【発達障害と高校受験】合格しやすさと進学後の過ごしやすさを重視した学校選びとは

・発達障害と高校受験、合格できるの?やっぱり定型発達より不利なの?
・充実した高校生活を過ごすためには、どんな学校と相性が良いの?
・発達障害別のオススメの受験勉強法はあるの?

こういった疑問にお答えします。

この記事を書いている私は、発達障害専門の個別指導をプロとして長年やっている者です。
教育歴16年以上で1500人以上の指導経験があり、今も発達障害のお子さまの高校受験に現役で携わっています。

結果として、高校受験の第一志望校合格率は95%以上を誇りますが、この高い合格率には「そうなるべくして、高い合格率になった」理由があります。
この記事では、そういった理由やノウハウをご紹介します。

また、高校受験合格はゴールではなく通過点ですので、「個性的な発達障害のお子さまが、充実した高校生活を過ごせる学校選び」のポイントもご紹介します。

先に申し上げますと、この記事を最後までご覧頂くと分かる通り、たくさんの知っておくべきポイントとノウハウがあります。
ですが、この記事の内容を実践していただくだけでも、発達障害のお子さまの合格率の底上げや、充実度の高い高校選びに結びつく可能性はかなり上昇しました。

少しでも発達障害のお子さまの高校受験に貢献できれば、嬉しい次第です。

【執筆・監修】
発達障害専門の受験プロ家庭教師 
妻鹿潤
・16年以上1500名以上の指導実績あり
・個別指導塾の経営・運営でお子様の性質・学力を深く観る指導スタイル
・yahooやSmartNews、Newspicksなどメディア向け記事も多数執筆・掲載中

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発達障害の高校受験、合格できます

発達障害と高校受験、合格できるの?

まず、発達障害・グレーゾーンのお子さまも高校受験は合格できると断言します。
ただ、「志望校選び」と「お子様に合わせた勉強法」が本当に重要です。

逆に、この2つをうまく使いこなせば健常者以上の受験結果が出ることも多いです。

私立高校受験に向けた勉強のやり方

結論から申しますと、発達障害・グレーゾーンのお子さまは「公立高校受験より私立高校受験の方が相性が良い」・「お子さまの得意・好きな科目に振り切った、配点・難易度の学校を選択する」ことで、合格率は格段に上がります

公立高校受験は都道府県ごとに傾向が違うものの、「入試でも内申点でも、5教科の配点は均等配分である」ことが多く、「副教科が内申点に高い得点で含まれる」ことも多いです。
つまり、明確に「オールラウンドに出来るお子さま」を求めている受験のため、好き嫌い・得意不得意がハッキリしている発達障害・グレーゾーンのお子さまと相性が悪いです。

事実、好き・得意な科目の実力は相当あるお子さまが、不得意な2科目に引っ張られて、実際の実力よりも2段下の偏差値の高校に入学されたケースもたくさん見てきました。

もちろん、内申点が高ければ、公立高校を受験しても良いでしょう。
ちなみに、内申点を取るためには、「副教科の定期テストの勉強対策に力を入れる(副教科の内申点比重が高い都道府県が多いため)」「お子さまの得意・好きに振り切った勉強時間や対策を設け、不得意・嫌いな科目は「取れそうな問題に絞って対策をして得点する」」が良いです。

私立高校受験は、志望校によって受験方式がかなり違います
5教科ではなく、英語・数学・国語の3科目受験の学校もあれば、国際系の学校では英語の配点だけ2倍される・英検があると得点が加算されたりしますし、数学の問題だけ異常に難しい学校など、学校ごとに違いがあります。

そのため、例えば「理数が強くて、国語の読解が苦手」なお子さまなら「理科・数学の配点が高く、問題も難しい学校」かつ「国語でも古文・漢文や文法・漢字の配点が高い学校」を選ぶことで、合格率は格段に上がります。
2-3年分の過去問を解いた得点と、合格平均点との乖離を見て、「学校との相性の確認」と「各科目何点を目標点にして、大問のどこで何点を取るか」まで決めれば、自ずと志望校は決まります。

また、ケアレスミスが多い(ケアレスミスの失点が全体の10%以上ある)お子様なら、「記述式の問題が多く、部分点がもらえる学校を受験する」と良いでしょう。

私が教えてきた発達障害・グレーゾーンのお子さまでも、上述の志望校選びをすることで「同じ偏差値帯の志望校でも、A高校だと合格平均点からマイナス30点だったけど、B高校だと合格平均点以上を取れた」などのケースがあります。

