親が教えても反抗する!「どうせ無理」が口癖のM君が「算数できた」と言ってくれるまで【帰国子女、ASD指導実例】

この記事では、保護者さまが勉強を教えようとしても「どうせ僕には無理!」と反抗していたMくんが、プロ家庭教師の指導により自信を取り戻し、「僕は算数ができるようになった」と言ってくれるまでの道のりを紹介します。

お子さまの成長において、“自信”はとても大切です。
「自分はできる/できるようになる」と自分を信じられてこそ、人間は目標に向かって頑張ることができます。

メガジュンの講師と出会ったばかりのMくんは、自分に自信が無く、「僕は勉強が苦手だから、頑張っても無駄なんだ」と後ろ向きな発言が目立ちました。

ですが、丁寧に復習を行い、苦手を克服していくことで「僕にもできる」という自信がつき、やがて自ら前向きに勉強に取り組むことができるようになりました。
お子さまがなかなか勉強してくれないときには、その背景に“自信の無さ”があるかもしれません。

この記事では、自信を回復させることでお子さまのやる気を引き出し、お子さまが何事にも前向きに取り組めるようになるまでのプロセスをご紹介していますので、「子どもがなかなか勉強してくれない」というお悩みをお持ちの方は、ぜひ最後までお読みいただき、参考にしていただければと思います。

発達障害専門の受験プロ家庭教師
妻鹿潤
・16年以上1500名以上の指導実績あり
・個別指導塾の経営・運営でお子様の性質・学力を深く観る指導スタイル
・yahooやSmartNews、Newspicksなどメディア向け記事も多数執筆・掲載中

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【Mくんの基本情報(帰国子女のため日本の学習に遅れ、ASD傾向あり)

Mくんの基本情報(帰国子女のため日本の学習に遅れ、ASD傾向あり)

Mくんは小学4年生の男の子で、小学1年の夏から小学3年の夏までアメリカに住んでいました。

また、Mくんがアメリカに住んでいた期間はちょうどコロナ禍と重なっていました。そのため、学校は閉鎖され、授業はオンラインでの実施だったそうです。
Mくんはオンラインで授業を受けることに馴染めず、この期間にかなり勉強の遅れが出てしまったとのことでした。

加えて、Mくんは新しい環境や大勢の人が集まっている状況が苦手で、こだわりが強いというASDの傾向があるとのことでした。

WISC-IV知能検査を受けたところ「言語理解」の数値が低く、これはASDの方の特徴に当てはまりますが、一方でMくんは日本を離れていた期間があるため、そのせいで数値が低く出ている可能性もありました。
ASDに関しては医療機関を受診したものの、確定診断には至らなかったとのことでした。

ただ、何事においても「理解できないこと」への不安感が強く、分からないと感じると投げ出したりやる気を無くしたりする傾向があると保護者さまは仰っていました。

また、勉強の遅れに関しては、何とか日本の学校の勉強に追いつけるようにと保護者さまが勉強を見てあげようとするのですが、Mくんは反抗的な態度を取ることが多く、どうしたものかと大変困っていらっしゃるとのことでした。

<M君の当時の状況>

  • 小学4年生男子
  • 小学1~3年生まではアメリカ在住
  • アメリカ在住時はコロナ禍で、学校の授業はオンラインであった(この時から勉強に遅れが出始める)
  • 新しい環境や大勢の人が集まっている状況が苦手
  • 「理解できないこと」への不安感が強く、分からないと感じると投げ出したりやる気をなくしたりする
  • WISC-IV検査では「言語理解」の数値が低い
  • ASDの傾向はあるが、確定診断には至っていない
  • 保護者さまが勉強を見てあげると反抗的な態度を取る

ここまでのお話を伺って、私たちはMくんには確かにASDらしい性質があるものの、帰国子女やコロナ禍といった様々な環境的な要因によってMくんが自信を失ってしまっていることが、Mくんの今の困りごとにつながっている可能性もあると考えました。

