発達障害は薬で治療できる?エビリファイ・ストラテラの副作用も紹介

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    • 発達障害で薬物治療を行うことはある?
    • 発達障害で服薬を処方されたけれど、副作用が心配
    • 子どもでも発達障害の治療薬を飲んだ方が良い?

    発達障害の薬物治療について、このようなお悩みをお持ちの方はいらっしゃいませんか?

    ADHDの特性を抑えるための薬にはコンサータ・ストラテラなどがありますが、ASDの場合、特性そのものを抑える薬は無く、ASDに伴ううつ症状や睡眠障害を和らげるために薬が処方されることになります。

    どんな薬であっても副作用が生じる可能性はあり、特に、発達障害の方に処方される薬は脳に直接作用するものが多いことから、依存性などが気になる方もいらっしゃるかと思います。
    薬を服用することに抵抗感や不安感を持ってしまうのは仕方がありませんが、発達障害の特性と上手く付き合っていくためには、やみくもに薬を怖がるのではなく、正しい知識を身につけ効果的に服用していくことが大切です。

    私は、発達障害専門のプロ家庭教師や塾経営者として長年にわたり活動し、様々な特性を持つお子さまをサポートしてきました。

    お子さまの発達障害においては、まずは環境の調整と療育によって困りごとを軽減していくことになりますが、お薬によって特性をコントロールしているお子さまもたくさんいらっしゃいます。

    お子さまによって最適な支援方法が異なるように、お薬との相性も人それぞれ異なります。

    一般的な効果や用法・用量、副作用をしっかり理解するとともに、気になることがあればすぐに主治医に相談するようにしましょう。

    発達障害で薬を服用する場合は、少量から始め、少しずつ量を増やしていくことになりますので、服用した後にどんな効果や副作用があったか詳しく医師に伝えることは、その後の処方を調整するためにも非常に重要です。

    • ADHD、ASDで処方される薬について詳しく知りたい
    • 処方された薬の効果や副作用を調べたい
    • 薬物療法とその他のサポートを効果的に組み合わせたい

    この記事では、発達障害ご本人の方や、発達障害のお子さまをお持ちの保護者さまの参考となるよう、発達障害の治療薬について詳しく説明していきます。

    ご関心のある方は、ぜひ最後までお読みいただけますと幸いです。

    〔注意〕
    薬の効果や副作用には個人差があり、飲み合わせ等の禁忌もあります。自己判断による服薬の中止や用法・用量の変更は絶対にやめましょう。

    また、薬や医療に関する情報は日々更新されます。
    ご自身の治療内容については主治医や薬剤師の方とよく相談し、疑問があるときはセカンドオピニオンなどを検討しましょう。

    インターネットには、真偽が定かではない情報も存在します。

    「情報源は何か」「誰が発信しているのか」ということを意識し、誤った情報を鵜呑みにしないよう注意しましょう。

    発達障害・ギフテッド専門のプロ家庭教師
    妻鹿潤
    ・16年以上1500名以上の指導実績あり
    ・個別指導塾の経営・運営でお子様の性質・学力を深く観る指導スタイル
    ・yahooやSmartNews、Newspicksなどメディア向け記事も多数執筆・掲載中

    ↓『学習・生活面のお悩み相談虎の巻』はこちらをクリックしてご覧ください。

    発達障害の治療薬とは

    発達障害の治療薬とは

    発達障害は以下の3つに分類されますが、これらの中で薬によって特性そのものを抑えることができるのはADHDのみとなります。

    <発達障害の分類と特徴>

    • ADHD(注意欠如・多動症) … 落ち着きのなさ、注意散漫
    • ASD(自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群) … コミュニケーションの困難、限定された興味・こだわり
    • LD(学習障害、限局性学習症) … 読み・書き・算数など特定の技能に限定された困難

    ASDやLDについては、特性そのものにアプローチできる薬は開発されておらず(※)、特性に伴って生じる抑うつ症状や不安感、睡眠障害などを和らげる目的で投薬を行うことになります。

