【ギフテッド実例】不登校から中学受験へ:算数大好き小学4年生がプロ家庭教師と出会い、見つけた希望

この記事では、ギフテッドゆえに学校に馴染みづらく不登校の傾向にあったお子さまが、プロ家庭教師と出会い、中学受験を目指して再び頑張れるようになった実例をご紹介します。

同じようなお悩みを持つ方の参考になる内容となっていますので、ぜひ最後までお読みいただけますと幸いです。

発達障害専門のプロ家庭教師
妻鹿潤
・16年以上1500名以上の指導実績あり
・個別指導塾の経営・運営でお子様の性質・学力を深く観る指導スタイル
・yahooやSmartNews、Newspicksなどメディア向け記事も多数執筆・掲載中

小2にして「n進法」に興味を持ったギフテッド児のFさん

小2にして「n進法」に興味を持ったギフテッド児のFさん
Fさんは幼稚園の頃から数字や図形に強い興味を持っていて、数を題材にした絵本が大好きでした。

それだけでなく、年長さんになると小学1年生向けのドリルを自分から「やってみたい!」と言って解き始めていたそうです。

そんなFさんは、小学生になれば本格的に算数の勉強ができると入学を楽しみにしていました。

ですが、小学1年生の授業はFさんにとっては内容が簡単過ぎました。「思っていたのとは違うなあ」とFさんは感じていましたが、小学1~2年生の間は比較的伸び伸びと、学校でも楽しく過ごすことができていたそうです。

特にFさんは小学2年生のときの担任の先生のことが大好きでした。

算数の授業で「時計の読み方」を習ったとき、Fさんは「普通に数を数えるときは10までで次の位に進むのに、時計の場合は60分で1時間、24時間で1日なのはなぜなのか?」と疑問に思い、その場で先生に質問したそうです。

すると担任の先生は、「それはね、昔の人が太陽の動きを元に時間を測ったからなんだよ」と教えてくれたそうです。

そして、いったん授業の進行を止めて、黒板に太陽が昇る様子のイラストを描きながら「太陽の端っこが見えてから、太陽の全部が見えるまで約2分。この2分を720回繰り返すと1日分の時間が過ぎるということに、昔の人は気が付いたんだ」

と説明してくれました。

「720回っていうのは、Fさん、どんな数字か分かるかな?」
「60×12だ!すごい!」
「そのとおり。だから、時間は10でひとまとまりじゃなく、60や12でひとまとまりになったという説があるんだよ。もっと詳しく知りたい人は、休み時間に続きを話そうね」

Fさんは休み時間に先生のところに行き、時間の単位だけでなく、そもそも10進法とは何か?ということまで徹底的に教えてもらったそうです。

後日の保護者面談で、担任の先生は「Fさんの知的探求心は素晴らしいですね。教える側も楽しいです」と言ってくれたそうです。

ところが、その先生は翌年に別の学校へ転任してしまい、別の若い先生がFさんの担任になりました。

また、1~2年生の間は学校のフォローも手厚く、教室には1~2名の支援員が常に入っていましたが、3年生からは担任の先生のみで授業を行う場面が増えてきました。

この頃からFさんは、学校でストレスを感じることが多くなりました。

例えばFさんが休み時間に算数の教科書を読んでいると、クラスの子が「休み時間に教科書を見ているなんて変なの!」とからかったそうです。

以前はそのような場面があっても、支援員さんが「何のページを読んでいるの?面白そうだね」と声を掛け、Fさんと他の子の間を取り持ってくれていました。

ですが、3年生の教室に支援員さんはいないため、Fさんは嫌な気持ちを我慢したり、「うるさい!」と言い返して喧嘩になったりするようになりました。

また、担任の先生は非常に若く、授業スキルや学級運営力がまだ十分に備わっていませんでした。

そのため、クラスが落ち着かない雰囲気であることにもFさんはストレスを感じていました。

さらにある日の割り算の授業で、Fさんが「13÷2は、小数や分数を使えば割り切れると思います」と発言したところ、担任の先生は「余計なことは言わないで」と言ったそうです。

Fさんはこの出来事に大きなショックを受け、次の日からしばらく学校を休んでしまいました。

保護者さまが学校に欠席の理由を伝えたところ、担任の先生と校長先生が家まで謝りに来てくれました。

保護者さまとしては、担任の先生は経験が浅いながらも懸命にクラスを運営しようとしていることは理解しており、また、Fさんはご家庭でも「あれはなんで?」「これはどうして?」と保護者さまを質問攻めにすることも多く、保護者さまも辟易とした気持ちになることがあるため、担任の先生を責めるつもりは無いことを伝えました。

