WISC-Vとは?検査内容やWISC-IVとの違い、発達障害との関連を徹底解説
この記事では、現在日本において最も広く利用されているウェスクラー式知能検査の最新版である「WISC-V」について詳しく解説します。
お子さまの学習や発達に関する悩みを抱える保護者さまにとって、知能検査はお子さまの特性を理解し、適切なサポートにつながるための重要な手がかりとなります。
特に、WISC-V(ウィスク・ファイブ)は、6歳から16歳のお子さまを対象とした知能検査で、学習の得意・不得意や、日常生活での困難さを把握するために広く活用されています。
WISC-Vは、言語理解・視空間認知・流動推理・ワーキングメモリー・処理速度の5つの領域にわたってお子さまの認知能力を総合的に評価する検査です。
また、従来のWISC-IVから大きな進化を遂げており、特にASD(自閉スペクトラム症)やADHD(注意欠如・多動症)などの発達障害を持つお子さまの特性をより正確に捉えることが可能となっています。
この記事では、WISC-Vの具体的な検査内容やWISC-IVとの違い、さらに発達障害のお子さまの支援における活用方法について詳しく解説します。
お子さまが最適なサポートにつながるための参考になれば幸いです。
▼目次
WISC-Vとは?|WISC-IVとの違いと概要
WISC-V(ウィスク・ファイブ)は、6歳から16歳のお子さまを対象とした知能検査で、教育現場や発達支援の分野で広く活用されています。
この検査は、お子さまの学習面における強みや弱みを明確にするだけでなく、発達障害や学習障害の診断・支援のためにも利用される重要なツールとなっています。
WISC-Vでは、お子さまの知的能力を測定するために、5つの主要な認知領域を評価します。
<WISC-Vの5領域>
- 言語理解
- 視空間認知
- 流動推理
- ワーキングメモリー
- 処理速度
言語理解や視空間認知、流動推理など、異なる領域ごとの能力を測定し、総合的にお子さまの知能を分析します。これにより、特定の分野での得意・不得意を見極め、教育や支援の方針の作成に役立てることができます。
WISC-Vは、以前のバージョンであるWISC-IVからかなり改良が加えられ、より精密かつ包括的にお子さまの特性を評価できるようになりました。
WISC-IVでもお子さまの認知機能を評価することができましたが、WISC-Vではより詳細で多面的な評価が可能になり、個々のお子さまの特性に応じた適切なサポートに活用しやすくなっています。
WISC-IVからWISC-Vの主な変更点
WISC-IVからWISC-Vの主な変更点としては、流動推理の追加や知覚推理の分離、視空間認知の導入などが挙げられます。
このような変更により、WISC-Vでは評価の精度や柔軟性が大幅に向上しました。
特に、発達障害や学習障害を持つお子さま一人ひとりの特性をより正確に理解し、適切な支援を行うためのデータを提供する点においては、かなり精度が高くなっています。
変更点の詳細について、以下で順に解説していきます。
流動推理(Fluid Reasoning)の追加
WISC-Vで新たに導入された「流動推理」の領域では、今までにない新しい問題や未知の状況に対して、柔軟に対応しながら論理的に推論する力を評価します。
この能力は、学習や日常生活において、状況に応じて柔軟な思考を求められる場面で必要になるものです。
従来のWISC-IVでは、こうした柔軟性や抽象的な問題解決力を評価する指標が不十分でしたが、WISC-Vではより正確に把握できるようになりました。
具体的には、視覚的なパターンや数的な問題を提示し、次に来るべき答えを推測させるなどにより、お子さまが新しい問題にどう対応するか、どのように論理を組み立てるかを評価します。
この流動推理の追加によって、学習障害を持つお子さまや創造的な問題解決能力に優れたお子さまの特性を明らかにすることが可能になりました。
知覚推理の分離と視空間認知の導入
WISC-IVでは「知覚推理」として1つの領域で評価されていた能力が、WISC-Vでは視空間認知と流動推理に分けられました。
視空間認知は、視覚的な情報を正確に捉え、空間的な関係を理解し、問題を解決する能力を評価します。
例えば、図形のパターンを再現したり、空間の構造を理解して解決したりする課題を通じて、視覚的な認識力や構成力を測定します。
これにより、従来の「知覚推理」では一つにまとめられていた視覚的問題解決力と、論理的推論力が個別に評価されるようになり、より詳細な認知機能の分析が可能になりました。
