勉強する意味・目的って?大人は何と答えるべきか、プロ家庭教師が教えます!
お子さまに聞かれて答えに困る保護者さまも多いのではないでしょうか?
また、私たち大人も、子どもの頃に一度はこんな疑問を抱いたはずです。
プロ家庭教師として子供たちを教える中で。
キャリアアドバイザーとして、たくさんの就職支援・転職支援に関わる中で。
16年間この問いを考え続け、答えは以下の2つであると考えています。
②社会を生き抜く力を手に入れるため
“学校の勉強は社会に出れば役に立たない”という言説を耳にすることがありますが、決してそうではありません。
「目標を設定する」「効率よく学ぶ」「どんな状況でも自分は大丈夫と信じることができる」といったことは社会人としても必須のスキルですし、勉強を頑張ったという経験を活かして働いている方もたくさんいます。
この記事では、勉強する意味について、プロ家庭教師とキャリアアドバイザー、両方の視点から深掘りしていきたいと思います。
キャリアアドバイザー・プロ家庭教師
妻鹿潤
・個別指導塾の経営・運営でお子様の性質・学力を深く観る指導スタイル
・yahooやSmartNews、Newspicksなどメディア向け記事も多数執筆・掲載中
▼目次
日本は依然として学歴社会である
2022年の今でも、就活における学歴による明確な足切りは広く存在します。
キャリアアドバイザーとしてたくさんの企業と関わる中で、例えば関西の企業でよく言われるのは「関関同立以上で100人採用。難しければ、20~30人くらいまでなら産近甲龍でも良い」のような採用基準です。
面接官の代行を行うこともあり(大企業・人気企業の一次面接官は、その企業の人間ではなく、我々のようなキャリアアドバイザーであることも多くあります)、その際に上述のような基準が明確に提示されます。
私自身も含め、多くの人事担当者やキャリアアドバイザーは、学歴による足切りを当然のことと捉えています。
なぜなら、「学歴と社会での活躍度合いは一定以上相関する」というはっきりとした実感があるからです。
もちろん、完全に相関するわけではありません。
学歴が高くなくても社会で活躍している人もいますし、その逆も然りです。ただ、それはいわゆる可能性でのお話しであり、多くの場合は、学歴と社会での活躍度合いは比例することが多いです。
一方で、学歴はあくまで「エントリーシートを見るかどうかの足切り」に過ぎません。
面接の段階まで進めば、学歴よりもその人物で判断されます。京大の新卒よりも関西大学の新卒の方が良いと人事が判断すれば、迷わず関西大学の新卒が採用されます。
実は、人事担当者の多くが、本音では「全志望者と面接したい」と思っています。
しかし、全志望者と面接することは現実的ではありません。なぜなら、企業の人事担当者は「ジャッジする人」でもある一方で、「採用基準を満たした、目標の採用者数を達成しなければならない営業マン」でもあるからです。
良い社員を1人でも多く採用すれば、採用担当者の評価は上がります。ですが、人事は基本的に「利益を生み出さない部署」であるため、少数の体制になっています。
大手企業や人気企業であれば、何千・何万とエントリーシートが届きます。少人数の体制で全員と面接することは物理的に不可能ですし、すべてのエントリーシートを見るのも現実的ではありません。
そのため使用されるのが、冒頭にも挙げた「学歴による足切り」です。
全てのエントリーシートを見られない分、学歴フィルターで絞ったエントリーシートだけを見る。
これが日本企業の一般的なスタイルです。勉強という同年代の人間全員が向かう壁に、どこまで真面目に向き合ってきたか、どこまで成果を出したかという、ある意味では横断的でわかりやすい物差しとして機能しているのが学歴なのです。
学歴フィルターで落としてしまった中にも優秀な人材がいるだろうと分かりながらも、現実的には学歴でジャッジせざるを得ないのが現状です。
学歴はどこで線引きされる?
