87. ゲームや動画などに夢中で昼夜が逆転している

夜遅くまでゲームをしたりスマホを見たりしていると、朝起きられず、学校に行くのも億劫になってしまいます。また、中には昼夜逆転してしまっているお子さまもいらっしゃるかもしれません。「いい加減にしなさい」とゲームやスマホを取り上げると、暴れ出して手を付けられなくなってしまうため途方に暮れているというご家庭のお話も伺うことがあります。

昼夜が逆転するほどゲームやスマホにのめり込んでしまっている場合は、それらを取り上げても状況は好転しません。ゲームやスマホにのめり込むお子さまの多くは、現実があまりにも辛いため、逃避行動としてゲームやスマホに頼っています。彼ら/彼女らにとってゲームやスマホは現実から逃れるための最後の居場所であり、いわば命綱です。それを力ずくで取り上げられると、パニックになったり、保護者さまを攻撃したりといった行動を取ってしまいます。また、ゲームやスマホを取り上げると、お子さまにとって家庭が安心できる場所では無くなってしまうため、親子の信頼関係も大きく傷付いてしまうことがあります。

また、ゲームにのめり込んでしまうお子さまの中には、脳の報酬系の機能(快楽をコントロールする仕組み)が弱くなっていて、「ゲームをやめたくてもやめられない」という状態に陥っていることもあります。特にADHDの方はゲーム依存になりやすいと言われていますが、それはこの報酬系の機能が生まれつき弱いことが関係していると考えられています。

このような状況にある場合は、ご家庭だけで解決しようとせず、専門機関やゲーム依存に対応している児童精神科などに早めに相談することが大切です。また、できればゲームやスマホに完全に依存してしまう前に、お子さまからのヘルプサインに気付き、現実世界の辛いことから距離を置いたり、取り除いたり、もしくは専門機関に相談することが望ましいですが、ヘルプサインに気付かなかった・間に合わなかった場合は、専門機関や医療機関に相談するとともに、その事実を保護者さまが受け止めることから始めましょう。

保護者さまが気付かない間にお子さまは大きなストレスを感じていたということになりますので、まずはこれまでの生活や関わり方を見直すことが大切です。児童精神科などに相談する際に、お子さまが家から出るのが難しいなどの場合には、保護者さまだけで相談・受診しても構いません。お子さま本人が治療やカウンセリングを受けられるのが望ましいですが、ゲーム依存は家族全体に関わる問題ですので、必要に応じて保護者さまがカウンセリングを受ける場合もあります。

核家族化が進み地域とのつながりも希薄になっている現代において、親子の関わりはどうしても家庭内で完結しがちで、その家庭にとっての“当たり前”が大きく偏ってしまう場合もあります。それは社会全体の問題であり、保護者さまがご自身を責める必要はありません。目の前のお子さま、あるいはご家庭が抱えている問題をしっかりと受け止め、改善しようという意志さえあればいつか必ず問題は解決に向かいますので、積極的に専門機関や医療機関を頼るようにしましょう。また、ゲーム依存の背景に発達障害の特性が関係している場合は特に家庭だけでは解決が難しくなりますので、必ず専門機関や医療機関に相談するようにしましょう。

お子さまが少しでも心を開いてくれたり、あるいは完全に依存状態になる前であったりする場合は、ゲーム依存やスマホ依存への対応に長けているフリースクールなどを利用するのも良いでしょう。これらのフリースクールでは、自然の中でできるだけスマホやゲームを手放して過ごすことで、ゲーム以外の楽しいことや面白いことに触れさせるというプログラムが実施されています。ゲームやスマホ以外の居場所を見つけることが依存の改善においては最も重要ですので、こうしたプログラムは非常に効果的です。

ただし、本人が嫌がっているのに無理やり参加させても効果がありませんので、親子の対話がきちんとでき、お子さま自身が「やめたい、でもやめられない、何とかしたい」と心から思える状態になってから参加するようにしましょう。

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