お子さまが図形や空間的な課題をどのように解決するかを評価できるため、建築やデザインなど、将来的に空間認識が求められる分野での適性を把握することができます。
ワーキングメモリーの評価項目の変更
ワーキングメモリーは、お子さまが一時的に情報を保持し、その情報を使って問題を解決する能力を測定します。
WISC-Vでは、このワーキングメモリーの評価項目が刷新され、より実生活に近い形で情報保持と操作能力が評価されるようになりました。
具体的な課題の内容としては、提示された数字や単語を記憶し、その後、特定の順序で復唱したり、操作したりするなどがあります。
この変更により、お子さまが学習や日常生活の場面でどのように情報を保持し、それを活用するかをより正確に把握できるようになっています。
ワーキングメモリーが弱い場合、学習における持続的な集中力や課題の遂行に困難を感じることが多いため、この評価を基に適切な支援策を立てることが重要です。
より多様なお子さまに対応した改善
WISC-Vは、さまざまな特性を持つお子さまに対応できるよう、その設計が大きく変更されました。
従来のWISC-IVでは、一部の発達障害や学習障害を持つお子さまに対して評価が難しかったケースがありましたが、WISC-Vではその点が大幅に改善されています。
特に、ASD(自閉スペクトラム症)やADHD(注意欠如・多動症)のお子さまに対する評価が精密になり、その特性に応じた個別のサポートが立てやすくなっています。
例えば、視覚的なタスクで得意な部分が見られた場合、それを学習や日常生活の中でどう活かすかを具体的に考えることができるようになりました。
他にも、処理速度が遅いお子さまには、テストの時間を延長したり、学習をよりゆっくりとしたペースで進めたりするなど、必要なサポートについて判断する際に役立てることができます。

WISC-Vの各領域と検査方法の詳細解説
WISC-Vは、お子さまの認知能力を評価するために5つの領域に分けて検査が行われます。
それぞれの領域は、異なるスキルや認知機能を測定するために設計されており、お子さま一人ひとりの強みや弱みを詳細に把握することができます。
以下では、各領域とその具体的な検査方法について詳しく解説します。
言語理解(Verbal Comprehension Index, VCI)
言語理解は、お子さまが言語を使って問題を理解し、適切に答える能力を測る領域です。
この領域の評価により、お子さまの言語能力や語彙力、社会的な知識の理解度を把握することができます。
特に、日常生活で必要なコミュニケーション能力や抽象的な概念をどの程度理解しているかを知ることができ、教育現場や発達支援での指導に役立てることができます。
主な検査内容
「言語理解」の主な検査内容は以下のとおりです。
○類似
2つの単語を比較し、どのように似ているかを説明する課題です。例えば、「りんご」と「オレンジ」について、両者が「果物」であるという共通点を見つける能力が求められます。この課題では、言語的な推論力と抽象的な思考力が評価されます。
○語彙
提示された言葉の意味を説明する検査です。例えば、「空」という言葉の意味をお子さまが自分の言葉でどのように表現できるかを評価します。語彙力だけでなく、その言葉を実生活でどう理解しているかも測定されます。
○理解(選択検査)
日常生活の場面や社会的な状況に関連する質問に対して、お子さまが適切な回答をできるかを測定します。例えば、「なぜ学校では先生の話を聞くことが大切ですか?」などの問いに対する理解度が評価されます。
<この領域でわかること>
- 言語的な推論力
- 言語の概念理解と応用力
- 語彙力と社会的な知識
視空間認知(Visual Spatial Index, VSI)
視空間認知は、視覚的な情報を処理し、空間的な課題を解決する能力を測定します。
この領域では、お子さまが視覚情報をどのように捉え、物の配置や関係性を把握しているのかを評価します。
視覚的な構造を理解し再現する能力は、数学や理科といった科目だけでなく、日常生活における空間認識や手先の器用さにも関係します。
主な検査内容
「視空間認知」の主な検査内容は、以下のとおりです。
○積み木模様
複数のブロックを使って、提示された模様を正確に再現する課題です。この検査では、視覚的なパターンの認識力や手と目の協調力が求められます。
お子さまが提示された模様を理解し、それを実際に手で組み立てる過程を通して、空間把握能力と構成力を評価します。
○行列推理
