不登校の4つの段階と最適なアプローチ
不登校のお子様が復帰に向かうには、一般的に『4つの時期』を順番に辿ると言われています。(お子様によっては、4つ全てを経過せずに、2つや3つの時期を経過して復帰する場合もあります)
お子様がどの時期に当たるかにより、アプローチは異なってきます。
ここでは、それぞれの時期のご説明と、どのようなアプローチが有効かを見ていきます。
不登校・発達障害専門のプロ家庭教師
妻鹿潤
・個別指導塾の経営・運営でお子様の性質・学力を深く観る指導スタイル
・yahooやSmartNews、Newspicksなどメディア向け記事も多数執筆・掲載中
▼目次
不登校のお子様が復帰に向かう『4つの時期』
①無気力期
一番良くない状態がこの状態です。
本人でもコントロールできないほど、気力がわいてこないことが多いです。
「過剰に眠る」「ご家庭と会話することを避ける」「部屋から出てこない」などの状態になることが多く、そもそも何かに向かうエネルギーがわいてこない状況です。
この時期へのアプローチとしては、お子様のお気持ちにただ寄り添ってあげることが重要です。
この時期のお子様は、何かに対してのエネルギーがわいてこないため、頑張らせようとしたり、何かを求めることは余計にお子様にとって心理的負担を与えることになりがちです。
ただ、寄り添おうとする人間がいること、病人を扱うように接するのではなく、これまで通りのトーンで接してあげることで、お子様も「自分には味方がいるんだ」と安心感が生まれ、徐々にエネルギーがわいてくるケースが多いです。
また、この時期に、こちらが変に焦らないことも重要です。そのような焦りはお子様にも伝わってしまい、余計にお子様に心理的負担を与えてしまいます。
難しいですが、「数ヶ月続くかもしれない、本当に徐々に良くなってくれれば良い」くらいの余裕を我々が持つことが重要です。
②逃避期(無気力期に向かう時期)
心身に何かしらの不調が出てきます。よく観察すれば、いつものお子様の状態と異なることが分かってきます。
口数が減ったり、表情が暗くなったり、何か上の空だったり。もしくはお腹が痛くなってトイレに長くいたり、食欲がなくなったり、過度に寝てしまっていたり。
「何かしらに向き合うことがしんどいため、心身が拒否反応を示している。でも意志として向き合おうとする気持ちもある」ことが多く、このような心の綱引きに精神がすり減っていき、すり減った結果、上記のような心身の不調に現れる、というものです。
特に、いじめであったり対人関係のトラブルが強ければ心身の拒否反応も大きくなります。
拒否反応の大きさに加えて、真面目な生徒様は、拒否反応が出ているものの「ちゃんとしないと」「頑張らないと」という自責の気持ちも強いため、余計に大きな綱引きとなり、精神が大きくすり減ってしまいます。
また、繊細なお子様も、「あの時の発言は、このような意味があったんじゃないか」「自分がこうすれば、このように思われるんじゃないか」と様々なケースを想定してしまうため、心身の拒否反応が大きくなります。
これが不登校になるお子様の多くに、真面目な生徒様や繊細な生徒様が多い理由でもあります。さらに、不登校の間は情報が入ってくることが少なく、お子様が一人でいる時間が格段に長いため、上記のストレスが加速度的にかかってしまうことが多いです。
何に向き合うのがしんどいかという、原因が分かり、その原因が解決することが根本解決ですが、お子様がなかなかそれを話してくれないことも多いです。
問い詰めてしまったり、こちらから聞こうとすると、余計にストレスを感じるお子様も多いので、「何があっても味方だからね」「話したくなったら話してね」などのいつでも頼れるように感じてもらうことで、お子様から話してもらえるように待つ方が良いと思います。
ナイーブな理由であれば、保護者様には相談しにくいこともあるので、このような時にプロ家庭教師という存在だからこそ、「実は。。」と相談してくれることもありました。(ただ、相談してくれるまでには時間をかけた信頼関係の構築が必要になります)
③休息期(問題や自分に向き合う気持ちがわいてくる)
心身が少しずつ前を向いてきて、自分から何か動こうとする兆候が見えてきます。
生活習慣が少しずつ改善される、ご家庭とコミュニケーションを以前のように取るようになる、やるべきことをやろうとする、などがあります。
私が勉強をご提案するのも、大体この時期です。
