ADHDは読書が苦手?集中力アップと読解力向上のポイントを解説

  • ADHDですぐに気が散ってしまい、読書に集中できない
  • ADHDで読書への苦手意識があるが、克服したい
  • 本を読んでいても内容が頭に入らないのは、ADHDのせい?

知識や教養を身に着けられる「読書」。

読書の良さはもちろんわかっていても、どうしても苦手に感じたり、集中できないというお悩みを抱えている方もいるのではないでしょうか。

特にADHDの方は「集中しづらい」という特性があるため、長い時間集中し続ける読書は苦手という方も多くいらっしゃいます。

発達障害専門のプロ家庭教師である筆者は、これまで1500人以上のお子さまを指導してきましたが、ADHDのお子さまで読書が苦手な方や、文章を読むのが不得意なお子さまは多くいらっしゃいました。

読解力はすべての教科の基礎になるため、文章を読むのが苦手だと、勉強全般への苦手意識にもつながってしまいます。

また、お子さまだけでなく大人の方でも、読書を通して様々な知識や教養を蓄えることができるため、読書への苦手意識を克服したいという方は多いのではないでしょうか。

趣味として読書を楽しみたいけれど、子どもの頃から苦手意識があって手を出せないという方や、仕事で長い文章を読む必要があるけれど、読むのが苦手で時間がかかってしまったり、間違った理解をしてミスが多くなってしまったりといったお悩みを持つ方もいらっしゃるかもしれません。

そこでこの記事では、ADHDの方が苦手な読書を克服し、読解力をアップさせるためのコツをご紹介します。

【執筆・監修】
発達障害専門のプロ家庭教師・キャリアアドバイザー 
妻鹿潤
・16年以上1500名以上の指導実績あり
・個別指導塾の経営・運営でお子様の性質・学力を深く観る指導スタイル
・yahooやSmartNews、Newspicksなどメディア向け記事も多数執筆・掲載中

ADHD(注意欠如・多動症)の人が読書を苦手と感じる4つの理由

ADHD(注意欠如・多動症)の人が読書を苦手と感じる4つの理由
ADHD(注意欠如・多動症)の方が読書が苦手に感じる主な理由は、以下の4つです。

  • ① 「本を読む」行為のプロセスの多さ
  • ② すぐに気が散る
  • ③ 興味があるときと無いときの差が激しい
  • ④ 多くの子どもは読書が苦手

「本を読む」行為のプロセスの多さ

「読書」と一言で言っても、本を読むという行為には多くのプロセスが含まれています。

  • 文字の形を判別する
  • 文字として捉える
    (=この形をしているのは、「あ」という文字である)
  • 文字を音に変換する
  • 単語として捉える
  • 単語の意味を理解する
  • 単語をつなぎ合わせ、文章として理解する
  • 文章同士のつながりを考え、文脈を理解する(時には、文字には表されていない“行間”を読むことも必要)

このように、「文章を読む」という行為にはたくさんのプロセスが含まれています。

ですが、ADHDの方はワーキングメモリーと呼ばれる脳の働きが平均よりも低い場合が多いため、こういった複数のプロセスを含む行為が苦手な傾向にあります。(参考:ADHDとワーキングメモリーについて

つまり、「本を読んでいると、どこを読んでいるのかわからなくなってしまう」というタイプの人は、脳が一度にたくさんのことを処理しようとして混乱している状態になっていると言えます。

「どこを読んでいるのか分からなくなってしまう」という人は、「どこを読んでいるか」というプロセスを頭の中ではなく外で行う、すなわち、定規を当てながら読んだり、指でなぞりながら読むと、脳の機能を外に出す(外在化させる)ことができるため、読みやすくなる場合があります。

幼い子どもが絵本を読むときに、文字をなぞりながら読むことがあると思います。

これも、「文章を読む」という行為にまだ慣れていないため、文字を指でなぞることによって「文章を目で追う」という行為を外在化させて読む行為をアシストしていると言えます。

