発達障害の二次障害とは?うつ病や子ども・大人の治療法を解説

  • #発達障害

    発達障害の二次障害とは、発達障害の特性によってストレスを感じたり、社会に上手く適応できなかったりすることで、精神疾患や問題行動が生じることを指します。

    二次障害の現れ方は人によって様々であり、うつ病や適応障害などの精神疾患を抱えてしまう人もいれば、非行や暴力といった反社会的な行動を取ってしまうケースもあります。

    ただ、発達障害だからといって、必ずしも二次障害が生じるとは限りません。
    周囲の理解と適切なサポートがあれば、発達障害に伴うストレスは最小限に抑えることができますし、精神疾患や問題行動が生じることもありません。

    また、二次障害は、大人に限らずお子さまでも抱えることがあります

    私は、発達障害専門のプロ家庭教師や塾経営者として長年にわたり活動してきましたが、残念ながら適切な支援につながることができず、情緒不安や不登校といった二次障害を抱えた状態で私たちの元へ相談に来られる方もたくさんいらっしゃいました。

    二次障害については、まずは予防が大切です。
    保護者さまや学校の先生、会社の同僚などが本人の特性を正しく理解し、適切な配慮を行うことが何よりも大切ですし、そのためには発達障害の方自身も自分の特性をしっかりと理解し、周りに説明するスキルを身に付ける必要があります。

    そして、もし二次障害を抱えてしまったら、しっかり休養を取ったり、考え方(認知)の偏りを直すためのトレーニングに取り組んだりして、焦らずに対処していくようにしましょう。

    この記事では、

    • 発達障害の二次障害とは
    • 発達障害の二次障害の予防法
    • 発達障害の二次障害になったときの治療法や相談先

    を解説していきます。

    現在、二次障害に悩んでおられる方や、二次障害を予防したい方に役立つ記事となっていますので、ぜひ最後までお読みいただけますと幸いです。

    発達障害専門のプロ家庭教師
    妻鹿潤
    ・16年以上1500名以上の指導実績あり
    ・個別指導塾の経営・運営でお子様の性質・学力を深く観る指導スタイル
    ・yahooやSmartNews、Newspicksなどメディア向け記事も多数執筆・掲載中

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    ▼目次

    発達障害(ADHD、ASD、LD)とは

    発達障害(ADHD、ASD、LD)とは

    ※この章では、発達障害(ADHD、ASD、LD)の概要を解説していきます。
    発達障害について既に知識をお持ちの方は、「2.発達障害の二次障害とは」までお進みください。

    発達障害とは、生まれつき脳の発達に凸凹があることで、社会生活において様々な困難を抱えてしまう状態を指します。
    発達障害は生まれつきの脳の器質(性質)の問題であり、親の育て方や本人の努力不足が原因ではありません。

    発達障害は、ADHD(注意欠如・多動症)、ASD(自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群)、LD(学習障害、SLD)の3つに分類されます。

    特性の現れ方や強さには人によって差があるほか、それぞれの特性が重なり合う場合もあります。

    以下ではそれぞれの大まかな特徴をお伝えしていきますが、定義だけにこだわり過ぎず、ケースバイケースで柔軟に対応していくことが大切です。

    発達障害とは①ADHD(注意欠如・多動症)

    発達障害とは①ADHD(注意欠如・多動症)

    ADHD(注意欠如・多動症, Attention-Deficit Hyperactivity Disorder)の特性は、「不注意」と「多動性・衝動性」の2つとされています。

    <ADHDの特性>
    ○ 不注意
    – 一つの物事に集中し続けるのが苦手。集中力のコントロールができない。

    ○ 多動性・衝動性
    – 落ち着きが無くじっとしていられない。衝動的に行動してしまう。

    ADHDの特性のうち、多動性・衝動性が強い方は、子どもの頃から授業中に立ち歩いたり、カッとなるとすぐ手が出てしまったりといった行動が見られます。
    大人になってからも言いたいことを我慢できず不適切な発言をしてしまったり、衝動買いが多かったりするなどの困りごとが生じる場合があります。

