【不登校と勉強】遅れの取り戻し方と受験対策のポイントを徹底解説

不登校のお子様がおられる保護者の方で、最も気になることは勉強の遅れではないでしょうか?

「ずっと家にいて、勉強している様子も見えない。」
「スマホを触るばかりで、深夜まで起きている」
「登下校するお子様を見るたびに、勉強の遅れが積み重なっているように感じて仕方ない」

このようにご相談頂く保護者の方は多く、強い不安と「子供のために、何とかしてあげたい」というお気持ちが痛いほど伝わってきました。

結論から申しますと、勉強の遅れは最終的に、何とかなることがほとんどです。
ただ、「受験生かどうか」、「小学生か中学生か高校生か」で、何とかなりやすいかどうか、はかなり変わります。

例えば、同じ受験生なら「高校受験生」が遅れを取り戻すハードルが最も高く、「中学受験生」であれば、ハードルはかなり低いです。

この記事では、不登校中のお子様が勉強を取り戻すために、何が必要か。知っておくべきことは何か。
また、「小学生・中学生・高校生」それぞれで「受験生かそうでないか」で、どのように勉強の遅れを取り戻せるようになるのか。

こういった内容を、これまで多くの不登校のお子様を指導してきた経験から、かなり具体的にご紹介します。

あらゆる情報を1つの記事にまとめたため、かなりの長文となっていますが、気になる項目を読んでいただくだけでも構いません。
ぜひ、ご興味のある項目やお子さまが該当する項目からご覧ください。

【執筆・監修】
不登校専門の受験プロ家庭教師 
妻鹿潤
・16年以上1500名以上の指導実績あり
・個別指導塾の経営・運営でお子様の性質・学力を深く観る指導スタイル
・yahooやSmartNews、Newspicksなどメディア向け記事も多数執筆・掲載中

↓『学習・生活面のお悩み相談虎の巻』はこちらをクリックしてご覧ください。

不登校の勉強の遅れは取り戻せるの?

不登校による勉強の遅れは取り戻せます!
不登校でも、勉強の遅れは取り戻せます。

ただ、経験上、緩やかにだんだん勉強の遅れを取り戻すよりも、「何かしらで吹っ切れたお子様が、どこかのタイミングで一気に気持ちが浮上して勉強の遅れを取り戻す」ことが多いです。
 

特に、どん底まで気持ちが落ちきった後や、しんどさと向き合いきった後に、気持ちが一気に浮上することが多いです。
気持ちの浮上後は一気に勉強量も増えて、撒き直せることがほとんどです。

浮上するタイミングはお子様によって異なりますが、以下に記載する「ゲームや漫画への対応」や「保護者の方にできること」を実践すれば、そのタイミングは早まります。

不登校による勉強の遅れを取り戻すために、まず勉強以外で大切なこと

不登校のお子様に保護者の方ができる大切なこと

不登校のお子様に保護者の方ができる大切なこと

不登校中のお子様にとって大切なことは、「ご家庭が心から安らぐ居場所になること」と「親は何があっても自分の味方なんだ」と思えることです。

不登校を克服したお子様に、振り返って不登校中の気持ちを聞いてみると、

「どれだけしんどくても、見守ってくれていた親に感謝」
「喧嘩になった後でも、自分の好きな料理を出してくれた」

など、保護者様のことをしっかり見ているんだな、と感じる発言ばかりでした。
(不登校中にお子様がどのようなことを考えているかについては、実際に聞き取ったご意見をこちらの記事「不登校のお子様が日々考えていること」にまとめてますので、ご興味があれば是非、ご参照ください)

特にお子様は家にずっといるからこそ、保護者様の影響力はかなり大きいのだと感じます。

保護者様には「学校に行きなさい」や「勉強しなさい」と言うよりも、「学校に行っても行かなくても、私は味方だからね」や「勉強は気持ちが上向いてからで良いからね」と伝えてあげて欲しいです。
その方が、回り回って学校に行くようになったり、勉強するようになることが多いです。