加えて、せっかくの機会だからということで、Fさんの性質についても相談することにしました。

同年代の子どもたちと話が合わず、なかなか友だちができないこと。授業に退屈さを感じていて、特に3年生になってからは「学校に行きたくない」と口にすることが増えたこと…。

担任の先生も校長先生も、保護者さまの話に真摯に耳を傾けてくれました。そして、できればFさんには支援員を付けたいと考えるが、すぐに実現するのは難しそうだということでした。

また、校長先生からは「Fさんの性質をよく知るためにも、市の教育支援センターに相談して発達検査を受けてはどうか?」と提案されました。

校長先生としては、Fさんはいわゆる発達障害ではないとは思うが、知的能力が非常に高かったり、クラスの雰囲気を敏感に感じ取ったりと、特別な性質を持っている可能性があり、その性質をふまえて学校としてもフォローしていきたいと言うことでした。

Fさんが通っていたのは一般的な公立小学校でしたが、Fさんの課題について学校全体で対応しようという思いが伝わってきました。

担任の先生の技量は十分ではなかったものの、学校としてきちんと対応を考えてくれていることを感じ取った保護者さまは「校長先生の助言どおり、発達検査を受けてみよう」と思い至ったそうです。

Fさんの発達検査の結果などについて、次の章から詳しく紹介していきます。

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発達検査の結果と中学受験を見据えた指導方針

発達検査の結果と中学受験を見据えた指導方針

校長先生のアドバイス通り、保護者さまは発達支援センターに相談し、医療機関でFさんにWISC-IV知能検査を受けさせました。その結果、Fさんは全検査IQが134のギフテッド相応であることが分かりました。

また、各指標の凸凹は見られず、発達障害の特性を併せ持つ2Eである可能性も非常に低いという診断となりました。(WISC-IV知能検査についてはこちらの記事(【WISC(ウィスク)-Ⅳと発達障害】検査結果の見方、FSIQとDIQの違い、ビネー式やK-ABCとの比較 | 発達障害・ギフテッド専門のプロ家庭教師 メガジュン (pro-megajun.com))で詳しく解説しています)

検査によりFさんの性質が明らかになったことは大きな一歩でしたが、一方で発達障害など特別な支援の対象には該当しないため、支援員の加配を受けることは難しいという判断になりました。

担任の先生は以前よりも丁寧にFさんに接するようになり、また、校長先生や教頭先生、保健室の先生などもFさんの様子を気にかけ、休み時間に声を掛けるなどの対応もしてくれました。

ですが、状況はあまり改善せず、平日の朝になるとFさんは「お腹が痛い」「頭が痛い」と言って学校を休むことが増えていきました。

保護者さまも学校としてできる限りの対応をしてもらっていることは十分理解されており、「これ以上どのように手を打って良いものか…」と途方に暮れておられました。

そんな中、同じように不登校やギフテッドのお子さまを持つ親御さんたちとSNSを通して交流している折、たまたまメガジュンの存在を知り、私たちの元にご相談をいただきました。

特にFさんの保護者さまは、Fさんと同じようにギフテッドであるがゆえに学校に馴染みづらく、不登校の傾向にあったお子さまの実例記事(【ギフテッド実例】高知能なのに問題児?D君が学校で感じていたストレスと対応策、中学受験への道のり(浮きこぼれ問題) (pro-megajun.com))に深く共感したそうです。

今のFさんに必要なのは、Fさんの性質をしっかりと見極めた上で、ギフテッド特有の強い知的好奇心を満たしてくれる質の高い指導者であると保護者さまは考えました。

加えて、これからFさんが生きていく中で必要な社会性、特にギフテッドではない人たちとどのように折り合いをつけるかということについて、今から少しずつ学んでいけるようなコミュニケーションのトレーニングも受けさせてあげたいと考えました。

Fさんの保護者さまがメガジュンのギフテッドコースを見つけた際には、「私たちが探していたのはこれだ!」と思い、すぐにご連絡をくださったそうです。

Fさんの保護者さまは、最初のお問い合わせのメールにとても詳しくFさんの成育歴を記載してくださいました。そのため、私たちもFさんの性質やこれからの学習指導の方針について具体的なイメージを持つことができ、初回の面談も非常にスムーズに進めることができました。

