海外子女の漢字学習法|日本語を楽しく学ぶための実践的アプローチ(カナダ在住兄妹の指導事例より)
海外にお住まいのお子さま(海外子女)で、日本語の学習に悩んでおられる方はたくさんらっしゃいます。
特に、漢字に関しては「なかなか覚えられない」「書くのを嫌がる」とお困りの方も多いのではないでしょうか。
今回は、カナダに住む小学4年生の男の子と1年生の女の子を指導する中で、どのようにして漢字の学習課題を解決し、楽しみながら勉強に取り組めるようになったのかをご紹介します。
また、直近の帰国予定が無い中で、日本を身近に感じ、日本人としてのアイデンティティを大切にできるよう、日本の文化や歴史に関する知識の習得についてもサポートさせていただきました。
海外子女や帰国子女の方の参考になる記事となっていますので、ぜひ最後までお読みいただけますと幸いです。
▼目次
【海外子女の漢字学習】カナダ在住の小学生兄妹の概要
今回ご紹介するのは、カナダ在住の小学4年生の男の子Aくんと、小学1年生の女の子Bさんの指導事例です。
保護者さまは、Aくんの漢字のつまずきが目立ち始めたことをきっかけに、海外子女であることを踏まえながらサポートしてくれるプロ家庭教師を探し始めたそうです。
AくんやBさんは発達障害やギフテッドの特性があるわけではありませんでしたが、カナダで生まれ育ったこともあり、日本の詰込み型の勉強や激しい受験競争には相性が悪いのではと保護者さまは考えていらっしゃいました。
そんな中で、一人ひとりの性質や状況に寄り添ったサポートを謳うメガジュンのサービスが目に留まり、ご相談に至ったそうです。
<ご相談内容>
初めまして。海外子女の家庭教師サービスを探しており、ご相談させていただきました。
カナダ在住の小学4年生の男の子と小学1年生の女の子で、インターナショナルスクールと日本の補習校に通っています。
父親がカナダ人のため、家庭では英語を使っています。また、インターナショナルスクールでは他に日本人がおらず、1日中英語を使用しています。そのため、日本語を使うのは週末の補習校のみとなっています。
補習校では日本の学校に即した教科書を使い、宿題も出るのですが、Aは小学3年生の頃から特に漢字の勉強についていけなくなりました。
そこで、学校の課題に加えて自主的に小学2年生のドリルからやり直しているのですが、親が口出しすると機嫌が悪くなることもあり、どうしたものかと悩んでいます。
妹のBは、コロナ禍もあり日本の子どもたちと交流する機会が少なく、ひらがなやカタカナも危うい状態です。
加えて、日本の良さや文化に触れる機会が少ないことも気になっています。
ときどき帰国はしているのですが、日本の文化や歴史に触れる機会が少なく、日本人としてのアイデンティティが薄れてしまうのではないかと心配です。
教科書に沿った勉強でなくても構わないので、「日本にはどんな場所があるのか?」「何が有名なのか?」などを楽しく学べる機会があればと考えています。
(ギフテッドのお子さんの指導事例の記事で、興味関心に基づいた探求型学習を取り入れられていると拝見しました。うちの子はギフテッドではありませんが、ぜひそのような形で日本について楽しく勉強できたらと思っています。対象外でしたらすみません…。)
いろいろと要望が多く恐縮ですが、ご対応いただくことは可能でしょうか。
どうぞよろしくお願いいたします。
こうしたご相談のメールをいただき、私たちは「日本語や漢字の学習については十分サポート可能であること」「日本文化に関する探求学習についても対応可能であること」を返信させていただきました。
また、より詳しく状況をお伺いするために、オンライン面談の場も設定させていただきました。
オンライン面談では、①帰国予定の有無、②中学受験の予定、③お子さまの性質や好きなものの3点について、より詳しくお話をお伺いしました。
①帰国予定の有無
- 今のところ帰国予定は無い。おそらくカナダで進学・就職することになる。
②中学受験の予定
- 予定なし
③お子さまの性質・好きなもの
Aくん
- 忘れ物が多く、そそっかしい面がある
- 人懐っこくおしゃべりが好きだが、テンションが上がると授業に意識が向かなくなるので、気持ちを上手く切り替えられるよう誘導してほしい
- 学校の先生に対しては素直だが、親に対しては反抗的なことがある
- 間違いを指摘すると拗ねることがある
- 「サバイバルシリーズ」が好き
Bさん
- 集中するときとしないときの差が激しい
- 自分の世界に行くことが多い
- 先生の話を聞いていないときがある