    ただし、多動性・衝動性は年齢とともに落ち着く場合が多く、大人になってからは「不注意」の特性が目立つことが多くなっています

    不注意の特性に伴う困りごとには、「勉強や仕事に集中できない」「頭の中の考えが整理できない」「ぼーっとしてしまう」などがあります。
    頭の中が整理できないだけでなく、実際の整理整頓も苦手な場合が多いです。

    とあるADHDの方は、「頭の中で常に話し声がしていて、落ち着いて物事を考えることができない」と仰っていました。
    ADHDの方はあれこれと頭の中にアイデアが浮かぶのですが、それを仕分けしてコントロールするのが苦手であると理解しましょう。

    これらの特性から、ADHDの方は仕事や勉強、家事などを効率よくこなすのが苦手な傾向にあります。
    「ケアレスミスが多い」「段取りが悪い」などで周りから叱責されることも多く、そのことがストレスにつながり二次障害を抱えてしまうケースも少なくありません。

    <ADHDの困りごとの例>

    • じっとしているのが苦手
    • 貧乏ゆすりをする
    • 授業中に立ち歩く
    • 整理整頓が苦手
    • 忘れ物、失くし物、落とし物が多い
    • 遅刻が多い
    • ケアレスミスが多い
    • 大事なこともうっかり忘れてしまうことがある
    • 段取りを考えず、目についたものから手を付ける
    • おしゃべりが止められない
    • 理性よりも感情に従って行動してしまう
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    発達障害とは②ASD(自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群)

    発達障害とは②ASD(自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群)

    ASD(自閉スペクトラム症, Autism Spectrum Disorder)の特性は、「コミュニケーションの不全」と「限定された興味・こだわり」の2つとされています。

    <ASDの特性>
    ○ コミュニケーションの不全
    – 相手の表情から感情を読み取ったり、その場の雰囲気を察したりするのが苦手

    ○ 限定された興味・こだわり
    – 特定の物事や自分なりのルールに強いこだわりを持ち、日常生活に支障を来す

    コミュニケーション不全の特性からは、会話が噛み合わないことで人間関係が築きにくく、集団から孤立してしまうなどの困りごとが生じます。
    お子さまの場合はクラスに馴染むことができず、そのことが原因で不登校になってしまうケースなどがあります。

    大人の場合は、「適当に」「少しだけ」といった曖昧な表現や、社会通念上の暗黙の了解が理解できず、仕事や人間関係でトラブルを起こしてしまう場合があります。

    限定された興味・こだわりについては、単に物事への執着が強いだけでなく、いつもと同じであることや自分なりのルールにこだわるばかりに、周りと協調できず、「融通の利かない人」と認識されてしまうことがあります。

    また、ASDの方は感覚過敏を併せ持つ場合も多いとされています。
    大きな音や特定の味やにおいが苦手なことによって、行動範囲が制限されたり、大きなストレスを感じたりすることがあります。

    <ASDの困りごとの例>

    • 表情や雰囲気から相手の気持ちを読み取ることが苦手
    • 行間のニュアンスが理解できず、会話が噛み合わない
    • 曖昧な表現や「あれ・それ・これ」などの指示語の理解が苦手
    • デリカシーの無い発言をする
    • 1人で行動することを好み、協調性が無い
    • 好きなものに熱中すると周りが見えなくなる
    • いつもと同じであることにこだわり、ルーティンが崩れるとストレスを感じる
    • 臨機応変に対応することが苦手
    • 小さな物音でも気が散る
    • 特定の味やにおいが苦手で偏食である
    • 特定の感触が苦手で、着る服が限定される

    「アスペルガー症候群」という名称に馴染みがある方も多いと思いますが、アスペルガー症候群とはASDの分類の一つであり、厳密に言うとASD=アスペルガー症候群ではありません。

    <ASD(自閉スペクトラム症)の分類>

    • 自閉症 … 知的な遅れと言語の遅れを伴う自閉傾向
    • 高機能自閉症 … 知的な遅れは無いが、言語の遅れを伴う自閉傾向
    • アスペルガー症候群 … 知的な遅れや言語の遅れを伴わない自閉傾向