※ちなみに、年収590万円未満のご家庭では、高校は実質的に無償化となります。
→詳しくは、扶養家族の人数、控除の有無、働いている人の数によって目安となる年収が変わります。(文科省)

また、高校受験では文科省が、発達障害のあるお子さまへの対応をしているので、ご参考にしてください。
資料2 高等学校の入学試験における発達障害のある生徒への配慮の事例(文科省)

発達障害と高校選び

発達障害と高校選び、どういった高校だと充実した高校生活を過ごせるの?

これまでの経験上、「発達障害のお子さまは、少しでも偏差値の高い学校に入った方が良い」・「自由度が高く、課題が少ない学校が良い」だと思います。また、大学までの附属校の受験はあまりオススメしません。

少しでも偏差値の高い学校に入った方が良い理由は、「発達障害・グレーゾーンの特性を、周りのお子様が個性と捉えてくれやすい」こと、「周りのお子様が精神的に安定している人が多くなる」ため、個性的な発達障害のお子様をいじめなどの攻撃対象とされるリスクが下がることです。
偏差値といじめの相関性は、これまで多くの学校・お子様を見てきて、「事実としてある」だと思ってます。

事実、様々なメディアに掲載された、私の記事「東大・京大合格者は発達障害の性質を持つ人が多い!?」にも書かせてもらったのですが、東大・京大には発達障害のお子様が多く、進学校にも発達障害のお子様が多いです。

また、発達障害・グレーゾーンのお子さまは自由度が高く、課題が少ない学校とも相性が良いです。
自由度・課題の多さは学校によってかなり異なり、課題が本当に多いところは毎日2-3時間、土日も4-5時間勉強しないと課題が終わらない学校もあれば、課題が全然ない学校もたくさんあります。
自由度の高い学校は、私服OK・髪の毛を染めてもピアスを開けてもOKな学校から、かなり厳しい校則の学校まで様々です。

発達障害のお子さまは好き嫌いがハッキリしていることが多いため、校則が厳しいなどの管理型の学校は窮屈さを感じやすく、課題が多い学校ではお子さまに合った勉強をする余裕がなく、精神的に潰れてしまうケースもよくありました。
もちろん、「コツコツ頑張ることができる、真面目な発達障害のお子さま」は課題が多いところでも良いと思いますが、そのようなお子さまは少数の印象です。

他にも、私立高校はコース制(例えば、「特別選抜コース(一番偏差値が高い)・特進コース(次に偏差値が高い)・総合コース(偏差値が低い)」に分かれている)が多く、一番上のコースは受験対策に力を入れて、課題が多くなる・自由度が下がる傾向があります。
そのため、私立高校受験の際は「どのコースで受験するか」「そのコースの自由度・課題の多さはどれくらいか」まで事前に把握することが大切です。

さらに、お問合せの多い帰国子女・海外子女の方は、以下の内容をご参考に頂ければ幸いです。

オンラインを中心にした帰国子女・海外子女の方へのサービス
オンラインを中心にした帰国子女・海外子女の方へのサービス
オンラインを中心にした帰国子女・海外子女の方へのサービス 帰国子女や海外子女のお子さまについて、こんなお悩みはありませんか? ・海外在住のため、発達障害について…

最後に、大学系列校への高校受験はあまりオススメしません
実は、大学系列校と言っても内部進学率は10-90%と様々です。

詳しくは、こちらも様々なメディアに掲載された、私の記事「大学附属校に入れば安心?内部進学だと就職に不利? 附属校のメリット・デメリット」にもあるように、「高校に入ってから全科目的に良い成績を取る」ができないと、そもそも内部進学できない学校もたくさんあります。

また、内部進学率90%以上の学校でも「成績の良い人から順番に好きな学部を選べる」のため、好き嫌い・得意不得意がハッキリしている発達障害・グレーゾーンのお子さまは、「附属大学に進学できない」「行きたい学部学科に進学できない」リスクが高く、それなら大学受験で「得意・好きに振り切った受験」をする方が、合格率が高くなることがほとんどです。

別の理由として、2021年現在は「コロナで先行きが不透明」、「大学共通テストの先行きが不透明」なため、大学附属校人気が強く、倍率がかなり高くなっていることも受験をオススメしない理由でもあります。

