64. 学校のルールや先生の言うことに納得がいかない

高い知能を持つギフテッドのお子さまは、「物事を論理的に考えたい」という性質を持っていることが多いです。そのため、学校のルールや先生の言うことに論理的な矛盾があると「納得がいかない」と感じて言うことを聞かなかったり、ストレスを溜めてしまったりすることがあります。

こうしたお子さまの場合、保護者さまとしては、ルールをそのまま鵜吞みにせず「なぜなのだろう?」と批判的に捉えられるというお子さまの良さを認めてあげたいと思う一方で、「ルールを守って周りと上手くやってほしい」と感じる場面もあるかと思います。

実際のところ、世の中は必ずしも論理的な正しさだけで動いているわけではありません。私たちの社会には根拠の無いルールが溢れていますし、非合理的な感情によって、合理的な選択が覆されてしまう場面なども往々にしてあります。

そんな時にギフテッドのお子さまが「論理的に正しくない」といつも反抗してしまうと、社会性が無いと周りに思われてしまうだけでなく、お子さま自身が常に強いストレスを感じることになり、社会の中で生きていくのがしんどくなってしまう可能性もあります。

そこでギフテッドのお子さまに必要となるのは、“折り合いを付ける”という能力です。「論理的な正しさ」と「現実」の間にあるギャップに目を向け、「論理的な正しさ」だけでは世の中は回らないと理解すること――すなわち、自分自身の中にある信念(論理的に考えること)は大切にしつつも、論理的に正しくない出来事も現実には存在するということを受け入れていく必要があります。

また、ギフテッドのお子さまは、周りの人間も自分と同じように論理的に考えて行動できるはずだと心から信じていることが多く、そのため、論理的ではないルールや人の振る舞いに直面したときに、失望したりストレスを感じたりしている場合が多くなっています。ですが、ギフテッド(IQ130以上)の人の出現率は人口の2%と言われており、お子さまのように論理的に考え行動できる人は決して多くはありません。

ですので、この「周りの人間は、みんな自分と同じように論理的に考えて行動できるはずだ」という前提を取り除いてあげることが、ギフテッドのお子さまが周りと折り合いが付けられるようになるためには非常に重要なポイントとなります。

「周りの人たちは、必ずしも自分と同程度に論理的に考えることができるわけではない」と分かると、ギフテッドのお子さまは周りに過度に期待せず、「自分は自分」「周りは周り」と割り切って行動できるようになり、「現実はこんなものだろう」という折り合いも付けられるようになっていきます。

以下では、先生が理不尽なルールを押し付けてくる(=授業の課題が終わった後、教室で静かに読書をしていたら怒られた)という場合を例に用いて、“折り合いを付ける能力”の伸ばし方について解説していきます。