    また、ASDの特性には、その名称にもあるとおり「スペクトラム(連続性)」があります。
    ASDであるか/ないかの二択ではなく、どんな人でもASD的な性質を持ち合わせており、その程度が激しく困りごとが大きい場合にASDであると診断されるイメージです。

    そのため、ASDはグレーゾーンと診断される人も多く、大人になってから特性に気付くケースも少なくありません。

    ASDの特徴として、発現率の男女差が大きいことも挙げられます。
    ASDの発現率は男:女=4:1とする研究もあり、圧倒的に男性の方が多いとされています。

    男女の発現率が大きく違う理由については、女性は言語理解やコミュニケーション能力が平均的に高く、ASDによる困りごとが目立ちにくいためという説がありますが、はっきりとはわかっていません。

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    発達障害とは③LD(学習障害、SLD)

    発達障害とは③LD(学習障害、SLD)

    学習障害とは、知的な遅れや視覚・聴覚には問題が無いものの、読む・書く・計算するといった特定の学習スキルのいずれか1つ以上に困難が生じる発達障害のことです。

    読む・書く・計算するのうち、どれに困難があるかによってさらに細かく分類されます。

    <LDの分類>

    • ディスレクシア(読字障害) … 読むことに困難がある
    • ディスグラフィア(書字障害) … 書くことに困難がある
    • ディスカリキュア(算数障害) … 計算することに困難がある

    ADHDの不注意特性や、ASDの言語理解の低さが原因で読み・書き・計算が苦手になっている場合をLDとするかどうかは医師によって判断が分かれますが、日本においては、「LDとADHD/ASDの併発である」と診断されるケースが多いようです。

    因みに、アメリカの精神医学会の診断基準(DSM-5)では、「学習の困難がその他の疾患に起因する場合は、LDに該当しない」とされているため、上述のケースはLDではなく、「ADHDやASDに伴う二次的な困りごととして、学習上の困難が生じている」という診断になります。

    LDについてはADHDやASDと比べて認知度が低く、学校でも単純な反復練習を何度もさせるなど、適切でない指導が行われることがあります。
    また、読み・書き・計算はあらゆる勉強の基礎になりますので、学力も伸びづらく、進学で大きなハンデを背負ってしまったり、自己肯定感が下がったりしてしまう等の困りごとを抱えることが多くなっています。

    少しでも苦手が改善できるよう、個々人に合った最適なトレーニングを行うとともに、読み上げ機能・キーボード入力・電卓の使用など、ツールの活用によって困りごとを解消していくことが大切です。

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    発達障害の二次障害とは

    発達障害の二次障害とは

    発達障害の方は、社会生活において様々な困難を抱えています。
    周囲の理解が得られず適切なサポートが受けられないと、困難の度合いが大きくなり、本人が感じるストレスも非常に大きくなってしまいます。

    その結果、ストレスによる精神疾患を抱えてしまったり、暴力などの問題行動を起こしてしまったりすることを「二次障害」と呼びます。
    二次障害は特定の疾患を指す医療用語ではなく、発達障害に伴って生じる問題の総称となっています。

    発達障害の二次障害は、その性質によって「内在化障害」と「外在化障害」の2つに分類されます。

    <発達障害の二次障害の分類>

    • 内在化障害 … 本人に影響を及ぼす精神的な症状
    • 外在化障害 … 周りの人に影響を及ぼす行動面での問題

    以下では、具体例も交えながら詳しく解説していきます。

    発達障害の二次障害とは①内在化障害

    発達障害の二次障害とは①内在化障害

    内在化障害は、発達障害の当人が影響を受ける精神的な症状を指します。

    具体的には、「うつ病」「適応障害」「不安障害」「強迫性障害」「依存症」「心身症」「不登校・ひきこもり」などが挙げられます。

    うつ病

    うつ病は、若年層の二次障害として最もよく見られるものです。
    仕事での失敗が続いたことで気分が落ち込み、眠れない・食欲が無い・何をしても楽しくないといった症状が現れたため精神科を受診したところ、うつ病と併せて発達障害であることが判明するケースが非常に多くなっています。