定時制高校、通信制高校という選択

公立高校か私立高校か、だけでなく定時制か通信制かという選択肢としてもある

私個人の意見としては、「学校に問題なく通えるなら、公立高校か私立高校に進学するのが良い」ですが、発達障害が重度だったり、周りのお子さまと仲良くすることが本当に苦手であれば、通信制も選択肢として上がると思います。
通信制高校は学校に通うこと自体が年間でも数少なく、学校から送られてくる教材を中心に勉強して、全てをこなせば高校卒業となります。

また、朝がどうしても弱い起立性調節障害だったり、大勢と一緒に学ぶ教室が苦手なお子さまは、「夕方から夜、あるいはその他の時間帯で通学する、人数の少ない「定時制高校」も相性が良いかもしれません。

このように、現在は多様な高校があるため、「お子さまの発達障害・グレーゾーンの状態に応じた、最適な学校」は保護者様の時代よりもかなり用意されていると思って差し支えないです。

発達障害ならお子さまの意思も大切

高校選びにはお子さまの意思も大切
ここまで、お子さまに合わせた高校選びについて記載しましたが、お子さまの意思も高校選びには大切です。
発達障害のお子さまは、好き嫌いがはっきりしているためです。
実際、本人の意思を尊重せずに決めてしまい、お子さまが不登校になったり、学習意欲が下がるなどのケースもありました。

また、受験が目の前に近づくと、どうしても合格に意識がいってしまい、「そもそも、なぜ勉強するのか?受験するのか?」という、本来の目的を忘れてしまいがちだと思います。

以下、持論ですが、教育・人財業界に16年身を置く中で考えた、勉強の目的に関する記事になります。
ご参考にして頂ければ、嬉しい次第です。

勉強する意味・目的って?大人は何と答えるべきか、プロ家庭教師が教えます!
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「何のために勉強しなくちゃいけないの?」 お子さまに聞かれて答えに困る保護者さまも多いのではないでしょうか? また、私たち大人も、子どもの頃に一度はこんな疑問を…

学校への告知の義務はあるの?

発達障害の学校への告知の義務はあるの?
結論として告知義務はありませんが、伝えていた方が学校側も配慮してくれることが多いです。
「実際に合否にどこまで影響するか」については、公立高校受験ではまず影響しないと思いますが、私立高校受験では正直、「学校次第」だと思います。

表向きは「影響しない」と言われると思いますが、合否の結果は完全に学校に一任されているため、学校が考慮している可能性もあります。
そのため、安全策としては、合格してから伝達することです。

ただ、発達障害を事前に伝えることで、上述の文科省記載の配慮をしてくれるため、配慮があった方がお子さまにとって良いなら、伝えた方が良いとも思います。

発達障害種類別、高校受験の勉強方法

発達障害種類別、押さえておくべき高校受験勉強方法
ここでは、発達障害の種類別に押さえておくべき勉強方法をご紹介します。
発達障害・グレーゾーンのお子さまは、苦手・嫌いに相当な時間をかけても、全然できるようにならない、ということは多くあります。

また、ADHDとASDで、地域トップ高校に合格されたお子さまを、何名も私は知ってます
「発達障害だから」と可能性を閉ざさず、一人でも多くの発達障害のお子さまの可能性が拓ければ嬉しい次第です。

他にも、発達障害のお子さまを念頭に置いた塾選びも以下の記事で詳細に記載してます。

【大手塾出身が本音で話す】目的から考える、塾選びのコツ5選
【大手塾出身が本音で話す】目的から考える、塾選びのコツ5選
「個別指導塾、集団指導塾、映像授業塾。それぞれどう違うの?」 「塾内部の人間から見た、各塾の実態でぶっちゃけどうなの?」 「我が子の目的に合った塾って、どれなの…

塾選びは、「どの塾が良いか」も大切ですが、それ以上に「どんな指導者に教えてもらうか」が大切です。

長年、発達障害専門のプロ家庭教師をしていて行き着いた、最適な指導者の条件は以下に記載しております。
こちらもご参考にして頂ければ幸いです。

不登校・発達障害指導で大切な「教える側の人間性と信念」
不登校・発達障害指導で大切な「教える側の人間性と信念」
「お子さまには、1人1人違った素晴らしい個性がある」 発達障害や不登校の状態にあるお子さまをお持ちの保護者さまにとって、上辺だけの綺麗事を並べられることほど苦し…