また、Mくんが自信を大きく失ってしまうきっかけとなるエピソードもいくつかお伺いしました。

Mくんには2歳年下の弟さんがいらっしゃるのですが、Mくんがかけ算の九九がなかなか覚えられないときに、弟さんや弟さんの友だちから「4年生なのに、まだ九九ができないんだ」と言われて悲しい思いをしたことがあるそうです。
また、学校で居残り勉強をするように指示されたときには、「ここにいる子は勉強ができない子だ」といった趣旨のことを担任の先生から言われたそうです。

このような経験が積み重なったために、Mくんは自信を無くし、保護者さまが勉強を教えようとしても反抗的な態度を取ってしまっていると予想されました。

そこで私たちは、Mくんの自信を取り戻すことを最優先にサポートを進めることにしました。

また、Mくんは勉強に対して強い拒否感を持っていると思われるため、まずは講師とMくんの間で信頼しあえる関係性を築き、「勉強も苦しいばかりではない」とMくんが思えるような授業づくりを行うことにしました。

★プロ家庭教師のメガジュンが大切にしている「関係性づくり」についてはこちら↓

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【帰国子女、ASD指導実例】初回の授業とご家庭の暖かな雰囲気

【帰国子女、ASD指導実例】初回の授業とご家庭の暖かな雰囲気

「Mくんの自信を取り戻すことを最優先に授業を進めたい」と保護者さまにお伝えしたところ、「私たちもまさにその点を心配していました。

勉強が得意にならなくても良いので、Mには自信を持って、明るい気持ちで物事に取り組めるようになってほしいんです」とお話しいただきました。

保護者さまと私たちが目指す方向が同じであることが確認できたため、いよいよ実際に授業を進めていくことになりました。
初回の授業でお家に伺うと、Mくんは自分が好きな仮面ライダーのフィギュアや動物のぬいぐるみを並べてお出迎えしてくれました。

事前のヒアリングでは、Mくんは新しい環境が苦手で、初対面の人と会うのも緊張してしまうタイプだと伺っていました。
ところが、予想に反して「自分の好きなフィギュアやぬいぐるみを紹介する」というフレンドリーなお出迎えをしてくれたので、驚きとともに嬉しく思いました。

後ほど保護者さまにお話を伺ったところ、Mくんが初対面の講師に緊張してしまわないよう、事前に「新しい家庭教師の先生はこんな人だよ」「先生も自分のお子さんと一緒に仮面ライダーを見ているんだって。フィギュアを紹介したら話が盛り上がるかも」などの声掛けをしていただいたとのことでした。

ご家庭で一丸となってMくんをサポートされていることに深い感銘を受け、私たちもご期待に応えたいという気持ちを一層強くしました。

実際にMくんとは仮面ライダーの話で非常に盛り上がり、すぐに打ち解けることができました。Mくんと講師との共通項を見つけ出し、事前にMくんに伝えていただいた保護者さまのお気遣いは、本当に大変ありがたいものでした。

机に移動してからもすぐには勉強を始めず、Mくんと仲良くなるためにまずはたくさんお話しすることから始めました。
またこの時、Mくんが緊張してしまわないよう、子ども部屋には移動せず、リビングでお母さまや弟さまなど、ご家族の姿が見える環境を整えていただきました。

こちらも保護者さまからのご提案で、「個室で講師と一対一になるとMは緊張してしまうと思うので、リビングで授業をすることはできますか?」と提案してくださいました。
こうした細かな配慮をご家庭で考えておられること、そしてそれを私たちにお伝えいただけることは非常にありがたく、心強いものでした。

弟さまが隣に座ったり、お母さまの姿が見える状態であったりしたこともあってか、アメリカにいた頃の話などをMくんはたくさんお話ししてくれました。
ただし、勉強に関する話題になるとMくんは途端に表情が曇り、「僕は勉強ができないから」と口にするなど、それまで明るくお話ししていた様子から一変してしまいました。

