発達障害の小学生の特徴とは?診断方法や支援策を紹介
・授業に集中できなかったり、忘れ物が多かったりする
・言動が独特だと言われることがある
小学生のお子さまについて、このようなお悩みをお持ちの保護者さまはいらっしゃいませんか?
周りの子に比べて変わった行動が目立つことから、「もしかしてこの子は発達障害かもしれない」と感じておられる方も多いかもしれません。
発達障害とは、生まれつきの脳の器質(性質・はたらき)に凹凸があり、物事に集中しづらかったり、コミュニケーションに困難があったりする状態を指します。
また、発達障害に対し、脳の器質に凹凸が無く特別な困難が無い場合は「定型発達」と呼ばれます。
脳の器質に全く凹凸が無く、何でもオールマイティにこなせる人間はほとんど存在しません。
程度の差はありますが、誰しも何かしらの得意・不得意があり、ADHDやASD(アスペルガー)的な傾向を多少は持っています。
また、発達障害と一言で言っても、特性が強く現れている人もいれば、特性はあっても困りごとの無い人、グレーゾーンの人など様々な人がいらっしゃいます。
お子さまの場合は成長の真っただ中にあり、年齢が上がるとともに困りごとの内容も変わってきます。
例えば、ADHDの多動傾向は成長とともに落ち着くケースが多いことがわかっていますし、逆に子どもの頃は問題にならなかった注意散漫の特性が、大人になってから困りごとにつながるケースも多くなっています。
ASD(アスペルガー)の方の場合ですと、学生時代は勉強ができて優等生だった方が、働き始めるとコミュニケーションの苦手さや柔軟性の無さが顕著に現れ、仕事が続かなかったり、劣等感に悩んだりといったケースがあります。
私は、発達障害専門のプロ家庭教師や塾経営者として長年にわたり活動し、これまで1500人以上のお子さまをサポートしてきました。
発達障害か否かはお子様を知る1つの指標であると感じる一方で、診断を受けることが公的な支援につながるほか、お子さまの特性が明らかになり、支援の方針が定まりやすくなるというメリットもあります。
発達障害と診断されても、あるいは診断されなくても、お子さまが学校や日常生活で困りごとを感じているのであれば、全力でサポートすることが大切だと思います。
発達障害専門のプロ家庭教師として、私たちは1人でも多くのお子さまの力になりたいと考えています。
・発達障害の具体的な診断方法を知りたい
・発達障害のお子さまの進路について悩んでいる
この記事では、お子さまの発達障害のことでお悩みの保護者さまや支援者の方に向けて、特性や支援方法などを具体的に紹介していきます。
ご関心のある方は、ぜひ最後までお読みいただけますと幸いです。
▼目次
発達障害(ADHD、ASD(アスペルガー)、LD)の小学生とは
発達障害とは、生まれつきの脳の器質(性質、はたらき方)に凸凹があるために、特定のことが苦手になったり困難を持ったりする状態を指します。
発達障害は「ADHD」「ASD(アスペルガー)」「LD」の3つに分類され、それぞれの特徴は以下のとおりです。
・ADHD(注意欠如・多動症) … 落ち着きが無く、注意散漫
・ASD(自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群) … コミュニケーションの困難、限定された興味とこだわり
・LD(学習障害(限局性学習症(SLD))) … 読み・書き・計算に限定された困難
このような分類はあるものの、それぞれの特性は重なり合っていることも多く、ADHDとASDの併発や、LDとADHD/ASDを併せ持つ場合などがあります。
また、特性自体を併せ持つ場合もあれば、どの特性が原因となっているかはっきりせず、医師によって診断が異なる場合もあります。
例えば、「集団のルールを守れない」というお子さまですと、
・ADHDの多動特性により、ついついルールを破った行動をしてしまう
・ASDの特性により、全体のルールより自分のこだわりを優先してしまう
などの要因が考えられます。
日常生活の様子などを細かく観察することで、何が要因になっているか明らかにすることはできますが、非常に専門的かつ長期間の観察・診療が必要です。
