「図形が極端に苦手」は発達障害が原因?空間認知の弱さをカバーする具体的な教え方

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    計算問題は解けるのに、立体図形や展開図になると急に手が止まる。
    「どうして、図形だけこんなに苦手なんだろう?」
    「発達障害が関係しているのでは……?」
    そんな不安を感じている保護者の方は、決して少なくありません。
    図形でつまずく子どもたちの背景には、空間認知の使いづらさといった個々の特性だけでなく、近年の入試傾向の変化や、「図形=難しい」という心理的な先入観が複雑に絡み合っています。そのため、「能力の問題」と一括りにしてしまうと、適切な支援の糸口を見失ってしまうこともあります。
    実際、図形が苦手な子どもの多くは、情報の捉え方や学び方に独自の傾向を持っているだけで、必ずしも発達障害が原因とは限りません。大切なのは、なぜ図形や立体だけ理解が進みにくいのかを、構造的かつ解像度高く捉えることです。
    この記事では、発達障害・ギフテッド・不登校専門のプロ家庭教師「メガジュン」の現場での実感をもとに、図形が極端に苦手な子どもによく見られる特徴と、家庭や学習支援でできる具体的な教え方・関わり方を解説します。

    【執筆・監修】 医学部受験の専門家 妻鹿潤
    ・16年以上1500名以上の指導実績あり
    ・個別指導塾の経営・運営でお子様の性質・学力を深く観る指導スタイル
    ・yahooやSmartNews、NewsPicksなどメディア向け記事も多数執筆・掲載中

    「図形が極端に苦手な子」によく見られる特徴とサイン

    「考えていないように見える」「集中していないように見える」背景には、いくつかの共通するサインがあります。

    展開図や立体図形のイメージが掴めない

    図形が苦手なお子さまによく見られるのが、展開図や立体図形を前にした瞬間に、考えが止まってしまう様子です。

    サイコロの展開図と組み立て後の立方体
    たとえば、サイコロの展開図を見て「これを組み立てると、どんな形になる?」と聞かれたとき、

    •  じっと図を見たまま、動かない
    •  途中まで考えようとするが、すぐに諦めてしまう
    • 「わからない」「できない」とすぐ口にする

    といった反応が出ることがあります。

    周囲からは、「考えていない」「ぼーっとしている」「やる気がないのでは?」と誤解されやすいのですが、この段階では、そもそも「どう考え始めればいいのか分からない」状態、つまり思考に入る前で止まっていることが多いのです。

    図形の模写や、定規・コンパス操作に強いストレスがある

    コンパスと定規

    もう一つ、図形が苦手なお子さまによく見られるのが、図形を「描く」作業そのものに強い負担がかかっているケースです。

    たとえば、こんな場面に心当たりはありませんか?

    •  図形を写すのに、すごく時間がかかる
    •  定規やコンパスがうまく使えない
    •  書き直しが多く、なかなか進まない
    •  図形の大事なところがきちんと表現できていない

    「あ、うちの子もこんな感じ…!」と思った方もいるかもしれません。見た目だけだと「不器用」「やる気がない」と映ってしまいがちです。学習の現場では、図を描くテストで失点してしまう、途中で疲れてやめてしまう、作図に時間がかかり時間内に終わらない、といった形で困りごとが現れます。
    こうしたサインが重なる場合、お子さま自身は描く作業そのものに大きな負荷を感じている状態かもしれません。

    計算は得意だが、図形分野だけ点数が取れない

    計算や文章題は学年相応にでき、授業態度や学習習慣にも大きな問題はないのに、図形・グラフ・位置関係の問題になると急に手が止まり、点数が大きく下がる――。このギャップに、違和感や不安を覚える保護者の方は少なくありません。「算数障害(ディスカリキュリア)なのでは…?」と心配になることもあるでしょう。しかし、一般的な算数障害では、

    •  数の概念や計算処理
    •  文章題の理解や計算の手順

    など、算数全体に幅広くつまずきが現れることが多く、計算や文章題でも点数が安定しません。一方で、ここで取り上げるお子さまの特徴は少し異なります。たとえば、

    •  四則計算や文章題は、特別な支援がなくても安定して解けている
    •  計算の手順や式の立て方は理解できている
    •  授業中の集中力や取り組む姿勢に、大きな問題は見られない
    •  しかし、図形・グラフ・位置関係など、図を見て考える問題になると極端に苦戦する

