発達障害の人が読解力を高める方法とは?小学生・中学生・大人になってからでも改善できる?

発達障害の方で、読解力が低いとお悩みの方はたくさんいらっしゃいます。読解力が低いと、国語のテストの点が伸びなかったり、算数の文章題が解けなかったりするだけでなく、チャットやSNSなど文字によるコミュニケーションでも文意を上手く汲み取れず、思わぬトラブルを招いてしまう可能性があります。

読解力が低いと言っても、人によってその原因は様々です。文字を読むこと自体に困難があるという場合(読字障害)もあれば、集中力が続かないことが原因の場合もあります。

読解力を高めるためには、まずは読解力が低くなっている原因を明らかにする必要があります。自分のつまずきがどこにあるのかを見極め、原因に対して効果的にアプローチしていきましょう。

最近では、読字障害を改善するためのトレーニング方法についても研究が進んでいます。適切なトレーニングを行えば、今よりは必ず読解力を上げることができますので、焦らずじっくりと取り組んでいきましょう。

この記事では、発達障害専門のプロ家庭教師が、読解力の高め方について詳しく解説していきます。お子さまから大人の方まで参考にしていただける内容となっていますので、ぜひ最後までお読みいただけますと幸いです。

発達障害専門のプロ家庭教師
妻鹿潤
・16年以上1500名以上の指導実績あり
・個別指導塾の経営・運営でお子様の性質・学力を深く観る指導スタイル
・yahooやSmartNews、Newspicksなどメディア向け記事も多数執筆・掲載中

発達障害と読解力の関係

発達障害と読解力の関係

発達障害は、

  • LD(学習障害、SLD(限局性学習症))
  • ADHD(注意欠如・多動症)
  • ASD(自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群)

の3つに分類されます。それぞれは併発する場合も多く、「発達障害で読解力が低い」という場合は、どの発達障害のどの特性が読解力の低さに影響しているのかをしっかりと分析していく必要があります。

また、LDによって文字を読むこと自体が難しいことに加え、ADHDの集中力の低さやASDの社会性・コミュニケーションの不全が複合的に合わさることで、さらに読むことの困難が大きくなっている場合もあります。

読解力の低さの原因が複合的である場合は、

1.LDによる読むこと自体の困難さ
2.ADHDによる集中力の持続しづらさ
3.ASDによる社会性・コミュニケーションの不全

といった優先順位で、より根本的かつ対処しやすいものから改善を目指していくと良いでしょう。

ただし、これらの優先順位や取り組み方についても、効果の現れ方は人それぞれ違います。言語聴覚士など専門家の意見も踏まえながら、自分に合う方法を見つけていくようにしましょう。

以下では、それぞれの発達障害の特徴と読解力の関係について詳しく解説していきます。

発達障害と読解力①LD(学習障害(SLD(限局性学習症))

発達障害と読解力①LD(学習障害(SLD(限局性学習症))

LD(学習障害)とは、知的な発達に遅れが無く、視覚や聴覚にも問題が無いものの、読み・書き・計算といった特定の学習スキルに困難が生じる発達障害のことを指します。医師や診断時期によっては「SLD(限局性学習症)」という診断名である場合がありますが、同じ症状を指しているものと理解して構いません。

読み・書き・計算のどれに困難が生じているかによって、LDは以下の3つに分類されます。

<LDの3分類>

  • 読みの困難 …読字障害(ディスレクシア)
  • 書きの困難 …書字障害(ディスグラフィア)
  • 計算の困難 …算数障害(ディスカリキュア)

このうち、読字障害と書字障害は併発する場合が多く、これらを合わせて「発達性ディスレクシア(発達性読み書き障害)」と呼ぶこともあります。

これらの中で、読解力の低さに関係するのは「読字障害」で、“文字を音に結び付けながら認識し、意味を理解すること”に根本的な苦手さが見られます。具体的な特徴には、以下のようなものが挙げられます。