そのため、発達障害のお子さまをサポートする際には、「ある程度の目途を付けつつ、試行錯誤していく」というスタンスが基本になります。
先生の指示が通りづらいときには、個別に説明したり、文字やイラストで説明したり、あるいは指示の目的から説明するなどを試し、本人に最も効果的な支援方法を探っていきます。
支援方法を探る中で、困りごとの要因が明らかになるケースもあります。
例えば、これまで私たちがサポートしてきたお子さまの中に、落ち着きが無くルールを守ることが苦手なお子さまがいらっしゃいました。
このお子さまは、目的を説明すると指示どおり行動してくれることが多く、お子さま自身がその指示に納得できるかどうかがポイントになっていることがわかりました。
授業中の立ち歩きなどもあったことから診断名はADHDでしたが、「指示に納得できるかが重要で、納得できないと自分のこだわりを優先する」という点においては、ASD的な特性を持っていると考えられました。そこで私たちは、主にASDのお子さまへの支援方法とされている「ルーティン化」や「目的の言語化」をサポート内容に組み込みました。
授業中の立ち歩きについては、「なぜ立ち歩いてはいけないか」を説明するとともに、「ずっと座っていると背中が痛くなる」という本人の意見を踏まえ、「15分おきにその場で立ち上がって伸びをする」というルーティンを提案することで改善できました。
立ち歩きがある=ADHDと安直に判断するのではなく、あらゆる可能性を考え、様々な角度からアプローチを行うことの重要性が、この事例からわかります。
診断を受け、その発達障害に効果的と言われている支援方法を実践してもなかなか改善されない場合は、「診断はADHDだけれど、ASDの傾向もあるのかも」など柔軟に考えていただければと思います。
発達障害といっても、人によって状態は千差万別です。
医師の診断はサポートの方向性を考える際に非常に役立ちますが、実際にサポートを行う場面においては、診断名だけにこだわらず、目の前のお子さまにしっかりと向き合うことが大切です。
発達障害の小学生の特徴と3つの分類(ADHD、ASD、LD)
「1.発達障害(ADHD、ASD(アスペルガー)、LD)とは」でお伝えしたとおり、発達障害には、ADHD・ASD・LDの3つの分類があります。
この章では、それぞれの特性と主な支援方法についてご紹介していきます。
発達障害の小学生の特徴と3つの分類①ADHD
ADHD(注意欠如・多動症、Attention Deficit Hyperactivity Disorder)とは、その名称にもあるとおり、
・多動性、衝動性 … 落ち着きが無い、衝動的に行動してしまう
といった特性を持っています。
小学校低学年くらいのお子さまですと、じっと座っているのが苦手で立ち歩いてしまったり、思い付きで行動してしまったりといった多動性・衝動性が目立つことが多く、「特別な配慮が必要な子」として、学校でも加配教員の配置などの支援を受けやすい状況にあります。
一方、「ぼんやりしてしまう」「集中しづらい」といった不注意特性は、勉強の内容があまり難しくない小学校の間は困りごとを抱えることがそれほど多くありません。
また、やることがはっきりしていて、先生の指示どおり行動すればよい学生時代は、困りごとがあまり目立たない傾向にあります。
そのため、ADHDのうち不注意特性が強い方は、大人になってから「仕事の段取りが組めない」「効率よく家事をこなせない」などの困りごとを抱えることが多く、大人になって初めて診断を受けるケースが多いのが特徴となっています。
多動性・衝動性については大人になるにつれ自然と改善する場合も多いため、いわゆる“大人の発達障害”はADHDの不注意特性によるものが大部分を占めています。
ADHDのお子さまの行動の特徴には、以下のようなものが挙げられます。
・いつもソワソワしていて、落ち着きがない
・じっと座っていることができない、授業中に立ち歩いてしまう
・貧乏ゆすりをする
・待つのが苦手、せっかちである
・順番抜かしをしてしまう
