発達障害で通常学級を選ぶ時の注意点!メリット・デメリットを徹底解説

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    発達障害のお子さまの保護者さまで、通常学級を選ぶべきか、それとも特別支援学級を選ぶべきか、悩まれている方は多いのではないでしょうか。

    特別支援学級では丁寧な指導を受けられるというメリットがありますが、通常学級でしか得られない経験もありますし、お子さまの特性との相性も大切なポイントになります。

    そこでこの記事では、特別支援学級と通常学級、どちらを選ぶべきか悩まれている保護者さまに向けて、判断のポイントとなる点を解説していきます。

    発達障害のお子さまの支援に長年携わってきたプロ家庭教師ならではの視点で解説していきますので、ぜひ最後までお読みいただけますと幸いです。

    発達障害専門のプロ家庭教師
    妻鹿潤
    ・16年以上1500名以上の指導実績あり
    ・個別指導塾の経営・運営でお子様の性質・学力を深く観る指導スタイル
    ・yahooやSmartNews、Newspicksなどメディア向け記事も多数執筆・掲載中

    発達障害の子どもが通常学級で受けられる支援

    発達障害の子どもが通常学級で受けられる支援

    通常学級への就学を選んだ場合でも、発達障害に対して全く支援が受けられないわけではありません。

    障害の特性に応じて追加の教員が配置される場合もありますし、学習障害のお子さまの場合は、デジタル教科書やキーボード入力など、補助ツールの使用が認められることもあります。

    これらの支援は「合理的配慮」と呼ばれ、2016年4月に「障害者差別解消法」が施行されたことから、学校においても一人一人の困りごとに合わせた「合理的配慮」が義務付けられることとなりました。(厚生労働省における障害を理由とする差別の解消の推進|厚生労働省 (mhlw.go.jp)

    このように制度面の改革が進められている一方、制度が整っているからといって必ずしも理想的な環境が実現されているとは限りません。

    発達障害の子どもたちを題材とした漫画『リエゾン』の34~37話では学習障害の男の子の様子が描かれていますが、「タブレットの読み上げ機能を使いたい」という家庭の意向に対し、学校の先生は「周りからズルいと言われたら本人が辛いのでは?もう少し考えて」と承諾を渋っています。

    この描写は、現在の学校現場の様子を非常にリアルに表しています。前例の無い支援について学校は躊躇する場合も多く、残念ながらその責任を「周りの目」という形で本人やクラスメイトに転化してしまうケースも少なくありません。(リエゾン-こどものこころ診療所-|モーニング公式サイト – 講談社の青年漫画誌 (kodansha.co.jp)

    もちろん、特別支援教育に理解があり、先進的に取り組んでいる学校もあるでしょう。

    しかしながら、担当の先生(特別支援教育コーディネーター)や校長先生の采配によるところが大きいため、「実際に学校の様子を見る」「在校生の保護者の話を聞く」など、保護者さま自身の目と足を使って情報を集めることが何よりも大切です。

    特別支援の対象となる子どもたちは増加傾向

    特別支援の対象となる子どもたちは増加傾向

    「通常の学級に在籍する小中学生の8.8%に発達障害の可能性がある」というニュースが記憶に新しい方も多いのではないでしょうか。

    これは、文部科学省が2022年に実施した「通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査」に基づくもので、支援の必要な子どもたちの割合が増加傾向にあることを示しています。(参考:通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査結果(令和4年)について:文部科学省 (mext.go.jp)小中学生の8.8%に発達障害の可能性 文科省調査: 日本経済新聞 (nikkei.com)

    一方で、特別支援学級や特別支援学校など、通常学級以外に在籍する子どもたちの数も年々増加しています。つまり、「特別な支援を必要とする子ども」は通常学級・特別支援学級・特別支援学校のいずれにおいても増加傾向にあり、対応できる教員の数や教室などの設備面の整備が間に合っていない現状にあります。

    この背景には、

    ① より丁寧な支援を求める保護者が増えていること
    ② 健診の際の丁寧なスクリーニングや相談機会が提供されるようになったこと

    があると考えられます。

    ①については、主に特別支援学級や特別支援学校の在籍者増に関係するものです。特別支援学級や特別支援学校では、個別の指導計画に基づいた丁寧な支援を受けることができます。
    そのため、きめ細かな指導を求めて積極的に特別支援学級・特別支援学校を選択する保護者も増えており、在籍者の増へとつながっています。