複雑な図形やパターンの中から欠けている部分を見つける検査です。図形の構造や関係性を理解し、どのパーツが当てはまるかを推論します。
視覚情報の分析と論理的な推論力を使って解答する必要があり、問題解決能力が評価されます。
<この領域でわかること>
- 図形や空間的な関係の認識力
- 手と目の協調性
- 空間的な課題解決能力
流動推理(Fluid Reasoning Index, FRI)
流動推理は、未知の問題に対して柔軟な思考で対応し、論理的に解決する能力を評価します。
既存の知識に頼らず、状況に応じて新しい解決方法を導き出す力を測定します。
この領域は、創造的な問題解決能力や抽象的な思考力を反映するため、日常の課題解決だけでなく、学習面においても重要な指標となります。
主な検査内容
「流動推理」の主な検査内容は以下のとおりです。
○行列推理
複数の図形やパターンの中から、次に続く図形を論理的に推測する課題です。視覚的なパターンを読み取り、次に来るべき図形やパーツを論理的に推論します。
視覚的な推論力と流動的な思考能力が評価されます。
○算数
口頭で提示された数的な問題を解きます。この検査では、数的な推論力や論理的思考力を使って、素早く解答する能力が試されます。
<この領域でわかること>
- 論理的思考力
- 新しい状況や未知の問題に対する柔軟性
- 抽象的な推論力
なお、視空間認知の領域においても「行列推理」の検査がありますが、評価する認知機能がそれぞれ異なります。
視空間認知における行列推理は、主に視覚的なパターンや空間的な関係を認識し、正確に捉える能力を評価します。図形やパターンの中から、視覚的に欠けている部分を推測することで、空間認識力や視覚的な情報処理能力が試されます。
この場合、空間における構造の理解や、視覚的なパターンの全体像を捉える力が重視されます。
一方、流動推理における行列推理は、抽象的な問題に対する推論能力や論理的な問題解決能力を評価する目的で行われます。
そのため、与えられた図形やパターンの中で、論理的に次に来るべきものを推測する力が試されます。
流動推理の場合は、視覚情報だけでなく、図形やパターンの背後にあるルールや規則を理解し、それを基に推論して答えを導く能力が重視されます。
ワーキングメモリー(Working Memory Index, WMI)
ワーキングメモリーは、情報を一時的に保持し、必要に応じてそれを操作する能力を評価します。
この領域では、記憶した情報を短期的に処理し、学習や課題に応じて使用する力が測定されます。
ワーキングメモリーは、学習や日常生活において複雑なタスクを遂行するために不可欠で、特に計算や読解など、複数の要素を同時に扱う場面で重要になります。
主な検査内容
「ワーキングメモリー」の主な検査内容は以下のとおりです。
○数唱(順唱/逆唱)
提示された数字列を順番通りに繰り返したり、逆順で言い返したりする課題です。この検査では、短期的な記憶力と情報操作能力が評価されます。
お子さまが正確に記憶し、その情報を意識的に操作できるかがポイントです。
○算数
口頭で提示された計算問題を、記憶しながら解決する課題です。複数の数字や操作を同時に扱うことで、記憶力と計算力、持続的な注意力を評価します。
<この領域でわかること>
- 記憶力と注意力
- 情報を一時的に保持し、操作する能力
- 課題に取り組む際の持続力
なお、流動推理とワーキングメモリーの両方に「算数」の検査がありますが、それぞれの目的や評価する内容は異なります。
同じ「算数」という名前が使われているものの、実際には異なる認知機能を測定するために設計されています。
まず、流動推理における「算数」の課題は、論理的思考力や問題解決能力を評価するために使用されます。
この検査では、計算そのものだけでなく、数的な問題を解決するために、どのように推論して答えを導き出すかが重視され、与えられた情報を使って未知の問題を論理的に解く過程を評価します。
したがって、流動推理における「算数」は、抽象的な思考力や柔軟な推論能力を試すものになります。
一方、ワーキングメモリーにおける「算数」の課題は、短期的に情報を保持し、それを操作する能力を測るために使用されます。
この検査では、口頭で与えられた計算問題を頭の中で保持しながら解くことが求められます。
計算式そのものを記憶し、頭の中で数を操作しながら答えを出すため、ワーキングメモリーにおける「算数」は、短期記憶と集中力を評価することになります。
処理速度(Processing Speed Index, PSI)
処理速度は、簡単な視覚的・運動的タスクをどれだけ早く正確にこなせるかを評価します。