・整理整頓が苦手で、物をよく失くす
・忘れ物が多い
・おしゃべりが止まらない
・ケアレスミスが多い
・あれこれといろいろなものに興味を持つ
・興味を持つと、すぐ行動に移る
・ぼんやりしたり、妄想にふけったりすることがある
ADHDのお子さまは、頭の中に次々と考えが浮かび、その考えに気を取られるために勉強や宿題など目の前のことに集中できないといった特性があります。
頭の中の働きそのものを療育によって制御することは難しく、お子さまでもストラテラやコンサータなどの薬によって治療を行うことがあります。
無理に机に座らせて勉強させようとしても、「教科書を眺めてはいるけれど、頭の中は別のことで一杯」といった状態になり、あまり効果的ではありません。
ADHDのお子さまが勉強に集中するためには、
②勉強に熱意を向かせる
の2つのパターンが効果的です。
「①別のものに対する熱意をいったん全て出し切る」に関しては、お子さまの気の済むまで好きなものに取り組ませる、という方法になります。
もちろん、ゲームや漫画に延々とのめり込んでしまうお子さまもいらっしゃいますので、「このステージをクリアするまで」「○巻まで」といった制限は必要になりますが、一切禁止するよりはよほど勉強に集中しやすくなります。
私たちがプロ家庭教師としてADHDのお子さまに学習指導する際も、好きなものに関するおしゃべりが止まらなくなってしまうお子さまはたくさんいらっしゃいます。
そんな時も、「勉強の時間だから」と最初から否定するのではなく、ある程度お子さまのお話を聞いた上で、それとなく勉強へと話題を誘導することがポイントになります。
90分授業の間、全力でしゃべり続けられるお子さまは多くありません。
おしゃべりが一息ついたタイミングを見計らって話題を変えることで、自然と勉強モードになることができます。教える側の観察力と話術が必要ではありますが、非常に有効な指導スキルとなりますので、ADHDのお子さまを指導する際にはぜひ取り入れていただきたいと思います。
「②勉強に熱意を向かせる」については、ADHDの方が持つ過集中の特性を上手く利用するという方法になります。過集中とは、発達障害の方が、興味・関心のある物事に過度に熱中し、寝食を忘れて何時間も取り組むような状態を指します。
ADHDの方は、脳の働きにブレーキを掛けることが苦手です。
そのため、多動性・衝動性といった特性や、注意の向きを制御できない(不注意)といった特性が出たりするのですが、過集中も同様に、「これをやりたい!」といった衝動にブレーキが掛けられず、時には健康に支障が出るほど過度に集中してしまうことがあります。
もちろん、過集中のレベルになるまで勉強に集中する必要はありません。ですが、興味のあることや好きなことにとことん熱中して取り組めることは、ADHDの方の大きな強みです。
勉強に興味を持つことなんてできるの?と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、例えば好きなアニメの英語版を見るために英語の勉強をしたり、ゲームが好きで自分でも作りたいからプログラミングの勉強をしたり、といったケースが考えられます。
(ゲームを作るためには、プログラミングだけでなく、数学や物理、英語や国語の勉強も必要ですね)
お子さまが今興味のあるもの、部活やスポーツ、将来の夢、志望校に合格したらやりたいことなど、実は勉強のモチベーションにつながるものはたくさんあります。
また、一つの教科で自信が付くと、他の教科も前向きに取り組める場合が多いため、まずはお子さまが興味を持てる教科から取り組んでいくこともポイントです。
発達障害の小学生の特徴と3つの分類②ASD(アスペルガー)
ASD(Autism Spectrum Disorder; 自閉スペクトラム症)の特性は、「コミュニケーションの不全」と「限定された興味・こだわり」の2つと言われています。
ADHDの場合は、脳内の神経伝達物質であるドーパミンやノルアドレナリンの不足、神経伝達の調節異常などが原因であると考えられており、脳の大脳基底核が関係していることがわかっています。