ギフテッドの人口比は全体の約2%であり、さらにその中でFさんのように学校に馴染みづらい状況にあるお子さまは決して多くはありません。

なので、保護者さまは悩みを相談・共有しづらく、また、学校も支援のノウハウやリソースが無いため困った状況になってしまうことがあります。

ですが、ギフテッド専門のプロ家庭教師であれば、ギフテッドのお子さまの指導経験が豊富であり、確かなノウハウを持っています。

もちろん、それぞれのお子さまの個性や性質に合わせて個別最適化した指導を行うことは大前提ですが、一方でギフテッドのお子さまが抱えやすい問題については、過去の指導事例を参考にすることでスムーズに解決することができます。

ですので、ギフテッドのお子さまのことでお悩みの方は、ぜひギフテッド専門のプロ家庭教師にご相談いただければと思います。

さて、Fさんの場合は、今すぐに行き渋りを改善するのではなく、学校で感じているストレスの要因を分析し、Fさん自身が状況を客観的に見極めて対処できるようになることが最終的なゴールであると考えました。

Fさんは他者の表情や雰囲気を敏感に感じ取る性質があると思われたため、まずは講師との信頼関係を丁寧に構築し、その上で学校での人間関係や過ごし方についてお話ししながら学んでいってもらう方針としました。

また、信頼関係の構築に当たっては、Fさんは2年生の担任の先生が大好きで非常に信頼していたとのことでしたので、「Fさんの疑問や質問にしっかり答える」、Fさんに「先生は色々なことを知っていてすごいな」と思ってもらうということを入り口に関係を築いていくことにしました。

<Fさんの学習指導の方針>

  • 最終的なゴールは行き渋りの改善
  • そのためにはFさんがストレスの要因を自分で分析し対処できるようになる必要がある
  • 講師との対話を通してストレスの対処法を身に付ける(前提として信頼関係の構築が必要)
  • Fさんの知的好奇心を満たせる存在になることで、講師との信頼関係を築く

さらにFさんの保護者さまは、できれば中学受験をさせたいと考えておられました。

Fさんの知的能力は非常に高く、既に中学数学の問題を自主的に解き始めているとのことでした。

公立中学校に進学すると、授業のレベルが合わずに再びストレスを溜めてしまう可能性が高いため、授業進度の早い私立中学校の受験を検討しておられました。

私たちとしてもギフテッドのお子さまには中学受験を進めることが多いのですが、保護者さまに1点だけ気を付けていただきたいこととして、「学校の雰囲気を十分調べておく」ということをお伝えしました。

私立中学校の中には、課題を多く出し、互いに切磋琢磨させることで子どもたちを成長させるという方針の学校があります。

競争的な雰囲気の方が頑張れるお子さまには相性が良いのですが、Fさんの場合はピリピリした雰囲気にストレスを感じてしまう可能性もあるため、学校説明会や学園祭などに足を運ぶとともに、在校生の評判などをしっかりと調べ、Fさんに合った雰囲気の学校を見つけることが大切であるとお伝えしました。

進学校であっても自由でのんびりとした校風で、生徒の自主性を尊重する方針の学校もありますので、Fさんの場合はそうした学校と比較しながら選んでいただくことをおすすめしました。

また、競争的な雰囲気の学校であっても、Fさん自身が「ここで頑張りたい」と思えるのであれば、チャレンジさせてあげて構いません。

いずれにせよ、それぞれの学校の校風や指導方針を事前にしっかりと調べ、進学後も有意義に過ごせる学校を選ぶことが大切です。

特に、課題の量など客観的な情報については、メガジュンでも日々収集に努めています。志望校選びについても確かな情報を基づいたアドバイスが可能ですので、お気軽にご相談いただければと思います。

Fさんの場合は、当初保護者さまが検討されていた私立中学校は、どちらかと言えば競争重視で課題も多い学校でした。

Fさんにも学校説明会と学園祭に足を運んでもらったのですが、あまりピンとこない様子でしたので、いったん保留となりました。

そこで私たちは別の案として、公立の中高一貫校をおすすめしました。

その学校も課題は多いものの、私立中学校のように成績順位が発表されるということは無く、また、探究活動に非常に力を入れており、「生徒の興味・関心を広げ、深めることを重視する」という指導方針でした。

在校生の中には数学オリンピックで受賞した子がいるほか、数学同好会があるなど、Fさんの好きな数学を深められる環境が整っていることもおすすめできる点でしたので、保護者さまにご提案しました。

