発達障害は文章が書けない?作文・小論文の対策を解説(ADHD・ASD)
発達障害のお子さまで、文章を書くのが苦手な方はたくさんいらっしゃいます。作文などの課題が出たときに「何でもいいから書いてごらん」と言っても、全く筆が進まない…というお子さまも少なくありません。
発達障害のお子さまが文章を書くのが苦手な理由には、以下の3つが考えられます。
1. 頭の中で情報を整理するのが苦手
2. 出来事や気持ちを言葉としてアウトプットするのが苦手
3. 「書く」という行為に困難がある(書字障害/ディスグラフィア)
このような困難を持ったお子さまに対して、「とにかく書いて」と指示しても書けるようにはなりません。なぜ書けないのかをきちんと理解し、適切なサポートを行う必要があります。
文章を書くことは、小学校の作文だけでなく、受験のときの小論文や、大学生になってからもレポートを書いたり、社会人になってから報告書をまとめたりと、一生必要となるスキルです。
幼い頃に苦手意識を持ってしまうと、それ以降もなかなか改善されず、後々に大きな困難を抱えることにもつながりかねません。
そこでこの記事では、長年にわたり発達障害のお子さまを支援してきたプロ家庭教師の視点から、お子さまの文章力を高めるためのコツを解説していきます。
ポイントさえ押さえれば、発達障害のお子さまでも文章力を高めることは十分可能ですので、ぜひ最後までお読みいただき、参考にしていただければと思います。
発達障害の子どもが文章が書けない3つの理由
発達障害は、ADHD・ASD・SLDの3つに分類されます。
<発達障害の分類>
- ADHD(注意欠如・多動症)…落ち着きが無く、集中しづらい
- ASD(自閉症スペクトラム)…コミュニケーションが苦手、こだわりが強い、感覚過敏
- SLD(限局性学習症、学習障害)…読み・書き・計算など特定の学習スキルに困難がある
これらの発達障害は併発する場合も多いため、この記事では特に区分せず解説を進めていきます。
ただし、それぞれの発達障害について概要を知っていただいた方が、記事の内容をより深く理解いただくことができます。
それぞれの発達障害の詳細については以下の記事で詳しく解説していますので、ご関心のある方は是非ご一読ください。



出来事や気持ちを言葉で整理して表現するためには、実は非常に高度な脳の働きが必要です。
定型発達のお子さまでも作文が苦手な方が多いのはこのためで、“そもそも何をどう考えて良いのか分からない”という状態でやる気を無くしてしまったり、思考停止してしまったりするお子さまがいらっしゃいます。
発達障害のお子さまは、定型発達のお子さまと比べて、「思考を整理する」「出来事や気持ちを言葉で表す」ことが苦手な傾向にあります。また、書くことに困難があるSLDのお子さまの場合は、文章の構成はできても、文字を書くことでつまずいてしまう場合があります。
お子さまが特にどの部分でつまずいているのか、まずは分析してみましょう。
以下では、発達障害のお子さまが文章を書くのが苦手である理由や、よくあるつまずきポイントについて解説していきます。
発達障害の子どもが文章が書けない3つの理由①情報を整理できない
発達障害のお子さまは、頭の中で情報を整理することが苦手です。
ADHDの方の場合は、集中力のコントロールが苦手なことから、いろいろなことが同時に気になってしまい、「時系列ごとに出来事を整理する」「必要な情報を取捨選択する」ということが苦手になります。
また、ASDの方の場合は、こだわりの強さなどが要因となり、「興味の無いことを思い出せない」「不必要に細かい情報ばかり記憶してしまう」などの困りごとを抱える場合があります。
作文を書くときには、テーマに沿った内容について、「何を書こうかな?」とまずはイメージする必要があります。ですが、発達障害の方の場合は上述の理由から、
- 何を書こうか考えたいのに、別のことを考えてしまう(ADHD傾向)
- テーマに沿ったアイデアが全く思い浮かばない(ASD傾向)
- たくさんのアイデアが浮かびすぎて、取捨選択できない(ADHD傾向)
といった形で、アイデア出しの時点でつまずいてしまうことが多くなります。
原稿用紙を前にしながら全く筆が進まない、もしくは別のことを始めてしまうお子さまはこのタイプである場合が多く、「書いてごらん」と言われても、何を書いてよいのかわからないという状態になってしまいます。