    このように、算数全体が苦手というよりも、特定の分野だけでつまずきが集中しているのが特徴です。この場合、算数障害ではなく、ほかの原因があると考えられます。この“できる部分と、できない部分の差がはっきりしていること”自体が、一つの重要なサインと言えるでしょう。

    図形でつまずく子に多い、心理的ハードルと“思考停止”のサイン

    また、現場で多く見られるのが、能力以前の段階で心理的なハードルが強く働いてしまうケースです。図形そのものの難易度というより、問題への拒否感で思考が止まってしまう状態です。
    たとえば近年は、入試問題を中心に、図形の条件が長めの文章や会話文の中に埋め込まれた形式が増えています。そのため、問題文を見ただけで「長い」「複雑そう」と感じ、内容を読み取る前に手が止まってしまうお子さまも少なくありません。
    この場合、理解力が不足しているのではなく、情報量の多さに対する抵抗感によって、思考の入口が閉じてしまっている状態と考えられます。
    さらに、「図形はひらめきやセンスがある子だけが解けるもの」という思い込み(セルフ・ハンディキャッピング=失敗を避けるため、最初から諦めてしまう心理)が強い場合もあります。
    補助線を“魔法の一手”のように捉えてしまい、少し考えて思いつかなければ「やはり自分には無理だ」と諦めてしまうのです。このような先入観があると、試行錯誤そのものを避ける傾向が強まり、結果として図形分野だけが極端に苦手に見えることがあります。

    なぜ図形だけできないのか?背景にある「特性」と「脳のしくみ」

    ここまで読んで、 「うちの子、まさにこれかもしれない」と感じた方もいらっしゃるかもしれません。ここまで挙げたサインを整理すると、図形でつまずく子どもたちの背景には、

    •  考え始める前に止まりやすい心理的なハードル
    •  目で見た情報と手を動かすことをつなげる難しさ
    •  頭の中で図形を想像する力の個人差
    •  ASDやADHDなどの発達特性が影響している

    といった特徴があり、いくつかの要素が重なっていることが多いのです。多くの学校や塾では、図形問題は、「図を見て考えるのが当たり前」、 「頭の中でイメージできて当然」という前提で進みます。
    しかし、もしその“当たり前の入口”が使いづらかったとしたらどうでしょうか。図形が極端に苦手になるのは、能力の問題というより、脳の使い方や情報の入り口との相性が関係しているケースが少なくありません。
    ここからは、「なぜ図形問題だけ思考が止まりやすくなるのか」について、現場で実際によく見られる視点をもとに、順番に整理していきます。

    【補足】小学4年生は“つまずきやすい時期”です

    実際、メガジュンへのご相談が増え始めるのも、小学4年生前後です。
    文部科学省の学習指導要領でも、小学4年生から、図形・面積・割合といった抽象度の高い単元が一気に登場します。それまでは具体物を使った計算が中心だった算数が、目に見えにくい概念を扱う教科へと変化する時期なのです。

    そのため、これまで順調に進めていたお子さまが、「急に分からなくなった」と感じ始めるのは、決して珍しいことではありません。むしろ、抽象的思考力を伸ばしていくための「お子さまに合った学び方」を見直すタイミングと捉えることができます。

    「努力不足」ではなく「入口の違い」かもしれません

    図形のつまずきは、理解力そのものよりも、情報の入り方や処理の負荷で起きていることが少なくありません。
    メガジュンでは、検査結果の有無にかかわらず、反応や解き方の癖から「どの入口なら進めるか」を一緒に見つけていきます。

    家での声かけや教材選びも含めて、今の状態の整理などお気軽にご相談ください。

    目で見た情報を処理する「空間認知能力」の弱さ

    その中でも、特に関係が深いのが、目で見た情報を頭の中で処理する力(空間認知能力)です。よく使われるたとえに、「頭の中にホワイトボードがあって、そこに図形を描き、回転させたり組み立てたりする」という表現があります。この“頭の中のホワイトボード”が使いづらい場合、

