【ギフテッド実例】高知能なのに問題児?D君が学校で感じていたストレスと対応策、中学受験への道のり(浮きこぼれ問題)

IQ130以上であるギフテッドには、人口の約2%が該当すると言われています。

今回の実例記事でご紹介するD君はIQ136のギフテッド児で、高い知能を持つがゆえに「学校の先生の言うこと、学校のルールに納得がいかない」「授業の内容が簡単すぎてつまらない」などの悩みを抱えていらっしゃいました。

また、保護者さまは、

  • D君は学校で先生に反発することが多く、周りの子どもたちともあまり馴染めていない
  • D君の高い知能や知的好奇心を伸ばしてあげたいが、対応できる塾や家庭教師がなかなか見つからない

といった点で悩んでおられ、私たちの元へご相談をいただきました。

D君のお悩みはギフテッドのお子さまの多くが抱えておられるものであり、同じお悩みを持たれている方にとって非常に参考になるものであることから、D君のお悩みや解決方法について実例記事としてご紹介させていただくことにしました。

お名前などは仮名ですが、エピソードの内容は事実そのままとなっていますので、ギフテッドのお子さまのことでお悩みの方は是非ご一読いただければと思います。

ギフテッド専門の受験プロ家庭教師
妻鹿潤
・16年以上1500名以上の指導実績あり
・個別指導塾の経営・運営でお子様の性質・学力を深く観る指導スタイル
・yahooやSmartNews、Newspicksなどメディア向け記事も多数執筆・掲載中

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IQ136のギフテッドのD君は、学校では問題児?(cf.浮きこぼれ問題)

IQ136のギフテッドのD君は、学校では問題児?(cf.浮きこぼれ問題)

D君のお母さまから私たちの元へ最初のご相談をいただいたのは、D君が小学2年生の6月でした。

お母さまからいただいたメールの概要は以下のとおりです。

<D君のお母さまからいただいたご相談メールの概要>

  • D君は現在小学2年生で、大都市近郊のベットタウン在住
  • 小学校は県内有数の大規模校で、全校生徒は1000人超
  • 「学校に行きたくない」と言うことがあり、実際に休む日が増えてきている(最近では週に1~2日は休んでいる)
  • お母さまがD君に学校に行きたくない理由を尋ねると、「授業がつまらない。分かっている話を聞かされるのがしんどい」と答えた。
  • 小学1年生のときに、「落ち着きが無い」「コミュニケーションが苦手なようだ」という指摘を学校から受けWISC-IV検査を受けたところ、IQ136のギフテッドであることが分かった。
  • D君は、家庭ではじっとしていられないなどの落ち着きの無さは見られず、コミュニケーションにも問題が無い。なので、学校の環境が合わないのではないかと考えている。
  • D君は同年代の子どもに比べて口が達者で、大人びた話し方をする
  •  YouTubeの動画を1.5~2倍速で見ていることが多い。
  • 授業中に先生が「習っていない漢字は書くべきではない」という指導をしたことに対してD君は非常に腹を立て、「お母さんから先生に『その指導はおかしい』と言って!」と家で癇癪を起こして収まらなかったことがある。(結局学校には連絡したが、担任の先生からは「面倒な家庭だ」と思われてしまったのではないかと心配している)
  • 漢字の書き取り練習を嫌っている。D君曰く「何回も書かなくても覚えられるから」とのこと。

このメールを拝見して、私たちもお母さまが感じていらっしゃるように、D君は「落ち着きの無さ」や「コミュニケーションの苦手さ」といった発達障害のような特性を持っているのではなく、学校という環境が原因となってそれらの困りごとが生じている「のではないかと考えました。

そこで私たちは、さらに詳しくD君の困りごとの背景を分析するために、お母さまと電話でお話しし、「学校から『落ち着きが無い』『コミュニケーションが苦手』と指摘されているのは、具体的にどのような場面や行動であるのか?」を中心に詳しくお話を伺いました。

すると、お母さまからは以下のようなお答えをいただきました。

<D君が学校で指摘を受けている行動>

  • 授業を聴かずに別のことをしている(本を読む、落書きをする、紙の切れ端で工作をする 等)。
  • 授業中に不規則発言をする。発言の内容は、先生の説明が誤っていたり、論理が破綻しているときに「先生は間違っている」と指摘したり、「50cmは1/2mと書けるのではないか?」といった教科書にはないアイデアを出したりするなど。
  • 休み時間は、同じクラスのAさんと話すか一人で本を読んでいる。Aさん以外に親しい友達がいない。
  • ドッチボールなどのクラス遊びに参加せず、一人で本を読んだり虫を観察したりして遊んでいることが多い。

ここまでお話を聞いていると、やはり“学校”という環境がD君にとって非常に窮屈なものとなっている可能性が高いと考えられました。

というのも、D君自身が「授業がつまらない」と言っているとおり、ギフテッドのD君にとって学校の授業は、わざわざ先生の説明を受けなくても分かる内容ばかりです。

そこでD君は、少しでも有意義に時間を過ごそうと思い、授業を聴かずに別のことをしたり、「50cmは1/2mである」と自分なりにアイデアを出したりしているわけですが、それを先生から「落ち着きが無い」と否定されてしまう状況は、D君にとって非常にストレスを感じるものに違いありません。

また、コミュニケーションの苦手さに関しても、お友達とお話ししたり遊んだりするよりも、一人で本を読んでいる方が楽しいというD君の意思によるものであり、「お友達と仲良くしたいのに出来ない」「会話が噛み合わない」といった発達障害の特性による困りごととは性質が異なるものであると考えられました。

そこで私たちは、まずはお母さまに対し、以下のようにお伝えしました。

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お母さまがお考えのとおり、学校という環境がD君に合っていないというのはまさにその通りだと思います。

特に通われている学校は全校生徒1000人超えと規模も非常に大きく、通われているお子さまの層も幅広いと思われます。
そのため、クラスも落ち着いた雰囲気になりにくく、D君もストレスを感じやすい状況にあるのではないでしょうか。

また、「規模が大きい学校は、子どもの数に対して先生が少ない状況」にあります。

そのため、一人一人に合わせた指導を行うことが難しくなるだけでなく、先生は勉強についていけない子の方を優先的に見てしまうため、D君のように知能が高いお子さまへの配慮が後回しになってしまうケースが多くなっています(いわゆる「浮きこぼれ」の状態にD君はなっていると考えられます)。

