【対策も紹介】不登校とASD(自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群)の関係は?
ASD(自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群)とは、発達障害の一種です。
人の気持ちを読み取ることが苦手であったり、一つの物事にこだわりすぎてしまうなどの特性があり、日常生活や社会生活に困難が生じる場合があります。
お子さまですと、クラスメイトや先生との人間関係が上手くいかない、些細なことが気になってしまって勉強に集中できないなど、学校や勉強で困りごとを抱えてしまい、結果として不登校になるケースがあります。
私は、教育業界に16年身を置き、特に近年は発達障害や不登校のお子さま専門のプロ家庭教師として活動してきました。不登校から学校へ復帰されたお子さまもいらっしゃれば、家庭学習でしっかりと学力を身に付け、大学に進学されたお子さまもいらっしゃいます。
ASDの診断を受けたり、不登校の状態になったりすると、保護者の方はとても心配されることでしょう。
ですが、周りの大人がきちんとサポートすることで、お子さまは困難を克服し、自ら生きていく力を身に付けることができます。
・不登校のお子さまへの接し方に悩んでいる
・不登校の原因にASDの特性が関係しているのではないか
このようなお悩みを抱えている方のために、この記事ではASDの特性や不登校への対処方法について詳しくご説明しています。
最後までお読みいただけますと幸いです。
不登校・発達障害専門の受験プロ家庭教師
妻鹿潤
・個別指導塾の経営・運営でお子様の性質・学力を深く観る指導スタイル
・yahooやSmartNews、Newspicksなどメディア向け記事も多数執筆・掲載中
▼目次
不登校の「今」
不登校のお子さまの数は、年々増加傾向にあります。
文部科学省の調査によると、小中学校における不登校児童生徒の数は、2020年度で19万人を超えており、前年度から8%も増加しています。
また、中学生の不登校生徒の割合は4.1%と、およそ20人に1人が不登校の状態にあります。40人のクラスであれば、2人は不登校の生徒がいる計算になります。
▼令和2年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果(文部科学省)
親御さんの世代ですと、不登校は珍しいものという感覚があるかもしれませんが、今の子どもたちにとって不登校はそれほど珍しいものではありません。
トラブル無く元気に学校に通うことはもちろん大切ですが、「学校が辛い、しんどい」という気持ちを抱えたまま無理に登校する必要はありません。
不登校の子どもたちが増えるにつれ、フリースクールなども徐々に整備されてきましたし、公立の高校でも、不登校経験のある生徒を積極的に受け入れる学校が設置されつつあります。
「不登校=学ぶ機会が無い」ということではなく、お子さまに合った方法で学力を伸ばすことは十分に可能です。
私が指導してきた中にも、不登校の状態から第一志望の大学に進学したお子さまは数多くいらっしゃいます。
プロ家庭教師の強みに、マンツーマンでお子さまのペースに合わせた指導ができるという点があります。
不登校のお子さまには繊細な方も多く、集団指導の塾に馴染めなかったり、家庭教師であっても相性が悪かったりするケースがあります。お子さまの特性に適した指導を受けるためにも、不登校や発達障害について専門的な知識を持ったプロ家庭教師を選ぶようにしましょう。
不登校でもしっかりと学力を伸ばしたい方や、お子さまへのきめ細やかなサポートが必要な方は、ぜひプロ家庭教師・妻鹿潤をご検討ください。
ASD(アスペルガー症候群)と不登校
ASD(自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群)であれば必ず不登校になるということではありませんが、統計的に見ると、発達障害のお子さまが不登校になる確率は高いと言われています。
不登校の原因の多くは「人間関係」です。コミュニケーションが苦手なASDのお子さまは、クラスメイトや先生との人間関係でトラブルを抱えることも多いため、必然的に不登校になる可能性も高くなります。
また、人間関係だけでなく、勉強面の困難も不登校の原因となります。