その学校は伝統のある学校で校舎自体は年季が入っており、私立ほど見栄えはしません。ですが、学校説明会に参加されたところ、保護者さまは「地に足の着いた感じがして好印象だった」とのことでした。

また、Fさんも積極的に行きたいと感じたわけではなかったそうですが、以前見学した私立中学校よりは数学同好会もあって楽しそうだなという印象を受けたそうです。

以上のことから、中学受験に関しては、公立中高一貫校の受験を見据えて対策していくことになりました。

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Fさんの授業内容と不安を感じやすい性質(ギフテッドの情動性過度激動)

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Fさんは現在小学4年生でしたが、学校を休んだ日に自分で教科書に目を通しており、国・算・社・理の4教科について4年生の範囲は理解できているとのことでした。

ですので、Fさんの授業では、小学5年生向けのワークブックを使って学習を進めることにしました。

最終的には中学受験対策を行いますが、まずは一通り教科書の内容を終わらせてしまい、そこから本格的な演習に取り組むという形です。

ちなみに、Fさんは趣味として中学生の問題を解くこともあるそうですが、中学受験には直結しないため、授業では取り扱わないことにしました。

授業を始めるに先立って、Fさんには「気になったことはどんどん質問してくださいね。Fさんの理解力だと中学受験の対策は十分間に合うので、気にせずいろんなことをお話ししましょう」とお伝えしました。

Fさんは人見知りをするわけではありませんが、こちらがどんな人物なのかを知ろうとしているような印象を受けました。

当初の想定どおり、すぐに打ち解けるのは難しそうでしたが、講師がFさんのことを本気で支えたいと思っていることが伝われば信頼関係は必ず築けるものですので、焦らずゆっくりFさんと関わっていこうと思いました。

Fさんは、授業を始めたばかりの頃は遠慮気味でしたが、しばらくすると質問をしてくれるようになりました。

ある日の授業で講師が奇数と偶数について説明したところ、Fさんは「そもそもなぜ奇数と偶数だけ特別扱いなのか。3で割った余りの数で分類しても良いのではないか」という質問をしてくれました。

そこで講師は、「奇数と偶数は、単に2で割り切れるかどうかだけでなく、面白い性質をいろいろ持っているんですよ」と答えました。

「例えば、偶数と偶数をいくら足し合わせても偶数ですよね」
「はい」
「それから、奇数を奇数個足し合わせたら奇数だし、奇数を偶数個足し合わせたら偶数になります」

講師はノートの新しいページに、具体的な式を書きながら説明していきます。

「あと、整数に偶数を掛けると必ず偶数になりますね」
「それが面白い性質、ということですか?」
「そうなんです。このこと自体を証明しなさいという問題が出されることもあるし、この性質を使って問題を解くこともあるんですよ」

講師はその場で2022年度の武蔵中学校の入試問題を紹介しました。

<武蔵中学校(2022)>
次の㋐、㋑にあてはまる数を書き入れなさい。
1から9までのどの整数で割っても割り切れる10以上の整数のうち、最も小さいものは㋐です。㋐の約数のうち、最も大きい奇数は㋑です。

「これは約数と倍数の問題だけれど、㋑の答えを導くためには奇数と偶数の性質を知っている必要があるんです」

Fさんは問題をじっと見つめていたので、「解いてみますか?それとも、先生が解説しましょうか?」と声を掛けたところ「解説が聴きたいです」と答えてくれました。

そこで問題の解説を行ったところ、Fさんは真剣に聞き入ってくれました。

「奇数と偶数を分ける必要性はこんな感じです。先生の説明で分かりにくいところがあれば言ってくださいね」
「いえ、よくわかりました。でも、こんな問題を自分で解けるようになるのかな…」

Fさんがここで不安な気持ちを口に出したのは、少し予想外でした。

ギフテッドのお子さまは、難しい問題に対峙すると「面白そう、解いてみたい!」とやる気を出してくれるケースが多いのですが、Fさんの場合は「自分にできるのだろうか…」という不安を感じるようでした。

確かにこの場面以外でも、Fさんは中学受験にあまり乗り気ではない様子が見受けられましたし、講師が「Fさんは本当に理解が早いですね」と褒めても「自分なんて大したことはない」という反応をすることが多かったです。

Fさんにはもっと自分の良いところに気付いて自信を持ってほしいと思いましたが、学校を休みがちであることや、そのことで保護者さまに心配を掛けているという意識が強く、Fさんは自分に自信を持つことができていないようでした。