この領域では、お子さまが視覚的な情報を処理し、素早く反応する力を測定します。
処理速度が高いと、学習や日常生活でのタスクを効率的に進めることができ、低い場合は時間をかけた指導や支援が必要となります。
主な検査内容
「処理速度」の主な検査内容は以下のとおりです。
○符号
特定の記号や数字に対応する記号を紙に記入する作業です。限られた時間内に、視覚情報を正確に処理し、手で記入する作業を繰り返すことで、スピードと正確性が評価されます。
○記号探し
一連の図形の中から、指定された記号を素早く探し出す課題です。視覚的な注意力と反応速度が試され、時間内にどれだけ多くの正確な回答ができるかを評価します。
<この領域でわかること>
- タスクのスピードと正確性
- 視覚的な情報処理能力
- 集中力と迅速な反応力
WISC-Vの各領域の結果は、お子さまの得意・不得意を把握し、適切な学習支援や発達支援を行うための貴重な情報となります。
例えば、ワーキングメモリーが弱いお子さまには、情報整理のスキルを育成する支援を、処理速度が遅いお子さまには、時間をかけてじっくり学べる環境を整えることが効果的な支援となります。
具体的な支援方法については、以下の「3.WISC-Vと発達障害の関連性」「4.WISC-Vを活用した発達障害への支援方法」で詳しく解説していきます。

WISC-Vと発達障害の関連性
WISC-Vは、お子さまの知能や認知機能を多角的に評価する検査です。
特にASD(自閉スペクトラム症)やADHD(注意欠如・多動症)など、発達障害を持つお子さまの特性を深く理解し、一人ひとりに応じた個別支援計画を立てる上では非常に重要です。
発達障害のあるお子さまの場合、従来の知能検査だけでは捉えにくい特定の認知プロファイル(考え方や理解の仕方の傾向(※))が見られることがあります。
WISC-Vの結果を詳細に分析に分析することで、お子さまの認知能力の強みや弱みを明確にし、適切な支援の出発点とすることができます。
認知プロファイルとは、お子さまがどのように物事を考えたり、情報を処理したりするか、その得意な部分や苦手な部分をまとめた全体像のことです。
「視覚的なパターンを理解するのが得意な一方で、言葉を使って説明するのが苦手」といったように、お子さまの強みと弱みを見える化することができます。
これにより、お子さまがどのような認知能力を持っているかが詳しくわかり、その特性に合った学習方法や支援策を考えることができるようになります。
こうした客観性の高い情報を基に、学校での学習支援や家庭でのサポート方法を考えていくことが大切です。
発達障害のお子さまは、知能や認知機能において強みと弱みの差が大きいことが多く、また、それらの凸凹は通常の知能検査では把握しにくい場合があります。
WISC-Vでは、5つの主要な領域を個別に評価することで、こうした特性をより詳細に理解し、支援に役立つ具体的な情報を得ることができます。
ASD(自閉スペクトラム症)とWISC-V
ASDのお子さまは、知能に大きなばらつきが見られることがあり、特定の分野で非常に優れた能力を持つ一方、他の領域では困難を抱える場合があります。
強みと弱みの差異が大きいことにより、ASDのお子さまは個別のサポートが必要となることがあります。
WISC-Vではその差異を明確にし、具体的な支援策を立てるための基礎的な情報を得ることができます。
ASD(自閉スペクトラム症)のWISC-V結果の傾向
ASDのお子さまは、視空間認知や流動推理の領域で特に高い得点を示すことがあります。
パズルや図形認識、論理的推論力が強みとなることが多く、視覚的な情報を扱うタスクで優れたパフォーマンスを発揮することも多いです。
こうした能力は、学習や日常生活で活用できるスキルであり、得意な分野を伸ばすために活かすことができます。
例えば、図形を扱う科目や論理的思考力が必要な課題において、高い能力を発揮することが期待されます。
一方で、ASDのお子さまは、ワーキングメモリーや言語理解の領域では弱点が見られることが多いです。
ASDのお子さまは、言語によるコミュニケーションに困難を感じたり、会話の流れや指示を理解したりするのが難しい場合があります。
これにより、口頭での指示を記憶して実行することが苦手な場合が多く、ワーキングメモリーや言語理解の得点が低くなる傾向にあります。
そのため、図やイラストで分かりやすく指示の内容を示したり、シンプルな言葉で伝達したりするなどの支援が効果的です。
