学習障害(LD)とは?読めない、書けない、計算できない子どもの特徴と対処法を紹介

  • #発達障害
  • #LD
    ・文章を読むのが遅く、音読の時も非常にたどたどしい
    ・字を書くのが苦手で、枠からはみ出たり鏡文字になったりする
    ・単純な計算が身に付かず、時計を読むのも苦手

    お子さまの読み書きや計算について、このようなお悩みをお持ちの方はいらっしゃいませんか?

    慣れていないだけで、練習すればできるようになる場合は問題ありませんが、周りの子と同じように勉強しているにもかかわらず苦手が克服できない場合は、もしかしたら学習障害(LD, Learning Disability)かもしれません。

    学習障害とは、ADHD(注意欠如・多動症)やASD(自閉症スペクトラム症、アスペルガー症候群)と並ぶ発達障害の一つで、知的障害やその他の障害が無いにもかかわらず、読み・書き・計算に困難がある状態を指します。

    私は、発達障害専門のプロ家庭教師や塾経営者として、これまで1500名以上のお子さまの指導に携わってきました。

    学習障害を持つお子さまも多く支援させていただいたことがありますが、苦手の要因を見極め適切なアプローチを行うことで、困りごとを最小限に抑え、中学受験や高校受験・大学受験に成功した方もたくさんいらっしゃいます。

    学習障害は他の発達障害と同様、保護者さまの育て方や本人の努力不足によるものではなく、生まれつきの脳の性質の問題であると言われています。ですが、具体的に脳のどの部分が関係しているかはまだ分かっておらず、研究途上の発達障害でもあります。

    読み・書き・計算は学校の勉強だけでなく、日常生活でも必要となる基礎的なスキルです。

    そのため、困難をそのままにしておくと、大人になってからも困りごとを抱えてしまうほか、周りについていけなかったり叱責されたりして、精神疾患などの二次障害を抱えてしまう場合もあります。

    お子さまが学習障害かもしれないと思ったときは、学校の先生や地域の発達支援センター、小児精神科などに早めに相談するようにしましょう。
    適切なサポートを早い段階から受けることで困りごとを軽くすることができますし、大人になってからの生きづらさも格段に小さくなります。

    ・周りの子と同じように勉強しているのに、学力が伸びない
    ・何度も同じ間違いを繰り返し、本人も自信を失っている
    ・基礎的な内容でつまずき、発展的な内容に取り組めない

    この記事では、こういった悩みをお持ちの方に向けて、学習障害の特徴や支援方法を詳しく紹介していきます。

    学習障害にご関心のある保護者さまや支援者の方にとって参考になる内容となっていますので、最後までお目通しいただけますと幸いです。

    発達障害・ギフテッド専門のプロ家庭教師
    妻鹿潤
    ・16年以上1500名以上の指導実績あり
    ・個別指導塾の経営・運営でお子様の性質・学力を深く観る指導スタイル
    ・yahooやSmartNews、Newspicksなどメディア向け記事も多数執筆・掲載中

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    学習障害(LD)とは

    学習障害(LD)とは

    学習障害(LD, Learning Disability)とは、知的発達の遅れや視覚・聴覚に障害が無いにもかかわらず、読み・書き・計算といった能力に困難を持つ発達障害のことを指します。

    どの能力に困難があるかによって、

    ・「読字障害(ディスレクシア)」…読むことの困難
    ・「書字障害(ディスグラフィア)」…書くことの困難
    ・「算数障害(ディスカリキュア)」…計算や推理の困難

    とさらに細かく分類されます。

    学習障害は、他の発達障害(ADHD、ASDなど)と同様、生まれつきの脳の器質(性質、はたらき)が原因であるとされていますが、脳のどの部分が関係しているかは未だ明らかになっていません。
    また、生まれつきの性質であるため、育て方や教育環境が関係するものでもありません。

    学習障害を持つ方は、ADHD(注意欠如・多動症)やASD(自閉症スペクトラム症、アスペルガー症候群)などの他の発達障害や、不安障害・双極性障害などの精神疾患を併発していることもあります。

    これらの発達障害や精神疾患によって読み・書き・計算の困難が生じていることが明らかな場合、学習障害とは診断せず、発達障害や精神疾患の二次障害的なものであると診断する医師もいます。

    ですので、書くことが苦手なお子さまでも、「学習障害」と診断される方もいれば、「言語理解の能力は低いが、学習障害とは言えず、ASDに起因する書きの困難である」と診断されるケースもあります。