さらにFさんは他人の感情にとても敏感な性質を持っており、幼稚園の時には他の子が先生に叱られているのを見て、自分も叱られているように感じて泣いてしまったことがあるそうです。

このような性質を持っているFさんに対して、「自信を持って」「保護者さまは心配はしているけれど、迷惑だとは思っていないですよ」と言葉で伝えても、すぐに自信を取り戻すことは難しいと考えました。

Fさんの性質を尊重し、「確かに中学受験は難しそうで不安ですよね」と共感を示しつつ、問題が解けたときや新しい知識を習得できたときには講師も一緒になって「やったね!」「すごいね!」と喜ぶことが、Fさんの自信を取り戻すためには最も良い方法であるように思いました。

また、ご家庭ではお父さまがFさんに「もっと自信を持ちなさい」と伝えることがあるようでした。

その言葉自体は決して間違ったものではなく、お声掛けは非常にありがたいものです。

一方で、Fさんの今の状況や性質を鑑みると、その言葉がプレッシャーになったり、「お父さんは今の自分を認めてくれていないのだ」と感じてしまったりする可能性があります。

そこでご家庭においては「自信を持ちなさい」という言葉だけでなく、Fさんが楽しく勉強できていることを「最近勉強が楽しそうだね、良かったね」と一緒に喜んだり、「○○が解けるようになったんだね、すごいね」と具体的に褒めたりすることを意識していただくようにお願いしました。

こうした関わりを増やしていくことで、Fさんの自信や自己肯定感が少しずつ育っていくことを目指しました。

ギフテッドのお子さまの中には、Fさんのように他人の感情に敏感で、そのために「他人に嫌われていないか」「失望されていないか」と強い不安感を持ってしまう方がいらっしゃいます。

これは、ギフテッドの性質の一つである「過度激動」のうち、「情動性過度激動」と呼ばれるものに該当します。(ギフテッドの過度激動についてはこちらの記事(ギフテッドの小学生の5つの特徴と育て方のポイント | 発達障害・ギフテッド専門のプロ家庭教師 メガジュン (pro-megajun.com))で詳しく解説しています)

情動性過度激動の性質を持つお子さまは、単に他者への共感性が高いだけの場合もありますが、Fさんのように、

学校の雰囲気に疲れて不登校になる

保護者さまが心配する

保護者さまが心配していることにお子さまが申し訳なさを感じる

さらに心が疲れて調子が悪くなってしまう

というマイナスの循環に陥ってしまうケースもあります。

「他者への共感性が高く、心が傷つきやすい」という性質自体は変えられないため、情動性過度激動の性質を持つお子さまに関わる際には、お子さまが落ち込んだり自分を否定したりしないよう、自信や自己肯定感を育むことを特に意識することが大切です。

併せて、情動性過度激動の性質を持つお子さまは一緒にいる人の感情の影響を受けやすいため、周りにいる人が明るく楽しい気持ちでいることで、その子自身のメンタルも安定し、前向きな気持ちになれることも多いです。

折角高い知的能力を持っているにもかかわらず自分を否定しがちなFさんを見ていると、ついつい「もっと自信を持って」と言いたくなってしまいますが、Fさんの性質を踏まえて丁寧に対応することが重要です。

中学受験の本番までまだ時間はあり、さらにFさんの知能であれば十分に合格を目指すことはできますので、焦らずゆっくりとFさんの自信と自己肯定感を伸ばしていくことにしました。

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Fさんの現在と学校復帰

Fさんの現在と学校復帰
Fさんは小学5年生に進級し、いよいよ本格的に中学受験の対策に取り組み始めました。

始めの頃は難しそうな問題を見ると気が進まないことも多かったFさんですが、解けたときに一緒に喜んだり、解ききれなかったときも着眼点をたくさん褒めたりすることで、少しずつ前向きに取り組めるようになってきました。

また、5年生になると、転入生によって学年の人数が増え、2クラスから3クラスに変わったそうです。

1クラスの人数が減って落ち着いた雰囲気になったことや、Fさんが苦手な子と別のクラスになったこと、担任の先生がベテランの先生になったことなどから、Fさんは学校に行き渋ることが減ってきました。

「最近学校はどうですか?」と講師がFさんに尋ねると、「相変わらず楽しくは無いし授業はつまらないけれど、メガジュンの先生にこうやって愚痴を言えるから気持ちが楽」と言ってくれました。