また、お子さまとお話しするとき、「話がよく飛ぶ」「思いついたことから話すため、話の要領が得なかったり、出来事の順番がぐちゃぐちゃになったりする」という場合も、アイデア出しの時点でつまずきやすいお子さまであると考えられます。
というのも、人間の脳は「話す→書く」という順番で発達していきます。ですので、話す内容を整理するのが苦手なお子さまは、書く内容を整理することも苦手であると予想できます。
アイデア出しが苦手なお子さまの場合は、思考を整理するトレーニングから始めましょう。
思考を整理するトレーニングには、「インタビュー形式で考える」「図で表す」「アイデアを全て書き出してみる」などの方法があります。詳しい方法は「2.発達障害のお子さまが文章を書けるようになるための3つの方法」で解説していますので、ぜひご覧ください。
発達障害の子どもが文章が書けない3つの理由②出来事や気持ちを言葉でアウトプットできない
何となく頭の中で書きたいことがイメージできたら、次は文章として具体的にアウトプットしていく必要があります。
ですが、発達障害のお子さまの中には言葉を扱うのが苦手で、書きたいことはあるけれど上手く文章にできない場合があります。
発達障害の診断の際には、多くの場合、ウィスクラー式(WISC-IV)という知能検査を受けます。
この検査では、言語理解・処理速度・ワーキングメモリー・知覚推理の4つの指標と、それらを合わせた全検査IQ(FSIQ)を測ることができますが、イメージの言語化が苦手なお子さまは、このうち「言語理解」の数値が低くなる傾向にあります。
また、WISC-IVを受けたことのないお子さまの場合でも、
- 同年代の子と比べて語彙が少ない
- 言葉がすぐに出てこないときがある
- 助詞(て、に、を、は)の間違いが多い
- 相手の話を正しく理解していないときがある
- 文字数の多い本を読みたがらない
といった特徴が見られる場合は、言語理解が苦手な可能性があります。
言語理解の苦手さの背景には、音韻処理(文字と音を結びつける脳の働き)の機能不全が関係していることがあります。
音韻処理不全の程度が大きく、読むことの困難が生じている場合は、読字障害(ディスレクシア)と診断されます。読字障害については、言語聴覚士による訓練などを受けながら、状態の改善を目指すことになります。
言葉を扱うのが苦手なお子さまの場合は、まずは言葉に親しむことが大切です。
幼い頃からの読み聞かせは言語理解の力を高めると言われていますが、小学校に上がった後でも、一緒に本を読んだり、「弟/妹に絵本を読み聞かせてあげて」と役割を与えて上げたりして、文字に触れる機会を増やしてあげましょう。
電車や虫など好きなものがあるお子さまの場合は、図鑑を見るときに文字も意識するよう声掛けしましょう。図鑑をコピーし、一部を白塗りしたオリジナルの学習プリントを作ると、進んで取り組んでくれることが多いです。
アニメが好きなお子さまの場合は、字幕付きで見るのも良いでしょう。
言語理解の低いお子さまは、コミュニケーションが取りづらく、「気持ちが通じていない気がする」と保護者さまが滅入ってしまうケースもあります。
確かに意思疎通しづらい場面はあるかと思いますが、保護者さまの気持ちは必ず通じていますので、地道なサポートを続けていきましょう。
私がこれまで指導してきたお子さまの中には、強度の読字障害がありながらも中学受験に成功した方がいらっしゃいます。
以下の記事で詳しく紹介していますので、ぜひ参考にしていただければと思います。

発達障害の子どもが文章が書けない3つの理由③書くことに困難がある(書字障害/ディスグラフィア)
アイデアが整理できて、語彙力も十分あり、口頭でのコミュニケーションにも問題が無いお子さまでも、作文になると書けないというタイプの方がいらっしゃいます。
このタイプのお子さまの場合は、書くことに困難がある発達障害=書字障害(ディスグラフィア)の可能性があります。
書字障害の要因には、①音韻処理の不全、②視覚認知の苦手さ、③発達性協調運動障害の3つが挙げられます。
①音韻処理の不全については、「1-2.発達障害の子どもが文章が書けない3つの理由②出来事や気持ちを言葉でアウトプットできない」でも触れたとおり、文字と音を結びつける脳の働きが弱い状態を指し、読字障害の要因の一つにもなります。
