ADHD(注意欠如・多動症)のお子さまの育て方のコツ6選~接し方・関わり方のポイントを紹介~
- ADHDのお子さまの育て方に悩み、どこに相談すべきか迷っている
- 学校生活でお子さまがトラブルになりがちで心配
- 集中力や学力について、同年代の子と比べて不安がある
このような心配を抱えている保護者さまは多いのではないでしょうか。
発達障害やADHDは少しずつ理解が進んできた一方で、どう対応するかに戸惑う方もまだ多くいらっしゃいます。お子さま自身も、「自分はどうしてみんなと同じようにできないのか」と悩むことがあり、その不安から自己評価が低くなってしまっている方もおおくいらっしゃいます。
ADHDと一言で言っても、お子さま一人ひとりの特性は異なります。どのような支援が必要か、何が得意で何が難しいのか、一人ひとり違うからこそ、それに合った支援が大切です。
また、保護者さまが、いつでもお子さまの味方であることを伝えることが、自己肯定感の土台となります。
保護者さまの中には、こんなお悩みを持っている方もいらっしゃるかもしれません。
- 落ち着きがないお子さまに、つい強く注意してしまう
- 周囲と異なることへの焦りが親子ともにストレスに
- 具体的にどう育てたら良いのか相談する相手がいない
この記事では、ADHDの特性に向き合いながら、より良い育て方を実践するためのヒントをお伝えします。困ったときの対処法や、具体的なアドバイスについて、発達障害専門のプロ家庭教師の視点から詳しく解説していきますので、ぜひ最後までお読みいただければ幸いです。
発達障害専門のプロ家庭教師・キャリアアドバイザー
妻鹿潤
・個別指導塾の経営・運営でお子様の性質・学力を深く観る指導スタイル
・yahooやSmartNews、Newspicksなどメディア向け記事も多数執筆・掲載中
ADHD(注意欠如・多動症)とは
ADHD(注意欠如・多動症)とは①脳の器質的問題
ADHDの正式な名称は「注意欠如・多動症(attention deficit hyperactivity disorder)」であり、その名のとおり
- 注意欠如(集中しづらい、注意散漫である)
- 多動性(落ち着きが無い、衝動的に行動する)
といった特性を持った発達パターンのことを指します。
お子さまの場合ですと、
- 授業中の立ち歩き
- 友人関係のトラブル(短気、怒りっぽい、衝動的な行動)
- 先生の注意を聞けない(耳に入らない感じや、注意されても忘れて同じことを繰り返す)
- 整理整頓が年齢不相応に苦手
などの特徴が見られます。
幼児期の検診などでは問題無しとされていた場合でも、小学校入学後の学齢期から発達特性が目立ちはじめ、検査を受けるお子さまもいらっしゃいます。
かつては、ADHDのお子さまは「落ち着きが無く、聞き分けの悪い子」であり、親のしつけが原因であるとされていた時代もありました。
ですが、今は研究が進み、脳の器質(構造)の問題であることがわかっています。
ADHDの子どもの脳は、一部の構造が平均よりも小さいことが報告されています。
「大脳基底核」はその一つであり、筋肉の動きを制御する働きを持っています。
必要な時に活動し、休むべきに休ませるという機能を持っているのですが、ADHDのお子さまはこの働きが弱いために、座っているときでも手足を動かしてしまったり、やみくもに動き回ったり、感情のままに動いてしまうといった状態になります。
脳の機能の問題について知ることは、一見するとお子さまの育て方とはあまり関係が無いように思えるかもしれません。
ですが、単に「落ち着きが無く、育てづらい子」と認識するのではなく、その背景に脳の仕組みが関係していることを知ることで、「この子(あるいは私の育て方)が悪いわけではないのだ」と理解することができます。
理解することがすぐに状況の改善につながるわけではありませんが、気持ちが楽になったとおっしゃる保護者さまは多くいらっしゃいますので、
- ADHDは脳の仕組みの問題であること
- 育て方やお子さまの努力不足が原因ではないこと
はぜひ、心に留めていただきたいと思います。
★ADHDのお子さまの指導実例はこちら↓
ADHD(注意欠如・多動症)とは②二次的な障害
ADHDのお子さまの約20%が双極性障害やうつ病を発症していることをご存じでしょうか。
また、約30%のお子さまは行為障害(いわゆる非行や反社会的行動)を抱えており、さらに不安障害や学習面での困難を抱えるお子さまもいらっしゃいます。
ここで間違えてはいけないのは、「ADHD=うつ病(あるいは非行)」ということではないということです。
これらの精神疾患や行動障害、学力面での困難はADHDから派生した二次的な障害であり、周囲の人々におけるADHDの本質的な理解が不足していることが大きな原因となっています。
本人にはどうしようもない特性であるにもかかわらず、いつも教室でみんなの前で叱責されたらどうでしょうか?