    大切なのは、お子さまが感じている困難を明らかにし、その原因を突き止めアプローチしていくことです。

    同じ書字障害であっても、音韻処理(文字と音の結びつき)が弱いのか、視覚情報処理(目で見た情報を処理する力)が弱いのか、あるいは運動機能(手先の器用さ)が弱いのかによって、効果的なアプローチは全く異なります。

    学習障害については研究が進んでいないこともあり、「書字障害=書けないのであればキーボード入力でよい」と短絡的に判断してしまうケースもあるようですが、入試の際に特別な配慮の申請が必要になるなど、書かないままでいることが必ずしも最善の判断であるとは限りません。

    「日常生活に困らない程度」「周りの子と遜色ない程度」など、お子さまが目指すところはどこか、そしてそのための訓練がお子さまに過度な負担とならないかなど、バランスを見ながら、丁寧に支援方法を検討していく必要があります。

    お医者さまは発達障害については専門的な知識を持っていますが、教育や受験のプロではありません。

    お子さまの学習障害への対処方法に悩んだときは、学校の先生、スクールカウンセラー、言語聴覚士、発達障害に理解のある塾講師やプロ家庭教師など、様々な立場の人に相談し、協力しながら解決策を見つけていくと良いでしょう。

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    学習障害(LD)の診断方法

    学習障害(LD)の診断方法

    学習障害(LD)の診断を受ける目安

    学習障害(LD)は、小学生になって読み・書き・算数を本格的に習い始めるまでは、その特性に気付かれにくい発達障害となっています。

    障害の認知度も低いため、支援の開始が遅れてしまうほか、「努力が足りない」などの誤解によって自信を失い、うつや適応障害などの二次障害を引き起こすこともあります。

    小学校入学前までは、お子さま一人一人の発達の差も大きいため、言葉が遅かったり、数字の理解が苦手であったりしてもそれほど気にする必要はありません。
    ですが、小学校に上がってからも以下のような特徴が目立つ場合は、専門的な医療機関への受診を検討すると良いでしょう。

    読字障害・書字障害的な傾向・一文字ずつ区切って読んだり、単語や文節の途中で区切って読んだりする
    ・指でなぞりながらでないと文字が読めない
    ・字間や行間が狭いと、読み間違いが増える
    ・読めない文字を読み飛ばす
    ・ひらがなの単語や文末を当てずっぽうで読む(適当読み)
    ・「ょ」「っ」などの拗音や促音(特殊音節)を間違えたり抜かしたりする
    ・音読みだけ、あるいは訓読みだけできない
    ・助詞の「を」を「お」、「は」を「わ」と書くなど、同じ音の文字を間違える
    ・形が似ている文字(「さ・き」「る・ろ」など)を間違える
    算数障害的な傾向・数字の順番や数の大小がわからない
    ・序数性(順番を表す:○番目)と基数性(量を表す:○個)の違いがわかっていない
    ・指や物を使って計算している
    ・九九が全く覚えられない
    ・筆算のとき、桁がそろわない
    ・時計が読めない

    学習障害(LD)の診断の具体的な流れ

    学習障害(LD)の診断の具体的な流れ

    医療機関では、まずWISC-IV検査などの知能検査を受け、知的な発達の遅れやその他の発達障害の傾向が無いかを調べます。

    知的障害に該当しないことが分かった場合は、学習障害の可能性ありと判断され、お子さまの状態についてより詳しく調べていくことになります。

    算数障害の場合は、WISC-IV検査の4つの指標のうち、知覚推理の指標が70程度となるなど、極端に低くなる傾向があります。

    知覚推理は、目で見た情報を把握し、推理したり処理したりする力のことです。算数の学習においては、数や量を目で把握し、それを頭の中で操作することが必要であるため、算数障害には知覚推理の能力が深く関わっていると考えられます。

    また、算数障害のお子さまの場合、言語理解やワーキングメモリの指標が低くなる場合もあるようです。読字障害やADHDの併発例などもあることから、算数障害の要因については丁寧に見極めていく必要があります。

    読字障害・書字障害が疑われる場合は、WISC-IV検査に加え、さらに精密な音読検査を行うことがあります。

    音読検査は、「ひらがな音読検査」「単音連続読み検査」「単語速読検査(有意味語)と(無意味語)」「短文音読検査」の4つに分かれていて、読字障害・書字障害の要因がどこにあるのか、より詳しく調べることができます。(参考:学習障害(限局性学習症) | e-ヘルスネット(厚生労働省) (mhlw.go.jp)