ASDのお子さまには、こだわりが強いという特性のほか、マルチタスクが苦手(例:話を聴きながらノートを取れない)、手先が不器用で文字が書きづらいなどの特性がある場合があります。
周りのクラスメイトは作業を終えているのに、お子さま一人だけがペースに付いていけず取り残されてしまう……
こういった状況が続いたために学校に行くのが辛くなる、というケースは少なくありません。
・「表情が乏しい」「視線が合いづらい」など、周りとのコミュニケーションが困難
・授業変更や教室移動で、集中できなかったりパニックになったりする
・自分独自のやり方やルールにこだわってしまい、集団行動できない
・手先が不器用(作業で周りについていけない、字が汚い など)
・マルチタスクが不得手(話を聴きながらノートが取れない など)
・空気を読まずに授業中に発言してしまう
・うるさい環境が苦手で、イライラしたり、ケンカになってしまったりする
・過去の嫌な出来事に固執してしまい、友達と仲直りできない
このような困難が重なって学校が嫌いになり、やがて不登校へと繋がります。
一人一人に様々な個性があり、得意と不得意があることを受け入れてくれる環境が必要ですが、日本の学校教育は画一的な一斉授業であり、ASDのお子さまにとっては厳しい環境と言わざるを得ません。
不登校のお子さまへのサポート
お子さまが不登校の状態になっても、悲観しすぎる必要はありません。
不登校かつASDという状況では、保護者さまが不安に思うのも当然です。ですが、たとえASDの特性が強く不登校期間が長いとしても、周囲の大人の適切なサポートによって、学校に復帰したり、大学に進学したりすることは十分に可能です。
ASDで不登校の状態にあるお子さまの支え方について、勉強面と生活面の両面から詳しくご説明します。
勉強面でのサポート
不登校の状態にあるお子さまを無理に勉強させてはいけません。
一方で、勉強が遅れることによって、ますます学校に復帰しづらくなってしまうこともあります。お子さまの様子をしっかり観察しながら、お子さまの気持ちに寄り添ってサポートする必要があります。
不登校には、「無気力期」「休息期」「回復期」の3つの段階があります。お子さまが今どの段階にあるかを見極め、適切な指導を行わなければなりません。
ASDのお子さまは、こだわりの強さからちょっとしたことがストレスやプレッシャーにつながります。定型発達のお子さまよりも一層の配慮が求められます。
無気力期
完全に心のエネルギーが枯渇してしまっている時期です。
生活リズムの乱れや不眠、食欲不振など身体的な症状が出ることもあり、場合によっては、抑うつ状態や適応障害と診断されるかもしれない状態です。
この状態のお子さまに勉強を強いることは絶対にしてはいけません。精神的にダメージが蓄積している段階ですので、まずは回復を待ちましょう。
決して焦る必要はありません。お子さまは親の焦りを敏感に感じ取ってしまいますので、「今はゆっくりしてくれれば大丈夫」と保護者さまもゆったりと構えるようにしましょう。
一方で、病人扱いするのもよくありません。あくまで普段通りに、平常心で接することで、お子さまは「不登校になっても、お母さん・お父さんは味方でいてくれるんだ」と思うことができます。
腫れ物扱いや病人扱いをしてしまうと、「不登校になったことで親に迷惑を掛けている」と感じ、お子さまの心理的な負担につながります。
休息期
無気力期から少し回復し、自分から行動する兆候が見えてくる時期です。
無気力期では乱れがちだった生活習慣も、この時期になると整い始め、家族との会話もできるようになってきます。
私が不登校のお子さまを指導する際には、無気力期のお子さまに勉強のことは一切話しません。
私自身の身の上話をしてみたり、他愛のない雑談をしてみたりして、まずはお子さまに心を開いてもらうことを優先します。
そうして過ごしているうちに、少しずつお子さまの心が回復し、休息期に差し掛かります。多くの場合は、お子さまの方から自然と勉強や学校に関する話題が出てくるので、そこで始めて私の方から勉強に関する提案を行います。
勉強に関する提案を行う際のポイントは、「計画に無理が無いこと」「『これなら出来そうだ』とお子さま自身が思えること」の2つです。
休息期になったとは言え、お子さまの心の中は勉強の遅れや学校に戻れるかどうかなど、まだまだ不安でいっぱいです。
お子さまが自信と希望を持てるような提案をすることが、休息期においては最も重要になります。
回復期
回復期になると、お子さまの心身は不登校になる前の状態までかなり近付きます。
