの子ばかりの環境で育ってきた子が、大人になっていきなり非ギフテッドの集団の中に放り込まれたら、恐らく非常に苦労するでしょう。学校は社会の縮図ですので、非ギフテッドの人たちの中でどう生きていくかを練習する場所だと割り切ることも大切な考え方であると言えます。

具体的には、ギフテッドではない子どもたちの行動を観察し分析してみるなどがおすすめです。ギフテッドのお子さまは観察力や洞察力に優れていますので、「なぜその子がその行動を取ったのか」を逐一考察することで、「なんでこんな簡単なことも分からないんだ!」という憤りから、「なるほど、あの子はこう考えるからこういう行動を取るんだ」と冷静に受け止めることができるようになります。

最初のうちは、「他人の行動を観察・分析することに意味があるのかな?」とお子さまが疑問に思うこともあるかもしれませんが、実際にやってみると「確かに冷静になれるかも」という実感や納得感が得られるため、「次はあの人の行動も観察・分析してみよう」と観察・分析を基にした人付き合いができるようになっていきます。

ギフテッドのお子さまは、他人の行動パターンを認識し、それに応じて話を合わせたりすることは自然とできていることが多いのですが、さらに踏み込んで「その人がなぜそう思うのか」まで分析できるようになると、ギフテッドと非ギフテッドの違いを知ることにもなり、他者理解や適度な距離を保ちながら人付き合いをすることなどができるようになります。

また、子ども同士だけではなく、対大人の関係においても同様の考え方が可能です。当然ながら、学校の先生の中にはお子さまより知能指数の低い人がたくさんいます。真面目で素直なお子さまほど、「大人=賢くて立派な考えを持っている」と信じてしまっているのですが、現実はそうではありませんし、そうした現実が早めに見えているに越したことはありません。

大人の行動に対しても「なぜそんな行動をするのか(例:なぜこの先生はルールを一方的に押し付けるのだろう?)」という視点が持てると、「この先生はルールに頼らないとクラスをまとめられないんだな」と一歩俯瞰して見ることができ、大人なのになんでこんなに話が通じないんだ!とイライラ・モヤモヤせずに済みます。「大人にも色々いるのだな」ということが分かれば随分とストレスは軽減されますので、ぜひ実践してみていただければと思います。

ただ、自分より知能指数が低くても、優れている部分や魅力的な部分を持っている人はたくさんいます。イライラ・モヤモヤする部分に注目するだけでなく、素敵だなと感じる部分にも同時に目を向け、他者に対して長所・短所をバランスよく見つけることが大切であることをご家庭でもお話ししていただければと思います。

★おすすめの実例コラム→<プロ家庭教師メガジュンでの解決例#5:ギフテッドで学校がつまらないEさん>

解決策②:無理に周りと話さない

2つ目の解決策は、「無理に周りと話さない」ということです。友達はたくさんいた方が良いという人もいますが、無理に付き合って心身の調子を崩してしまうのであれば、一人で過ごすのも一つの方法です。

孤独に耐えられないという人も中にはいますが、ギフテッドの方で孤独がどうしても苦手で生理的に耐えられない(例:トイレに行くにも誰かと一緒でなければ嫌)という人はあまり聞いたことがありません。

ギフテッドの子が「人付き合いしなければいけない」と思ってしまうのは、

・グループに属さないといじめられるのではないか
・独りぼっち(いわゆるボッチ)は恥ずかしいのではないか
・友達がいないと親や先生に心配をかけるのではないか


という副次的なものである場合が多くなっています。ですが、友人というものは本来、お互いが一緒にいて楽しいと思える関係性を指すものであり、「いじめられないように」「周りから指さされないように」とマイナスを避ける手段として作るものではありません。

保護者さまが「友達はできた?」などの声掛けをすると、お子さまは「友達をつくらなきゃ!(お母さんやお父さんに心配をかけてしまう)」とプレッシャーを感じてしまうこともあるため、自然に任せて見守る方が上手くいくことが多いです。

また、いじめたりからかったりされた場合は、いじめる側・からかう側が悪いのであり、友達が少ないことが問題なのではないということについても、折を見て保護者さまからもお話しできると良いでしょう。

「学校で一人で過ごしたとしても、お母さん/お父さんに心配をかけることはない」ということが分かれば、お子さまは友達を作らなければいけないというプレッシャーから解放され、学校でも伸び伸びと過ごせるようになります。お子さま自身が一人でいることに引け目を感じていると、いじめっ子たちの目にも止まりやすくなりますので、「堂々としていれば良い、孤独は悪いことではない」ということを伝えていくことが大切です。

また、中学校までは学力に関わらず、地域の子どもたち全員が1つの学校に集まるため、ギフテッドのお子さまと話の合うクラスメイトも見つけにくいのですが、高校からは学力レベルが同じくらいの子どもたちが集まるため、話の合うクラスメイトにも出会いやすくなります。

もし話の合う友達を早くに見つけたい場合は、中学校から私立校や中高一貫校を受験するのも一つの選択肢になります。中学受験の専門塾に通うことで、小学生の時点から学力レベルが同程度のお友達と出会うこともできますので、学力レベルが離れすぎているために友達が出来づらいと感じている場合は、中学受験を検討してみるのも良いでしょう。

また、同年代にこだわらず、趣味のサークルなどで年の離れた友達を作るのもおすすめです。公民館や市民センターなどの催しで気になるものがあれば参加してみるほか、セキュリティやプライバシーの面での配慮は必要ですが、インターネットを通じて趣味仲間を見つけるのも良いでしょう。(関連項目→33. 中学受験をすべきか悩んでいる

★もっと詳しく知りたい方にオススメの記事→中学受験でギフテッドの才能を最大限に生かす方法|準備のコツと成功のポイント | 発達障害・ギフテッド専門のプロ家庭教師 メガジュン (pro-megajun.com)

64. 学校のルールや先生の言うことに納得がいかない

高い知能を持つギフテッドのお子さまは、「物事を論理的に考えたい」という性質を持っていることが多いです。そのため、学校のルールや先生の言うことに論理的な矛盾があると「納得がいかない」と感じて言うことを聞かなかったり、ストレスを溜めてしまったりすることがあります。

こうしたお子さまの場合、保護者さまとしては、ルールをそのまま鵜吞みにせず「なぜなのだろう?」と批判的に捉えられるというお子さまの良さを認めてあげたいと思う一方で、「ルールを守って周りと上手くやってほしい」と感じる場面もあるかと思います。

実際のところ、世の中は必ずしも論理的な正しさだけで動いているわけではありません。私たちの社会には根拠の無いルールが溢れていますし、非合理的な感情によって、合理的な選択が覆されてしまう場面なども往々にしてあります。

そんな時にギフテッドのお子さまが「論理的に正しくない」といつも反抗してしまうと、社会性が無いと周りに思われてしまうだけでなく、お子さま自身が常に強いストレスを感じることになり、社会の中で生きていくのがしんどくなってしまう可能性もあります。

そこでギフテッドのお子さまに必要となるのは、“折り合いを付ける”という能力です。「論理的な正しさ」と「現実」の間にあるギャップに目を向け、「論理的な正しさ」だけでは世の中は回らないと理解すること――すなわち、自分自身の中にある信念(論理的に考えること)は大切にしつつも、論理的に正しくない出来事も現実には存在するということを受け入れていく必要があります。

また、ギフテッドのお子さまは、周りの人間も自分と同じように論理的に考えて行動できるはずだと心から信じていることが多く、そのため、論理的ではないルールや人の振る舞いに直面したときに、失望したりストレスを感じたりしている場合が多くなっています。ですが、ギフテッド(IQ130以上)の人の出現率は人口の2%と言われており、お子さまのように論理的に考え行動できる人は決して多くはありません。

ですので、この「周りの人間は、みんな自分と同じように論理的に考えて行動できるはずだ」という前提を取り除いてあげることが、ギフテッドのお子さまが周りと折り合いが付けられるようになるためには非常に重要なポイントとなります。

「周りの人たちは、必ずしも自分と同程度に論理的に考えることができるわけではない」と分かると、ギフテッドのお子さまは周りに過度に期待せず、「自分は自分」「周りは周り」と割り切って行動できるようになり、「現実はこんなものだろう」という折り合いも付けられるようになっていきます。

以下では、先生が理不尽なルールを押し付けてくる(=授業の課題が終わった後、教室で静かに読書をしていたら怒られた)という場合を例に用いて、“折り合いを付ける能力”の伸ばし方について解説していきます。

①相手が理不尽な行動を取る理由を考える

授業中に出された課題を早く終えられたので、自分の席に座って静かに読書をしていたら先生に「勝手なことをするな」と怒られてしまったとします。この場合、
 

・やるべき課題は既に終わっている
・静かに自分の席で本を読んでいるだけであり、周りに迷惑を掛けているわけではない  
・「周りの子に教える」「追加で課題を出す」など、先生から読書以外にやるべきことについて指示があったわけではない


ということから、「時間を無駄にしないために読書をする」というお子さまの判断は論理的に正しく、「勝手なことをするな」と怒る先生の指示は理不尽であると言えます。

この場面においてギフテッドのお子さまは「先生はなんて理不尽なんだ!」と強い憤りを感じているはずですが、ここでお子さまに「論理的な正しさ」の反対にある「現実」に目を向けてもらうために、“なぜ先生が「読書をするな」と怒ったのか”を考えさせるのが第一のポイントとなります。

例えば、「先生の言うことは確かに理不尽だね。じゃあ、なんで先生はそんな理不尽なことを言うんだろうね?」と問いかけてみると、お子さまは論理的な正しさ以外の視点でこの事象を考えることになります。先生が「勝手なことをするな」と言った理由を考えてみると、

・授業中は、教科書・ノート・文房具以外のものを出してはいけないというルールがあるから
・勉強以外のことをしてほしくない、なぜなら自分の言うとおりに行動してほしいから
・一人が読書をすると、みんな読書を始めてしまうかもしれないと思ったから


などが挙げられると思います。

これらはいずれも“感情”を軸にした理由ですので、論理的に反論することができます。例えば「授業中は、教科書・ノート・文房具以外のものを出してはいけないというルールがあるから」に関しては、「手遊びなど勉強以外のことをせず、授業に集中できるようにするのがそのルールの目的であり、既に課題が終わっている今回の場合においては意味をなさない」と反論することができます。

それでも先生が、上で挙げたような理由を基にして「勝手なことをするな」と怒るのは、先生が論理ではなく感情で動いているからに他なりません。このように、「先生なりの理由を考えさせる→それらが論理的思考ではなく感情に基づくものである」と気付かせるというプロセスによって、ギフテッドのお子さまは「先生だからといって、必ずしも論理的に考え行動できるわけではない」という現実を理解できるようになります。

②理不尽なルールでも「あった方が良い場合」を考える

「①相手が理不尽な行動を取る理由を考える」をとおして、お子さまが“世の中の人は、必ずしも自分のように論理的に考えることができるわけではない”ということに気付くことができたら、次に、理不尽なルールもそれなりに必要な場面があるということの理解へと進みます。

上述の例では、お子さまは「先生は論理ではなく感情で動いている」ということに気付くことができました。ここから導き出されるのは、先生だけでなくクラスメイトも同様に、論理ではなく感情で動いている可能性が高いということです。つまり、大人である先生さえ“感情>論理”なのであるから、精神的に未熟な子どもの場合はさらに“感情>論理”で行動するであろうという予想ができる、ということになります。

したがって、例えば、

・授業中は、教科書・ノート・文房具以外のものを出してはいけない


というルールは、勉強道具以外をしまうことによって、手遊びなどをせず授業に集中できるようにすることが目的ですが、このことを理解できているクラスメイトは非常に少数であると考えられます。

そのため、もしこのルールに「ただし、課題がすべて終わった場合はこの限りではない」という例外を作った場合、多くのクラスメイトはルールの目的を理解できていないため、「遊び道具を出したい→課題が終われば遊び道具を出せる→とにかく課題を終わらせれば良いんだ」と考えて答えを丸写ししたり、適当に解答を書いて課題が終わったことにしたりするかもしれません。

ですので、ルールの目的を理解できない子どもたちにルールを守らせるためには、「授業中は、教科書・ノート・文房具以外のものを出してはいけない」というルールを一律的に運用するしかありません。つまり、論理的に考えることが苦手な子どもたちがいる状況においては、ルールを目的的に考えず、一律的に運用する方法はある程度意味があると言えます。

また、そういった論理的に考えるのが苦手な子たちがいる教室の中で、ギフテッドのお子さまが課題が終わったからと(=論理的な根拠に基づいて)読書をしていていると、ルールの目的が理解できてない(=論理的に考えるのが苦手な)子どもたちは、「○○さんは読書をしている!ズルいじゃないか」、あるいは「自分も読書をして良いはずだ」と考えるようになり、クラスの規律が乱れてしまう可能性があります。

このように、一見理不尽に見えるルールについても、「論理的に考えられる人間ばかりではない」という前提に立つことによって、ある程度意味があり、機能を果たしているということに気付くことができます。

ギフテッドのお子さまは、誰もが自分と同じように論理的に考えることができ、ルールを作らなくても各々がケースバイケースで判断すれば良いと考えていることが多いです。しかしながら、世の中においてケースバイケースで判断できるような論理的思考力を備えている人は少数であり、それ故に一律的なルールが必要になるということをギフテッドのお子さまは理解していく必要があります。

そのためには、上述のように、「もしルールが無かったら」「例外を作ったら」と仮定し、確かにそのルールが一定機能していることをお子さまに気付いてもらうようにすると、ギフテッドのお子さまも理不尽なルールに対してある程度理解できる場合が多くなっています。

③自分なりの落としどころ・折衷案を見つける

①と②のプロセスを経ることで、ギフテッドのお子さまは、周りの人の論理的思考力はそれほど高くないことに気付くことができ、ルールはある程度理不尽であっても仕方無いことや、ルールや周りの人間を変えていくのは難しいということも理解できるようになります。そのため、「ルールがおかしい、無くすべきだ」という主張や憤りはこの時点でかなり落ち着くことが多くなっています。

一方で、理不尽なルールが存在する理由を理解できるようになったとしても、お子さまがそのルールに従って行動すべきかどうかは別の問題です。

例えば、
 

(ア)周りに合わせてルールを守る(=課題が終わっても読書をしない)
(イ)自分に必要のないルールは守らない(=課題が終わったら読書をする)
(ウ)例外を先生に認めてもらうよう交渉する(=課題が終わったので読書をして良いか、先生にその都度確認する)


などが例として挙げられますが、(ア)(イ)(ウ)はそのいずれかが絶対に正しいというものではありません。

「時間を無駄にしたくない」という思いが強いお子さまの場合は(イ)を選択することが多いでしょうし、「波風を立てたくない」というタイプのお子さまは(ア)を選ぶかもしれません。粘り強く交渉できるお子さまは(ウ)を選んでも良いですし、相手の先生の性格に応じて(ア)~(ウ)を使い分けるのも良いでしょう。

①②のプロセスの中で、ルール(あるいは他者)を変えることが難しいことを理解したお子さまにとって、自分にとってより良い選択肢を見つけていくことは、まさに“折り合いを付ける力”であり、ギフテッドのお子さまがこれから生きていく上で非常に重要な能力と言えます。

ギフテッドのお子さまは、論理的な正しさこそが絶対的な正義であり、それに反するルールを無くしたいと考えていることが多いのですが、これまで述べてきたように、そのようなルールを一切無くしていくのは現実的ではありません。

「理不尽なルールを無くすことはできない」という現実を受け入れつつも、一方で自分のストレスを軽減するために自分の認識や行動を変えていくことが「折り合いを付ける」ということになります。この力を伸ばしていくことを目指して、ご家庭ではギフテッドのお子さまとの対話やサポートに取り組んでいただければと思います。

65. 反復練習を嫌がる

パターン①:反復練習は面倒くさいだけで、意味が無いものと思っている

基本的に反復練習は面倒くさいものです。それでもなぜ大人が「反復練習しなさい」と言うのかといえば、何度も練習することで知識が定着することを私たち大人は知っているからです。ですので、「面倒くさい」という感情よりも、「知識が定着した方がメリットが大きい」ということが実感できれば、子どもたちも前向きに反復練習に取り組めるようになっていきます。

反復練習の効果をすぐに実感することは難しく、また、効果が表れていてもお子さまが自覚できていないことも多いため、「ちゃんと練習したから点数が上がったね」など周りの大人が言葉で伝えて、「反復練習には意味がある」とお子さまが感じられる機会を積極的に作っていくことが大切です。

その際のポイントは、最初は少ない練習量や易しい内容から始め、できるだけすぐに効果が表れるような低めのハードル(スモールステップ)から挑戦させてあげることです。いきなり高いハードル(例:テスト範囲の英単語を全部覚える 等)をクリアしようとすると、目標が達成できず、お子さまは逆に「反復練習をしてもしなくても一緒だ」と思ってしまうかもしれません。また、そもそも反復練習の量も膨大になるため、試してみる前に面倒くさくなってしまうお子さまも多いことでしょう。

英単語を覚える場合であれば、お子さまの能力に応じた単語数(3~5単語程度。うち1~2単語は既に覚えかけている単語があるとさらに良い)の小テストを課し、反復練習の量もお子さまの能力に応じて授業中と宿題とで各5回ずつなど、ごくごく簡単で負荷の低いもの(とはいえ、練習しないと覚えられないもの)から始めましょう。

「反復練習したら点が上がった」という経験が一度でもあるのと無いのとでは、反復練習に対する意識が格段に違ってきます。反復練習で点が上がるという経験がさらに積み重なると、やがてお子さまは「反復練習には意味がある」と感じて自主的に取り組めるようになっていきます。

「反復練習には意味がある」と感じるためのきっかけ作りが最も重要になりますので、『まずは低いハードル(スモールステップ)から』を合言葉に実践していただければと思います。

パターン②:反復練習せずとも習得できている

生まれつき知能が高いお子さま(ギフテッド児など)の場合は、反復練習をしなくても計算ができたり、漢字を覚えられたりします。基本的に反復練習は知識を定着させるために行うものですので、既にしっかりと知識が定着している以上、「練習しなくてもいいじゃないか!」というお子さまの意見は筋が通っています。

このような場合は、

①今は覚えているかもしれないが、長期記憶として定着させるためにはたくさん練習した方が良いこと
②もし練習しない場合、意欲や関心の面で成績が下がったり、先生に叱られたりするかもしれないというデメリットを受け入れる覚悟があるか


の2点からお子さまと話し合うと良いでしょう。

①については、今の時点では記憶が新鮮でしっかり覚えられていることでも、時間が経つと徐々に忘れてしまうことを説明し、たくさん練習することで忘れにくくなったり、大人になってからも思い出せたりするという意義があることを伝えましょう。実際に、習ってから1か月後にテストをしたら忘れていたというような場面があれば、「習ってすぐは覚えていられたけど、時間が経つと忘れちゃうよね。反復練習をしておくと、忘れにくくなるよ」などとアドバイスしてあげると良いでしょう。

この際、「だから反復練習しなさいって言ったでしょ!」というようにお子さまを責めるような言い方をする必要はありません。論理的に考えられるお子さまの場合は、感情的になるよりも論理的に話した方が伝わりやすいため、この点についても意識していただければと思います。

②については、漢字や計算の練習をしないことから生じるデメリットを伝え、「覚えているから練習しない」という選択をお子さまが取る以上、それによって生じるデメリットも受け入れる必要があることを説明しましょう。もちろん、反復練習が無意味であるにもかかわらず、それをしないことで怒られるというのは理不尽ではあります。ですが、残念ながら世の中は理不尽なことだらけであり、子どものうちから清濁を併せ呑む経験をすることも大切です。

特にギフテッドのお子さまの場合は、これからの人生において、周りのレベルに合わせなければならないという点での困難やストレスを感じることが多くなります。お子さまの言い分が正しいことは認めてあげながらも、正しさだけでは世の中は渡れないことを子どものうちからから少しずつ学んでおくことが大切です。

また、このケースにおいては、「反復練習をしないと覚えられない人がほとんどである」ということにお子さまが気付いていないこともあります。世の中には、生まれつき記憶力が高く、一度見ただけで覚えられる人もいれば、何度も練習しないと覚えられない人もいます。

もしお子さまが一度見ただけで覚えられるタイプである場合は、「世の中の平均的な能力の人は、これくらいの練習が必要なのだ」ということを知るためにも、身を持って反復練習をしておくことも大切であると伝えても良いでしょう。

なお、①②のような長期的・俯瞰的な視点からの説明は、小学生くらいのお子さまには難しい内容のように感じますが、ギフテッドのお子さまであれば問題無く理解できますので、お子さまの発達段階や知能レベルに合わせて説明していただければと思います。

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66. 文字を手書きすることを嫌がる

要因①:「書くことがしんどい」と感じている

手書きを嫌がるお子さまに、字を書きたくないと感じる理由を聞いてみると、「手が疲れる/しんどい/だるい」という言葉が返ってくることが多いのではないでしょうか。ですがこの場合、お子さまは手を動かすこと自体が本当にしんどいと感じているのではありません。

というのも、ゲームや手遊びをしているときにお子さまが「手が疲れた」と発言することはほとんど無いと思います。したがって、お子さまの「しんどい、だるい」という発言は、手書きすること自体がしんどいと感じているのではなく、勉強に対する拒否感ゆえに発せられているものと考えられます。つまり、楽しいこと(ゲーム、手遊び)であれば「疲れた」とは感じず、お子さまにとって楽しくないこと(勉強)であるがゆえに「疲れた」という発言をしてしまっているということになります。

こういった心理的な背景を踏まえると、「疲れるから」といって手書きを嫌がるお子さまに対しては、勉強に対する心理的なハードルを下げてあげることが非常に効果的であることが分かります。“心理的なハードルを下げること=勉強が楽しいと思えること”ですので、お子さまが勉強を少しでも楽しいと思えるようなきっかけを作ってあげるようにしましょう。具体的には、

①「自分にも勉強ができる」という自信を持つ
②勉強をすると良いことがある(周りから褒めてもらえる、点数が上がる等)


の2つが挙げられます。

「①『自分にも勉強ができる』という自信を持つ」については、勉強に対して自信が無く、「自分は勉強が苦手だ」と思っているお子さまに対して特に効果的な方法になります。自分は勉強が苦手だと思っているお子さまは、「勉強したってどうせ点数は上がらない」「どれだけ勉強を頑張っても効果は現れないだろう」と心のどこかで感じていて、机に向かおうというモチベーションが低くなってしまっている状態にあります。自分はできる!という前向きな気持ちが無いために、本当は頑張ればできることでも、できないと思い込んで頑張れないケースもあります。