Mくんの落ち込む様子は見ていて胸が痛むほどだったので、何とか自信を回復してほしいと強く思いました。

人間は極端に自信を失うと「自分には無理だ」という思い込みから、できることもできなくなってしまい、さらに自信を失ってしまうという悪循環に陥ることがありますが、Mくんはまさにこの状態になってしまっているのではないかと考えられました。
ですので、やはり当初の方針通り、自信の回復を最優先に授業を進めていくことにしました。

Mくんは見通しが立たない状況も苦手ということでしたので、初回の授業ではMくん自身に今後の方向性と具体的な目標を把握してもらうことにしました。

「アメリカに3年間もいて、しかもオンライン授業で大変だったよね。その分の勉強が苦手になってしまうのは仕方がないこと。自分を責めなくても大丈夫だよ」

「これから先生と一緒にゆっくり、しっかり復習していこう。具体的には、今が7月でこれから夏休みだから、夏休みの間に3年生で習うことの半分を、あとの半分は冬休みが終わるまでに復習する計画でいこう」

このように伝えると、Mくんはしっかりと講師の話を聴いてくれました。

実際に勉強ができるようになるのか不安な状態でありながらも、Mくんは講師の話に耳を傾けてくれましたので、まずは良いスタートを切ることができたように思いました。

【帰国子女、ASD指導実例】夏休みの授業とMくんの変化

【帰国子女、ASD指導実例】夏休みの授業とMくんの変化

夏休みの間は、学校で使っている教科書と計算ドリルを使って、3年生の範囲を復習していきました。

まずは教科書を見ながら講師が内容を説明し、その後で教科書の問題やその範囲のドリルの問題を解くというように、学校と同じような形で授業を進めていきました。
一度は学習している範囲ではありましたが、初めて勉強するのと同じように一単元ずつ丁寧に解説を入れていきました。

Mくんも「聞いたことあるな、知っているな」と思う単元もあったと思いますが、気を抜くことなく丁寧に取り組んでくれました。
Mくんの指導においては、とにかく自信が持てるようになることを最優先としていたので、まずは学校のテストで点数が取れるようにと、問題の解き方まで細かくチェックし、間違えたところは繰り返し練習するようにしました。

またその際、Mくんは同じ問題を何度も繰り返すのが苦手だったので、類似問題を作って解いてもらうようにしました。
加えて、算数だけでなく漢字についても3年生の範囲から復習していきました。

Mくんはこちらがペースを作ってあげると自主的に反復練習ができたので、20個ほどの漢字を覚えてくることを毎回の宿題にし、授業開始後5分で確認テストをするようにしました。
間違えた漢字は次回に持ち越し、再度テストをするという形で進めたところ、夏休みが終わる頃には、3年生で習う漢字をほぼ全て復習し終えることができました。

算数に関しては、当初は夏休み中に3年生の範囲の半分程度の復習が終えられれば良いと考えていましたが、思ったより授業が順調に進んだため、夏休みの間に3年生の範囲の大半は復習を終えることができました。
思ったよりも授業が早く進められた理由としては、Mくんが授業にしっかり取り組んでくれたことと、保護者さまの協力があります。

毎回の授業で算数の宿題を出していたのですが、保護者さまはMくんの宿題にいつも付き添ってくださっていました。
分からなかった問題は保護者さまが教えるのではなくチェックだけしてくださっていたので、どこで躓いたのかがよく分かり、次の授業での復習がとてもやりやすくなりました。

また、保護者さまがあれこれと口出ししたり、解けなかった問題を教えたりせず、ただ「見守るだけ」でいてくださったことはとても重要でした。
というのも、保護者さまが「答えが間違っているよ」「この解き方の方が良いよ」とアドバイスすると、お子さまのやる気を削いでしまうことがあるからです。