特にポイントは「伝えるだけではなく、行動や雰囲気でそう思っていることを示すこと」です。
勘が良くてせんさいなお子様ほど、実際にどう伝えたかよりも「自分のことをどう思ってそうか」を行動や雰囲気で読み取ります。
そのため、保護者様が心から「学校に行っても行かなくても、私は味方だからね」や「勉強は気持ちが上向いてからで良いからね」と思えるようになることが重要です。

お子様の気持ち向上が勉強の遅れを取り戻すために何より大切

お子様の気持ち向上が勉強の遅れを取り戻すために何より大切

不登校中にお子様が勉強に向かうようになった際には、以下の3つがとにかく重要です。

・勉強に対する自信をつけること
・勉強への不安をなくすこと
・勉強への希望が持てること

あれもこれもやってもらいたくなりますが、まずは「勉強に対する自信をつけること」に注力すると良いでしょう。

そのため、得意科目や、一人でも解けそうな問題から勉強を始めることをオススメします。
解ける問題が増えると、気持ちがどんどん乗ってきます。
もし不登校の期間が長く、受けていない定期テストなどがあれば、そのテストを解いてみるのも良いでしょう。

お子様も「定期テスト受けられなかった」と気にされていることも多く、気になっている定期テストで問題が解ける・自宅で問題を解いてでも高得点を出せれば、相当に自信がつきます。

また、自宅で継続的に勉強するために「いつ・どの科目を・どんな風にやるか」まで決めた、計画表があると良いでしょう。
不登校のお子様は根が真面目な方が多いので、「決められた計画」だったり「大切だと思う人と、約束した計画」だとやり切れることが多いです。

ただ、この計画作成は奥深い世界なので、プロの力を借りることも1つだと思います。

不登校中のゲームや漫画、youtubuは制限しなくていい

不登校中のゲームや漫画、youtubuは制限しなくていい

「とにかくスマホやパソコンばかり触って、余計に勉強の遅れが進んでいるように見える。」
「そんなことしている時間があるなら、勉強を少しでもして欲しい」

このように感じる保護者の方は多く、当然だと思います。

ただ、「一旦はお子様が気の済むまで、放っておいてあげた方が良い」ことがほとんどです。

経験上、不登校になるお子様は、成績も平均点以上で真面目なことが多いです。
このようなお子様は、心の奥底では勉強を何とかしたいと思っており、「スマホばっかり触って、よくない」と内心思っていることがほとんどです。

実際に不登校を克服したお子様に、「なんであの時あんなにスマホやパソコンばっかり触っていたの」と聞くと

「何か考えることが怖かった」
「皆にどう思われているか、これからどうなるか凄く不安で、何も考えたくなかった」
「特に夜は世界中で1人になったような感覚になって、怖かった」

などのお声が多かったです。

つまり、スマホやパソコンを触る理由は遊びたいからではなく、ストレスや不安の大きさからの発散行動なのでしょう。

この段階では、まずはお子様の気持ちを落ち着けることが大事なため、いったん気の済むまで触らせてあげると、いずれ精神的に安定してきます。
(ただ、お子様によっては数ヶ月かかる方もいます)

根が不真面目で本当に勉強のことを考えていないお子様の場合は、もちろん制限が必要です。
その場合は、「本人が何に楽しみを感じるか」を丁寧に把握して、勉強をすることの延長でいかにその楽しみに繋がるか、を感じてもらうアプローチが必要です。

こちらはそれだけでかなりの分量になるため、別の機会で1つの記事にてご紹介させていただきます。

不登校中でも勉強を続けることが大切

不登校中でも勉強を続けることが大切

真面目なお子様は、不登校中でも自宅で勉強を続けることもあります。
不登校中のお子様は「いまさら、勉強についていけるだろうか?」という不安から、学校に行く気分が遠のき、不登校が加速します。

そのため、実際にその勉強が身になっているか以上に「お子様自身が勉強で遅れをとっていないんだ」と実感として持つことは、不登校克服に大きな影響を与えます。
もちろん、勉強の遅れ自体への対策にもなります。

ただ、不登校中でも「勉強をできる気分の時期」と「勉強ができない気分の時期」に分けられます。
別記事「不登校のそれぞれの時期により、最適なアプローチが異なる」でいう休息期や回復期以外で勉強の話題をすることは、逆効果になってしまうことがほとんどです。