こうしたお子さまの場合は、「自分もやればできる」という自信を付けるために、簡単な課題からチャレンジし、やればできるという実感を持ってもらうことから始めます。例えば、漢字の書き取りであれば、日常生活で馴染みがある語句を中心とした小テストを作成し、敢えて点が取りやすい状況にしてあげます。

小テストで点が取れたら「習ったばかりの語句も多いけれど、書き取り練習のお陰で点が取れたね!」としっかりと褒め、“書き取り練習には意味がある”“練習すれば自分もできるようになる”とお子さまが自覚できるような声掛けをしていきましょう。テストで点が取れたり、そのことで褒められたりすると、お子さまは少しずつ「勉強って楽しいかも?」「自分にもできるかも?」と思えるようになり、勉強に対して前向きに取り組めるようになります。

「②勉強をすると良いことがある(周りから褒めてもらえる、点数が上がる等)」については、勉強は必ずしも苦手ではないものの、書き取り練習などをコツコツと頑張ることを嫌がってしまうお子さまに効果的です。このようなお子さまは、書き取り練習によるメリットが実感できておらず、「面倒くさい、しんどい」という気持ちが勝ってしまっている状態にありますので、しんどさ以上にメリットがあることを実感してもらうことが大切です。

指示された課題がこなせたらまずはしっかりと褒め、場合によっては「1日のゲームの時間の上限をプラス30分してあげる」などのご褒美を設けても良いでしょう。また、しっかりと書き取り練習をした後にテストの点が取れていたら、「書き取り練習したから点が上がったんだね、すごい!」のように、『テストの点が上がった』という結果と『書き取り練習をした』という過程が結びついていることにお子さまが気付けるように声掛けをしてあげると良いでしょう。

要因②:書字障害(ディスグラフィア)

書字障害(ディスグラフィア)とは学習障害の一つで、文字を書くことに困難がある状態を指します。字がマス目からはみ出してしまったり、筆圧が極端に弱かったり、何度も練習しても文字の形が覚えられなかったり、鏡文字になってしまったりと、困難の現れ方は人によって異なります。

書字障害を持つお子さまの字が汚くなってしまうのは、本人の努力が足りないせいではありません。にも関わらず、「もっと練習しなさい、きれいに書きなさい」といつも叱られていると、字を書くこと自体が嫌いになってしまいます。また、単純な反復練習を繰り返しても書字障害は改善しませんので、ストレスが溜まって学校に行きたがらなくなったり、「何回練習しても覚えられないなんて、自分はダメなんだ」と自己肯定感が下がってしまったりします。

書字障害のあるお子さまは、字を書くだけでも人一倍エネルギーを使っています。書字障害の原因の多くは、手と目の協調(目で見た情報と手の動きを連動させる能力)の弱さ、あるいは音韻処理(文字と音を結び付ける能力)の不全と呼ばれています。平仮名を一文字書くのも一苦労である状態を理解し、「字が書けた」ということだけで充分であると捉えましょう。「一生懸命書いたんだね」というような声掛けを行い、本人の努力を認めてあげることがとても大切です。

書字障害の具体的な改善方法としては、

○大きなマス目のノートを使う
○一マスの中が色分けされているノート(カラーマスノート)を使う(参考:小児科医と言語聴覚士が考えたノート。文字を正確に書き写せます。 | tobiraco(トビラコ)
○画用紙に大きく字を書いて、塗り絵や飾りつけをしながら文字の形に親しむ
○背中に文字を書きあって、文字の形と手の動きを学ぶ


などがあります。通級指導教室では個々に合わせた指導を受けることができるほか、療育施設ではこれらのトレーニングに加え、手と目の協調を鍛えるビジョントレーニングなどによって書字障害の改善を図る場合もあります。

また、大人になるにつれ文字を手書きする機会は減っていきますので、文字を書くことのストレスが大きい場合は、無理に改善しようとせず、学校でもキーボード入力に切り替えるなどの対応を検討することも大切です。

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要因③:「手書きにこだわっても意味が無い」と主張する

大人になったらどうせパソコンやスマホで文字を入力するのだから、手書きにこだわるのは意味が無いはずだ、と主張するお子さまもいらっしゃいます。確かに一理あるのですが、一方で「漢字を書ける人は、作文能力も高い」という研究結果もあります。(参考:漢字書ける人、文章も上手 京都大学グループが中高生分析「手書き教育大切」|文化・ライフ|地域のニュース|京都新聞 (kyoto-np.co.jp)

もちろん、闇雲に難解な漢字を覚えることには意味が無いかもしれませんが、漢字の成り立ちを知ることや、場面に合わせた熟語を記憶の中から引き出して使いこなすことは、単に漢字テストで良い点を取ること以上に意義があります。

また、ChatGPTの登場により、人間よりもAIの方が文章作成に長けている可能性が示唆されています。「パソコンで変換できるから漢字は覚えなくてよい」という考え方の先には、「AIが作文してくれるから、人間は文章を書けなくてよい」という主張もあり得るでしょう。

人間は、言葉で考え、言葉で表し、言葉で意思疎通する生き物です。言葉をすべて機械に任せてしまうとしたら、人間が人間である所以(アイデンティティ)はどうなるのでしょうか?手書きにこだわる意味、ひいては自分で文章を紡ぎ出す意味について、お子さまとじっくり話し合ってみるのも良いかもしれません。

また、もし中学受験を考えておられる場合は、漢字のとめ・はね・はらいが重要な得点ポイントとなります。男子校などでは細かいところまで見られない場合もあるようですが、とめ・はね・はらいができていないと減点する学校も5~6割はあるとされています(参考:『進学レーダー(2020年11月号)』みくに出版)。そのため、手書きであることが実社会で役に立とうが立たまいが、中学受験をする場合は否が応でも漢字の書き取り練習は必須と言えます。

いくら記憶力に優れてお子さまであっても、とめ・はね・はらいといった細かい部分について完璧に定着させようと思えば、実際に手を動かして書き取り練習をするしかありません。中学受験する場合は、そのことをお子さまにもしっかりと説明し、とめ・はね・はらいなど細かい部分にも気を配りながら、コツコツと漢字の書き取り練習に取り組んでいきましょう。

67. 授業が簡単過ぎて退屈だと言う

ギフテッド(IQ130以上)のお子さまの場合、小中学生までの授業は簡単過ぎて退屈に感じることが多いと思います。また、ギフテッドではなくとも、IQ120程度のお子さまで、小学校低学年までの内容が退屈過ぎて苦痛という方はかなりたくさんいらっしゃいます。

あるいは、授業の内容について「なぜ?」と疑問に感じて先生に質問したら、「それはまだ習わない内容だから…」と答えてもらえないなどのケースもあります。先生から質問に答えてもらえなかったり、答えをはぐらかされたりすると、お子さまは「質問してはいけないのだ」と感じて、「なんでそうなるんだろう?」「いろいろな前提が考えられるのに、なぜ無視するんだろう?」といったモヤモヤした気持ちを抱えたまま授業を受けることになってしまいます。

お子さまは本当に知りたいことについて学べないためにストレスが溜まり、「授業がつまらない、学校に行きたくない」と発言したり、あるいは授業を聴かず勝手に別のことをしたりするなどの行動を取ってしまうことがあります。このような場合の対策としては、
 

①先取り学習をする
②自分の興味があることについて、調べたり本を読んだりする
③疑問については予習で解消しておく
④周りに合わせる


などが挙げられます。このうち「④周りに合わせる」は消極的な選択であり、お子さまの知的好奇心を伸ばしてあげるためにもできるだけ避けたいものとなります。

「①先取り学習をする」については、教科書の先の内容をどんどん進めていくというものになります。日本には飛び級制度はありませんが、教科書の内容を周りよりも早く終わらせることができるため、受験なども有利に進めることができるでしょう。教科書の先取りを好むタイプのお子さまはIQ110~120程度の方に多く、テストで良い点を取れることや、教科書を周りより早く進めることをゲーム感覚で楽しめるお子さまが多くなっています。

一方、IQ130以上のお子さまになってくると、教科書の内容をただ習得する(覚える)だけだと退屈で、「教科書を先取りすることに意義を感じない」というお子さまもいらっしゃいます。こうしたお子さまの場合は、答えの決まっている教科書的な問題よりも、哲学や社会課題、未解明の物理理論など“答えの無い問い”を好むため、「②自分の興味があることについて、調べたり本を読んだりする」といったやり方の方が楽しく勉強できる場合があります。

こうしたお子さまの場合は教材や指導者を見つける必要がありますが、お子さま自身がインターネットなどで気になる書籍や先生を見つけてくることもありますので、保護者さまはできる限りサポートしてあげましょう。

「③疑問については予習で解消しておく」については、授業の内容に関する疑問について先生に答えてもらえず、お子さまがストレスを感じている場合の解決方法になります。例えば、「『1』の次はなぜ『2』なのか」という疑問をお子さまが感じているときは、学校の授業で「10までの数」の単元を習う前にご家庭で「『1』の次は、実は『2』じゃないんだよ」と数直線などを示しながら教えてあげると良いでしょう。その際には、小数や分数、理解できるのであれば無限や極限など、小学1年生の範囲を越えた内容もどんどん教えてあげると良いでしょう。

ご家庭で疑問を解決しておけば、「学校ではここまでしかやらないんだな」と理解した上で学校の授業にも挑むことができ、「疑問に答えてもらえない」というストレスを大幅に軽減することができます。なお、ギフテッドのお子さまの質問はかなり鋭く、本質を突いたものも多いと思います。ご家庭だけで答えるのが難しいと感じる場合は、ギフテッド教育に知見のある家庭教師などを利用することをおすすめします。

また、先取り学習や自主的な探究活動を授業中に行う場合は、学校としっかり話し合い、学校と家庭で方針をすり合わせておくことがとても大切です。先生の中には、「クラスの子どもたちがみんな一斉に同じことをやる」ことにこだわる人もいます。この指導方針の是非はさておくとして、お子さまがやる気を出して自分なりの勉強をしようとしたときに先生に怒られてしまうと、お子さまの知的好奇心を削いでしまうだけでなく、自信の喪失や自己肯定感の低下にもつながります。

自主的な学習に取り組みたいときは、まずは保護者さまと先生とで話し合い、ご家庭の希望を伝えつつ学校側の指導方針も確認していきましょう。「皆と同じ課題が終わったら自主学習しても良い」「生活や総合の時間はグループ活動が多いので、自主学習せず参加してほしい」など、学校側の要望もあるはずです。お互いの思いをすり合わせながら、お子さまにとってより良い方法を見つけましょう。

なお、保護者さまは「この子の知的好奇心を満たしてあげたい」という思いが軸にあり、学校側は「集団生活に馴染んでほしい、社会性を身に着けてほしい」という思いが軸にあることが多いため、場合によっては意見が対立してしまうかもしれません。ですが、知的好奇心と社会性はどちらもお子さまにとって不可欠なものであり、そのバランスを取ってあげるのが周りの大人の役目です。学校とむやみに対立するのではなく、お子さまがこれから生きていく上で身に付けてほしい力がどんなものか、冷静に話し合えるように心掛けていただければと思います。

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68. 「なぜ?なぜ?」と質問が多くて、全てに答えられる余裕が無い

ギフテッドのお子さまは、知的好奇心がとても旺盛です。そのため、「あれはなぜ?これはどうして?」と保護者さまに絶え間なく様々な質問をすることがあります。

保護者さまとしては、お子さまの疑問にできるだけ答えてあげたいと一生懸命向き合われる方が多いのですが、質問の量があまりにも多く、また、大人でも調べないと分からないようなことを質問されることが多いため、「時間が足りない」「ついついおざなりに答えてしまう」というお悩みの声をお伺いすることがあります。

以前にプロ家庭教師メガジュンをご利用いただいたお子さまの場合は、学校から帰宅するやいなやお気に入りの科学図鑑を開き、1ページずつ事細かに保護者さまに「これはどういうこと?」「○○は△△という意味で合ってる?」と質問をされていたそうです。保護者さまはお仕事もされていたため、お子さまの質問に答える時間が十分に確保できず、答えられないことに申し訳なさや後ろめたさを感じていたとのことでした。

一般的なご家庭では、こうしたギフテッドのお子さまの疑問や質問に全て答えきることは非常に難しいため、お子さまの大量の質問にお困りの場合は、ギフテッドのお子さまの指導に長けている塾や家庭教師を利用することをおすすめします。

例えば、週1回家庭教師を利用する場合であれば、お子さまに1週間分の質問を書き溜めておいてもらい、授業のときに先生に答えてもらうなどすると、お子さまの知的好奇心を無理なく満たしてあげることができます。

もちろん、質問が思い浮かんだらその場ですぐに答えてあげることも大切ですが、いつでも・どこでも、すぐに誰かが答えてくれるという状況を用意するのは大変であり、現実的ではありません。そこで、1週間分の質問を溜めておいて答えるという方法を通して、お子さまにはある程度“待つこと”を覚えてもらうことができるほか、質問についてすぐに答えが出ないことによって、お子さまが自分で考えたり調べたりする習慣を身に付けることもできます。

また、お子さまの質問の量が多い場合は、1回の授業では答えきれないこともあります。その際には、全ての質問に答えきろうと慌てて回答するのではなく、1問1問の回答の質を高め、「全ての質問には答えてもらえなかったけど、先生は必ず面白い答えをくれる」とお子さまに感じてもらい、「来週の授業も楽しみだな」と思ってもらうことを優先します。

というのも、時間が無いからといって慌てて回答してしまうと、どうしても話が表面的になってしまいます。すると、せっかく1週間待っていたにもかかわらず中途半端な答えしか得られないため、お子さまは「面白かった、先生に聞いて良かった」と感じにくくなり、次の授業に対する期待感も薄れてしまうことになります。
ですので、ギフテッドのお子さまの質問に答える場合は、量よりも質を優先し、お子さまが先生に対して「この先生は面白い、また授業を受けたい」という気持ちを持ち続けられるようにすることが大切です。

また、「なぜ?なぜ?」と質問が多いお子さまは、知識をインプットすることは自発的にできているものの、吸収した知識を体系立てて整理することや、誰かに伝えたり、紙に書いたりしてアウトプットすることができていない場合があります。

知識を整理したり、アウトプットしたりするための力を付けていくためには、

①各回の授業にテーマを設ける
②テーマに沿った調べ学習やディスカッションを行う


といった授業の進め方が効果的です。

まず、「①各回の授業にテーマを設ける」については、例えば、「地震・岩石・地層」「天気・天体」などのテーマを設定して、その回の授業ではそれに関連する質問や調べ学習を行うというものになります。

テーマごとに学ぶことによって、知識の整理や体系化がしやすくなるだけでなく、テーマを絞ることで、そのテーマに関する内容を深く掘り下げることができるため、様々なジャンルの知識を広く浅く学ぶよりも、お子さまの知的好奇心をより満たすことができます。さらに中学受験を目指す場合であれば、理科・社会の出題分野ごとにテーマを設定することで、中学受験の対策とすることもできます。

「②テーマに沿った調べ学習やディスカッション」については、プロ家庭教師メガジュンで実際に取り組んでいる授業の方法となります。あるテーマについてお子さまと講師が各自で調べ、授業ではお互いに調べた内容を発表します。また、発表するだけでなく、お互いが発表した内容についてディスカッションを行い、議論を通じてさらに理解を深めていきます。

この形式の授業だと、お子さまが楽しんで参加できるだけでなく、「調べる力」「まとめる力」「伝える力」「質問する力」をバランス良く伸ばすことができ、ギフテッドのお子さまにありがちなインプットに偏った学習や、乱読による知識のバラつきを、本人の知的好奇心を削ぐことなくサポートすることができます。

ご家庭だけでギフテッドのお子さまの「なぜ?なぜ?」という質問に答えきることは非常に難しく、また、インプット・アウトプットの力をバランス良く伸ばすことも簡単ではありません。ですので、ギフテッドのお子さまに関してこうしたお悩みをお持ちの場合は、ぜひ専門の塾や家庭教師を利用していただければと思います。

69. 授業中に出される課題がすぐ解けるので、時間を持て余してしまう

ギフテッドのお子さまや、ご家庭や塾で先取り学習をしているお子さまの場合、学校の授業で出されるプリントなどの課題がすぐ終わってしまって時間を持て余してしまうことがあると思います。この場合の対策方法には、「①周りの子に教える」「②先取り学習をする」「③自分なりの探究活動をする」などが挙げられます。

解決策①:周りの子に教える

私たちがまずお勧めしているのは、周りの子が解けずに困っていたら助けてあげるということです。人に教えることで教える側の理解もより深まるため、お子さま自身の学習にとっても有益ですし、何より協調性が育ちます。ただ、お子さまが自ら「教えてあげる!」と言うのは難しかったり、「偉そうだ」と周りに敬遠される原因になったりもしますので、先生から「早く解けた子は周りの子に教えてあげてね」と声掛けしてもらうなどの方法が良いでしょう。

最近では、授業中に解法をみんなで共有する時間などもありますので、そうした取組も活用しながら、能力を自分だけのために使うのではなく、周りのために使うことを学んでいけると良いでしょう。

解決策②:先取り学習をする

授業中の課題が早く終わったら、さらに先の内容を自習するというのも一つの方法になります。ただ、先取り学習の場合は「71. 先取り学習をしたいが、学校にダメだと言われた」でも解説したとおり、学校側が難色を示すことも多くなっています。

お子さま本人や保護者さまは知的好奇心の充足を、学校は社会性や協調性の成長を重視するため、両者の価値観がぶつかりやすく、家庭と学校の距離が開いてしまうこともしばしばあります。

先取り学習によってお子さまはどんどん先に進めて楽しいと感じられる一方で、クラスがまとまりづらくなったり、「あの子だけズルい」という見方をされたり、あるいはお子さま自身が勉強をできない子を見下してしまったりといったデメリットも想定されます。教室で先取り学習をする場合には、

・必ず授業中の課題が終わってから取り組む
・周りにつまずいている子がいたら、先取り学習よりも教えてあげることを優先する
・自分より進度が遅い子を見下さない


といった約束を家庭内で徹底し、学校の先生にもその旨を伝えるなどして、お子さま自身やクラス全体の協調性を育むことにも十分配慮するようにしましょう。

人間は社会的な生き物であり、自分一人で生きていくことはできません。「うちの子は(自分は)勉強ができるから良いのだ、他の子は関係無い」と考えるのではなく、一緒に成長していくことが子どもたちのためであることをご家庭でもご理解いただき、学校とも歩み寄りながら解決策を見つけていただければ嬉しく思います。

★オススメの実例コラム→<プロ家庭教師メガジュンでの解決例#6:周りの子に教えるのを拒否するギフテッドのFくん>

解決策③:自分なりの探究活動をする

ギフテッドのお子さまの中には、「昆虫が好き」「宇宙物理に興味がある」「プログラミングを極めてゲームを作りたい」など独自の興味や関心を持っている方が多くいらっしゃいます。授業中の課題が終わってしまって時間を持て余す場合は、自分の関心のある分野について勉強を深めるのも良いでしょう。ただし、この場合も「解決策②:先取り学習をする」と同様に、学校との交渉の進め方が大切になります。

クラスの中で一人だけ昆虫の観察をしていたり、パソコンでプログラミングをしていたりすると、周りからは好奇の目で見られるでしょう。子どもたち同士では問題が無くても、周りの保護者から「あの子だけ特別扱いされている」と指摘されたり、先生から「周りと合わせてほしい」と言われたりする場合も多いと思います。

以前伺ったギフテッドのお子さまのケースでは、通級指導教室を特別に利用させてもらい、一部の授業では別室でそのお子さまの興味のある活動(このお子さまの場合はプログラミング)に取り組んでいたそうです。通級指導教室は、基本的に発達障害等の困難がある子どもたちのためのものであり、ギフテッドのお子さまが利用できるとは限りませんが、特性のある子どもたちへの理解が進んでいる学校ではそうした対応が可能である場合もありますので、一度相談してみるのも良いでしょう。

ただ、学力の向上や知的好奇心を満たすだけではなく、社会性をはぐくむこともお子さまにとっては非常に重要ですので、できれば「解決策①:周りの子に教える」のように、持って生まれた才能を他者のために使う経験を子どもの頃からさせてあげることをお勧めします。

★もっと詳しく知りたい方にオススメの記事→ギフテッド教育を学校で受けることはできる?日本・アメリカの実例を紹介! | 発達障害・ギフテッド専門のプロ家庭教師 メガジュン (pro-megajun.com)

70.小学生になったら難しい勉強が出来ると期待していたのに、思っていたものと違って落ち込んでいる

ギフテッドのお子さまは、保育所や幼稚園でのお遊戯や勉強の内容が簡単すぎて「もっと難しいことがしたい!」と訴えたり、周りのお友だちが幼すぎてつまらないと言ったりすることがあります。その際に保護者さまが「小学校に入ったらもっと難しい勉強ができるよ。周りの子もお兄さん・お姉さんになって、楽しくおしゃべりできるよ」と宥めることもあるかと思いますが、お子さまがその言葉を真に受け、小学校に期待しすぎてしまうケースがあります。

実際に小学校に入学してみると、勉強の内容は幼稚園に毛が生えた程度で、既に漢字が書けるお子さまでも平仮名の練習から始めなければいけませんし、掛け算や割り算ができる子でも数の数え方から教わります。また、周りの子が急に成長するわけでもなく、ギフテッドのお子さまからすれば相変わらず周りは幼稚に見えるでしょう。

「小学校に入ったら難しい勉強が出来るってお母さん/お父さんが言ったのに、全然違うじゃないか!」と怒ったり落ち込んだりするギフテッドのお子さまは非常に多く、我々への相談でもよくお伺いするお悩みとなっています。

対策としては、「①期待を持たせ過ぎない」「②学校は学問的なことを学ぶ場ではなく、『いろいろな人がいる』ということを知る場所であると割り切る」「③学校とは別の場所で知的好奇心を満たす」の3つが挙げられます。それぞれについて、以下で詳しく解説していきます。

対策①:期待を持たせ過ぎない

まず、「①期待を持たせ過ぎない」についてですが、幼稚園の段階でお子さまが明らかにギフテッドであり、小学校低学年の内容を既に理解していると考えられる場合、「小学校に入ったら(お子さまの知的好奇心を満たすような)難しい勉強ができる」というのはウソになってしまいます。