それから、「学校の先生にメガジュンの先生にしているような質問をしても、どうせ答えられないし。相手を選ばなきゃいけないって思いました」とも言いました。

「それもそうかもしれないですね。○○先生(小2のときの担任の先生)みたいな先生だったらFさんの質問にも答えてくれそうですが」
「○○先生みたいな先生はそういないですよ」
「そうですね。でも、Fさんが受験予定の△△高校附属中学校の先生は良い先生が多いみたいですよ。この間ニュースサイトにインタビューが載っていたので、後でURLを送りますね」

翌週の授業で、Fさんは初めて「△△附属中に行ってみたいかもしれない」と口にしました。

講師が紹介した△△附属中の先生のインタビュー記事には、「生徒が『知りたい』と言ったときにはとことんまで付き合うのがうちの学校の信条。研究発表会の前日、生徒と一緒に最終下校時刻ギリギリまで実験室にこもったこともありました。私たち教師も、それが楽しくて仕方がないんです」という趣旨の発言が載っており、Fさんはその内容に非常に感銘を受けたようでした。

記事を読んだ直後から、Fさんの表情が変わったと保護者さまは仰っていました。

「すごく明るい表情になったので『良いことでもあったの?』と聞いたら、『メガジュンの先生から送ってもらった記事、早くお母さんも読んで!』と言うんです。読んでみたら、確かにFの心に刺さりそうな内容だと思いました」

また、Fさんは「早く過去問を解きたい」とも言っており、難しい問題にもチャレンジしようという意欲がわいてきたようでした。

Fさんは学校を休む頻度は減ったものの、その背景には「学校に期待しても仕方がない」という諦めがありました。

ですが、△△附属中という希望が見えたことにより、目標に向かって頑張ろうという気持ちが芽生えたのだと思います。

目標があれば、日々の生活にも張り合いが生まれます。

もちろん、Fさんにとって今通っている小学校は退屈なものに変わりありませんが、「△△附属中」という目標ができたことで、以前よりも明るく前向きな気持ちでいられるようになったことがFさんの表情から分かりました。

まだまだFさんは成長途中にありますが、志望校合格を目指しこれからも伴走を続けてまいります。

最後に、Fさんの保護者さまからいただいた直近の感想をご紹介して、この記事を終わりたいと思います。

<Fさんの保護者さまの感想>

メガジュンの先生にお世話になってから1年が経ち、少しずつではありますがFの変化を感じています。

学校の先生にも非常に良くしていただいているにもかかわらず、状況が好転せず半ば不登校のようになってしまっていた頃は、これ以上どうすれば良いのかと暗闇の中にいるような感覚でしたが、メガジュンのサービスを知り、ここならFの気持ちを理解しサポートしてくれそうだと感じて問い合わせをしました。

サービスを利用し始めてから半年間くらいは大きな変化も無く、相変わらず学校を休む日が多い状況でしたが、「周りの大人の焦りをFさんは敏感に感じ取る性質を持っているのだと思います。それがストレスにもつながってしまうので、できるだけ焦らず見守りましょう。保護者さまもいろいろ感じるところがあると思うので、気兼ねなくいつでも電話やメッセージで相談してくださいね」と言っていただいたことで、とても安心できたのを覚えています。

また、授業が始まったばかりの頃は、Fはメガジュンの先生に少し距離を感じていたようでしたが、毎週興味深いお話を交えて楽しく授業をしてくださる中で、徐々にFも心を開き、今では「先生が早めにログインしていたりしないかな?」と授業の30分前にはミーティングアプリの前で待機しています(笑)

5年生になってからはクラス替えもあり、以前より順調に学校に通えるようになりました。また、当初の選択になかった公立の△△高校附属中学校を提案していただいたことは、私たち家族にとってとても意義のあることでした。
Fに中学受験をさせた方が良いというのは明らかでしたが、心配性のFをどのように前向きな気持ちにさせるか、答えが見つけられずにいました。

ですが、メガジュンの先生に教えていただいたインタビュー記事は効果抜群で、あの日からFは見違えるほど生き生きした表情で、勉強にも、そして何気ない日常にも希望を持って過ごしてくれているように思います。
5年生になったばかりで、受験に関してはまだまだこれからではありますが、このタイミングで一度感謝の気持ちを伝えたく、メッセージを送らせていただきました。

長文になってしまいすみません。これからもどうぞよろしくお願いいたします。

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