定規を当てたり、指でなぞったりするのに人目がはばかられるという方は、読んでいる箇所以外を本の別のページや他の資料で隠しながら読むのもおすすめです。

すぐに気が散る

すぐに気が散る

ADHDには、「集中しづらい」という特性があります。そのため、本に集中したくても、注意の対象が次々と切り替わってしまい、長い時間読書をするのが難しい状態になってしまいます。

例えば、テレビの音やスマホの着信音、人の話し声やちょっとした物音でも集中が途切れ、読んでいる内容が頭に入ってこない場合があります。

できるだけ静かな環境を整えるなどの対策は考えられますが、そもそも物音が無くても、自分の頭の中がうるさい(=次々と自分の頭の中にアイデアが湧いてしまい、そちらに気を取られて集中できない)というケースもあります。

興味があるときと無いときの差が大きい

ADHDの方は、好きなことには過度に集中してしまう特性を持っていることがあります。

ADHDの方は脳のブレーキを掛けるのが苦手なので、好きなことには極端にハマってしまい、何時間でも集中し続ける場合があります。好きなゲームであれば寝食を忘れて何時間も遊んでいられる、というケースがこれに当てはまります。

この状態を過集中と呼びますが、ADHDの方の読書においても同様に過集中が起きることがあります。好きな内容の本であれば何時間でも読めるし、読書は苦手ではなく、むしろ大好きだ!というADHDの方は、読書に対して過集中していると言えます。

私には読書好きのADHDの知人もいますが、読書が好きで読解力は高いにも関わらず、興味をそそられない事務的な文章を読むのは非常に苦手だそうです。

市役所に提出する書類などは読むのが苦痛で放っておいてしまい、さらに整理整頓が苦手というADHDの特性が加わって、しょっちゅう書類を無くしてしまうというのが彼の困りごとでした。

つまり、ADHDの方全員が読書が苦手なのではなく、読書に対する苦手意識を持つ場合は多いものの、逆に読書好きであるケースも十分にありえると言えます。

子どもはそもそも読書が苦手である

お子さまの場合、ADHDでなくても読書が嫌いなケースは少なくありません。

小学校低学年であれば、ひらがなですらまだ覚えたばかりです。一文字読むだけでもかなり頭を使うため、すぐに疲れてしまったり、苦痛に感じてしまうのは無理もありません。

無理に読ませるとますます読書が苦手になってしまうので、強制することはやめた方が良いでしょう。

読書は楽しいと感じることが大切ですので、絵が多い本や、対象年齢が低めの本などから読んでみたり、あるいは大人が読書している姿を家庭の中でしっかりと見せることも大切です。

 お子さまの読書に対する苦手意識を克服しませんか?
ADHDの方が読書に苦手意識を持つのはよくあることです。苦手を克服し、読書を楽しむためには、苦手な理由を理解して適切な支援を行うことが大切です。

発達障害専門のプロ家庭教師メガジュンでは、お子さま一人ひとりの特性に合ったサポートを提供しています。読書や学習に関するお悩みがある方は、ぜひお気軽にご相談ください。

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ADHD(注意欠如・多動症)の人が読書を克服するための4つの方法

ADHD(注意欠如・多動症)の人が読書を克服するための4つの方法

この章では、ADHDの人が読むことの苦手さを解消するための方法について解説していきます。

興味のあるものを読む

ADHDの方が読書や読むことへの苦手意識を克服するためには、読書に親しみを感じることが重要です。

というのも、ADHDの方は集中力のムラが激しいという性質を持っています(=興味のあるものには極端に集中し、そうでないものには集中できない)。

そのため、読書はつまらないもの・難しいものという意識が前提にあると、なかなか集中することができません。

ですので、小説や新書が堅苦しく感じる場合は、自分が興味のあるジャンルの雑誌やムック本など、文字だけでなくイラストや写真が多いものを選ぶと良いでしょう。

また、文脈を読み取る必要が無い雑学集であったり、比較的短い時間で読める短編集もおすすめです。短編集よりもさらに短いショートショートも良いでしょう。

ショートショートでは星新一氏が有名ですが、若手の作家でも田丸雅智氏を筆頭にたくさんの良作がありますので、ぜひチャレンジしてはいかがでしょうか。(参考:星新一公式サイト田丸雅智公式サイト