- 筆圧が弱い
- 本を読むのが好きだが、英語の本のみ(日本語の本は負担に感じる)
まず、AくんもBさんも帰国予定は無く、中学受験も考えておられないとのことでした。
中学受験を検討されている場合は、どの偏差値帯の学校を選ぶのか、帰国子女枠で受験するかどうか、受験科目や配点はどうかなどを踏まえて方針を決める必要があります。
また、自由度は高いか、課題の量は多過ぎないか、帰国子女のみのクラスなのか混合クラスなのかなど様々な要素を検討し、お子さまに合った志望校を選ぶことが大切です。
メガジュンでは、国語・算数・英語・小論文などの受験科目の対策だけでなく、こうした志望校選びについてもサポートしていますので、お気軽にお問い合わせいただければと思います。
今回は中学受験の予定は無く、また当面の帰国予定も無いとのことでした。
だからこそ、日本と心の距離が空いてしまわないように、日本の文化や歴史、地理についても楽しく学べる機会を作ってあげたいという保護者さまの想いが伝わってきました。
お子さまの性質に関しては、保護者さまはとてもよくお子さまのことを見られていて、授業の構成を考えるヒントとなる情報をたくさんいただくことができました。
AくんもBさんも、学ぶことに対する前向きな気持ちはしっかりと身に付けられているものの、集中力が続きづらいという課題があるようでした(とはいえ、お二人ともまだ小学生ですので、発達障害ではなく年相応の落ち着き度合いであると言えます)。
幸いにも、今回は保護者さまから「日本について楽しく学んでほしい」というご依頼があったため、日本のことを自由に楽しく学ぶ時間と、しっかりと漢字や書字の練習をする時間をバランスよく組み合わせ、集中力が保てるよう工夫することができると考えました。
そこで、まずはAくんとBさん、それぞれ90分ずつ体験授業を受けていただき、授業時間や講師との相性を確認していくことにしました。
【海外子女の漢字学習】Aくんの授業のポイント|楽しい!をモチベーションに
Aくんの体験授業では、「メガジュンの授業は楽しい」と感じてもらうことを最優先しました。
保護者さまから事前に伺っていたとおり、Aくんはとても人懐っこくおしゃべりが大好きな男の子でした。
インターナショナルスクールではどんな授業をしているのか、日本の補習校ではどんなお友達がいるのかなどを詳しく教えてくれました。
また、Aくんが好きな「サバイバルシリーズ」について、講師が「知っているよ。他の教え子でも好きな子がいるし、Aくんと同じように海外に住んでいる子でも『好き』って言っている子がいたよ」と教えてあげると、とても喜んでくれました。
加えて、Aくんは小学2年生のときに少しだけ日本の学校に編入したことがあることも教えてくれました(保護者さまからも事前に少し伺っていました)。
Aくんは日本にもカナダにも両方良いところがあると言い、お友達も両方にいるし、将来どちらで過ごそうか決めていないと言っていました。
また、講師が「日本とカナダで違うところは?」と尋ねると、Aくんは「先生が怒るかどうか」と答えてくれました。
Aくん曰く、日本の学校の先生は子どものことをよく怒るけれど、カナダの先生は一切怒らないそうです。
これは、他の国の海外子女の生徒さんからもよくお伺いするお話です。
日本の学校の先生はよく怒るから嫌だと言うお子さまや、それが嫌なので帰国後もインターナショナルスクールに通うという方がいらっしゃいます。
また、保護者さまからも「怒られ慣れていないので、怒らなくて優しそうな先生と相性が良さそうです」とご提案いただくこともあります。
私たちは、お子さまと講師との相性は学習指導において非常に大切だと考えています。
お子さまの性質や生まれ育った環境をしっかりと踏まえて講師をご提案しますので、気兼ねなくご要望をお伝えいただければと思います。
さて、Aくんの体験授業では、90分のうち約半分をこのようなお話の時間に充てさせていただきました。
というのも、学習指導においてはお子さまと講師との関係作りが非常に大切であり、特に初回の授業ではお子さまに「楽しかった、先生の授業をまた受けたい」と思っていただくことが重要だと考えているからです。
もちろん、楽しいだけではなく、「この先生を信じてついていきたい」という尊敬の気持ちを持ってもらうことも大切ですが、AくんやBさんのような小学生のお子さまの場合は、まずは「授業(勉強)は楽しいもの」と認識してもらうことが大切です。
保護者さまには、体験授業は講師との関係作りを重視し、お話の時間が大半を占めるかもしれない旨を事前にお伝えしました。