ADHDには特性を直接的に抑える薬がある一方で、ASDはADHDほど脳のメカニズムが解明されておらず、ASDは特性に対して根本的にアプローチできる治療薬が無いのも大きな特徴となっています。
「アスペルガー症候群」という名称もよく耳にしますが、厳密に言うとアスペルガー症候群はASD(自閉スペクトラム症)の分類の一つとなります。
自閉スペクトラム症は、自閉症・高機能自閉症・アスペルガー症候群の3つに分類され、それぞれの定義は以下のとおりです。
・知的障害があり、言語の遅れもある = 自閉症
・知的障害は無いが、言語の遅れがある = 高機能自閉症
・知的障害が無く、言語の遅れもない = アスペルガー症候群
日本でも、以前は「アスペルガー症候群」の診断名が広く用いられていましたが、DSM-5(アメリカ精神医学会が定める国際的な診断基準)が2013年に改訂されたことを受け、現在では多くの場合、「自閉スペクトラム症」の診断名が使われるようになっています。
ASD(自閉スペクトラム症)とは、その名前にもあるとおり、「スペクトラム(連続性)」を持っています。
そして、「自閉スペクトラム症」の名称にもあるとおり、一連の症状にはスペクトラム=連続性があります。
(参考:子どもの発達障害 「自閉スペクトラム症(ASD)」とは?アスペルガー症候群などとの違い | NHK健康チャンネル)
ASDの傾向は、「有るか、無いか」の二択ではなく、100%から0%までのグラデーションがある、というイメージです。
ちょっとしたコミュニケーションのすれ違いや、どうして譲れないこだわりなどは誰もが持っていますが、その程度が強く困りごとが多い場合にASDと診断されるイメージです。また、ASDにはスペクトラムがある故に、グレーゾーンの診断を受ける方も多くなっています。
統計上、ASDに該当するのは人口の2~5%と言われており、中でも男性に多いと言われています。
ASDの男女比は男:女=4:1とされている一方、女性の場合は言語の遅れが目立たない場合が多く、表面化していないだけではないか、という説もあります。
(ASDの方は、一般的に言語理解の能力が低いと言われていますが、言語理解が非常に優れており、数か国語を使いこなすというASDの方もいらっしゃいます)
ASDのお子さまの行動の特徴及び困りごとには、以下のようなものが挙げられます。
○コミュニケーションの苦手さに関するもの
・空気を読むのが苦手
・行間に含まれた意味が読み取れない
・場にそぐわない発言をする
・言葉を額面どおりに受け取る
・冗談や皮肉が通じない
・表情が乏しい
・目線が合いづらい
・しゃべり方に抑揚が無い
・ジェスチャーを使ったり、読み取ったりするのが苦手
・極端に人見知りするか、全く人見知りしない
・班行動など集団での活動が苦手で、一人で行動したがる
○限定された興味やこだわりに関するもの
・急に予定が変わるとイライラしたり、パニックになったりする
・いつもと同じであることやルーティンを好む
・特定の物事に対して膨大な知識を蓄えている
・全体を大まかに把握するよりも、細部にこだわる方が好き
・収集癖がある
・規則正しく並んでいるものが好き
・時刻表や車のナンバーに惹かれる
・特定の音や光、においなどに敏感
ASDの特性である「コミュニケーションの困難」と「限定された興味・こだわり」は、いずれも“想像する力の弱さ”が根本にあります。
コミュニケーションにおいては相手の立場に立って想像することが必要ですし、ASDの方がいつもと同じであることにこだわるのは、“未来”という不確定なものを想像するのが苦手で、いつも通りであることによって安心感を得ようとしているためと考えられます。
ですので、ASDのお子さまのこだわりは、単にそれが好きだからこだわっているというだけではありません。
例えば青色が好きで、いつも青色のものを選ぶお子さまの場合、いつもと同じ青色のものを選ぶことで“安心”を得ることができます。赤色のものを与えられるとパニックになったり癇癪を起こしたりしまうのは、「いつもと違う」という不安が根本にあると考えられます。