前向きな言動も増えてくるため、保護者さまもついつい「あれも、これも」と期待を掛けてしまいます。
ですが、ここで期待を掛けすぎるのはかなり危険です。
というのも、ここで期待に応えられなかったり失敗してしまったりすると、それまで積み重ねてきたものがゼロに戻るどころか、マイナスになってしまうからです。
「不登校になったけど頑張ってきた、それでも駄目だった」という経験は、お子さまがせっかく身に付けつつあった自信を根こそぎ奪ってしまいます。「どうせ自分は駄目なのだ」と一度思ってしまうと、そこから再び頑張ることはかなり難しくなります。
回復期で元気に見えても、あくまで無理をさせないこと。小さなステップを積み重ねて「自分はできる」という自信を取り戻すこと。
周りの大人はそのためのサポートに徹するようにしましょう。
生活面でのサポート
ASD(自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群)のお子さまは、いじめの対象となってしまう機会が多いことがわかっています。
学校の教室は同調圧力が強く、ASDのお子さまの独特なこだわりや仕草などが、いじめの標的となってしまうようです。
本来的には、学校の在り方そのものを見直すべきでしょう。いろいろな特性を持った人がいて、それぞれの個性を尊重すべきである————「多様性」という言葉が社会で謳われるようになってしばらく経ちますが、学校現場でその理想が実現しているかというと、まだまだ道半ばです。
人間的に発展途中である子どもたちが、周りと違う様子のクラスメイトをからかってしまうのは仕方が無い部分もあります。
ですが、それをたしなめるべき先生が発達障害のことを理解しておらず、「わがまま」「さぼっている」「周りと合わせなさい」と当事者のお子さまに間違った指導をしてしまうケースもあります。
学校での配慮が不十分だと感じる場合は、担任の先生ではなくスクールカウンセラーに相談してみたり、地域の教育支援センターに問い合わせてみたりしましょう。どこに相談してよいかわからない場合は、ひとまずお住まいの市区町村の窓口に問い合わせましょう。
発達障害を専門にしている小児科や児童精神科を受診し、診断書をもらうことも有効です。
早い段階からお子さまの特性を把握し、適切な療育やソーシャルスキルトレーニングを行うことで、ASDのお子さまが社会で生きていく上での困難を軽くすることができます。
ASDのお子さまは、その特性が原因で大人から怒られてしまったり、友達から仲間はずれにされてしまうことがあります。
それによって、不安障害や適応障害、うつなどの二次障害が起きることもあるため、日常生活での適切なサポートは非常に重要です。
ASDを含め、発達障害は病気ではなく「特性」です。
病気のように治すべきものではなく、特性とどのように上手く付き合っていくかを考えなければなりません。
また、一口にASDといっても、お子さまによって特性は異なります。お子さま自身にあった対応は何か、周囲の大人が丁寧に見守り、判断していく必要があります。
あるお子さまは、予定していたスケジュールが変更されるとパニックになってしまうという特性があり、イライラして物や人に当たってしまうこともあったので、落ち着かせるための対応の検討が必要でした。
違う部屋に移動する、そもそもスケジュールを変更しないなどの基本的な対策のほか、「お気に入りのキャラクターが描かれたグッズ(筆箱、タオルなど)を持つ」といった対応も有効でした。
お子さまによってパニックになったり興奮してしまうタイミングも様々ですし、落ち着く方法もお子さまそれぞれで異なります。
お子さまにとって最も身近な存在である保護者さまだけでなく、学校の先生や心理士などが協力しながら、最適なサポートの方法を見つけましょう。
保護者の役割
不登校には、人間関係や学業不振など、さまざまな要因が複合的に関係しており、家庭環境だけが原因であることはまずありません。
また、ASD(自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群)は生まれつきの特性であり、親の育て方は全く関係ありません。
ですので、保護者さまが自分を責める必要は一切無いのですが、それでも我が子を心配する親心から、お子さまに過度に干渉してしまったり、何とかしてあげたいと焦ってしまうことがあります。