    •  図の映像がぼんやりして定まらない
    •  一瞬イメージできても、すぐ消えてしまう
    •  動かそうとすると混乱してしまう

    といったことが起こりやすくなります。
    頭の中にホワイトボードを思い浮かべて図形を考える子と、そうでない子のイラスト

    その結果、「考え始めるためのイメージ」が作れず、問題に入れないという状態に陥ります。これは理解力が低いわけではなく、イメージを作る前段階で負荷がかかっていることが原因です。

    【補足】よくある誤解
    図形や空間認知について
    「男の子のほうが得意」「女の子は苦手になりやすい」
    といったイメージを持たれることがあります。
    しかし近年のPISA調査などでは、性別による統計的な差は縮小していることが分かっています。
    むしろ影響が大きいのは、

    • ブロックや折り紙、パズルなどの経験量
    • 「自分は図形が苦手だ」という思い込み

    といった幼少期からの環境や心理的要因だと指摘されています。
    つまり、図形が苦手なのは性別の問題ではなく、経験や教え方との相性の問題である可能性が高いのです。

    「見て、手を動かす」連携が苦手という発達性協調運動障害の傾向

    次に考えられるのが、「見た情報をもとに、手を動かす」連携そのものに負担がかかっているケースです。図形の作図では、実は無意識のうちに、

    •  図を目で見る
    •  位置や長さ、角度を把握する
    •  定規やコンパスを正確に動かす

    といった複数の作業を、ほぼ同時に行っています。この「見る → 理解する → 手を動かす」という一連の流れに負荷がかかりやすいお子さまの場合、図形問題そのものよりも、作図という作業工程でつまずきが表面化しやすい傾向があります。
    こうした場合、「雑」「集中していない」「ちゃんと考えていない」と誤解されがちですが、処理の負荷が高すぎて手が追いついていないだけ、というケースも多いのです。このような特性は、専門的には発達特性の一つ(発達性協調運動障害)として整理されることもありますが、ここで大切なのは診断名を当てはめることではありません。
    「どこで負担が大きくなっているのか」、「理解と作業のどの部分を切り分ける必要があるのか」を丁寧に見ていくことが、図形の苦手さをほどいていく大きな手がかりになります。

    ASD(自閉スペクトラム症)やADHDの特性による影響

    図形の苦手さには、空間をイメージする力そのものだけでなく、ASD(自閉スペクトラム症)やADHDといった特性の影響が重なっている場合もあります。
    たとえば、ASDの特性があるお子さまの場合、図形を「全体として捉える」よりも、「部分ごとに正確に見る」傾向が強く出ることがあります。そのため、一本の線の長さ、一つの角などの細かな違いといった点に強く意識が向き、結果として 「形全体としてどうなっているか」をまとめて把握するのが難しくなることがあります。
    本人としては丁寧に見ているつもりなのに、周囲からは 「いつまでも全体が分かっていない」 「要点をつかめていない」と受け取られてしまうことも少なくありません。一方、ADHDの特性がある場合は、図形問題に必要な

    •  手順を順番に追う
    •  途中の状態を頭の中で保持する
    •  作業を最後までつなげる

    といったプロセスで負荷がかかりやすくなります。その結果、

    •  途中までは合っているのに、最後で崩れる
    •  「どこまで考えたか」が分からなくなる
    •  図を見直す前に次へ進んでしまう

    といった形で、理解力が十分に発揮されないことがあります。ここで大切なのは、これらを 「集中力がない」「理解が浅い」と捉えるのではなく、情報の受け取り方や処理の仕方に偏りがある状態として理解することです。同じ説明、同じ教材でも、特性によって

    •  見え方
    •  引っかかるポイント
    •  負担のかかる工程

    は大きく変わります。だからこそ、「どこで思考が止まりやすいのか」、「どの工程で負荷が跳ね上がっているのか」を丁寧に見ていくことが、支援の出発点になります。

    WISC等の検査結果で知覚推理や積み木が低い場合の捉え方

    また、WISCなどの検査結果を見て、不安を強く感じてしまう保護者の方もいらっしゃいます。「知覚推理が低め」 「積み木模様が苦手」という結果を見ると、発達障害かもしれないという不安に駆られてしまうかもしれません。
    しかし、これらの検査結果はその子の“考え方の傾向”を示す一つの指標に過ぎません。大切なのは、「どういう仕組みで難しく感じているのか」を理解すること。原因が整理されると、親御さんの不安も少しずつ言語化され、 「この子には、この子なりの学び方があるのかもしれない」と、見方が変わっていくことが多いです。
    図形が苦手というお子さまは、決して珍しくありません。そしてそれは、適切な教え方・支援と出会うことで、克服できる可能性があります。