保護者さまは「もちろん構いません。私たちも子どもたちに楽しみながら学んでほしいと思っています」とお答えいただき、快く了承くださいました。
残り半分の時間では、漢字の勉強と日本文化の学習に取り組みました。
具体的には、ご家庭で自主的に取り組んでいる漢字ドリルを講師が見守る中で解いてもらいました。
画数が多かったり、形が独特だったりする漢字は覚えにくいようで、手が止まってしまうことがありました。
講師は「分からなかったら答えを見て大丈夫だよ」と声をかけ、分からなかった漢字は次の授業でもう一度テストするという約束をAくんとしました。
分からなかった漢字は全部で4つだったので、「毎日4つの漢字を3回ずつ書く」という約束にしました。
日本の補習校の課題がやや多かったので、Aくんの負担を増やさないためにも、まずは最低限の課題を出すことにしました。
日本文化については、これまでAくんが行ったことのある都道府県を聞き、それに関するクイズを出しました。
最近は北海道に行ったそうなので、県庁所在地や名産品についてお話ししました。
体験授業をひととおり終えると、Aくんは「もう終わり?早い!」と言ってくれました。講師からも「あっという間だったね。先生も楽しかったよ」とお伝えしました。
その後、改めて保護者さまからも感想を伺いました。
Aくんは授業が終わった後も保護者さまに「とても楽しかった」と言っていて、「先生と約束したから、この4つの漢字は絶対に覚えるんだ!」と意気込んでいたそうです。
ぜひこれからもお願いしたいということでしたので、次の週からも引き続きAくんの授業を行うことになりました。
【海外子女の漢字学習】Bさんのポイント|集中力のコントロール
Bさんはまだ小学1年生であることに加え、Aくんに比べると日本語に接する機会も少なく、日本語でお話しするだけでも疲れてしまう可能性があります。
そのため、授業の負担が大きくなりすぎないよう、90分ではなく60分授業にサイズダウンすることも視野に入れながら授業を進めていきました。
一方で、Aくんの体験授業をBさんは時々覗きに来ていて、北海道の旅行のお話などにはBさんも参加してくれていました。
ですので、最初から講師に対しては親近感を持っていただくことができ、スムーズに本題に入っていくことができました。
Bさんの授業では、音読の練習と、Bさんがもともと使っていたアプリを使って学習を進めることにしました。
音読については、日本の国語の教科書に載っている作品を講師と一緒に読んでいきます。
Bさんは講師が教科書を読んでいるだけだと気が逸れてしまうことがあるため、講師と一緒に声に出して音読することにしました。
体験授業で扱った題材は『おむすび ころりん』でした。
この作品は“おむすび ころりん すっとんとん”のリズムが面白く、日本の学校の教室でも子どもたちが楽しんで音読してくれます。
講師と一緒に音読した後、Bさんに感想を尋ねてみました。するとBさんは、「このお話は小さい頃に絵本で読んだことがある」と答えてくれました。
Bさんのお母さまは、『おむすび ころりん』以外にもいろいろな昔話を読み聞かせてくれたそうです。その中でもBさんのお気に入りは『一寸法師』で、小さな一寸法師が鬼をやっつける展開が痛快で好きとのこと。
そこで講師は、これから授業でおすすめのお話をお互いに紹介しあうのはどうかな?と提案しました。
Bさんは本を読むのが好きと事前に伺っていましたが、「その物語がどんな内容で、どこがおもしろいのか」を自分なりに解釈する力も十分備わっているようでした。
また、Bさん自身も、感想を人に伝えて共有することを楽しんでいるようでしたので、ぜひこの強みを活かして日本語の能力を伸ばしていければと考えました。
Bさんは講師の提案に「やってみる」と応えてくれました。また、その際には「日本語の本じゃなくて大丈夫。英語の本やカナダの本について先生も知りたいから、たくさん教えてね」とお伝えしました。
Bさんは早速講師にどの本を紹介しようか悩んでいるようで、お家だけでなくインターナショナルスクールや日本の補習校にもたくさんの本があることを教えてくれました。
音読や本の紹介が終わった後は、Bさんが普段使っている学習アプリでひらがなとカタカナの書き順を練習することにしました。
まずは、いつもどおりにアプリを使ってもらいました。タブレットに問題が表示され、その指示に従ってひらがなやカタカナを書いていきます。