ほかの子どもたちにとっては小学校の勉強は難しいものですが、ギフテッドのお子さまにとってはそうではありません。お子さまが駄々をこねたり不機嫌になったりすると、何とか誤魔化してその場をしのぎたくなってしまいますが、保護者さまに対する信頼も失われてしまうため、安易に「難しい勉強ができる」と言ってしまうことは避けましょう。

対策②:学校は学問的なことを学ぶ場ではなく、『いろいろな人がいる』ということを知る場所であると割り切る

既に「小学校では難しい勉強ができるよ」と言ってしまっていたり、幼稚園の段階ではお子さまの知的レベルが把握しきれず、「小学校に上がればこの子も満足するだろう」と考えていたのに、いざ小学校に上がると「それでも物足りない!」となって困っているご家庭の場合は、「②学校は『いろいろな人がいる』ということを知る場所である」ということを説明してあげると良いでしょう。

学校は“勉強”をする場所ですが、教科書の内容を覚えてテストで良い点を取ることだけが“勉強”ではありません。クラスメイトと遊んだり喧嘩したりする中で、社会性を身に付けることも“勉強”の一つです。

また、先生の中には「皆と同じにしなさい」「ルールだから」と理不尽なことを言ってくる人もいるかもしれません。論理的な思考力に長けたギフテッドのお子さまであれば、矛盾に気付いて先生に反論し、「生意気だ」などとさらに理不尽に怒られる…などということもあるでしょう。

もちろん、論理的にはお子さまの方が正しいのですが、一方で世の中が正しさだけで回っているかと言えば決してそうではありません。幼稚園や保育所までは一定の正しさや正義に囲まれ、言わば温室のような状態で子どもたちは育ちますが、小学校、中学校と学年が上がるにつれて人間関係のしがらみや大人の事情というものが見えるようになり、子どもであっても「清濁併せ呑む」ことが必要になる場面も出てきます。

学校は社会の縮図です。大人になるまでずっと論理的・倫理的に正しい“温室”で育っていては、社会に出たときに不正義に耐えられず心が折れてしまいます。小学校から少しずつ温室の外に出て、社会の“正しくない部分”にも触れるようにしていきましょう。

お母さんやお父さんはお子さまの論理的な正しさを汲み取ってくれますが、そうではない大人も世の中にはたくさんいること、ギフテッドのお子さまに比べれば周りの子どもたちは幼く、思考力は未熟かつ、成長してもその差が完全に無くなることはないこと。ギフテッドのお子さまにとっては残酷な現実かもしれませんが、これから社会の一員として生きていくためには、目を背けずしっかりと受け止めて立ち向かっていく必要があります。

お子さまへの具体的な伝え方としては、「教科書の勉強だけじゃなくて、お友だちや先生とお話したり、遊んだりすることも勉強なんだよ」「おかしいと思うことがあったら、お母さん/お父さんに伝えてね。でも、お友だちや先生をあなたの思い通りにすることはできないよ」などが良いでしょう。一度話しただけではなかなか実感が持てず納得できないお子さまも、繰り返しお話しすることで、日々の経験も相まってやがて「確かにそうだな」と心の底から納得できる日がやってきます。

また、ギフテッドのお子さまは元々の理解力が高いため、ある程度抽象的な言葉や概念を使ってもしっかりと理解できます。ですので、子ども扱いしすぎず、物事の本質について言葉を尽くし丁寧にお伝えしていただければと思います。

対策③:学校とは別の場所で知的好奇心を満たす

ギフテッドのお子さまにとって、知的好奇心を満たすことは本能的な欲求に近く、我慢しなさいといって我慢できるものではありません。知的好奇心が満たされないとイライラしたり、ストレスが溜まったりしてしまう特性は「知性過度激動」と呼ばれ、ギフテッドの方に特有の困りごととして知られています。(関連項目→86. 原因③:ギフテッドの過度激動

こうした困りごとが顕著なお子さまの場合は、学校以外の場所でしっかりと知的好奇心を満たしてあげることが非常に重要です。難しめの本でも本人が欲しがる場合は購入したり、図書館に行って手に取らせてあげたり、大学や美術館・博物館などで開催されている大人向けの公開講座などに参加してみたりするのも良いでしょう。YouTubeなどでも自然科学や物理、化学、哲学などギフテッドのお子さまの知的好奇心を満たしてくれるような動画を視聴することができますので、様々なコンテンツを探して活用してみるのがオススメです。

<おすすめの教養系YouTubeチャンネル>
 ・WIRED.jp – YouTube…各界の専門家が視聴者からの質問に答えていくチャンネル。最近アップロードされたものの中では、人類学者でゴリラ研究の第一人者である山極寿一氏の動画などがオススメ。
 ・TED – YouTube…世界中の様々な分野の先駆者がプレゼンテーションを行う。日本語字幕をまとめたプレイリストもあり。日本人では、ロケット開発者の植松努氏などが登場。
 ・ナショナル ジオグラフィック TV – YouTube…世界の自然や歴史の謎に迫るドキュメンタリー。

また、大学などが実施するギフテッド向けのプログラムに参加してみるのも良いでしょう。代表的なものには、東京大学先端科学技術研究センターの中邑賢龍氏が中心となって運営されている「LEARN」があります。

LEARNは現在の学校教育とは違った学びを提供することをコンセプトにしたプロジェクトで、ギフテッドに限らず現状の学校システムに適応しづらい子どもたちに向けて、型にはまらない自由な学びを提供しています。

「500円で4時間家出する」「虫を探して夜通し散策する」などのユニークで刺激的なプログラムばかりで、子どもたちが本来持っている好奇心を目覚めさせてくれる非常に魅力的な内容となっていますので、関心のある方はぜひ一度参加を検討してみてはいかがでしょうか。(参考:LEARN (learn-project.com)

★もっと詳しく知りたい方にオススメの記事→【ギフテッドの不登校】才能ある子どもたちが抱える課題と解決策(浮きこぼれへの対応) | 発達障害・ギフテッド専門のプロ家庭教師 メガジュン (pro-megajun.com)ギフテッド教育を学校で受けることはできる?日本・アメリカの実例を紹介! | 発達障害・ギフテッド専門のプロ家庭教師 メガジュン (pro-megajun.com)

<プロ家庭教師メガジュンでの解決例#5:ギフテッドで学校がつまらないEさん>

小学1年生のEさんは、幼稚園の頃から宇宙に関する図鑑を読んだり、数学的なパズルを解いたりするのが大好きでした。話し方も大人びていて、周りの子とちょっと違うということには保護者さまも以前から気付いていました。

幼稚園ではたまに算数や英語の勉強の時間があったそうですが、Eさんは物足りず、保護者さまに「もっと難しい勉強がしたいな」と言っていました。保護者さまは「小学校に上がったらもっと難しい勉強ができるよ」と答えており、実際のところ、小学校に行けばEさんも満足するだろうと考えていたそうです。

ところが、小学校の勉強はEさんの期待から外れたものばかりで、周りの子がそれを「難しくなった」「宿題が大変だ」と言っているのもEさんは共感できません。Eさんは段々と学校がつまらなくなり、「学校に行きたくない」と口にすることも増えました。

保護者さまが私たちメガジュンの元にご相談いただいた際には、「学校に行かせるのが良いのか、それともいっそのことホームスクーリングにした方が良いのか…」と悩まれていました。そこで私たちは、「Eさんにとってホームスクーリングはもちろんメリットがあります。ですが、学校に行くことでしか学べないこともたくさんあるので、まずは学校に行くのが本当にしんどくて無理なのかどうか、しばらく様子を見ましょう。本人が『行きたくない』『体調が悪い』という日は迷わず休ませてくださいね」とお伝えしました。

私たちの授業では学校の教科書はさて置いて、Eさんが日頃本を読んで疑問に思ったことや、保護者さまが用意してくださったパズル集を題材にして、頭を柔軟に動かし、思考力や知的探究心を育てることを目的に取り組んでいきました。Eさんは私たちの授業をとても楽しみにしてくれていて、自分と同じ知的レベルの人と話したり、考えたり、調べ物をしたりするのが新鮮で刺激的らしく、「先生が一緒になって考えてくれるのが楽しい!」と仰っていました。

Eさんにとって講師が「一緒にいて楽しい人」となり信頼関係が築けた時点で、学校のことについても踏み込んでお話しすることにしました。「学校はどう?」と聞くとEさんは保護者さまから聞いていたとおり、勉強がつまらないことや先生が物事の本質を理解していないこと、周りの子が幼くて疲れることなどを話してくれました。そこで講師はEさんに、「『何で先生は教科書に載っていることしか話さないんだろう?』『どうしてお友だちはすぐに分からない!と投げ出しちゃうんだろう』って考えてみるのはどうかな?」と提案しました。

Eさんはしばらく考えた後、「先生には先生のルールがあるのかなあ。お友だちは、考える前に面倒くさくなっちゃうんだと思う」と答えてくれました。その観察眼に講師は感心して見せつつ、さらに次のように提案しました。

「先生のルールって何なのか考えてみると面白いかもしれないね。お友だちによって面倒くさいと感じるポイントや時間も違うかも。もっと観察すると面白いし、観察していると『なんでこの人たちは○○なの!』ってイライラする気持ちもマシになるんじゃないかな。もちろん、イライラしちゃうのは仕方ないし、しんどくなったら休めばいいけどね」

講師の提案は、先生やクラスメイトを観察対象として捉える、というものでした。そのままだと言葉がキツく聞こえてしまいますが、「社会の理不尽さを知る」「自分と合わない人と一定の距離感を持って付き合う」という意味では、Eさんにとって最適な提案だったと自負しています。

その後Eさんは、たまに学校を休むことはあるものの、それなりに周りと折り合いを付けながら登校できているようでした。週に1回の私たちの授業で知的好奇心を満たすことができるため、学校は学校で社会を知るところ、知的好奇心は家庭教師の先生に満たしてもらえばよい、という住み分けがEさんの中でできるようになり、保護者の方も当初はかなり心配されていましたが、私たちの授業を活用することでEさんならではの学びの形が作れたことに安心されていました。

71. 先取り学習をしたいが、学校にダメだと言われた

幼稚園の頃からひらがなやカタカナ、足し算・引き算の勉強を始めているお子さまの場合、小学校に上がってからしばらくは既に勉強したことの復習になってしまうため、勉強が退屈に感じることが多いと思います。また、発達が早いお子さまや知能指数が平均よりも高めなお子さまの場合も同様に、学校の勉強を持て余してしまうことがあります。

こうしたお子さまへの対応として、「教科書を先取りして勉強する」という方法があります。確かに、既に覚えているひらがなや、分かっている計算問題を繰り返し解くよりも、先の内容に進んだ方が効率が良く、中学受験の予定があれば受験にも有利であると考えるご家庭も多いと思います。

ただ、単純に「うちの子だけは授業の進度に合わせず、先取り学習をさせてほしい」と伝えても、学校側もすんなりと「良いですよ」とは言わない場合が多いと思います。学校は集団生活を学ぶ場でもあるため、一人だけ特別扱いすることはできないと言われることが多いと思いますし、それでは授業が成り立たないと言う先生もいるでしょう。

周りに迷惑をかけるものでもないのに、なぜ許可してくれないのだろう?と感じる保護者さまもいらっしゃるかもしれませんが、学校の言い分も全く間違っているわけではありません。というのも、先取り学習を許可してしまうと、クラス内での格差がどんどん広がってしまう可能性があるからです。

例えば、勉強が得意な子はどんどん先に進んでいる一方で、勉強が苦手な子はずっと最初の単元で止まっているという状況を想像してみるとどうでしょうか。勉強が得意な子がどんどん先に進んでいく様子を、勉強が苦手な子が間近で見てしまうと、「自分は勉強ができない」「あの子とは違って私/僕は馬鹿なんだ」と感じる子もきっといるはずです。

またその逆で、勉強ができる子ができない子の様子を見て、「自分は賢いから、勉強ができない子よりも偉いんだ」と見下してしまうこともあるかもしれません。
恐らく先生は「それぞれのスピードで良いんだよ」とフォローし、「勉強ができるから偉いわけではない」という指導も行うでしょうが、その言葉だけでその子たちの心を救いきれるかというと、なかなか難しいものがあるように思います。

もちろん、非常に高い指導力を持った先生であれば、教室内で格差が大きく開いてしまっても、上手くフォローを行い、クラス全員が楽しく前向きに勉強できる雰囲気を作れるかもしれません。したがって、「先取り学習を禁じるのではなく、先生の指導力を上げればよい」というのも論理的には正しいのですが、先生の指導力は一朝一夕に上がるものではありませんので、現実的な解決策とは言い難いように思います。

「先生の指導力が低いのが問題。うちの子には関係無い」と割り切るのも一つの考え方ですので一概に否定はできませんが、お子さまもクラスの一員である以上、クラスのまとまりや子どもたちの社会性を顧慮しないという判断が本当にお子さまの成長に良いものなのか、今一度じっくりと考えていただけると、教育者の一人としては嬉しく思います。

もし学校で先取り学習をしたい場合は、

・授業で出された課題が終わってから取り組む
・周りの子でつまずいている子がいたら、自分の学習よりも教えてあげることを優先する
・自分より進度が遅い子を絶対にからかったり、馬鹿にしたりしない


といった約束事をご家庭でもしっかり指導することを条件とした上で先生と交渉すると、上手くいく場合が多いかと思います。特に、「周りの子に教えてあげること」については、周りの子だけでなくお子さま自身にとっても非常に大きなメリットがあります。他者に説明することで自分の中での理解がより深まりますし、教えるという行為自体がコミュニケーション能力であったり、プレゼンテーション能力であったりと、これから生きていくために必要な力を伸ばすことにもつながります。

「周りの子に教えてあげる」というと、リソースを他人のために使っているようで損をしていると感じてしまうかもしれませんが、「情けは人の為ならず」という言葉のとおり、周りの子に教えるという経験は、周りの子のためだけでなく必ずお子さま自身の糧になりますので、ぜひ積極的にチャレンジしていただけると嬉しく思います。

<プロ家庭教師メガジュンでの解決例#6:周りの子に教えるのを拒否するギフテッドのFくん>

Fくんの保護者さまは、先取り学習をするかどうか悩まれていました。そこで私たちは、「周りの子に教えるのも本人の理解が深まって良いですよ」とお勧めしたのですが、以前に保護者さまがFくんにそのように伝えたところ、「周りの子のレベルが低すぎて教えるのは無理、しんどい。なんで僕がやらなくちゃいけないの」と言い返されたとのことでした。

私たちは保護者さまに、そこは厳しく𠮟るべきではないかということを率直にお伝えさせていただきました。お子さまの言葉からは、「自分さえ良ければよい」という姿勢が読み取れますし、「周りの子のレベルが低い」と見下すような発言も気になりました

もちろん、ご家庭の方針もありますので私たちから「絶対に叱ってください」ということは言えないのですが、このままでは協調性が育たないだけでなく、いざFくんが苦手なことに直面したり、弱い立場になったりしたときに、「自分はダメなんだ」「弱い自分は馬鹿にされても仕方がない」という考え方になってしまうのではないかと心配になったからです。

保護者さまと何度か面談を重ねるうち、保護者さまからFくんを厳しく注意することは難しいということになり、授業の中でお子さまと関係をきちんと築いた上で、上述のようなお話を講師からFくんにさせていただくことになりました。

私たちの授業の中でFくんは問題が解けないと拗ねることも多く、その都度講師からは「解ける、解けないが問題じゃないよ。頑張って解こうとするのが大事。今の態度は良くないよ」と毅然と説明していきました。Fくんが解けなかった問題を講師がスラスラと解いてみせると、Fくんはいつも悔しそうな、悲しそうな顔をするので、「先生はFくんのことを馬鹿にしない。この問題が解ける先生が偉くて、解けないFくんが駄目だなんて思わない。当たり前のことだよ」と繰り返し伝えてきました。

Fくんが難しい問題にもめげずに挑戦し、解けなくても拗ねることが少なくなってきた頃、改めて講師から先取り学習についてお話をしました。「授業で早くプリントが終わったらどうしてるの?」と聞くと、Fくんは「最近は『みんなで考える時間』があるから、その準備をしている」と答えました。『みんなで考える時間』とはプリントの中からいくつかの問題をピックアップし、それぞれの解き方をみんなで共有しながらディスカッションする時間であるとのことでした。

「準備って、どんなこと?」
「自分の解き方を見直したり、早く解き終わった人同士で話し合ったり、解けてない子にヒント出したり…」

私は思わず、「おおっ!」と声が出そうになりました。なんで僕が周りの子に…と言っていたFくんが、他の子と話し合い、困っている子にはヒントを出すという手助けまでしているとは想像しておらず、私たちが思う以上にFくんが成長していたことに感動しました。「できないことは悪いことではない」と根気強く伝え続けたことで、Fくんは「周りの子を見下さず、必要なときは助け合う」という行動が自ら取れるようになっていたのです。

このケースでは、「Fくん自身の成長」だけでなく、「学校の先生がディスカッションの時間を取り入れたこと」「保護者さまが先取り学習に固執しなかったこと」の全てが上手く噛み合ったと言えます。お子さまの成長には、学校だけでなく、ご家庭や私たちプロ家庭教師など、様々な大人が関わり、工夫し協力することが大切であると改めて実感した一件でした。

72. 中学受験をすべきか悩んでいる

「もっとレベルの高い教育を受けさせたい」「公立中学校が荒れている」「内部進学できるため、受験に追われず伸び伸び過ごせる」など、中学受験を検討する理由はご家庭によって様々あると思います。特に2E型ギフテッドなど、発達障害と高知能の両方の性質を持っているお子さまの場合は、いろいろな学力層の子どもたちが集まる公立中学校よりも、一定の学力レベル以上の子どもたちが集まり、保護者の教育関心も高い私立中学校の方が落ち着いて過ごせる場合がほとんどであるため、私たちも中学受験をお勧めすることが多くなっています。

また、ギフテッドの性質を持っていない発達障害のお子さまの場合も、公立中学校のガヤガヤしだ雰囲気が合わない可能性が高いため、お子さまの学力レベルに合った私立中学校に進学することをお勧めすることがあります。

さらに、高校受験を見据えると、ギフテッドや発達障害のお子さまにとって中学受験は非常にメリットが大きいものと言えます。ギフテッドや発達障害のお子さまは、全ての教科(副教科含む)の定期テストで満遍なく点を取ったり、提出物の期限を守ったり、きちんとした授業態度で出席したりといった、内申点に関わること全般が苦手な傾向にあります。

都道府県ごとに若干の違いはあるものの、公立高校を受験する場合は内申点の比率が非常に高く、内申点が配点の50%以上を占めるケースも非常に多くなっています。ですので、公立中学校で内申点を伸ばせる自信が無い人は、

・私立中学校から大学まで内部進学する
・私立中学校から高校に内部進学し、大学は得意教科を活かして一点突破型で受験する


といったパターンが非常にオススメとなります。

ちなみに、内申点は「定期テストの点数>実力テストの点数>提出物・実技>授業態度」の順に配点が高い場合が多くなっています。テストで点が取れるタイプのお子さまはある程度内申点にも期待を懸けることができるため、公立中学校から公立高校への進学も選択肢にできますが、そうでない場合は中学受験をした方が高校受験においては圧倒的に有利であると言えます。

ただし、中学受験をする場合は、どんな偏差値の学校を目指すにしてもそれなりに受験に向けた勉強をする必要があります。受験勉強がお子さまにとって大きな負担になってしまう場合は、無理に高いランクの学校を目指さず、より受験勉強の負担の少ないランクの学校を選ぶことも選択肢の一つとなります。また、無理に偏差値の高い学校に進学してしまうと、入学後に周りについていけずしんどい思いをしてしまう場合もあります。

私たちプロ家庭教師メガジュンにおいても、受験勉強が過度な負担にならず、また、お子さまが入学後に楽しく学校生活を送れることを重視していることから、お子さまの特性や学力レベルをしっかりと分析した上で、志望校のランクを下げるご提案をさせていただく場合があります。ただしその際には、お子さまが挫折感を感じてしまわないよう細心の注意を払い、お子さまにとってより良い選択肢であることをご本人にも丁寧に説明するようにしています。

中学受験をすると決めた場合は、お子さまの学力と受験勉強に対するストレス耐性をしっかりと分析し、お子さまにとって最適な志望校選びを進めることが大切です。また、多くのお子さまは、受験勉強をとおして粘り強さやセルフコントロール力、PDCAサイクルを実行していく力や自信・自己肯定感など、生きていく上で大切な力を身に付けることができます。登る山が高いほど、登り切ったときに人は大きく成長しますので、成長と負担のバランスを周りの大人が見極め、中学受験がお子さまにとってかけがえの無い経験となるようにサポートしてあげることが何よりも大切です。

また、当然ですが「良い学校に通わせたい」というのが親の一方的な思いであってはいけません。中学受験をさせるのは、お子さまにとってより良い環境を整えること、あるいはお子さまが大きく成長する機会とすることが目的です。受験が迫ってくるとどうしても合格できるかどうかがばかりを考えてしまいますが、中学受験の本来の目的を忘れず、親子のコミュニケーションを大切に、お子さまの心と身体の状態を丁寧に見守っていただければと思います。

お子さまは周囲の大人の影響を受けやすく、また、大人が思っている以上に大人の言動をよく見ています。「受験を頑張りたい」というお子さまの言葉も、もしかしたら「お母さん/お父さんの期待に応えたい」という気持ちから出ているものかもしれません。もちろん、保護者さまの期待に応えることがモチベーションであることは悪いことではありませんが、それが過度なプレッシャーに繋がってしまうケースもあります。

お母さん/お父さんのために頑張るのではなく、まずは自分のために頑張ることが大切であることや、無理をして期待に応える必要が無いことについては折に触れてお話ししておくと良いでしょう。そのためには、受験以外のことについてもたくさんコミュニケーションを取り、お互いに本心を伝えあえる関係性を築いていくことが大切です。

★もっと詳しく知りたい方にオススメの記事→中学受験でギフテッドの才能を最大限に生かす方法|準備のコツと成功のポイント | 発達障害・ギフテッド専門のプロ家庭教師 メガジュン (pro-megajun.com)

73. 志望校の選び方が分からない

志望校の選び方が分からない場合は、以下の8つのポイントに注目しながら検討を進めると良いでしょう。また、志望校を検討する際には、以下の8つのポイントについてお子さまと保護者さまが一緒に確認しながら話し合って決めるようにすると、親子とも志望校合格に向けて一丸となって頑張れる場合が多いです。