勉強についていけないのは努力不足だと言われ、何のフォローも受けられなかったらどんな気持ちになるでしょうか?
最近では大人の発達障害が話題になっていますが、お子さまであっても、学校で上手くいかないときに受けるストレスは同じです。
うつ病や非行、不安障害や学習面での困難は、周りの理解と支援で十分に防止できるものですので、周りの大人がしっかりと特性を理解しサポートすることが大切です。(参考:宮口幸治 『ケーキの切れない非行少年たち』 | 新潮社 (shinchosha.co.jp
もしお子さまがストレスから精神疾患等を発症した場合は、投薬治療を行うこともあります。ADHDへの対処法としても投薬を行う場合があるため、薬の飲み合わせや副作用など、様々な問題を複合的に考慮する必要があります。
二次的な障害は事前に防ぐことが最も大切ですが、お子さまの様子で気になることがある場合は速やかに学校や教育相談センターなどの専門機関や医療機関に相談しましょう。
ご家庭だけで抱え込まないことも、ADHDのお子さまの子育てにおいて重要なポイントです。
目が悪い人が眼鏡をかけたり、耳が悪い人が補聴器を付けたりするのと同じように、ADHDのお子さまも適切なフォローがあれば、社会で問題無く過ごすことができます。
目が悪い人に対して、「努力で何とかしろ」と言う人はいません。人それぞれが生まれ持った特性に応じた対処や支援を受けることは、何もおかしなことではありません。
お互いの特性を受け入れ尊重し、助け合っていける社会になることを願わずにはいられませんし、その一助となるよう、我々もプロ家庭教師としてできることから取り組んでいきたいと考えています。
ADHD(注意欠如・多動症)のお子さまの子育ての6つのポイント
ADHD(注意欠如・多動症)のお子さまの子育て①とにかく褒める
ADHDのお子さまは、褒められる機会が他のお子さまと比べて少ない傾向にあります。
落ち着きが無かったり、集中力が無かったり、衝動的であったりと、行動の理由を周りに理解してもらえることが少なく、結果として怒られてしまう場合の方が圧倒的に多いでしょう。
そのため、ADHDのお子さまは、「褒められたい、認められたい」という欲求を持っていることが多いです。
こういった承認欲求が満たされない状況が続くと、大人の気を引くためにわざと反抗的な態度や反社会的な行動をとったり、精神的なストレスが溜まって不安障害や気分障害を発症してしまう場合があります。
ですので、ADHDのお子さまを褒めることは非常に重要です。
ただし、褒めるといっても、ただやみくもに根拠なく褒めるのでは意味がありません。
褒める際のポイントは以下のとおりであり、順に詳しく紹介していきます。
- 先に褒めて、改善点を後から伝える
- 一つずつ褒める
- 親のアンガーマネジメント
先に褒めて、改善点を後から伝える
例えば、お子さまが宿題の漢字ドリルを約束どおりできたとしましょう。
しかし、早くゲームがしたかったためか、字が雑だったり、正しくない書き順で書いてしまった部分があるようです。さてこの時、皆さんは次の①②のどちらの褒め方をしますか?
②ちょっと雑なところがあるけど、ゲームより先にできたのは偉いね。
より好ましい褒め方は①です。
まず良い点を先に伝えることで、お子さまは保護者さまの意見を受け入れる姿勢になります。
何もかも完璧にできることはほとんどありませんし、逆に言えば何もかも駄目なこともほとんどありません。
お子さまの行動一つ一つをできるだけ細かに分析し、良いところを見つけてまずは褒めましょう。
その次に改善してほしい点を伝えると、お子さまも保護者さまの言うことを素直に聞いてくれることが多いです。
一つずつ褒める
あれもこれもと、まとめて褒めてもあまり効果がありません。
というのも、ADHDのお子さまは一度に処理できる情報の量が少ない(→ワーキングメモリーが低い)ため、いっぺんにたくさんのことを伝えてもほとんど頭に残らないからです。
お子さまが何か行動したら、こまめに(できればその都度)声を掛けましょう。
「今の行動の○○が良かったね」という積み重ねがお子さまの自信や、良い行動パターンの定着につながります。
注意する時も同じで、一度に2つ、3つと注意するのではなく、その都度伝えることがポイントです。
叱っているとついついあれもこれも言いたくなってしまいますが、お互いストレスになり、効果もあまりないので、できるだけ避けましょう。
親のアンガーマネジメント
日頃から突拍子もない行動が続くADHDのお子さまを育てていると、保護者さまもどうしてもストレスがたまります。
褒めるのが大切だとわかっていても、「それどころではない!」と感じる方も多いのではないでしょうか。
人の感情は完全にコントロールできるものではありませんので、イライラしてしまう保護者さまがご自身を責める必要はありません。