こうした学校全体の状況をご家庭だけの力で変えていくことは非常に難しいため、D君自身が今の環境にどう立ち向かっていくかという視点で解決を図る必要があると考えます。
これからD君がどのように学び、どのような力を付けていくべきか、D君の気持ちを尊重しながら、一緒に考えていくためのお手伝いをさせていただければ幸いです。

まず最優先で考えなければならないのは、D君の学校への行き渋りに関してです。

最近は週に1~2日は学校をお休みされているとのことですので、このまま何も対策を講じない場合は、不登校の状態に進んでしまう可能性が高いと考えます。D君は学校に行かなくても学力に関しては問題がありませんが、「社会性を身に付ける」という点については学校でしか学べないことも多いです。

ですので、方向性としては以下の2つをご提案させていただきたいと思います(※あくまで一案ですので、このほかのご希望やご相談がありましたら気兼ねなく仰ってください)。

① 学校に通い続けることを目指す場合
D君が学校で窮屈さをできるだけ感じないよう、学校に理解を求める。
併せて、D君自身には「なぜ学校は窮屈なのか」という一段上の視点を持ち、状況を客観視することで上手くストレスに対応できるようにサポートしていく。
(こちらはギフテッドのお子様によくさせて頂くアプローチで、アプローチ後数ヶ月ほどで学校とうまく折り合いがつくことが多いです。)

② 学校に通うことにこだわらない場合
ホームスクーリングやフリースクールを活用しながら自由に学ぶ。併せて、社会性を身に付けるために、スポーツクラブや趣味のサークルなどの集団活動への参加を検討する。

また、行き渋りの対応と併せて、「D君の知的好奇心をどのように満たすか?」という点についても非常にお悩みのことと存じます。

こちらに関しては、“答えの無い問い”を題材とした調べ学習やディスカッションなど、ギフテッドのお子さまに適した授業を行うことで、D君の「知りたい!」や「面白そう!」といった知的好奇心を満たしてあげることができると考えます。

例えば、週ごとにテーマを決めて(『昆虫』『天体』『政治』など)、お子さまと講師がそれぞれ調べてきたことを、お互いノートにまとめて授業で発表し合い、ディスカッションするなどの授業は、メガジュンをご利用いただいているギフテッドのお子さまの中でも楽しんで参加してくれる子が多く、D君にもぜひ一度体験していただきたいと思います。

また、D君に近しいお子様ですと、進学予定の公立中学校に合わないことが多く、中学受験をされることがほとんどでございます。

ギフテッドのお子さまが中学受験をされる理由は、「ご本人様の知的レベルに合わせた授業が受けられる」「知能が高い子どもたちが集まるため、話の合う友達を見つけやすい」「知能の高い子どもを指導するノウハウが学校にある」などがあります。

こちらの記事で詳しく書いていますので、お時間ありましたら一度お目通しいただければ幸いです(中学受験でギフテッドの才能を最大限に生かす方法|準備のコツと成功のポイント | 発達障害・ギフテッド専門のプロ家庭教師 メガジュン (pro-megajun.com))。

以上、長くなってしまい申し訳ありません。

お返事は急ぎませんので、ご家庭でじっくりとご検討いただければと思います。

どうぞよろしくお願いいたします。
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これに対して、D君のお母さまから以下のお返事をいただきました。

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先日はお返事ありがとうございました。

また、非常に丁寧にお答えいただき、こちらも頭の整理ができました。大変感謝しております。

さて、ご提案していただいた行き渋りに関する方針ですが、父親やD本人も含めて家族で話し合ったところ、「①学校に通い続けることを目指す」で進めていきたいと考えています。

というのも、Dの気持ちを改めてよく聞いてみると、「学校が嫌いなわけじゃない。ただ、先生から『○○しなさい』と強制されることや、先生が『○○しなさい』という理由や根拠がはっきりしなかったり、明らかに間違っていたりするからイライラする」ということでした。

また、Aさん(Dがクラスで唯一おしゃべりする子)以外の子どもたちに対しても、「嫌いではないし、いじめられているわけではない。でも、一緒にいるとしんどい気持ちになることがある。例えば、クラスメイトはよくケンカしているけれど、どうでもいいことで大声を出したり、暴れたりしていて、静かにしてほしいと思うことはある」と言っていました。

改めてDの言葉を聞いていると、彼は学校でいつも「イライラする気持ち」を感じているようでした。
妻鹿先生に仰っていただいたように、イライラ(=ストレス)に対する耐性を付けていくことが、Dのこれからの成長にとっては必要なことだと夫とも話し合い、学校に通いながらストレスへの対処法を身に付けられるようなサポートを受けられたらと思います。

また、併せてご提案をいただいた知的好奇心を伸ばす授業もとても関心があります。

Dは読書が好きなのですが、好きな本しか読まないので知識が偏ってしまうのではないかということが心配でした。
また、知識をインプットすることはできていると思うのですが、知識を自分なりに整理してアウトプットする練習も必要なのではないか…と親としては感じています。

読んだ本の内容をまとめたノートでも作ってくれれば、成果が目に見えてこちらも安心できるのにと考えていたところですので、ぜひ調べ学習×ディスカッションの形での授業をお願いできればと思います。

引き続きどうぞよろしくお願いします。
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ギフテッドのD君が学校でイライラしないためにできること

ギフテッドのD君が学校でイライラしないためにできること

D君のお母さまから前向きなお返事がいただけたので、実際の授業について具体的に組み立てていくことにしました。

まず、授業のメインは、事前にお母さまにご紹介したように「テーマを決めて、講師とD君がお互いに調べてまとめてきたものを発表し、ディスカッションする」というものにしました。

加えて、勉強のことだけでなく、学校での過ごし方や生活についても講師とD君がざっくばらんにお話しできるよう、「質問・相談タイム」を設けることにしました。
「質問・相談タイム」では、D君が日頃感じた質問や疑問を、何でも構わないので講師に質問してもらいます。