さらに、発達障害やギフテッドなどの特性を持っているお子さまについては、1~8のポイントのほか、「発達障害のお子さまの志望校の選び方」「ギフテッドのお子さまの志望校の選び方」でさらに詳しく志望校の選び方を解説していますので、ぜひご覧ください。

併せて、志望校を決める際にはパンフレットやホームページを見るだけでなく、必ず現地に足を運び、学校の雰囲気を肌で感じるようにしましょう。入学した後に「思っていた雰囲気と違う」となってしまっては、せっかく合格したにもかかわらず充実した学校生活を送ることが難しくなってしまいます。

ですので、学校説明会やオープンキャンパス、そしてできれば普段の学校の姿(在校生の振る舞いや登下校の様子など)も現地に足を運んで確認するようにしましょう。

ポイント①自由度は高いか

校則が厳しくなく自由に過ごせる学校もあれば、規則正しく学校生活を送ることを重視している学校もあります。自由度の高い学校と低い学校、どちらとの相性が良いかはお子さまによって異なりますが、

・自由度の高い学校 →学校や社会のルールに疑問を感じることが多く、ルールが無くても自律的に考え行動できるお子さまと相性が良い
・規律を重んじる学校 →ルールがあった方が勉強や部活を頑張れるお子さまと相性が良い


という場合が多くなっています。

お子さまの性質やそれぞれの学校の校風をしっかりと分析して判断していただければと思います。

ポイント②偏差値

志望校を選ぶ際には、偏差値も大きなポイントとなります。偏差値は高ければ良いというものではなく、お子さまがどれだけ勉強を頑張りたいと思っているか、あるいは勉強自体にアイデンティティを感じているかどうかなどを踏まえて判断していく必要があります。

一般的には、

・より偏差値の高い学校 →「自分は勉強が得意だ」と自負していて、勉強自体にアイデンティティを感じているお子さまと相性が良い。ただし、入学した後に平均点以下の成績になると、アイデンティティの崩壊が起こることが多いため、入学後も平均点以上の点数が取れるような学校に入る方が良いことも多くございます。
・実力に見合った偏差値の学校 →勉強への苦手意識が強いお子さまや、勉強以外に頑張りたいことがあるお子さまと相性が良い


と言えますが、これらの傾向を踏まえながらも、お子さまの性質に応じて個別に判断していただければと思います。

ポイント③課題の多さ

課題の量がどれくらいであるかも、志望校を選ぶ際には大きなポイントとなります。課題が多すぎると課題をこなすことで精一杯になってしまい、自分の苦手に応じた学習をすることが難しくなってしまうことがあります。

一方、課題が少なすぎると家でなかなか勉強しないというお子さまもいらっしゃいますので、お子さまの性格や性質を見極めて判断していく必要があります。

課題が多い学校と少ない学校について、それぞれ相性の良いお子さまの傾向は以下のとおりとなります。

・課題が多い学校 →自学自習が苦手で、課題を示されないと勉強に取り組めないお子さまと相性が良い
・課題が少ない学校 →指示されなくても自学自習できるお子さまや、勉強以外にやりたいことがあるお子さまと相性が良い

ポイント④通学時間

志望校を選ぶ際には、通学時間も非常に重要です。基本的には通学時間が短い方が時間や体力を節約できるためメリットが大きいと言えますが、人間関係を一新したいと考えているお子さまの場合は、自宅から離れている学校の方が過ごしやすいこともありますので、お子さまの状況に応じて判断していくと良いでしょう。(一般的には中学生・高校生では乗り換えが1回以内、片道1時間以内を基準とされることが多いです)

・通学時間が短い →出身校が同じ子がいると安心できるお子さまや、自由時間を確保したいお子さま、体力が少ないお子さまと相性が良い
・通学時間が長い →人間関係を一新したいと考えているお子さまや、通学時間を有効活用できるお子さまと相性が良い

ポイント⑤小中高一貫校や大学付属校であるか

小中高一貫校や大学付属校である場合、受験を気にせず自由に過ごせるなどのメリットがある一方で、受験を通して大きく成長してほしいと保護者さまが考えている場合はその機会が得られなかったり、私立の場合は経済的な負担が非常に大きくなったりするというデメリットがあります。

小中高一貫校や大学付属校のメリットとデメリットについては以下のとおりですので、これらを踏まえて検討していただければと思います。

・メリット →受験を気にせず自由に過ごせる/早い段階から進路を確定させられるため安心
・デメリット →「受験のために頑張る」という経験が得られない/私立の場合は経済的な負担が大きい

ポイント⑥共学・男子校・女子校

共学を選ぶか、男子校や女子校を選ぶかについては、その学校の伝統や校風も踏まえながら検討していくようにしましょう。

現存している男子校・女子校のほとんどは長い歴史を持つ伝統校であり、その学校ならではの色濃い教育方針を持っている場合が多くなっています。「男子校・女子校だと、異性の目が気にならず勉強に打ち込めそう」という一般的なイメージがあるかもしれませんが、それ以上にその学校が持っている雰囲気や教育方針を詳しく調べておくことが大切です。

パンフレットやホームページを見るだけでなく、必ず学校に足を運び、学校説明会やオープンキャンパス、そして普段の学校の様子をよく見ておくようにしましょう。

ポイント⑦受験科目の配点

志望校を選ぶ際には、受験科目の配点にも注目しましょう。基本的には、得意科目の配点が高く、不得意科目の配点が低い学校を選ぶのがお勧めとなります。

ただし、倍率が高い学校の場合などは、配点だけでなく難易度まで踏まえて対策を考えていく必要があります。受験科目の配点や難易度を踏まえた志望校選びについては専門的な知識が必要になりますので、受験に詳しい塾や家庭教師の先生に相談しながら検討していくようにしましょう。

ポイント⑧出題形式

志望校を検討する際には、入試問題の出題形式にも注目しましょう。字を書くのが苦手なお子さまの場合は、記述式ではなくマーク式の学校を選んだり、作文が苦手なお子さまの場合は作文や小論文の出題が無い学校を選んだりすると良いでしょう。

また、特定の単元が頻出である学校も多くなっています。立体図形や確率など、特定の単元が苦手なお子さまの場合は、それらの単元が頻出となっている学校は避け、逆に自分が得意な単元からよく出題される学校を選ぶようにしましょう。

発達障害のお子さまの志望校の選び方

発達障害のお子さまの場合は、お子さまの特性に合わせた丁寧な指導を受けられるかどうかが非常に重要なポイントになります。

画一的な指導を行う学校の場合、発達障害のお子さまは周りについていけなかったり、適切な配慮を受けられなかったりして、大きなストレスを感じてしまうことがあります。結果として学力不振や自信・気力の低下につながり、不登校の状態に陥ってしまう場合もあります。
ですので、入学前には一人ひとりの特性に合わせた丁寧な指導が受けられるかどうかをしっかりと確認しましょう。具体的には、

・発達障害の特性を持っている在校生がいるかどうか(もしくは、個性的な生徒が多いかどうか、その土壌となる自由な雰囲気かどうか)
・その子たちが楽しく前向きに学校生活を送れているどうか


などについて、口コミ等も踏まえながら判断するのが大切です。

学校説明会や事前相談会などでは、「一人ひとりに合わせてフォローする」といった説明をしてもらえるかもしれませんが、残念ながら実態が伴わず、十分な配慮が受けられなかったり、勉強についていけない子をフォローする体制が整っていなかったりする学校もありますので注意しましょう。

勉強についていけなかったり、ストレスから不登校になり出席日数が足りなくなったりすると、内部進学できず、せっかく合格できたのに途中で退学しなければならなくなってしまうケースも実際にあります。

ですので、学校側の説明だけでなく、実態についても事前に十分確認することが大切です。

ギフテッドのお子さまの志望校の選び方

ギフテッドのお子さまの場合は、「ポイント①自由度は高いか」や「ポイント③課題の多さ」、「入学後に学力が平均以上の立ち位置でいられそうか」が特に重要なポイントになります。

ギフテッドのお子さまは、周りからあれこれと指示されるよりも、自分で考えて自由に学び、行動することを好む場合が多いです。そのため、規則が厳しかったり、課題が多かったりする堅い校風の学校とは相性が悪い場合が多いです。

特にギフテッドのお子さまが目指すような偏差値の高い学校は、ほとんどの場合、

A.課題をたくさん出し、厳しい環境に耐えさせることで生徒を伸ばす(→勉強が苦手な子でも一定は成果が出せる。ただし、完全にドロップアウトしてしまう子もいる)
B.課題は最低限しか出さず、生徒の自主性を重んじる(→完全にドロップアウトする子は少ないが、勉強をする子としない子の差が開きやすい)


の2タイプに分かれます。

ギフテッドのお子さまはBタイプの学校の方が過ごしやすい一方、自分に合った勉強方法が見つけられないと、進学の際に苦労する場合もあります。

基本的にはBタイプの学校を選びつつも、個別指導塾やプロ家庭教師などを利用し、お子さまが適切な学習習慣を身に付けられるようサポートすると良いでしょう。

また、ギフテッドのお子様は勉強ができることをアイデンティティーに感じておられるお子様も多く、学校の母集団の中で平均点以下を取られると大きなショックを受けることも多いです。

そのような逆境の中で、「這い上がる力」を持っているギフテッドのお子様は問題ございませんが、這い上がる経験をされていない場合、大きなショックを受けられたストレスから大きく自己肯定感が低下して、不登校にまで至ることも多くございます。(受験業界では「深海魚」というワードで呼ばれているほど、よくある実例です)

そのため、這い上がる経験をされていない場合、「入学後も成績が平均点以上に位置しそう」な学校を選ばれることで、その様な事態を防ぐことができるので、学校選びのご参考にいただければと思います。

74. 発達障害の診断を受けたが、知能は高いと言われた(2E型ギフテッド)

発達障害かもしれないと指摘を受け、WISC-IVなどの知能検査を受けた人の中には、思いのほか知能指数が高くて驚いたという方もいらっしゃいます。学校の成績は振るわないのに知能指数が高くて不思議…と思うかもしれませんが、知能検査の結果を詳しく見ることでその理由を知ることができます。

WISC-IVには「言語理解」「知覚推理」「ワーキングメモリー」「処理速度」の4つの指標がありますが、発達障害かもしれないと指摘されるお子さまの多くは、「ワーキングメモリー」や「処理速度」の数値が低くなっています。一方で、発達障害の特性はあるけれど全体の知能指数が高いお子さまの場合は、「言語理解」「知覚推理」のいずれか又は両方の数値が突出して高い場合が多くなっています(いわゆる凸凸凹凹型や凸凸口口型の検査結果)。

4つの指標のうち、「ワーキングメモリー」と「処理速度」は日常生活でも使われる能力である一方、「言語理解」と「知覚推理」は文章を理解する・計算するなど、特に勉強の場面において必要な能力となります。言語理解や知覚推理に長けていても、ワーキングメモリーや処理速度が低いと日常生活での困りごとが現れやすくなるため、結果として“全体として知能指数は高いが、日常生活で困りごとが多い(=2E型ギフテッド(※))”という状態になります。

※2E型ギフテッド…発達障害とギフテッドの両方の特性を持った人のこと。広義には、発達障害以外のハンデキャップも含む。2Eは「twice-exceptional(二重に例外)」の意味。

さらに、ワーキングメモリーや処理速度が低いと、「授業中に先生の話を聞く」「指示通りに課題をこなす」などが苦手になるため、長編小説はスイスイ読めるのに宿題の漢字ドリルを忘れたり、難易度の高い問題にじっくり取り組むのは得意でも、同じような計算問題を大量に解くのは苦手なためテストの点にはつながらなかったりします。そのため、言語理解や知覚推理が高かったとしても、その能力が学校の成績につながらないケースも非常に多くなっています。

こうしたお子さまの場合は、苦手に注目するのではなく得意なことに目を向け、長所を伸ばしていくことが必要です。ご家庭で小説の感想を話し合ったり、難易度の高いパズルを家族みんなで解いたりするほか、同じような趣味や特性を持った人たちが集まる習い事やサークル活動などに参加してみるのも良いでしょう。

なお、WISC-IVの各指標間の差(ディスクレパンシー)が大きいと発達障害であると言われることもありますが、全体の知能指数が高いとディスクレパンシーも大きくなりやすいため、一概にディスクレパンシーが大きい=発達障害と定義することはできません。

★もっと詳しく知りたい方にオススメの記事→ギフテッドの診断はどこで受けられる?IQテストやWISC-IV知能検査、偏差値との関係を解説 | 発達障害・ギフテッド専門のプロ家庭教師 メガジュン (pro-megajun.com)

75. 学校に行けない日が多い

朝、学校に行く時間になると「頭が痛い、お腹が痛い」と訴えて休みがちなお子さまは、いわゆる「登校渋り」の状態に該当します。学校に行くための心のエネルギーが切れかかっており、多くの場合はそのまま不登校の状態へと進みます。また、学校に行きたくないから仮病を使っているというよりは、実際に頭やお腹が痛くなっている場合がほとんどです。精神的なストレスに伴う体調不良であり、起立性調節障害や過敏性腸症候群などの診断を受ける場合もあります。

こうした状態にあるときは、無理に登校させず、まずは様子を見ることが大切です。数週間で学校に通えるようになるお子さまもいれば、登校できない状態が長引くお子さまもいますが、決して焦らないことが大切です。

登校渋りや不登校の要因は、お子さまの心のエネルギー切れです。「学校に行きたい、行かなければ」という気持ちよりも、学校に行くことによるストレスやプレッシャーの方が上回る状況が続くと、徐々に心のエネルギーを消耗され、「しんどい!」という気持ちが登校渋りや不登校などとなって現れます。ストレスやプレッシャーの要因は様々ですが、学力不振(思ったように成績が伸びない/進学をきっかけに周りのレベルが上がり劣等感を感じるようになった等)や人間関係(部活の先輩が怖い/クラスで仲間外れにされている等)である場合が多くなっています。

原因はただ一つだけではなく、複数の要因が重なっているケースも多くなっています。そのため、お子さま自身も自分が何にストレスやプレッシャーを感じているのか、なぜ「学校に行きたくない、しんどい」と感じているのか言葉にできずモヤモヤした気持ちを抱えている場合もあります。「どうして学校に行きたくないの?」と聞いたときにはっきりとした答えが返ってこないと保護者さまとしては不安になってしまうと思いますが、お子さまが気持ちを整理できるまで落ち着いて待つことも大切です。

一方で、状況を改善していくためには、不登校の原因を明らかにすることも非常に重要です。担任の先生や部活の顧問の先生などから学校での様子をできるだけ詳しく具体的に聞き取り、お子さまのストレスやプレッシャーにつながるようなことはなかったかを調べていきましょう。ただし、保護者さまが学校と頻繁にやり取りすること自体が、お子さまにとって「早く学校に行かなければ」「お母さん/お父さんに迷惑をかけている」というプレッシャーにつながってしまうこともありますので、お子さまの様子を見ながら、必要に応じてお子さまが気付かないように連絡を取るなどの配慮を行うと良いでしょう。

お子さまがある日突然「学校に行かない」と言い出すと、保護者さまとして焦ってしまうのは当然のことです。ですが、不登校になってしまうのは、お子さまがエネルギーを使い果たすほどそれまで懸命に、無理をして学校に通っていたことの裏返しでもありますので、「無理して頑張っていたんだな」とまずは理解して受け入れることから始めましょう。

登校渋りの状態にあるお子さまは、まだ完全にはエネルギーが枯渇していませんので、保護者さまが「大丈夫だよ、行ってみよう」と声掛けすると頑張って学校に行ける日もあります。ですが、それは最後のエネルギーを振り絞って学校に行っているだけであり、そのうちそのエネルギーも枯れ果てて全く学校に行けなくなる場合がほとんどです。

保護者さまとしては、お子さまが不登校になると「なぜうちの子が…」と心配になってしまうでしょうし、学校にお休みの連絡を入れるのも後ろめたさや申し訳なさを感じて辛いと思われるかもしれません。ですが、学校を休むことはお子さまの心を守るために必要なことですので、自信を持って対応していただければと思います。

また、登校渋りが始まった段階で学校復帰を考えるのは時期尚早です。保護者さまも突然のことで対応に困ったり、ストレスを感じたりするフェーズになりますので、親子とも「無理をしない」を合言葉に、できる限り焦らず、おうちでゆっくり過ごすようにしましょう。

「学校を休んでいるのに、家では元気」というお子さまや、「朝起きたときは顔色が悪いのに、学校に休みの連絡を入れた途端にケロッとしている」というお子さまもいらっしゃいますが、それほど心配する必要はありません。学校を休めると分かってホッとしている(ストレス値が下がっている)ということであり、ご家庭がお子さまにとって安心できる場所であるという証拠ですので、元気なお子さまの姿を否定せず、心のエネルギーが回復しているのだなと安心して見守ってあげてください。

ただし、四六時中家でお子さまの相手をしていて、保護者さまの気力と体力が限界!という時は無理をせず、学童保育や習い事、フリースクールなどを活用して保護者さま自身が休息を取れるようにしましょう。

登校渋りや不登校で悩んでいるときは、理解のある相談相手を見つけることも大切です。お子さまや保護者さまの対応を決して否定せず、悩みにしっかりと耳を傾けてくれる人を探しましょう。学校の先生やスクールカウンセラー、主治医のほか、同じように不登校の子どもを持つ保護者の会などに参加するのもおすすめです。ただ、中には「不登校は甘え」という考えの人もいますので、そういう人に出会ってしまった場合はそっと距離を取るようにしましょう。

不登校は、マイナスの働きかけ(無理に登校させる、勉強を強要する、ゲームや娯楽を取り上げる、「そんな子に育てた覚えはない」「お母さん/お父さんはこうなって悲しい」など人格を否定する言葉を掛ける 等)をしなければ、必ず改善に向かいます。状況の改善=学校復帰ではありませんが、心のエネルギーが回復すれば、その子なりのやりたいことが見つかり、勉強にも前向きに取り組める日が必ずやってきます。

今は戸惑いと焦りでいっぱいかもしれませんが、光は必ず見えてきますので、保護者さまだけで抱え込まず、たくさんの人と一緒にお子さまを見守り、じっくりと待つことを心掛けましょう。

★もっと詳しく知りたい方にオススメの記事→不登校のお子様が日々考えることが多い、6つのこと | 発達障害・ギフテッド専門のプロ家庭教師 メガジュン (pro-megajun.com)

76. 学校に行きたがらず、理由を聞いても答えない

不登校の状態にあるお子さまに、「なぜ学校に行けないのか?」と聞いてもほとんどの場合はっきりとした答えは返ってきません。お子さまの口から「クラスでいじめられているから」「○○先生にひどい怒られ方をしたから」などのはっきりとした答えが返ってくることは稀です。私も長年不登校のお子さまの支援に関わってきましたが、いじめや不適切な指導などが不登校の原因であることが最初から分かっていて、いじめっ子を転校させたり担任を代えたりしたらすぐに学校復帰できたというケースはほとんど聞いたことがありません。

お子さまに不登校の兆候が表れると、多くの保護者さまは「不登校になるようなきっかけや理由があるはずだ」と考えてしまうと思います。ですが、大人に置き換えて考えてみると分かるように、「会社に行きたくない」「家事をやりたくない」と感じる原因は何か一つではなく、業務の負担が大きい・上司との人間関係が良くない・休みが無い・家族が労ってくれないなどのストレスが徐々に積み重なって、「もうしんどい」と感じてしまうことがほとんどだと思います。

また、家事や仕事に対するしんどさやモヤモヤは、いずれかの要因が無くなればすべてスッキリ解決するというものでもなく、複数の要因が重なっていて、それらを一つずつ取り除いていくことでしか解決できないものであることも、多くの方が実感していると思います。

お子さまの不登校の場合も同様で、何か一つの原因があるわけではなく、勉強についていけない・なかなか友達ができない・何となく先生と相性が合わないなど、様々な要素が関係しています。

また、大人はある程度経験があり思考力も発達しているため、一つ一つの事象を整理して言葉で表現できますが、子どもは思考力も未発達ですので、「何となくイライラ・モヤモヤする」「学校に行きたくない」という感情や行動でしか悩みやストレスを表現できないことがあります。

保護者さまがお子さまに対して、「どうして学校に行きたくないの?」と尋ねても明確な答えが返ってこないのは、こうした要因の複雑さや、子どもの言語化能力が未熟であることが原因です。また、「親に心配を掛けたくない」「大人に相談しても解決しない(特に人間関係など)」と考えていて、お子さまが悩みを打ち明けないケースもあります。こうした前提を踏まえ、お子さまが学校を休みたがるときは無理に登校させず、また原因を聞き出そうとあれこれと詮索せず、まずはゆっくりと休ませることが大切です。

一方で、状況を改善していくためには、不登校の要因を明らかにすることも重要です。お子さまに聞いても不登校の原因がよく分からない場合は、学校の先生や仲の良いお友だち、そのお友だちの保護者さまなどから、お子さまの普段の様子をできるだけ詳しく聞き取り、ストレスやプレッシャーにつながるような事象は無いかを調べていきましょう。

例えばお友だちから、「中間テストの後くらいから口数が減った」などの話があれば、学力不振がストレスとなっている可能性が考えられます。もし学力不振が不登校の主な要因である場合は、個別指導塾や家庭教師を利用して、本人に合った勉強法を身に付け、失ってしまった自信を回復させることで少しずつ学校復帰へと導いていくことが可能です。

プロ家庭教師メガジュンでも、これまで多くの不登校のお子さまをサポートしてきましたが、人間関係と学力不振の両方が不登校の要因になっているケースが非常に多くありました。学力面に関しては、難易度の低い課題からチャレンジしてもらい、「自分にもできる」という自信を回復させながら、勉強に前向きになれるようサポートをしていきます。

人間関係の悩みについては、家庭教師の立場から解決することは難しいものの、お子さまがクラスメイトとどのような関係性にあり、どのような点で悩んでいるのかを丁寧に聴き取り、学校の先生や保護者さま以外の第三者的な立場からアドバイスすることで状況が改善に向かうことがあります。

例えば、

①お子さまがあるクラスメイトのことを苦手だと感じている場合は、「休み時間は他の人としゃべったり、別の場所で過ごしたりして、できるだけ接触を避けるのはどうかな?」と距離の取り方をアドバイスする
②お子さまがクラスのあるグループに所属することにこだわっている場合は、「そのグループに所属できない場合に、どんな困ったことが起きそうかな?」と客観的な思考を促し、そのグループに所属できなくても、実は大した困りごとは起こらないのだと気付かせる
③クラスのやんちゃな子が授業中にうるさくてイライラしてしまう場合は、「うるさい!」と注意して相手を変えようとするのではなく、「自分がどう変われば快適に過ごせるか?」を考えるようにする


といったアドバイスをしたところ、気持ちが落ち着き、学校への復帰を検討できるようになったお子さまがたくさんいらっしゃいました。

あるいは、「進学すれば環境も変わるよ」など、将来を見据えた長期的な視点を示してあげることで、「じゃあ、勉強を頑張って○○高校に進学すれば良いんだ」とお子さまが現実的な解決策に向かって頑張れるようになることもありました。

実際にメガジュンを利用いただいたお子さまにおかれては、受験を機に不登校から復帰する方が非常に多く、「自分に合った環境を見つけ、そこに行けるように頑張る」という道筋は、不登校の解決において非常に効果が高いと感じています。

併せて、現代の日本の学校教育は、“普通の子”を基準として制度が組み立てられていることも、不登校の原因が見えづらくなっている理由の一つであると考えられます。“普通の子”とは、IQが90~110程度で、発達に凸凹が無く、先生の言うことを素直に聞く子を指します。

ここからはみ出る子は、「皆で同じ内容を、同じペースで学ぶ」という学校教育とは相性が合いづらく、学校に行くこと自体がストレスやプレッシャーにつながりやすくなります。ただし、発達障害や知的障害グレーゾーン、ギフテッドの場合に必ず不登校になるというわけではありませんし、定型発達であれば不登校にならないというわけでもありません。“普通”であるかどうかはあくまで目安として捉えていただければと思います。

また、不登校をきっかけに発達障害や軽度の知的障害、ギフテッドであることが判明するケースもあります。ご家庭の様子だけでなく、学校での様子についても先生からよく聞き取り、気になることがある場合は発達検査や知能検査を受けてみると良いでしょう。何かしらの障害があることが分かってしまうとレッテルを貼られるようで嫌だと感じる方もいるかもしれませんが、検査はレッテルを貼るためではなく、これからのお子さまの支援の方針を検討するため、ひいてはお子さまの今後の人生をより良くするために受けるものです。大人になってから対応するよりも、子どものうちに特性を知り対処していく方が二次障害などのリスクも抑えられますので、必要に応じて検査を受けることをおすすめします。

★もっと詳しく知りたい方にオススメの記事→発達障害の子どもが不登校になりやすい原因とは?解決策を解説! | 発達障害・ギフテッド専門のプロ家庭教師 メガジュン (pro-megajun.com)

77. 不登校の原因は何?不登校になりやすい環境や性質はある?