    また、特別支援学級や特別支援学校は1学級当たりの人数が6~8人と非常に少ないため、在籍者が増えると、教室も担任の先生もどんどん増やしていかなければなりません。人材も設備もすぐに増やせるものではないため、「特別支援学級(学校)に就学したい」という希望が必ずしも叶えられないのは、こうした背景によるものとなります。

    ②については、1歳半健診や3歳児健診の際に、発達障害に対してより丁寧な検査を行う自治体や、子どもの発達に不安がある保護者への情報提供、専門家への相談機会の提供などを積極的に行う自治体が増えていることが関係しています。

    当然のことながら、丁寧なスクリーニングによって幼児期から発達障害の特性が明らかになるケースが増えますし、保護者が発達障害の知識を得ることで「もしかして、うちの子は特別な支援が必要では?」と積極的に相談し、支援につながることができるようになります。

    特性が早期に明らかになり支援につながれること自体はとても良いことなのですが、それを受け入れる体制が整っていないことが大きな問題となっています。

    学校は既にパンク状態で、ギリギリのやりくりが続いています。人材の確保と設備整備という問題を根本的に解決することが最も優先されるべきではありますが、「来年小学生になります!」というお子さまに対して、「先生と教室が揃うまで5年待っててね」というのは無理な話です。

    結果として現在の教育現場では、

    • 特別支援に理解の無い先生が特別支援学級を受け持ったり、通常学級で指導したりしている
    • 先生の数がそもそも足りない
    • 教室が足りず、パーティションで区切って無理やり授業を行っている

    といった事態が生じています。

    このような状況の中で、保護者の方ができる最適な選択は何か、次の章から具体的に解説していきます。

    発達障害で特別支援学校に就学はできる?特別支援学級との違いは?
    発達障害で特別支援学校に就学はできる?特別支援学級との違いは?
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    発達障害のお子さまが通常学級を選ぶ時の8つの注意点

    発達障害のお子さまへの支援が完璧とは言えない昨今の状況において、保護者さまができることは、

    • お子さまの特性と「この先どうなってほしいか」を明確にする
    • 自分の目と足で情報を集める
    • 家庭でできる支援や教育をしっかりする

    の3点に集約できます。

    この3つの原則をしっかり守っていただければ、たとえ学校の特別支援教育が不十分であっても、合わない先生に当たってしまっても、お子さまは必ず前向きに成長していくことができます。

    以下では、これらの原則を踏まえながら、通常学級での就学を選ぶ際の具体的なポイントを解説していきます。

    発達障害のお子さまが通常学級を選ぶ時の8つの注意点①45分間、自席で座って過ごせるか

    発達障害のお子さまが通常学級を選ぶ時の8つの注意点①45分間、自席で座って過ごせるか

    発達障害のお子さまが通常学級での就学を検討する際には、まず「45分じっと座って過ごすことができるか」を確認しましょう。
    じっと座っていることが難しく、立ち歩くだけでなく教室を飛び出してしまうような場合は、基本的には通常学級ではなく特別支援学級に就学することが望ましいと言えます。

    ただし、授業に集中するのは難しくても、お絵描きやパズルをしながらであれば座っていられる場合は、通常学級で過ごすことも選択肢になり得ます。授業の内容については補習が必要となりますので、結果的に通級指導の形に落ち着くことになるでしょう。

    また、立ち歩きや教室からの飛び出しといった「積極奇異型」ではなく、静かに座っていることができるお子さまの場合でも、授業は全く聞いておらず、ぼーっとしたり空想に耽ってしまったりするケースもあります。

    元々の知能が高く、授業を聞いていなくてもテストの問題が解けるのであればさほど心配する必要はありませんが、授業に集中できず勉強についていけていない場合は、通級指導を受けるか、加配の先生に横についてもらい、こまめに声掛けしてもらうなどの支援を受けると良いでしょう。

    「じっと座っていられないから」「集中できないから」と通常教室での授業を諦めるのではなく、本人がしっかりと勉強に取り組むにはどうすれば良いかという視点で支援の方法を考えていきましょう。

    発達障害のお子さまが通常学級を選ぶ時の8つの注意点②9歳の壁を覚悟しておく

    発達障害のお子さまが通常学級を選ぶ時の8つの注意点②9歳の壁を覚悟しておく

    9歳(小学3年生)になると、勉強の内容が一気に難しくなります。単純な書き取りや計算だけではなく、頭の中で抽象的な概念を操作することが求められるため、勉強でつまずくお子さまが非常に増えるタイミングです。