    適応障害

    適応障害とは、自分の置かれている環境に上手く適応できず、仕事や学校を無断欠席してしまったり、他者に対して攻撃的になってしまったりする状態を指します。
    また、めまいや発汗など、身体的な症状を伴うこともあります。

    環境におけるストレスで引き起こされるものであり、ストレスの原因を取り除くと症状が改善される点が特徴です。

    不安障害

    不安障害は、強い不安を感じてパニックや動悸が起こる障害の総称で、パニック障害やPTSD、強迫性障害、恐怖症など様々なものが不安障害に含まれます。

    激しい動悸やめまいなどのパニック発作が起こるため、「人混みに行けない」「電車に乗れない」「男性と会話できない」など特定の行動や場面を避けざるを得ず、行動が大きく制限される場合があります。

    強迫性障害

    強迫性障害とは不安障害の一つで、自分でも意味が無いと分かっているのに強い不安に囚われてしまう「強迫観念」と、それを打ち消すために行う「強迫行動」の2つから成り立っています。
    代表的な例が不潔恐怖症(潔癖症)で、何度も手を洗ったり、電車のつり革が掴めなかったりといった強迫行動が見られます。

    ほかにも、「戸締りを何回も確認してしまう」「コンロの火を消したかが常に気になる」なども強迫性障害に該当します。

    依存症

    特定の行動を取ることについて、自分でコントロールできない状態を指します。

    アルコール依存や薬物依存など、物質そのものに依存する「物質依存」と、ギャンブル依存やゲーム依存など、行動のプロセスに依存する「プロセス依存」があります。
    発達障害の方は、モチベーションをコントロールしづらいという脳の特性(報酬系の機能不全)があるため、定型発達の方に比べて依存症になりやすいと考えられています。

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    心身症

    心身症とは、精神的なストレスが原因で様々な身体症状が現れることを指します。
    強いストレスによって胃潰瘍になったり、おなかの調子が悪くなる過敏性腸症候群、蕁麻疹などの皮膚疾患が代表的です。

    また、気管支喘息などの持病が悪化するケースもあります。

    不登校・ひきこもり

    ひきこもりとは、長期間(厚生労働省の定義では6か月以上)学校や仕事に行かずに家に閉じこもっている状態のことを指します。
    また、不登校とは1か月以上欠席が続く(病気・ケガによるものを除く)ことを指します。

    不登校やひきこもりの背景に発達障害やうつ病などの精神疾患が関係していることも多い一方、家族関係や人間関係のトラブルがきっかけでひきこもりとなるケースもあります。
    いずれの場合も家庭だけで解決しようとせず、専門機関と連携・相談することが大切です。(参考:ひきこもりVOICE STATION|厚生労働省 (mhlw.go.jp)

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    発達障害の二次障害とは②外在化障害

    発達障害の二次障害とは②外在化障害

    外在化障害とは、発達障害の二次障害の中でも、自分以外の他者に影響を及ぼすものを指します。

    具体的には「反抗挑戦性障害」「行為障害」「暴力」「家出」「非行」などの反社会的な行動が挙げられます。

    反抗挑戦性障害

    反抗挑戦性障害とは、10歳前後の子どもにおいて、反抗的で挑戦的な行動が継続して現れ、それが日常生活や人間関係に支障を来している状態を指します。
    例えば、大人をわざと怒らせる言動を取る、同年代の子どもともよくケンカをする、癇癪を起こすなどの行動が6か月以上続くといったものです。

    発達障害などの生まれつきの性質と、学校や家庭における環境的な要因の両方が影響すると考えられています。

    行為障害

    行為障害とは、他者への威嚇や動物虐待などの暴力行為や、繰り返し嘘をつく、他人の物を盗んだり壊したりするなど、犯罪行為を含む様々な反社会的行動を繰り返す状態を指します。
    思春期の子どもに多く見られ、両親からの愛情不足や虐待、人間関係のトラブルなどから引き起こされると考えられていますが、その背景に発達障害が関係しているケースもあります。