音読する

音読する
音読は子どもがするものと思ってしまいがちですが、大人の方でも音読すると黙読よりも理解が進む場合があります。

黙読では視覚的な情報のみで内容を理解しなければなりませんが、音読すると聴覚でも情報を捉えることができるため、特に聴覚優位(※)の方は音読すると理解しやすい場合があります。

※聴覚優位…聴覚優位とは、音や音声情報を優先的に処理しやすい特性を指します。音声や音に敏感で、視覚や触覚よりも聴覚を頼りに学習や理解を行う傾向があります。

ADHDや聴覚優位の方でなくても、契約書や家電の説明書など、少し難しい内容の文章は声に出して読んでみるという方は多いのではないでしょうか。

音読すると、自然と一語一語を丁寧に捉えることができるため、黙読だけでは読み飛ばしてしまったり、意味が分かりづらかったりするところも、しっかり読み取ることができます。

小学校の頃、「やたらと音読させられるなあ…」と感じていたかもしれませんが、言葉や文章を捉えるトレーニングとして、音読は非常に効果的なのです。

メモしながら読む

文章を読んでいると途中で意味が追えなくなってしまうタイプの方は、メモを取りながら読むのがオススメです。

ADHDの方の中には、文字だけを追っていると飽きてしまうタイプの方もいるため、「読む→メモする」という動作を付けることで、飽きずに集中できるという効果も期待できます。

ただメモをするだけだとモチベーションが上がらない場合は、ブログなどで読書の記録を発信してみるのも良いでしょう。

子どもの頃の宿題の読書感想文は苦痛だったかもしれませんが、「面白かった」「感動した」「ためになった」ということを記録しておくと、他の人の参考になるだけでなく、自分の学んだことが形に残り、読書へのモチベーションも高まります。

子どもの頃から読書に慣れる

子どもの頃から読書に慣れる

お子さまがADHDだけれど読書を好きになってほしいと思っている保護者さまには、ぜひ小さい頃から読み聞かせをすることをオススメします。

よく読み聞かせをしてもらった子どもは、活字にも興味を持ちやすく、親が言わなくても自然と自分から本を読むようになることが多いです。

小学校1年生くらいまでは親が読み聞かせすることができると思いますので、できる限りたくさん読み聞かせるようにしましょう。

お子さまが同じ本ばかり読んでいると、もっと色々な本を読んでほしいと思われる保護者さまもいるかもしれません。ですが、同じ本を繰り返し読むことは決して悪いことではありません。

すらすら読めるようになるまで同じ本を繰り返し読んでいるうちに、自然な言葉の使い方や文章の組み立て方を身に付けることができます。お子さまの好きな本が正しい語彙や文章構成になっているのであれば、繰り返し読みをやめさせる必要は全くありません。

また、発達障害のお子さまの中には、「どうしても文字を読むのがしんどい」という方もいらっしゃいます。

これは、発達障害の中でも「読字障害(ディスレクシア)」と呼ばれるもので、生まれつき音韻処理(文字と音を結び付ける能力)や視覚的に形を捉える力が弱い場合に生じると考えられています。

読字障害に該当する場合は、無理に読ませるとストレスが溜まったり、「みんなができることができない」と自己肯定感が下がってしまうことがあるため、丁寧に対応する必要があります。(参考:学習障害(LD)について

ただし、音韻処理などの問題ではなく、「集中力が持たない」「興味がわかない」といったその他の発達障害の特性により読むことが苦手になっている場合は、この記事で紹介した方法で苦手を改善することができます。

>>ASDとLDによる「読むことの苦手さ」の改善事例はこちら

読むことの苦手さの原因をご家庭で判断するのは非常に難しいため、発達支援センターなどに相談し、言語聴覚士など専門家のサポートを受けるようにしましょう。

 お子さまの読書力を伸ばしたい方へ
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ADHD(注意欠如・多動症)について