    小学2年生までは勉強についていけていたお子さまも、内容が高度になることで、

    勉強が難しい

    解けない、間違えてしまうストレス

    多動性・衝動性、他者への攻撃性など発達障害の特性が強く出る

    授業に集中できず、ますます勉強が苦手になる

    という悪循環に陥ってしまうケースがよくあります。

    知能検査(WISC-IV検査)の指標に偏りがあったり、全体的な数値が低めであったりするお子さまの場合は、9歳の壁に当たる可能性が高いため、「勉強がしんどくなったらどうするか」ということをあらかじめ考えておきましょう。

    具体的には、小3から特別支援学級に在籍を変えたり、通級指導教室で教科学習のフォローも取り入れたりするなどの方法が考えられます。

    9歳の壁は誰しもが当たってしまう可能性のあるものです。「小2までは上手くやれていたのに」とショックを感じてしまうかもしれませんが、落ち込み過ぎず、前向きに対策を考えていきましょう。

    発達障害のお子さまが通常学級を選ぶ時の8つの注意点③就学形態は途中で変えられる

    発達障害のお子さまが通常学級を選ぶ時の8つの注意点③就学形態は途中で変えられる

    小学校1年生の時に通常学級、あるいは特別支援学級を選んだからと言って、その後もずっと通常学級/特別支援学級に在籍し続けなければならないわけではありません。
    学年が上がり、勉強の内容が難しくなってきたら特別支援学級に変えたり、逆に学校の生活に馴染んできたら通常学級に戻ったりといった「学級移籍」が可能な場合もあります。

    私の知っているお子さまの中にも、小学6年生から特別支援学級に移籍された方がいらっしゃいます。そのお子さまは、必要に応じて通級指導を受けていたのですが、5年生ごろからは勉強についていきづらくなり、算数のドリルや漢字の書き取りといった日々の宿題も、何時間もかけないと終わらない状況でした。

    お子さまの負担が大きいことを鑑みて、保護者さまと学校で相談の上、6年生からは特別支援学級に移籍することにしたそうです。特別支援学級では自分のペースで勉強を進めることができ、宿題も本人にとって適切な量が出されるため、「支援級に移籍して良かった」と本人も保護者さまも仰っていました。

    また、別のお子さまのケースで、「初めから通常学級にしておけば良かった」と仰っている方もいらっしゃいました。そのお子さまは幼稚園の頃から多動傾向が強く、ADHDと診断されたため、小学1年生の頃から手厚いサポートを受けられることを期待して、特別支援学級を選ばれました。

    しかし、そのお子さまは「ある程度の試練を与え、自分で解決していくこと」で成長していくタイプのお子さまでした。特別支援学級では、何から何まで先生がサポートしてくれたため、本人が自ら課題を解決する場面がほとんどありませんでした。

    結果として、幼稚園の頃にできていた簡単な身の回りのことも、お子さまはやらないようになってしまいました。これではいけないと保護者さまが気付き、小2からは通常学級で過ごすことにしたそうです。

    以上の例のように、お子さまの成長に合わせて在籍級を変えることも必要です。
    ただし、学校によっては、「『通常級→支援級』は前例があり可能だが、逆は難しい」という場合もあります。途中で在籍級を変えることが可能かどうか、事前に確認するようにしましょう。

    発達障害のお子さまが通常学級を選ぶ時の8つの注意点④学校と綿密に連絡を取り合う

    発達障害のお子さまが通常学級を選ぶ時の8つの注意点④学校と綿密に連絡を取り合う

    ご家庭と学校とで綿密に連絡を取り合うことは非常に重要です。

    発達障害のお子さまへの対応に、絶対的な正解はありません。どの子もそれぞれ異なる特性を持っており、たとえ診断名が同じADHDであっても、Aさんで上手くいったやり方がBさんでも上手くいくとは限りません。

    小学生のお子さまのことを一番近くで見て、知っているのは保護者さまです。お子さまにどんな特性があるのか、どんな状況でどんな反応をするのか、しっかりと先生に伝えましょう。
    また、先生からも、学校の対応で困っていることや迷っていることがあれば、どんどん共有してもらうようにしましょう。家庭だけ/学校だけで解決しようとせず、一緒に解決していこうという姿勢が大切です。