そのため、お子様が今、どの段階にいるかによって、勉強にどこまで向かってもらうべきかどうかも異なります。

国語・理科・社会の勉強の遅れは、それほど深刻な遅れではない

国語・理科・社会の勉強の遅れは、それほど深刻な遅れではない

小学生理科と社会、中学生理科と社会、高校生生物・化学・地学と地理・世界史・日本史・倫理政治経済は、積み重ねの科目ではありません。
天気の内容が分からなくても、電流の単元のみ理解できれば問題ありません。
平安時代が分からなくても、江戸時代が分かれば問題ありません。

そのため、勉強の遅れと言いましても「理科と社会は致命的な遅れではない」と言えます。
また、国語は学校や塾・予備校の授業を受けたからすぐに上がるというものではなく、お子様本人の国語的素養の影響が非常に大きい科目のため、大きな遅れになりにくいです。(漢字のみ、別です。)

また、数学も全単元が積み重ねになっているわけではないので、最も積み重ねになっている科目は英語になります。(例えば、図形やベクトルの理解が不十分でも、方程式や関数の問題は問題なく解けるためです)

つまり、勉強の遅れと言いましても、英語と数学以外は致命的な遅れになりにくいです。
このような科目や単元の性質を理解した上での勉強を行えば、不登校中の勉強の遅れは思われているほど大きな分量にならなかったりします。

ここからは「受験生か」、「小学生か中学生か高校生か」どうかで異なる、勉強の遅れの影響の大きさと、対策について記載します。
お子様の状況ごとに合った記事のみ、見られると良いと思います。

不登校小学生の勉強の遅れ対策

不登校小学生の勉強の遅れ対策

受験をしない小学生の場合

勉強の遅れの影響が、最も少ない時期です。
総勉強時間も中学生・高校生より少なく、社会・理科も小学生内容が一切理解できていなくても、中学生内容から理解することも可能です。
そのため、対策が必要な科目はとにかく算数、次に国語(特に漢字)です。

こちらに絞って対策すれば、思われているよりも早く勉強の遅れを取り戻すことができます。

受験生の場合

中学受験内容は、難関中学を志望すればするほど、学校の内容理解は前提になります。
ただ、理科と社会の1-4年生内容はほとんどの学校で受験に出ません。
そのため、5-6年内容のみ復習をすれば十分です。
後は算数の復習と国語の漢字のみ復習を行えば、不登校中の勉強の遅れは解決します。

それ以上の対策は基本的に塾が中心になるため、不登校であることの方がむしろ受験対策として効率的に時間を使えると思います。
(最難関中学の志望するお子様は、受験前は学校の許可をとって学校に行かずに中学受験勉強に専念することも多いからです)

不登校中学生の勉強の遅れ対策

不登校中学生の勉強の遅れ対策

受験学年ではない中学生の場合

何よりも英語、次に数学の勉強の遅れさえ対策すれば、致命的な学習の遅れにはなりません。
英語も、単語や時制・疑問詞や名詞の遅れは致命的ですが、不定詞や動名詞・受動態などの単元は致命的ではないので、全てが重要というわけでもありません。
数学も、正負の数・式と計算・方程式と連立方程式の遅れは致命的ですが、平面図系・空間図形・二次関数・確率の遅れは致命的ではないので、全てが重要というわけでもありません。

何よりも英語、次に数学の対策に特化することで、勉強の遅れは大きく防ぐことができます。

受験生の場合

公立高校受験生であれば、内申書と関連するため、勉強の遅れは致命的と言わざるを得ません。
こちらは別記事「不登校中の高校受験、受験ができる?勉強はどうする?」で詳しく記載しているように、公立高校受験制度は都道府県ごと・入試方式ごとによって異なります。
ただ、合否の配点の半分近くが内申点(学校の5段階評価や出席日数)であることが多いため、不登校と公立高校受験の相性は極めて悪いと言わざるを得ません。

対して、私立高校受験であれば学校ごとに特色があり、不登校の出席日数をそれほど重要視しない学校もあります。
この辺りは学校によって基準がかなり異なるため、塾や学校を通して私立学校の基準を事前に把握することをオススメします。