Bさんは概ね3回に1回はミスをしてしまうようでした。Bさんはミスに慣れてしまっていて、ブブーと不正解の音が鳴っても特に気にしていない様子でした。
「いつもタブレットで勉強しているの?」と尋ねると、Bさんは「うん」と答えました。
お悩みの一つとして筆圧が弱いことも挙げられていましたが、小学1年生の段階からタッチペンでの記入が中心となっていることも、筆圧の弱さにつながっているのではないかと考えました。
また、アプリは次から次へと問題が出てきて手軽ではあるものの、その分一つ一つのミスを軽く捉えてしまっている可能性も考えられました。
ですので、Bさんの場合は紙と鉛筆で書字の練習をすることが望ましいと思いましたが、体験授業ではそれらの用意が無かったため、まずは間違えてしまった字をしっかりと意識できるようにフォローしました。
具体的には、どの文字を間違えたのかを教えてもらい、講師と一緒に空中に指で大きく字を書きます。その際、書き順を「いち、に、さん…」と口に出し、目・耳・口・手のすべての感覚を使って文字の書き順や形を意識できるようにしました。
また、「よく間違えてしまう3文字(ぬ・ね・ネ)を毎日3回ずつノートに書く」という宿題を出しました。加えて、来週は講師が問題を作成して出題することを伝えました。
解答は紙に書いてもらいたかったので、授業後に保護者さまと相談し、講師が作成したプリントをお家で印刷していただくことにしました。
Bさんの集中力が持つか心配していましたが、90分の体験授業中、Bさんはしっかりと集中を保ってくれました。
もちろん、初回ということもあり目新しさから集中力が保てた面もありましたが、こまめに問いかけたり、Bさんの興味や関心のある話題を広げたりすることによって、楽しく授業に参加してもらうことができたように思います。
【海外子女の漢字学習】スモールステップで自己信頼感を育む
2回目以降の授業でも体験授業の方針を継続し、「楽しく飽きない、次も参加したいと思える授業」を心掛けました。
毎週の課題として、Aくんは3~5字の漢字を、Bさんは2~4字のひらがな・カタカナに取り組んでもらいました。
宿題の分量としては少ないかもしれませんが、お二人ともインターナショナルスクールと日本の補習校の両方に通っており、それらの課題もあります。
そのため、課題が過度な負担にならないよう、楽しく前向きに取り組める程度の分量に敢えて抑えることにしました。
課題が多くて負担に感じたり、クリアできそうにない難しい目標を設定したりしてしまうと、お子さまは「楽しくない」「自分にはできない」と感じて、勉強に後ろ向きになってしまいます。
お子さまが学びに前向きに取り組むためには、「自分にもできる」という自己信頼感を育むことが大切です。そして、そのためにはスモールステップを設定し、小さな成功体験を積み重ねることが非常に重要です。
AくんもBさんも、少ない課題でしっかりと毎週成果を実感してもらうことで、自己信頼感を高めることができました。
また、スモールステップを設けて成功体験を得させる際には、周りが「できたね」と褒めるだけでなく、お子さま自身が「自分はできる」と実感することが大切です。
AくんとBさんの場合は「楽しく学んでほしい」というのが保護者さまのご希望であり、中学受験も目指さないということでしたので、焦らずじっくりとスモールステップに取り組むことができました。
一方、もし中学受験を目指す場合は、スモールステップを重ねつつ、徐々にペースアップしていくことになります。
例えば、毎週覚える漢字の量を増やしたり、授業で扱うテーマを入試科目に関連したものにしたり、あるいは調べ学習のアウトプットを小論文や面接のフォーマットに落とし込む練習を少しずつ取り入れたりといったことが考えられます。
ただし、この場合も急にペースを上げるとお子さまがしんどく感じてしまうので、お子さまの様子をよく観察しながら、時にはペースダウンも交えて丁寧に導いてあげることが大切です。
「中学受験をするかどうか」や「帰国子女枠で受験するか」は、個別指導の方針を検討する際の重要なポイントとなります。
ですが、どんな目標であっても、また、どんな環境・状況にあるお子さまであっても、まずは「自分はできるのだ」という自己信頼感を育むことが最も大切です。
「自分はできるのだ」という自己信頼感の土台が無いと、「保護者さまや先生から言われたから勉強している」という状態から脱することができず、自ら学びに向かう姿勢を身に付けることができません。
お子さまが学びを楽しいものと捉え、自分から積極的に学べるようにするためには、
↓
成果が現れる
↓