    また、残念ながら発達障害のお子さまに対して、適切ではない指導をしてしまう先生もいます。適切ではない指導は、たった1度のことであってもお子さまの心を深く傷つけてしまう場合がありますし、それが続くと不登校や鬱などの二次障害につながってしまうこともあります。

    学校でどんな指導がされているか、先生から定期的に話を聞くほか、お子さま本人にもどんな勉強をしたか、先生からどんな声掛けがあったかを聞いておくと良いでしょう。
    アポなしで学校に電話を掛けたり、訪問したりすると先生の負担になってしまいますので、事前にアポを取るか、定期的な面談の機会を設けてもらうなど、学校と家庭の双方にとってより良い手段を探りましょう。

    私が知っている適切ではない指導の例としては、「発達障害のお子さまの『仲良し係』を作る」というものがありました。コミュニケーションが苦手なAさんのために、クラスの中でAさんの仲良し係になる子を指名し、班行動や学校行事の際にサポートをさせるというものでした。

    当然ですが、Aさんは「周りに気を遣わせている」「皆と違う存在であるとレッテルを貼られている」と感じ、心が深く傷付いてしまいました。また、周りの子どもたちも「別の友達と遊びたかった」「仲良し係になると別の子からからかわれる」といったように、Aさんへの理解が深まるどころか、逆に距離を置いてしまう形になってしまいました。

    このような不適切な指導は、お子さま本人への聞き取りや先生との面談ですぐに明らかになるものです。学校の指導でおかしいと感じることがあれば、すぐに別の先生や教育委員会に相談するようにしましょう。伝え方のコツとしては、あくまで冷静に、事実と感情を分けて伝えることです。

    感情的な言い方をしてしまうと、学校側も冷静に話を聞くことができず、建設的な議論になりません。現在の状況の中でできることは何か、お互いの言い分をしっかり聞きながら話し合いを進めましょう。

    発達障害のお子さまが通常学級を選ぶ時の8つの注意点⑤最低限の社会性を家庭で身に付ける

    発達障害のお子さまが通常学級を選ぶ時の8つの注意点⑤最低限の社会性を家庭で身に付ける

    お子さまができる限りトラブルなく過ごせるよう、最低限の社会性についてはご家庭で身に付けておくようにしましょう。

    • 人を叩かない
    • 物を壊さない
    • 順番を守る

    これらのことは、人が集団生活を送る上で最低限知っておくべきルールです。
    もちろん、発達障害のお子さまは衝動性が強かったり、思わぬ刺激でパニックになってしまったりすることがあるため、これらのことを完全に守ることは難しいかもしれません。

    また、定型発達のお子さまであっても、感情が高ぶると手が出てしまうことはありますし、小学生であれば多少のケンカは仕方が無い部分もあります。

    ただし、「人を叩くことはやってはならないことである」と知っているのと、知らないのとでは全く違います。お友達を叩いてしまったとき、「そもそもなぜ叩いてはいけないのか」ということから丁寧に説明してくれる小学校の先生は少ないでしょう。人を叩いてはいけないということは、幼児の段階でご家庭においてしっかり教えておくべきことです。

    お子さまの発達のスピードによりますが、4歳頃になれば「叩く」以外の行為で自分の気持ちを伝えられるようになるため、“不満があるから他者を叩いて伝える”という行動は見られなくなります。
    もし、小学校に入学する年齢になっても「不満があるから叩く」という行為が続いている場合は、言葉で伝える能力の発達が遅れている可能性がありますので、発達検査を受け、専門家によるソーシャルスキルトレーニングや療育を受けるようにしましょう。

    「人を叩く」「物を壊す」という行為は他害にあたり、学校では大きなトラブルにつながりかねません。お子さまが学校で心身とも健やかに過ごすためにも、これらのルールは幼いうちにしっかり身に付けておきましょう。

    また、「順番を守る」ということは、“社会にはルールがある”ということを知るための第一歩です。特にASD(自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群)のお子さまは、常識やルールを理解することが苦手な場合が多いため、その都度言葉で具体的に説明してあげるようにしましょう。