不登校の原因はただ一つではなく、複数の要素が重なっている場合がほとんどです。重なった要因を分解・分析し、一つずつ解消していくことが不登校の改善へとつながります。不登校の要因でよくあるものとしては、「①学力不振」「②人間関係」「③マイナス思考や心配性な性格」が挙げられますので、この項目ではそれぞれについて対処方法を含めて詳しく解説していきます。

不登校の原因①:学力不振

学力不振が原因で不登校になるお子さまの多くは、「単に勉強ができない」のではなく、「“自分が思っているよりも”勉強ができない」という点において大きなプレッシャーやストレスを感じています。

例えば、小学校まではクラスで一番の成績が取れていたのに、中学受験をして私立中学校に進学したところ、周りの子どもたちの学力レベルが一気に上がり、クラスで下位の成績しか取れなくなってしまったなどのパターンです。あるいは、中学校・高校と学年が上がるにつれて勉強が難しくなり、それまでは真面目に授業を受けていれば中くらいの成績は取れていたのに、今は授業を聴いても半分ほどしか内容を理解できず、「自分はこんなに勉強ができないなんて」とショックを受けているようなケースです。

このようなお子さまにおいて特徴的なのは、「テストで何点取りたい?」と聞いても「うーん、別に…」と明確な答えが返ってこない一方で、「じゃあ、何点以下は取りたくない?」と聞くと「赤点は嫌だ」「40点以下はヤバいと思う」と、最低ラインについては明確な答えが返ってくる点です。

このように、「赤点以下は絶対に取りたくない」と思っているお子さまが赤点を取ってしまうと、大きなショックを受け、文字通り絶望的な気分になってしまいます。「自分はこれくらいはできるはず」という自信が崩れてしまうため、「自分は何をやっても駄目だ」「自分には価値が無い」「勉強のことを考えるのも嫌だ」という気持ちになって、学校に行きたがらなくなったり、勉強から逃げたりするようになります。

つまり、学力不振が不登校の要因になるケースにおいては、本人が想定している自分の実力と現実とのギャップに苦しむことが多く、中学校や高校へ進学して環境が大きく変わったタイミングで「思ったよりもできない自分」にショックを受けるケースが多くなっています。(ただし、これ以外にも、元々勉強が苦手な子が「勉強しなさい」と強要され過ぎて不登校になってしまうケースなどもあります)

こうしたケースにおいては、無くしてしまった自信を回復させてあげることが最優先となります。すなわち、「自分はダメだ」という自己認識を払拭し、まずは目の前のことについて「やってみよう」と思える状態へと導いてあげる必要があります。

そして、「やってみたらできた」という経験を元に、「この調子で続ければ、自分が目標としているレベルまで到達できそう」とお子さまが感じられて初めて、勉強に対する前向きな気持ちを取り戻すことができます。

ですので、最初のうちは現在の実力よりもやや簡単なレベルの問題を解かせ、「自分にも解ける、できる」という実感を持ってもらうことから始めます。簡単な問題が解けた後も、しばらくは難易度を上げ過ぎず、本人がサクサクと楽しく解けるレベルの課題を続けていきます。

するとそのうちに、失われていた自信が少しずつ回復しはじめ、「自分はまだまだ頑張れる」という気持ちが湧いてくるようになります。勉強への拒否感も少しずつ和らぎ、新しい内容も学んでみようかな?と考えられるようになってきます。

また、課題に取り組んで解ける問題が増えていくと「自分は成長できる」という実感も湧いてきます。すると、お子さまは「この調子で頑張れば、以前の自分のレベルにも戻れる」と感じられるようになり、勉強に足して前向きな気持ちを持つことができるようになっていきます。

加えて、不登校の状態にある場合は、「学校の授業に遅れてしまう」という不安や心配も大きく、それがまたプレッシャーになってしまうことも多いのですが、無理に学校復帰を目指さず、最終的には進学ができればOKといった気持ちで勉強に挑んだ方が、気楽かつ前向きに勉強に取り組める場合が多くなっています。

学校復帰を目指して勉強することがモチベーションにつながることもありますが、学力不振が不登校の原因になっている場合は、「自信の回復」が最優先になりますので、ぜひ意識していただければと思います。

また、自信の回復を意識した指導(簡単な問題から取り組ませ、「自分にもできる!」という気持ちが芽生えてから少しずつステップアップさせる)ができる塾の講師や家庭教師を見つけることも非常に大切です。自信の無いまま難しい問題に取り組ませても、「やっぱり解けない」と感じて逆にもっと自信が下がってしまうこともありますので、塾や家庭教師を利用する場合は、「どのような指導方針か」「どんな課題をどんなスピードで取り組ませる計画であるか」などをできるだけ詳しく聞き取るようにしましょう。

不登校の要因②:人間関係

「クラスや部活で仲間外れにされている」「先生や部活の先輩が自分にだけ厳しくする」など、人間関係の悩みが不登校の要因となっている場合があります。人間関係の悩みについては、お子さまが保護者さまに打ち明けづらいと感じることもあり、原因を特定しにくいケースも多くなっています。

お子さまの人間関係の悩みについて調べる際には、学校の先生や仲の良いお友だち、仲の良いお友だちの保護者さまなどに詳しくお話を聞いてみると良いでしょう。学校の先生に話を聞く際には、「最近変わった様子はありましたか?」といった全般的なことを聞くだけでなく、「誰と仲が良いか?よく話しているか?」「何人くらいのグループに属しているか?」「仲良しグループのメンバーに最近変化はあったか?」など具体的な質問を重ねていくと良いでしょう。

友人関係と言っても、微妙な力関係のようなものは必ず働きます。お子さまがおとなしい性格であるためにクラスの中で弱い立場になっており、それが不登校の原因であると分かれば、保護者さまとしても完全な学校復帰を目指すのではなく、保健室登校や相談室登校といった選択肢を検討しやすくなると思います。

また、お子さまが真面目なタイプである場合は、クラスメイトの悪ふざけを注意したことなどが原因で「ノリが悪い」「空気が読めない」と仲間外れにされたり、クラスに居づらくなったりしてしまうこともあります。こうしたケースにおいては先生にフォローをお願いしたいところではありますが、それが逆に「えこひいきだ」「先生に告げ口した」などと事態を悪化させてしまう可能性もゼロではありません。

いずれにせよ、人間関係が不登校の原因である場合は、問題を一筋縄で解決することは非常に難しいと言えます。例えば、クラス替えをしてもらうなどの対応を学校に求めることはあまり現実的ではありませんし、相手生徒に「うちの子に強く当たらないで」と交渉することで、さらに波風が立ってしまい学校に戻りづらくなることも考えられます。こうした場合は、周りを変えようとするのではなく、お子さま自身の考え方にアプローチし、どんな人間関係や環境下でもしたたかに生きていけるようなマインドを身につけさせてあげることが大切です。

例えば、ブルーハーツのボーカリストである甲本ヒロト氏が、「学校に居場所が無い」という子どもの相談に答えた言葉があります。

“居場所あるよ。席あるじゃん。そこに黙って座ってりゃいいんだよ。友達なんていなくて当たり前なんだから。友達じゃねぇよ、クラスメイトなんて。たまたま同じ年に生まれた近所の奴が同じ部屋に集められただけじゃん。(中略)ただ、友達じゃないけどさ、喧嘩せず自分が降りる駅まで平和に乗ってられなきゃダメじゃない?その訓練じゃないか、学校は。友達でもない仲よしでもない好きでもない連中と喧嘩しないで平穏に暮らす練習をするのが学校じゃないか。だからいいよ、友達なんかいなくても。”

この言葉はかなり本質を突いているのではないでしょうか。もしお子さまが「学校に居場所が無い」「友だちがいない」と悩んでいるのであれば、甲本氏の言葉をそのまま伝えてあげるだけでも随分と気持ちが楽になると思います。

また、人間関係で悩んでいるお子さまは、“学校が世界の全て”と感じていることが非常に多いです。というのも、お子さまはたった十数年程度しか人生を経験しておらず、その半分は学校で過ごしているようなものですので、学校が世界の全てだと思ってしまうのも致し方ありません。ですが、私たち大人が知っているとおり、学校は世界のごく一部に過ぎません。学校の外にも世界は無限に広がっていて、クラスメイトの30人と仲良くできなくても、それ以外の何百人、何千人とこれから出会い、仲良くなれる可能性があります。

お子さまとお話しする際には、「中学校を卒業したらまた新しい友達と出会えるよ」「今のクラスの子たちとは相性が悪かっただけ。気にしなくて大丈夫だよ」などと言葉を掛けてあげると良いでしょう。

また、その際には、“自分で行きたい学校を選んで進学できる”という学力面での自信があると、より前向きに次の場所で頑張ろうという気持ちになれます。不登校のサポートにおいては、心の持ち様と学力の両面からアプローチすることが事態の改善を早めることも多いため、ぜひ意識して取り組んでいただければと思います。

不登校の要因③:マイナス思考や心配性な性格

不登校になりやすい、あるいは不登校が長引きやすいお子さまの性質として、
 

・マイナス思考が強く、悲観的である
・周りの目を過度に気にしてしまう


といったものがあります。これらは生まれつきの性質である場合も多いため、一朝一夕に変えられるものではありませんが、お子さまの話にじっくりと耳を傾けるとともに、ものの見方・考え方に偏りがある場合は、お子さまが今後の人生を楽しく幸せに生きていけるよう、できるだけニュートラルな考え方を持てるように働きかけていくことが大切です。

例えばお子さまが、「みんなが私のことを馬鹿にしている」と発言するときなどは、「みんな」の部分に注目します。「みんなって、クラスのみんなのこと?」などと具体的に聞いていくと、実際にはあるグループの4,5人だけを指していて、いわゆる“みんな”ではない場合などがあります。

ただ、お子さまの気持ちとしては5人だけに馬鹿にされているのではなく、クラス全体、学校全体、あるいはこの世の全ての人が自分を蔑んでいるような感覚に陥ってしまっていることもあります。そのようなときはお子さまの気持ちを否定せず、「そう感じているんだね。それは辛いね」とまずは共感することから始めます。

お子さまが「自分の気持ちを理解してくれる人がいる」と感じて気持ちが落ち着いてきたら、考え方の偏りの部分に少しずつアプローチし、「お母さん/お父さんは馬鹿にしていないよ」「そのグループの人とは、いずれ進学で離れられるよ」など現実的な考え方に誘導していくと、お子さまも極端なマイナス思考から抜け出せるようになっていきます。

「学校に戻ったら、みんなから奇異の目で見られるのではないか」と心配するお子さまの場合は、例えば、「あなたの他にもクラスに不登校の子がいたとして、久しぶりに登校してきたら、貴方はからかったりいじわるしたりするかな?」と立場を変えた視点でのシミュレーションを促すなどが効果的です。

マイナス思考が強かったり、極端に心配性な性格であったりするお子さまの場合は、不安や心配な気持ちで頭がいっぱいになってしまい、状況を冷静に判断できなくなってしまっていることがあります。

冷静に考えれば大したことが無い問題でも、心が揺らいでいると解決できないように感じて落ち込んだりパニックになってしまったりした経験がある方は、大人でもいらっしゃると思います。

加えてお子さまは人生経験も浅いため、「物事を一歩引いて見る」ということができない場合も多いです。お子さまが目の前のことで一杯一杯になっているときは、漠然とした不安を一つ一つの具体的な問題として分解して考えられるよう、周りの大人が上手くアシストしてあげることが大切です。

これらのアプローチはすぐに目に見える効果が現れるものではありませんが、不安で頭がいっぱいになってしまったときに、落ち着いて現実を見て一つずつ対処していくというやり方は、大人になってからも必ず役に立ちますので、ぜひ意識的に取り組んでいただければと思います。

78. 学校復帰させるにはどうすれば良い?

不登校から学校復帰を目指す場合は、不登校の原因を特定し、その原因に応じたアプローチを行う必要があります。

ただしこの際には、不登校の解決=学校復帰ではないことには注意が必要です。例えば、生まれつき知能が高く(=ギフテッド)、みんなと同じペースで教科書に沿った勉強をすること自体が苦痛であるようなお子さまもいらっしゃいます。こうしたお子さまの場合は無理に学校復帰せず、フリースクールやホームスクーリングを利用するのも解決策になり得ます。また、クラスの教室には週に2日程度通い、残りはフリースクールや特別教室で自習するなどの方法も考えられます。

何を以って「不登校の解決」とするのかはお子さまそれぞれで異なりますので、お子さまにとってより良い選択肢は何なのかについて、いろいろな可能性を検討していくことが大切です。

お子さま自身が学校復帰を望んでいて、本人の性質としても学校に通うことが望ましいと考えられる場合は、「①原因を特定する」「②学力を伸ばす」「③保健室や相談室登校から始める」などのアプローチで学校復帰を目指していくと良いでしょう。

学校復帰の方法①:原因を特定する

不登校を解決するためには、まずは原因を特定することが大切です。多くの場合、不登校の原因は複合的であるため、一つ一つの原因を分解して、それぞれにアプローチしていく必要があります。

原因を特定する方法については、お子さまに直接「どうして学校に行けないの?」と聞いてもはっきりとした答えが返ってくることは少ないため、別の手段で原因を探っていく必要があります(→関連項目:76. 学校に行きたがらず、理由を聞いても答えない)。最も有効なのは学校の先生から話を聞くことですが、その際にはできるだけ詳しく、具体的に聞き取るようにしましょう。

例えば、「最近変わった様子はありませんでしたか?」と一般的な質問をするのではなく、「期末テストの点が悪くて家では落ち込んでいたのですが、学校ではどうでしたか?」「○○さんとは仲が良いと聞いていますが、他にどんな子と話していることがありますか?」「最近、クラスの仲良しグループのメンバーが変わったりしたことはありますか?」など勉強や人間関係などについて、具体的に聞いていくと良いでしょう。

また、学校の先生だけでなく、仲の良いお友だちやその保護者さまなどに話を聞いてみるのも良いでしょう。担任の先生からは見えないお子さまの姿を知ることができるかもしれません。

ただ、このように学校やお友だちから情報を集める場合は、お子さま自身がストレスやプレッシャーを感じないように配慮することも大切です。いろいろと詮索されるように感じて嫌だと感じるお子さまや、「お母さん/お父さんが学校と頻繁に連絡を取っている…自分が学校に行けていないせいで手間をかけているんだ」と自分を責めてしまうお子さまもいらっしゃいますので、学校と連絡を取ったり、不登校の原因を探ったりすることがお子さまのストレスやプレッシャーにつながりそうな場合は、お子さまに分からないように連絡を取るなどの配慮を行いましょう。

また、場合によっては原因の特定をいったんお休みして家族でゆっくりと過ごす方が、お子さまの心が安定し、不登校からの回復につながりやすいこともあります。(関連項目→77. 不登校の原因は何?不登校になりやすい環境や性質はある?

学校復帰の方法②:学力を伸ばす

「①原因を特定する」をとおしてある程度不登校の原因が分かれば、次は学力を伸ばしていく段階に入ります。不登校の主な原因が人間関係であったとしても、学校に行けないことで勉強が遅れてしまい、そのことでさらに学校復帰しづらくなるというケースは非常に多いです。

勉強が得意なお子さまの場合であっても、学校復帰の際には学力面での遅れがネックになることが多いため、「どんな塾や家庭教師を利用するか」「学期や学年の変わり目で復帰することを目指すのか、あるいは特に期限は決めずに勉強だけ進めておくか」など、早めに対応や方針を決めておくと良いでしょう。

また、特に人間関係の悩みに関しては、原因そのものを取り除く(クラスを変えてもらう、先生を交代させる等)ことが難しいため、お子さま自身の考え方にアプローチし、「誰から何を言われても、自分はありのままの自分で良いと思える心の持ち方(自己肯定感、自信)」を身に付けていくことが一つの解決方法になります。学力を伸ばすことは、そのままお子さまの自信や自己肯定感につながりますので、人間関係のトラブルに打ち勝っていく手段としても有効であると言えます。

ただし、不登校のお子さまはメンタルが非常に不安定な状態にあります。勉強を頑張ることが、さらにプレッシャーやストレスにつながり、学校復帰どころではなくなってしまうこともありますので、勉強を始めるタイミングについては丁寧に見極めていく必要があります。

不登校になったばかりで、表情が暗い・口数が少ない・ご飯をあまり食べない・睡眠時間が短い、あるいは極端に長いなどの状態にある場合は、生きるためのエネルギー自体が枯渇している状態ですので、勉強どころではありません。このようなときは気力と体力の回復が最優先ですので、できるだけゆっくりと過ごさせて、心と身体のエネルギーが回復するのを待ちましょう。

気力や体力が復活してくると、保護者さまとお話ができたり、ゲームや動画を楽しめたりできるようになります。この段階ですと、お子さまも口には出さないものの「学校に行かなきゃ。でも勉強が遅れてしまっているし、どうしよう…」と考えている場合が多いです。大人の側から話を持ち出さなくても、お子さまから自然に勉強や学校の話題が出てくることも多いため、1か月程度は何も言わず見守ってみると良いでしょう。

待ってみてもなかなか学校の話題が出てこないときは、「この間先生とお話しして、~」などそれとなく話題を振ってみると、お子さまの方から「私/僕もそろそろ勉強しなくちゃと思っている」と話してくれることもあります。

ちなみに、「そろそろ学校に行こう!勉強はどうする?」などとより積極的な声掛けを行う方法もあります。保護者さまにはっきりときっかけを与えてもらった方が動きやすいというお子さまもいる一方で、気持ちの準備が間に合わず、逆に心を閉ざして不登校直後の段階に逆戻りしてしまうお子さまもいますので、お子さまの性質に合わせた声掛けをすることが大切です。

お子さまに「勉強をしたい」という気持ちが湧いてきたら、塾や家庭教師を選んでいきましょう。その際には、お子さまが不登校の状態であることを踏まえ、「小さな成功を重ねて、自信をつけていくこと」を指導の方針としている先生を選ぶことが大切です。

不登校の状態にあるお子さまは、「学校に行けていない自分」に引け目を感じ、自信を無くしている場合がほとんどです。また、授業を受けられず勉強が遅れている点に関しても、「これから追いつけるのだろうか」と不安な気持ちを抱えています。

こうした自信の無さを回復させるためには、まずは簡単な問題からチャレンジして、「自分にもできるのだ」という実感を得ることが大切です。簡単な問題が解けたら、次は少し難しい問題、その次はさらにもう少し難しい問題…と少しずつステップアップしていくことで学力を伸ばしていくことができます。また、それに伴って徐々に自信を回復させることができ、学校復帰も現実的なものになっていきます。

自分は何をやっても駄目だと思いながら勉強するのと、自分はやれば出来るのだと自分を信じながら勉強するのとでは、学力の伸び方は全く違ったものになります。ですので、この「子どもに自信を持たせ、前向きに頑張ってもらう」という指導方針は非常に重要であり、塾や家庭教師を選ぶ場合は、こうした指導方針を持っている先生かどうかを必ず確認していただきたいと思います。

まずは自信を付けてほしいことや、簡単な問題から少しずつステップアップするような形での指導を望んでいることを率直に伝え、どのような反応が返ってくるかによって、その先生の指導の質やお子さまとの相性を判断していくと良いでしょう。(関連項目→77. 不登校の原因①:学力不振

学校復帰の方法③:保健室や相談室登校から始める

気力や体力が十分回復し、勉強に対しても自信がつけられたら、いよいよ具体的に学校復帰を見据えて動いていくことになります。ただし、いきなり学校にフルで通えるお子さまはあまり多くありません。ほとんどの場合は、まずは週に1~2回、午前中だけ登校してみたり、教室に行かずに保健室や相談室で過ごしたりして、「学校に行く」という行為に徐々に慣れていくという段階が必要です。

また、遠足や運動会など、学校行事の日だけ登校するというお子さまもいらっしゃいますし、逆にそうしたイレギュラーなイベントが苦手で、行事の日は学校復帰後も教室で自習したり、欠席したりするお子さまもいらっしゃいます。

