WISC-IVは古い?WISC-Vとの違いや検査結果の見方を解説
「WISC-Vが出ているけれど、IVを受けても大丈夫ですか?」
発達障害のお子さまを持つ保護者さまから、このようなご質問をいただくことがあります。
実際、インターネットで検索すると「WISC-Vが最新」「WISC-IVはもう古い」という情報も目に入るため、不安になってしまうお気持ちもよくわかります。
そこでこの記事では、WISC-IVとWISC-Vの違いや、検査結果の読み取り方のポイントについて、分かりやすくご紹介します。
- WISC-IVとWISC-Vの主な違いと、それぞれの検査構成
- 「IVでは不十分」という誤解を解く考え方
- DIQやFSIQなど、よく出てくる数値の意味と見方
- 検査結果を支援や進路につなげるためのヒント
この記事はこんな方におすすめ
- お子さまがWISC-IVを受けて、「Vとどう違うの?」と気になっている方
- 知能検査の結果をどう理解し、支援につなげればよいか迷っている方
- ギフテッドや発達障害の可能性があると伝えられた保護者さま
▼目次
WISC-Vが主流?それでもIVが使われる理由
結論からお伝えすると、WISC-IVだからといって意味がない・信頼できないということはありません。
もちろんWISC-Vは新しい分だけ分析の精度は上がっていますが、IVも検査としての有効性は十分に高く、多くの機関で現在も使用されています。
特に、地方の自治体や中小規模の療育センター、学校の教育相談室などでは、いまだにWISC-IVが主流である地域も少なくありません。
また、保護者さまの中には、「できればVで受けたかった」「Vが使えるところを探した方がよかったのでは」と悩まれる方もいらっしゃいます。
しかし、検査のバージョンを保護者さまが選ぶことは基本的にできません。
- 地域や医療機関ごとの導入状況に左右される
- 予約待ちが数か月〜半年以上かかることもある
- 限られた選択肢の中で「検査を受けられること自体が貴重」な現場も多い
このような事情があるため、「WISC-IVだったからダメ」と落ち込む必要は全くありません。大切なのは、その検査結果から何を読み取り、お子さまのサポートにつなげていくかという視点です。
WISC-IVとWISC-Vの違いとは?検査の構成と測定領域を比較
WISCの検査結果を手にしたとき、多くの保護者さまがまず気になるのは「この数字、どう受け止めればいいの?」ということではないでしょうか。
その中で「WISC-IV」と書かれていると、「Vじゃないけど、ちゃんと今の子どもの状態がわかっているの?」と不安を感じる方もいらっしゃると思います。
たしかに、現在のウェスクラー式知能検査の最新版はWISC-Vです。ですが、WISC-IVも10年以上にわたり世界中で使用され、日本でも信頼性が高い検査として多くの医療・教育機関に導入されてきました。
そして、実際のところ、検査の構成や評価項目の大枠は大きく変わっていません。
WISC-IVとVの違いを表で比較
・VCI:言語理解
・PRI:知覚推理(WISC-VではFRI〈流動性推理〉に細分化)
・WMI:ワーキングメモリー(作業記憶)
・PSI:処理速度
・VSI(WISC-V):視空間処理
・FRI(WISC-V):流動性推理
ここまでで「IVとVでは、どこが違うの?」と気になった方もいらっしゃるかと思います。
以下に、WISC-IVとWISC-Vの主な構成の違いを、簡潔に比較できる表にまとめました。
比較項目 | WISC-IV(旧版) | WISC-V(最新版) |
---|---|---|
主な指標 | 4指標(VCI・PRI・WMI・PSI) | 5指標(VCI・VSI・FRI・WMI・PSI) |
下位検査 | 10個 | 15個から選択的に使用 |
検査の焦点 | 知覚推理(PRI)という幅広い分類 | 視空間(VSI)と流動性推理(FRI)に細分化 |
FSIQの算出 | 10検査の合計 | 7検査の合計(より効率化) |