    【補足】空間認識が苦手でも、図形は解ける!
    立体を頭の中で完璧に思い描けなくても、図形問題は解けます。
    断面を一つの平面として整理したり、座標を置いて計算(ベクトルなど)で処理したりと、図形は「想像力」ではなく、論理的な手順とルールで攻略できる分野だからです。空間認識能力は、あくまでスタート地点の違いにすぎません。
    直感的なイメージが得意でなくても、論理を積み重ねて難関大合格を勝ち取る受験生は、
    実際に数多く存在します。

    家庭でできる!特性に合わせた図形の教え方と対策

    図形が苦手なお子さまを前にすると、「家でどう教えたらいいのかわからない」、 「説明すればするほど、親子で険悪な雰囲気になってしまう」ということもあるかと思います。ここでは、空間をイメージしにくかったり、手を動かすことへの負担があるお子さまでも取り入れやすい、家庭でできる工夫をご紹介します。

    家庭で今すぐできる|言葉だけではなく「具体物」を使った図形理解

    立体のイメージをつかむための折り紙作品

    図形が苦手なお子さまの中には、頭の中に図形を思い浮かべるのを難しく感じる傾向がある子がいます。その状態で、 「ここを回転させて考えて」、「裏返すとこうなるよ」と、言葉だけで説明を重ねても、イメージが結びつかず、かえって混乱してしまうことがあります。こうした場合に有効なのが、実際に触れることができる「具体物」を使う方法です。たとえば、

    •  紙を切って、実際に折ってみる
    •  空き箱を分解して、展開図を作る
    •  積み木やブロックで形を再現する

    といったように、「見る・触る・動かす」を同時に行うことで、理解が一気に進むことがあります。「頭の中だけで考えさせる」のではなく、体感として図形を捉えていくというアプローチです。

    家庭で今すぐできる|視覚支援アプリ・デジタル教材の活用

    タブレットで図形学習に取り組む女の子
    最近は、図形学習をサポートする視覚支援アプリやデジタル教材も増えてきました。立体を自由に回転させたり、展開図が組み上がる様子をアニメーションで確認できたりすると、 「なるほど、そういうことか」と腑に落ちるお子さまも多いです。こうすることで、空間認知の使いづらさを“外側のツール”で補うことができます。
    タブレットなどの機器に慣れ親しんでいる子は、興味を持ちやすく、取り組みやすいでしょう。

    家庭で今すぐできる|「書く・描く」負担を減らす工夫

    図形が苦手なお子さまの中には、考えること以前に、 「書く・描く」こと自体が大きな負担になっている場合があります。たとえば、

    •  問題を拡大コピーして、余白を広くする
    •  下書き専用の紙を別に用意する
    •  なぞるだけで済む形にする

    といった工夫だけでも、取り組みやすさが大きく変わることがあります。
    また、特に小学生の算数では、「作図しましょう」といった問題も多く、図形を正確に描く力そのものが求められる場面が少なくありません。
    そのような場合、

    •  時間に余裕を持たせ、急かさないといった環境調整に加え、
    •  最初の線だけを描かせる
    •  口頭で指示を出してもらい、作業自体は大人が補助する

    など、課題を細かく分けたスモールステップでの関わりも有効です。

    「理解できない」のではなく、「手が追いつかないだけ」というケースは、実は多いのです。この負担に気づかずにいると、「まじめにやってない」、「集中力がない」と誤解されてしまい、結果として自己肯定感を下げてしまうことにもつながります。