強いこだわりは、一見すると本人のわがままのように見えてしまうかもしれませんが、本人にはどうしようもない特性ですので、頭ごなしに怒るのではなく「なぜこだわるのか」を理解し対処していくことが大切です。
ASDの特性にはグラデーションがあるため、全員に万能な支援方法が存在するわけではありませんが、以下の4つの点はASDのお子さまの支援において非常に重要なポイントとなりますので、ぜひ意識していただければと思います。
①曖昧な表現を避ける
②スケジュールを変更しない
③落ち着く環境を整える
④優位感覚を把握する
曖昧な表現を避ける
ASDのお子さまは、曖昧な表現を理解するのが苦手です。
また、「言わなくてもわかるだろう」という暗黙の了解も、ASDのお子さまにとっては伝わらないものと割り切り、丁寧な説明を心掛けるようにしましょう。
具体的に避けるべき表現としては、
・「少しだけ/適当に」といった程度を表す表現
などが挙げられます。
「あれを取って」と言うのではなく、「机の上のボールペンを取って」と言ったり、「少し待って」を「5分待って」と言い換えたりするなどの工夫が必要です。
また、単に「座って」と指示するのではなく、「自分の椅子に座って」と具体的に指示することも大切です。
もちろん、ASDのお子さまでも、床に座らず椅子に座らなければならないことは理解できるのですが、(どこに座れば良いのだろう…?)と考える過程が入るのと、最初から座る場所を指示されるのとでは、後者の方が理解しやすく、すんなりと指示を聞くことができます。
スケジュールを変更しない
ASDのお子さまは、想像する力が弱く、“未来”という曖昧なものに対処するのがとても苦手です。
ASDの方はいつもと同じやり方・手順を好むと言われていますが、これは、イレギュラーな出来事への不安感が定型発達の人よりも大きいためと考えられています。
ASDのお子さまが安心して過ごせるよう、日々の生活はできる限りルーティン化するようにしましょう。
決まった時間に起きて、食事を取り、就寝するという規則正しい生活は、ASDのお子さまの安心感につながるだけでなく、健康的にも良いものです。
お仕事をされている保護者さまですとお子さまの生活リズムに合わせるのは難しいかもしれませんが、ASDのお子さまは周囲の様子にも敏感なことが多いため、できれば家族揃って生活リズムを整えるのが望ましいでしょう。
学校行事や遠足、家族でのお出かけなど、どうしてもいつも通りに過ごせない日もあると思います。そういった場合は、できるだけ早めかつ具体的に予定を伝えるようにしましょう。「9時に家を出て、2時間車に乗って、11時には目的地に着くよ」など、時間配分まで伝えられるとベストです。
ASDのお子さまにとって「大体わかるだろう」は禁物です。
急な予定変更があったときも、「台風が来ているから道を変えていくよ。だから、予定よりも車に乗る時間が1時間長くなるよ」と、理由も含めてしっかり説明することを心掛けましょう。
落ち着く環境を整える
ASDのお子さまは、特定の音や光、においなどに過敏な場合があります(感覚過敏)。
好き嫌いが激しく偏食であることもありますが、周りが感じる以上に特定の味やにおいに敏感で、どうしても食べられないケースなどもありますので、無理強いは避けましょう。
大きな音が苦手な場合やザワザワした環境が苦手な場合は、静かな部屋に移動したり、イヤーマフや耳栓を使用したりするなどの対処法が考えられます。明るさに敏感な場合は、照明や液晶画面の明るさを調整するなどの方法のほか、フードを被ることで楽になるというお子さまもいらっしゃいます。
敏感さの程度も人それぞれのため、一概に「○○が良い」ということは言えませんが、お子さまの様子を見ながら一つずつ対策を考えていくことが大切です。また、イヤーマフ・耳栓・フードを被るといった対処方法は、視力が悪い人が眼鏡を掛けるのと同様、必要な器具を使っているに過ぎません。
「周りから何か言われるのでは?」と不安に思うかもしれませんが、お子さまの特性をきちんと説明し、まずは理解を求めるようにしましょう。
学校には発達障害に理解のあるスクールカウンセラーや養護教諭(保健室の先生)がいますので、学校全体で対応してもらえるよう相談することも大切です。