    4つの音読検査は、「特異的発達障害診断・治療のための実践ガイドライン(2010発行)」で示されたものですが、このほかにもCARD、STRAW-R、KABC-II習得度検査などにより、漢字やひらがなの読み書きの到達度を測ることができます。

    さらに、「しりとり」や「単語を逆さまに言ってみる」などの言葉遊びを通して、文字と音の結びつきの度合い(音韻処理)を調べてみたり、複雑な図形を描き写して視覚認知や手先の運動機能を測ってみたりするなど、色々な方法で読字障害・書字障害の要因を調べることができます。

    要因を明らかにすることは適切なサポートへの第一歩となりますので、検査の意義を理解した上で、必要なものについては受検していただければと思います。同時に、お子さまに過度な負担とならないよう配慮することも大切です。

    学習障害(LD)の診断基準

    学習障害(LD)の診断基準

    学習障害(LD)の有病率は、小・中学生で5~15%、大人で4%と言われています。

    音読したり、自筆でテストの解答を書いたり、電卓を使わずに計算したりといった場面は子どもの頃の方が多いため、学習障害による困りごとは子どもの時の方が大きかったという方もいらっしゃいます。

    大人になってからは、読字障害であっても文字を読む機会が少ない職業に就けば日常生活で困ることはあまり無く、字を書くことに関しても、パソコンやスマホでの入力が大半であるため困りごとを感じる機会は少ないでしょう。
    計算についても電卓を使うことができますので、経理などよほど数字に携わる仕事でなければ問題ありません。

    アメリカの精神医学会が定めるDSM-5では、学習障害の診断基準について以下のように定めており、困りごとの有無は診断基準の項目の一つとなっています。

    <DSM-5における学習障害の診断基準>

    ①学習・学業的技能に困難があり、教育的な介入を施しても改善されず、さらに以下の症状が少なくとも6か月以上続く

    ・読むスピードが遅かったり、適当読みがある
    ・言葉のつながりや文章の意味が理解しづらい
    ・文字や文法の間違いが多い
    ・考えたことを言葉で表すのが苦手
    ・数の概念の理解や計算が苦手
    ・数学的に考え、推理することが苦手

    ②学力や業務遂行能力が、年齢不相応に著しく低かったり、困りごとがあったりする(ただし、時間制限のあるテストや極端に量の多い課題において困難がある場合を除く)

    ③知的な発達に遅れが無く、視力や聴力に問題が無い。また、その他の精神疾患や不適切な教育環境によって症状が説明されない

    (参考:DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル | 書籍詳細 | 書籍 | 医学書院 (igaku-shoin.co.jp)

    特に大きな困りごとが無ければ、特別な対処はせず、読み上げ機能やキーボード入力の使用といった環境調整のみで対応する場合もあります。

    また、DSM-5の診断基準では、学習上の困難がADHDやASDの特性によるものであると説明できる場合は、学習障害には当てはまらないことになります。

    これまで私が指導させていただいたお子さまの中にも、「ADHD/ASDと学習障害(LD)の併発である」と診断された方が複数人いらっしゃいました。
    どのお子さまも、丁寧に見ていくとADHDやASDの特性が読み・書き・計算の困難に関連しており、要因への適切なアプローチによって学習上の困難を大幅に改善することができました。

    環境の調整をメインに考えるのか、教育的なサポートによって改善を目指すのか、どちらが良いのかはお子さまによってケースバイケースです。

    環境調整と教育的サポートの両方が必要な場合もありますので、主治医や療育の先生の意見も踏まえながら、対策について検討していきましょう。

    プロ家庭教師メガジュンでは、学習障害(LD)を含めた発達障害のお子さまのサポートを行っています。中学受験・高校受験に向けた指導も承っていますので、お子さまの発達障害のことでお悩みのある方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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    学習障害(LD)の3つの分類と支援方法

    学習障害(LD)の3つの分類と支援方法

    学習障害(LD)は脳の生まれつきの特性であり、薬などで治療できるものではありません。

    文字の大きさを調整したり、キーボード・電卓などの器具を使ったりといった環境の調整と、個々に応じた教育的なサポートで対処していくことになります。

    以下では、学習障害のお子さまの支援方法について、読字障害(ディスレクシア)・書字障害(ディスグラフィア)・算数障害(ディスカリキュア)のそれぞれに分けて詳しくご紹介していきます。

    学習障害(LD)の対処や支援方法①読字障害(ディスレクシア)