自分で頑張って解いたにもかかわらず、保護者さまから「それは違う」と言われてしまうとお子さまは「せっかく解いたのに…」と落ち込んでしまう可能性があります。
また、Mくんのように勉強に自信が無いお子さまの場合は、間違いを指摘されることでますます自信が無くなってしまうこともあります。

メガジュンをご利用いただく前は、Mくんの保護者さまも「こうしたら解けるよ」などのアドバイスをしていたそうですが、そうするとMくんは「もういい、やりたくない」と反抗的になってしまうことが多かったそうです。

当時のMくんの心情としては、間違いを毎回指摘されることのストレスや、保護者さまの言うとおりに問題を解いても勉強ができるようになるという見通しが持てないことから、「もういい、やりたくない」という言葉が出てしまっていると思われました。

一方、プロ家庭教師メガジュンの授業では、「勉強することで○○の問題が解けるようになった」というフィードバックをこまめに行い、勉強すれば学力が上がっていくという実感と見通しをお子さまが持てるようにサポートしていきます。

そのため、保護者さまが勉強を見ていた時には「もういい!」となってしまっていたMくんも、プロ家庭教師の授業をとおして「先生の言うとおりに勉強すれば、どんどん問題が解けるようになる」という期待感が持てるようになり、講師のアドバイスにも耳を傾け、指示に従うことができるようになっていました。

この「勉強すれば解ける問題が増えていく」という実感を持つことの大切さは、Mくんに限らず多くのお子さまに当てはまるものです。
というのも、なかなか勉強に取り組めないお子さまの多くは、「勉強すれば成績が上がる」という見通しや実感を持てていません。

にもかかわらず、大人から「勉強しなさい」と言われるため、「面倒くさい」「勉強しても無駄」と感じて言うとおりに机に向かってくれないケースが非常に多いです。

ですので、「勉強しなさい」と言ってもお子さまがなかなか勉強してくれないとお悩みの保護者さまには、「勉強すれば成績(テストの点)が上がる」という実感をお子さまに持ってもらうことから始めていただければと思います。
具体的には、少し勉強すれば満点が取れるくらいの難易度の小テストを作成し、「勉強したら点数が上がった」とお子さまがその場ですぐに実感できる状況を用意してあげます。

そして、実際に小テストの結果と勉強の内容を一緒に振り返りながら、「○○の勉強をしたから満点が取れたね」といった声掛けをしてあげれば、お子さまは「勉強したことで良い点が取れた」という一つの成功体験を得ることができます。

これを何度か繰り返すと、やがて「勉強にはメリットがある」という考えがお子さまの中に定着し、前向きに勉強に取り組めるようになります。

さて、Mくんの場合は、

プロ家庭教師の授業

お家での宿題

保護者さまができなかった問題をチェック

次の授業で復習

というサイクルが上手く回っていました。

そのため、当初の予定よりも復習が早く進み、2学期が始まってからは3年生の復習だけでなく、今学校で習っている4年生の範囲にも並行して取り組むことができました。
「計画よりも早く進んでいるね、すごいね」という声掛けもあってか、Mくんはこの頃から勉強に対する自信を取り戻しつつありました。

学校で習ったばかりの内容を講師が解説すると、Mくんが自ら「わかったよ。こういうことでしょ…」と自分の言葉で説明してくれることも増えました。
Mくんが自発的に説明してくれると、本当に理解できているかどうかがすぐに分かるので、講師としても大助かりでした。

また、説明の仕方や解き方を自分流にアレンジすることも多く、しっかり頭の中で考えているんだなと感心しました。
学校の授業にも積極的に参加するようになり、「今日は分かった問題があったから、発表しようと手を挙げたよ」と言ってくれる日も増えました。

Mくんが授業中に手を挙げられたと話してくれたときには、すぐに保護者さまにもお伝えし、みんなで「すごいね!」とMくんを絶賛しました。
Mくんの気持ちを鼓舞するためということもありましたが、それ以上に、Mくんが授業中に手を挙げられるほどに成長してくれたことを、保護者さまも講師も心から嬉しく思い、褒め称えたい気持ちでいっぱいでした。