“さかな”という文字を見たとき、私たちは頭の中で“さ・か・な”と発音します。
音韻処理の働きが弱い人は、文字を音に変換するのに時間が掛かり、そのために文字を単語としてひとまとまりで捉えることにも時間が掛かってしまいます。
定型発達の人でも、「めぴゃぺそつるも」など意味の無い文字列を声に出して読もうとすると、意味のある単語を声に出して読むより時間が掛かったり、正しく読めなかったりするはずです。
読字障害のお子さまは常にこの状態にあり、一字ずつ音を思い出しながら読んでいる感覚であると理解すると良いでしょう。
文字を書くときにも、音韻処理の働きが弱いお子さまは一音ずつ思い出しながら書くことになります。
音韻処理は読むこと・書くことの両方に深く関わるため、音韻処理が苦手なお子さまの多くは、読字障害と書字障害の両方を併発しています。(読字障害と書字障害を合わせて「発達性ディスレクシア」と呼ぶこともあります。)
音韻処理不全のあるお子さまは、ひらがなを覚える時点でつまずくことも多いです。五十音表を順番に読み上げることはできても、ランダムで文字を示すと発音に時間が掛かってしまう場合は、それぞれの文字が音に結びついていないと考えられます。(五十音表は丸暗記で覚えてしまう子がほとんどです。)
書くことの困難の要因が音韻処理の不全である場合は、まずは併発している読字障害から対処を始めます。
文字と音の結びつきを強化することで、書くことの困難も少しずつ改善することができますので、発達支援センターなどに相談し、言語聴覚士のアドバイスを受けながらトレーニングを進めましょう。
②視覚認知の苦手さについては、“モノの形を捉えること”が苦手で、文字の形を上手く再現することができない場合を指します。
文字を書くときには、文字全体の形を頭の中でイメージしながら、「一画目を左上から書き始めて、右端1/3まで伸ばす」など実際に筆を運んでいきますが、視覚認知が苦手なお子さまは、文字の形のイメージを保持するのが難しく、「どこから書き始めたら良いのか/どんな形の線を描けばよいのか」を判断することができません。
そのため、文字のバランスが崩れてしまったり、漢字の細かい部分が正しく書けなかったりします。
こうしたお子さまの場合は、本人は一生懸命書いているにもかかわらず、「丁寧に書きなさい」と注意を受けたり、細かい部分で減点されてテストの点が伸びなかったりして、自信を失ってしまうことが多いです。書くこと自体が苦手になり、勉強全般に拒否感を持ってしまう場合も少なくありません。
お子さまの視覚認知の力が弱いかもしれないと感じた場合は、複雑な図形を描き写させてみましょう。
バランスが極端に悪かったり、細部を間違えて描いてしまう場合は視覚認知の力が弱いと考えられます。
また、全体を捉えてから細部を描き込むというプロセスが踏めない場合も、視覚情報を処理する力が弱いと考えられます。
<視覚認知チェック①>
<視覚認知チェック②>
視覚認知の力が弱いお子さまの場合は、文字のパーツを色分けしたり、1マスを4分割したりして、どこにどのパーツが配置されているかを意識しながら書く練習をすると良いでしょう。
1マスを空色、黄色、ピンク、緑色の4色のパステルカラーに分割した「カラーマスノート」などもありますので活用してみましょう。(参考:小児科医と言語聴覚士が考えたノート。文字を正確に書き写せます。 | tobiraco(トビラコ)))
なお、視覚認知が苦手なお子さまの場合は、できるだけ大きなマス目のノートを使うことが望ましいのですが、低学年用のノートを使うことで本人のプライドを傷つけてしまう場合もあります。
療育用のノートと授業用のノートを分けるなど、本人のプライドを傷つけない工夫を行うようにしましょう。
③発達性協調運動障害とは、身体全体を動かす粗大運動と、手先を細かく動かす微細運動の両方が極端に苦手な状態を指し、ADHDやASDなどの発達障害と併発することが多いとされています。
根本的な要因は、五感(視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚)と、身体の動きや位置を感じる「固有覚」、姿勢やバランスに関わる「前庭覚」が上手く統合されないことにあると考えられています。