自分はできるという実感を持つ
↓
また頑張ろうと思える(=きっとまた成果を得られるという期待が持てる)
という好循環を生むことが大切です。
ですので、お子さまの勉強をサポートする際には、ぜひ「お子さま自身が成果を実感できるかどうか」という点を重視していただき、適切な課題の設定(スモールステップ)や声掛けを意識していただければと思います。
【海外子女の漢字学習】AくんとBさん、それぞれの成長
スモールステップと知的好奇心を大切にした授業を継続した結果、AくんとBさんはそれぞれ大きな成長を見せてくれました。
まず、Aくんは初回の授業からずっと積極的に漢字の宿題に取り組んでくれました。
画数が多かったり、形が特殊だったりして習得するのが難しい漢字もありましたが、「この漢字は難しい!先生、覚えるコツを教えて!」とAくんの方からアドバイスを求めてくれることもよくありました。
その際には、部分ごとに分解して形を確認したり、漢字の成り立ちから解説したりして、より記憶に残りやすいよう工夫しました。
物事を記憶する際には、意味や文字の形だけを覚えようとするのではなく、ストーリーと併せてインプットすると記憶に残りやすくなります。
ですので、例えば「美」という漢字を覚える際には、
「美しい」という漢字は、上の部分が「羊」、下の部分が「大」というパーツで成り立っている。
↓
なぜ「大きな羊」=「美しい」なのか?
↓
昔の中国では、大きくて立派な羊が美しいものとされていたから
というお話をしました。
すると、上の部分は「羊」が元になっているから3本線、下の部分は「大」が元になっているから1本線ということがスムーズに記憶できます。
Aくんはよく横線の数が分からなくなってしまっていたのですが、この説明をしてからは横線の数を間違えることが無くなりました。
漢字を覚えるのが苦手なお子さまの中には、
- 漢字は象形文字であること
- 部首が意味を、旁(つくり)が音を表すこと
をまだ理解できていない方がいらっしゃいます。
こうした原理・原則を説明してあげるだけでも漢字はかなり覚えやすくなりますので、ぜひ取り入れていただければと思います。
Bさんにおいては、メガジュンの授業をとおして、以前より大幅に日本語に親しみを感じてくれるようになりました。
というのも、メガジュンの授業を受ける前のBさんは、日本語の本はほとんど読まず、英語の本だけを好んで読んでいました。
ですが、メガジュンの授業を始めて2か月ほど経った頃、Bさんはおすすめの本として日本語の本を紹介してくれたのです。
その本は英語と日本語の両方で出版されていて、Bさんは最初は英語版を読んでいたそうですが、保護者さまが「日本語版もあるよ。先生に紹介してみたら?」と提案してくださったそうです。
以前のBさんであれば、日本語版を読むモチベーションが無く、「英語版で十分」と日本語版を手に取ることは無かったと思います。
ですが、メガジュンの授業をとおして日本語に親しみを持ち、また、毎週の授業で「おすすめの本を先生に紹介する」という習慣ができたことにより、Bさんは自ら日本語の本を紹介してくれるに至りました。
保護者さまは「あれだけ日本語の本を毛嫌いしていたのに、今回はすんなりと読み始めて驚きました。先生のおかげですね」と喜んでくださいました。
また、Bさんの場合は、日本語に触れる機会が単純に少ないことがひらがなやカタカナの定着しづらさにつながっていました。
そのため、毎週メガジュンの講師と日本語でやりとりしたり、書き取りの練習をしたりすることで、書き順なども含めてかなり改善することができました。
筆圧の問題に関しても、保護者さまにご協力いただき、鉛筆とノートで書き取りの課題に取り組んでもらいました。
授業の際には、書き取り練習したノートの画像にその場で花丸をつけ、とめ・はね・はらいが特にきれいにできている箇所には印やコメント、イラストを加えてフィードバックを行いました。
鉛筆とノートによる書き取り練習は、学習アプリのようにその場で○×が出ません。そうした退屈さを少しでも解消するために、授業ではしっかりとフィードバックを行うことを意識しました。
書き取り練習の丸つけがどれくらいモチベーションにつながるか、講師としては少し不安な部分もあったのですが、Bさんはお家で「先生はここを褒めてくれるはず!」「またイラストを描いてくれるかな?」と楽しみにしてくれていたそうです。
こうした工夫の成果もあり、Bさんは3か月程度でひらがなとカタカナを完璧にマスターしてくれました。