    ※ただし、ASDについては「オキシトシン点鼻薬」が有効な治療薬として注目されており、現在臨床実験が進められています。

    ADHDの場合、特性の原因となる脳のメカニズムが明らかになっているため、その働きを正常に近づける効果のある薬(コンサータやストラテラなど)が処方されます。

    薬を服用することで、ドーパミンやノルアドレナリンといった脳の神経伝達物質が適切に調節されるようになり、不注意や多動性・衝動性といったADHDの特性を改善することができます。

    一方、ASDやLDは、脳のどんな働きによって特性が生じるのか、まだ明らかになっていません。
    音韻処理や感覚を統合する能力が関係していると考えられていますが、具体的に脳のどの部分の、どんな働きが原因となっているかが明らかではないため、結果的に薬の開発も進みづらい状況にあります。

    また、LDについては研究の途上にあり、医師によって診断基準が異なるケースも少なくありません。

    日本でLDと診断される場合、多くはADHDまたはASDとの併発とされることが多く、LD単独の症例が非常に少なくなっています。そのため、治療薬どころか環境調整や療育についても確立された方法が未だ無い状況にあります。

    ですので、この記事ではLDに関する治療薬については記述を省略し、

    ①ADHDの特性にアプローチする薬
    ②ASDに伴う症状を治療するための薬

    の2つの観点から説明を進めていきたいと思います。

    それぞれ章ごとに分けて説明していきますので、ご興味のある箇所からお読みいただければと思います。

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    ADHDに処方される4つの治療薬

    ADHDに処方される4つの治療

    ADHDの処方薬には、「コンサータ(メチルフェニード徐放錠)」「ストラテラ(アトモキセチン塩酸塩)」「インチュニブ(グアンファシン徐放錠)」「ビバンセ(リスデキサンフェタミンメシル酸塩)」の4種類があり、それぞれの主な効果は以下のとおりです。

    ※薬品名は代表的な商品名で記載し、()には一般名を記載
    <ADHDに処方される治療薬4種類>

    • コンサータ … 「不注意」の特性に効果あり
    • ストラテラ … ADHDの特性全体に効果あり
    • インチュニブ … 「衝動性・多動性」の特性に効果あり
    • ビバンセ … ADHDの特性全体に効果あり(18歳未満のみ処方可能)

    これらの薬によって、注意散漫や衝動性・多動性などのADHDの特性を抑えることができますが、あくまで一時的に抑えられるだけで、特性そのものが根本的に無くなるわけではありません。

    ですが、特性自体が解消されないからといって、ずっと薬を飲み続けなければいけないというわけではありません。
    ADHDの方で、薬の量を徐々に減らしたり、服用をやめたりする方は多くいらっしゃいます。

    ADHDの方は、薬を飲むことで 「集中する」という感覚を知ることができます。
    集中するのがどんな感覚か分かると、薬を飲んでいないときでも何に集中できていないのかが分かり、自分なりの対策を考えていくことができます。

    特性そのものが無くなるわけではないものの、「自分はこういう時に特性が出やすいから気を付けよう」と自分なりの対処法が見つけられることで、薬の量を少しずつ減らしたり、服用をやめたりといったことが可能になります。

    また、薬を服用することで集中できるようになると、勉強や仕事の効率が上がり自信が付きます。
    気持ちが前向きになることで、困りごとを感じる機会が減ったり、上手く周りに頼れるようになったりして、結果として薬の服用が不要になるというケースもあります。

    薬の服用をどれくらい続けるかはケースバイケースですが、絶対に飲み続けなければならないものではありませんし、副作用があれば別の種類の薬に変えるなど、柔軟に対応することが可能です。
    精神科の薬=依存性といったイメージもあるかもしれませんが、必要に応じて上手く付き合っていくことが大切です。

