43. 人間関係のトラブルが多い

ADHDやASDなどの発達障害があるお子さまは、人間関係に関するトラブルやクラスメイトと頻繁に喧嘩してしまうなどの困りごとを抱える場合があります。

ADHDで衝動性が強い子の場合は、順番が待てなかったり、遊びのルールを守れなかったり、言うべきでないことをつい口に出してしまったりしてトラブルになってしまうことがあります。お子さま自身も、「順番は守らなくてはいけない」ということは分かっているのですが、ADHDの特性からつい順番抜かしをしてしまうという状態にあります。

そのような場合は、いきなりキツく𠮟りつけるのではなく、まずは「○○さんが先だね」というように事実を伝えて並びなおすように指示しましょう。あるいは、注意を別のところに向けておき、「早くやりたい!」という気持ちを抑えるという方法もあります。

ただ、学校ではほかの子どもたちもいますし、子ども同士で「○○さんが順番抜かしした!」と指摘される場合もあるでしょう。その際に、注意されたことをきちんと受け止め、「ごめんなさい」と言えるようにしておくことがとても大切です。他人から注意されたときの対応は、ご家庭でいつもどのように注意し、対応しているかが現れます。家でいつも頭ごなしに怒られていたり、逆に不適切な行動を取っても注意されていなかったりすると、学校で注意されたときにも、売り言葉に買い言葉で返して喧嘩になってしまったり、「なんで自分が注意されなければいけないんだ!」といわゆる逆ギレの状態になってしまったりします。

お子さまの社会性を育んでいくためには、学校だけでなくご家庭の役割も非常に重要です。できれば小学校に上がる前から、ご家庭において意識して「注意される→受け入れる」というプロセスをたくさん練習しておくようにしましょう。

ASDのお子さまのトラブル例としては、相手の気持ちが分からず「太っているね」と口に出してしまったり、「お金をくれたら友達になってあげる」という言葉を鵜呑みにしてトラブルに巻き込まれてしまったりといったケースが挙げられます。

まず、相手の気持ちを考えずに発言してしまうことについては、望ましくない発言の例を一つずつ覚えていく方法が効果的です。ASDの方は相手の気持ちを想像することが苦手ですので、「当たり前」「何となくわかるでしょ」という説明では理解が難しい場合がほとんどです。「こんな時はどうすれば良いか?」と具体的な例を挙げ、イラストなども使いながら丁寧に説明していきましょう。例えば、

○人と話すときは50cm以上離れる(=パーソナルスペースを守る)
○授業中に先生が質問をしたときには、答えをすぐに口に出すのではなく、「分かる人は手を挙げてください」という先生の指示に従って手を挙げ、先生が「○○さん」と指名してから答える 
○挨拶を無視されたと感じたときは、聞こえていなかったのかもしれないので、少し大きな声でもう一度挨拶する。それでも挨拶が返ってこないときは、「集中している」「心配事がある」など相手に事情があるかもしれないので、過度に返事を求めない


などの例が挙げられます。言葉だけの説明だとASDのお子さまには伝わりづらいことも多いため、場面が描かれたイラストや漫画などを使いながらレクチャーしていくことになります。

通級指導教室や療育センター、放課後デイサービスなどでは、ASDなどの発達障害のお子さま向けに、こうしたソーシャル・スキル・トレーニング(SST)と呼ばれる療育を受けることができます。ご家庭だけでソーシャル・スキル・トレーニングを行うのは難しい場合も多いと思いますので、これらの制度や施設を積極的に活用していただければと思います。

金銭的なトラブルについては、「他人にお金は貸さない/渡さない」というルールを作り、もし困ったことがあれば必ず大人に相談するように伝えましょう。またその際、保護者さまはいつもお子さまの味方であり、どんなことでも相談してほしいこと、何があってもお子さまを守ることを併せて伝えましょう。

さらにASDのお子さまの場合は、性的な被害にあったり、逆に加害者になったりする場合もあります。上手く言いくるめられて性的な行為をさせられたり、相手が自分に好意を持っていると思い込んで一方的にアプローチしてしまったりするなどのケースです。こうしたケースを未然に防ぐためには、「自分の身体は自分のものであり、むやみに人に見せたり触らせたりするものではないこと」「相手にとってもそれは同じであり、合意が無いのに他人の身体に触れてはいけないこと」などをご家庭でもお子さまが小さいうちから話せるようにしておきましょう。ご家庭でこうしたお話をするのが難しいと感じる場合は、『プライベートゾーン』『性的合意』といったキーワードで検索すれば様々な書籍や動画を見つけることができますので、お子さまの発達段階や特性に合ったコンテンツを活用すると良いでしょう。

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