D君には講師に聞きたいことをメモしておいてもらい、授業のときに講師が答えていきます。
これは日頃から「なぜ?なぜ?」といった疑問や質問が多く、保護者さまが答えきれないといったお困りごとがあるギフテッドのお子さまにおいて主に採用している授業の形式ですが、D君においては、イライラの原因を客観的に分析するための足掛かりとしても使えるのではないかと考えたからです。

また、D君は授業中に感じた疑問について、その場で発言してしまうことで「落ち着きが無い子」と先生に見られてしまっていました。

疑問や質問に対して答えてもらえないことや、先生に「静かにしなさい」と言われてしまうことがD君のストレスに繋がっていると思われたため、教科書の内容に関する質問に関してはその場で口に出すのではなく、「ノートに書き溜めて家庭教師の先生に答えてもらう形とすることで、D君のストレスを軽減できる「のではないかと考えました。

ちなみに、「授業中に感じた疑問を先生に質問したけれど答えてもらえなかった」という経験があるギフテッドのお子さまは非常に多いです。

D君のように、答えてもらえなくても質問をし続ける子もいれば、「質問するのは良くないのだ」と感じて、質問を口に出さず心の中に留めたまま授業を受ける子もいます。

疑問に答えてもらえないと、お子さまはモヤモヤした気持ちを抱えたまま授業を受けることになり、ストレスが溜まったり、上手く集中できなかったりすることがあります。
このような場合には、「家庭教師と一緒に学校の授業の予習(先取り授業)をし、疑問について先に解消しておくという方法が効果的」です。

家庭教師がお子さまの疑問にしっかりと答え、モヤモヤを先に解消しておくと、学校の授業を受ける際には既に疑問が解消されているため、「学校ではここまでしか説明しないのだな」と理解した上で授業を受けることができるようになります。

以上の方針をお母さまとも共有した上で、D君の授業を進めていくことになりました。

調べ学習×ディスカッション形式の授業

調べ学習×ディスカッション形式の授業

まず、メインとなる「調べ学習×ディスカッション形式」の授業については、最近D君がハマっている『電気』をテーマに設定しました。

お母さまからは「Dの好きなものだけに偏らず、幅広く知識を身に付けてほしい」と伺っていましたが、最初はD君の好きなテーマから始めて、授業に慣れてきたら少しずつ別の分野に広げていく方が、より前向きに授業に参加できると考えたからです。

D君は、電流と電圧の関係について、ノート3ページにわたる大作を書いて発表してくれました。
以前に家族旅行で海外に行ったときに、お母さまが「海外では電圧が違うんだよ。だから変換プラグが必要なんだよ」と教えてくれたことから興味を持ち、ノートの中には海外の電圧やプラグの違いについてもまとめられていました。

講師は、電池について調べたものを発表しました。
小学2年生であれば直列つなぎと並列つなぎの違いが分かれば十分過ぎるほどですが、敢えて手加減せず、イオン化傾向までしっかりと踏み込んだ内容としました。

お互いの研究の発表後はディスカッションの時間ですが、「電池の電圧はどうなるのか?」といった話題で盛り上がり、D君も非常に楽しく授業に参加してくれました。
「こんなに面白い話ができたのは人生で初めてだ!」という発言がD君から飛び出したので、講師は微笑ましく感じるとともに、D君の知的好奇心を満たすことができてとても嬉しく思いました。

質問・相談タイム

質問・相談タイム

「質問・相談タイム」では、D君は毎回様々な質問を持ってきてくれました。

例えば、

・ 水の中にいるカメと、陸にいるカメがいるのはなぜか?

という質問がありました。

これは、生活科で「生き物を調べよう」という授業があり、学校近くの川でカメを発見したときに思いついた疑問だったそうです。

これまでのDくんは、思いついたときに先生にその場で質問して、先生にちゃんと答えてもらえずにモヤモヤしてしまうことが多かったのですが、メガジュンの講師に答えてもらおうと思えたので、その場では不規則発言をせずに済んだとのことでした。

また、この質問に対してメガジュンの講師は、

  •  脊椎動物は「魚類→両生類→爬虫類」の順番で進化していて、水中から陸上へと生活範囲を変えてきた
  • したがって、爬虫類であるカメは本来は陸上で生活しているはず。それなのに水中で生活しているカメがいるということに気付けたのは非常にGood!
  • 水中で暮らしているカメたちは、一度陸に上がったものの、「食料の確保ができない」など思ったよりも陸上の生活が快適でなかったために、水中に戻ってきたいわば“出戻り組”
  • なので、水中で暮らしているカメたちは、長い時間水中に潜ることはできるものの、一度は陸の生活に適応していることから、水中で卵を産むことができなかったりする

など、進化の過程や雑学を交えながら説明しました。

このように授業の内容に関する質問に関しては、教科書の範囲にこだわらず、D君が「なるほど!」「面白い!」と感じられるようにしっかりと丁寧に答えていきました

一つ一つの疑問をおざなりにせず、お子さまが納得できるようにしっかりと答えていくと、お子さまは「もっと知りたい・学びたい」と感じ、次の授業も楽しみにしてくれるようになります。

学校では授業の時間も限られていますので、お子さまの知的好奇心を満たすような回答を行うことはなかなか難しいですが、ギフテッドの指導に長けたプロ家庭教師であれば、お子さまの知的好奇心を満たすような質の高い質疑応答を行うことができます。
(その場で即答が難しい質問もありますが、その際は次回授業でお答えすることでご安心いただけることがほとんどです)

さて、D君の質問は教科書の内容だけでなく、学校の生活やルールに関するものもありました。

この記事では、ギフテッドのお子さまが感じやすい疑問・質問の代表的なものとして、

  1. なぜ分かっていることでも何度も反復練習しなければならないのか(筆算や漢字の書き取り練習など)
  2. なぜ学校には意味の無い・効率的ではないルールがあるのか
  3. なぜ分かっているのに授業を受けなければならないのか、学校に行かなければならないのか

の3つを例に挙げ、実際に講師がD君に答えた内容を紹介していきたいと思います。

ご家庭でお子さまに「どうして○○しなきゃいけないの?」と聞かれたときに、どのように答えてよいか悩まれている保護者さまも多いと思いますので、ぜひ参考にしていただければと思います。

【ギフテッドの子がよくする質問①】なぜ分かっていることでも何度も反復練習しなければならないのか(筆算や漢字の書き取り練習など)