「1-1.ADHD(注意欠如・多動症)とは①脳の器質的問題」でお伝えしたとおり、きつく怒ったからといって解決できる問題ではないことを心に留めていただきつつも、自然体で過ごしていただければと思います。
また、怒りやイライラを溜めこみすぎると、保護者さまの方が心身を崩しかねません。
もし怒りやイライラが溜まってしまったときは、お子さまに怒りをぶつけるのではなく、できる限り、配偶者やカウンセラーといった大人に対して悩みを話すようにしましょう。
仲の良い保護者でも学校や塾の先生でも、今の率直な気持ちを話せる大人が1人でもいると、大きな支えとなり保護者さまの気持ちも安定しやすいため、ぜひ意識していただければと思います。
ADHD(注意欠如・多動症)のお子さまの子育て②規則正しい生活を送る
最も基本的なことであるがゆえに見逃されがちですが、ADHDのお子さまにとって規則正しい生活を送ることはとても重要です。
ADHDのお子さまはワーキングメモリーと言われる脳の働きが低いことが多いため、いわゆる「段取りを考える」という作業が苦手です。(参考:「 ,b>ADHDはワーキングメモリーが低い?受験対策・勉強法・鍛え方を紹介!」
朝の準備一つをとっても、何から手を付けてよいのかわからず混乱してしまい、はたから見るとぼーっとしているだけというケースも少なくありません。
色々な選択肢を頭に思い浮かべて、その中から取捨選択するというプロセスは、ワーキングメモリーの低いADHDのお子さまにとってはかなり負担が大きいものです。
そこでご家庭においては、日々のタスクをきっちりと習慣化することをオススメします。
選択肢を最小限にとどめることで、お子さまが混乱してしまうことも少なくなるはずです。
具体的には、
- 朝の準備の手順
- 宿題の時間
- テレビやゲームの時間
- 就寝時間
などが挙げられます。
これらの時間を分単位でしっかり決め、家族全員で守るようにしましょう。家庭内でそれが当たり前になると、お子さまも自然と規則正しい生活を身につけることができるようになります。
ADHD(注意欠如・多動症)のお子さまの子育て③視覚で伝え、体で覚える
言葉だけの情報を処理することは、実はとても高度な脳の働きが必要です。
言葉を聞き取り、その概念を理解し、具体的な行動として処理するというプロセスは、脳のワーキングメモリーの多くを使うことになります。
そこで、ADHDのお子さまに指示を伝えたいときは、イラストを使ったり、実際に目の前で手本を見せたりするようにしましょう。
視覚的に伝えることで、言葉を理解するというプロセスを省略することができ、ADHDのお子さまの負担を少なくすることができます。
さらにプロセスを省略するために、お子さま自身に身体で覚えてもらう方法もあります。
家から帰ったら手を洗うという習慣も、意識せずとも勝手に洗面所に身体が向かう人も多いのではないでしょうか。
ADHDのお子さまは、いろいろなことが気になりだすと行動が止まってしまうことが多いため、考えなくても勝手に体が動くまで習慣化することがポイントです。
「帰ったら手を洗う」という情報以外はお子さまができるだけインプットしないよう、玄関や洗面台の周りをできるだけスッキリと片付けておくなども効果的です。
ADHD(注意欠如・多動症)のお子さまの子育て④タスクを小分けにする
「部屋の掃除をしなさい」と言われたときに、頭の中には複数の選択肢が浮かびます。
例えば、掃除機をかけるのか、物を片付けるのか、机の上を整理するのか……あれもこれも気になってしまうADHDのお子さまは、どれから手を付けてよいかわからず、いつまで経っても掃除が終わりません。
ポイントは、タスクを小分けにして伝えることです。
掃除をするには、まずは床に散らかっているものを片付ける必要がありますが、できるだけ具体的に「本を本棚にしまってね」と1つだけ伝え、それができたら褒めます(→2-1.ADHD(注意欠如・多動症)のお子さまの育て方①とにかく褒める)。
次に「服はタンスにしまってね」と伝え、できたら褒めて…を繰り返していきます。
掃除してね、と一言いえば掃除ができるお子さまに比べて、確かに手はかかるかもしれません。
ですが、なかなか掃除が終わらず「いつまでかかっているの!」と怒ってしまい親子ともどもストレスを感じるよりは、タスクを切り分けてこまめに指示する方が、結果として掃除は早く終わりますし、お子さまも褒められる機会が増えて楽しく掃除することができます。
また、最初のうちはかなり細かい指示が必要かもしれませんが、やがてルーティン化でき、保護者さまが付きっきりでなくても掃除できるようになるかもしれません。
お子さまが「できた!」と感じる経験を増やすことが何より大切ですので、根気よく取り組んでいただければと思います。