あるいは、高校進学のために定期テストだけ受けに行くというパターンもあります。公立高校へ進学する場合は内申点が非常に重要であり、テストを受けたかどうかや、テストの点数で合否が決まることも少なくありません。教室に入るのが難しい場合は、別室でテストを受けるなどの対応ができる場合も多いため、学校の先生と相談しながらお子さまにとってより良い方法を見つけていきましょう。

79. ゲームや動画などに夢中で昼夜が逆転している

夜遅くまでゲームをしたりスマホを見たりしていると、朝起きられず、学校に行くのも億劫になってしまいます。また、中には昼夜逆転してしまっているお子さまもいらっしゃるかもしれません。「いい加減にしなさい」とゲームやスマホを取り上げると、暴れ出して手を付けられなくなってしまうため途方に暮れているというご家庭のお話も伺うことがあります。

昼夜が逆転するほどゲームやスマホにのめり込んでしまっている場合は、それらを取り上げても状況は好転しません。ゲームやスマホにのめり込むお子さまの多くは、現実があまりにも辛いため、逃避行動としてゲームやスマホに頼っています。彼ら/彼女らにとってゲームやスマホは現実から逃れるための最後の居場所であり、いわば命綱です。それを力ずくで取り上げられると、パニックになったり、保護者さまを攻撃したりといった行動を取ってしまいます。また、ゲームやスマホを取り上げると、お子さまにとって家庭が安心できる場所では無くなってしまうため、親子の信頼関係も大きく傷付いてしまうことがあります。

また、ゲームにのめり込んでしまうお子さまの中には、脳の報酬系の機能(快楽をコントロールする仕組み)が弱くなっていて、「ゲームをやめたくてもやめられない」という状態に陥っていることもあります。特にADHDの方はゲーム依存になりやすいと言われていますが、それはこの報酬系の機能が生まれつき弱いことが関係していると考えられています。

このような状況にある場合は、ご家庭だけで解決しようとせず、専門機関やゲーム依存に対応している児童精神科などに早めに相談することが大切です。また、できればゲームやスマホに完全に依存してしまう前に、お子さまからのヘルプサインに気付き、現実世界の辛いことから距離を置いたり、取り除いたり、もしくは専門機関に相談することが望ましいですが、ヘルプサインに気付かなかった・間に合わなかった場合は、専門機関や医療機関に相談するとともに、その事実を保護者さまが受け止めることから始めましょう。

保護者さまが気付かない間にお子さまは大きなストレスを感じていたということになりますので、まずはこれまでの生活や関わり方を見直すことが大切です。児童精神科などに相談する際に、お子さまが家から出るのが難しいなどの場合には、保護者さまだけで相談・受診しても構いません。お子さま本人が治療やカウンセリングを受けられるのが望ましいですが、ゲーム依存は家族全体に関わる問題ですので、必要に応じて保護者さまがカウンセリングを受ける場合もあります。

核家族化が進み地域とのつながりも希薄になっている現代において、親子の関わりはどうしても家庭内で完結しがちで、その家庭にとっての“当たり前”が大きく偏ってしまう場合もあります。それは社会全体の問題であり、保護者さまがご自身を責める必要はありません。目の前のお子さま、あるいはご家庭が抱えている問題をしっかりと受け止め、改善しようという意志さえあればいつか必ず問題は解決に向かいますので、積極的に専門機関や医療機関を頼るようにしましょう。また、ゲーム依存の背景に発達障害の特性が関係している場合は特に家庭だけでは解決が難しくなりますので、必ず専門機関や医療機関に相談するようにしましょう。

お子さまが少しでも心を開いてくれたり、あるいは完全に依存状態になる前であったりする場合は、ゲーム依存やスマホ依存への対応に長けているフリースクールなどを利用するのも良いでしょう。これらのフリースクールでは、自然の中でできるだけスマホやゲームを手放して過ごすことで、ゲーム以外の楽しいことや面白いことに触れさせるというプログラムが実施されています。ゲームやスマホ以外の居場所を見つけることが依存の改善においては最も重要ですので、こうしたプログラムは非常に効果的です。

ただし、本人が嫌がっているのに無理やり参加させても効果がありませんので、親子の対話がきちんとでき、お子さま自身が「やめたい、でもやめられない、何とかしたい」と心から思える状態になってから参加するようにしましょう。

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80. 学校の先生と相性が合わない

不登校の要因は複合的であり、先生との相性が合わないことだけで学校に行きづらくなるというのは稀です。お子さまに学校に行きたくない理由を聞くと、「○○先生が怖い/嫌だから」と答える場合もありますが、担任の先生や教科担当の先生を代えてもらったとしても、すぐに学校に通えるようになるとは限りません。

また、「先生を代えて」という要求に対して、学校がすぐに対応できるわけでもありません。先生を交代させることは他の子どもたちへの影響も大きく、授業の編成を一から組み直さなければならない場合もあります。さらに、先生の数自体も全国的に不足しているため、病休・産休・育休の代替の先生すら見つかっていない中で易々と先生を交代させることは現実的ではありません。

先生との相性が悪いために不登校になってしまっている場合は、先生の言葉や行動のどんなところが嫌だと感じるのか、お子さまに具体的に聞いてみましょう。「言い方がキツい」「声が大きい」というような威圧感に関するものである場合は、担任の先生(担任の先生に伝えづらい場合は、学年主任や教務主任の先生、教頭先生など)にその旨を伝え、指導方法を改善してもらえるか相談しましょう。やんちゃな子を叱るために大声を出す必要があるという場合は、「怖いと感じたら教室の外(保健室など)に行く」などの対処法を学校と一緒に考えていくと良いでしょう。

「注意されたが、その内容に納得できない(例:プリントが早く終わったので読書していたら怒られた)」のように指導の内容に関わるものである場合は、学校にその旨を伝えても良いですが、根本的な解決は難しいかもしれません。このようなケースでは、「理不尽なルールの押し付け」が問題の根本的にあります。指導力のある先生の場合は、子どもたちの自主性を尊重しながらクラスをまとめることができるため、ルールを押し付けてくることもほとんどありませんが、指導力の低い先生の場合は、子どもたちをルールで縛ることでクラスをまとめようとします。また、そうした先生ほど「なぜそのルールがあるのか?」を考える余裕も無いため、子どもたちの言い分に耳を傾けることもありません。

このような場合に学校にどれだけ意見を伝えても、先生の指導力が急に向上するわけではありませんので、問題を根本的に解決することは難しいと考えましょう。対策としては、お子さまに「大人の能力も人それぞれであること」や「先生が常に正しいとは限らず、間違うこともたくさんある」ということをありのままに伝えてしまうのが良いでしょう。

あるいは、「○○先生はなんでルールを押し付けるんだと思う?」など、納得がいかない出来事があった際にその背景を考えられるようなクエスチョンを出してみるのも良いでしょう。問いかけの形を取ることによって、お子さまは自分の頭で考え、理由を見つけ出そうとします。

「先生には先生の事情があるんだよ」と言葉で伝えるよりも、自分で考えて答えを見つける方がお子さまの中での納得感が増しますし、出来事の背景を考えることを習慣にできると、今後の人生において理不尽な出来事に出会った際にも、「なぜ相手はそのような行動を取るのか」と冷静に分析できるようになり、トラブルにも上手く対処できるようになります。

ほかにも、「なぜルールはあるんだと思う?」など、より本質的な議論につなげることも、お子さまにとって非常に大切な学びになります。いずれにせよ、変に子ども扱いせず、物事の本質を考えるための練習の機会であると捉えて上手にアシストしてあげると良いでしょう。ルールに対しておかしいと感じられる感性は非常に大切ですので、お子さまの自主性や物事を批判的に見る力を削がないようにしつつ、上手く立ち回れるようにそれとなく誘導してあげることがポイントです。先生の理不尽な指導に腹が立つこともあるかとは思いますが、上手く逆手に取り、お子さまの生きる力を伸ばす機会にしていきましょう。

また、抽象的な議論が難しいと感じる場合は、例えば「プリントが終わって読書をしているだけで先生が怒ったのは、他の子も読書をし始めたらどうしよう!と先生自身が不安になったからなんだよ」と具体的な言葉で説明し、そんなことないのにねぇ、とご家庭では笑い話にしてしまうのも良いでしょう。

ただし、先生に面と向かって「ルールが無いとクラスをまとめられないんでしょ?」と言うのはマナー違反であり、先生の心を傷付けることにもなるため避けなければなりません。お子さまにも「理不尽だと感じたら家でいっぱい吐き出せば良いけれど、先生にぶつけてもケンカになるだけだからやめようね」と念押しして伝えておくと良いでしょう。

それでもお子さまが、「先生は大人なのだから、何を言われても受け止めるべきだ、我慢するべきだ」といった主張をする場合は、「じゃあ、あなたが大人になったら何を言われても平気かな?」「お母さん/お父さんは大人だけれど、自分の苦手なことをキツい言葉で指摘されたら傷つくよ」など、お子さま自身や保護者さまだったらどうか?などの例を挙げて議論を進めると良いでしょう。

大切なのは、お子さまが「確かにその通りだな」という納得感を得ることです。そのためには、お子さまと対話を重ね、双方が納得いくまで議論を重ねることが大切です。もしご家庭だけでこのような話し合いを持つことが難しいと感じる場合は、学習面以外のフォローができる家庭教師やカウンセラーなどにお子さまとの対話を任せるのも良いでしょう。お子さまの中には大人が顔負けするほど口が達者な子もいるため、お子さまに負けないレベルで議論ができる大人が相手をしてあげることも、お子さまの成長にとっては非常に大切です。

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81. 不登校の状態にあるが、学校の対応に納得できない

登校渋りや不登校の状態になった後の学校の対応に今一つ納得できず、ご家庭と学校の距離が離れてしまったというケースをよく伺います。少し前には、「早く学校に来てね」とクラスメイト全員から寄せ書きされた色紙を家まで持ってきた先生がいるという話がSNSで拡散されていましたし、それと同じようなエピソードは現在もSNS上に溢れています。

こうした対応に関して、何とかしてほしいと教頭先生や校長先生とも話をしたが、なかなかこちらの思いが伝わらないという場合は、市町村の教育委員会に相談すると良いでしょう。多くの市町村は不登校の児童・生徒への対応に力を入れており、心理士などの専門資格を持った人が対応する窓口が設置されていることもあります。

なお、私立学校の場合は教育委員会の所管外になるため注意が必要です。基本的には、その学校が所在する都道府県の「私学課」や「文教課」といった部署が担当窓口になりますが、地域によって扱いが異なる場合も多いため、詳細は各自治体に問い合わせるようにしましょう。

また、基本的に相談窓口は悩みを傾聴することが主目的であり、具体的な解決策まで提示してくれるケースは少なくなっています。教育委員会に相談するときは、具体的に学校にどのような対応をしてほしいか(朝の欠席連絡を週1回でOKにしてほしい/転校生への寄せ書きに参加したくない/担任との面談には学年主任も同席してほしいなど)を明確にしておきましょう。あらかじめ、こちらの希望を箇条書きにしたメールを送りつつ電話でも相談するなどすれば、意図が伝わりやすく、対応も早まる可能性があります。

ちなみに、不登校に対して見当外れの対応をする先生が続出する背景には、基本的に学校の先生が“学校が好き”であることが原因ではないかと考えています。多くの先生はかつて、毎日学校に通い、クラスメイトと談笑し、勉強もスポーツも平均程度にはこなせる子ども時代を過ごしており、そして多くの先生は、子ども時代に学校が楽しくて好きだと感じたからこそ、教師という職業を選んでいることが多いはずです。学校が好きで先生になった人にとって、「学校が好きではない子」の気持ちはどうしても理解しづらいものでしょう。クラスメイトの寄せ書きを持ってきた先生に、おそらく悪気は一切ありません。その先生にとって学校はとても魅力的な場所で、「あなたもこれば良いのに!」と心から思って寄せ書きを持ってきたのだと思います。

ですが、この記事を読んでいただいている方の多くがご存知のとおり、学校が好きではない子もたくさんいます。知能指数が平均の枠内(IQ90~110)に収まり、発達に凸凹が無く、先生の言うことを疑わず素直に聞ける子以外にとって、学校は居心地が悪く、プライドを傷付けられ、理不尽を押し付けられる場所になり得ます。

こうした「学校が好きではない子」「学校に馴染まない子」の存在は、不登校や発達障害の問題が広く認識されるにつれて、“学校好き”の先生の間でも少しずつ意識されるようになりました。ただ実際のところ、こうした子どもたちにどのように接すれば良いのかが感覚的に掴めず、空回りや的外れの対応が続いている現状も見受けられます。

とはいえ、学校が好きな先生たち(=学校に馴染まない、という感覚がそもそも理解しづらい先生たち)も、学校に馴染まない子を排除したいと考えているわけではありません。学校が好きかどうか、馴染むか馴染まないか以前に、子どもたちのためにできることをしてあげたいという気持ちは、先生も保護者さまも同じはずです。

学校復帰だけがゴールではないこと、学力ではなく自己肯定感を大切にしてあげたいこと、今はゆっくり休ませたいこと……ご家庭の方針をまずはしっかりと学校に伝えましょう。それでも理解が不十分だと感じる場合は、担任の先生だけでなく学年主任の先生や保健室の先生、スクールカウンセラー、教頭先生、その他お子さまが信頼している先生にも同席にしてもらって対話を続けましょう。学校と家庭が話し合う際には、具体的な対応を決める前に、大きな方針を共有しておくことが大切です。

学校の対応に疑問を感じてやきもきしてしまうこともあると思いますが、その際に勢いに任せて強い言葉(「若い先生には任せられない。校長先生と話させてほしい」「教育委員会に訴える」等)を使ったりしてしまうと、学校側も身構えた対応となり、本音で話し合うことが難しくなってしまいます。

例えば、何か気になることがあるときにだけ学校に連絡を取るのではなく、懇談会やPTA行事などにも積極的に参加し、学校と親しい関係を作っていくことなどは非常に大切です。ある保護者さまは、お子さまが長らく不登校の状態にあったのですが、積極的に学校行事などに顔を出し、担任の先生だけでなく他のクラスの先生や教頭先生とも親密な関係を築いていらっしゃいました。

同じく不登校のお子さまを持つ保護者さまからは、「自分の子どもは学校に行っていないのに、なぜ行事を手伝ったりするの?」と聞かれたそうですが、自分の子が通っていない分、親が学校としっかりと関係を作り、子どもが学校から切り離されてしまわないようにしたいとの考えから積極的に行事に参加していらっしゃるとのことでした。

また、学校に協力的であることで、先生たちも「あのお母さんのご希望なら叶えてあげたい」と感じやすく、「別室で登校したい」「放課後に面談をしてほしい」といった要望もすんなりと受け入れてもらえることが多いとのことでした。

「北風と太陽」の童話ではありませんが、対立ではなく“協調・協力”が結果として上手くいくことも多いため、学校との交渉する際の一つの方法として、心に留めておいていただければと思います。

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82.クラスメイトを注意してから関係が悪くなり、学校に行きづらくなった(ASDの場合)

クラスメイトの悪ノリを注意したら、「ノリの分からない奴だ」と思われてしまい、それ以降クラスに馴染めず学校にも行きづらくなってしまった…というケースがあります。特にASDのお子さまによく見られるケースで、ASDの『ルールにこだわりすぎる』という特性が要因となっています。

ルールを守ることは決して悪いことではありませんが、一方で子どもたちにとっては「一緒にルールを破る」ことがコミュニティの一員である証のようになっていたりもします。また、「制服のボタンは一番上まで締める」というルールを真夏でも守るなどして、周りから特異な目で見られてしまうなどの場合もあります。空気を読むことや同調圧力が蔓延する学校の教室は、ASDのお子さまにとっては非常に過ごしづらく、時にはからかいの対象になってしまうこともあります。

こうした状況において、ASDのお子さまに対して周りに合わせるよう強いるのは望ましくありません。無理に周りに合わせるとストレスが溜まり、不登校やうつ病、不安障害といった二次障害を引き起こすこともあります。ASDのお子さまの場合は、本人のルールを守りたいという気持ちは尊重しつつ、周りに対して同じようにルールを守ることを求めないようにするという落としどころを見つけることが大切です。

例えば、自習時間にクラスメイトが騒いでいるというケースでは、「自習の時間は静かに勉強する」というルールはお子さま自身が守れていればOKで、他のクラスメイトに対してそれを守らせる必要は無いということを説明しましょう。この場合、他のクラスメイトを注意するのは先生の役割であり、お子さま自身が注意する必要はありません。

ASDのお子さまはケースバイケースで柔軟に対応することが苦手ですので、できるだけたくさん具体例を出し、それぞれの場面で適切な行動の例を示して覚えていくというトレーニングを積み重ねると良いでしょう。通級指導教室や療育センターではこうしたソーシャル・スキル・トレーニング(SST)を受けることができますので、積極的に参加してみると良いでしょう。

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83. 友達が少ないので心配

いつも一人で遊んでいて、友達が少ないみたい…と心配している保護者さまもいらっしゃるかもしれません。ただ、私の経験上、友達が多いかどうかと不登校になるかどうかはあまり関係が無いように思います。不登校の状態にあるお子さまの中には、お友だちが多い子もいれば少ない子もいますし、もちろん学校に通えているお子さまの中にもお友だちが少ない子、多い子はいます。

大人数でワイワイと騒ぐのが好きな子もいれば、一人で静かに本を読んだり、ゲームやパソコンで遊んだりするのが好きな子もいます。特に保護者さま自身がお友だちが多いタイプの方である場合はつい心配になってしまうかもしれませんが、ほとんどの場合は何も問題は無いため安心していただいて大丈夫です。

ただ、お子さま自身が「お友だちがほしい!」と思っているにもかかわらず、なかなかお友だちができない場合は注意が必要です。単に話しかけるのが苦手でクラスメイトの輪の中に入るタイミングをつかめていない場合は、まずは「自分から話しかけてみよう」と励ましてあげましょう。話しかけてはいるものの関係が長続きしない場合は、お子さまがコミュニケーションの方法をまだ理解しきれていないのかもしれません。「相手の話を聞くときは相槌を打つ」「服装や持ち物を褒める」「一方的に話さず、会話のキャッチボールを意識する」など、基本的なコミュニケーションの取り方についてアドバイスしてみると良いでしょう。

それでもコミュケーションが改善せず、お友だちができにくかったり、喧嘩別れを繰り返してしまったりする場合は、コミュニケーションの苦手さが発達障害の特性に起因するものである可能性が考えられるため、注意して見守る必要があります。

例えば、発達障害の特性を持つお子さまは、「会話はキャッチボールである」と頭では理解していても、ついつい自分が興味のあることを一方的に話してしまう場合があります。要因としてはADHDの衝動性(好きなことに関するおしゃべりを我慢できない)、ASDのこだわりの強さ(好きなことに対して夢中になってしまう)が考えられますが、いずれもソーシャル・スキル・トレーニング(SST)によって改善することができます。

ご家庭でできる方法としては、ボールを用意して、ボールを持っている人だけが話して良いというルールで雑談をします。そうすると、いわゆる会話のキャッチボールが可視化されるため、ついついしゃべりすぎてしまうお子さまも、おしゃべりを我慢できるようになります。このトレーニングを繰り返し、ボール無しでも会話のキャッチボールができるようになることを目指します。

ほかにも、「太ったね」など悪気なく相手を傷付ける発言をしてしまうことで友達が出来づらいというケースもあります。ADHDのお子さまの場合は、考える前に思ったことを口に出してしまうという衝動性が、ASDのお子さまの場合は、相手の気持ちを想像するのが苦手であることが要因となります。これもSSTによって改善することが可能で、ADHDのお子さまの場合はロールプレイングを繰り返して言葉にブレーキをかける練習をしたり、ASDのお子さまの場合は具体的な例を挙げて、適切な振る舞いを一つずつ覚えていくなどの方法があります。

いずれにしても、発達障害のお子さまの人間関係が上手くいかないのは本人のせいではありません。本人は一生懸命お友だちになろうとしているのに、なぜか周りが離れていくという状況ではストレスも大きく、不登校の原因にもなりやすくなります。もしお友だちの少なさに発達障害の特性が関係している可能性がある場合は、お子さまを責めるのではなく、「どうしたらお互いに気持ちよく遊んだり、お話ししたりできるか一緒に考えよう」と声掛けをし、必要に応じて療育センターや通級指導教室でSSTに取り組むと良いでしょう。コミュニケーションスキルは大人になってからも非常に重要ですので、早いうちから特性に気付いて対処していけると良いですね。

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84.そそっかしいことや注意力が無いことを周りにからかわれる(ADHDの場合)

ADHDの特性は「不注意」「衝動性・多動性」の2つであり、それらの特性から学校生活では以下のような困りごとを抱える場合があります。
 

・忘れ物が多い
・机の中がいつもぐちゃぐちゃ
・授業中にぼーっとしていて、先生の質問に答えられない
・授業中に衝動的に発言する
・静かにしなければいけない場面でも、おしゃべりがやめられない
・先生の指示を聞いておらず、見当外れな行動を取る


これらの行動を、クラスメイトから(時には先生からも)揶揄われてしまうことがあります。必ずしも本人を蔑む意図はなく、周りの人は軽い気持ちで「おっちょこちょいだね」「うっかりしすぎでしょ」と発言していることも多いのですが、お子さまの心は深く傷ついてしまっている場合があります。

また、本人は「気を付けたい、直したい」と思っているにも関わらず、発達障害の特性ゆえに生じている行動であるため、本人が意識するだけではなかなか改善できない場合が多くなっています。そのため、「いくら気を付けても改善できない。自分はダメなんだ」と自信を無くし、学校に行けば揶揄われてばかりなので行きたくない、と不登校になってしまうお子さまもいらっしゃいます。

このようなケースにおいては、まずは学校に相談し、本人の苦手なことや困りごとは発達障害の特性ゆえのものであり、揶揄うような発言は避けてほしいことをはっきりと伝えましょう。

ADHDのそそっかしさや注意力の無さについては、一昔前は「落ち着きのない子」で済まされていた部分もあります。残念ながら先生の中にも、ADHDのお子さまに関して「イジっても良い存在」「悪い見本として○○さんを挙げておけば、クラスがまとまる」程度の認識でしかない人もいます。生まれつきの特性をあげつらわれるのはとても辛く苦しいことですので、毅然とした態度で「やめてほしい」と伝えるようにしましょう。

