【合格体験記】有名私立高校卒のTさんが二浪の末に京大薬学部に合格するまでの物語

この記事では、プロ家庭教師メガジュンをご利用いただき、京都大学薬学部に合格されたTさんの合格体験記をご紹介します。

発達障害・ギフテッド専門のプロ家庭教師
妻鹿潤
・16年以上1500名以上の指導実績あり
・個別指導塾の経営・運営でお子様の性質・学力を深く観る指導スタイル
・yahooやSmartNews、Newspicksなどメディア向け記事も多数執筆・掲載中

「自分のやり方は間違っていない」と宅浪を続けていたTさん

ギフテッド 浪人生
Tさんは某難関私立高校出身で、高校時代まで勉強で困ったことはほとんどありませんでした。

理系科目は中学校・高校と学年トップ層、それ以外の科目も中間層には留まっており、「勉強が苦手だ」と感じたことはこれまで無かったそうです。

ですが、それ故に「自分の勉強方法は正しい」と思い込んでしまっており、「ケアレスミスを無くすために丁寧に問題を解いた方が良いよ」「基礎が疎かになっている分野は一から見直そう」という先生や保護者さまのアドバイスを聞き入れられない状態になっていました。

また、自分の勉強方法に自信があるため「塾や予備校には通わない」と宣言し、高校卒業後の二年間、自宅学習のみで浪人を続けていました。

ですが、2回目の不合格が明らかになったタイミングで、いよいよTさん自身もこのまま勉強を続けていても合格できないかもしれないと思い至り、私たちの元へご相談をくださいました。

加えて保護者さまからは、「Tさんに発達検査を受けさせた方が良いか?」という相談もいただきました。

頑なに自分の勉強方法を変えようとせず、また、コミュニケーションが苦手なTさんには、何かしらの発達特性があるのではないかと保護者さまは考えておられました。

そこで私たちは、勉強のことだけでなく、Tさんの日頃の生活や生い立ちについても初回の面談で詳しくお伺いし、発達検査の必要があるかどうかについても一緒に検討していくことにしました。

<Tさんの基本情報>

  • 20歳(相談当時)、男性
  • 関西在住
  • 有名私立高校卒
  • 京都大学薬学部志望
  • 本人の希望により予備校には通っていない
  • こだわりの強さやコミュニケーションの苦手さから、発達検査を検討中(保護者さまの意向)

初回の面談では、保護者さまとTさん本人それぞれから詳しくお話をお伺いしました。

その結果、Tさんは「意義が無い」と自身が感じることについて「無駄である」と切り捨てる傾向にあることが分かりました。

例えば、「計画的に勉強を進めることが大切だよ」と他人からアドバイスを受けても、「やる気が出ないときに勉強すると、集中力も続かず効率が悪い。やる気があるときに全力で勉強した方が、結果的に勉強の効率は良くなるはず。だから、勉強の計画を立てることは無駄である」と考え、その日の気分で勉強を進めていました。

予備校を利用しないのも同じ考えで、「一度聞いたことのある内容をもう一度教えてもらっても意味が無い」と考えて宅浪を選択しているとのことでした。

これらの考え方は必ずしも間違いでは無く、「できるときにできるだけ勉強する」「予備校には通わない」という形でも志望校に合格できるケースはあります。

ですが、Tさんの場合はこの方法を2年間続けた結果、合格に至ることができていません。

つまり、Tさんの我流の勉強方法は、Tさん自身には合っていないと考えられます。

「変えるべきところは変えて、今度こそ合格を目指しましょう」と丁寧にお伝えしたところ、Tさんは論理的な考え方ができる方でしたので、納得していただくことができました。

保護者さまが懸念されていた発達検査については、Tさん自身が日常生活で困りごとを感じているわけではないことが面談を通して分かったため、必ずしも受けなければならないものではないと思われることをお伝えしました。

特に保護者さまが心配されていた「敬語を使わない」「挨拶をしない」といったTさんの行動は、「他人に好かれることを重視しない」というTさんの持論に基づくものであり、ASDの特性で見られるような、敬語を使うべきタイミングや挨拶の仕方が分からないというようなものには起因しないように思われました。