【ギフテッドの子がよくする質問①】なぜ分かっていることでも何度も反復練習しなければならないのか(筆算や漢字の書き取り練習など

初回の授業でD君が持ってきた質問は「なぜ筆算をしなければならないのか?」というものでした。

D君はちょうど学校で二桁の足し算・引き算を習っているところであり、学校の授業では筆算のやり方から丁寧に教えられるものの、D君は暗算で計算できてしまうため、授業が退屈で仕方がないとのことでした。

また、先生の指示通りに繰り上がった「1」を小さく書いておかないと○がもらえないことにも疑問を感じていて、「正しい答えなのだから○をして」と先生にも実際に伝えたそうです。
すると先生は「そういう問題じゃない」と言って取り合ってくれず、D君は非常に腹が立ったと言っていました。

そこで講師は、まずD君に「D君のように、筆算しなくても暗算で計算できる子って、クラスに何人くらいいるかな?」と尋ねました。するとD君は「自分を含めて3人くらいだ」と言います。

「ということは、D君のクラスは全員で30人だから、残りの27人は筆算しないと計算できないわけだね」
「うん」
「学校の先生は、その27人に合わせて授業をしているということだ」
「でも…」

D君は一瞬悩んだ後、このように続けました。

「計算ができる3人が、できない27人に合わせなきゃいけないの?」
「合わせてあげるのはイヤ?」
「面倒だし、時間が掛かるし、ムダだと思う」
「なるほど。じゃあ、その『面倒で、時間が掛かる』と『ムダ』が本当かどうか考えていこう」

D君はキョトンとした顔をしましたが、そのまま続けます。

「まず、『面倒で、時間が掛かる』だけど、具体的には左上に小さく1を書くだけだから、そんなに面倒でもないし、時間も一瞬なんじゃないかな?」
「…」
「あと、『ムダ』かどうかは人によって違うと思うよ。大人でも慌てて計算すると繰り上がりを忘れてしまうことはあるし、筆算で丁寧に計算する練習を子どものうちにしておくのは必要なことだと先生は思う。
先生は大人になった今でも、絶対に間違えちゃダメなときは、簡単な計算でも筆算をすることがあるからね」
「僕は慌てているときでも間違わないよ。暗算で大丈夫」
「そうか、その自信はすごいね。じゃあ、筆算をすべきか、しなくていいのか、ここまでの話のポイントをまとめてみよう」

ここで講師は、話し合いのポイントを表でまとめていきます。

<筆算をすべきかどうかの問題の論点>
<筆算をすべきかどうかの問題の論点>

この表を見てみると、筆算をするメリットには「○がもらえる」「計算を間違いにくくなる」の2つがあるため、一見すると筆算をした方が良いように思えます。

ですが、D君が「自分は絶対に計算を間違えない」と主張している以上、「計算を間違いにくくなるから筆算しよう」といくら言っても、「僕は大丈夫だ」と言い返されて水掛け論になってしまいます。

ですので、「計算が間違いにくくなる」というメリットは一旦脇に置き(計算力の優れたギフテッドのお子さまの場合、本人の言うとおり、筆算することには実際に意味が無く無駄であることもあります)、別の視点から話を進めていくことにします。

「こうして見てみると、計算が苦手な子に合わせて筆算をして○をもらうか、合わせずに暗算して○をもらえないかの二択になりそうだね」
「ええっと、『暗算をして○をもらう』はできないの?」
「正直、難しいと思う。最初に言ったとおり、学校の先生は、あくまで暗算ができない27人に向けて、その子たちが『手順通りに筆算ができるようになること』を目指して授業をしている。
だから、○を付ける基準も『筆算ができているか』になってしまうんだ」
「うーん、納得いかないなあ」
「それはそうだよね。だって、『正しく計算すること』が一番の目的で、『筆算すること』はあくまで正しく計算するための手段だからね。
でも、学校の先生は『筆算すること』が目的になっちゃっているんだよね」

ここで再び、講師は図を描いていきます。

「目的と手段の逆転」は学校において往々に生じることであり、D君にもよくあることなのだと認識してもらいたかったからです。

<目的と手段の逆転>
<目的と手段の逆転>

D君の言うとおり、『正しく計算できる』ということを目的にするのであれば、D君のように暗算ができる子は筆算を飛ばしてOK、そうでない子は筆算から教えるという形で、一人一人に合わせた形で指導・評価を行うことになります。

しかしながら、教室に先生は1人しかいないため、30人それぞれに対し、

  • Aさんは暗算も完璧だから、筆算は全くやらなくてOK
  • Bさんは暗算はできるけれど、たまに間違えるため筆算の練習を少し取り入れる
  • Cさんは計算が苦手なので、筆算から丁寧に取り組む

といったそれぞれに合わせた指導を行うことは非常に難しく、現実的ではありません。

そのため、仕方なく『筆算ができているか』といった手段の部分で判断していくしかないという状況にあります。

もちろん、ここまで深く考えておらず、「筆算はやらなければならないから、やらなければならない」と思考停止している先生もいるかもしれませんが、本質的には“1人の先生が30人の子どもを一度に指導する”という学校のシステム自体に無理があり、D君のようなギフテッド児はその被害を被っていると言えます。(参考記事:【ギフテッドの不登校】才能ある子どもたちが抱える課題と解決策(浮きこぼれへの対応) | 発達障害・ギフテッド専門のプロ家庭教師 メガジュン (pro-megajun.com))

以上のような説明をD君に対して行った上で、講師からD君には、

「『暗算でも○にしてほしい』というD君の意見は筋が通っているし、決して間違ってはいない。だけど、現実的にそれができるシステムになっていないということなんだ。
だから、D君自身が今の状況の中でどう行動していくかを決めるしかないんだよ」

とはっきりとお伝えしました。

ギフテッドのお子さまは、「なぜできない子に合わせなければならないのか?」「分かっているのに何度も練習しなければならないのか?」という点で疑問を感じることが多いです。

D君においても、お母さまからの事前の情報提供で「漢字の書き取り練習を嫌がる」と伺っていましたが、恐らく筆算と同様に「覚えているのになぜ何度も書かなければいけないのか?」という理由で嫌がっているものと考えられました。

