81. 不登校の状態にあるが、学校の対応に納得できない

登校渋りや不登校の状態になった後の学校の対応に今一つ納得できず、ご家庭と学校の距離が離れてしまったというケースをよく伺います。少し前には、「早く学校に来てね」とクラスメイト全員から寄せ書きされた色紙を家まで持ってきた先生がいるという話がSNSで拡散されていましたし、それと同じようなエピソードは現在もSNS上に溢れています。

こうした対応に関して、何とかしてほしいと教頭先生や校長先生とも話をしたが、なかなかこちらの思いが伝わらないという場合は、市町村の教育委員会に相談すると良いでしょう。多くの市町村は不登校の児童・生徒への対応に力を入れており、心理士などの専門資格を持った人が対応する窓口が設置されていることもあります。

なお、私立学校の場合は教育委員会の所管外になるため注意が必要です。基本的には、その学校が所在する都道府県の「私学課」や「文教課」といった部署が担当窓口になりますが、地域によって扱いが異なる場合も多いため、詳細は各自治体に問い合わせるようにしましょう。

また、基本的に相談窓口は悩みを傾聴することが主目的であり、具体的な解決策まで提示してくれるケースは少なくなっています。教育委員会に相談するときは、具体的に学校にどのような対応をしてほしいか(朝の欠席連絡を週1回でOKにしてほしい/転校生への寄せ書きに参加したくない/担任との面談には学年主任も同席してほしいなど)を明確にしておきましょう。あらかじめ、こちらの希望を箇条書きにしたメールを送りつつ電話でも相談するなどすれば、意図が伝わりやすく、対応も早まる可能性があります。

ちなみに、不登校に対して見当外れの対応をする先生が続出する背景には、基本的に学校の先生が“学校が好き”であることが原因ではないかと考えています。多くの先生はかつて、毎日学校に通い、クラスメイトと談笑し、勉強もスポーツも平均程度にはこなせる子ども時代を過ごしており、そして多くの先生は、子ども時代に学校が楽しくて好きだと感じたからこそ、教師という職業を選んでいることが多いはずです。学校が好きで先生になった人にとって、「学校が好きではない子」の気持ちはどうしても理解しづらいものでしょう。クラスメイトの寄せ書きを持ってきた先生に、おそらく悪気は一切ありません。その先生にとって学校はとても魅力的な場所で、「あなたもこれば良いのに!」と心から思って寄せ書きを持ってきたのだと思います。

ですが、この記事を読んでいただいている方の多くがご存知のとおり、学校が好きではない子もたくさんいます。知能指数が平均の枠内(IQ90~110)に収まり、発達に凸凹が無く、先生の言うことを疑わず素直に聞ける子以外にとって、学校は居心地が悪く、プライドを傷付けられ、理不尽を押し付けられる場所になり得ます。

こうした「学校が好きではない子」「学校に馴染まない子」の存在は、不登校や発達障害の問題が広く認識されるにつれて、“学校好き”の先生の間でも少しずつ意識されるようになりました。ただ実際のところ、こうした子どもたちにどのように接すれば良いのかが感覚的に掴めず、空回りや的外れの対応が続いている現状も見受けられます。

とはいえ、学校が好きな先生たち(=学校に馴染まない、という感覚がそもそも理解しづらい先生たち)も、学校に馴染まない子を排除したいと考えているわけではありません。学校が好きかどうか、馴染むか馴染まないか以前に、子どもたちのためにできることをしてあげたいという気持ちは、先生も保護者さまも同じはずです。

学校復帰だけがゴールではないこと、学力ではなく自己肯定感を大切にしてあげたいこと、今はゆっくり休ませたいこと……ご家庭の方針をまずはしっかりと学校に伝えましょう。それでも理解が不十分だと感じる場合は、担任の先生だけでなく学年主任の先生や保健室の先生、スクールカウンセラー、教頭先生、その他お子さまが信頼している先生にも同席にしてもらって対話を続けましょう。学校と家庭が話し合う際には、具体的な対応を決める前に、大きな方針を共有しておくことが大切です。

学校の対応に疑問を感じてやきもきしてしまうこともあると思いますが、その際に勢いに任せて強い言葉(「若い先生には任せられない。校長先生と話させてほしい」「教育委員会に訴える」等)を使ったりしてしまうと、学校側も身構えた対応となり、本音で話し合うことが難しくなってしまいます。

例えば、何か気になることがあるときにだけ学校に連絡を取るのではなく、懇談会やPTA行事などにも積極的に参加し、学校と親しい関係を作っていくことなどは非常に大切です。ある保護者さまは、お子さまが長らく不登校の状態にあったのですが、積極的に学校行事などに顔を出し、担任の先生だけでなく他のクラスの先生や教頭先生とも親密な関係を築いていらっしゃいました。

同じく不登校のお子さまを持つ保護者さまからは、「自分の子どもは学校に行っていないのに、なぜ行事を手伝ったりするの?」と聞かれたそうですが、自分の子が通っていない分、親が学校としっかりと関係を作り、子どもが学校から切り離されてしまわないようにしたいとの考えから積極的に行事に参加していらっしゃるとのことでした。

また、学校に協力的であることで、先生たちも「あのお母さんのご希望なら叶えてあげたい」と感じやすく、「別室で登校したい」「放課後に面談をしてほしい」といった要望もすんなりと受け入れてもらえることが多いとのことでした。

「北風と太陽」の童話ではありませんが、対立ではなく“協調・協力”が結果として上手くいくことも多いため、学校との交渉する際の一つの方法として、心に留めておいていただければと思います。

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