学歴の線引きは企業によって様々ですが、多くの企業は以下のような基準を持っています。
②産近甲龍・日東駒専以上
③②未満の偏差値の大学
④大学未満(専門学校、短大卒、高校卒など)
つまり、関関同立・GMARCH以上の学歴があれば、90%以上の会社でエントリーシートは通ると言えます。というのも、関関同立・GMARCHより上の学歴になると、早慶上智や旧帝大以上の大学のみになります。
そのような学生は全国的にそもそもかなり少なく、また特に優秀な人ほど日本企業に勤めない人も多いため(医者や弁護士などの専門職、自分で会社を起こす、外資系企業で仕事をするなど)、一定数の人材を確保しようとすると、必然的に大手企業・人気企業でもこれが1つの線引きになります。
②まで学歴を落とすと、一気に学生の数が多くなるため、大手企業・人気企業は②ではなく、①以上を最低基準とすることが多いです。
準大手企業などであれば、②を基準とすることが多いでしょう。(もちろん、景気によっても左右します。例えば、例年は関関同立以上で採用していた企業が、不景気になったため、早慶上智や旧帝大以上の学歴にさらに絞って採用するケースなどがあります)
面接まで選考が進むと学歴の重要性は下がる
面接の段階までいけば、学歴よりも人物が重視されます。
つまり、大阪大学や神戸大学まで行かなくても、関関同立以上であればエントリーシートは通り、その後は面接次第のため、十分学歴の恩恵を受けられるということなります。
また、関関同立の中での序列はほとんどありません。
学部ごとに偏差値は違いますが、一般的な偏差値順に並べると「同志社>立命館>関学>関西」となります。しかし、企業からすれば同志社でも関西大学でも「関関同立ね。じゃあ、エントリーシート見よう」と同じ目線で選考することがほとんどです。
就きたい企業や職業が見つかったのに、学歴が届かずエントリーシートで落とされることは避けたいものです。
これが勉強をする意味の1つ目「学歴フィルターを突破するため」という意味です。(逆に、学歴が関係無い仕事に就きたい場合は、この1つ目の理由で勉強する意味はほぼありません)
ちなみに、転職の際にも、特に20代後半に入るまでは、学歴は有利に作用します。
30代以降は職業経験や実績が重視され、学歴の価値は落ちますが、20代はポテンシャルが見られます。ポテンシャルを図る分かりやすい指標の1つとして、学歴は転職の際にも有効になります。
例えば、看護師や薬剤師といった専門職に就職したが上手くいかなかった場合でも、学歴があれば民間企業で再チャレンジしやすい土壌が整っているのが日本の就職の特徴です。
(ちなみに、今後はこの特徴は緩やかに崩れると思います。就活解禁の影響もあり、現在、関東のエンジニアを中心に、技術採用が増えています。専門学校卒など学歴が高くない学生でも、学生時代からベンチャー企業などで長期インターンに就き、そこで得た実績やスキルを通じてそのまま企業に評価される、という体制が整ってきています。
これが緩やかに日本全国の企業に波及し、エンジニア以外の職業にまで広がっていく可能性は相当に高いと思います)
社会で生き抜く力とは
私は塾の経営も長年しているのですが、「すぐに学力が伸びる子とそうでない子」がいることにとても関心がありました。
彼らを分けるポイントが何か、徹底的に研究した結果、20個の力(スキル・スタンス)が関係していることがわかりました。
すぐに学力が伸びる子は、20個の力のうち、15の力をバランス良く身に付けていました。この15の力は、課題への向き合い方や思考力といった「自ら学ぶ」ことにおいて必須のスキル群であり、社会に出て働く際の土台になる力です。
この15のスキル群に加え、さらに5つのスキルを身に付けることによって、社会においても自ら行動し活躍できる人間に成長することができます。
以下では、この15+5のスキル群について、詳しくご紹介します。
活躍する人間になるための15+5の力
多くの仕事において、活躍する人間になるための15+5の力は、以下の3段構造になっています。キャリアアドバイザーとしてたくさんの企業の選考基準を見てきましたが、表現は違うものの、これらの力を評価基準に取り入れているところばかりでした。
②ポータブルスキル(どのような職業でも持ち運びできるスキル)
③テクニカルスキル(特定の職業に特に活きるスキル)
スタンス
①スタンスは、②③の土台になるものであり、3つのうちで最も重要です。
「どんな環境でも折れない強い自信」や「『この程度でいいや』と自分で限界を決めずに、どこまでも目標を引き上げ続けようとする志向性」など、何かしらの壁(課題や困難)に向き合ったときにどのように向き合うか・どこまで強く向き合えるか、といったものです。
就活でも、特に新卒採用ではこの観点が重視されます。
ポータブルスキル
いわゆる「地頭」や「コミュニケーション能力」に当たるものです。
・コミュニケーション能力…洞察力、対人影響力、対人対応の幅の広さ、人間に対する広く深い理解、印象値の良さ