    【注意点】「説明すれば伝わる」とは限らない

    空間認知は“言葉で教えるのが最難関”
    説明は十分にしているのに、思うようにできない様子を見ると、もどかしさやいら立ちを感じてしまうことがあるかもしれません。ですが、空間認知に関わる部分は、実は“言葉だけで教えるのが最も難しい分野”だと言われています。お子さまにとっては、見えないものを、想像だけで見るように言われているような感覚に近いかもしれません。
    「わからない」のではなく、そもそも見え方・感じ方が違うだけ。そう捉えることができると、親御さんの関わり方も、少しずつ変わっていきます。

    メガジュンではどう教える?認知特性に合わせた指導アプローチ

    現場で多くの子どもたちを見ていると、図形のつまずきは大きく分けて、

    •  考える前に止まってしまう心理的なハードル
    •  空間認知や視覚・運動の連携といった認知特性

    この2つが、単独ではなく複雑に絡み合っているケースがほとんどです。一般的な指導では、認知の特性があったり、できないという先入観を持っている子にとって、ますます図形が「苦手なもの」になってしまう恐れがあります。
    メガジュンでは、こうした背景をふまえたうえで、「センスに頼らない図形問題の解き方」を大切にしています。

    検査結果や反応から「得意な学び方」を分析

    メガジュンでは、WISCなどの検査結果がある場合はもちろん、そのお子さまの普段の学習の反応をよく見て、個々のつまづきポイントや特性を捉え、解決方法を考えることを重視しています。たとえば、WISCで「知覚推理が低め」「積み木模様が苦手」でも、

    •  言語理解が非常に高い
    •  記憶力や論理的思考に強みがある

    というお子さまも、数多くいます。また、

    •  図を見ると固まるが、具体物なら理解が進む
    •  一気に解くのは難しいが、手順を一つずつ説明すると進められる
    •  文章で説明すると混乱するが、色分けすると分かる

    こうした反応から、

    •  言語化が助けになるタイプか
    •  実際に手を動かした方が理解しやすいか

    といった「得意な入口」を見極めます。さらに、

    •  問題を見た瞬間に諦めてしまう
    •  「どうせ無理」と口にする

    といった場合には、心理的ブロックがどこでかかっているかも丁寧に確認します。

    独自の教材やスモールステップでの指導事例

    ― 「苦手の正体」に合わせたアプローチ ―
    メガジュンの指導でまず大切にしているのは、本人に寄り添い、本人に適した指導法で進めていくことです。

    最近は、思考力を求められる問題が増えた影響もあり、問題に手を付けること自体に負担を感じるお子さまが少なくありません。計算問題は比較的スムーズに解ける一方で、図形問題になると、問題文を見た瞬間に拒否反応が出てしまう子も多いです。このような場合は、最初から一人で全て解かせることはありません。
    たとえば、

    •  まずは「1文だけ」読んで、分かった情報を図に書き込む
    •  講師が横に入り、途中まで一緒に考えてみる
    •  「ここまではできた」という地点でいったん止める

    といった、思考のハードルを極限まで下げたスモールステップから始めます。一つずつ「できた」を積み重ねていくことで、「自分にも解けるかもしれない」という感覚が生まれ、やがては、自分から問題に向かおうとする姿勢へと変わっていきます。
    このあとご紹介する事例では、こうしたスモールステップ指導が、どのように図形理解につながっていったのかを具体的に見ていきます。

    【事例①】空間認識の壁でイメージができないケース

    立体の切断図や、積み木の背面に隠れた個数について、「どうなっているのか全然わからない」、「頭の中で想像できない」と、途中で混乱してしまうタイプの子がいます。これは、3次元の情報を2次元の紙の上で処理する際の“視点移動(=「どこから見ているか」を頭の中で切り替えること)”が負担になっているケースです。
    この場合、言葉で説明しても、かえって混乱が強まってしまいます。
    あるお子さま(B君)は、展開図の問題に対して、「どの面がどこにつながるのか」が頭の中で整理できず、問題に取り組むことが難しい状態でした。
    そこで指導では、

    •  透明なプラスチック板と色ペンを使用する
    •  対応する辺や面を同じ色で塗り、視覚的に対応関係を明確にする
    •  実際に組み立てながら、「どことどこがつながっているか」を一つずつ確認する