【海外子女の漢字学習】保護者さまからのメッセージとこれからの展望
Aくんは順調に漢字の学習が進んでいて、もう少しで4年生の漢字に追いつくことができそうです。また、Bさんも漢字の学習に進むことができ、これからもコツコツと取り組んでいく予定です。
お二人とも当面の帰国予定はありませんが、当初の保護者さまのご希望どおり、楽しみながら日本の社会や文化について学ぶことができています。
そんな中、保護者さまからは以下のようなメッセージをいただきました。
メガジュンさんに授業をお願いして、早いもので3か月が過ぎました。最初の面談のときから、「こんなにもこちらの意図を的確に汲み取っていただけるなんて」と感激していましたが、授業が始まる中で益々その思いが強くなりました。
我が子ながら、二人ともそれなりに勉強は楽しめるタイプだと思っていましたが、やはりAは漢字が苦手で、男の子特有?の面倒くさがりだったり、親が言うと反抗したりで、海外で暮らす中で漢字の習得は難しいのかな、ある程度は諦めなければならないのかなと考えていました。
ですが、メガジュンさんの授業が始まってからは、「先生と約束したから!」と積極的に書き取り練習に取り組み、また、なかなか覚えられない漢字があっても諦めずにチャレンジする姿に感動してしまいました笑。
加えて、日本の文化や社会の学習についても、親が教えると話の引き出しが少なく、「毎回同じ話ばかりしているな…」と悩んでいましたが、外部の先生に教わることや、探究学習の形をとっていただくことでテーマの幅が広がり、家庭内だけでは身に付けることのできなかった知識や考え方を得られているように思います。
Bに関しては、そもそも日本語に触れる機会が少なく、このままではカナダ人としてのアイデンティティが強くなってしまうのだろうな、でも強制はできないし…と半ば諦めの気持ちでいました。
ですが、メガジュンの先生の毎週の授業に楽しく参加する中で、自然と日本語や日本そのものに対する親しみを持ってくれたように思います。
日本語や日本というものは、以前はBにとって「自分のものではない」という意識が強いようでしたが、今は少しずつ自分のルーツの一つであるという感覚になってきているのではないかと思います。
彼らの人生が今後どのようなものになるかは分かりませんが、日本とカナダ、両方のルーツを大切にし、豊かな心と価値観を持った人間として成長してほしいと願っています。
そして、こんな特殊な要望を丁寧に汲み取ってくださり、私たちの希望かそれ以上のものを提供してくださっているメガジュンさんには感謝の気持ちでいっぱいです。
ぜひ今後とも継続して授業をお願いできれば幸いです。
また、日本に帰国した際にはぜひ一度直接お会いして、お礼をお伝えできればと思います笑!
引き続きどうぞよろしくお願いいたします。
===
このようなメッセージをいただき、講師一同とても嬉しく思いました。
確かに、本件のように「日本の文化や社会そのものを学びたい」というご相談は数が多いものではありません。
ですが、保護者さまの切実な想いがとても伝わってきましたし、何よりこのようなニーズに応えられるサービスはなかなか存在せず、一人ひとりに寄り添う指導を大切にするメガジュンだからこそお引き受けするべきと考えました。
特に、書字に関する指導は一定のノウハウがあるものの、探究学習に関してはお子さま一人ひとりの性質や興味関心を踏まえて調整する必要があり、すぐに成果が現れるとは限りません。
試行錯誤しながら進める部分もある中で、Bさんが日本語の本を紹介してくれたときはとても嬉しく感じましたし、保護者さまの協力の効果も非常に大きなものでした。
また、今回のケースをとおして、「定期的に触れる重要性」について私たちも改めて実感させていただきました。
特にBさんの場合は、とにかく日本語や日本のものに触れる機会が少ないことがお悩みの根本にあり、それらを週に1回、講師と日本語でお話しすることで解消できたのは、特筆すべき成果であったと考えています。
グローバル化が進む中で、日本とカナダの両方のアイデンティティを持つことは、非常に大きな強みとなり得ます。
これからもAくんとBさんがご自身のルーツを大切にし、自分らしく社会で生きていけるよう、私たちメガジュンは引き続きサポートしたいと考えています。
海外子女で同じようなお悩みのある方や、帰国子女枠で受験を考えておられる方、漢字の学習にお悩みの方は、ぜひ一度プロ家庭教師メガジュンまでお問い合わせください。
講師一同、誠心誠意サポートしてまいります。
最後までお読みいただきありがとうございました。