不登校の出席日数をそれほど重要視しない学校では、当日のテストの点数でほぼ決定する学校がほとんどです。
そのため、入試問題対策に絞った対策が必要になります。
また、学校ごとに出題傾向や、どの難易度の問題まで出題するかはかなり異なります。

すなわち、事前の学校の出題傾向の分析を行えば行うほど、不登校中の勉強の遅れはかなり軽減することができます。

ちなみに、各種メディアで掲載された私のこちらの記事(newspicks;「中学時代に勉強できた子が”偏差値の高い高校”に行って伸び悩む理由」、キャリコネニュース;「中学時代に勉強できた子が”偏差値の高い高校”に行って伸び悩む理由」にもあるように、無理に偏差値の高い学校に合格することは、不登校のお子様にとっては危険でもあります。
高校は質もスピードも中学と比べものにならないため、高校に入って自信を失って不登校になるご相談は今でも多いです。

そのため、高校受験合格だけではなく、合格後のことも含めて「お子様にとって最適な志望校」を選ばなければなりません。

不登校高校生の勉強の遅れ対策

不登校高校生の勉強の遅れ対策

受験学年ではない高校生の場合

高校生の勉強は難易度が最も高く・スピードも速いため、勉強の遅れは小学生・中学生に比べると大きいです。
ただ、スタディサプリや映像授業の塾など、授業内容の復習をしやすい体制が、世の中的に最も進んでいるのも高校生です。
そのため、学校の授業内容の遅れは独学でも取り戻しやすいです。

受験生の場合

大学受験の一般入試では、学校の成績はほとんど見られません。
そのため、一般入試を受ける際には独学で受験対策をやり切れば良い、になります。

スタディサプリや映像授業の塾など、授業内容の復習をしやすい体制が最も進んでいるのも高校生です。
そのため、学校の授業内容の遅れは最も取り戻しやすいです。

ちなみに、大学受験の推薦入試では学校の成績が何より見られます。
さらに、この学校の成績は「高校1年生の1学期から高校3年生の1学期まで」見られます。
一般的に推薦入試は公募推薦入試でも評定平均が3.5/5以上、指定校推薦では3.9/5以上が必要になります。
そのため、1回分の定期テストでも不登校により受けられなかった、などになれば、正直、推薦入試は難しいと思います。

ただ、推薦入試でしか受けられない大学・学部はほぼ存在しないため、不登校で定期テストを受けられなかった際には、切り替えて一般入試の対策に特化することが良いでしょう。

また、大学入試は大学・学部ごとに出題傾向や難易度にかなり特徴があります。
不登校のお子様にオススメな対策は、早期に志望大学・学部を決めることです。
そうするだけで一気に勉強量が減るため、勉強の遅れを取り戻す以上の勉強量の削減になります。

例えば、多くの私立大学は入試問題は全てマーク式のため、マーク式の大学を受験するなら英単語のつづり・漢字も書けなくて構いません。
また、英語のリスニング・発音問題や、現代文で詩や短歌が出るところもほとんどありません。
他にも、大学によって必要な英単語数が1000語ほどの大学もあれば、2000語必要という大学まであります。

このように、大学ごとに必要な勉強内容と勉強量はかなり違うため、早期の志望大学・学部の決定が勉強の遅れへの大きな対策になります。

まとめ

長くなりましたが、お伝えしたいことは以下でした。

・不登校の勉強の遅れは、「受験生かどうか」「どの学年か」によって、影響はまちまちである
・それでも、不登校中の勉強の遅れは最終的に何とかなることがほとんど
・不登校のお子様は何かのきっかけで吹っ切れて、一気に勉強の遅れを取り戻すことが多い
・お子様が吹っ切れるために、保護者の方の影響力は大きい
・不登校中でも勉強を続けることは大事、でもその時期や中身が何より重要
・不登校中の勉強の遅れと言っても、最も影響力が大きいのは1番に英語、次に数学

1人でも多くの不登校のお子様の勉強の遅れ対策に役立てれば、幸いです。

↓『学習・生活面のお悩み相談虎の巻』はこちらをクリックしてご覧ください。

他におすすめの記事