<読字障害の特徴>
○音読がたどたどしい
‐「こ、う、え、ん、に」など一文字ずつ読んでいる感じがする(単語をひとまとまりで捉えていない)
○単語の文字を抜いて読む
‐「ひつじ」 → 「ひじ」
○単語を飛ばして読む
‐「4月ごろのことでした」 → 「4月のことでした」
○単語を飛ばし、さらに言い換えて読む
‐「小さな犬だろうな」 → 「小さいだろうな」
○助詞を読み間違える
‐「馬車が」 → 「馬車を」
○動詞を言い換える
‐「~がおりました」 → 「~がありました」
○拗音で読む
‐「じゆう」 → 「じゅう」
○書かれていない文字を付け足して読む
‐「~どころではありませんでした」 → 「~どころばかりではありませんでした」
○濁音を清音で読んだり、またはその逆で読んだりする
‐「イングランド」 → 「インクラント」
○漢字が読めない
‐「東北」 → 「こうほく」

こうした特徴は、目で見た文字情報を正しく処理できていないために生じます。

文字情報の処理が間に合わないことによって、間違えて読んでしまうだけでなく、「多分こんなことが書かれているのだろう」と脳が勝手に想像し、言葉を言い換えたり、書かれていない言葉を付け加えたりして読んでしまうと考えられています。

私たちは「りんご」という文字を見たとき、「り・ん・ご」と頭の中で音を再生し、さらに赤い色の果物をイメージすると言う順序で情報処理を行います。すなわち、「読む」という行為は、頭の中で文字を音として再生しながら単語を捉え、さらに文章全体の意味を理解するというプロセスによって行われます。

読字障害の方は、このプロセスのうち、「り・ん・ご」という音を頭の中で再生する時点でつまずきが見られます。このプロセスは「音韻処理」と呼ばれます。

音韻処理の不全は、文字と音の結びつきを強めるトレーニングを行うことで改善できると考えられています。詳しくは「2-2.発達障害の人が読解力を高めるための4つの方法②読み上げツールの活用」で解説しますが、文章をハイライトしながら読み上げるソフトなどを活用することで、少しずつ音韻処理の働きを向上させることができます。

音韻処理のトレーニングは、言語聴覚士など専門家のアドバイスを受けながら取り組むことをおすすめします。読みの困難について気になることがある方は、お住まいの地域の発達支援センターなどに相談してみると良いでしょう。

読字障害の要因としては、音韻処理の不全だけでなく、「視覚情報の処理が苦手」というタイプの方もいらっしゃいます。文字の形が歪んで見えたり、にじんで見えたりするタイプの人は、感覚統合の力が弱いと考えられますので、文字の形を捉える力を養うために、書くことのトレーニングにも並行して取り組むなどすると良いでしょう。

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発達障害と読解力②ADHD(注意欠如・多動症)

発達障害と読解力②ADHD(注意欠如・多動症)

ADHD(注意欠如・多動症)の特性は、「不注意」と「多動性・衝動性」です。いずれの特性も、集中力のコントロールの苦手さが原因となっており、一つの物事に集中できないのが「不注意」、集中力にブレーキが掛けられず、そわそわしたり衝動的に行動したりしてしまうのが「多動性・衝動性」となって現れます。

不注意の特性が強い人(=不注意優勢型)は、文章を読んでいても、文字を目で追っているだけで内容が頭に入ってこないということがあります。これは、ADHDのワーキングメモリー(※)の低さにも関係していて、「文字を読みながら内容を理解する」という二つの働きを脳が同時にこなすことができていないものと捉えることもできます。

※ワーキングメモリー…情報を一時的に保持しながら処理する脳の働きのこと。

詳しくは「発達障害でワーキングメモリーが低い場合の対処法は?改善のためのトレーニングを紹介」の記事で解説しています。

字面を追っているだけになりやすい人の場合は、「内容が分かるまで次に進まない」という癖を付けることが大切です。「文字を追うこと=読むこと」ではありませんが、小さい頃からの習慣などによって、「文字を追ったのだから読んだことになる」という認識を持っている人は意外と多くいらっしゃいます。