    もしご家庭だけでしつけが難しいと感じる場合は、地域の発達支援センターや保健所などに相談すると良いでしょう。保健師や専門医からアドバイスをもらうことができます。

    発達障害のお子さまが通常学級を選ぶ時の8つの注意点⑥「分かりません」「教えてください」など自らヘルプを出せるようにする

    発達障害のお子さまが通常学級を選ぶ時の8つの注意点⑥「分かりません」「教えてください」など自らヘルプを出せるようにする

    発達障害のお子さまが通常学級に在籍する場合は、「わかりません」「もう一度言ってもらえますか?」「教えてください」といったように、自分からヘルプを出せるようになることが大切です。

    追加配置の先生が1日中付きっきりになってくれるのであれば問題ありませんが、そういった環境を整えることは非常に難しいですし、小学校を卒業した後、「自分で何とかする」ということが全くできない子どもになってしまうかもしれません。

    発達障害の方が社会で生きていく上で最も重要なのは、「上手く人に頼る力」です。私の周りには発達障害でありながら社会で活躍されている人がたくさんいますが、どの人も、苦手なことは人に手伝ってもらったり、愛嬌があって周りの人が思わず助けたくなったりといったように、周りの人の力を借りることが非常に得意な方ばかりです。

    人は誰しも得意不得意を持っていますので、全てを自分一人でやろうとせず、周りを頼るスキルを身に付けていきましょう。また、周りに助けてもらうためには、自分の特性を正しく理解することが大切です。

    例えば、先生の指示が理解しづらいお子さまの場合は、隣の席の子に「先生、今なんて言った?」と確認し、教えてもらったら必ず「ありがとう」と伝えるようにします。授業で分からないことがあったときは、分からないと感じた箇所に○を付けておき、休み時間に先生に質問するなども良いでしょう。

    お子さまによってヘルプを出すべきタイミングや、やりやすいヘルプの出し方は異なりますので、ご家庭でも練習しつつ、学校とも連携しながら身に付けていくようにしましょう。

    発達障害のお子さまが通常学級を選ぶ時の8つの注意点⑦指示理解のキャパシティを把握する

    発達障害のお子さまが通常学級を選ぶ時の8つの注意点⑦指示理解のキャパシティを把握する

    学校では、先生の指示を聞いて行動しなければならない場面が非常に多いため、「どの程度の指示の内容であれば理解できるか」を把握しておくことが大切です。

    発達障害のお子さまはワーキングメモリー(※)が低く、一度に複数の指示を受けると混乱してしまうことがあります。

    ※ワーキングメモリー…頭の中に記憶を一時的保持しながら作業する能力のこと。WISC-IVの検査指標の一つ。
    詳しくは「発達障害でワーキングメモリーが低い場合の対処法は?改善のためのトレーニングを紹介」で解説しています。

    また、口頭だけの指示だと理解しづらく、文字やイラストで示されると理解できるタイプのお子さまもいらっしゃいます。

    • 指示は一つずつ出す
    • 口頭だけでなく、文字やイラストでも示す
    • 指示が分からないときは、一度だけでなく2~3回繰り返す

    これらの工夫は、発達障害のお子さまだけでなく、定型発達のお子さまにとってもわかりやすく、メリットのあるものです。

    積極的に取り入れるべき合理的配慮であり、ノーマライゼーション(※)の一環と捉えることもできます。

    ※ノーマライゼーション…障害のある人も無い人も、特別に区別することなく社会生活を営むこと。

    「複雑な指示を1度で理解できる子が偉い」といった価値観を持った先生もごくまれに存在しますが、大切なのは1度で理解することではなく、正しく理解すること、そして分からないときに「分からない」と素直に周りに助けを求められることです。

    「分からないことは恥ずかしいことだ」という誤った認識を子どもの頃に持ってしまうと、大人になってからも理解が曖昧なまま仕事を進めてミスをしてしまうなど、後々苦労することになります。

    また、そもそも複雑な指示を一度で理解できるかどうかは、生まれつきの能力(処理速度やワーキングメモリー)に大きく左右されるものであり、一生懸命集中していても指示が理解できない子もいれば、話半分でも理解できる子もいます。