    以下では、ADHDの4つの治療薬について、それぞれ詳しく説明していきます。

    ADHDに処方される4つの治療薬①コンサータ

    ADHDに処方される4つの治療薬①コンサータ

    コンサータは、ADHDの治療薬として最も有名な薬です。

    有名な薬なので、ADHDのあらゆる特性に効果があるような印象があるかもしれませんが、コンサータはADHDの特性のうち、「不注意」の特性を中心に効果があるお薬です。

    コンサータは、脳内のドーパミンを増やす効果があり、これによって脳の覚醒度が上がります。
    頭の中がすっきりし、ADHDの注意散漫や不注意、頭の中がモヤモヤした感じを軽減することができます。

    強い効果がある一方で、脳の興奮を高める作用があり、不眠・不安感・万能感などを伴う躁状態・食欲減退(特にお子さまの場合)といった副作用が生じることがあります。

    ADHDで衝動性が強く出ている場合は、コンサータによってさらに衝動性が強まってしまうことがあります。
    躁状態になって衝動買いやギャンブルに走ってしまう方などもいらっしゃいますので、衝動性の強い方や、双極性障害や不安障害を併発している方への処方は避けられます。

    お子さまの場合、食欲減退が見られることも多くなっています。
    朝の服用前にしっかり朝食を食べたり、薬の効果が切れた後に夕食を食べたり、栄養補助食品を摂ったりするなどで、栄養面でのフォローを行いましょう。

    また、学校のある平日だけ服用し、休みの日は服用しないといった対処方法も考えられます。成長期の大切な時期ですので、お子さまの食欲減退については注意深く対処していく必要があります。

    ADHDに処方される4種類の薬のうち、「コンサータ」と「ビバンセ」は中枢神経刺激剤に分類されます。

    中枢神経刺激剤とは、脳の報酬系(=欲望や幸福感を司る神経回路のグループ)を刺激する効果を持つ薬のことで、やる気や集中力を高める強い作用を持ちますが、依存性のリスクを伴います。
    そのため、認可された医療機関でしか処方できず、処方の際には必ず記録を付けなければならないなど、流通が厳しく制限されています。

    一方で、コンサータはメチルフェニデート塩酸塩の徐放錠(※1)であり、成分がゆっくりと体に行きわたるため、血中濃度の変化は穏やかです。

    そのため、同じメチルフェニデート塩酸塩であるリタリン(※2)に比べると依存のリスクは最小限となっているほか、ADHDの方はもともと報酬系の働きが低いことから、依存のリスクはかなり低いとされています。

    ※1徐放錠…服用した後、成分がゆっくりと体の中に放出していくよう設計された薬のこと。

    ※2リタリン…メチルフェニード塩酸塩の速放錠。成分が早く放出するよう設計されており、血中濃度の変化が激しい。
    そのため、依存性のリスクが高く、現在はナルコレプシー(居眠り病)に対してのみ処方可能とされている。

    また、コンサータは徐放錠であることから、効果は服用直後から表れ、その後12時間持続します。

    上述のように脳を興奮状態にする薬ですので、午後に飲むと夜に眠れないことが多く、必ず朝に飲むように指示されます。

    不眠やソワソワする感じ、食欲減退が気になる場合は、お子さまだけでなく成人であっても、仕事や学校の日だけ服用し、休みの日は服用しないなどの処方が可能です。

    用量については他の薬と同様に、まず少量から服用を始め、適量になるまで少しずつ増量していきます。

    体重1kgあたり1mg/日程度が最適量とされていますが、個人差があるため服用しながら調整していきます。
    なお、1日に最大で服用できる量は、子どもで54mg/日、成人で72mg/日とされています。

    ADHDに処方される4つの治療薬②ストラテラ

    ADHDに処方される4つの治療薬②ストラテラ

    ストラテラ(アトモキセチン塩酸塩)は、脳内の神経伝達物質の分泌を調節し、シグナルの伝達を改善する作用があります。

    このため、注意散漫や衝動性・多動性といったADHDの特性全般に対する効果が期待できます。
    特に、過集中(※)の改善においては大きな効果が期待されています。