    学習障害(LD)の対処や支援方法①読字障害(ディスレクシア)

    字を読むのに困難がある読字障害(ディスレクシア)については、音韻処理と視覚情報処理の不全が要因になっていると考えられます。

    それぞれによって引き起こされる症状は、概ね以下のように分類することができます。

    <音韻処理不全による読字障害の症状>
    ・文字と音を紐づけられない
    ・文字を単語のまとまりとして捉えられない
    ・短期的な音の記憶が難しい
    <視覚情報処理不全による読字障害の症状>
    ・文字が滲んで見えたり、ぼやけて見えたりする
    ・文字が歪んで見える
    ・鏡文字に見える
    ・文字が点描画で書かれているように見える

    読字障害のお子さまの場合、まずはひらがなを1文字ずつ読む練習から始め、単語→文節→文章と徐々に長い言葉を読めるようにしていきます。

    幼児向けの絵本などは読字障害の改善に役立ちますが、あまりに簡単な内容だと本人のプライドが傷ついてしまう可能性もありますので、絵本などを用いる際には年齢が低いうちから取り組むか、「年下の子に読み聞かせてあげて」など上手く誘導しながら取り組むなどの工夫をすると良いでしょう。

    本人が読むだけでなく、周りの大人が読み聞かせることも非常に効果的です。周りの大人が音読するのを、文字を目で追いながら聞いてもらったり、文節ごとに区切りを入れる「分かち読み」の練習をしたりすることで、文字と音の結びつきや単語をまとまりとして捉える力を付けることができます。

    最近では、オーディオブックなども一般的に用いられるようになってきました。
    スマートフォンやタブレットには読み上げ機能もついていますので、こういった電子機器を活用しながら、「自分にも読めるのだ」という自信を付けてもらうことも大切です。

    書くことが苦手なお子さまは、読字障害を併せ持つケースも多いため、読みのトレーニングを行うことで書字障害の改善につながることもあります。

    学習障害(LD)の対処や支援方法②書字障害(ディスグラフィア)

    学習障害(LD)の対処や支援方法②書字障害(ディスグラフィア)

    書くことが苦手な書字障害(ディスグラフィア)は、読字障害の要因でもある「音韻処理不全」「視覚情報処理不全」のほか、手先の器用さに関わる「発達性協調運動障害」も要因となっていると考えられています。

    <音韻処理不全による書字障害の症状>
    ・文字と音を紐づけられない
    ・文字を単語のまとまりとして捉えられない
    <視覚情報処理不全による書字障害の症状>
    ・文字の形が認識できない
    ・文字同士の位置関係や、パーツの位置関係が記憶できない
    <発達性協調運動障害による書字障害の症状>
    ・手先が非常に不器用で、筆記具を上手く扱えない
    ・文字を書くと枠からはみ出てしまう

    書字障害と読字障害の両方がある場合は、まずは読みの困難から解消していきます。

    「3-1.学習障害(LD)の対処や支援方法①読字障害(ディスレクシア)」で紹介したように、簡単な内容から始めて徐々に長い文章に慣れていくほか、読み聞かせや読み上げ機能を活用して、できるだけすらすらと読めることを目指します。

    書くことのトレーニングとしては、まず「なぞり書き」から始めます。
    なぞり書きができるようになったら、手本を見ながら書く「模写」に進みます。最後に、耳で聞いた言葉を書く「聴写」に挑戦します。

    聴写ができればほとんど問題ありませんが、その前のなぞり書きや模写でつまずくお子さまも多いと思います。
    そのような場合は、紙の下にざらざらした質感のもの(やすりやサンドペーパーなど)を置いて書いたり、目を瞑ったまま字を書いたりして、“書く”という感覚を身につけるようにしましょう。

    視覚処理が苦手で文字の形を認識しにくいお子さまの場合は、画用紙に大きく文字を書き、塗り絵をしてもらったり、色紙を貼り付けてもらったりして、文字の形に慣れてもらうことも効果的です。

    ただし、書きの困難は、大人になってからはあまり困らないというケースも少なくありません。効果と負担のバランスを考え、キーボード入力に切り替える等の判断が必要な場合もあります。

    学習障害(LD)の対処や支援方法③算数障害(ディスカリキュア)

    学習障害(LD)の対処や支援方法③算数障害(ディスカリキュア)

    算数障害(ディスカリキュア)は、数の概念を感覚的につかむのが難しく、そのために数の処理が困難になる障害です。
    また、数学的な推論も苦手な傾向にあります。

    算数障害のお子さまの感覚を理解する手法として、「数字をいろは歌に置き換えてみる」という方法があります。たとえば、この世界から1,2,3,…という数字が一切無くなったと仮定し、その代わりにいろは歌を使って、

    1 = 「い」
    2 = 「ろ」
    3 = 「は」

    と置き換えたとします。さて、「ほ」+「ろ」はいくつになるでしょうか?