ADHD(注意欠如・多動症)のお子さまの子育て⑤お子さまの集中を引き出す
ADHDのお子さまは、集中することが苦手です。
何か気になることがあると、すぐに集中が途切れてしまいます。ですので、話を聞いてほしいときは、できるだけ静かで外的な刺激が少ない環境を用意しましょう。
また、お子さまが何かに集中しているときは、口出しせず見守ることを心がけましょう。
話を聞いてほしかったり、注意しなければならないときに、ついつい大きな声を出してしまうことがあると思います。ですが、大きな声はあまり効果的ではありません。
というのも、「怖い」「怒らせてしまった」という感情が先行し、お子さまが話の内容を受け入れる態勢になりづらいためです。伝えたいことがあるときは、お子さまと目を合わせ、できるだけ落ち着いた口調で話すようにしましょう。
お子さまの集中を引き出す方法として、軽い運動や簡単なクイズ、ゲームなどが効果的です。
じっと座って話を聞いてばかりいるよりも、「AかB、どっちだと思う?」という問いかけを挟んだり、体を動かすためにキャッチボールをしてみたりといった工夫をすることで、お子さまの注意を引くことができるケースもあります。
ADHD(注意欠如・多動症)のお子さまの子育て⑥教育方針を一貫する
ADHDのお子さまだけでなく子育て全般に言えることですが、お子さまに注意や指導をするときは、一貫性を保つことが重要です。
気分によって言うことが変わったり、昨日は怒られたのに今日は怒られなかったという状態では、お子さまは何を信じればよいのかわからなくなり、正しい習慣も身に付きません。
また、ADHDのお子さまの場合は、学校の教育方針との整合性にも注意しましょう。
お子さまの特性に理解がある家庭内では、単に立ち歩くだけで他人に迷惑を掛けない限りは注意をしない、という場合もあるでしょう。大雑把な指示で伝わりづらいときは、具体的な内容を伝えるというフォローもできます。
しかし、学校では必ずしも同じ対応ができるとは限りません。
「周りに迷惑を掛けない範囲で自由にさせてほしい」「指示が抽象的でわかりづらいときは、具体的にかみ砕いて説明してほしい」と面談などで伝えることはできますが、先生1人で30人以上を指導しなければいけない学校と、保護者さまがお子さま1人だけを見ていられる家庭とでは、そもそもの環境が違います。
こちらの希望はしっかり伝えた上で、できることとできないことを明確にし、ご家庭と学校が共通の認識を持つことが大切です。
もし学校の指導によってお子さまの心が傷ついている場合は速やかに相談する必要がありますが、それ以外で気になることがある場合は、その都度丁寧に話し合うことで解決を目指すようにしましょう。
ADHD(注意欠如・多動症)のお子さまの子育てのまとめ
この記事では、ADHDのお子さまの育て方のポイントについてお伝えしてきました。
改めて内容をまとめると以下のとおりです。
- ADHDの特性は「注意欠如」「多動性・衝動性」
- ADHDのお子さまは授業中の立ち歩きや学力面での困難を抱えることがある
- ADHDは脳の仕組みの問題であり、育て方や本人の努力とは無関係
- ADHDのお子さまは、とにかく褒めることが大切
- ADHDのお子さまの子育てにおいて、規則正しい生活は基本中の基本
- ADHDのお子さまには、言葉よりも視覚的に伝える方が効果的
- ADHDのお子さまに指示する時は、できるだけ具体的に伝える
ADHDのお子さまが持っている特性は、一人一人違います。
これらのポイントを参考にしながら、ご家庭においてはお子さまそれぞれにあった子育てに取り組んでいただければと思います。
また、お子さまの育て方や学力面でお悩みの方は、学校だけでなく、各市町村が設置している教育相談センターや医療機関、あるいは専門的な知識を持つプロ家庭教師などに相談することをオススメします。
一般的にADHD向きだとされている支援方法も、お子さまには相性が悪い場合もありますし、プロの目からお子さまの特性を分析することは非常に重要です。
プロ家庭教師メガジュンでは、お子さま一人一人に寄り添った指導をモットーにしています。
長年の指導経験で培ったノウハウを生かしたサポートにより、これまで数多くのお子さまが第一志望に合格されてきました。また、代表はキャリアアドバイザーとしての顔も持つことから、受験だけでなくその先の人生までを見据えたご提案が可能です。
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近隣の塾や大学生による家庭教師では満足のいくサポートが受けられないとお悩みの方でも、日本全国・海外からでもご相談いただくことが可能です。
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最後までお読みいただきありがとうございました。