WISC-Vでは、視覚処理(VSI)と推理力(FRI)を分けて評価することで、より細かい特性の違いに気づきやすくなったというメリットがあります。
ただし、WISC-IVでも知能の大まかな偏りや特性は十分に把握できます。
保護者さまが混乱しやすいポイント
実は、WISC-IVとVの違いを調べる中で、かえって混乱されてしまう保護者さまも少なくありません。
たとえば、
といった疑問を持たれる方がいらっしゃいます。
これらの疑問に関しては、“どちらが正しい”というより、“どう理解するか”という視点が重要になってきます。
というのも、WISCはあくまで「知能の凹凸を可視化するツール」です。したがって、指標の分け方に多少の違いがあったとしても、お子さまの思考の特徴や支援の糸口をつかむことが目的である点は共通しています。
迷ったときは、結果の数字だけでなく「解釈」と「活かし方」に注目を
メガジュンでは、WISC-IVとVの両方の検査結果を扱っており、それぞれのお子さまの特性に合わせて学習支援を設計しています。どちらの検査であっても、「結果の意味をどう読み解くか」次第で、お子さまの理解はぐっと深まります。
WISC-IVとV、それぞれの構成や尺度の詳細については、下記の記事でも詳しく解説しています。ご興味のある方は、あわせてご覧ください。
検査のバージョンよりも「結果の読み方」と支援へのつなげ方が大切
WISC-IVやWISC-Vといった検査のバージョンが異なっても、本質的に見るべきポイントは同じです。
それは、「お子さまがどんな特性を持ち、どんな支援が合うのか」を丁寧に読み解くことです。
ここでは、各指数の意味や差異の読み方、そしてギフテッドや2Eに見られやすいパターンについて、順に解説していきます。
検査は“診断”ではなく“特性の把握”
WISCの検査は、お子さまの認知特性や学び方のクセを多面的に把握するためのツールです。
検査結果を受け取ると、どうしても数値に目がいきがちですが、大切なのはそれぞれの数値のバランスです。
VCI(言語理解)やPSI(処理速度)といった各指数をもとに、お子さまがどんな場面で強みを発揮しやすく、どんな状況でつまずきやすいかを読み取っていくことがとても大切です。
指数の凸凹(VCIとPSIの差など)が意味すること
たとえば、VCI(言語理解)が高く、PSI(処理速度)が低いという場合、言葉での理解力は非常に高いのに、作業をスピーディにこなすのが苦手という傾向があるかもしれません。
- 言葉での理解力は高い
- 作業スピードがゆっくり
- 「やればできるのに」と誤解されやすい
このような凸凹のある検査結果である場合、実際の学習場面で次のような困りごとが出てくることがあります。
- 質問には深く答えられるが、テストで時間が足りない
- 考えがしっかりしているのに、ノート提出が遅れる
- 学校では「やればできるのに、なんでやらないの?」と誤解されがち
つまり、数値のばらつきには、日常の「つまずき」のヒントが隠れているのです。
差異指数(DIQ)は支援方針のヒントになる
「DIQ(差異指数)」とは、VCI・PRI・WMI・PSIなどの各指標間の差を定量的に評価するための指標です。WISC-Vでは、これらの差異が“統計的に有意かどうか”まで示されるようになりました。
DIQは、たとえば以下のような場面で役立ちます。
- 学習障害(LD)の可能性が示唆される場合、どの領域に課題があるのかを見極める
- 支援の優先順位(まず「処理速度の工夫」をすべきか、「記憶の定着」を支援すべきか)を考える
- 得意不得意を踏まえた学習環境の工夫(話し言葉 vs. 書き言葉の比重など)
数値はあくまで参考材料ではありますが、具体的なサポート方針を組み立てる際に、大きなヒントになることも少なくありません。
ギフテッドや2Eに見られやすいパターン
メガジュンにご相談いただくギフテッドや2E(Twice Exceptional)のお子さまには、次のような検査傾向が見られることがあります。