    「ほ」を「5」という数字に変換したくなってしまいますが、今この世界に数字は存在しませんので、数字への変換はNGです。
    紙にメモしたりせず、自分の頭の中と指だけで「ほ」+「ろ」を計算する場合、おそらく多くの人が、

    ①片方の手で「い、ろ、は、に、ほ」と5本の指を折る
    ②もう片方の手で「い、ろ」と2本の指を折る
    ③追った指を端から「い、ろ、は、に、ほ、へ、と」と数える

    といった方法で答えの【と】を導き出すのではないでしょうか。
    こうして指折り数えることは、算数を習いたての幼い子どもがよく行う方法で、「全数え法」と呼ばれています。

    「ろ」と言われたときに、いろは歌の2番目の文字であることはわかっても、「■■」という2つの量のイメージが伴う人は少ないでしょう。
    また、「ほ」「と」と言われて、「5」「7」という数の感覚がすぐに思い浮かぶ人はほとんどいないはずです。

    算数障害のお子さまが持っている「数の概念や処理が苦手」という感覚は、このように数字をいろは歌などで置き換えると共感しやすくなるかもしれません。

    全数え法で「5+2」の計算をしているお子さまに対して、「5の続きから2数えると良いよ」と言っても難しかったり、文章題で「2-5」という式を立てたりしてしまうのは、こうした数の概念や処理が苦手なことが原因となっています。

    算数障害のお子さまをサポートする際には、まずは簡単な問題から始めるようにしましょう。量をたくさんこなすのではなく、一問ずつじっくりと、本人の中で落とし込めるまで丁寧に説明することが重要です。

    10までの数字の足し算・引き算ができれば、日常生活では最低限の問題はクリアできます。
    大人になれば電卓が使えますし、学齢期においてもどうしても困難の解消が難しい場合は、補助具として計算機を使用するのも良いでしょう。

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    学習障害(LD)の年齢ごとの特徴

    学習障害(LD)は、読み・書き・計算の学習が本格的に始まる学齢期以降に診断が可能になります。
    ただし、就学前でも明らかな特徴がある場合もありますので、気になる場合は専門機関に相談してみると良いでしょう。

    また、困りごとの内容についても年齢によって様々です。文字を覚えたての小学校低学年の頃は、とめ・はね・はらいなどを厳しくチェックされテストで減点されることもあるかもしれませんが、高校になってから平仮名のとめ・はねで減点されることはほとんどありません。

    そこでこの章では、学習障害の年齢ごとの特徴や困りごとについてご紹介していきます。

    学習障害(LD)の年齢ごとの特徴①出生~小学校入学まで

    学習障害(LD)の年齢ごとの特徴①出生~小学校入学まで

    乳児の段階で学習障害かどうかがわからないのは当然のことながら、幼児期においても判断するのはかなり難しいでしょう。

    この頃の年齢ですと、お子さまによって発達のスピードの差も大きいため、周りのお子さまより文字や数字を覚えるのが遅いからといって焦る必要はありません。

    無理に文字を覚えさせたり、数字に興味を持たせようとしたりすると、逆に読み書きや算数が嫌いになり、苦手意識が強くなってしまう可能性もあります。ですので、小学校に入学する前までは余裕を持って見守るようにしましょう。

    ただし、

    ・「積み木を3つ取って」と言っても、1つだけ渡してきたり、あるいは積み木が無くなるまで渡し続けたりする
    ・「しりとり」など簡単な言葉遊びでも難しい

    などの傾向があり、成長とともに改善が見られないなどの場合は、もしかしたら学習障害かもしれません。
    気になることがあれば専門機関に相談するほか、小学校入学後も丁寧な見守りを続けましょう。

    学習障害(LD)の年齢ごとの特徴②小学校

    学習障害(LD)の年齢ごとの特徴②小学校

    小学校に入学すると、学習障害の傾向は顕著に表れてきます。特に、小学1~2年生の頃は読み・書き・計算の基礎的な内容ばかりであり、定型発達の子の場合は問題無くクリアできることがほとんどです。