書字障害の場合は、文字を書いている感覚が脳にフィードバックされず、筆圧の調整ができなかったり、思った位置に筆を運べなかったりして、マス目に文字が収まらないというお子さまもいらっしゃいます。
発達性協調運動障害が書字障害の要因となっている場合は、「書く」という感覚に慣れていくためのトレーニングを行うと良いでしょう。
紙の下にやすりやサンドペーパーなどざらざらした感覚のものを敷いて書いたり、砂に指で字を書いてみたり、鉛筆以外の筆記具(筆やサインペン)などで書いてみたりして、本人が「書く」という感覚をつかみやすいように工夫を行います。
そのほかにも、背中に指で文字を書いて当て合うなど、遊びを交えたトレーニングを行うのも良いでしょう。
発達性協調運動障害である場合は、「服のボタンを閉める」「はさみを使う」「片足立ちをする」など、日常生活でも困難を抱えることが多いため、字を書くこと以外についてもサポートしていくようにしましょう。
発達障害のお子さまが文章を書けるようになるための3つの方法
文章を書くには一定のコツとパターンがありますので、どんなに作文が苦手なお子さまでも、パターンに当てはめて書く方法を覚えてしまえば、必ず苦手を克服することができます。
発達障害のお子さまで、「何を書けばよいのか分からない」「書くことが思い浮かばない」「書きたいことが上手く文章にできない」といったつまずきがある場合は、以下の方法がおすすめです。
<作文の苦手を克服するための3つの方法>
② 全体の流れを図で表す
③ 書きたいことを一旦すべて書き出す
小学生の作文だけでなく、受験の際の小論文や大人になってからの書類作成でも役立つスキルになりますので、以下で詳しく解説していきます。
発達障害のお子さまが文章を書けるようになるための3つの方法①インタビューのつもりで5W1Hを埋めていく
文章を書くときには、「5W1H(いつ・どこで・誰が・何を・なぜ・どのように)を意識すべき」
ということは教科書にも載っており、誰もが知っているはずですが、きちんと意識できている人は実はそれほど多くありません。
例えば、『遠足の思い出』という作文のテーマがあったとします。原稿用紙を前にしたお子さまは、遠足について漠然と思い出しはするのですが、それぞれの記憶はバラバラで、どのように作文に落とし込めば良いのかと頭を悩ませてしまいます。
そこでお子さまに、「遠足にはいつ行きましたか?(When)」を尋ねると、「昨日!」と答えてくれます。これを記者のインタビューのように進めていきましょう。お子さまには口頭で答えることだけに集中してもらい、メモは大人が取るようにします。
<作文を書くときのインタビュー例>
A1.昨日です。
Q2.遠足でどこに行きましたか?【where】
A2.動物園に行きました。
Q3.遠足には誰と行きましたか?【who】
A3.クラスのみんなと行きました。
Q4.遠足では何をしましたか?【what】
A4.ライオンやキリンなど、いろんな動物を見ました。
Q5.なぜ遠足に行ったのですか?【why】
A5.クラスのみんなと一緒に動物を見たり、お弁当を食べたりすると楽しそうだと思ったからです。
Q6.遠足に行って、どんな風に感じましたか?【how】
A6.ライオンはとても強そうだと思いました。
5W1Hの一問一答であっても、小学校1年生レベルの作文であれば要素としては十分です。
インタビューのメモをお子さまに見せながら、「この順番で文章を書いていけばOKだよ」と教えてあげましょう。
0から文章を書くのが難しいお子さまは、穴埋め形式で作文していくと良いでしょう。
<穴埋め作文の例>
と一緒に行って、 を見ました。
遠足に行きたいと思ったのは、 と思ったからです。
行ってみて、 と思いました。
多少不自然な言い回しになってしまう部分があっても構いません。自分で考えた内容が文章になっていて、「作文が書けた!」とお子さまが感じることが第一の目標です。
また、学校教育の中では“情緒豊かな文章表現”が評価されやすい風潮がありますが、小論文や報告書においては、情緒よりも「文法の正しさ」「論旨の正確さ」「過不足の無い情報量」が重要です。文章のロマンチックさについては割り切り、客観的に正しい文章を書くことを優先しましょう。