- VCI・PRIが非常に高く、WMIやPSIが低い
- → 頭の中での思考は高度だが、出力や定着が苦手
- WMIが高いのにPSIが極端に低い
- → 情報は保持できるが、動作や記述に時間がかかる
- PRIが高いがVCIが平均的
- → 空間認知は強いが、言語での表現が難しい
このような検査結果を持つお子さまは、「才能」と「困りごと」が共存することも多く、支援の方向性に誤解が生じやすいのが特徴です。
適切な支援を行うためには、数値の背景を丁寧に読み取り、お子さまの可能性に光を当てることがとても大切です。
WISC-IVでも必要な情報は十分得られる
WISC-Vのほうが新しい検査であるのは確かですが、だからといってWISC-IVが「役に立たない」わけではありません。
どちらのバージョンであっても、結果をどう読み取り、どう活かしていくかがいちばん大切です。
検査結果をどう活かすかが大切
WISCは病名を決めるためのものではなく、お子さまの得意なこと・苦手なことを知る“ものさし”のような検査です。
たとえば、次のようなご相談がよく寄せられます:
- 言語理解や知覚推理は高いのに、処理速度が平均よりかなり低い
- 自宅では難しい問題でも落ち着いて取り組めるのに、学校では「課題が終わらない」と注意されてしまう
- じっくり考えれば答えが出せるのに、クラスのペースにはついていけない
こうした困りごとの背景には、WISCの数値から見える「特性の凸凹」が関係していることも少なくありません。
メガジュンでのサポート例:小学4年生の男の子の場合
ある小学4年生の男の子は、WISC-IVの検査で以下のような結果が出ました。
- 言語理解(VCI):124
- 知覚推理(PRI):121
- ワーキングメモリー(WMI):98
- 処理速度(PSI):74
「家ではできているのに、学校では課題が終わらない」とお悩みの保護者さまからのご相談でしたが、実際には理解力や思考力は高く、作業のスピードだけがボトルネックになっていました。
メガジュンでは、本人が安心して学べるよう「視覚的に整理された教材」や「スモールステップで進める支援」を提案。さらに学校側にも特性に応じた配慮を伝えたことで、本人が「自分はできる」と感じられる機会が増えていきました。
検査結果を「どう読み解くか」で、お子さまの捉え方も支援の方向も大きく変わります。
WISCの結果を受け取ったあとの「よくあるご質問」
検査結果を見て、「これはどう捉えればいいの?」「学校には何を伝えたら?」と迷われる保護者さまも少なくありません。
ここでは、よくいただくご質問とその考え方のヒントをご紹介します。
数字にとらわれすぎず、お子さまの“実際の困りごと”や“本来の力”に目を向けていくことが、支援への第一歩になります。
もし今、「この結果、どう活かせばいいの?」と迷われているようであれば、無料相談もご活用いただけます。
結果の活かし方に迷ったら|プロによる読み解きと学習支援も
WISCの検査結果を受け取ったあと、「これをどう活かせばいいのか分からない」と戸惑われる保護者さまは少なくありません。
特に、ワーキングメモリーや処理速度などの指数にばらつきがある場合は、対策が難しいと感じることもあるでしょう。
たとえば、「VCIは高いのにPSIが極端に低い」というような場合、お子さま自身が「頭の中では分かっているのに、作業のスピードが追いつかない」と感じていることがあります。
こうしたギャップが原因で、授業中に発言できなかったり、課題の提出が遅れてしまったりといった場面につながることもあるのです。
メガジュンでは、こうしたWISCの結果を丁寧に読み解き、お子さまの特性に合った学習支援や接し方の工夫をご提案しています。
学力面だけでなく、「どう声をかければよいか」「学校とどう連携すればよいか」といったご相談も、日々多く寄せられています。
「うちの子、どこでつまずいているんだろう?」
「どこを伸ばせば、本人の力になるんだろう?」
そんな疑問をお持ちの保護者さまは、どうぞお気軽にご相談ください。