    暴力・家出・非行

    反抗挑戦性障害や行為障害に該当するほど程度が大きくなく、継続性が見られない場合でも、暴力や家出、非行といった反社会的な行動がしばしば見られる場合は、発達障害による二次障害であると捉えることができます。
    「自分のことを誰もわかってくれない」「自分なりに頑張っているのに怒られる」という孤独感や自己否定感が、他者への攻撃性や反社会的な行動へとつながってしまいます。

    これらの問題行動は思春期に現れることが多いものの、幼少期でもわざと大人を困らせたり、怒られたりする行動を取る場合があります。

    外在化障害は本人の気質や特性だけでなく、環境的な要因で生じる部分も非常に大きいため、幼い頃から丁寧に愛情深く接することが大切です。

    また、これらの外在化障害が、内在化障害と密接に関わっているケースも多く見られます。

    発達障害から二次障害が生じる原因・理由

    発達障害から二次障害が生じる原因・理由

    発達障害の二次障害は、周囲の理解が無く、適切な配慮が受けられないことが原因となって生じます。

    発達障害の方は、外見上は“普通の人”です。
    また、仕事や勉強の全てが苦手なのではなく、一部のことだけが極端に苦手なだけで、周りと同じかそれ以上にできることもあります。

    そのため、周りの人も発達障害について理解しづらく、「頑張ればできるよ」「怠けているんじゃない?」「皆そんな感じだよ」と適切ではない声掛けや対応をしてしまうことがあります。

    こうした経験からストレスを感じたり、自己肯定感が下がってしまったりすることによって、「2.発達障害の二次障害とは」で挙げたような二次障害が生じることになります。

    また、発達障害の二次障害には、それらを解決しづらくなる「悪循環」が存在します。
    ADHD・ASD・LDのそれぞれの悪循環について、以下で詳しく説明していきます。

    発達障害から二次障害が生じる原因・理由①ADHDの場合

    発達障害から二次障害が生じる原因・理由①ADHDの場合

    ADHDの方は、特性によるケアレスミスの多さやそそっかしさによって、周囲から叱責を受けることが多いです。
    また、自分自身は改善したいと思っているにも関わらず、何度も同じ失敗を繰り返してしまうため、「自分はダメだ」と自信を失ってしまう方も少なくありません。

    「どうせ自分には無理だから」とやる気を失っている状態を見て、周りの人は「なぜもっと頑張らないのか」とより強く叱責します。
    すると、ますます本人は自信とやる気を失ってしまうという悪循環が生じ、やがてうつや適応障害といった二次障害を引き起こすことになります。

    <ADHDの二次障害の悪循環>

    1. 不注意・多動性・衝動性によるミスや問題行動
    2. 失敗経験や周りからの叱責
    3. 本人の改善意欲の低下
    4. 繰り返されるミスや問題行動
    5. 周囲のさらなる叱責
      →やがて二次障害へとつながる

    発達障害から二次障害が生じる原因・理由②ASDの場合

    発達障害から二次障害が生じる原因・理由②ASDの場合

    ASDの方の場合は、コミュニケーションが苦手で人間関係を築きにくいほか、こだわりが強く融通がきかないなどの困りごとを抱えるケースが多くなっています。

    会話が噛み合わなかったり場にそぐわない発言をしてしまった際に、怒られたり笑われたりすると、コミュニケーションを取ること自体を避けるようになってしまいます。
    また、イレギュラーな出来事について丁寧に説明するなどのサポートが無いと、他者と行動することそのものを避けるようになる場合もあります。

    ASDの方の場合は、ソーシャルスキルトレーニングを通してコミュニケーションのパターンを覚え、それを日常生活でも実践していくことが重要ですが、コミュニケーションや人との関わりそのものを拒否するようになると、コミュニケーションスキルが上達しないばかりか、社会的に孤立してしまう場合もあります。