一方で、Tさん本人とお話ししていると、「いくら気をつけてもケアレスミスをしてしまう」「90分以上集中が続いたことがない」「興味が無いことに注意を向けられない」という発言がありました。

また、Tさんの過去のテストの回答などを見せてもらうと、書字が極端に乱れていて、一部は読み取れないほどでした。

時間が無く焦って書いたり、丁寧に書く気が無かったりしたのかTさんに尋ねると、「丁寧に書こうとしてもこの汚さになってしまう」「字を書くのが苦手で、たくさん書かされるとイライラする。受験の出願書類を書くのも正直嫌だ」と答えてくれました。

こうした集中力や書字の問題は脳の機能の特性とも捉えることができ、Tさん自身も「どうしようもない」と感じているようでした。ですので、こちらに関しては発達検査で原因を探ってみるのも良いのではないかと考えました。

いずれにせよ、現在のTさんの困り感は大きくなく、仮に発達障害であるという診断が出たとしても緊急的に対処すべきことはありません。

Tさん本人も「母親が心配しているが、検査は無用だと考える」と仰っていました。

そこで私たちは、Tさん本人と保護者さまの意向の折衷案として「検査は受けるが、診断や治療は受けない」という方針をご提案しました。

この方針はTさんにも保護者さまにも納得いただくことができ、受験勉強の合間に検査のみを受けることになりました。

初回面談を踏まえての指導方針と、Tさんの発達検査(WAIS-IV)の結果について、次章で詳しくご紹介します。

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ギフテッド 発達検査
初回の面談終了後、保護者さまからは以下のような感想をいただきました。

<初回面談終了後の保護者さまの感想>

Tはこれまで私たちや学校の先生の言うことにはほとんど耳を貸しませんでしたが、メガジュンの皆さまの言葉は納得して聞き入っていたのが印象的でした。
二浪してしまったということもあるのでしょうが、まずはTの意見を聞き、その上で「変えるべきところは変えていかなければならない」とはっきりと仰っていただいたことがTの心に響いたのではないかと思います。

親としてはTの頑固さをどうにかしなければならないとばかり考えていましたが、Tが何を考えて、どうしてその行動を取るのかを落ち着いて考えることの大切さに改めて気付かされました。
また、発達検査のご相談についても丁寧にお応えいただき大変助かりました。仰っていただいたとおり、検査のみを行う方向で進めたいと思います。

結果が分かりましたら、メガジュンさまにも共有させていただきます。
これからお世話になりますが、どうぞよろしくお願いいたします。

また、その後WAIS-IV検査の結果も共有していただきました。

結果は全検査IQ(いわゆる知能指数)が130以上で、Tさんは実はギフテッド相当である(※)ことがわかりました。

※ギフテッドの定義については、こちらの記事(ギフテッドの診断はどこで受けられる?IQテストやWISC-IV知能検査、偏差値との関係を解説 | 発達障害・ギフテッド専門のプロ家庭教師 メガジュン (pro-megajun.com))で詳しく解説しています。

ですが、4つの指標のうち処理速度だけが平均範囲となっており、能力のアンバランスさがある状況でした。

Tさんは言語をつかさどる「言語理解」、数字や空間把握をつかさどる「知覚推理」、情報を記憶しながら処理する「ワーキングメモリー」が平均以上に優れている一方で、情報をアウトプットする「処理速度」のみが平均程度と、他の能力に比べると凹んでいます。

そのため、「分かっているのに間違えてしまう(=ケアレスミス)」や、「書字で異様に疲れる」という特性が現れていると考えられました。

※発達検査(WAIS、WISC)についてはこちらの記事(【WISC(ウィスク)-Ⅳと発達障害】検査結果の見方、FSIQとDIQの違い、ビネー式やK-ABCとの比較 | 発達障害・ギフテッド専門のプロ家庭教師 メガジュン (pro-megajun.com))で詳しく解説しています。

これらが脳の特性によるものであると分かったことで、それ自体を無理に改善しようとするのではなく、別のアプローチによって点数アップを目指す道筋を見出すことができました。