そのページの内容を自分の言葉で説明できるまで、次のページに進まないというルールを設けたり、何かを読んだらアウトプット(人に話す、要約をノートに書く)したりするなどの習慣を付けると良いでしょう。

多動性・衝動性が強い人(=多動・衝動優勢型)は、文章の意味を早とちりしてしまうケースが非常に多くなっています。特に反語的表現「~だろうか、(いや、~ではない)」などのような間接的な表現の解釈が苦手で、全く逆の意味で捉えてしまう場合もあります。

字面に対して反射的に反応してしまうタイプの人は、国語の読解問題で間違えてしまうだけではなく、日常のコミュニケーションでもトラブルを引き起こしやすくなります。

例えば、メッセージアプリで「何で来るの?」と言われたとき、相手は交通手段を聞いているだけにもかかわらず、「あなたは来ないでほしい」という意味だと早とちりして「そんなこと言うなら、もういい!」と怒ってしまうようなケースです。

また、SNSの炎上などにも注意が必要です。著名人の投稿に対して、本来の意味が汲み取れず見当違いなリプライをし、その著名人のファンに激しい非難を受けてしまうというケースがありますが、その一因には「字面だけを見て反射的に反応してしまう」という衝動性が関係していると思われます。

行間を読めないという点では、ASDの社会性・コミュニケーションの不全とよく似ていますが、ASDと違い、ADHDの方は落ち着いて考えれば行間を理解することが可能です。

チャットやSNSでやりとりとする際は、投稿ボタンを押す前に一息ついたり、5分経ってから投稿したりするなど、勢いに任せて発信してしまわないようにすると良いでしょう。

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発達障害と読解力③ASD(自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群)

発達障害と読解力③ASD(自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群)

ASD(自閉スペクトラム症)の特性は、「社会性・コミュニケーションの不全」と「限定された興味・こだわり」です。ASDの方の読解力が低いのは、これらの特性の中でも特に「社会性・コミュニケーションの不全」が関係していると考えられます。

ASDはその名称にもあるとおり、スペクトラム=連続性を持っています。ASDは知的発達や言葉の遅れの有無によって自閉症・高機能自閉症・アスペルガー症候群に分類されますが、その分類の間にもグラデーションがあり、言葉の遅れが無いとされるアスペルガー症候群の方の中にも、言葉を扱うことの苦手さを持っている方は多くいらっしゃいます。

<ASDの分類>

  • 自閉症 …知的な遅れと言葉の遅れを伴う自閉傾向
  • 高機能自閉症 …知的な遅れはないものの、言葉の遅れを伴う自閉傾向
  • アスペルガー症候群 …知的な遅れと言葉の遅れのいずれも伴わない自閉傾向

発達障害の診断の際には、多くの場合ウィスクラー式知能検査を受けることになります。ウィスクラー式知能検査では、言語理解・処理速度・ワーキングメモリー・知覚推理の4つの指標と、それらを総合した全検査IQ(FSIQ)を測定することができますが、ASDで言葉を扱うことが苦手な方の場合は、言語理解の数値が低くなる傾向にあります。

ASDの方は、一般的には言葉よりも数字やイメージを扱うことの方が得意とされており、ウィスクラー式知能検査では知覚推理の数値が高くなりやすいとされています。一方、ASDでも言語理解の能力が高く、数か国語を易々とマスターしてしまうタイプの方もいるため、「ASD=言語能力が低い」と一概に言うことはできません。

また、音韻処理の不全(LD的な性質)で言語理解の数値が低くなっているのか、それとも文脈の読み取りやコミュニケーションの苦手さ(ASD的な性質)によって低くなっているのか、どちらが要因なのかをウィスクラー式知能検査だけで明らかにすることは困難です。

そのため、読むことの困難の原因を明らかにするためには、知能検査だけでなく音読検査など、その他の検査も併せて行う必要があります。

ただ、学習障害に関しては、医師の間でも認識や理解度にかなり差があり、「学校の国語のテストの点数が低いから読字障害」「計算が遅いから算数障害」と短絡的に診断されるケースも少なくないようです。(結果として適切ではないアプローチをしてしまい、困った末に私たちの元に相談に来られる保護者さまも少なくありません。)