いきなり長い文章を書くのが難しい場合は、「1行日記」から始めてみましょう。1行日記とは、「ケーキを食べました。おいしかったです」のように、【出来事+感想】で完結する短い日記のことです。
これも5W1Hのインタビュー形式と同様に、「今日、何をしたっけ?」とお子さまに質問し、「どうだった?」と続けましょう。最初のうちは、大人が代わりに書いてあげる形で構いません。
少し慣れてきたら、大人が質問しながらお子さまが自分で日記を書くようにしましょう。さらに慣れてきたら、大人からの質問無しで書けるようにしていきます。
1行日記は毎日コツコツ続けることが大切です。ASD傾向のあるお子さまはルーティンをこなすことが得意ですので、一日の終わりや朝のあいさつ代わりに1行日記をつけ、文章で出来事や気持ちを表すことに慣れていきましょう。

発達障害のお子さまが文章を書けるようになるための3つの方法②全体の流れを図で表す
作文を書いているうちに、テーマからどんどん遠ざかってしまったり、何が書きたいのか分からなくなってしまったりするお子さま、あるいは書き始めをどうして良いか分からないお子さまの場合は、「作文の流れを図にしてみる」という方法がオススメです。
作文の大きな流れは「はじめ(序論)→なか(本論)→おわり(結論)」であり、それぞれの役割は以下のとおりです。
<作文の構成>
②なか(本論) - ○○についての具体例
③おわり(結論) - 「○○は△△である」という結論
この骨組みが意識できれば、作文はかなり書きやすくなります。いきなり原稿用紙に文章を書くのではなく、この骨組みをまずは図にしていきましょう。
ここでは、「いちばんの親友」というテーマで作文を書く場合を考えてみます。
序論では、「いちばんの親友は誰か」を読者に紹介し、本論では「どんな人か」を具体的に伝え、結論では親友との「これから」について語るなどしてまとめると良いでしょう。
思いついた流れを忘れないように、まずは図をメモします。
大まかな流れができたら、次は具体的な内容を書き込んでいきましょう。「本論」を中心に具体的なエピソードを盛り込んでいくのがポイントです。
というのも、序論はあくまでテーマを提示する箇所ですので、長すぎると前置きが長い印象になります。また、結論は「これからの展望」や「筆者の所感」など、抽象的な内容を書く箇所であるため、ダラダラ引き伸ばすと分かりにくい文章になってしまいます。
したがって、作文の肉付けを考える際には、結論に説得力を持たせるという意識を持ちながら、本論に客観的な情報を盛り込んでいくことがポイントになります。
ここまでできたら、作文はほぼ完成したと言っても過言ではありません。
あとは、文字数を考えながら、どこまで細かい情報まで書き込むかを決めていけばOKです。ここでは、200字作文を想定して清書していきます。
<いちばんの親友(作文例)>
Aさんの良いところは、誰にでも親切にできるところです。お年寄りの荷物を持ってあげたり、迷子の子どもを交番まで送ってあげたりしたこともありました。困っている人を見たらすぐに行動できるAさんのことを、私は心から尊敬しています。
私も、Aさんのように困っている人を見たら声をかけ、行動できるようになりたいです。(199字)
もっと字数が必要なときは、Aさんがお年寄りの荷物を持ってあげた場面や、迷子を交番に送ってあげた場面を具体的に描写していくと良いでしょう。
Aさんとの出会いや下校のときのエピソードを加えることもできますが、「自分も親切になりたい」という結論を導くためには、Aさんの親切さが際立つエピソードを盛り込んでいく方が良いでしょう。
以上は一例ですが、小論文などにも応用できるテクニックですので、ぜひ身に付けていただきたいと思います。
「とにかく書かなきゃ!」と筆に任せて書いてしまう人は大人でも非常に多いのですが、勢いのままに書くと「何が言いたいのかわからない文章」になってしまいますので、必ず文章の骨組みを考えてから書き始めるようにしましょう。
たまに「起承転結が作文のルールである」という学校の先生もいますが、完全な間違いです。起承転結は、基本的には物語を書くときのガイドラインであり、子どもの作文で意識する必要は全くありません。
評論文などでも起承転結で構成されている場合はありますが、それは読者を惹きつける(=「あっ」と思わせる)ことを目的としたものです。