そのような場合には、学校のシステムが抱える根本的な問題から順を追って説明し、「システムを変えることは難しい。だから、自分自身が変わらなければならない」ということをはっきりと伝えることにしています。

ギフテッドのお子さまは理解力に優れており、また、論理的に筋が通っていることを大切にする性質を持っていることが多いです。
ですので、学校のシステムそのものから筋道立てて説明していくことで、「現在の状況を変えることは難しく、自分が変わるしかない」ということを理解してくれるようになります。

D君は、最初に講師が書いた「筆算することのメリット・デメリット」の表をじっと見たまま、しばらく黙り込んだ後、「(筆算をするかしないか)どっちを選んでもいいの?」と講師に聞きました。

そこで講師は、

「そうだよ、どっちでも良い。D君が自分で選ばないと、納得できないでしょう?」

と答えました。D君はさらに悩んだ後、

「うーん…今度筆算で計算してみて、そんなに面倒くさく思わなかったら筆算するし、やっぱり面倒くさかったら筆算しない、とかでもいい?」

と提案してくれました。

「もちろん!良いアイデアだと思うよ。『やってみて確かめる』ってすごく大事だからね!」

と講師が伝えると、D君は満足げに頷きました。

D君は元々高い知能を持っていることもあり、「それでも暗算で○が欲しい」と駄々を捏ねることも無く、自分なりの落としどころをすんなりと見つけてくれました。(お子さまの中には、「どうしても暗算で○が欲しい」と譲らない方もいらっしゃいます。

その場合は「今説明したように、先生やお母さん・お父さんではどうしようもできない」ということを、お子さまの気持ちが落ち着き、頭で納得できるようになるまで繰り返し根気強く議論を重ねる必要があります)

さて、次の週にD君に、実際に筆算をやってみてどうだったかを聞いてみると、

「足し算のときは小さく『1』を書くだけだし、引き算のときは十の位に斜線を引いて-1した数字を書くだけだし、そんなに面倒じゃなかった。
あと、最初に『1』を一気に書いたり、斜線を引いたりするっていう裏ワザも発見した!」

と意気揚々と語ってくれました。

講師は「最初に『1』を書いておく方法は天才的だけど、先生に見つかるとまた何か言われそうだから気を付けてね」と念のため伝えつつも、D君が折り合いを付けられたことを嬉しく思いました。

「D君はこれでひとつ大人になったね」
「大人?」
「先生と『筆算する/しない』でケンカするより、『ここは先生の顔を立てて、筆算しておこう』ってする方が、より大人な対応ってこと」
「なるほど、それもそうか!」

D君は「大人になったね」と言われてまんざらでもない様子でした。

これからも「途中式を書く/書かない」などで似たような問題が起きるかもしれませんが、今回の経験を踏まえて、D君はこれから少しずつ自分で折り合いを付けられるようになっていくはずです。

実際にお母さまからも、この一件以降、D君は以前のように「漢字練習は無駄だ」という主張はあまりしなくなったと伺いました。
D君が折り合いを付けるための一つの方法を身に付けてくれたことを、講師としても嬉しく思いました。

【ギフテッドの子がよくする質問②】なぜ学校には意味の無いルールがあるのか

【ギフテッドの子がよくする質問②】なぜ学校には意味の無いルールがあるのか

ギフテッドのお子さまがよくする質問の2つ目は「なぜ学校には意味の無い・効率的ではないルールがあるのか」というものです。

D君の場合は、

  • なぜ「水曜・金曜の昼休みはクラス遊びをする」というルールがあるのか?
  • なぜ「シャープペンシル禁止」なのか?

といった疑問を持っていました。

これらの質問に対する根本的な答えは、「ルールが無いと適切に行動できない人が多いから」ということになります。

つまり、

・ 「水曜・金曜の昼休みはクラス遊びをする」
(理由)クラス遊びをしないと、クラスメイトとコミュニケーションが取れなかったり、身体を全く動かさなかったりする子がいるから
⇒一人一人が程よくクラスメイトとコミュニケーションを取り、自分で考えて適度に身体を動かすことができれば必要の無いルール

・ 「シャープペンシル禁止」
(理由)シャーペンを分解して遊ぶ子がいるから、もしくは正しい筆圧を習得できていないのにシャーペンを使ってやたらと芯を折ったり、文字が薄くなったりする子がいるから
⇒クラス全員が分解して遊びたくなる誘惑に打ち克てる、もしくは筆圧が調整できない場合は鉛筆を使うという判断ができれば必要の無いルール

というように、それぞれの子が自分で判断して行動できるのであれば、いずれのルールも必要の無いものと言えます。

D君の質問に対しては、まず「なぜそのルールがあるのだと思う?」とD君に考えさせるようにします。
そこでD君が「シャーペンを分解して遊ぶ子がいるから?」と答えたら、すかさず「シャーペンで遊ばないようにって言われて、我慢できる子ってどれくらいかな?」と想像させます。

もちろん、D君自身はシャーペンで遊ぶようなことはしませんが、クラスメイトの30人の顔を一人一人思い浮かべてみると、半分くらいはシャーペンで遊んでしまいそうだと予想できます。

また、筆圧のコントロールがまだ十分でないにもかかわらず、「皆が使っているから」「カッコいいから」とシャーペンを使ってしまう子も含めると、クラスメイトの2/3くらいはシャーペンを使用することで何かしら問題を起こしてしまいそうなことがわかります。

ここまで想像させると、D君自身も「『シャーペン禁止』のルールにも一定意味があるのではないか?」と気付き始めます。

そこでさらにD君に、「じゃあ、D君にだけ特別にシャーペンの使用を許可します!って先生が言ったらどう?」と聞いてみます。

授業を受ける前のD君であれば「嬉しい」「先生の判断は正しい」と答えたかもしれませんが、ルールが無い場合のシミュレーションを経たD君は、

「うーん…僕だけシャーペンを使っていたら、シャーペンを使うべきではない子も真似して使いだすかもしれないし。あと、ズルいって言ってくる子もいるかもしれないな」

と現実的な考え方ができるようになってきます。

ギフテッドのお子さまは、「周りの人も自分と同じくらい合理的な判断ができる」と考えていることが多く、そのため学校のルールに対しても、「それぞれがきちんと判断すればよい。だからルールは不要である」と考えていることが多いです。

ですが、前提となっている「周りの人も自分と同じくらい合理的な判断ができる」という点がそもそも現実的ではないことを実感させると、結果的に「ルールもある程度は必要である」という考えに辿り着ける場合が多くなっています。

D君からもいくつか学校のルールに関する質問を受けましたが、毎回このように、

  1. なぜそのルールがあると思うか?
  2. ルールが無いとどうなりそうか?