15+5の力のうち、+5に当たるのがこのコミュニケーション能力です。
学力を伸ばす際にコミュニケーション能力はほぼ関係ありませんが、社会に出てからはコミュニケーション能力が必須になります。
テクニカルスキル
語学力やプログラミング、留学経験といった特定の技能や資格など、特定の職業に直結する力を指します。(ちなみに、大学での成績は職業には直結せず、テクニカルスキルには該当しません。採用の際も、企業が参照することはほぼ皆無です)
実際、就職活動での面接官は、大学の成績や資格の有無はほぼ、重視しません。
③テクニカルスキル‐②ポータブルスキル‐①スタンスの順番で、後天的に身に付けることが難しくなります。
特に①スタンスは、これまでの環境で培ってきた基準値や価値観に大きく左右され、教育やトレーニングですぐに身に付くものではありません。
さらに、①スタンスが強い人は②ポータブルスキル、③テクニカルスキルも身につきやすく、②ポータブルスキルが強い人は③テクニカルスキルもつきやすいという構造のため、採用力のある企業ほど①スタンスを最優先で評価します。
まさにこの理由で、令和においても体育会の学生は就活市場で高い人気を誇っています。
アメフトも水泳も、ビジネス活動とは全く関係がありませんが、例えば全国大会を目指す中で「どれだけしんどい中でも自分を信じて折れずに頑張った経験」や「週7で毎日5~6時間練習して、深夜にアルバイトでお金を稼ぐのは当然」などの価値観は、変にテクニカルスキルばかり磨いてきた学生よりも、土台の強さが違う!と評価されるのです。
実際に、年月が経てば経つほどスタンスが強い人の成長速度の速さがわかるため、「やっぱり体育会系は強いね」という評価につながります。
メンタルの強さは生まれながらの気質もありますが、後天的につくものが大半以上です。「自分はメンタルが弱いから無理だ…」と考えてしまいそうですが、あきらめることはありません。
スタンスは高い壁に本気で向き合うほど強く形成されるため、本気の部活動でも、本気の勉強でも、後天的に形成することはできます。
多数のメディアに掲載いただいた、私の記事の夏まで「部活一筋」だった生徒、受験本番で力を発揮する3つの理由で、この辺りのことを記載してます。
勉強を高いレベルで頑張れば、高いレベルのスタンスが身につきます。
勉強以外のことを頑張る時でも、これくらい頑張るのが普通と思えたり、辛いことがっても折れずに頑張れるようになり、結果として、社会人になって成果を出せる可能性は十分あります。
あるいは②ポータブルスキルであっても、勉強や経験を通して鍛えることもできます。
真面目に勉強に取り組むことで、「様々な可能性を想定する」「原因にさかのぼって考える」「物事の構造を把握する」「目的を明確化し、筋道立てて考える」などが徐々にできるようになります。
ただ、勉強をすれば勝手に地頭が鍛えられるのではなく、「地頭を鍛えるような勉強方法」が必要です。
例えば、英語の不定詞の勉強で、A君は「〜するための、とあればto不定詞を入れればよい」と機械的に答えるだけ、B君は「前置詞のtoの後に動詞の原形を置くことで、動詞を名詞・形容詞・副詞としての意味を持つのが不定詞」と文法的に理解していたとします。
A君は解き方を暗記するだけの勉強法で、B君は「定義を確認して、問題ごとに構造が同じかどうか確かめる」という勉強法になります。
不定詞の問題に限ればA君もB君も正解しているかもしれませんが、A君はその過程で地頭はほぼ鍛えられず、他の単元でもひたすら暗記するだけで応用が利きません。
一方で、B君は「自分で考える、把握する」という地頭が鍛えられているため、数学でも国語でも、自分で学んで理解することができます。(ちなみに、勉強をすれば必然的に鍛えられるもの(自分を律する力、自分は一定の根性はあるという自信など)もあります)
そのため、私は指導の場面でも「適切な勉強方法」にこだわります。
それが大幅な点数アップや志望校合格につながることはもちろん、社会で生き抜く力にもなるからです。
事実、この勉強法で指導することで、短時間で応用問題が解けるようになる・1つの解き方で多数の解き方ができるようになり、最短で点数を大きく向上させることにもつながります。
勉強する意味・目的のまとめ
このように、①スタンスや②ポータブルスキルは、どのような職業でも、あるいは父親や母親として生きていくことでも活用できる、社会生活における汎用的な力です。
この力を高めれば高めるほど「よりよく生きる」ことができるため、勉強をする意味としても非常に重要です。
プロ家庭教師として指導する際にも、この15+5の力を意識しています。
テストの点が伸びればよい、志望校に受かればよいという表面的な学力ではなく、社会に出てからもお子さまのためになる力を身に付けられる指導が私の強みです。
ぜひ一度体験授業をお試しいただき、他との違いを実感していただければと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。