WAIS-IV検査の結果も踏まえ、Tさんには以下の方針をお伝えしました。

<Tさんの学習指導の方針>

  •  集中力が長く続かないからこそ、計画的に勉強を進める必要がある。
  •  日々のスケジュールを講師と一緒に作成する。
  •  毎週の授業で課題を出すので、期限を守って提出する。
  •  ケアレスミスの改善策を見直す。
  •  これまでは「早く解いて見直しの時間を確保する」という方法だったが、見直してもミスを見つけられないケースが多かった。
  • 「最初に解くときにケアレスミスをしない」という方針に切り替える。具体的には、苦手な問題に落ち着いて取り組めるよう、問題との相性を瞬時に見極めて解く順番を戦略的に組み立てられるよう練習する。
  •  書字による疲れは脳の特性上避けられない。
  •  メガジュンの課題はテキストデータ(キーボード入力したもの)で提出する。
  •  出願に必要な書類作成は、講師と一緒に期日などを確認しながら取り組む。

学習指導の内容について、なぜその方針とするのか理由を含めて説明したところ、Tさんは「大まかな方向性は理解できた」と言ってくれました。

また、Tさんは理数系科目については自分で勉強を進められるという自負があるようで、「週1回90分の授業では、国語と英語を取り扱ってほしい」と依頼されました。

Tさんの特性を鑑みても、Tさんは興味のあることについては集中が途切れず、意欲的に取り組めるようでした。

実際、中高生時代の成績も、理数科目は6年間一貫して上位層、それ以外は中間層ということで、Tさんの特性がよく表れていました。

ですので、Tさんの言うとおり、メガジュンの授業では国語と英語をそれぞれ45分ずつ、計90分取り組むことにしました。

具体的には、英語は「京大入試に学ぶ 英語難構文の真髄(エッセンス)」と「京大入試に学ぶ 和文英訳の技術(テクニック)」を、国語は「上級現代文Ⅰ 改訂版」と「京大古典プレミアム」を教材に、事前に課題を伝えて授業の2日前までに提出してもらい、その解説を授業当日に行う形にしました。

前述したとおり、回答はテキストデータで提出してもらい、それをアプリに取り込んで赤ペンを入れながら解説していきます。

少し余談になりますが、Tさんのように書くことのストレスが大きかったり、書字障害のお子さまで入試本番もキーボード入力で解答する予定のお子さまなどにおかれては、メガジュンではアプリ等を活用し柔軟に対応することができます。

書くことの苦手さについて心配されているお子さまも、安心してお気軽にご相談いただければと思います。

さて、毎週の授業と併せて、授業で扱わない教科(理数科目と地歴公民)についても進捗状況を把握するため、毎日の勉強の内容をTさんにメッセージアプリで送ってもらうことにしました。

特に京都大学薬学部は、共通テストの配点で地歴公民が250点満点中50点と、理系学部では珍しく高い配点となっています。

地歴公民はTさんにとっては“興味・関心が持てないもの”に分類され、かつ授業では扱わないため、特に進捗の確認が必要だと考えました。

併せて理数系科目についても、状況に応じて復習すべき箇所や取り組むべき問題集・過去問についてアドバイスする形としました。

これらを当初の方針として、Tさんの学習指導を進めていくことになりました。

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Tさんの持つ課題とその解決のプロセス

ギフテッド 発達障害 発達検査
この章では、Tさんの持つ課題がどのように解決していったかを具体的に紹介していきます。

Tさんの主な課題は、

① 英語と国語の学力向上
② 計画的に勉強を進める
③ ケアレスミスを減らす
④ 社会性を身に付ける(保護者さまが強く懸念)

の4つでしたので、それぞれについて順に詳しく解説していきます。

Tさんの持つ課題とその解決のプロセス①英語と国語の学力向上

ギフテッド 受験勉強
まず、英語については、京都大学では「英文和訳」「和文英訳」「自由英作文」の3つの形式で出題されます。

特に「英文和訳」と「和文英訳」の難易度が高いため、授業ではこの2つを中心に取り組みました。

5月の授業開始時点では英文和訳のみ2〜3題を1回の課題量とし、構造的に英語を読み取る習慣が身につき始めた8月から和文英訳を1〜2題追加しました。

英文和訳については、前述の「京大入試に学ぶ 英語難構文の真髄(エッセンス)」を使い、事前に講師が指定した問題を解きテキストデータで送信してもらった後、授業日までに添削してコメントを付したデータを送信しました。

