45. 薬を服用すべきかどうか迷っている

発達障害のあるお子さまを持つ保護者さまからいただくご相談で、「医師から服薬を勧められたが、どうすればよいか迷っている」というものがあります。基本的にプロ家庭教師の立場からは、お医者さまが服薬を勧めている以上、お医者さまのお話をよく聞いて、ご本人や保護者さまが納得できれば服薬を、どうしても気が進まないなら無理に服薬する必要は無いということをお伝えするようにしています。また、判断に迷う場合はセカンドオピニオンも検討するよう併せてお伝えしています。

その上でプロ家庭教師としては、イメージに惑わされずに判断しましょう、ということをお伝えしたいと思います。

「精神科で処方される薬には依存性があるのではないか」「精神科に入院したことのある人が、薬を飲んだらぼーっとしてしまって何も考えられなくなったと言っていた」など、薬に関しては様々なイメージや噂があり、何が本当の情報か分からないことも多いと思います。

ですが、例えば依存性に関しては、中枢神経に作用するかどうかが大きなポイントになります。中枢神経は、脳の中でも快楽をつかさどる場所であり、この部分の働きが悪くなると脳の思考にブレーキが掛かりづらくなります。生まれつきこのブレーキ機能が弱いのがADHDであると言われており、ADHDの処方薬の一つであるコンサータは中枢神経に作用して脳のブレーキを効きやすくすることで思考を整理し、頭をスッキリさせてくれます。

コンサータの成分自体は麻薬と似たようなものであるため、確かに依存性の懸念があります。一方で、コンサータは少しずつ成分が溶け出す“徐放剤”と呼ばれる設計になっているため、依存性は極めて低く、ほぼ心配の無いレベルであると言われています。

これに対し、かつてADHDの治療薬として処方されていたリタリンは、コンサータと主成分は同じですが、徐放剤ではありませんでした。リタリンは服用直後から中枢神経に作用し、依存性も高いことが問題視されたことから、現在ではADHDの治療薬としては処方されなくなっています。

精神科の薬には依存性があるという言説は、多くはこのリタリンの依存性を指している場合が多く、コンサータやストラテラ、インチュニブの成分によって依存が引き起こされる可能性は非常に低くなっています。ただし、薬を飲むとADHDの特性が治まるため、「薬が無いと不安」「薬が手放せない」という状態になることはあります。広義にはこれらの状態も依存と捉えることができますが、禁断症状が出るようなものではなく、徐々に薬の量を減らすことで十分対応できます。

また、「ぼーっとして何も考えられなくなる」という点については、コンサータは前述のように頭をはっきりさせる効果があるため当てはまりません。ストラテラは脳内ホルモンの分泌を調整し、気分を落ち着かせる働きがありますが、私が受け持ったお子さまの中で「ストラテラのせいで頭がぼーっとするようになった」という例は聞いたことがありません。

頭がぼーっとして何も考えられなくなるような薬は、極端に興奮状態にある患者さんを落ち着かせるために投与されるものであり、ADHDの特性を抑えるために処方されるようなコンサータ・ストラテラ・インチュニブのような比較的効き目が穏やかな薬では、そのような症状はまず現れないと考えて良いでしょう。

また、ADHDの処方薬については、少ない量から少しずつ増やしていくのが基本です。薬が合わないなと感じたり、気分が落ち着きすぎて何事にもやる気が起きない(ストラテラの副作用)、食欲の減退(コンサータの副作用)などが見られる場合は、すぐに医師や薬剤師に相談し、薬の種類や量を調整するようにしましょう。

「絶対に副作用が起きない」という保証はどこにもありませんが、一方で怖がり過ぎる必要もありません。薬を使って発達障害の特性を抑え、快適に日常生活を送っている人もたくさんいますので、正しい情報を参照し、適切に判断するようにしましょう。

★もっと詳しく知りたい方にオススメの記事→ADHDの治療薬とは?コンサータとストラテラの違いって?効果と副作用も解説 | 発達障害・ギフテッド専門のプロ家庭教師 メガジュン (pro-megajun.com)