優位感覚を把握する
目で見た情報を処理するのが得意な人(視覚優位)や、耳で見た情報を処理するのが得意な人(聴覚優位)、言葉による情報を処理するのが得意な人(言語感覚優位)など、人はそれぞれ得意な感覚(=優位感覚)を持っています。
ASDなど発達障害のお子さまを支援する際には、この優位感覚を知ることが非常に重要です。ASDのお子さまの場合、目で見た情報を処理することが得意な場合が多く、口頭で説明するよりも、図やイラストを示しながら説明する方が伝わりやすいというお子さまが多いと言われています。
例えば、「②スケジュールを変更しない」でお伝えしたように1日の生活リズムを作る時も、イラストの入った時間割表を作成することで、よりお子さまが理解しやすくなります。お出かけの行程を伝えるときも同様に、視覚的に把握しやすいような行程表を作ることで、お子さまの理解を促すことができます。
ただ、ASDの中にも視覚優位ではなく、聴覚優位や言語感覚優位の方もいらっしゃいます。
「ASDだからイラストを使えば良いのだ」と短絡的に考えるのではなく、お子さまの普段の様子を見ながら、あるいはイラストを使ってもあまり効果が無いようであれば別の伝え方を試してみるなど、柔軟に対応することが大切です。
発達障害の小学生の特徴と3つの分類③LD
LD(学習障害、SLD)とは、知的な発達や視覚・聴覚に問題が無いにも関わらず、読む・書く・計算するといった特定の技能だけが苦手となる発達障害のことです。
ADHDの不注意特性やASDの言語理解の低さが要因となっている学習上の困難は、本来的には学習障害の定義には当てはまりませんが、医師によっては、ADHDやASDが原因となり学力が伸び悩んでいる状態を指して「ADHD/ASDとLDの併発である」と診断する場合もあります。
LDは、読み・書き・計算のどれに困難があるかによって、以下のように分類されます。
・読みの困難 … 読字障害(ディスレクシア)
・書きの困難 … 書字障害(ディスグラフィア)
・計算の困難 … 算数障害(ディスカリキュア)
このうち、読み・書きの困難(読字障害・書字障害)については、「音韻処理」という脳の働きが大きく関係していると考えられています。
音韻処理とは、文字と音を結びつける能力のことで、音韻処理が上手くできないと、音読がたどたどしくなったり、単語の切れ目が分かりづらくなったりといった症状が現れます。
算数障害については、単に計算が苦手・遅いというよりは、数の概念そのものの理解が難しい状態にあります。
例えば、3という数字には「●●●」という量を表す性質(基数性)と、「○○●」という順序を表す性質(序数性)がありますが、これらの区別が曖昧であるなどの特徴があります。
3か月は2倍すると6か月ですが、3月を2倍することはできません。算数障害のお子さまは、こういった数の概念そのものの理解が難しいため、文章題で式が立てられなかったり、時計を読むのが苦手であったりします。
また、数字の大小が定着しづらく、「5と2、大きいのはどっち?」という問題にもすぐに答えられないなどの特徴が見られるほか、小学校高学年になっても指を折りながら計算する(全数え法)といった特徴があります。
LDは、ADHDやASDと比べて知名度も低く、研究途上にある発達障害です。そのため、支援方法も確立されておらず、医師によって診断名や助言の内容が異なるケースもしばしば見られます。
私が以前受け持ったSくんは、LDとASDの併発との診断を受けていました。確かにSくんは読みと書きに困難があり、「音読がたどたどしい」「文章の読解が非常に苦手」「記述問題で回答できない」「漢字が覚えにくい」といった特性を持っていました。
Sくんは医師から、「この子は強い書字障害を持っているので、いくら訓練しても文字を書けるようにならない。訓練は本人の負担になるだけなので、文字を書かずに過ごす方が良い」と指示を受けたため、保護者さまは小学2~3年生の間、Sくんに全く文字を書かせずに過ごさせました。