    ※ADHDの過集中…一つのことに集中してしまい、他のことが手に付かなくなったり、優先順位が付けられなくなったりする状態。
    (例:掃除や洗濯など複数の家事をこなさなければならないのに、ふと目に入ったシンクの汚れが気になり、シンクの掃除に一日を費やしてしまう)

    前述のとおり、コンサータは脳の興奮を高める作用を持つことから、不安障害や双極性障害を併発している場合は処方が避けられます。

    一方、ストラテラは不安症状を軽くする作用が認められており、うつ病や双極性障害を併発している方にも処方することができます。
    また、コンサータと異なり、ストラテラは脳の報酬系を刺激しない非中枢神経刺激剤ですので、依存性はありません。

    コンサータは服用したその日すぐに効果が現れますが、ストラテラの効果が現れるのは服用を始めてから1~2週間後となります。

    少しずつ効果が実感されるようになり、安定した効果が現れるのは服用から6~8週間後とされています。
    すぐには効果が出ないため不安に感じる方もいらっしゃいますが、穏やかに効果が現れるのはストラテラの特徴ですので、理解した上で服用を続けましょう。

    薬の効果が現れてからは、一日中効果が実感できます。

    重大な副作用として肝機能障害や肝不全がありますが、発現率はあまり高くありません。

    重要ではないものの起きやすい副作用として、頭痛や吐き気、腹痛などがあります。これらの副作用は飲み始めの時期に起きることが多いため、心配なことがあれば医師や薬剤師に相談するようにしましょう。

    ADHDに処方される4つの治療薬③インチュニブ

    ADHDに処方される4つの治療薬③インチュニブ

    インチュニブ(グアンファシン徐放錠)は、α2Aアドレナリン受容体を刺激することで前頭葉の働きを改善し、情動を安定させる働きがあります。

    このことから、ADHDの多動性や衝動性を改善する効果が期待できます。ADHDの特性によって、せっかちでイライラしてしまったり、そのためにルールを守れなかったり、癇癪を起こしてしまったりする場合には優先して処方されます。

    インチュニブは、元々は高血圧の薬として開発されました。
    そのため、飲み初めには低血圧や眠気などの副作用が生じる可能性があり、少量から服薬を始めて少しずつ増量し、適量へと調整していく必要があります。

    ちなみに、高血圧に対してはより効果的な薬が開発されたため、現在はADHDの治療薬としてのみ処方されています。

    服用後はすぐに効果が現れるほか、不安障害などを併発していても服用可能であるなど、相性が良い場合はとても大きな効果が期待できます。
    ただし、ジェネリックが無く薬価が高いほか、現在は小児のADHDにしか保険適応されないため、18歳以上の場合は自費での支払いとなります。

    このため、医療費の助成制度を利用するなど、費用面においては検討が必要です。

    ADHDに処方される4つの治療薬④ビバンセ

    ADHDに処方される4つの治療薬④ビバンセ

    ビバンセ(リスデキサンフェタミンメシル酸塩)は、脳の神経細胞間でやりとりされるドーパミンとノルアドレナリンの量を増やす作用があります。

    これによって、より多くの情報が脳内で伝達できるようになるため、ADHDの不注意などを改善できると考えられています。

    ビバンセは、コンサータと同じく中枢神経刺激剤であり、依存のリスクがあります。

    また、ビバンセの主成分であるリスデキサンフェタミンは覚せい剤の原料でもあるため、流通には厳しい制限があります。依存性の懸念や原料の性質から、ビバンセを処方しない方針の医療機関も存在します。

    欧米では、ビバンセはADHDの治療薬として優先的に処方されていますが、日本では依存性や乱用のリスクについて評価中という位置づけであり、他のADHDの治療薬で効果が見られない場合のみ処方することとされています。