一方、作文や小論文では内容を正しく伝えることが重要であり、読み手に「あっ」と思わせる必要はありません。捻りの利いた展開を作る必要は全くありませんので気を付けましょう。
ただし、「起承転結」の流れを作るのが得意なお子さまもいらっしゃいます。人を惹きつける文章が書けるのは素晴らしいことですので、どんどん伸ばしてあげましょう。
「起承転結を作ってはいけない」のではなく、あくまで「起承転結を作る必要は無い」ということですので、そこも間違いの無いようにしていただければと思います。
発達障害のお子さまが文章を書けるようになるための3つの方法③書きたいことを一旦すべて書き出す
インタビュー形式で書くほど低学年ではないけれど、流れを図で整理しようとしても上手くいかない…というタイプのお子さまは、「思いつくアイデアを全て書き出してみる」という方法がオススメです。
図で整理する場合は、「テーマ」「具体例」「結論」という概念を理解し、それに当てはまるアイデアを頭の中の引き出しから見つけてくるというプロセスが必要です。
発達障害で、特にワーキングメモリー(※)が低いお子さまは、頭の中だけでアイデアを整理することが苦手なため、いきなり図を描くのが難しい場合があります。
詳しくはこちらの記事「発達障害でワーキングメモリーが低い場合の対処法は?改善のためのトレーニングを紹介」で解説しています。
アイデアをとにかく書き出すという方法であれば、一旦情報をアウトプットできるため、頭の中だけでプロセスを完結させる必要がありません。
書き出したアイデアを一つずつ見ながら、「これは本論かな?」「これは結論に使えるな」と仕分けできるので、かなり作業がやりやすくなります。
具体的な作業の手順としては、ノートにアイデアを書きだし、それを色ペンや記号でマーキングした後、「2-2.発達障害のお子さまが文章を書けるようになるための3つの方法②全体の流れを図で表す」で紹介した図に落とし込むか、付箋が使える場合は付箋にアイデアを書きだし、それを序論・本論・結論ごとに分けていくと良いでしょう。
<ノートに書きだして色分けする方法>
<付箋をグループ分けする方法>
「書きだす→整理する」という手法は、作文だけでなく、イベントの計画を立てたり、ToDoリストを整理したりする際にも使えますので、ぜひ子どもの頃から慣れておくようにしましょう。
発達障害で文章が書けないときの対処法のまとめ
この記事では、発達障害の方が文章を書くのが苦手になってしまう理由と、文章上達のためのコツを詳しく紹介してきました。
改めてポイントをまとめると、以下のとおりです。
<POINT>
- 発達障害の人が文章を書くのが苦手な理由には、「①情報の整理が苦手」「②言葉で表現するのが苦手」「③書く行為そのものが苦手」の3つがある
- なぜ作文が苦手なのかを見極め、原因に応じたアプローチをする必要がある
- 文字と音の結びつきが弱い(音韻処理不全)の場合は、言語聴覚士など専門家の支援を受けると良い
- 書くことの困難(書字障害)の場合は、個々に応じた療育やトレーニングに取り組むと良い
- いきなり作文しようとせず、文章の骨組みから考えることが重要
- アイデアを書きだしてから整理する方法は、ワーキングメモリーが低い発達障害の人にとって非常に役立つ
文章を書くのが苦手な理由は、人によって様々です。まずはどこでつまずいているのかを分析し、つまずきを解消できるようアプローチを進めましょう。
文章を書く力は、思考を整理する力と密接に関わっています。文章が上手く書けるようになると、それだけで物事を落ち着いて考えられるようにもなりますので、ぜひこの記事で紹介した方法を実践していただきたいと思います。
私たちプロ家庭教師メガジュンは、一人一人応じた丁寧なサポートをモットーに、これまだたくさんのお子さまを第一志望合格へと導いてきました。
発達障害のお子さまでも、適切なアプローチを行うことで学力を伸ばすことは十分可能です。
発達障害のお子さまのことでお悩みの方や、なかなか良い先生に出会えないとお悩みの方は、ぜひ一度プロ家庭教師メガジュンまでお問い合わせください。

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お子さまが自分らしくより良い人生を歩んでいけるよう、一同全力でサポートしてまいります。
最後までお読みいただきありがとうございました。