授業では、アプリを使ってそのデータに英文構造を記入しながら、難解な英文を構造的に理解できるように解説し、単語や構文の意味を確認していきました。

Tさんはこれまで文構造をあまり意識したことがなく、主述や修飾関係を捉えきれずに和訳していたようなので、このアプローチはとても効果がありました。

京都大学の英語では「文構造が捉えにくく誤訳してしまいがちな英文」で差が出るため、難解な構文パターンの問題にたくさん取り組み、合格できる答案を作る練習をしていきました。

また、和文英訳では「京大入試に学ぶ 和文英訳の技術(テクニック)」を使用し、英文和訳と同じように事前課題を出して、その解説を授業で行いました。

京大の和文英訳は、自分で0から英語を作り上げるのではなく、覚えている構文をどれだけ日本語に当てはめられるかが重要です。そのため、Tさんにはできるだけ定型表現を使うようにアドバイスしました。

さらに、一見定型表現に思えないような日本語でも、日本語自体を言い換えて(=和文和訳して)定型表現に近づけることがポイントになるため、授業ではこの点も強調しました。

こうした授業を続けたところ、8月には構文を意識しながら英文を読むことができるようになり、さらに秋ごろには自然な意訳ができることも増えてきました。

授業を始めた5月当初は、知っている構文でもその場で思いつくことができず、正答に至らないことも多かったのですが、9月ごろには大半の問題で求められている構文に気付くことができるようになっていました。

国語に関しては、京都大学では現代文と古文が出題され、特にTさんは古文に苦手意識があったので、古文の対策を中心に行うことにしました。

5月の授業開始時点では古文のみ1〜2題を1回の課題量とし、共通テスト終了後の1月末からは現代文を3題追加しました。

古文の教材には「京大古典プレミアム」を使用しました。

事前課題や授業形式は英語と同様で、文法の抜け漏れがあるとのことでしたので、下線部や解答の根拠となる文を中心に、授業では助動詞・助詞・敬語の判定を行いながら読み進めていきました。

京大古文では、逐語訳だけでなく不足部分を補いながら解答作成しないと点数をもらうことができません。

ですので、出題意図や回答欄の大きさに合わせてどういったところをどの程度補えば良いのかについて丁寧に解説していきました。

共通テスト後、二次試験の直前期に取り組んだ現代文では、「上級現代文Ⅰ 改訂版」を教材として使用しました。

理系の学生の方の中には、国語が極端に苦手で、京大レベルの抽象度の非常に高い文章だと「そもそも何を言っているのかが分からない」という場合もあるのですが、Tさんの場合はそれには当てはまらず、模試や過去問でもしっかりと得点できていました。

Tさんは問題文を読み解くために必要な背景知識も十分備えており、京大国語で求められる行間を読み取る力もありました。

ちなみに、WAIS-IV知能検査でもTさんは「言語理解」の指標がかなり高く出ていました。「言語理解の指標が高い=国語が得意」とは必ずしも言い切れませんが、講師としての経験上、言語理解指標と国語力は一定の相関があると感じています。

さて、Tさんの場合は概ね問題無く解答できていましたが、本人が解答の根拠として重要だと考える箇所について、筆者の意図とズレが生じた場合に失点が生じていました。

その対策として、「傍線部を解釈する→本文で言い換えられている箇所を読み取る→傍線部に合わせた書き方で記述する」という現代文の解答作成の原則に則って演習に取り組みました。

国語の得意な生徒さんであっても、一読したときに内容が頭に入ってこなかったり、試験時間が短かったりすると、ついつい自分の感覚を頼りに解答を書いてしまうことがあるため、直前期だからこそ原則を大切に取り組んでもらいました。

これらの取組の結果、古文は該当箇所を逐語訳しながら設問で求められているキーワードを最低限補ってまとめるという解答方法が8月ごろには身につき始めました。

現代文の課題はそれほど大きくありませんでしたが、直前期にしっかりと必要なブラッシュアップができました。

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Tさんの持つ課題とその解決のプロセス②計画的に勉強を進める