①無気力期では勉強の話は一切せず、ただ近い空間に一緒にいたり、穏やかな口調で私自身の話をしたりして、信頼関係の構築や味方がいることを感じてもらうようにしてます。
②逃避期でも基本的に勉強の話はせず、寄り添ってあげたり、もし話をしてくれる時にはしっかり聞くようにします。
休息期にはお子様自身が登校を少しずつ考えてくれることも多く、その延長で勉強の遅れのことを前向きに考えだします。
そのため、「お子様の状況でも100%やりきれそうな無理のない範囲の勉強計画」かつ「この勉強計画を辿っていけば、確かに勉強の遅れを取り戻せそうだと、お子様に実感してもらえそうな勉強計画」を提案して、「お子様が勉強の遅れを取り戻し、登校出来そうだと希望を持てる状態」になることが何より重要だと感じてます。
④回復期(心身が積極的に外に向く)
不登校になる前に近い状態に戻ります。
登校することに挑戦する気持ちもわいてきて、何かしらに前向きな言動が増えてきます。
この時期になると、保護者様も嬉しさから次へ次へと考えてしまうお気持ちも非常にわかりますが、慎重に入念に考えることが重要です。
というのも、この状態から1段飛び・2段飛びに動いてうまくいかなかった場合、お子様は大きく自信を失ってしまう可能性があるからです。
そもそも、一度無気力期や逃避期に入ってから何かにもう一度挑戦するのは、かなりの勇気が必要です。お子様も行けるかどうか不安な気持ちを持ちながらも、それでも挑戦しようとされているのです。その挑戦がうまくいかなかった場合のダメージは大きく、一気に逃避期や無気力期に戻ってしまうことも多いです。
また、そのように戻ってしまった場合、「一度挑戦したけど無理だった」と捉えてしまい、次の挑戦への心理的ハードルは大きくなります。
お子様が勇気を振り絞っている分、「確実に」その挑戦がうまくいくよう、最大限のサポートをすること、ステップを小さく小さく設定して、少しずつ越えさせてあげることが重要です。
最後に
上記では不登校の原因が、人間関係によるものであるパターンにやや寄った紹介になりましたが、不登校の原因は人間関係以外の可能性もあります。(ただ、理由の大半は人間関係によるものではあります)
その原因が、残念ながら人間関係の中でもご家庭の人間関係の場合もあります。
また、発達障害やアスペルガー症候群などによるものから不登校に結びつくものもあります。
それ以外にも最近増えてきているパターンとして、「目立った原因が本当になく、何となく不登校になる。登校することはもちろん、さまざまなものへのエネルギーが湧いてこない」というパターンも多いです。
上記それぞれによって、接し方は異なります。
ご家庭の人間関係の場合は、失礼ながら、ご家庭とご相談させて頂きます。
発達障害やアスペルガー症候群などによるものからの不登校の場合は、専門的な知見を踏まえたアプローチが必要です。(詳しくは当HPの発達障害に関する各項目をご覧頂きましたら幸いです)
何となくエネルギーが湧いてこないパターンの際には、なぜ、エネルギーが湧いてこないか、を見に行きます。
と言うのも、基本的にはエネルギーは湧いてくるものであり、湧いてこないのであれば何かしら原因があります。
これまで接してきたお子様であった原因としては「何かしら大きな不安やトラウマ・消化しきれていない過去の大きな何かしらの経験」があって、そちらに精神のキャパシティーの大部分が取られてしまっていて、エネルギーが湧いてこないパターン。
栄養不足や何かしらの病気により、そもそもエネルギーが湧くような身体状態ではないパターン。
「何かを考える」「何かを感じる」ことをしてこなかった、もしくは「してきたけど抑圧されていた」ことにより、思考・感覚が全く成長していないため、そのような思考・感覚が圧倒的に弱いため、無気力状態になっているケース。
上記、それぞれ、それだけで1つの記事になるくらい、個別対応的なアプローチが必要なため、ここでは割愛させて頂きます。
ただ、例えば、無気力からの不登校や発達障害やアスペルガー症候群などによるものからの不登校では、人間不信がベースではないため、意外とこちらから普通に接しても普通に返してくれることもあります。
そのため、上記では人間関係での不登校をベースに記載しましたが、不登校の原因はそれほどまでに個別事案的な背景・理由があるため、そのお子様をつぶさに見て、知って、専門的なノウハウを持って「そのお子様オリジナルのアプローチ」を考えて当たることが重要です。