学校のテストも点数がぐんとあがり、1学期は平均して30〜40点ほどだったのが、2学期では80〜90点も取れるようになりました。
夏休み前に比べると、Mくんは表情もとても明るくなり、保護者さまも大変喜んでくださいました。

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【帰国子女、ASD指導実例】2学期の成績とMくんの性質

【帰国子女、ASD指導実例】2学期の成績とMくんの性質

Mくんの授業を始めてから約半年が経ち、2学期の成績表が渡される時期になりました。

2学期はたくさん勉強を頑張りテストの点も伸びたので、保護者さまも講師も、そしてMくん自身も、うんと成績が良くなっているはずと楽しみにしていました。
ところが、あれだけ頑張ったにも関わらず、算数の成績は1学期とほとんど変わりませんでした。

理由としては、「1学期できなかった分が影響している」「テストの点ではなく提出物が重視されている」などが考えられますが、かなり期待していた分、講師としても少しショックを受けました。

また、Mくんが落ち込んでしまわないかとても心配でした。あれだけ頑張ったのに成績が伸びなかったとなると、「やっぱり自分はダメなんだ」とせっかく回復しつつあった自信がまた失われてしまうかもしれないと思ったからです。

ですが、2学期の成績表が渡された後、講師の予想に反してMくんは「算数の成績を上げるのは難しいみたい。でも、国語は上がったから、これからは国語ももっと頑張ろうと思う」と非常に前向きに話してくれました。

Mくんは言葉どおり、冬休み以降は算数に加えて国語の勉強にも自発的に取り組むようになり、その頑張りは目を見張るほどのものでした。

出会ったばかりの頃は「僕は勉強ができないから」と口癖のように言っていたMくんですが、テストの点が目に見えて上がったことで自信を取り戻し、わずか半年の間にあらゆる物事に前向きに取り組めるまでに成長してくれました。
Mくんは勉強以外にも興味や関心を持つようになり、アメリカに行っている間に辞めてしまったサッカーをもう一度やりたいと習い始めることにしたそうです。

サッカークラブでは、ブランクがあることもあって周りの友達からは遅れをとっているものの、気にせず楽しくサッカーができているそうです。
勉強をとおして自分に自信が持てるようになったからこそ、Mくんは周りの目を気にし過ぎず、自分のペースでサッカーを楽しむなど、いろいろなことに取り組めるようになったのだと思います。

もう1点、Mくんの大きな変化としては、ASD的性質の落ち着きが見られました。

授業を始めた頃、Mくんはいつも時間を気にしていました。
「時間ぴったりに授業が終わらないといけない」と強く思っていたようで、授業終了の時間が来るといつも「もう時間だよ」と教えてくれました。

Mくんは、「早く授業を切り上げたい」というよりは、「授業が長引いて先生(講師)に迷惑を掛けてはいけない」と思っているようでした。

「少しくらい時間が伸びても大丈夫だよ」といつも伝えていたのですが、それでも「時間通りに終わらなければいけない」とMくんは半ば強迫観念のようなものを抱いているようにも見えました。
授業の進み度合いによっては、「あと5分だけ解説させてほしいな」と講師が思うこともあったのですが、授業時間を延長することでMくんがストレスを感じることは避けたかったので、Mくんが「もう時間だよ」と言うときは、そのまま授業を終了するようにしました。

ですが、夏休みの復習を終え、2学期に入ってテストで点が取れるようになってきた頃から、徐々にMくんの時間へのこだわりは薄れてきました。

授業中に時間を気にすることが少なくなり、いつの間にか終了予定時刻を過ぎることもあれば、授業のキリが悪いときにはMくんの方から「この問題が終わるまで続けても良い?」と提案してくれることもありました。
Mくんは授業の開始時間にはきっちりと机に座ってくれる子で、もともとしっかりと時間を守れる性質を持っていたのだと思います。