もちろん、教育的な視点と医学的な視点は異なるため、医師には医師なりの診断基準があるとは思いますが、読むことの困難さがLD的性質によるものなのか、ASD的性質によるものなのかで、その後のアプローチは全く異なったものになります。

診断名だけを重視する必要はありませんが、医学的な視点から原因をしっかりと分析することは、より良いアプローチを行うためにも重要です。もし、音読検査もせず、ウィスクラー式知能検査だけで読字障害や書字障害の診断をされた場合は、積極的にセカンドオピニオンを検討しても良いかもしれません。

ASDの特性である「社会性・コミュニケーションの不全」が原因で読解力が低くなっている場合は、文章表現や論理展開のパターンを覚えてしまう方法がおすすめです。

例えば、

  • 「拳を硬く握りしめた」 →悔しい、怒っている
  • 「軽い足取りで」 →ワクワクする、楽しみ
  • 「しかし」「でも」 →前の段落と逆の内容
  • 「つまり」 →これまでの段落で述べたことの要約

などのように、文章にはお決まりの表現があります。ASDの方はできるだけ多くの文章に触れ、これらをパターンとして覚えてしまうようにしましょう。

臨機応変な対応を苦手とするASDの方にとって、「パターンで覚える」という手法は非常に効果的です。コミュニケーションの苦手さを改善するためのソーシャルスキルトレーニングでも、特定のシチュエーションに対して、適切な対応を一対一対応で学習していくという手法が取られますが、読解力のトレーニングにおいても同じ手法が有効であると言えます。

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発達障害の人が読解力を高めるための4つの方法

この章では、発達障害の人が読解力を身に付けるための具体的な方法についてお伝えしていきます。小学生から大人まで参考にしていただける内容ですので、ぜひご一読ください。

発達障害の人が読解力を高めるための4つの方法①分かち読み

発達障害の人が読解力を高めるための4つの方法①分かち読み

分かち読みとは、文章を文節ごとに区切って読む方法です。読字障害で音韻処理が苦手なお子さまには特に効果的な手法で、私が受け持ったお子さまの中にも、この分かち読みのトレーニングを続けることで読む力がつき、学力全体の向上につながった方がいらっしゃいます。(実録記事はこちら→【実話】ASDとLD併発のSくんが私立中学受験合格を目指す奮闘記 | 発達障害・ギフテッド専門のプロ家庭教師 メガジュン (pro-megajun.com)

音韻処理の不全がある方は、文章を読むときに単語をまとまりとして捉えるのが難しく、例えば「私は公園に行きます」という文章の場合だと、「私は、公園に、いきます」という文節ごとに区切るのではなく、「わ、た、し、は、こう、えん、に、い、き、ま、す」と一文字ずつ区切るような読み方になります。

そこで、単語をひとまとまりとして捉えられるようにするために、以下の手順でトレーニングを行います。

<分かち読みトレーニングの手順>
1.本人が文章を音読する
-文章に目を通してもらうことが目的のため、詰まりや読み誤りがあっても指摘しない
2.指導者が文章に分かち線を引く
-「私は/公園に/行きました」「庭で/犬が/鳴いている」 など
3.指導者が文章を音読し、本人には分かち線を引いた文章を目で追ってもらう
4.本人が、分かち線を引いた文章を見ながら音読する
5.本人が、文章に分かち線を引く

このトレーニングは、文章が単語のまとまりから成り立っていることを認識し、さらにまとまりごとに文字を捉えるという作業を繰り返すことで、音韻処理の能力を高めることを目的としています。

音韻処理の能力は、生まれつきの性質に大きく左右されるためすぐには改善できませんが、日々コツコツと取り組むことで少しずつ文章が読めるようになっていきます。

音韻処理は読解力の一番基礎の部分になりますので、できるだけ年齢の低いうちから取り組むことが望ましいでしょう。小学校低学年で読字障害の傾向が見られる場合は、発達支援センターなどに相談し、言語聴覚士など専門家によるサポートを受けることをおすすめします。