お子さま自身の心身のケアはもちろん大切ですが、お子さまの一番の拠り所である保護者さまの心と体も、同じくらいに大切です。
いざというときにお子さまを受け止めてあげられるよう、保護者さま自身のメンタルケアにも気を配りましょう。そのためのポイントをご紹介します。
ストレスを溜めない
子どもは親の気持ちに非常に敏感です。
保護者さまの焦りや不安をお子さまは想像以上に感じ取っており、それによってお子さまはストレスを受けています。
お子さまのことを心配して、良かれと思ってお子さまのことに掛かりきりになっても、それがお子さまにとってストレスになってしまっては本末転倒です。
親自身がストレスを溜めないことは、結果としてお子さまのストレスの軽減にも繋がりますので、趣味に打ち込むなど、リフレッシュ出来るときは思い切りリフレッシュするようにしましょう。
お子さまを信じて待つ
「3-1.勉強面でのサポート」でもお伝えしましたが、不登校の状態にあるお子さまに無理に勉強させたり、学校復帰を強く勧めたりすることは禁物です。
ASDのお子さまは、特性による行動をとがめられる機会も多く、自己肯定感が低くなってしまうことが多々あります。
自己肯定感は、人間が前向きに生きていくために無くてはならない土台です。
表面上の学力が伸びたとしても、土台となる自己肯定感が育まれていないと、大人になってからもずっと自信が持てず、生きづらい人生を歩むことになってしまいます。
保護者さまとして、まずはお子さまのことを信じてあげてください。「お母さん、お父さんはいつでも自分の味方であり、自分を見守り待っていてくれる」そう思えることが、お子さまにとって何よりも自信に繋がります。
「親の育て方のせい」は間違い
不登校の原因は様々であり、保護者さまだけが責任を感じる必要はありません。
また、発達障害やASDは脳の器質によるもので、育て方は一切関係がありません。「育て方が悪いせい」と言う人は、知識不足・理解不足です。
相手をする必要は全くありませんので、たとえ親戚や親しい人であっても、ほどほどに受け流すか距離を取ることをオススメします。
進学に関する心配は不要
小中学校は義務教育ですので、無理に出席しなくても卒業できます。
辛い思いをしながら登校し心身を壊してしまうよりも、家庭学習で落ち着いて学力を伸ばす方が良いこともあります。
高校であれば、通信制高校など、不登校経験のお子さまでも入学・転学しやすい学校がありますし、発達障害など多様なニーズのお子さまを受け入れる公立高校の設置も進んでいます。
一度不登校になったからといって、将来を悲観する必要は全くありませんので、お子さまにあった進路をじっくり検討していただければと思います。
専門機関へ相談を
保護者さまは教育のプロではありません。お子さまへ寄り添おうと思っても、どうしてよいかわからない場合は当然あります。
不登校やASDに関する悩みを家庭内だけで抱え込んでしまうと、保護者さまにもストレスが掛かり、さらに保護者さまのストレスがお子さまに影響してしまうという悪循環に陥ります。
困ったときは、積極的にプロを頼りましょう。
学校の先生やスクールカウンセラー、療育センターの心理士など、専門的な知識を持っている人はたくさんいます。
早い段階で情報共有し、頼れるものはどんどん頼ってください。
そのことがお子さまにとってのより良いサポートにつながりますし、保護者さまの負担を軽減することにもなります。決して家庭だけで解決しようとしないでくださいね。
・学校(担任の先生、学年主任の先生、スクールカウンセラーなど)
・教育支援センター
・病院(小児科、児童精神科、発達外来など)
・フリースクール
・福祉事務所
※どこに相談して良いかわからない場合は、市区町村の窓口や教育委員会に問い合わせましょう。
まとめ
この記事では、不登校とASDの関わりについて説明してきました。
改めてポイントをまとめると、以下のとおりです。
・不登校やASDは親の育て方が原因ではない
・不登校は増加傾向にあり、スクールカウンセラーやフリースクールなどの制度も整ってきている
・不登校の状態にあるお子さまに勉強を強いることは禁物
・親のストレスは子どもにも悪影響を与える
・お子さまの自己肯定感を育むためには「信じて、待つ」ことが大切
・家庭内で抱え込まず、専門機関に相談する
保護者さまが抱えがちなお悩みや具体的な対処方法について、参考になれば幸いです。
また、不登校・発達障害専門のプロ家庭教師を検討の際は、是非お気軽にお問い合わせください。