    先生がどんな考え方で指示を出しているかも大切なポイントですので、面談の際にしっかり話し合っておくと良いでしょう。

    発達障害のお子さまが通常学級を選ぶ時の8つの注意点⑧お手伝いを習慣づける

    発達障害のお子さまが通常学級を選ぶ時の8つの注意点⑧お手伝いを習慣づける

    家庭でのお手伝いの重要性は従来から言われていることですが、発達障害のお子さまの場合は特に大切な要素となります。

    というのも、発達障害のお子さまは生活面・学習面とも苦手なことが多く、叱られたり指摘を受けたりしやすいため、自信を失ってしまう子が多いからです。

    「自分はダメなんだ」「何も出来ないんだ」と自己肯定感が下がってしまうと、物事に前向きに取り組むことができなくなりますし、憂鬱感やストレスが募ることで、不登校や鬱といった二次障害を招いてしまう可能性もあります。

    ご家庭でお手伝いの習慣をつけることは、お子さまに「役割」を与えてあげることにほかなりません。お手伝いをすることで役割が生まれ、「自分も家族の役に立っているんだ」「ここに居ていいんだ」という自己有用感や自己肯定感を育むことができます。

    お手伝いに対して「ありがとう、助かったよ」と伝えれば、お子さまの自己肯定感はぐっと高まります。また、こうした家庭での習慣は、学校で集団生活を送る際にも役立ちます。

    ご家庭でお手伝いをしっかりできるお子さまは、清掃や係活動についても責任を持って取り組むことができるでしょう。面倒くさいとサボらずに、「誰かのためになるなら」と積極的に取り組む姿勢は、小学生の間に是非とも身に付けておきたいものです。

    また、お子さまによっては、役割を与えてあげることで問題行動が落ち着く場合もあります。クラスでの疎外感や「どうせ自分なんて」という自己否定・自己無用感があると、「自分を見てほしい、認めてほしい」という欲求が問題行動となって現れてしまう場合があります。

    そうしたお子さまに対して、例えばクラスのボールの管理係など“その子だけの仕事”を任せると、積極的に取り組んでくれて、問題行動も落ち着くケースがあります。

    発達障害のお子さまがいかに自己有用感に飢えているかを周りの大人が知り、適切に役割を与えてあげることが大切です。

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    発達障害の子どもが通常学級に就学する場合のまとめ

    発達障害の子どもが通常学級に就学する場合のまとめ

    この記事では、発達障害のお子さまが通常学級に就学する際の注意点などについて詳しく解説してきました。

    改めてポイントをまとめると、以下のとおりです。

    <POINT>

    • 通常学級では、教員の追加配置や補助ツールの使用など、障害の特性に応じた合理的配慮が受けられる
    • 特別な支援を必要とする子どもの数は増加傾向であり、学校がパンク状態である場合も多い
    • 特別支援学級では少人数で丁寧な指導が受けられるが、支援が手厚いことでお子さまの自立が遅れてしまう場合もある
    • 学校とは定期的に面談し、積極的に情報共有を行うことが大切
    • 最低限の社会的なルールは、家庭でしっかりと身に付けておく
    • 発達障害の方にとって、人を頼るスキルは非常に重要
    • お手伝いは子どもの自己肯定感をグッと高めることができる

    特別支援学級に就学している子どもの方が、不登校になりにくく、将来の社会参加率も高いという説がある一方、特別支援学級に在籍することで自立心が育たなかったり、自己肯定感が下がったりする場合もあります。

    通常学級では、定型発達の子どもと同じスピードで授業を受ける必要があり、苦手も目立ちやすくなるため、確かに不登校になる可能性は高くなるかもしれません。しかし、定型発達の子と一緒に過ごすことで、人を頼る力が身に付いたり、自分の特性を相対的に理解したりできるというメリットもあります。

    また、学校によって特別支援教育の方針も様々ですので、通常学級と特別支援学級のどちらが良いかを一概に決めることはできません。

    保護者さまがお子さまの特性をしっかりと理解し、さらに学校にも足を運んで雰囲気を知りながら、お子さまにとって最適な選択は何かを考えていただければと思います。

    なお、発達障害のお子さまで通常学級への就学を希望している場合も、障害の特性への配慮が必要な場合は必ず就学相談(※)を受けるようにしましょう。
    追加の教員を配置してもらえるかもしれませんし、その他の配慮や支援を受けられる可能性もあります。

    ※就学相談…特別な支援を要する子どもの保護者と教育委員会が、話し合いながら就学先や支援方法を検討する場のこと。
    詳しい手続きの流れは「発達障害の学校選びはどうする?校種ごとの対応やトラブルの避け方を解説」で解説しています。

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    最後までお読みいただきありがとうございました。

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