    また、コンサータ・ストラテラ・インチュニブは18歳以上への処方が認められていますが、ビバンセは18歳未満のみに使用が認められているのも特徴です。

    【ADHDの治療薬】コンサータとストラテラの違いって?効果・副作用・依存性などを解説
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    ASD(アスペルガー)に伴う症状を治療するための薬

    ASD(アスペルガー)に伴う症状を治療するための薬

    ASD(アスペルガー症候群)の方が薬物治療を行うのは、コミュニケーションの困難や限定的な行動・こだわりといった特性そのものを改善するためではなく、それに伴う困りごとや精神的な症状を改善するために処方されます。

    ASDの困りごとに伴う不眠や不安感、気分の落ち込みといった種々の症状は、それぞれが独立しているのではなく、互いに影響を与え合っています。
    一つの症状だけを見て薬を処方するのではなく、その人の全体の症状を見極めながら、丁寧に治療や処方を行っていく必要があります。

    <ASD(アスペルガー)に伴う症状と主な治療薬>
    ・抗不安薬
    – ASD特有のこだわりに起因する強い不安感や不安障害がある場合に処方されます。

    ・抗精神病薬
    – 感覚過敏やパニック、攻撃的な行動が激しい(易興奮性)場合に処方されます。

    ・睡眠導入薬(睡眠薬)
    – 眠りが浅い、寝つきが悪い、睡眠のリズムが不規則、朝早くに目が覚めるなどの睡眠障害が見られる場合に処方されます。

    ・気分安定薬
    – 双極性障害などを併発している場合に処方されます。

    ・抗うつ薬
    – 強迫性障害や二次障害によるうつ症状を併発している場合に処方されます。

    ・ADHD治療薬
    – ADHDを併発しており、不注意や多動性・衝動性による困りごとが大きい場合に処方されます。

    以下では、具体的な症状と主に処方される治療薬を紹介していきますが、実際の処方例は人によって異なるため、ご自身の薬のことで気になることがある場合は、医師や薬剤師に相談するようにしましょう。

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    ASD(アスペルガー)に伴う症状を治療するための薬①うつ症状

    ASD(アスペルガー)に伴う症状を治療するための薬①うつ症状

    ASDの特性は「コミュニケーションの困難」と「限定された興味・こだわり」の2つです。

    これらの特性が原因で、社会生活に困難があったり、人間関係でストレスを抱えたりすると精神的に大きな負担となり、うつ病や不安障害などの二次障害を発症することがあります。

    ASDの方のうつ症状に対しては、抗うつ薬であるSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)が処方されることが多く、その中でもジェイゾロフト(セルトラリン)が最も効果が高く、副作用も少ないとされてきました。
    ですが、子どもの場合は有効性が低いとする研究もあり、小児への処方には慎重な判断が必要となります。

    うつ症状のほか、ASDとの併発が多い強迫性障害や不安障害に対してもSSRIが処方されることがあり、さらにタイムスリップ現象(※)の改善にもSSRIが効果的な場合があります。

    ※タイムスリップ現象…昔に経験した恐怖や苦痛などの出来事が、たった今起こったかのように感じられる現象。
    たくさんの記憶が同時に引き出されるため、パニックを起こすケースもある。
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    ASD(アスペルガー)に伴う症状を治療するための薬②感覚過敏・易刺激性

    ASD(アスペルガー)に伴う症状を治療するための薬②感覚過敏・易刺激性

    ASDの方は、視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚などが人よりも敏感な「感覚過敏」の性質を持っていることがあります

    そのため、大きな音がストレスになったり、眩しさに耐えられなかったり、特定のにおいや味、感触が苦手といった困りごとを抱えることがあるほか、強い刺激によってパニックを起こしてしまう場合などもあります。