ということを考えさせ、「皆がD君並みに自分で考えて行動できるのであれば確かにルールは要らないが、実際のところD君のように考えて行動できる人はごく少数である」という結論をD君自身が見つけられるようにサポートしていきました。

その結果、学校のルールに関する質問は一時期から減っていき、プロ家庭教師に聞かずともD君なりにルールの意味を考えられるようになったようでした。

【ギフテッドの子がよくする質問③】なぜ分かっているのに授業を受けなければならないのか、学校に行かなければならないのか

【ギフテッドの子がよくする質問③】なぜ分かっているのに授業を受けなければならないのか、学校に行かなければならないのか

「なぜ分かっているのに授業を受けなければならないのか?」という質問は、質問・相談タイム用にD君が準備してきたメモではなく、雑談の中でふと出た話題でした。

ですが、この質問はギフテッドのお子さまにとって最も重要であり、D君が現在抱えている行き渋りの問題にも直結するため、非常に丁寧に答える必要があると考えました。

というのも、学校の本来的な意義は「授業を受けること」ですので、もしD君が授業を受けなくてよいという結論に至れば、当然ながら「学校に行かなくてよい」ということにもなってしまうからです。

ご家庭の方針は、「学校に行きながら社会性を学ぶ(ストレス耐性を付ける)」ということでしたので、D君自身にもこの“社会性を学ぶ”という点に着目してもらい、授業を受けことや学校に行くことの意味を自分なりに見つけてほしいと思いました。

そこでD君にまず、

「教科書の内容を理解するだけなら、D君は授業を受ける必要はないと思う」

と率直に伝えました。
「そうだよね!」と答えるD君に対し、講師からは加えて、
「でも、教科書の内容を理解することだけが、授業の目的じゃないと先生は思うんだ」

と伝えました。

「どういうこと?」
「学校で授業を受けていると、同い年の子たちが、D君よりも計算が遅かったり、漢字を覚えるのに時間が掛かったりするのが分かるよね」
「うん」
「お家で教科書を読んで勉強しているだけだったら、そういう『同い年の子がどんな感じか?』が分からなかったと思う」
「『同い年の子がどんな感じか?』が分かることって大事?」
「すごく大事だよ。別にD君に『自分は同い年の子より頭が良いんだ!』って自慢してほしいわけじゃなくてね。
これからD君が生きていくために、『周りがどんな様子か』を知ることがとても大切だと思うから、今このお話をしているんだ」

講師のいつになく真剣な話しぶりに、D君も聞き入ってくれています。

「『なんで筆算しなくちゃいけないの?』『なんでいちいちルールがあるの?』ってD君が質問してくれた時、いつも先生は『周りの子はどうかな?』って聞いていたと思う。
それは、学校の仕組みがD君みたいに自分でいろいろ考えて行動できる子じゃなく、自分で考えるのが苦手な子を基準にして作られているからだってことは、これまで説明してきたとおりだね」
「うん」
「この『自分で考えるのが苦手な子を基準に作られている』っていうのは、学校だけじゃなくて、社会全体の仕組みもそうなっているんだ。
つまり、学校は社会の縮図だってこと」

講師はノートに“縮図”という言葉と、その辞書的な意味を書いていきます。

“縮図”…現実の様相を、規模を小さくして端的に表したもの。

ギフテッドの出現率は人口の約2%です。

つまり、クラスにD君のように自分で考えて行動できる子はD君1人だけ(およそ50人に1人)ということになります。

そして、社会に出てからも「ギフテッドは人口の約2%」という割合は変わりません。
したがってD君は、これからも自分がごく少数派である環境の中で生きていかなければならず、その練習の場が学校という「社会の縮図」であると言えるのです。

「D君はこれから、中学校、高校、大学と進学していって、いずれは大人として社会で生きていくことになる。
その時に『自分で考えるのが苦手な人』がどんなことを思って、どんな行動を取るのかを知っていれば、いちいち驚いたり、イライラしたりせずに済む。
その練習のために、今、学校で授業を受けて周りの様子を知っておくことがとても大切なんだ」
「うーん、何となくは分かった。でも、学校の先生の話はやっぱりつまらないし、授業は退屈だなあ」
「そんなD君のために、先生から一つコツを教えてあげる」
「コツ??」
「それはね、『人間観察』だよ」

講師は先ほど書いた『縮図』の説明の隣に、『コツ:人間観察』と書き加えました。

「例えば、学校の先生が授業中に言い淀んだり、説明を飛ばしたり、質問に答えてくれなかったりするでしょ?」
「うん、よくある」
「そのときに、『なんで言い淀んだんだろう?なんで説明を飛ばしたんだろう?』っていう理由を分析するために、先生の目線や手先の動かし方までよく観察するんだ。クラスの皆の方を見ているのか、教科書に目線を落としているのか、板書の字はいつもどおりか、少し雑になっているのか…」
「そうすると、どうなるの?」
「先生のクセみたいなものが見えてくる。言い淀むときにいつも教科書に目を落としているなら、その内容を先生自身がまだしっかりと理解できていなかったり、説明に慣れていなかったりする。
板書の字が荒くなるのであれば、焦っていたり、何か予想外のことが起きて戸惑っているのかな…?とかね」
「すごい、探偵みたい!」
「先生だけじゃなくて、クラスメイトにも使えるよ。例えばクラスのY君とZ君がしょっちゅうケンカしていて面倒臭いって、D君は前に言っていたよね?」
「うん」
「じゃあ、Y君とZ君はいつもどんなタイミングでケンカになっているんだろう?本当に嫌いなら距離を取ればいいのに、なぜ取らないんだろう?とか、よく観察してみると面白いよ」
「確かにそれは不思議かも…調べてみたら面白いかもしれない」
「こんな感じで、周りの人の行動をよく観察して、その人の考え方や行動のパターンを見つけていくのは単純に面白いし、考え方や行動パターンが分かれば、『なんでそんなことになるんだ!』ってイライラすることも少なくなってくるよ」
「なるほど、ちょっとやってみようかな」
「是非やってみて。授業が退屈だったら、いろいろ人間観察してみると面白いと思うよ」