    社会からの疎外感や「自分のことは誰もわかってくれない」というストレスが、精神疾患の原因となったり、反社会的な行動の原因となったりすることがあります。

    <ASDの二次障害の悪循環>

    1. コミュニケーションの行き違い、融通の利かなさ
    2. 周囲からの叱責やからかい
    3. コミュニケーションや他者との関わりを避ける
    4. コミュニケーション力や臨機応変さを身に付けることができない
    5. 周囲からの一層の叱責や孤立
      →やがて二次障害へとつながる

    発達障害から二次障害が生じる原因・理由③LDの場合

    発達障害から二次障害が生じる原因・理由③LDの場合

    LDの方の場合は、読み・書き・計算といった基礎的な学習スキルが上手くこなせないため、「こんな簡単なこともできないのか」と叱責されたり、「字が汚い」「簡単な計算を間違えるなんて」と周りから笑われたりしてしまうことがあります。

    また、学校現場では、「反復練習さえすれば改善できる」という誤った指導により、ひたすら音読や漢字練習、計算練習をさせられて、ますます読むこと・書くこと・計算することが嫌いになってしまうケースが非常に多く見られます。

    真面目な子であればあるほど、先生の指示に従って一生懸命練習するのですが、それでも改善されないため、やがて自信を無くして自己否定に陥り、不登校になったり、小児うつや適応障害を発症してしまったりするケースもあります。

    <LDの二次障害の悪循環>

    1. 読み・書き・計算の苦手さ
    2. 周囲の叱責、からかい、負担の大きい反復練習
    3. 読み・書き・計算を忌避
    4. 学習スキルの停滞
    5. 周囲からの一層の叱責
      →やがて二次障害へ

    発達障害の二次障害の予防と対応

    発達障害の二次障害については、周囲が特性を正しく理解し適切な配慮を行うことで予防することが可能です。

    また、二次障害を抱えてしまった場合でも、医師や専門機関に相談し、しっかりと休養を取ったり、認知の偏り(考え方のクセ)を直したりすることで治療・改善が可能です。

    発達障害そのものを解消することはできませんが、二次障害やそれに伴う困りごとは必ず解消することができます。
    以下では、発達障害による二次障害の予防や対応のポイントを紹介していきますので、参考にしていただければと思います。

    発達障害の二次障害の予防と対応①できていることを褒める

    発達障害の二次障害の予防と対応①できていることを褒める

    発達障害の方への適切な配慮とはどのようなものか、全く知識の無い人が正しい知識を身に付け、それを実践するまでには相当の時間が掛かります。
    企業や学校では発達障害に関する研修が行われることも増えていますが、研修をすればすぐに完璧な対応ができるというものではありません。

    専門的な内容を理解することが難しいときは、とにかく「褒める」ことを意識しましょう。
    発達障害であっても、定型発達であっても、褒められると人は嬉しいものです。できないことを指摘されるよりも、できていることを褒められた方が、「次も頑張ろう」「苦手なことにも挑戦してみよう」という気持ちになれます。

    発達障害の方自身も、自分で自分を褒めることを意識してみましょう。
    「できないことよりも、できることに注目する」ということは、自分自身を振り返る際にもとても大切です。

    「遅刻しなかった」「昨日よりもミスの数が少なかった」など、どんな小さなことで構いません。
    1日1回自分の行動を振り返り、良かった点を挙げることを習慣にしていくと、徐々に自己肯定感を高めていくことができます。

    発達障害の二次障害の予防と対応②対応方針を共有する

    発達障害の二次障害の予防と対応②対応方針を共有する

    発達障害の方への対応方針は、組織の中でしっかりと共有するようにしましょう。
    Aさんは理解ある対応をしてくれるのに、Bさんは頭ごなしに叱るだけ、という状況ではストレスがより大きくなってしまいます。