発達障害の人が読解力を高めるための4つの方法②読み上げツールの活用

発達障害の人が読解力を高めるための4つの方法②読み上げツールの活用

読字障害を持つ子どもたちのための補助ツールとして、デジタル教科書は非常に有効です。有名なものには「マルチメディアデイジー教科書」や「アクセスリーディング」などがあります。

○マルチメディアデイジー教科書
通常の教科書と同じ本文や画像を使用し、本文と音声をシンクロさせて読むことができるデジタル教科書。音声を聞きながらハイライトされた本文を読み、同じ画面上で画像を見ることもできます。(公式サイト:マルチメディアデイジー教科書 (dinf.ne.jp)

○AccessReading
読むことに困難があり、特別な支援を必要とする子どもたちのために作られたオンライン図書館。東京大学先端科学技術研究センター社会包摂システム分野と、同大学図書室が共同で運営しており、様々な音声教材が提供されています。(公式サイト:AccessReading

これらのサービス(ツール)は、単に教科書や教材を音声で読み上げるだけでなく、読み上げている箇所をハイライトしたり、読み上げ速度を調整したりすることができます。

読みの困難の根本原因は、「文字と音の結びつきの弱さ」ですので、読み上げられた音声と文字のハイライト箇所がシンクロすることで、単に読みやすさを提供するだけでなく、文字と音の結びつきを強化する効果も期待できます。

読むことに困難を持っている方は、苦手さゆえに文字や文章を避けてしまいがちです。そうすると、ますます文字や文章への親しみが薄れ、より読むことが苦手になるという悪循環に陥ってしまいます。

こうしたツールは、文章に親しむきっかけや「自分にも読める」という自信を持つことにもつながるため、読字障害を持つ方にとっては非常におすすめです。

発達障害の人が読解力を高めるための4つの方法③文章に親しむ/文章を楽しむ

発達障害の人が読解力を高めるための4つの方法③文章に親しむ/文章を楽しむ

お子さまの場合で、長い文章だと読む気が起こらなかったり、最後まで集中できなかったりするときは、物語やお話に興味を持てるようにサポートしてあげましょう。低年齢のお子さまで、読み聞かせのときもじっと座っていられないなどの場合は、ただ本文を読むのではなく、登場人物の心情やその後の展開について会話を挟みながら読んであげるようにします。

例えば、『桃太郎』を読む場合には、「大きな桃だって!どれくらいの大きさかな?」「○○ちゃんは、きびだんごを食べたことはある?」など、イメージを膨らませるような質問を交えると良いでしょう。「鬼ヶ島ってどんなところかな?」など、その後の展開を考えさせる質問も良いですね。

幼い頃にこうした経験をしておくと、大きくなってからも文章を読むときに「○○ってどういうことだろう?」「この後はどんな展開になるのだろう?」と考えながら読むことができるようになります。

また、小学生以上のお子さまや大人の方の場合は、漫画でもドラマでも構いませんので、「考えながら鑑賞する」という癖を付けましょう。週刊連載の漫画で来週の展開を予想したり、ドラマでCM後の展開を予想しながら見たりするだけでも、かなり頭を使うはずです。

実は、漫画やドラマには、1回見ただけでは気付けないような伏線がたくさん散りばめられています。まさかの展開だと感じた場合でも意外なところに伏線が貼られていて、「登場人物Aのあのセリフは、ここに繋がるのか!」といった発見をするのは、作品鑑賞の醍醐味といっても過言ではありません。

もちろん、教科書の作品やテスト問題はエンタメ作品ほど面白いものではありませんが、逆に込み入った伏線が貼られているわけでもありません。前後のつながりを意識するだけでも読解力は上がりますので、日頃からそういったクセを付けることを意識するようにしましょう。