    いわゆる“誰でもできる”レベルの問題でのつまずきが目立つときは、専門機関への受診を検討すると良いでしょう。受診を迷う場合は、学校の先生やスクールカウンセラーに相談するのも一つです。

    また、小学生ですと「学習障害」の概念を理解するのが難しく、周りにからかわれてしまったりしてお子さまが自信を無くしてしまう可能性もあります。努力が足りないわけではなく、また、一人一人に合った方法やスピードで勉強するのは何もおかしなことではないことを、お子さまが理解できるように説明することも大切です。

    学年が進むと、小学生であっても学習の内容はそれなりに高度になります。
    学業不振があったとしても、「難しいからわからないのかな?」と根本にある学習障害に気付きにくくなり支援の開始が遅れてしまう可能性もあります。

    ですので、できれば小学校低学年の段階で学習障害の特性に気付けるよう、基礎的な段階でのつまずきについては注意して見ておきましょう。

    学習障害(LD)の年齢ごとの特徴③中学校・高校

    学習障害(LD)の年齢ごとの特徴③中学校・高校

    中高生になると、苦手なことがよりはっきりとしてきます。

    成績は優秀であるにもかかわらず、書字だけが突出して苦手で「字が汚い」と注意されるなどのケースのほか、文章を読むのが苦手で読解においてつまずきがあるものの、文章を読み上げてもらうとすんなりと理解できるなど、特定のことだけが極端に苦手というケースが増えてきます。

    書字・読字障害の中には、日本語は問題無い一方で、英語のように綴りと発音の乖離が大きい言語になると読めない・書けないといった方もいらっしゃいます。
    特定のことだけが苦手なので上手くカバーしながらやりすごせる場合もありますが、人知れず困難を抱えてしまったり、定期テストや受験などで大きくつまずいたりすることもありますので、早めに特性を見つけてサポートすることが大切です。

    学習障害(LD)の年齢ごとの特徴④大学・社会人

    学習障害(LD)の年齢ごとの特徴④大学・社会人

    学生時代は苦手なことを何とかやり過ごせていた人が、大人になってから大きな困難に直面するケースもあります。

    特に、マニュアルや契約書などが読めない・理解できないといった困難によってミスが重なり、仕事が長く続かなかったり、精神疾患を患ってしまったりといったケースが目立ちます。

    自身の特性を十分に理解した上で就職すれば、文書を読む機会が少ない職種を選んだり、職場に適切な配慮を求めたりできますが、本人にも自覚が無いまま大人になった場合は、「自分はこんなに能力が低いのか」と落ち込み、解決方法が見いだせないままという状態になってしまいます。

    早い段階での特性の診断とサポートが重要なのは言うまでもないほか、大人になってからも正確な診断を受けることは大切です。
    どんなときに困りごとがあるのか、それはいつからかなど、受診の際には自分の状態をできるだけ詳しく伝えることを心がけましょう。

    また、学習障害は自分の努力不足ではありませんので、決して自分を否定せず、現状から考えられる最適な支援や仕事選びを検討していきましょう。

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    学習障害(LD)とは?読み・書き・計算の困難を持つ子どものまとめ

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    この記事では、学習障害(LD)のお子さまの特徴や困りごと、その対処方法について詳しくご紹介してきました。

    改めてポイントをまとめると、以下のとおりです。

    <POINT>・学習障害は発達障害の一つで、生まれつきの脳の性質によるもの
    ・学習障害は読字障害(ディスレクシア)・書字障害(ディスグラフィア)・算数障害(ディスカリキュア)の3つに分類される
    ・学習障害は、要因を見極め適切にアプローチすることで困りごとを最小限にすることができる
    ・学習障害は、小学校低学年頃から特徴が明らかになるため、早めに対処することが大切

    学習障害は勉強での困難が目立つため、努力不足と思われたり、お子さま本人が自信を無くしてしまったりしやすいものです。
    ですが、生まれつきの脳の性質ですので、特性そのものを無くすことはできません。

    努力不足ではなく、頑張ってもどうしてもできないことであることを周りが理解し、適切にサポートしたり、環境を調整しながら特性と上手く付き合っていくことが大切です。

    私たちプロ家庭教師メガジュンでは、これまで学習障害を含めた多くのお子さまをサポートしてきました。

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    LDやADHD・ASDを併発しているお子さまであっても、中学受験や高校受験・大学受験に成功した方はたくさんいらっしゃいますので、学習障害や発達障害でお悩みの方はぜひ一度お問い合わせください。

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    最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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