また、学校におけるADHD由来の困りごとについては、様々な工夫を行うことで軽減していくことが可能です。具体的には、
 

・黒板横の掲示物を無くすか、カーテンなどで隠す(黒板の内容に集中しやすいようにするため)
・指示は一つずつ出す(一度にいろいろ言われると混乱してしまうため)
・机の中の整理のやり方は、先生が具体的に示す。週に1回みんなで机を整理する時間を作る。(机の左は道具箱、右は教科書・ノート。道具箱の中のレイアウトの例まで示す。みんなで取り組むことで劣等感を和らげる)
・授業変更や行事の際の手順などは、イラストで視覚的にも示す(耳からの情報だけでは集中しづらいため)


などが挙げられます。お子さまの特性に合わせた配慮はいろいろと考えられますので、学校と相談しながら検討していただければと思います。特に、最近では養護教諭(保健室の先生)やスクールカウンセラー、特別支援コーディネーターなど発達障害の知識や理解が豊富な人材が学校にも配置されていますので、担任の先生だけでなくそうした先生も交えながら支援方法について検討していくと良いでしょう。

85. 朝起きられない、生活リズムが不規則である

成長期のお子さまにとって、規則正しい生活は何よりも大切です。「朝起きられなくて困っている」というご相談はよくお伺いしますが、大抵の場合、そもそも生活リズムが不規則で、夜にしっかりと眠れていないというケースが多くなっています。

お子さまが夜眠れない原因には、ゲームやスマホに夢中で夜更かしをしてしまうほか、塾や部活、習い事などで忙しく余暇の時間が無いこと、あるいは日中は勉強漬けで座りっぱなしのため、夜になっても体力が有り余ってしまっていることなどが挙げられます。朝の寝坊や夜更かしを一方的に叱るのではなく、その背景や原因が何かを分析しサポートしてあげることが大切であり、お子さまの心身の健康を守ることにつながります。

原因①:ゲームやスマホに夢中で夜更かししてしまう

夜更かしの原因がゲームやスマホである場合は、夜遅くまでゲームやスマホを触ることのデメリットをまずは冷静に伝えましょう。夜遅くまでゲームやスマホを触ることのデメリットとしては、例えば、
 

・成長期にしっかりと睡眠を取らないと、身体や心の成長に悪影響を及ぼす
・睡眠不足だと脳の働きが悪くなり、勉強や部活で実力を十分に発揮できなくなる


などが挙げられます。これらは科学的にも証明されていることですので、根拠を示して説明すると良いでしょう。しっかりと睡眠を取ると、頭がスッキリして勉強の内容もすんなりと頭に入ってきます。ひとたび睡眠の重要性が分かれば、自発的に睡眠を取ろうと思えるお子さまも多いため、「騙されたと思って8時間以上寝てみよう」などと勧めるのも良いでしょう。

また、保護者さまから言うだけではなかなかお子さまの心に言葉が響かず、ずるずると不規則な生活を続けてしまう場合もあります。その場合は、お子さまが「この人の言うことは聞いた方が良い」と感じている人物(学校の先生や部活のコーチなど)から、上述の科学的根拠を示しつつ、はっきりと「早く寝なさい」と伝えてもらったり、外遊びなどをして日中に体力を消耗したりと、他の手段と併せて対策していくなどすれば上手くいく場合が多いです。

こちらの実例コラム<プロ家庭教師メガジュンでの解決例#7:動画に夢中で深夜2時まで夜更かししてしまうGくん>で詳しく解説していますので、ぜひ併せてご覧ください。

原因②:余暇の時間が少ない

余暇の時間が少ないことも、生活リズムが不規則になる原因になります。学校・部活・塾・習い事と、ギチギチに詰まったスケジュールで自由に使える時間が無いと、少しでも長く起きておいて自分の時間を確保したくなってしまいます。あるいは、過密なスケジュールで溜まったストレスを発散するためにゲームやスマホを触り、結果として寝る時間が遅くなってしまうケースもあります。

働き盛りの社会人ですら、残業続きで自由時間が無いと心身の調子を崩してしまいます。小学生や中学生が過密なスケジュールをこなすのは、当然ながら健康上望ましくありませんので、速やかに一日のタスクを見直すようにしましょう。

お子さま自身はそのスケジュールが当たり前になってしまっていて、負荷が大きすぎることになかなか自分では気付けません。睡眠時間は毎日8時間以上、余暇の時間も2時間程度は余裕で取れるようなスケジュールが理想ですので、大人がきちんと調整してあげるようにしましょう。

また、お子さま自身が「全部を頑張りたい!」と言っている場合でも、このままでは身体を壊してしまうということをはっきりと伝え、習い事や部活の頻度を落とすなど、お子さまと話し合いながら丁度良い改善案を見つけるようにしましょう。大人が一方的に「まずは部活をやめなさい」と決めるのではなく、お子さまの意見を尊重し、お子さま自身が納得できる形でスケジュールを立て直すことが大切です。

原因③:日中座りっぱなしであるため、体力が有り余っている

体力が有り余って夜寝られない問題は、特に中学受験を目指している小学生のお子さまによくあるケースです。中学生や高校生は部活動があるため、ある程度日中に体力を消耗できるのですが、小学生の場合は運動系の習い事をしているなどではない限り、年齢相応の運動量が確保できず、夜になっても体力が余ってしまいます。中学受験を目指しているお子さまだけでなく、外遊びが少なく遊びの中心がゲームであるお子さまの場合も、同様の問題が生じることがあります。

こうしたケースでは、周囲の大人が意識的にお子さまが身体を動かす機会を作ってあげることが大切です。勉強で忙しい場合は息抜きとしてキャッチボールに誘ってみたり、ゲームで遊ぶことが多い場合は無理にゲームを取り上げるのではなく、ゲームに関連付けながら上手く外遊びに誘導するなどすると良いでしょう。

例えば、スプラトゥーンが好きなお子さまであれば、「『ガチアサリ(※ゲーム内のルールの一つ。玉入れとラグビーを合体させたような遊び)』をリアルでもやってみよう」と声を掛けて、簡易的な玉入れやラグビー遊びをしても良いですし、フォートナイト(※一人称視点のシューティングゲーム)が好きなお子さまには、水鉄砲での遊びを提案するなども良いでしょう。どうぶつの森が好きなお子さまであれば、ゲーム内でその季節に登場する虫や魚を探しに行こうと誘うのも良いですね。

公園なども少なくなっており、子どもが外で遊んでいると「うるさい」と苦情が来てしまう場合もありますので、外遊びを勧める際には大人がある程度環境を用意してあげることも大切です。また、激しい運動でなくても、外に出て太陽の光を浴びるだけである程度は体力を使いますので、いきなり本格的なスポーツを始めるのではなく、お子さまが「外で遊ぶのも楽しいな」と思えるきっかけを作ってあげるようにしましょう。

★オススメの実例コラム→<プロ家庭教師メガジュンでの解決例#7:動画に夢中で深夜2時まで夜更かししてしまうGくん>

86. いつもイライラしている、情緒が不安定である

お子さまがいつもイライラしていたり、すぐ泣いたり怒ったりするなど情緒が不安定な場合、「①ストレス」「②発達障害の特性」「③ギフテッドの過度激動」などが原因として考えられます。ある程度のイライラや情緒不安は成長過程における健全な反応(思春期・反抗期など)である場合もありますが、それによって食欲不振や過食、不眠などの身体症状が出ていたり、それが何年も続いていたりする場合はうつ病や不安障害、パーソナリティ障害などの可能性が考えられるため、医療機関への受診が必要となります。

以下ではそれぞれのケースについて詳しく解説していきますが、気になることがある場合はご家庭だけで抱え込まず、学校や医療機関・専門機関に積極的に相談するようにしましょう。

原因①:ストレス

イライラや情緒不安の一番の原因はストレスです。ただ、一口にストレスと言っても何にストレスを感じているかは様々であり、後述の「②発達障害の特性」や「③ギフテッドの過度激動」がストレスの原因となっていることもあります。

お子さまのストレスの原因として多いのは、学校の人間関係や学力不振、家庭環境などです。ただ、お子さまは自分の気持ちを言葉にする能力が未熟であることも多く、「なぜイライラしているのか?」と直接聞いても明確な答えが返ってこない場合も多くなっています。子どもの言語化能力は未発達であることを踏まえ、言葉だけでなく表情や行動からもストレスの原因を見極めていくことが大切です。

また、ストレスへの対処方法としては、その原因を取り除くことが基本です。取り除く方法は場合によって異なりますが、例えば苦手なクラスメイトからは距離を取る、学力不振の場合は本人に合った勉強方法を見つけたり、目標設定を下げたりするなどが挙げられます。ただし、ストレスの原因を取り除く際に、お子さまの意向を無視して大人が一方的に対処することは望ましくありません。

例えば、お子さまが受験勉強にストレスを感じていて、毎日イライラしたり寝不足になったりしているときに、「そんな風になるならやめなさい」と一方的に勉強をやめさせてしまうと、お子さまは「自分にはどうせ無理なのだ」「お母さん/お父さんは自分のことを見限ったのだ」と感じてしまい、自己肯定感が下がってしまいます。

まずはお子さまの体調が心配であること、志望校に合格しようがしまいが、お子さまは保護者さまにとって大切な存在であることをしっかりと伝え、その上で受験勉強を続けるかどうかをお子さま自身に判断させるようにしましょう。「あなたに失望したわけではない」ということを丁寧に伝えることで、お子さまの挫折感を和らげ、自己肯定感の低下を防ぐことができます。

ほかにも、学校で人間関係のトラブルがあった際などに、お子さまの気持ちを聞かずに担任の先生や相手の親に直談判しに行ったり、「もうあの子とは付き合わないように」「学校はしばらく休みなさい」といった判断を保護者さまだけでしてしまうと、保護者さまに対するお子さまの信頼度が下がってしまうだけでなく、お子さまが自分自身の気持ちではなく保護者さまの判断を優先するようになってしまう可能性があります。

自分の気持ちを後回しにする癖がついてしまうと、さらにストレスが溜まりやすくなってしまいますので、「あなたはどうしたい?」「お母さん/お父さんに力になれることはある?」「こんな解決法やあんな解決法があるけど、どう思う?」など、お子さまの気持ちを聞き取り、お子さま自身に考えるきっかけを与えるような声掛けを行うと良いでしょう。

お子さまがストレスを溜めず上手く対処できるようにするためには、「自分で考え、自分で決める力(=自立心)」を身に付けることが大切です。実は、ストレス耐性と自立心は密接に関係しており、自立心がきちんと育っていれば、「自分は自分、他人は他人」と割り切って考えることができるため、様々な場面で適切にストレスに対処できるようになります。

自立心がしっかりと身に付いているお子さまであれば、周りの期待に応えるために無理に勉強を続けることもありませんし、他人の目を気にして人間関係に悩むこともありません。「この環境は自分には合わないな」と感じたら、お子さま自身の判断で適度に距離を取ったり、「そんなものか」と割り切ったりすることができるようになります。

お子さまの自立心を育てるためには、まずは自己肯定感を育む必要があります。「何があっても保護者さまはお子さまの味方であること」を大前提として、お子さまが失敗したり、大人から見て正しくないと思う判断をしたりしたときも、むやみに手出しや口出しをせず、落ち着いて見守ることが大切です。あれもこれもと保護者さまが先回りして対処してしまうと、自分で考える力が身に付かないだけでなく、「自分は親がいないと何もできない」という感覚に陥って自己肯定感が低下してしまうことがあります。

ストレス耐性を身に付けることは、お子さまがこれからの人生を幸せに生きるために必須のスキルと言っても過言ではありません。「イライラしないで!」とただ怒るのではなく、大人として余裕を持ってお子さまの気持ちを受け止め、大人の目線でストレスの要因を分析していきましょう。お子さまがイライラしてしまうのはストレスに耐性が無いためであり、対処方法を適切にアドバイスすることで、お子さまのイライラや情緒不安を改善していくことができます。

原因②:発達障害の特性

お子さまのイライラや情緒不安の背景に、発達障害の特性が関係している場合もあります。

ADHD
ADHDの特性の一つに「衝動性」があるため、感情的になりやすい場合があります。感情を抑えきれず大声を出したり、イライラしたときに思わず怒鳴ってしまったりするなどもADHDの特性が関係していることがあります。また、怒りの感情以外にも、寂しい・悲しいと感じたときに涙を抑えきれず突然泣いてしまうなどの行動が見られる場合もあります。

これらは本人の意思ではなく特性によるものであるため、「我慢しなさい」と言われて我慢できるものではありません。一方で、ADHDの衝動性は加齢とともに落ち着く場合も多く、大人になると急に怒鳴ったり泣いたりすることは少なくなる人がほとんどです。他人や自分を傷つけるような言動がある場合は対処が必要ですが、そうでない場合は子どもの間だけと捉えて受け入れることも必要です。

また、ストレスが溜まりやすい場面になったら席を外したり、イライラして大声を出してしまった後は周囲に謝ったりするなど、感情的にならないように事前に対処したり、感情的になってしまった場合の対応も身に付けておくと良いでしょう。本人に悪気が無いにしろ、「イライラすると怒鳴る人」と周囲に思われてしまってはお子さま自身の生きづらさに繋がってしまいますので、対処方法についても子どもの頃から身に付けておくことが大切です。

ASD
ASDの方は「こだわりが強い」という特性を持っていますが、これは未来のことや他人の気持ちを想像するのが苦手なことが背景にあります。そのため、不確定な出来事や想定外の反応があると不安になったり、パニックになったりしてしまいます。

定型発達の人にとっては当たり前のこと(ちょっとしたルーティンの変更など)でも、ASDの方にとってはストレスの原因になることも多く、細かなストレスが蓄積してイライラしてしまう場合があります。また、ストレスが上手く発散できなかったり、ストレスを発散せず我慢してしまったりして、不安障害やうつ病などの二次障害を患う方もいらっしゃいます。

ASDの方のイライラや情緒不安は、ストレスの原因をできるだけ取り除くことで回避できます。スケジュールの見通しを立てたり、イレギュラーなイベントを避けたりするほか、「本棚の本はこの順番に並べたい」などのちょっとしたこだわりであれば、周りに理解を求め、勝手に本の順番を並べ替えないようにしてもらうなどの配慮をしてもらうと良いでしょう。

ADHD・ASD共通
発達障害の方は特性ゆえに困りごとを抱えることも多く、「なぜできないのか」と周囲に責められたり、あるいは自分自身を責めたりしてしまうことでストレスを感じることもあります。ストレスを溜めることによってイライラや情緒不安が引き起こされることも多いため、周囲が本人の特性に理解を示すとともに、「86. 原因①:ストレス」で解説したとおり、自己肯定感を育み、自立心を伸ばしてあげることも非常に大切です。

なお、ADHD・ASDいずれの場合も、カッとなって他人に危害を加えたり、自傷行為をしてしまったりする場合や、感情の起伏が激しいことで本人も体力・気力が削られてしんどい思いをしている場合は、投薬によって心を落ち着ける場合もあります。投薬については医師に相談し、情緒不安の度合いや他害や自傷の状況などもしっかりと伝えた上で、必要な種類と量を服用するようにしましょう。(関連項目→45.薬を服用すべきかどうか迷っている

★もっと詳しく知りたい方にオススメの記事→不登校の子が発達障害である割合は?支援方法や親がやるべきことも併せて解説 | 発達障害・ギフテッド専門のプロ家庭教師 メガジュン (pro-megajun.com)

原因③:ギフテッドの過度激動

ギフテッドのお子さまは、知能が高いという特性と合わせて、感覚が過敏であったり情緒が不安定になったりしやすいなど、「過度激動」と呼ばれる特性を持っていることがあります。これらの過度激動が原因となってイライラや情緒不安が現れるほか、学校に馴染みづらいことによるストレスで感情が不安定になることもあります。

<ギフテッドの過度激動(OE; Overexcitability)>
・知性過度激動…旺盛な知的好奇心と強い知識欲があり、それらが満たされないとストレスを感じる。
・精神運動性過度激動…スリルや冒険、新しい経験といった精神的な強い刺激を好み、わざと危ない行動を取ったり、危険な場所に行ったりする
・感覚性過度激動…五感が非常に敏感なため、大きな音や強いにおいなどの刺激が苦手で体調が悪くなることがある。
・想像性過度激動…想像力が非常にたくましく、妄想に耽り自分の世界に入り込んでしまう。
・情動性過度激動…感受性が強く他人の感情に敏感なため、人間関係で疲れやすく情緒不安定になりやすい。


過度激動のうち、情緒不安につながりやすいのは「情動性過度激動」です。情動性過度激動は他人の感情に敏感になる特性で、ちょっとした表情の変化から相手が不機嫌であることや、敵意を持っていることが分かってしまうという性質を持っています。マイナスの感情を敏感に感じ取るためストレスを受けやすいだけでなく、周囲に気を遣うタイプのお子さまの場合は人間関係でも疲れやすくなります。

また、共感性が高く、他人の感情に影響を受けやすいという面もあります。周りに落ち込んでいる人がいると、それに釣られて暗い気持ちになったり、別の子が先生に怒られているのに、自分が怒られているように感じて悲しくなったりするなどの場合もあります。

情動性過度激動の特性を持つお子さまに対しては、「悲しかったんだね」とその子の感情をまずは受け入れてあげることが大切です。「いつまで泣いてるの」「気にしすぎでしょ」とお子さまの感情を否定してしまうと、その反応に引っ張られてますます悲しい気持ちが大きくなってしまいますし、感情が否定されることで自己肯定感も下がってしまいます。

情動性過度激動によってお子さまの感情が昂ってしまっているときは、ある程度落ち着くまでそっと見守り、頃合いを見て「○○の動画を見ようよ」「お散歩する?」など他のことに意識が向くように声掛けしてあげると良いでしょう。ギフテッドのお子さまは学習能力が高いため、そのうち自然と「感情が昂ったときは、別のことを考えると良いんだ」と気付いて自分で対処できるようになります。

また、情動性過度激動以外の特性によっても、ストレスを感じることで情緒不安につながることもあります。例えば、感覚性過度激動は視覚や聴覚などの五感が過敏になる特性ですが、定型発達の人は何とも感じないような物音でも、ギフテッドのお子さまにとってはうるさく感じてストレスに繋がるなどのケースがあります。このようなケースでは、ストレスの原因をできるだけ取り除くようにし、「これくらい我慢しなさい」とお子さまの感性を否定しないことが大切です。

★もっと詳しく知りたい方にオススメの記事→【ギフテッドの不登校】才能ある子どもたちが抱える課題と解決策(浮きこぼれへの対応) | 発達障害・ギフテッド専門のプロ家庭教師 メガジュン (pro-megajun.com)

87. ゲームや動画などに夢中で昼夜が逆転している

夜遅くまでゲームをしたりスマホを見たりしていると、朝起きられず、学校に行くのも億劫になってしまいます。また、中には昼夜逆転してしまっているお子さまもいらっしゃるかもしれません。「いい加減にしなさい」とゲームやスマホを取り上げると、暴れ出して手を付けられなくなってしまうため途方に暮れているというご家庭のお話も伺うことがあります。

昼夜が逆転するほどゲームやスマホにのめり込んでしまっている場合は、それらを取り上げても状況は好転しません。ゲームやスマホにのめり込むお子さまの多くは、現実があまりにも辛いため、逃避行動としてゲームやスマホに頼っています。彼ら/彼女らにとってゲームやスマホは現実から逃れるための最後の居場所であり、いわば命綱です。それを力ずくで取り上げられると、パニックになったり、保護者さまを攻撃したりといった行動を取ってしまいます。また、ゲームやスマホを取り上げると、お子さまにとって家庭が安心できる場所では無くなってしまうため、親子の信頼関係も大きく傷付いてしまうことがあります。

また、ゲームにのめり込んでしまうお子さまの中には、脳の報酬系の機能(快楽をコントロールする仕組み)が弱くなっていて、「ゲームをやめたくてもやめられない」という状態に陥っていることもあります。特にADHDの方はゲーム依存になりやすいと言われていますが、それはこの報酬系の機能が生まれつき弱いことが関係していると考えられています。

このような状況にある場合は、ご家庭だけで解決しようとせず、専門機関やゲーム依存に対応している児童精神科などに早めに相談することが大切です。また、できればゲームやスマホに完全に依存してしまう前に、お子さまからのヘルプサインに気付き、現実世界の辛いことから距離を置いたり、取り除いたり、もしくは専門機関に相談することが望ましいですが、ヘルプサインに気付かなかった・間に合わなかった場合は、専門機関や医療機関に相談するとともに、その事実を保護者さまが受け止めることから始めましょう。

保護者さまが気付かない間にお子さまは大きなストレスを感じていたということになりますので、まずはこれまでの生活や関わり方を見直すことが大切です。児童精神科などに相談する際に、お子さまが家から出るのが難しいなどの場合には、保護者さまだけで相談・受診しても構いません。お子さま本人が治療やカウンセリングを受けられるのが望ましいですが、ゲーム依存は家族全体に関わる問題ですので、必要に応じて保護者さまがカウンセリングを受ける場合もあります。

核家族化が進み地域とのつながりも希薄になっている現代において、親子の関わりはどうしても家庭内で完結しがちで、その家庭にとっての“当たり前”が大きく偏ってしまう場合もあります。それは社会全体の問題であり、保護者さまがご自身を責める必要はありません。目の前のお子さま、あるいはご家庭が抱えている問題をしっかりと受け止め、改善しようという意志さえあればいつか必ず問題は解決に向かいますので、積極的に専門機関や医療機関を頼るようにしましょう。また、ゲーム依存の背景に発達障害の特性が関係している場合は特に家庭だけでは解決が難しくなりますので、必ず専門機関や医療機関に相談するようにしましょう。

お子さまが少しでも心を開いてくれたり、あるいは完全に依存状態になる前であったりする場合は、ゲーム依存やスマホ依存への対応に長けているフリースクールなどを利用するのも良いでしょう。これらのフリースクールでは、自然の中でできるだけスマホやゲームを手放して過ごすことで、ゲーム以外の楽しいことや面白いことに触れさせるというプログラムが実施されています。ゲームやスマホ以外の居場所を見つけることが依存の改善においては最も重要ですので、こうしたプログラムは非常に効果的です。

ただし、本人が嫌がっているのに無理やり参加させても効果がありませんので、親子の対話がきちんとでき、お子さま自身が「やめたい、でもやめられない、何とかしたい」と心から思える状態になってから参加するようにしましょう。

★もっと詳しく知りたい方にオススメの記事→発達障害はゲーム依存になりやすい?やめられない理由や治療法を解説発達障害のスマホ依存の対処法!子どものルールの作り方はどうする?