小学3年生にもなると、周りの子はかなりの種類の漢字を書けるようになっていきます。本当にこのままで良いのだろうかと疑問に思ったご両親から私たちの元へご相談があり、私がSくんを指導させていただくことになりました。
指導内容の詳細はこちらの記事で詳しくご紹介していますが、結果としてSくんは、周りの子どもたちと比べて遜色ない程度まで国語力をつけることができました。
そもそもSくんは、国語の問題だと「読めない・書けない」という症状が出ていましたが、得意な算数や好きな電車の図鑑はスラスラと読めていたため、根本的に解決できないものというよりは、国語への苦手意識という精神的な影響が大きかったように思います。
医師と言っても教育のプロではありませんし、療育に関しては言語聴覚士の方の意見なども重要です。
Sくんの場合は、保護者さまがSくんの様子を丁寧に見守り、「この子は本当は読める・書けるのでは?」と気付いたことで、私たちもプロ家庭教師としてサポートに関わることができました。
お子さまの発達のことで不安があると、ついつい診断名に頼ってしまいがちですが、お子さまの様子をしっかり見守るとともに、医師の診断や学校の先生の指導に疑問があるときは、言語聴覚士やプロ家庭教師など、他の分野の専門家の意見を取り入れてみることも大切です。
発達障害の小学生が診断を受けるには
発達障害の診断を受ける時期は、人によって様々です。
幼稚園の頃に特性が顕著に現れ診断を受ける人もいれば、大人になるまで特性に気付かず、社会に出て困りごとを感じて初めて診断を受ける方もいらっしゃいます。
もちろん、困りごとが無いに越したことはありませんが、早めに特性に気付いて対処することで、その後の生きづらさを軽くすることができます。神経質になり過ぎる必要はありませんが、気になることがある場合は早めに地域の発達支援センターなどに相談すると良いでしょう。
ADHDやASDの場合は、集団生活が始まる小学校入学くらいで特性が目立ち始め、医療機関を受診する場合が多いと言われています。また、幼稚園・保育所の段階から特性が目立つ場合は、健診などで医療機関や療育センターへの相談を勧められることもあります。
LDの場合も、国語や算数の勉強が本格的に始まる小学校1~2年生頃が診断可能となるタイミングですが、勉強の内容が簡単なうちは、記憶力などで苦手を補ってしまうお子さまも多くいらっしゃいます。そのため、小学校5~6年生になって勉強でのつまずきが目立ち始め、よく観察すると根本にはLDがあったというケースが多くなっています。
発達障害の種類に関わらず、多くの場合、医療機関ではWISC-IVと言われる知能検査を受けることになります。WISC-IV検査とは、4つの指標と総合的な知能指数(全検査IQ(FSIQ))を測ることができる知能検査で、現在、臨床の場では最も広く使われています。
4つの指標とは「言語理解」「知覚推理」「ワーキングメモリ」「処理速度」であり、発達障害の場合はそれぞれの数値のバラつき(ディスクレパンシー)が大きくなると言われています。また、ADHDの場合はワーキングメモリや処理速度が、ASDや読字障害・書字障害の場合は言語理解が、算数障害の場合は知覚推理が低くなりやすいと言われていますが、必ずしも全員に当てはまるわけではありません。
ディスクレパンシー(それぞれの指標の差)が15以上あると発達障害である、といった言説もたまに耳にしますが、WISC-IVの数値だけで発達障害が診断されることはありません。そもそも、ディスクレパンシーは全検査IQが高くなるほど大きくなる傾向にありますので、IQが高い人に発達障害が多いということになってしまいますが、そのような統計は存在しません。
発達障害の診断は、知能検査の結果だけでなく、お子さまの普段の様子や成育歴、困りごとの有無などを医師が総合的に診て判断します。また、読字障害・書字障害の場合は、音読検査などその他の検査を行うこともあります。
WISC-IVの結果は、療育や学習サポートの際に大きな指針となるのは間違いありませんが、「言語理解が低いからASDなのだ」と決めつけたり、結果に一喜一憂したりしないように気を付けることが大切です。
発達障害の小学生の進路はどうする?