    特にお子さまの場合は、父親と母親で教育方針が違ったり、先生によって対応が異なったりすると、大人が信用できなくなり、余計に問題行動が増えてしまう場合があります。

    よくある困りごとを具体的に挙げ、その対応について細かく整理し共有しておきましょう。

    発達障害の二次障害の予防と対応③精神科での治療(認知行動療法、薬物療法)

    発達障害の二次障害の予防と対応③精神科での治療(認知行動療法、薬物療法)

    発達障害の二次障害として、うつ病や不安障害などの症状がある場合は、精神科で治療を受けることになります。

    精神科で受ける治療法の一つに、「認知行動療法」があります。
    認知行動療法とは、その人の考え方や物事の受け取り方のクセに注目し、ストレスにつながりやすい部分を少しずつ変えていく精神療法です。

    具体的には、心理カウンセラーによるカウンセリングによって、悩みや問題を明らかにし、違う考え方はできないか、どう行動を変えていけば良いかを当事者とカウンセラーで一緒に考えていきます。

    また、精神的な症状に対しては薬物療法を行う場合もあります。
    ただし、薬物療法は対症療法であり、問題の根本的な解決にはつながりません。上述の認知行動療法や環境の調整、周囲の理解促進などを組み合わせながら症状の改善を目指す必要があります。

    発達障害の二次障害の予防と対応④ペアレント・トレーニング

    発達障害の二次障害の予防と対応④ペアレント・トレーニング

    お子さまの場合は、保護者さまがペアレント・トレーニングを受けることもおすすめです。
    発達障害のお子さまの場合は、子育てにおける苦労も大きく、保護者さま自身がストレスを溜めてしまい、家庭内の雰囲気が悪くなってしまうこともあります。

    ペアレント・トレーニングでは、発達障害について正しい知識を身に付け、適切に対応する方法を学べるだけでなく、保護者さま自身の考え方のクセについても改善し、ストレスが溜まらないような考え方を身に付けたり、怒りをコントロールするためのテクニックを習得したりすることができます。

    大人が思っている以上に、お子さまは保護者さまの気持ちに敏感です。
    保護者さまが穏やかな気持ちで過ごすことでお子さまが落ち着くケースもよくありますので、子育てに大きなストレスを感じていたり、「自分はダメな親だ」と落ち込むことが多い保護者さまは、ペアレント・トレーニングの受講を検討してみましょう。

    発達障害の二次障害の予防と対応⑤しっかり休む

    発達障害の二次障害の予防と対応⑤しっかり休む

    発達障害の方は、定型発達の方に比べて疲れやすい傾向にあります。
    例えば、「集中しづらい」という特性を持っているADHDの人が10分間集中するのと、定型発達の方が10分間集中するのとでは、ADHDの人の方が何倍も脳が疲れることになります。

    発達障害の方の中には、周りと合わせるために、常に100%の状態で頑張っている方も少なくありません。
    どうにかこうにか“普通”を装って過ごしているため、家に帰る頃にはへとへとに疲れてしまっているという方もたくさんいらっしゃいます。

    発達障害で疲れやすい方は、しっかりと休養を取ることを意識するとともに、完璧を求め過ぎず、必要に応じて周りを頼るスキルも身に付けるようにしましょう。

    発達障害の二次障害の予防と対応⑥生活リズムを整える

    発達障害の二次障害の予防と対応⑥生活リズムを整える

    心身の健康を維持するためには、生活リズムを整えることが欠かせません。
    ですが、発達障害の方はスケジュール管理が苦手な場合も多く、目の前のことに熱中しすぎて夜更かししてしまったり、一日のタスクが終わらず就寝時間が遅くなってしまったりすることがあります。

    最近では、ADHD当事者の方が作成した「ルーチンタイマー」など、発達障害の方向けのアプリも開発されていますので、こういったアプリやスケジュール手帳、ToDoリストなどを活用し、できるだけ規則正しい生活を送るようにしましょう。

    ただし、規則正しい生活を送るためにやりたいことを我慢すると、ストレスで逆に体調を崩してしまうという方もいらっしゃいます。
    好きなものを制限なく楽しむ日を作ったり、家事代行を頼んで自由時間を増やしたりするなどして、ストレスなく健康に過ごせるよう工夫することも大切です。