この日のお話だけで、D君が感じている学校の授業の退屈さを全て解消出来たわけではありません。

ですが、D君が講師に「学校の○○が退屈だ/おかしい」という愚痴をこぼしたときには、「それはなんでだと思う?」「どうして○○さんはそうしたんだろうね?」と応じ、D君が不満や愚痴ではなく「観察・分析」へと思考をシフトできるようにサポートしていきました。

こうした対話の積み重ねによって、D君の行き渋りは少しずつ改善の兆しが見えてきました

次の章で、その後の経過をご紹介します。

【ギフテッド実例】プロ家庭教師を利用してからの変化

【ギフテッド実例】プロ家庭教師を利用してからの変化

D君がプロ家庭教師メガジュンを利用し始めたのは、小学2年生の6月でした。

その後、1学期の間は週1~2日程度の欠席や行き渋りが続いていましたが、夏休み明けの2学期からは、以前よりも行き渋りが落ち着き、どうしても気持ちが乗らない日以外は休まないようになりました。

欠席する頻度は、体調不良を除けば月1回程度になりました。
D君のお母さまは「このままでは不登校になってしまうのではないか」と非常に不安に思われていましたが、2学期からはD君が順調に学校に通えるようになったため非常に喜んでおられました。

また、もう1点の変化として、学校のルールや先生に対する不満やイライラをお母さまにぶつけることも少なくなったそうです。

当初のご相談で「『習っていない漢字を使わないように』と言った先生に対して抗議してほしい」とお母さまに言って聞かなかったと伺っていましたが、漢字の件以外にも「先生はおかしい!お母さんはおかしいと思わないのか!」といつまでもお母さまに不満を言い続けたり、機嫌が悪い状態が続いたりすることが多かったそうです。

今でもご家庭でお母さまやお父さまに「学校でこんなことがあった。おかしいと思う」という話はするものの、以前のように怒りに任せた口ぶりではなく、「なぜそうなるのだろう?」と一歩引いた視点で話すことも増えてきたとのことでした。

お母さまやお父さまの目から見ても、D君がストレスを上手くかわせるようになっていることが分かり、最初に決めた方針である「学校に通いながら、上手くストレスに対応できる力を身に付ける」に沿ってD君がしっかりと成長できていることを嬉しく思う、とご両親から仰っていただくことができました。

実際に、D君のお母さまからは以下のようなご感想をいただきました。

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最近のDは、ほんの数か月前のDと比べて目に見えて様子が変わってきました。

以前は口を開けば学校や先生の愚痴ばかりで、私たちもどう対応して良いものか悩んでいましたが(Dの言うことにも一理あるため)、最近は「先生はこう考えているのではないか?」といった予想を私たちに話すようになりました。

きっと、Dなりに自分のストレスの原因を分析しようとしているのだと思います。
最初に先生からいただいたメールを見返してみると、「『なぜ学校は窮屈なのか』という一段上の視点を持ち、状況を客観視することで上手くストレスに対応できるようにサポートしていく」とありました。

あの時はこちらも一杯一杯で、『一段上の視点を持つ』ということが十分に理解できていませんでしたが、こうしてDの変化を見ていると、先生が仰っていたことはこういうことだったのだとはっきりと理解することができました。

Dのように高知能ゆえに学校に馴染みづらい子に対する支援については、私たちもインターネットなどでかなり調べましたが、なかなかしっくり来るサービスが見つからず、こちらには藁をもすがる思いでご連絡させていただきました。

「最悪の場合、Dは学校に行けなくても仕方がない。知的好奇心だけ何とか満たしてあげれば良いだろう」と考えていましたが、こちらの先生にはDがこれから生きていくために必要な力を長い目で見据え、モノの見方・考え方という根本的なところにアプローチするという、Dにとって本当に必要な学びを提供していただいたことに、夫婦とも心から感謝しています。

ここまでの授業をしてくださる先生は他にいないと思います。本当にありがとうございます。
これからも引き続きお世話になります。

よろしくお願いします。
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このような感想をいただき、私たちも非常に嬉しく思いました。

今後も引き続きご利用いただけるとのことでしたので、D君の次のステップである「中学受験」に向けて検討を進めることにしました。次の章で詳しくご紹介していきます。

【ギフテッド実例】中学受験に向けて

【ギフテッド実例】中学受験に向けて

D君のように知能が高いギフテッドのお子さまの場合は、中学受験をすることがオススメとなります。

中学受験をすることでギフテッドのお子さまは、

  • ギフテッドのお子さまにとっても歯ごたえのある、レベルの高い授業が受けられる
  • 知能が高い子どもたちが集まるため、話の合う友達を見つけやすい(中学受験塾に通う場合は、小学生段階から知能レベルが近い子と知り合える)
  • 知能の高い子どもを指導するノウハウが学校にある
  • 偏差値が高い学校は、生徒の自主性を重んじる自由な校風であることが多く、規則で雁字搦めにされない(ただし例外もあるため下調べは必須)

といったメリットを受けることができます。(参考:中学受験でギフテッドの才能を最大限に生かす方法|準備のコツと成功のポイント | 発達障害・ギフテッド専門のプロ家庭教師 メガジュン (pro-megajun.com))。

D君が進学することになる公立中学校を調べると、現在通っている小学校と同様に規模が大きく、少しやんちゃな子も多い学校でした。
小学校の間はD君のモノの見方・考え方にアプローチすることで何とか対応することができていますが、中学校になるとさらに荒れた状況になる可能性もあり、D君自身が変わるだけでは対応しきれない可能性もあります。

そこで改めてD君のお母さまに中学校受験を提案したところ、ご家庭としても中学受験については積極的に考えているとのことでしたので、早速具体的に話を進めていくことにしました。

通常、中学受験の場合は小学3年生の秋頃から受験勉強に取り掛かりますが、D君の場合はご家庭の方針がしっかりと固まっていましたので、小学2年生の段階から保護者さまとは志望校の検討などを進めていくことにしました。