また、現在の状況や見通しを具体的に説明したり、学習においても絵や図を活用したりする方法が推奨されます。
ADHD(注意欠如・多動症)とWISC-V
ADHDのお子さまは、注意力や衝動性の調整が難しく、学習や日常生活において「落ち着きが無い」「集中できない」などの課題に直面することがよくあります。
WISC-Vでは、処理速度やワーキングメモリーの評価を通じて、こうした課題を明確にし、必要な支援を提供する手がかりを得ることができます。
ADHD(注意欠如・多動症)のWISC-V結果の傾向
ADHDのお子さまは、処理速度の評価で低いスコアを示すことが多いです。
これは、与えられた課題に集中して素早く取り組むことが難しく、注意を持続させるのが困難なためと考えられます。
処理速度が遅い場合には、短い時間での集中が難しいため、時間をかけた学習方法や、小さなタスクに分けて取り組むといった方法が有効です。
例えば、長時間の学習ではなく、短い休憩を挟みながら取り組むことで、効率を上げることができます。
また、ADHDのお子さまは、ワーキングメモリーの評価でもしばしば低いスコアを示します。
口頭での指示を記憶し、それを正確に実行するのが難しいため、複数の指示を一度に理解するのが困難になります。
そのため、指示は段階的に一つずつ出すようにし、さらに図やイラストで視覚的に補助したり、チェックリストやタイマーなどを活用したりすることで、よりスムーズに課題に取り組めるように支援することが重要です。
発達障害の早期発見とWISC-Vの役割
WISC-Vによって、発達障害であるかどうかを直接診断することはできません。
ですが、その結果を通じて、発達障害の早期発見や適切な支援計画の作成につなげることができます。
WISC-Vの検査結果は、ASDやADHDの疑いがある場合にさらに詳細な診断や評価を行うための指針となることが多く、早期発見につながります。
例えば、視空間認知や流動推理が強い一方で、言語理解やコミュニケーションに困難さが見られる場合は、ASDの可能性が考えられます。
WISC-Vを通じてこれらの特性を早期に捉えることで、適切な支援や診断につながることできます。
特に、幼少期にASDの特性を早期に把握することは、将来の教育面・発達面での支援において非常に重要であるとされています。
また、処理速度やワーキングメモリーで一貫して低いスコアが示され、注意力や集中力の問題が見られる場合には、ADHDが疑われます。
このような場合、WISC-Vの結果を踏まえて、専門医によるさらなる診断や支援策の導入を検討することになります。
早期発見により、適切な対応を早くから取り入れ、お子さまの学習や生活の質を向上させることができます。
気になることがある場合は、早めに専門機関や医療機関に相談し、適切なサポートにつながることが大切です。

WISC-Vを活用した発達障害の子どもの支援方法
WISC-Vの結果は、発達障害を持つお子さまへの支援策を検討する上で非常に重要な情報源となります。
この章では、具体的な支援方法について紹介していきます。
WISC-Vを活用した発達障害への支援方法①学習環境の調整
発達障害のお子さまにとって、得意な部分を伸ばし、苦手な部分をサポートできるように学習環境を整えることはとても大切です。
WISC-Vの結果を参考にして、目で見てわかりやすいように工夫したり、学習の進め方を少し変えたりするだけでも、学びやすさがぐっと増すことはとても多いです。
例えば、図や絵を使って説明したり、パズルやブロックを使って手を動かしながら学んだりする方法が効果的です。
視覚的な情報を処理するのが得意なお子さまには、文章を読むだけよりも、イラスト付きの教材や、カラフルな図を使った説明のほうが理解しやすくなります。
また、授業中に作業の手順を絵カードやチェックリストで示してあげると、次に何をすればいいのかが目で見てすぐわかるので、安心して進められます。
こうした工夫を取り入れることで、自分のペースで無理なく学べる環境を整えることができます。
WISC-Vを活用した発達障害への支援方法②家庭でのサポート
ご家庭でも、WISC-Vの結果を活かしてお子さまの特性に合わせたサポートをしていくことが大切です。
例えば、ワーキングメモリーが弱いお子さまには、一度にたくさんの指示を出さないようにするなどがあります。
「これをやって、その後にあれもやってね」と一度に指示を出すと、お子さまは混乱してしまうことがあります。このような場合には、「まずはこれをやろうね」と一つずつ伝えてあげるようにしましょう。