ギフテッド 発達障害>メガジュンにご相談をいただいた当初のTさんは、「合格に必要な点数から逆算して勉強の計画を立てる」というプロセスを真っ向から否定していました。

というのも、Tさんは反復練習が苦手で、長時間机に向かっていると集中が途切れてしまうという性質を自覚していました。

そのため、「集中してやれる時にやれるだけの事をやり、積み上げられた所までが自分の実力」という持論に至り、これまで計画を立てずに勉強に取り組んできました。

さらに、そうした持論があるため、「“模試”はあくまで“模試”であり、模試の対策をして模試を受けたところで本当の実力が測れるわけではない。そもそも、実力を測ることすら意味が無い」と模試もほとんど受けてきませんでした。

ですが、当初の面談と、さらにWAIS-IV知能検査の結果を踏まえ、講師からは以下のようにお伝えしました。

「集中力が続かないからこそ、限られた時間で効率良く勉強することが今のTさんにとっては必要です。
それに、模試は『自分が今どの地点にいるのか』を知ることができるので、学習ペースの調整にとても役立ちます。

WAISの結果を見ても分かるとおり、Tさんはアウトプット段階で苦労することが多いと思います。そこに的を絞って、一緒に効率良く勉強を進めましょう」

さらに、Tさんが特性として苦手な書字を避けるため、課題の提出もテキストデータとするなど、Tさんにとって最も合理的・効率的な授業形式を提案したところ、Tさんは講師の言葉を信頼し、きちんと計画に沿って勉強を進めることができるようになりました。

最初の頃は模試のスケジュールを講師からアナウンスし、模試の後には間違った箇所の分析と復習をするよう声掛けしていましたが、夏ごろには講師が声掛けせずとも自主的に振り返りができるようになっていました

12月の模試では過去最高得点を取ることができ、特に国語では初の180点台に届くことができました。同時期の別の模試でもA判定を取ることができ、Tさん自身も自分の成長を自覚することができたようでした。

Tさんの持つ課題とその解決のプロセス③ケアレスミスを減らす

ギフテッド 発達障害
Tさんは幼いころからケアレスミスが多く、小学生の頃から算数の大問1(計算問題)の得点率が一番低かったそうです。

大学受験でも、得意な数学や物理での計算ミスが手痛い失点となっていました。

Tさん自身は「解くスピードを上げて見直しの時間を作る」という形で対策しようとしていましたが、自分は正しいと思って解いているため後から気付くのが難しく、なかなか改善には至っていないようでした。

学校の先生や保護者さまからは「まずミスしないように丁寧に解き進めるように」とアドバイスされたそうですが、「丁寧に解き進める」ということ自体がTさんの性質上難しいようでした。

あるいは、ケアレスミスが多い方への対策として「自分がどんな時にケアレスミスしやすいのか」を分析するという方法もあります。

計算が煩雑な問題だと間違うのか、途中式を雑に書いてしまうため間違うのか、それとも「難しそう」と感じたときに間違いやすいのか等、自分の思考や行動パターンを客観的に分析して対策する方法です。

ですが、Tさんの場合、たとえ「計算が煩雑な問題で間違いやすい」と分かっていても、「落ち着いて解く」ということ自体が苦手なため、改善にはつながりにくいと考えました。

そこで私たちは、得意な分野はスピード重視で解き、セーブできた時間を苦手な分野に充てるという対策をおすすめしました。

Tさんがケアレスミスを減らし、点数アップをするために何より大切なのは、集中力のコントロールです。

それも、集中力自体をコントロールするのではなく、Tさんの集中力の特性に合わせて解き方を工夫していくことがポイントになります。

ですので、得意分野は集中力を発揮して一気に取り組み、余った時間で冷静さを保ちながら苦手分野を解いていくのが良いと考えました。

また、途中計算でミスの出やすい数学・物理などの教科は大幅な改善が難しいと考え、伸びしろのある文系科目で底上げを図る作戦としました。

これらの対策の結果、これまでミスが多く、得点が伸び悩んでいた共通テストの数学と理科も本番では90%以上の高得点を取ることができ、全教科合計点で過去最高点を取ることができました

Tさんは書類作成が苦手なことや、複数の大学の対策をあれこれと同時並行で取り組むことはしたくないという意向でしたので、滑り止めは共通テスト利用のみで受験が可能な私立大学1校のみとしていました。