88. ゲームやスマホばかりしている

ゲームやスマホに夢中で、なかなか勉強に気持ちが向かないお子さまはたくさんいらっしゃいます。ただ、勉強してほしいからとゲームやスマホを取り上げても、癇癪を起こしたり、保護者さまの目を盗んで何とかゲームをしようとしたりする場合が多く、事態は好転しないことがほとんどです。

ゲームや動画をやめて勉強してほしい場合の一番の解決策は、「お子さまの気持ちを自然と勉強に向かわせること」です。勉強よりゲームやスマホが楽しいのは当たり前ですので、お子さまに「勉強すれば良いことがある」、もしくは「勉強しないと嫌なことがある」という実感を持たせ、自発的に勉強に向かえるようにすることがポイントです。

また、ゲームやスマホを一切禁止するのではなく、「勉強が終わったらやっても良い」などの条件を付ける方法も効果的です。一切禁止にすると、「そんな約束は守りたくない」とお子さまは最初から反発してしまいますが、「宿題が終わってから」「1時間勉強してから」など現実的なルールにすれば、お子さまも「確かに守るべきルールである」と感じて、納得の上でルールを守れる場合が多くなっています。

勉強はきちんとしているが、ゲームやスマホ以外の趣味が無くて心配という保護者さまも中にはいらっしゃるかもしれません。この場合はそれほど心配する必要は無く、基本的にはお子さまの自由にさせてあげるのが良いでしょう。もし視力の低下や運動不足が心配なのであれば、スポーツやキャンプなど、保護者さまが楽しいと感じることを「一緒にやってみない?」と誘う形にすると良いでしょう。ゲームや動画のほかにもお子さまの興味・関心が広がり、家族で楽しめる趣味が持てると良いですね。

ちなみに、「ゲームなんてつまらないものはやめなさい」といった伝え方をすると、お子さまは自分の好きなものを否定されたように感じて、自己肯定感が下がってしまうことがあります。大人に置き換えて考えてみると分かりやすいのですが、例えば保護者さまに好きな俳優がいたとして、「あの俳優は演技が下手だ」「つまらないドラマばかり出ている。見るのはやめろ」と周りに言われたとします。すると、たらどのように感じるでしょうか?腹立たしい気持ちになるのはもちろんのこと、その俳優のことが好きであればあるほど、自分の根幹を否定されたような悲しい気持ちにもなるのではないでしょうかと思います。

お子さまの場合も同じで、自分が好きなものや夢中になっているものを否定されると、自分そのものを否定されたように感じて、自己肯定感が下がってしまうことがあります。このことからも、ゲームやスマホばかりしてほしくない場合は、ゲームやスマホを否定するのではなく、違うことにも興味を持てるように誘導してあげる方が上手くいく場合が多くなっています。

以下では、勉強をせずにゲームやスマホばかりしてしまうお子さまへの対応として、

①勉強するメリットを実感させる
②ルールを作る


の2つに分けて解説していきます。どちらもお子さまが前向きに勉強に取り組めるようになるための重要なポイントとなっていますので、ぜひご一読いただければと思います。

解決策①:勉強するメリットを実感させる

お子さまが勉強することで感じられるメリットとしては、
 

①志望校に合格できる
②テストの点が上がる
③尊敬できる人(先生、親)に褒めてもらえる


などが挙げられます。

「①志望校に合格できる」については、勉強を長期的に続けた結果としてもたらされるものであり、目の前のゲームやスマホの誘惑に負けてしまいがちなお子さまにとっては実感しづらいものになります。「ゲームばかりしていたら志望校に合格できないよ」と声掛けしてもお子さまがなかなか勉強に向かえないのは、“志望校に合格する/しない”ということに実感が持ちづらいためであり、同じような声掛けを続けてもあまり効果は期待できません。

もしお子さまに、「志望校に行きたい」というモチベーションを上げてほしい場合は、声掛けに加えて、学校説明会やオープンキャンパスに足を運んだり、文化祭や学園祭を見学してみたりして、その学校の魅力を肌で感じる機会を作ってあげると良いでしょう。言葉で説明するよりも、実際に足を運び、肌で雰囲気を感じた方がお子さまのやる気はアップしやすいため、ぜひ試していただければと思います。

「②テストの点が上がる」「③尊敬できる人(先生、親)に褒めてもらえる」については、「①志望校に合格できる」に比べると短期間で実感できるメリットであるため、お子さまの気持ちを勉強に向かわせるための効果も高くなります。

まず、「②テストの点が上がる」についてですが、どんなお子さまでも、テストの点が上がれば嬉しいと感じるものです。「テストの点が上がると嬉しい。じゃあテストの点を上げるために頑張って勉強しよう」となれば良いのですが、多くのお子さまはそうはならず、「勉強よりゲームの方が楽しいから、ゲームをしよう」とゲームの方に手を伸ばしてしまいます。

その原因は、お子さまが「勉強すれば点数が上がる」という実感を持てていないことにあります。勉強しても、それでテストの点数が上がったという経験が少ないために、“勉強してもどうせ点数は上がらない”という苦手意識を持ってしまっており、
 

「勉強しても点が上がるわけではない」
  ↓
「勉強をしてもしなくても一緒だ」
  ↓
「じゃあゲームをしよう」


という考えに至って、自発的に勉強に取り組めない状態になってしまっています。

この場合においては、「勉強したら点数が上がる」という実感をお子さまに持ってもらうことが非常に重要です。「勉強したら点数が上がる」という実感さえあれば、「もっと点数を上げるために勉強しよう」というモチベーションが湧いてくるようになります。

そして、勉強することでテストの点数が上がっていくと、「やればやるほど点数が上がって楽しい」「自分は勉強ができるんだ」と感じるようになり、勉強に対する苦手意識も払拭され、自発的に勉強に向かえるようになっていきます。

お子さまに「勉強したらテストの点数が上がる」という実感を持ってもらうための第一歩としては、「少しでも勉強したら満点が取れるような小テストにチャレンジさせる」という方法が効果的です。というのも、定期テストや模試のように範囲が広いテストだと、勉強の成果が点数として現れづらく、勉強の成果があったのか無かったのかが分かりづらいケースが多くなってしまうためです。

限られた範囲の小テストで、かつ勉強さえすれば必ず「満点」という分かりやすい結果が現れる程度の難易度のものであれば、お子さまも勉強の成果が実感しやすく、「勉強すれば点数は上がるのだ」「勉強には意味があるのだ」と認識を改めるきっかけとすることができます。

もちろん、これはあくまでお子さまのやる気を導くための入口(きっかけ)であり、ここから徐々にテストの範囲を広げたり、問題の難易度を上げたりして、本格的に学力を伸ばしていく必要がありますが、この「勉強すれば点数が上がる」という実感は、自発的に勉強ができるようになるための最も重要な土台の一つとなりますので、ぜひ意識していただければと思います。

また、ちょうど良い範囲や難易度の小テストをご家庭で用意することが難しい場合は、塾や家庭教師の先生に「勉強が点数につながるということを本人に実感させるために、範囲が広すぎず難易度も高くない、ちょうど良いテストを作ってほしい」と依頼すると良いでしょう。

ちなみに、テストの点数を上げることは、ある意味ではゲームにも似ています。攻略法を調べて良いスコアを出すというのは勉強もゲームも同じであり、自主的に勉強に取り組めるお子さまの中には勉強をゲーム感覚で捉えている方もいます。ですので、ゲーム好きのお子さまの場合はテストの点をゲームのスコアに例えてみたりして、上手く意欲を掻き立ててあげるのも一つの方法になります。

勉強は頑張れないけれど、ゲームはいくらでも頑張れるというお子さまの心理的背景として、「ゲームは練習すれば上手くなるけど、勉強をしてもテストの点は上がらない。だからゲームは楽しくて、勉強は楽しくない」というものがあります。勉強もゲームと同様に、成果が上がれば楽しい・嬉しいという点は共通していますので、「やれば点数(スコア)が上がる」という実感がいかに大切であることについては、こうした点からもお分かりいただけると思います。

「③尊敬できる人(先生、親)に褒めてもらえる」については、大前提として、先生や親がお子さまの尊敬の対象である必要があります。お子さまが「この先生は大したことないや」と感じていると、いくら勉強して「頑張ったね!すごいね!」と褒められたとしても心に響きません。ですが、お子さまが相手のことを心から信頼し尊敬していれば、「頑張ったね」という言葉はお子さまのモチベーションを何倍にも高めることができます。

「褒め言葉」が高い効果を持つためには、それを発する指導者が、“人格者である”“自分よりも知識が豊富である”など、お子さまが心から相手のことを尊敬し、「この人には敵わない」「この人に認められたい」「この人との約束は必ず守ろう」と思えることが重要です。また、こうした信頼や尊敬の関係は言うことを聞かせるために恐怖で支配することとも異なります。怒られるから言うことを聞くのではなく、あくまでお子さまが自発的に「この人の言うことを聞こう」と思えることが大切です。

優れた教育者は、この信頼や尊敬の関係を築くことに非常に長けています。お子さまの気持ちにしっかりと耳を傾けつつも、大人として言うべきことは言うという態度を積み重ねることが必要であり、一朝一夕に関係が構築できるわけではありません。ですが、この関係構築を意識しているかどうかで指導の質は大きく変わりますので、塾や家庭教師を選ぶ際には、ぜひこの点にも注目していただければと思います。

また、お子さまと指導者の相性も重要です。あるお子さまにとっては良い先生でも、別の子にとってはそうではないケースもあるため、先生の話し方や第一印象を含め、「うちの子と相性は合うだろうか」という視点で先生を選んでいくことも大切です。お子さまがその先生に心を開けそうか、気兼ねなく話している場面が想像できるかなど、具体的に授業の様子をイメージしながら検討していくと良いでしょう。

加えて、勉強ができるようになると、周りのクラスメイトからも「すごい!」「○○さんは頭が良いんだね」と称賛を受けることができます。相手を尊敬しているかどうかに関わらず、周りから褒めてもらえること自体がモチベーションにつながるお子さまもいますので、お子さまの性質に応じて「テストで点が取れる人ってカッコいいよね」などと声を掛けてやる気を出させてあげるのも良いでしょう。

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解決策②:ルールを決める

既にゲームや動画をどっぷり楽しんでしまっているお子さまにはあまり効果は期待できませんが、これからゲーム・スマホを手にするというお子さまの場合は、最初にしっかりとルールを決め、「ルールを守るのは当たり前」という環境を作ることが大切です。

保護者さまが一方的にルールを押し付けるのではなく、お子さまの意見も踏まえながら一緒にルールを作ると良いでしょう。最近はオンラインでお友だちと一緒に楽しむゲームも多いため、「9~10時はクラスのみんながログインするから、禁止されるのは辛い」「10時までゲームをしていると寝るのが遅くなるから、水曜日と金曜日だけにしよう」など、お互いの希望を伝えながら落としどころを見つけていくというプロセスが大切です。

また、親子で一緒にルールを作ることで、お子さまにとっても“自分で決めたルール”となるため、守ろうという意思が働きやすくなります。

同時に、作ったルールについてはご家族全員で守ることも非常に大切です。お子さまには厳しく時間制限をしているのに、大人はゲームし放題であっては不公平感が強く、ルールを守ろうという気持ちも削がれてしまいます。

また、スマホに関するルールも同様に、お子さまにルールを課すのであれば、大人も同じようにルールを守って使用するようにしましょう。「食卓にはスマホを持ち込まない」「寝るときはリビングにおいておく」など、ちょっとしたデジタルデトックスとして家族みんなで取り組むと良いでしょう。

<プロ家庭教師メガジュンでの解決例#7:動画に夢中で深夜2時まで夜更かししてしまうGくん>

Gくんは小学4年生で、YouTubeが大好きです。布団の中にiPadを持ち込み、連日深夜2時ごろまで動画を見ているとのことでした。保護者さまも注意はするものの、Gくんは全く意に介せず夜更かしを続けています。そのためか、昼間は眠たくて勉強に集中できず、私たちの授業の最中にも寝落ちしてしまうような状態ででも眠そうなときがありました。

Gくんは中学受験を予定していますが、日々の勉強でも寝不足のためかなかなか内容が頭に入らず、このままでは志望校への合格は難しいと思われる状況でした。また、勉強だけではなく、極端な睡眠不足は身体の成長にも多大な悪影響を及ぼします。「私たちから注意をしても聞かないので、先生からもお話ししてほしい」という保護者さまからのご要望もありましたので、講師からも動画の見過ぎと夜更かしについてしっかりと指導していくことにしました。

講師の注意を聞き入れてもらうためには、お子さまとの信頼関係の構築が何よりも大切です。Gくんは元々人懐っこく、お調子者の面はあるものの、講師とも気軽にお話しできるタイプのお子さまでした。ただ、友達感覚になってしまうとこちらの指摘や注意を聞き流すようになってしまうため、授業中に寝落ちをしてしまったしそうなときは真剣に注意するようにしました。また、Gくんは歴史が好きなので、Gくん以上に歴史の知識をたくさん蓄えておき、「先生は歴史に詳しくてすごい!」と感じてもらい、Gくんにとって講師が“尊敬に値する先生”であるように努めました。

さらに小学生の場合は、エネルギーが有り余ってしまって夜寝られないというパターンもありますので、夜ぐっすり寝られるよう、授業の前後に外で講師とキャッチボールや鬼ごっこをするなどして体力を使ってもらうようにしました。勉強せず遊んでいるように見えるかもしれませんが、しっかりと睡眠を取ることで翌日の頭の回転が良くなり、結果として学力の向上につながることもあります。実際にGくんの場合も、昼間に運動するようになったことで体力が付いたこともあり、集中が続くようになって成績もぐんと伸びました。

食事・運動・睡眠は生きていく上での基本であり、勉強においても非常に重要です。受験期においてはついつい運動が疎かになってしまいますが、年齢相応の運動量をこなすことは成長期の子どもたちにとってとても大切ですので、意識して取り組むようにしましょう。

Gくんの場合は、「夜更かしすると勉強の効率が悪くなるよ。せっかく勉強したのに、明日寝不足で頭がぼーっとしてテストで点が取れなかったら悔しいよね」「身体が成長する時期なのに、寝不足だと成長ホルモンが出なくて大きくなれないよ。そもそも、体調を崩してしまいそうで心配だよ」ということをこまめに伝え続け、さらに上述の日中の運動の効果もあってか、ある時期を境に夜更かしをしないようになりました。

保護者さまによると、Gくんは「先生が言うとおり夜寝るようにしたら点数が上がったし、寝不足で点数が下がるのは確かにもったいないと思ったから」と話していたそうです。夜にしっかり寝ると良いことがあるという成功体験と、この先生の言うことは信じられるという信頼関係の構築が功を奏したケースであると言えます。

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89. 朝起きられない、生活リズムが不規則である

成長期のお子さまにとって、規則正しい生活は何よりも大切です。「朝起きられなくて困っている」というご相談はよくお伺いしますが、大抵の場合、そもそも生活リズムが不規則で、夜にしっかりと眠れていないというケースが多くなっています。

お子さまが夜眠れない原因には、ゲームやスマホに夢中で夜更かしをしてしまうほか、塾や部活、習い事などで忙しく余暇の時間が無いこと、あるいは日中は勉強漬けで座りっぱなしのため、夜になっても体力が有り余ってしまっていることなどが挙げられます。朝の寝坊や夜更かしを一方的に叱るのではなく、その背景や原因が何かを分析しサポートしてあげることが大切であり、お子さまの心身の健康を守ることにつながります。

原因①:ゲームやスマホに夢中で夜更かししてしまう

夜更かしの原因がゲームやスマホである場合は、夜遅くまでゲームやスマホを触ることのデメリットをまずは冷静に伝えましょう。夜遅くまでゲームやスマホを触ることのデメリットとしては、例えば、
 

・成長期にしっかりと睡眠を取らないと、身体や心の成長に悪影響を及ぼす
・睡眠不足だと脳の働きが悪くなり、勉強や部活で実力を十分に発揮できなくなる


などが挙げられます。これらは科学的にも証明されていることですので、根拠を示して説明すると良いでしょう。しっかりと睡眠を取ると、頭がスッキリして勉強の内容もすんなりと頭に入ってきます。ひとたび睡眠の重要性が分かれば、自発的に睡眠を取ろうと思えるお子さまも多いため、「騙されたと思って8時間以上寝てみよう」などと勧めるのも良いでしょう。

また、保護者さまから言うだけではなかなかお子さまの心に言葉が響かず、ずるずると不規則な生活を続けてしまう場合もあります。その場合は、お子さまが「この人の言うことは聞いた方が良い」と感じている人物(学校の先生や部活のコーチなど)から、上述の科学的根拠を示しつつ、はっきりと「早く寝なさい」と伝えてもらったり、外遊びなどをして日中に体力を消耗したりと、他の手段と併せて対策していくなどすれば上手くいく場合が多いです。

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原因②:余暇の時間が少ない

余暇の時間が少ないことも、生活リズムが不規則になる原因になります。学校・部活・塾・習い事と、ギチギチに詰まったスケジュールで自由に使える時間が無いと、少しでも長く起きておいて自分の時間を確保したくなってしまいます。あるいは、過密なスケジュールで溜まったストレスを発散するためにゲームやスマホを触り、結果として寝る時間が遅くなってしまうケースもあります。

働き盛りの社会人ですら、残業続きで自由時間が無いと心身の調子を崩してしまいます。小学生や中学生が過密なスケジュールをこなすのは、当然ながら健康上望ましくありませんので、速やかに一日のタスクを見直すようにしましょう。お子さま自身はそのスケジュールが当たり前になってしまっていて、負荷が大きすぎることになかなか自分では気付けません。睡眠時間は毎日8時間以上、余暇の時間も2時間程度は余裕で取れるようなスケジュールが理想ですので、大人がきちんと調整してあげるようにしましょう。

また、お子さま自身が「全部を頑張りたい!」と言っている場合でも、このままでは身体を壊してしまうということをはっきりと伝え、習い事や部活の頻度を落とすなど、お子さまと話し合いながら丁度良い改善案を見つけるようにしましょう。大人が一方的に「まずは部活をやめなさい」と決めるのではなく、お子さまの意見を尊重し、お子さま自身が納得できる形でスケジュールを立て直すことが大切です。

原因③:日中座りっぱなしであるため、体力が有り余っている

体力が有り余って夜寝られない問題は、特に中学受験を目指している小学生のお子さまによくあるケースです。中学生や高校生は部活動があるため、ある程度日中に体力を消耗できるのですが、小学生の場合は運動系の習い事をしているなどではない限り、年齢相応の運動量が確保できず、夜になっても体力が余ってしまいます。中学受験を目指しているお子さまだけでなく、外遊びが少なく遊びの中心がゲームであるお子さまの場合も、同様の問題が生じることがあります。

こうしたケースでは、周囲の大人が意識的にお子さまが身体を動かす機会を作ってあげることが大切です。勉強で忙しい場合は息抜きとしてキャッチボールに誘ってみたり、ゲームで遊ぶことが多い場合は無理にゲームを取り上げるのではなく、ゲームに関連付けながら上手く外遊びに誘導するなどすると良いでしょう。

例えば、スプラトゥーンが好きなお子さまであれば、「『ガチアサリ(※ゲーム内のルールの一つ。玉入れとラグビーを合体させたような遊び)』をリアルでもやってみよう」と声を掛けて、簡易的な玉入れやラグビー遊びをしても良いですし、フォートナイト(※一人称視点のシューティングゲーム)が好きなお子さまには、水鉄砲での遊びを提案するなども良いでしょう。どうぶつの森が好きなお子さまであれば、ゲーム内でその季節に登場する虫や魚を探しに行こうと誘うのも良いですね。

公園なども少なくなっており、子どもが外で遊んでいると「うるさい」と苦情が来てしまう場合もありますので、外遊びを勧める際には大人がある程度環境を用意してあげることも大切です。また、激しい運動でなくても、外に出て太陽の光を浴びるだけである程度は体力を使いますので、いきなり本格的なスポーツを始めるのではなく、お子さまが「外で遊ぶのも楽しいな」と思えるきっかけを作ってあげるようにしましょう。

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【学習・生活面のお悩み相談 虎の巻の特長】

この「学習・生活面のお悩み相談 虎の巻」では、単に質問に答えるだけでなく、お困りごとの背景を分析し、「なぜその対策が必要なのか」までを丁寧に解説しています。
お子さまを支援する際には問題を表面的に見るのではなく、本質的な部分までしっかりと考察することが大切です。

教育において、「これさえすれば全て解決できる」という特効薬はございません。
問題の背景は多岐にわたり、かつ複合的です。目の前のお子さまを丁寧に見守り、一人一人に合わせたオリジナルの処方箋を見つけ出し、常にアップデートしていくことが求められます。

この学習・生活面のお悩み相談 虎の巻も、私たちが日々子どもたちと接していく中で気付いたことを随時反映し、アップデートしていきます。
「この学習・生活面のお悩み相談 虎の巻を見れば、どんなお悩みも解決できる」ことを目指してブラッシュアップしていきますので、ぜひブックマークして、辞典のようにご活用いただければと思います。

【お子さまと関わる際のポイント】

実際にお子さまに関わる際には、「どのような声掛けをするか」だけでなく「どのような関係を作るか(参考記事:勉強しないお子さま必見!良い先生は「関係作り」に長けている)」も非常に重要です。

お子さまとの間に確かな信頼関係が無ければ、どんなに良い言葉を掛けたとしてもお子さまの心には響きません。 「この人の言葉なら信じられる」とお子さまが思えるよう、誠実にお子さまに向き合い、一人の個人としてお子さまの心身を尊重することが何よりも大切であり、そうすることであらゆるアプローチの効果を何倍も引き上げることができます。

<プロ家庭教師メガジュンの3つの信念>
1 問題の背景を徹底的に分析する
2 課題は複合的であるという前提に立ち、一人一人に応じた支援方法を常に探りながらアップデートする
3 子どもたちに誠実に向き合い、信頼関係の構築に努める
(参考:不登校・発達障害指導で大切な、「教える側の人間性と信念」 | 発達障害・ギフテッド専門 のプロ家庭教師 メガジュン (pro-megajun.com))

この学習・生活面のお悩み相談 虎の巻は、プロ家庭教師メガジュンの活動の中で培ってきた知見の集大成でもあります。

保護者の方や教育関係者の方に役立てていただける内容となっていますので、ぜひご活用いただけますと幸いです。