それが、勉強の遅れによる自信の喪失やストレスによって、「時間を守らなければならない」「時間を守らないと悪いことが起きる」というマイナスの強迫観念へとつながってしまっていたように思います。

自信を取り戻してからは時間に固執することもなくなったため、保護者さまには「今の状態だと、ASDの性質については特に心配する必要は無さそうです」とお伝えしました。
また、保護者さまも「これまでは人見知りが激しくて、新しい環境に自分から行きたいということもなかったMが、自分からサッカークラブに行きたいと言って楽しく通えているのは、心の成長があったからだと思います」というお言葉をいただきました。

発達障害の特性は人それぞれであり一概には言えませんが、ストレスや不安、自信の無さなどが原因で、もともとその子が持っているちょっとした特性がマイナス方面に発現してしまう場合があります。

Mくんの場合は、時間を守るという性質や新しい人や環境に対する慎重さが、時間への固執や人見知りといった形で現れていたものと考えられます。
ですが、ストレスや不安の原因を取り除き、自信を回復させてあげることで、これらの困りごとはほとんど気にならないレベルになりました。

もちろん、今後、環境の変化などによって困りごとが生じる可能性もありますので、注意して見守る必要はありますが、現段階では気にしなくても差し支えない状態にあります。

このことを保護者さまにお伝えすると、「病院や発達支援センターで相談してもなかなか具体的なアドバイスがもらえなかったので、とてもすっきりしました」と大変喜んでいただくことができました。

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【帰国子女、ASD指導実例】5年生になったMくんとその後

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3年生の復習が完了したため、4年生の春休みからはプロ家庭教師による授業の回数を少し減らすことにしました。
空いた時間でMくんはサッカークラブに通うことができ、Mくんの興味・関心の幅が広がったことを講師一同嬉しく思いました。

また、4年生の間は算数の成績が伸び悩んでいましたが、5年生の1学期からは算数の成績も上がり、Mくんもとても喜んでいました。

「算数の成績が上がった」とMくんが講師に教えてくれたとき、Mくんははっきりと自信を持って「僕は算数ができるようになった」と言ってくれました。

ほんの1年前、Mくんは否定的な発言が多く、「僕は落ちこぼれなんだよ」「僕が発表しようと思ったってどうせ間違うし、みんなもそう思ってるよ」などの悲しい言葉をたくさん口にしていました。
ですが、プロ家庭教師と一緒に3年生の範囲を丁寧に復習し、テストの点を大幅に上げられたことで、Mくんは自信を取り戻して物事に前向きに取り組めるようになりました。

また、勉強だけでなくサッカークラブに入りたいと自分から言い出すなど、日々の生活の中でも様々なことに前向きにチャレンジする姿勢を身に付けてくれたと思います。
さらにMくんの場合は、保護者さまが心配されていたASDの傾向もありましたが、勉強に対する不安やストレス、自信の無さを取り除くことによって、ASD的な性質に起因する困りごとは自然と解消することができました。

Mくんが自信を取り戻し、たくましく成長していく様子は、子どもたちが本来持っている生命力やエネルギーさえも感じさせるもので、講師としてもとても感銘を受けました。

Mくんのように、勉強が苦手であったり、保護者さまが勉強を教えても反抗してしまったりするお子さまの場合は、背景に「自信の無さ」がある場合が多いです。
Mくんは帰国子女という特殊な環境にありましたが、帰国子女でない場合でも、勉強で一度つまずいてしまうと、その経験から自信を無くし、「頑張ろう」という気力を失ってしまうお子さまはたくさんいらっしゃいます。

お子さまがなかなか勉強してくれないというお悩みをお持ちの方は、このMくんのサポートの実例をぜひ参考にしていただき、お子さまが自信を取り戻し、自ら前向きに物事に取り組めるよう、お子さまを支えていただければと思います。

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