D君は、規則に縛られず伸び伸びとした校風の学校と相性が良いように思われました。
また、自分と同じくらいの高い知能レベルを持った子どもたちと交流することで、より楽しく学校生活を送ることができると考えました。(ちなみに、今の小学校でD君が唯一おしゃべりするAさんもかなりの秀才で、D君の理路整然とした話しぶりにも臆することなく付いてきているとのことでした)

そこで私たちは、D君のお住まいの近隣の私立中学校と公立の中高一貫校を調べ、D君と相性が良さそうな学校を数校ピックアップしました。
今すぐに志望校を決める必要はありませんが、学校説明会やオープンキャンパス、口コミ情報などにアンテナを張ってもらい、少しずつ準備を進めていただければと考えたからです。

D君の小学校は規模が大きいこともあり、中学受験をする子もいらっしゃるとのことでした。
同級生や上級生で中学受験する子も多いため、「保護者同士のつながりも活用しながら、積極的に情報収集していきたいと思います。」とお母さまから心強いお言葉もいただくことができました。

当面は情報収集を中心に進めることとし、D君本人に対しては小2の冬~小3の春頃を目途に中学受験について提案することにしました。

D君は非常に高い知能を持っているため、受験勉強については概ね心配ないと言えます。
ただし、周りから強制してしまうと勉強が嫌になってしまう可能性もあるため、以下の2点の方針をご両親にお伝えしました。

  • D君自身が「この学校に行きたい」と思える下地をまずはしっかり整えること
  • 勉強は詰込み型にせず、知識について本質から丁寧に説明し、D君が「面白い!」と感じられることを大切にすること

ご両親も快く承諾くださり、まずはご両親でしっかりと情報を集めた上で中学受験についてD君に伝えることにしました。

また、D君が中学受験をする際の懸念点を敢えて挙げるとすれば、中学受験においては漢字のとめ・はね・はらいなどが厳しく見られる可能性があるという点になります。

D君は文字を手書きすることを「面倒だ、無駄だ」といってやりたがらないことが多く、とめ・はね・はらいについても「大人になったらどうせパソコンを使うのだから、細かく覚えることには意味が無い」と発言することがありました。

この点については、試験本番では減点されてしまうことをきちんと説明し、本人が納得した上で書き取り練習などに取り組めるようにフォローしていく必要があります。

とはいえ、D君と講師との間の信頼関係もかなり確かなものになってきましたので、これまでどおり丁寧かつ誠実に説明することで、D君もきっと理解して書き取り練習に取り組んでくれると期待しています。

加えて、現在D君に受けていただいているプロ家庭教師による「調べ学習×ディスカッション」の授業は、中学受験の勉強にも繋げることができます。
例えば、中学受験の理科は「地震・岩石・地層」「天体」「電気」などの分野に分かれているため、授業のテーマをこれに沿ったものに設定することで、中学受験に関連する知識を身に付けることができます。

プロ家庭教師の授業の最も大きな目的は「D君の知的好奇心を満たすこと」ですので、あくまでこの目的を最優先しつつ、タイミングを見計らいながら中学受験を意識したテーマを少しずつ取り入れていくことにしました。

この方針についても、ご両親には大変喜んでいただくことができました。
D君のご両親は、D君が楽しく学べることを非常に重視しておられましたので、我々としてもこの方針をご提案できて良かったと考えています。

【ギフテッド実例】D君の現在~浮きこぼれ問題の解決のポイント~

【ギフテッド実例】D君の現在~浮きこぼれ問題の解決のポイント~

D君は現在小学3年生で、行き渋りが再発することも無く、毎日学校に通うことができています。
また、中学受験については既に本人にお伝えしていて、D君自身も「前向きに頑張りたい」と言ってくれています。

D君に受験本番の問題を見せると、「解くのが大変そうだけど、面白そう」という感想が返ってきました。
D君は、相変わらず学校の授業で扱う問題の簡単さに辟易としているようですので、受験勉強がD君にとって良い刺激になればと思います。

また、D君が受験に前向きにチャレンジし、「中学受験して良かった」と思えるよう、我々も一層身を引き締めてD君のサポートに当たりたいと考えています。

私たちがD君のサポートを始めてから1年と数か月が経過しましたが、改めてD君との関わりにおいて重要であった点をまとめると、

  • D君が生きていく上で必要な力は、「ストレスに上手く対応する力」であることをご両親と最初に共有することができた。
  • 学校に配慮を求めることは難しいと判断し、D君自身の物事の見方や考え方にアプローチしていく方針とした。
  • D君のようなギフテッド児は論理的に説明すれば納得してくれることが多いという指導経験を活かし、学校のシステムの問題点や一般的な人の考え方や行動のレベルについて順を追って説明した。
  • D君が講師を信頼し、毎回の授業を楽しみにしてくれるよう、D君の質問にはいつも誠意を込めて丁寧に回答した。

といったものになります。

これからD君は中学受験という新たなステップに進んでいくことになりますが、私たちも引き続きこれらのポイントを大切にしながら、D君がこれからも伸び伸びと学び、成長していけるようサポートしていきたいと思います。

また、D君のように「学校の先生・ルールと折り合いが悪い」「学校の授業が簡単すぎて学校が嫌いになってきている」「学校に行きたがらない・行かなくなった」というギフテッドのお子さまのことでお悩みの方は、ぜひプロ家庭教師メガジュンにご相談いただければと思います。
初回はオンライン・無料で、お電話かZOOMでご相談させていただきます。

日本におけるギフテッド教育はまだまだ発展途上にあり、しっかりとした指導ノウハウを持ったギフテッド専門の塾や家庭教師の数はそう多くはありません。
私たちプロ家庭教師メガジュンでは、これまでの経験を活かしながら、目の前のお子さま一人一人にしっかりと向き合い、お子さまがより良い人生を送っていくために全力でサポートいたします。

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授業はオンラインでも承っていますので、全国からご利用いただけるほか、海外にお住まいの方や帰国子女の方にもこれまでご利用いただいた実績がございます。

「ギフテッドのことをどこに相談して良いかわからない」という方も、是非お気軽にお問い合わせください。

ギフテッド(高知能児・天才)サポートコース
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最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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