共通テストの結果は滑り止め校に十分合格できる点数であったため、まずは一安心することができました。

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Tさんの持つ課題とその解決のプロセス④社会性を身に付ける(保護者さまが強く懸念)

ギフテッド 社会性
Tさんの社会性の低さについては、保護者さまがとても心配されていました。

WAIS-IV知能検査を受けた際に、問診によりASD(自閉スペクトラム症)の可能性も調べてもらったそうですが、確かに社会性とコミュニケーション能力には課題があるという見立てであったそうです。

ですが、当初の面談、そして日々の授業の中で講師がTさんと接している限り、ASDの根本的背景にある「想像することの苦手さ(※)」は感じられませんでした。

※ASDにおける「想像することの苦手さ」

ASDの特性は「コミュニケーション・社会性の困難」と「こだわりの強さ」の2つと言われていますが、それらは相手の立場や未知の物事を想像することが苦手な性質が根本的な要因であると考えられます。

(例)
・ 相手の立場を想像できない→コミュニケーションが苦手
・ いつもと違う状況を想像できない→いつも通りであることへのこだわりの強さ

詳しくはこちらの記事(アスペルガー(ASD)の子どもへの対応・育て方とは?接し方や関わり方を紹介 | 発達障害・ギフテッド専門のプロ家庭教師 メガジュン (pro-megajun.com))で解説していますので、ご関心のある方は併せてご覧ください。

Tさんと接していて講師が感じたのは、ASD的傾向というよりも、Tさんがギフテッドであるがゆえに、ある程度の筋道立った「自分なりの方法論」を見出すことができ、その方法が上手くいった経験も豊富にあるため、なかなか自分の方法を変えようという気持ちになりづらいのではないか、というものでした。

実際、Tさんは超難関私立高校に中学受験で合格でき、入学後もきちんとした成績を修めています。

コミュニケーションにおいても同様に、「自分の考え方は論理的であるし、それでこれまで上手くやれているのだから、変える必要は無い」とTさんは考えているようでした。

なので、目上の人に敬語を使わないという点においても、Tさんとしては「敬意はあるが、それを敬語として表現する必要性は感じない」と仰っていました。

また、法事でフォーマルな服装をしなければならないときも、「わざわざ動きにくい喪服を着るのはナンセンスだ。普段着でも問題は無い」と言い張って聞かなかったそうです。

その時は保護者さまが何とか説得して襟付きの服を着させたそうですが、「社会人になってもこんな調子だと、Tの将来が思いやられる」と保護者さまは仰っていました。

一方でTさんは合理性を重視する面もあり、「例えば京大薬学部に面接試験があって、スーツを着る必要があったらどうするのか?」と講師が尋ねたところ、「合格するために必要なことであればスーツを着るのも構わない」と答えました。

つまり、Tさんは「自分にとってデメリットが無い限り、コミュニケーションや社会性にはコストを掛けたくない」という信条を持っているに過ぎないのだと、およそ1年弱にわたる学習指導の中で確信しました。

保護者さまは「シャツやジャケットを着るのを嫌がるレベルでは、将来働けない」と考えておられるようでしたが、Tさんは研究者志望でしたので、毎日スーツで過ごす必要はありません。

もちろん、学会やレセプションなどではフォーマルな服装が求められることもありますが、TPOをわきまえて服装を変えることさえできれば問題無いでしょう。

また、今のTさんは大切な会食の場でも普段着で行ってしまいそうな雰囲気ではありますが、これからアルバイトをしたり、ゼミや研究室で活動したりする中で、「それではマズい」ということが実感としてわかるようになるはずです。

まだTさんは高校を出たばかりで社会経験も乏しいため、コミュニケーションや社会性を疎かにするデメリットを実感できていませんが、これから様々な人や場所と出会い、考えを変えていくことは十分可能だと考えました。

加えて、メガジュンを利用する前は、Tさんはわからないことについて誰かに質問することもほとんどなかったそうです。ですが、Tさんはメガジュンの講師には授業が始まった当初からどんどん質問をしてくれていました。