発達障害の人が読解力を高めるための4つの方法④段落ごとに要約する

発達障害の人が読解力を高めるための4つの方法④段落ごとに要約する

読解力を高めるためには、集中力をコントロールすることも重要です。長い文章を一気に読むのは定型発達でも難しく、それが興味が無く難解な文章であればなおさらです。

発達障害で集中力の持続が難しい場合は、一度に文章を読み切ることを目指さず、分かったことは一旦メモとしてアウトプットするなどして、細切れに読んでいくと良いでしょう。

長い文章を読めば読むほど、頭の中には覚えておくべき情報が蓄積されていきます。発達障害の人はワーキングメモリーが低いため、頭の中に情報がパンパンに入った状態では、次の情報を処理することができず、結果として字面を追っているだけになってしまいます。

例えば、一つの段落を読んだら、その要点を余白にメモしてみましょう。「○○について」など、ごく簡単な内容で構いません。メモができたら次の段落に進み、読めたらまた余白にメモをします。

メモをしながら最後まで読むと、余白には文章全体の簡単な要約が完成しているはずです。(例:森林破壊について→アマゾンで深刻→二酸化炭素が増えている→温暖化の原因→森林破壊をやめるべき)

このとき完成した簡単な文章の要約が、実は読解力の向上においては非常に重要なポイントとなります。文章を読むときに最も大切なのは、「筆者が何について話しているのか(テーマ)」と「筆者はどう思っているのか(主張)」の2つを把握することです。

この2つは文章の中で最も重要であるからこそ、分かりやすく堂々と書かれています。しかしながら、読解力が低い人は漫然と文章を追ってしまうため、はっきりと書かれているにもかかわらずテーマや主張を見落としてしまいます。

段落ごとに概要をメモしていくことで、見落としがちなテーマや主張を見つけやすくなります。また、そもそもテーマは冒頭に、主張は末尾に記されることが大半であるため、これだけでかなり読解力を高めることができます。

さらにこの「段落ごとのテーマ書き出し」は、読んでばかりではなく、「内容を解釈し、書き出す」という作業が間に入ることでリズムができ、より集中しやすくなるという効果も期待できます。

長い文章を読んだのに、結局何の話だったのかわからないというタイプの人や、読んでいるうちに集中が途切れてしまうタイプの人は、ぜひこの方法をお試しください。

発達障害は文章が書けない?作文・小論文の対策を解説(ADHD・ASD)
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発達障害と読解力のまとめ

発達障害と読解力のまとめ

この記事では、発達障害の方の読解力が低くなりやすい理由や、読解力を高める方法などについて詳しく解説してきました。改めてポイントをまとめると、以下のとおりです。

<POINT>

  • 発達障害はLD・ADHD・ASDの3つに分類され、それぞれ読解力の低さにつながりやすい特性を持っている
  • 発達障害で読解力が低い場合は、根本的かつ対処しやすい特性から改善を目指すと良い
  • 読字障害は、多くの場合、文字と音を結びつける脳の働き(=音韻処理)が弱いことが原因となっている
  • 読字障害は、音読がたどたどしくなるほか、読み間違いや単語の言い換えといった特徴も見られる
  • ADHDは集中力のコントロールのしづらさを特性に持つ発達障害で、集中して文章を読めなかったり、早とちりしたりすることで読解力が低くなる
  • ASDはコミュニケーションの不全を特性に持つ発達障害で、文章の行間が読み取れなかったり、比喩表現が理解しづらかったりすることで読解力が低くなる
  • 読解力を向上させるためには、読解力が低くなっている要因を分析し、要因に対して効果的にアプローチすることが必要
  • 分かち読み/補助ツールの使用/展開を予想しながら読む/段落ごとに要約するなどにより、読解力を向上させることができる

読解力は、国語のテストだけでなく、大人になってからも様々な場面で必要となるスキルです。また、SNSやチャットツールなど、文章でのコミュニケーションが求められる現代社会において、読解力の重要性はますます高まっていくでしょう。

発達障害のある人は、特性によって読解力が低くなる場合がありますが、原因をしっかりと見極めアプローチすることで、読解力を向上させることは十分可能です。

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最後までお読みいただきありがとうございました。

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