    これらの症状は、外部からの刺激に対して脳が過剰に反応してしまうこと(易刺激性)が原因と考えられており、脳の反応を抑えるためにエビリファイ(アリピプラゾール)やリスパダール(リスペリドン)といった薬が処方されます。
    エビリファイは平成29年9月に、リスパダールは平成29年2月に、それぞれ子どものASDに伴う易刺激性の治療薬として認可されました。

    エビリファイはドーパミンを調節する作用があり、感覚過敏だけでなくタイムスリップ現象にも抑制効果があるとされています。また、ASDの方に見られる反復行動のほか、チック症などにも効果があることが報告されています

    リスパダールは、中枢神経系に作用するドーパミンやセロトニンの機能を調節し、緊張や不安などの精神的な症状を鎮めることができます。精神の昂ぶりを抑制するほか、無気力感による心身の停滞を改善する効果があるなど、様々な精神症状の改善が期待できます。

    子どもの場合は、少しの刺激でもトリガーになり、パニックや激しい癇癪、自傷行為などを引き起こすことがあります。リスパダールは、こういった症状を落ち着ける効果もあるとされています。

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    ASD(アスペルガー)に伴う症状を治療するための薬③てんかん発作

    ASD(アスペルガー)に伴う症状を治療するための薬③てんかん発作

    ASDの方のうち、約30%はてんかんを持っていると言われています。

    定型発達を含めた人口全体のてんかんの有病率は1%ですので、ASDの方のてんかん有病率はかなり高いことがわかります。

    ASDとてんかんは、どちらもシナプス(※)に関連する遺伝子に共通して変異が多いことがわかっており、神経回路の形成異常が関係していると考えられています。
    これらのメカニズムを明らかにすることで、ASDの治療や、ASDの方の生活の質を改善できると考えられます。

    ※シナプス…神経細胞同士の接続部のこと。神経細胞間で興奮が伝達される際の興奮の増幅や抑制を担う。

    なお、ASDの方に処方される抗てんかん薬としては、ラモトリギン(ラミクタール)が有効性と副作用のバランスにおいて優れているとされています。

    ASD(アスペルガー)に伴う症状を治療するための薬④ADHD(注意欠如・多動症)を併発している際の処方

    ASD(アスペルガー)に伴う症状を治療するための薬④ADHD(注意欠如・多動症)を併発している際の処方

    ADHD(注意欠如・多動症)を併発している場合は、ADHDの特性である多動性・衝動性を抑えるために、インチュニブやカタプレス(クロニジン塩酸塩錠)などが処方される場合があります

    作用する仕組みはそれぞれ異なりますが、どちらも交感神経の活動を低下させる効果があり、衝動性や多動性を抑え、ワーキングメモリの働きや認知機能を高めることが期待できます。
    また、インチュニブ・カタプレスとも中枢神経系には作用しない非中枢神経刺激剤であることから、依存性は非常に低いとされています。

    ADHDとASD(アスペルガー症候群)は併発する?違いと共通点を解説
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    ASD(アスペルガー)に伴う症状を治療するための薬⑤漢方・アロマテラピー

    ASD(アスペルガー)に伴う症状を治療するための薬⑤漢方・アロマテラピー

    副作用が重く薬を飲み続けることが難しい場合や、薬を服用しても症状が改善されない場合は、漢方やアロマによる治療を行うこともあります

    漢方は、西洋薬に比べると副作用が少なく効果が穏やかなイメージもありますが、中には強い作用を持つものもあり、飲み合わせによっては危険な副作用が生じる場合もあります。
    漢方を服用する際は、自己判断はせず、必ず医師に相談するようにしましょう。(参考:漢方について | ツムラ (tsumura.co.jp)

    <ASDに伴う症状に効果的な漢方の例>
    ・桂枝加芍薬湯(けいかしゃくやくとう)
    – 四物湯(しもつとう)と組み合わせて処方されることが多い漢方です。
    桂枝加芍薬湯も四物湯も、単独では神経系に作用しませんが、2つを組み合わせることで自律神経を整える効果が現れ、胃腸のセロトニン代謝も改善されます。
    そのため、不安障害の改善に役立つほか、フラッシュバックやタイムスリップ現象への効果も期待できます。