恐らく、メガジュンの講師がしっかりとTさんの性質を見極め、きちんと理由を説明した上で方針を示したことによって、Tさんも講師に心を開いてくれたのだと思います。

ほんの1日の出会いでも、そのように「他者に心を開く」という変化が生じたということは、これからTさんが他者との出会いや関わりによって変わっていく可能性は十分にあると思われます。

以上のことを保護者さまにお伝えしたところ、「確かに先回りしてあれこれ心配し過ぎていたかもしれない」と仰いました。

特にTさんの通っていた高校は校風が自由なことで有名で、保護者さまが「このままでは社会性が身に付かないのではないか」と心配になる気持ちも理解できます。

ですが、お子さまの人生は大学卒業後もまだまだ続いていきますし、学校や家庭以外でこそ社会性やコミュニケーションについては成長していきますので、安心して見守っていただくようにお伝えしました。

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Tさんの合格と将来の夢

合格
共通テストを順調に終えたTさんは、二次試験でもこれまでの勉強の成果を存分に発揮し、無事に京都大学薬学部に合格することができました。

実は、11月に受けた第2回駿台京大入試実戦模試の結果はE判定でした。

これまでTさんは順調に勉強が進められていたので、E判定という結果には、メガジュンの講師陣も正直焦りを感じました。

ですが、駿台の実践模試は第1回に比べると第2回の方が大幅に難易度が上がる(第1回は現役生に考慮し難易度を下げ、逆に第2回は本番以上の難易度にする)というのが通説ですので、「模試は模試。きちんと振り返って本番に活かせば大丈夫ですよ」と声を掛けました。

この時のTさんはかなりショックを受けていたようで、ご家庭でも珍しく不安な表情を見せていたそうです。

これまでのTさんは「予備校はいらない」「解くべき問題集さえ教えてもらえれば、後は自分で勉強できる」という強気な姿勢でしたが、この時ばかりは保護者さまに「不安な気持ちで一杯だから、あまり受験のことには触れないでほしい」と言ってきたそうです。

保護者さまからは「Tが落ち込んでいて、どのように声を掛ければよいか?」というご相談をいただきましたが、受験に関しては講師からタイミングを見て丁寧に声掛けするので、ご家庭においては無理に受験に関して声掛けせず、落ち着いて見守るようにお伝えしました。

かなり落ち込んでいたTさんでしたが、「合格できるイメージを持って、前向きにこれまでどおり取り組むのが大切ですよ」とお伝えすることで、何とか気持ちを持ち直してくれました。

5月当初には「模試なんて受ける意味が無い」と言い放っていたTさんが、模試の判定で大きなショックを受けていたことは意外ではありましたが、「ペース配分のためにも模試は重要」という言葉をTさんが素直に受けとめてくれていた裏返しでもあるように思いました。

Tさんは自分の持論に自信があり、いつも強気であるように見えましたが、実は繊細であたたかい心も持っていることも、8か月間にわたる授業を通して知ることができました。

あるとき講師が「なぜ薬学部志望なのですか?」とTさんに尋ねたところ、Tさんは「病気を治すのは医者ではなく薬だから」といつもの強気な口調で答えました。

「言われてみればそうですね。なぜそれに気付いたんですか?」
「小学校のクラスメイトが難病で、あまり学校に来られていなくて。親に『なんであの子の病気は治らないのか』と聞いたら、『まだ薬が無いからだ』と言われて、それがずっと頭に残っているから、自分は医者じゃなく薬を開発する人になろうと思って」

Tさんは口調はぶっきらぼうでしたが、とても想いのこもった志望理由を話してくれました。

また、合格発表の日には、保護者さまにこれまでの感謝を言葉で伝えてくれたそうです。合格が分かった瞬間には「メガジュンの先生にも今すぐ報告しなくては!」と言っていたと、後日保護者さまから教えていただきました。

出会った当初は気難しい印象も強かったTさんですが、授業を通して違った一面を知ることができ、また、Tさん自身も人間的に成長してくれたのではないかと思っています。

まだまだコミュニケーションや社会性には課題のあるTさんですが、大きな志を礎に研究者として、そして人間としてこれからも大きく成長してくれることでしょう。

Tさんのこれからの活躍を、メガジュン一同、心から応援しています!

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