ADHD(注意欠如・多動症)とは

ADHD(注意欠如・多動症)とは発達障害の一つであり、大きくは以下の3つに分類されます。

  • ASD(アスペルガー症候群、自閉スペクトラム症)
  • ADHD(注意欠如・多動症)
  • LD(学習障害)

ADHDには、「注意欠如・多動症」という名称のとおり、

  • 注意欠如…集中しづらい、注意が散漫になる
  • 多動…落ち着きが無い、じっとしていられない

といった特性があります。

このような特性により、ADHDの方は読書のほかにも、以下のようなことが苦手であったり、困りごとを抱えたりすることがあります。

  • 忘れ物や失くし物が多い
  • 整理整頓や片付け、掃除が苦手
  • ケアレスミスが多い
  • 学生時代、授業中にじっと座っているのが苦痛だった
  • デスクワークや勉強に集中できず、別のことを考えてしまう
  • 考えるより先に感情に任せて行動してしまうことがある
  • 貧乏ゆすりの癖がある
  • おしゃべりに熱中すると止まらない
  • 言われたことは理解できても、そのとおりにすることが苦手

これらはすべて、ADHDの特性である「注意欠如」「多動」が原因となっています。

注意欠如や多動といった特性は、脳のエネルギーがあふれ出てコントロールが難しくなっている状態とも言えます。

ですので、自分の特性をきちんと把握し上手くコントロールすることができれば、ADHDの方でも会社や学校での困りごとを少なくすることができますし、さらにADHDならではの強みを生かして活躍することも可能です。

ADHDの方は脳のエネルギーのブレーキを掛けるのが苦手ですが、逆に言えば思いっきりアクセルを踏むことが得意とも言えます。

「自分が好きだ!」と思ったことには、文字通り寝食を忘れて熱中することができますし、好きなことを極めることでその道のトップになった偉人や有名人もいます。(トーマス・エジソンや長嶋茂雄選手は、ADHDであったと言われています)

>>ADHDは天才病?ギフテッドと発達障害を併せ持つ2E型ギフテッドとは

特に学校では「みんなと同じように行動すること」「じっと座って話を聞くこと」が求められるため、ADHDのお子さまはよく注意を受けるかもしれません。

その結果、自信を失ってしまっているお子さまも多くいらっしゃいます。

ですが、それらの困りごとの原因が集中力のコントロール不足であることを認識した上で、「どうすれば改善できるか?」を周りの人と一緒に考えることが大切であり、自己肯定感を育みながら良いところを伸ばす視点が重要です。

また、ADHDの方は、目で見た情報が処理しやすいタイプ(視覚優位)や、耳で聞いた情報が処理しやすいタイプ(聴覚優位)であることが多いため、自分の優位感覚に合った支援を行うことも大切です。

優位感覚に合わせた支援の例

  • 視覚優位 → イラストや図を使った教材や資料を活用する
  • 聴覚優位 → オーディオブックや音読を活用する

効果的なイラストや、ながら聞きができるオーディオブックは、定型発達の人にとっても便利でわかりやすいものです。

ADHDの方が理解しやすくなるための工夫は、多くの人にとってもメリットがありますので、職場や学校でも積極的に取り入れられると良いですね。

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まとめ:ADHDは読書が苦手?

まとめ:ADHDは読書が苦手?
この記事では、ADHDの方が読書を苦手に感じる理由や、苦手の解消方法についてご紹介してきました。

改めてポイントをまとめると、以下のとおりです。

POINT
  • 「読書は楽しいもの」という認識を持つことが大切
  • 読書の入り口は雑誌や雑学集、短編集などがオススメ
  • お子さまの場合は小さい頃からの読み聞かせが重要
  • ADHD(注意欠如・多動症)の特性は「集中しづらい」「落ち着きが無い」

読書を通して身に付けることができる読解力は、仕事や勉強をする際にとても重要な能力です。ADHDのお子さまで読解力が身に付かずお悩みの場合は、ぜひプロ家庭教師メガジュンまでご相談ください。

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