16. 授業に集中できない、先生の話を聞けない

授業に集中できなかったり、先生の話を落ち着いて聞くことができなかったりするお子さまがいらっしゃいます。その原因には、

・生まれつき集中するのが苦手な性質を持っている(=ADHD(注意欠如・多動症))
・集中しづらい環境である(うるさい、校庭での体育の様子が気になる、黒板の横の掲示物が多い、文房具で遊んでしまう 等)
・先生の話し方が合わない(声が大きすぎる/小さすぎる、早口である、ゆっくりと話し過ぎる 等)
・耳で聞いた情報を処理するのが苦手である


などが考えられます。

いずれの場合も、本人が集中しやすいように環境を整えてあげたり、話し方や伝え方を工夫したりすることで「話が聴けない、集中できない」という困りごとは改善していくことができます。

お子さまが話に集中できるようにするための工夫としては、

○周りが静かになってから話し始めるようにする
○カーテンを閉めて、校庭の様子が見えないようにする
○黒板横の掲示物は片付ける、またはカーテンなどで覆って見えないようにする
○必要な文房具以外は机やカバンの中にしまう
○口頭だけでなく、プリントや板書でも説明する(視覚的にも情報を伝達する)
○教室の席を一番前にしてもらう


などが挙げられます。

これらの対応は、生まれつき集中するのが苦手な性質(不注意特性)を持っているADHDのお子さまだけでなく、定型発達のお子さまにとってもより集中しやすくなるというメリットがあるため、こうした環境の調整ができないか学校と相談してみると良いでしょう。

また、担任の先生は必ずしも発達障害に関する知識が豊富であるとは限らないため、こうした配慮について相談する際には、保健室の先生やスクールカウンセラー、特別支援コーディネーターの先生など、発達障害に関して理解がある先生も同席してもらえると、よりスムーズに話を進められる場合があります。

ですので、学校に相談する際には、例えば「発達障害の特性についても詳しく相談したいので、保健室の先生(スクールカウンセラー、特別支援コーディネーター等)に同席してもらうか、別で相談の場を設けてもらえると嬉しい」と面談の際に伝えてみたり、あるいはスクールカウンセラーの教育相談を利用して、スクールカウンセラーを通して「集中しづらいので教室の環境を調整してほしいと思っている。担任の先生を交えて話す機会を設けてもらえないか」と相談してみたりするなど、具体的な希望を伝えることによって、学校にもスムーズに対応してもらえる場合が多くなっています。

逆に、例えば「集中しづらいようなので何とかしてほしい」のように、こちらの希望を漠然とした形で伝えてしまうと、担任の先生は「他にも集中しづらい子はいるし、この子にだけわざわざ対応しなくても大丈夫だろう」と考えてしまうかもしれません。また、「黒板横の掲示物を無くしてほしい」などのように結論だけ伝えてしまうと、「掲示物はクラス運営に必須なもの。無くすことはできない」と判断されてしまうかもしれません。

こうしたケースを避けるためにも、「希望を具体的に伝える」「保健室の先生やスクールカウンセラー、特別支援コーディネーターを交えて話す」という点は非常に重要ですので、ぜひ参考にしていただければと思います。

集中のしづらさの要因が先生の話し方によるものである場合は、保護者さまが担任の先生に「もう少しゆっくり話してほしい」などと伝えても良いですが、直接伝えるのは難しいと感じる方も多いと思います。その場合は上述のように、担任の先生以外で発達障害に理解のある先生に同席してもらったり、スクールカウンセラーを通して対応を依頼してみたりすると良いでしょう。

ただし、教室にはお子さま以外の子どもたちもいます。お子さまにとってはちょうど良い声の大きさ・話すスピードであったとしても、ほかの子にとっては大きすぎたり小さすぎたり、早すぎたり遅すぎたりする可能性があり、全員にとって聞きやすい話し方というのがそもそも存在しないようなケースもあります。

また、クラスの中にやんちゃな子がいる場合は、どうしても大きな声で叱らざるを得ない場合もあります。そのような場合には、「怖いと感じたら教室の外に出る(保健室や別室に行く 等)」も選択肢となりますので、担任の先生やスクールカウンセラーの先生などとよく話し合い、お子さまにとってより良い対応について検討していただければと思います。

さらにお子さまの中には、「そもそも他の子がいる状況では集中できない」というタイプの子もいます。そういったケースにおいては、集中しなければいけない国語や算数などの教科については別室で授業を受け、学活や総合的な学習の時間など、ほかの子どもたちと一緒に活動する必要があるものについてはクラスの教室で授業を受けるなど、さらに柔軟な対応が必要になる場合もあります。

別室で授業を受ける場合などは、そのために追加で先生を配置するなどの対応も必要になり、調整に時間が掛かったり、予算や人が足りないために実現できなかったりする可能性もあります。もし対応が難しいと学校に言われた場合は、その理由を確認し、やむを得ない事情がある場合は別の手段を検討する必要があります。

また、学校に対して相談や交渉をする際には、普段から学校と良好な関係を築いておくことが大切です。学校行事やPTAなどに普段から積極的に参加・協力していると、学校側も「あの保護者さまの希望なら叶えてあげたい」と感じて前向きにお子さまの支援に取り組んでくれる場合が多いです。ですので、お仕事などが忙しい中であるとは思いますが、できるだけ学校行事等には参加し、学校と良好な関係を築いていただければと思います。

(関連項目→81.不登校の状態にあるが、学校の対応に納得できない