意外かもしれませんが、発達障害のお子さまは中学受験に向いています。
というのも、中学生は思春期真っただ中の時期であり、人間関係もかなり複雑になります。小学校の間は何となく受け入れられていた特性も、中学校に上がるとからかいの対象になったり、クラスメイトの輪に入れなかったりといった困りごとを抱えるケースも少なくありません。
公立中学校の場合は、地域の様々な子どもたちが一堂に集まるため、お子さまの個性が受け入れられる可能性も残念ながら低くなってしまいます。
一方、一定レベルの受験を乗り越えた子どもたちが入学してくる私立中学であれば、お子さんの個性を受け入れてくれるクラスメイトもおり、伸び伸びと過ごせる可能性は比較的高くなります。(もちろん、最終的には相性がありますので、発達障害のお子さま全員にとって私立中学が良いというわけではありません)
最難関校レベルの私立中学に入るのは特性上難しい場合もありますが、「2.発達障害の小学生の特徴と3つの分類」で紹介したように、それぞれの発達特性にあったサポートを行うことで、発達障害であっても最難関の私立中学に合格することは十分に可能です。
地元の公立中学校への進学に不安を感じておられる方や、発達障害の特性に合わせた受験サポートを受けたいとお考えの方は、ぜひプロ家庭教師メガジュンまでお問い合わせください。志望校選びから学習のサポート、日常での困りごとの対策まで、幅広くご相談を承っています。
確かな指導力を持った講師たちが、全力でお子さまをサポートさせていただきますので、安心してご連絡ください。
発達障害の小学生の特徴・支援方法のまとめ
この記事では、発達障害の小学生の特徴や支援方法について詳しくご紹介してきました。改めてポイントをまとめると以下のとおりです。
・発達障害はADHD、ASD、LDの3つに分類される
・ADHD、ASD、LDの特性は重なり合うことも多く、併発という診断を受ける場合もある
・ADHDの特性は「不注意」と「多動性・衝動性」
・ASDの特性は「コミュニケーションの困難」と「限定された興味・こだわり」
・LDは「読字障害」「書字障害」「算数障害」の3つに分類される
・発達障害は、小学校入学頃から特性が現れることが多く、早めに診断を受けることで適切なサポートにつながることができる
・診断名やWISC-IV検査の結果はあくまで参考であり、目の前のお子さまをしっかり見ることが大切
・発達障害の小学生は、中学受験でより良い環境を目指すことができる
周りの子どもたちと違う行動が目立ったり、勉強に付いていけなかったりすると、保護者さまはとても不安に感じられると思います。お子さまのことで心配なことがある場合は、ご家庭だけで抱え込まず、まずは学校の先生やスクールカウンセラー、市町村の窓口に相談してみましょう。
発達障害の方の支援には、専門的な知識が必要です。また、医療的な観点だけでなく、教育的・福祉的な観点も欠かせません。
お子さまが小さいうちから多くの人を巻き込んでおくことで、大人になってからも継続的なサポートが期待できますし、周りの人の力を借りること自体、お子さまがこれからの社会を生き抜いていくためには必須のスキルとも言えます。
発達障害のお子さまは、決して本人がわがままであったり、努力が足りなかったりするわけではありません。みんなと同じように出来ないことに何より悩んでいるのはお子さま自身ですので、お子さまの視点に立ち、周りの大人が全力でサポートしていくことが大切です。
私たちプロ家庭教師メガジュンは、長年にわたり発達障害のお子さまを支援してきました。最初は自信のなかったお子さまが、一つ一つできることを増やし、自分を信じる力を付けて社会へ羽ばたいていく姿を見るたび、プロ家庭教師をしていて良かったと心から感じています。
お子さまの発達障害のことでお悩みの保護者さまは、ぜひ一度プロ家庭教師メガジュンまでお問い合わせください。
お子さまが自分らしく生きていけるよう、必ずお力になることをお約束します。
また、指導や面談はオンラインでも承っており、これまで日本国内だけでなく海外や帰国子女の方からもご利用をいただいてきました。
初回授業や初回ご相談は無料ですので、オンラインで受講できるか不安な方も、お気軽にお試しいただくことができます。
お子さま一人一人が自らの力で未来を切り拓いていけるよう、講師一同全力で支援してまいります。
最後までお読みいただきありがとうございました。