ADHD(注意欠如多動性)の高校受験

ADHD(注意欠如多動性)の高校受験

ADHDのお子さまは、以下の3つの性質があることをおさえた上での勉強が重要です。
特にケアレスミス対策については、こちらの記事に詳しくまとめてます。

また、実話のADHDの中学生への指導事例もありますので、お子さまへの学習の参考になれば幸いです。

①注意不足

厳密には「注意が不足する」というより、特定のことへの意識が強い反面、他の物事を意識することが難しい性質です。
好きなこと・興味があることについては意識が強く、高い成果を持つことが多いです。

そのため、受験では「好きなこと・興味があること」が出題される志望校選びと、「嫌いなこと・興味がないこと」が出題されない志望校選びが大切です。

②衝動性

注意不足の延長で、「突然何かに意識が強く奪われる」性質です。
ただ、衝動的に見えても、何かしら「衝動が生まれる傾向」がお子さまごとに違います。
その傾向を把握して、衝動が生まれないような環境作りをすれば、かなりのミスを防げます。

③多動性

そわそわしたり、じっとしていられない性質です。
興味関心が惹かれるものがあるため、多動になるケースが多いです。

そのため、以下が有効です。

・刺激になりそうなものを置かない、見えないようにする
・勉強中は筆記用具やプリント以外は置かない
・机や壁の色や柄もシンプルで淡い色にする

ASD(自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群)の高校受験

ASD(自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群)の高校受験
「他者の観点に立って、何かしらのイメージをしたことがない。もしくはイメージした機会が少ないため、妥当なイメージができない」ことが特徴です。
逆に、「人の目を気にしない」や「興味のあることには一直線に進める」ことが強みです。

地頭が良いお子さまが多く、以下の3つを意識した勉強が大切です。

①言葉選びの特徴を掴む

他人は違う考え・世界観を持っているという理解が難しいため、お子さま独自の世界で築きあげてきた言葉選びをすることが多いです。
言葉選びの特徴から「これを言いたいんだな」と掴むことが大切です。

お子さまごとに必ず特徴があります。

②やるべきことをチェックリストにする

やるべきことをやり続けられる力が強いため、チェックリストにすることが有効です。
逆に、やるべきことが曖昧なままだったり、項目分けされていないとどれをやれば良いか分からなくなることが多いです。

③最適な伝え方を模索する

ASDのお子さまは特に、適切な速度や声の大きさ・テンポで話すことが重要です。
雰囲気やイントネーションから察することが苦手なお子さまが多いからです。
逆に、最適な伝え方をすれば、理解や意欲が上がることが多いです。

LD(学習障害)の高校受験

LD(学習障害)の高校受験
LDとは、全般的な知的発達に遅れはないものの、聞く・話す・読む・書く・計算する・推論する能力のうち、特定のものの習得と使用に著しい困難を示す状態です。
LDはどの種類の性質が欠如しているかによって、対策が異なるため、長文になってしまいます。
別記事「LD(学習障害)を持つお子さまへの教え方」に性質ごとに分けて記載してますので、ご参照頂ければ幸いです。

発達障害別ではございませんが、「より詳細で効率的な勉強のやり方」についてはこちらの記事にまとめてますので、ご参照ください。

まとめ

まとめ
長くなりましたが、お伝えしたいことは以下でした。

・発達障害の種類や重さにもよるが、高校受験は「やり方次第でうまくいく」
・得意・好きな科目に振り切った学校選択が合格しやすい
・発達障害の性質ごとに最適な勉強法は異なる
・発達障害のお子さまは、少しでも偏差値の高い学校に入った方が良い。自由度が高く、課題が少ない学校が良い
・発達障害の状態や重さによっては、定時制か通信制が最適な場合もある
・高校選びにはお子さまの意思も大切
・発達障害の告知義務はないため、合格後に伝える方が安全

もし、もっと詳しく、「うちの子なら、どんな学校が合ってるの?どんな勉強をすれば良いの?」と気になられた方は、お気軽にお問い合わせ頂ければご回答させて頂きます。(その際は、匿名でも構いませんので、できるだけお子様の情報を詳しく頂けますと幸いです)

1人でも多くの発達障害のお子さまの高校受験に役立てれば幸いです。

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