    ・抑肝散(よくかんさん)
    – 神経の昂ぶりを抑制し、筋肉のこわばりや緊張を緩やかにする効果があります。心身ともにリラックスできるため、痙攣や手足の震え、イライラ、不眠、子どものひきつけ、夜泣きなどが改善できます。

    ・抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)
    – 神経の昂ぶりや筋肉の緊張を和らげる効果のある抑肝散に、血流の改善やリラックス効果がある陳皮と、代謝の異常や胃腸の調子を整える効果がある半夏を加えた漢方薬です。
    自律神経を安定させ、ストレスやイライラを抑える効果があるほか、整腸効果もあるため、子どもやお年寄りでも服用しやすい漢方です。

    アロマテラピーの場合、多くは精油を使用します。

    精油とは植物の香り成分を抽出したものですが、香りを嗅いで楽しむほかにも、入浴やマッサージの際に使用することができます。人によっては匂いや効果が強すぎる場合もありますので、少量を試しながら使っていくようにしましょう。

    西洋薬や漢方との組み合わせによっては、副作用が生じたり、効果が相殺されてしまったりする場合があります。

    アロマテラピーを行う際も、西洋薬や漢方と同様、必ず医師に相談するようにしましょう。

    <ASDに伴う症状に効果的なアロマテラピー>
    ・ラベンダー
    – 自律神経を副交感神経優位に導くため、非常に高いリラックス効果があります。不眠に効果があり、良質な睡眠を得ることができます。

    ・カモミール
    – 鎮静作用や緊張緩和の作用があります。リラックスしたいときに用いると良いでしょう。

    ・ベチバー
    – 緊張をほぐしてリラックスさせるとともに、ストレスを和らげる効果があります。
    神経症や情緒不安、不眠症の改善に効果があるほか、免疫力を高める作用もあります。

    漢方やアロマだけでなく、ビタミン・ミネラルなどのサプリメントが効果的な場合もあります

    身体と心は密接に関係していますので、気分の落ち込みやストレスによる食欲不振が栄養失調を引き起こし、さらに気分が落ち込んだりストレスを感じたりするという悪循環となるケースもあります。

    薬や漢方による治療とともに、バランスの良い食事や良質な睡眠など、生活リズム・習慣を見直すことも大切です。

    発達障害の治療薬(エビリファイ・ストラテラ等)のまとめ

    発達障害の治療薬(エビリファイ・ストラテラ等)のまとめ

    この記事では、ADHDやASD(アスペルガー)といった発達障害の治療薬について詳しく紹介してきました。

    改めてポイントをまとめると、以下のとおりです。

    <POINT>

    • ADHDに対しては、特性に直接アプローチする薬がある
    • ASD(アスペルガー)の特性に直接作用する薬は、現在のところ存在しない
    • LD(学習障害)は研究途上の発達障害であり、治療薬も現在のところ存在しない
    • ADHDの不注意特性の改善にはコンサータが効果的
    • ストラテラはADHDの特性全般に、インチュニブはADHDの多動性・衝動性の改善に効果がある
    • ASDに伴ううつ症状など改善には、SSRIの中でもジェイゾロフトが効果的とされている
    • ASDに伴う諸症状の改善には、西洋薬のほか、漢方やアロマテラピーも効果的である
    • 処方内容や副作用など気になることがある場合は、必ず医師や薬剤師に相談する

    発達障害の特性は人それぞれであり、薬との相性も人によって全く異なります

    医師の指示に従い服薬することはもちろんのこと、処方の内容や副作用について不安がある場合は、必ず医師や薬剤師に相談するようにしましょう。

    私たちプロ家庭教師メガジュンでは、発達障害のお子さまの学習指導だけではなく、生活面での困りごとやメンタル面でのサポートなど、幅広くご相談を承っています。

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