    発達障害の二次障害の予防と対応⑦専門機関に相談する

    発達障害の二次障害の予防と対応⑦専門機関に相談する

    発達障害が原因で不登校やひきこもりになっている場合や、暴力や非行などの反社会的な行動が見られる場合は、家庭だけで解決しようとせず、専門機関に相談することが大切です。

    専門的な立場からのサポート無しに、これらの問題を解決することは非常に困難です。
    発達障害の方を支援するための公的機関は自治体ごとに様々なものが設置されていますので、お住まいの地域の施設を調べ、相談してみると良いでしょう。

    <相談機関の例>
    ○ 発達障害者支援センター
    – 発達障害者支援センターとは、発達障害に関する様々なサポートを包括的に行っている公的機関です。子どもの発達支援から大人の就労支援まで、関係機関と連携しながら幅広いサポートを行っています。
    (全国の施設一覧:発達障害者支援センター・一覧 | 国立障害者リハビリテーションセンター (rehab.go.jp)

    ○ 精神保健福祉センター
    – 精神保健福祉センターは、精神障害に関わる問題をサポートするための公的機関で、各都道府県と政令指定都市に設置されています。発達障害についても相談できるほか、必要に応じて医療機関につないでもらうこともできます。
    (全国の施設一覧:全国精神保健福祉センター一覧│全国精神保健福祉センター長会 (zmhwc.jp)

    ○ 児童発達支援センター
    – 児童発達支援センターは、子どもの発達を中心に支援する機関で、療育などのサポートが行われています。子どもの発達に関する相談業務を行っている場合もあるため、問い合わせてみると良いでしょう。

    ○ 教育支援センター
    – 教育支援センターは各教育委員会が設置する機関で、不登校や学力不振など、学校や学業に関する困りごとを中心に相談することができます。電話相談が可能な施設も多いため、気軽に相談することができます。

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    発達障害の二次障害についてのまとめ

    発達障害の二次障害についてのまとめ

    この記事では、発達障害から生じる二次障害について詳しく説明してきました。

    改めてポイントをまとめると、以下のとおりです。

    <POINT>

    • 発達障害の二次障害とは、周囲の無理解などによるストレスで、精神疾患や反社会的な行動が生じること
    • 発達障害はADHD・ASD・LDの3つに分類され、いずれも二次障害につながる可能性がある
    • 発達障害の二次障害は、自分に影響がある「内在化障害」と、他者に影響を与える「外在化障害」に分類される
    • 内在化障害には、うつ・適応障害・不安障害・強迫性障害・心身症・依存症・ひきこもり・不登校などがある
    • 外在化障害には、反抗挑戦性障害・行為障害・暴力・家出・非行などがある
    • 二次障害を予防するためには、周囲の理解と適切なサポートが必要
    • 二次障害を抱えた場合は、速やかに医療機関を受診するとともに、無理せず休んだり、考え方のクセを少しずつ治したりしていくことが大切

    発達障害そのものを解消することはできませんが、それに伴う二次障害は、周囲の人が特性を正しく理解し、適切な配慮を行うことで防ぐことができます。
    また、二次障害を抱えてしまった場合でも、医療機関や専門機関に相談し支援を受けることで、問題を解消していくことが可能です。

    私たちプロ家庭教師メガジュンでは、長年にわたり発達障害のお子さまを支援してきました。
    不登校などの二次障害を抱えているお子さまもいらっしゃいましたが、ご家庭と連携しながら適切にサポートすることで、多くのお子さまが学校復帰し、それぞれの希望進路を実現することができています。

    発達障害のお子さまのサポートには、専門的な知識を持った指導者の存在が欠かせません。
    プロ家庭教師メガジュンでは、豊富な経験を持った講師たちがお子さまをサポートいたしますので、発達障害のお子さまのことでお悩みの方は、ぜひ一度プロ家庭教師メガジュンまでお問い合わせください。

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    最後までお読みいただきありがとうございました。

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