    といった、“想像させる”のではなく、“見て確かめる”教材を使い、指導を行いました。
    こうして実物を使って確認を重ねる中で、B君は「この立体は、この形の展開図からできている」「この面とこの面は、必ずここでつながる」という対応関係のパターンに気づいていきました。
    その結果、「頭の中で立体を作らなくても、展開図と立体のつながりの“ルール”が分かれば、問題は解ける」という理解につながり、次第に展開図や立体の問題にも、落ち着いて取り組めるようになっていきました。

    【事例②】固定観念の壁で図形の見方が固まってしまうケース

    あるお子さま(Cさん)は、三角形が少し傾いているだけで、「底辺がどこか分からない」「いつもの三角形に見えない」と、手が止まってしまうタイプでした。
    三角形という形自体は知っていても、「底辺は下にあるもの」「三角形はまっすぐ立っているもの」といった決まった見え方が強く、向きが変わっただけで、同じ図形として捉え直すことが難しくなってしまうのです。
    Cさんは、図形が斜めになると毎回混乱し、「どこから考え始めればいいのか分からない」状態になっていました。そこで指導では、

    •  「この三角形、くるっと回したらどう見える?」
    •  「ここを下にしたら、いつもの三角形に見えないかな?」

    といった、見え方を変える声かけから始めました。

    また、補助線についても、「ひらめきで引く線」ではなく、「図形を落ち着いて見るために、基準を作る線」と伝え、

    •  「ここを下にすると決めて、この線と平らになるように引いてみよう」
    •  「ここからまっすぐ下に下ろすと、高さになりそうだね」

    と、具体的な操作と言葉をセットにして確認していきました。
    このように、

    •  向きを変えても形は変わらないこと
    •  底辺や高さは「場所」ではなく「役割」で決まること

    こうした経験を重ねる中で、Cさんは次第に、「向きが変わっても三角形は三角形なんだ」「高さは、決まった場所にあるのではなく、役割で決まるんだ」と理解できるようになり、斜めの図形でも落ち着いて補助線を引ける場面が増えていきました。

    メガジュンでは、「図形が苦手」という結果だけを見るのではなく、

    •  どこで思考が止まっているのか
    •  心理的なブロックなのか、認知的な負荷なのか
    •  どの入口なら前に進めそうか

    を一緒に整理しながら指導を行っています。もし今、「家でも塾でも、行き詰ってしまっている」、「努力不足と言われるのがつらい」と感じているなら、一度、状況を整理してみませんか。それが、お子さまに合った“図形の入口”を見つける第一歩になるかもしれません。

    まとめ|図形の苦手は教え方のアプローチを変えれば克服できる

    ここまで読んでくださった方は、すでにお子さまの状況を丁寧に見つめ、「努力不足」や「能力の問題」と決めつけず、特性の視点から理解しようとしているのではないでしょうか。
    図形が苦手になる理由には、空間認知や発達の特性あるいは、心理的なハードルなどいくつかの典型的な背景があります。このような背景を理解し、お子さまにあったアプローチをしていくことで、前向きに取り組んでいけるようになっていただけたら幸いです。
    それでも、家庭の中だけでは整理しきれないこともあるかと思います。なぜ図形が苦手なのか、原因を探っていく中では、必死になるあまり感情的になってしまうこともあるかもしれません。そんなとき、家庭教師のように第三者の視点が加わることで、状況を冷静に整理したり、具体的な手順や工夫を一緒に試したりすることができます。
    図形の苦手さは、教え方や関わり方で変わる部分が確実にあります。 「どうやったら理解できるのか」を第三者と一緒に整理する時間を持つことは、お子さまにとっても、保護者さまにとっても、大きな一歩になります。
    お子さまの図形の苦手さに関するお悩みについて、ご家庭で抱え込まず専門家に相談してみませんか?プロ家庭教師メガジュンでは、お子さまの特性を分析し、学習プランを提案する「無料相談・体験授業」を実施しています。「相談するほどではないかも…」そう感じている段階こそ、実は一番整理が進みやすいタイミングでもあります。ぜひお気軽にお問い合わせください。

    「できない」の理由を、一緒に言葉にしてみませんか

    図形の苦手さには、必ず理由があります。
    特性・認知の傾向・学習環境を整理しながら、お子さまに合った進め方を具体的に組み立てます。

    今の不安が強くなる前に、一度整理する時間をつくってみませんか。