そして、指示どおりにできたら「○○ができたね」と褒めてから、「次は○○をしよう」とさらに声をかけます。
このように、一つひとつの指示をスモールステップとして捉え、指示どおりに行動できたらその都度褒めることにより、お子さまは小さな達成感を得ることができます。
すると、お子さまは「自分にもできるんだ」「次も頑張ろう」という気持ちになり、指示どおりに行動することに対するモチベーションを上げることができます。
ADHDのお子さまは、大人から注意を受けることが多く、「自分は何をやってもどうせダメだ」と自己肯定感が下がったり、自信が無くなってしまったりすることがあります。
自己肯定感や自己効力感が低いと、物事に前向きに取り組むモチベーションも上がらず、困りごとの改善や学力の向上につなげることが難しくなってしまいます。
ですので、ADHDのお子さまとの関わりにおいては、「小さなことでも褒めて肯定する」という形でお子さまにとってのスモールステップを可視化し、自己肯定感や自己効力感を育むことを意識していただければと思います。
また、処理速度が遅いお子さまには、ゆっくり時間をかけて取り組める環境を整えてあげることが効果的です。
急かさず、落ち着いて進められるようにすることで、自分のペースで学んでいけるようになります。
お子さまに合った進め方で取り組むことで、お子さま自身も成功体験を得ることができ、学習が楽しくなって前向きに取り組めるようになることがとても多いです。
WISC-Vを活用した発達障害への支援方法③専門的な支援機関との連携
発達障害のお子さまをサポートするには、学校だけでなく、医療機関や専門の支援機関と協力することもとても大切です。
例えば、WISC-Vの結果を基にして、学校では通級指導を受けられることがあります。
通級指導では、普段の授業とは別に、特別な教室で個別の指導を受けながら、学習やコミュニケーションの面での困りごとをサポートしてもらえます。
これにより、学校生活や日常生活での困りごとを軽減し、さまざまな活動に自信を持って参加できるようになることを目指します。
また、放課後等デイサービスも、楽しく学びながら他者との関わり方を身につける場として活用できます。
放課後等デイサービスでは、遊びやグループ活動を通じて、他のお子さまと一緒にコミュニケーションスキルや自己表現の練習ができるプログラムが取り入れられています。
例えば、ソーシャルスキル・トレーニングなどの活動を通して、相手の気持ちを理解したり、自分の思いを上手に伝えたりする力を身につけることができます。
さらに、放課後等デイサービスでは、感覚統合療法や運動を使った活動なども行われていることがあり、体を動かしながら集中力や協調性を伸ばすことができます。
こうした専門的な支援や療育は、家庭だけ・学校だけでは難しい面があるため、ぜひ医療機関や専門機関と連携してサポートを受けていただければと思います。

WISC-Vと発達障害のまとめ
この記事では、WISC-Vの概要や発達障害との関係について詳しく解説してきました。改めてポイントをまとめると、以下のとおりです。
<POINT>
- WISC-Vでは、お子さまの知能や認知能力を5つの領域で評価できる
- WISC-Vは、発達障害を持つお子さまの特性を詳細かつ正確に把握するのに役立つ
- WISC-Vは、ASDやADHDの特性を捉えるための効果的なツールとして広く利用されている
- WISC-Vの結果は、個別の学習支援や生活サポートの計画を立てる際に役立てることができる
私たちプロ家庭教師メガジュンでは、長年にわたり発達障害のお子さまのサポートを行ってきました。
学習指導だけでなく、コミュニケーションスキルや生活習慣の改善など、様々な面での支援を承っています。
「発達障害だから~」と決めつけるのではなく、また、知識だけに頼り切るのではなく、目の前のお子さまと真摯に向き合い、一人ひとりの状態を丁寧に把握しサポートしてまいります。
- 発達障害について相談しても、一般的なことしか答えてもらえず困っている
- 悩みや困りごとを聴いてもらうだけでなく、具体的な改善策を教えてもらいたい
などのお悩みがある方は、ぜひ一度プロ家庭教師メガジュンまでお問合わせください。
また、授業や面談はオンラインでも承っているため、全国各地からご利用いただけます。初回の授業・面談は無料ですので、オンラインで授業が受けられるか不安な方もお気軽にお問合せください。
一人でも多くのお子さまが、自分らしく人生を歩んでいけるよう、一同全力でサポートしてまいります。
最後までお読みいただきありがとうございました。