83. 友達が少ないので心配

いつも一人で遊んでいて、友達が少ないみたい…と心配している保護者さまもいらっしゃるかもしれません。ただ、私の経験上、友達が多いかどうかと不登校になるかどうかはあまり関係が無いように思います。不登校の状態にあるお子さまの中には、お友だちが多い子もいれば少ない子もいますし、もちろん学校に通えているお子さまの中にもお友だちが少ない子、多い子はいます。

大人数でワイワイと騒ぐのが好きな子もいれば、一人で静かに本を読んだり、ゲームやパソコンで遊んだりするのが好きな子もいます。特に保護者さま自身がお友だちが多いタイプの方である場合はつい心配になってしまうかもしれませんが、ほとんどの場合は何も問題は無いため安心していただいて大丈夫です。

ただ、お子さま自身が「お友だちがほしい!」と思っているにもかかわらず、なかなかお友だちができない場合は注意が必要です。単に話しかけるのが苦手でクラスメイトの輪の中に入るタイミングをつかめていない場合は、まずは「自分から話しかけてみよう」と励ましてあげましょう。話しかけてはいるものの関係が長続きしない場合は、お子さまがコミュニケーションの方法をまだ理解しきれていないのかもしれません。「相手の話を聞くときは相槌を打つ」「服装や持ち物を褒める」「一方的に話さず、会話のキャッチボールを意識する」など、基本的なコミュニケーションの取り方についてアドバイスしてみると良いでしょう。

それでもコミュケーションが改善せず、お友だちができにくかったり、喧嘩別れを繰り返してしまったりする場合は、コミュニケーションの苦手さが発達障害の特性に起因するものである可能性が考えられるため、注意して見守る必要があります。

例えば、発達障害の特性を持つお子さまは、「会話はキャッチボールである」と頭では理解していても、ついつい自分が興味のあることを一方的に話してしまう場合があります。要因としてはADHDの衝動性(好きなことに関するおしゃべりを我慢できない)、ASDのこだわりの強さ(好きなことに対して夢中になってしまう)が考えられますが、いずれもソーシャル・スキル・トレーニング(SST)によって改善することができます。

ご家庭でできる方法としては、ボールを用意して、ボールを持っている人だけが話して良いというルールで雑談をします。そうすると、いわゆる会話のキャッチボールが可視化されるため、ついついしゃべりすぎてしまうお子さまも、おしゃべりを我慢できるようになります。このトレーニングを繰り返し、ボール無しでも会話のキャッチボールができるようになることを目指します。

ほかにも、「太ったね」など悪気なく相手を傷付ける発言をしてしまうことで友達が出来づらいというケースもあります。ADHDのお子さまの場合は、考える前に思ったことを口に出してしまうという衝動性が、ASDのお子さまの場合は、相手の気持ちを想像するのが苦手であることが要因となります。これもSSTによって改善することが可能で、ADHDのお子さまの場合はロールプレイングを繰り返して言葉にブレーキをかける練習をしたり、ASDのお子さまの場合は具体的な例を挙げて、適切な振る舞いを一つずつ覚えていくなどの方法があります。

いずれにしても、発達障害のお子さまの人間関係が上手くいかないのは本人のせいではありません。本人は一生懸命お友だちになろうとしているのに、なぜか周りが離れていくという状況ではストレスも大きく、不登校の原因にもなりやすくなります。もしお友だちの少なさに発達障害の特性が関係している可能性がある場合は、お子さまを責めるのではなく、「どうしたらお互いに気持ちよく遊んだり、お話ししたりできるか一緒に考えよう」と声掛けをし、必要に応じて療育センターや通級指導教室でSSTに取り組むと良いでしょう。コミュニケーションスキルは大人になってからも非常に重要ですので、早いうちから特性に気付いて対処していけると良いですね。

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