発達障害の勉強方法は?勉強嫌いな子、苦手な子への教え方を解説
- 発達障害の特性に合った勉強方法を知りたい
- 発達障害のお子さまへの勉強の教え方に悩んでいる
- 発達障害のお子さまの勉強嫌いを克服したい
発達障害のお子さまの勉強について、このようなお悩みをお持ちの保護者さまはいらっしゃいませんか?
発達障害のお子さまは必ずしも勉強が苦手というわけではありませんが、その特性から集中しづらかったり、細かいことが気になり過ぎたりして、「なかなか勉強が進まない」「成績が伸び悩んでいる」などの困りごとを抱えている方が多くいらっしゃいます。
私は、発達障害専門のプロ家庭教師や塾経営者として長年にわたり活動し、これまで1500人以上のお子さまの学習指導に携わってきました。
最初のうちは勉強に取り組むのが難しかったお子さまも、特性を踏まえた適切なサポートを行うことで、前向きかつ自主的に勉強に向かうことができるようになります。
発達障害の特性は生まれつきのものであり、根本的に解消されることはありません。
ですが、発達障害の特性に伴う困りごとについては、療育や環境の調整によって最小限に抑えることができます。
勉強についても同様に、発達障害の特性によって一定のハンデキャップを抱えることはありますが、周りの大人がお子さまの特性を正しく理解し、お子さまに合った学習指導を行うことで、勉強の遅れや苦手さを最小限にとどめることができます。
- 学校の勉強に付いていけるようになりたい
- 発達障害の特性ごとの指導方法を詳しく知りたい
- 受験の志望校選びについて、専門的なアドバイスがほしい
この記事では、発達障害のお子さまの勉強のことでお悩みの保護者さまに向けて、勉強方法や教え方のポイント、受験のコツなどを詳しくご紹介していきますので、ぜひ最後までお読みいただけますと幸いです。
発達障害とは?3つの分類と特徴を解説
この章では、発達障害の定義と「ADHD」「ASD」「LD」の3つの分類、そしてそれぞれの特徴についてご紹介していきます。
発達障害の概要を既にご存じの方は、「2.発達障害の勉強方法・教え方」までお進みください。
発達障害とは、生まれつき脳の機能に凸凹があり、日常生活や社会的な活動において困難を持つ状態のことを指します。
脳の機能に全く凸凹が無い人はおらず、誰にでも得意や不得意はありますが、発達障害の人はその凸凹が激しいため、生活面・社会面で支障が生じるものと考えると良いでしょう。
一口に発達障害といっても、人によって特性の現れ方は千差万別です。
落ち着きが無い、集中できない、コミュニケーションが苦手など、困りごとも人によって全く異なるため、それぞれの特性に応じたサポートが不可欠となります。
一昔前には、発達障害は「親の愛情不足」「育て方の問題」と言われていました。
ですが、現代では様々な研究により、発達障害は育て方ではなく生まれつきの性質であり、本人の努力だけで解消できるものではないことがわかっています。
また、発達障害だからといって必ずしも勉強についていけないわけではありません。
発達障害の中には非常に高い知能を持つ人(=2E型ギフテッド(※))もいるほか、著名人の中でも発達障害であると言われている人がいます。
- アインシュタイン(物理学者)
- エジソン(発明家)
- レオナルド・ダ・ヴィンチ(芸術家・発明家)
- ビル・ゲイツ(実業家、プログラマー)
- スティーブ・ジョブズ(実業家・工業デザイナー)
- 三木谷 浩史(実業家)
- イチロー(野球選手)
発達障害のお子さまが勉強が苦手になってしまうのは、その特性によって「勉強に集中できない」「間違えることを極端に恐れる」などの困りごとが生じ、勉強に前向きに取り組めないことが大きな要因となっています。
こうしたお子さまの特性をきちんと見極め、どうすれば勉強に対して前向きに取り組めるかを検討しながらサポートしていくことが非常に重要です。
「勉強が楽しい/面白い」と感じることができれば、発達障害のお子さまは、定型発達のお子さま以上に可能性を発揮することもあります。
発達障害だからと諦めることなく、お子さまの可能性を最大限引き出すよう支援していくことは、発達障害のお子さまをサポートする際の最も大切なポイントと言えます。
発達障害とは①ADHD(注意欠如・多動症)
ADHD(注意欠如・多動症)とは発達障害の分類の一つで、「不注意(集中のしづらさ)」と「多動性・衝動性」を特性として持っています。
不注意の特性は、「一つのことに集中しづらい」「ぼーっとしてしまう」といったもので、授業中の先生の話に集中できなかったり、宿題をしていても注意が他所に逸れてしまうといった困りごとが現れます。
多動性・衝動性とは、「じっとしていられない」「衝動的な行動が抑えられない」といったもので、授業中の立ち歩きや順番抜かしなどの行動が見られます。
そのほか、整理整頓が苦手で忘れ物が多いなどの傾向もあり、学校の成績が下がってしまう場合があります。
特性ゆえに先生から注意されたり叱られたりすることも多く、「何をやってもダメだ」と自信を無くしてしまうお子さまもいらっしゃいます。
一方で、色々なことに興味を持てる好奇心の旺盛さや、「やりたい!」と思ったことにどんどんチャレンジできるという行動力もあるため、勉強のサポートの際にはこうした特性を上手く活用していくことがポイントになります。
発達障害とは②ASD(自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群)
ASD(自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群)の特性は、「コミュニケーションの困難」と「限定された興味やこだわり」のほか、音・光・におい・味などに敏感な「感覚過敏」を併せ持っていることがあります。
コミュニケーションの困難については、相手の表情から気持ちを読み取ったり、言外に含まれたニュアンスを理解したりするのが苦手で、「意思疎通が取りづらい」「言葉を額面通りに受け取ってしまう」などの困りごとが生じます。
限定された興味やこだわりについては、一つの物事に没頭することで周りの様子が見えなくなってしまったり、こだわりが強く臨機応変に対応することが苦手になったりします。
勉強においても細かい部分にこだわってしまうため、「先生の×の付け方が気に障る」「考えているときに口出しされると拗ねてしまう」など、スムーズに学習が進まないケースが多くなっています。
周りからすると「そんな些細なことを気にしなくても…」と思ってしまうかもしれませんが、本人にとっては大きな問題ですので、こだわりについてはできる限り尊重するようにしましょう。
(ASDのコミュニケーション不全やこだわりの強さについては、想像力の不足が根本にあると考えられます。詳しくはこちらの記事〔アスペルガー(ASD)の子どもへの対応・育て方とは?接し方や関わり方を紹介〕でご紹介していますので、関心のある方はご一読ください)
こだわりさえ守ることができれば、ASDのお子さまは問題無く勉強に向かえることがほとんどです。
また、ASDのお子さまは、コツコツと継続することや日々のルーティンを繰り返すことが非常に得意ですので、ひとたび学習習慣が確立できてしまえば、勉強面における困りごとは格段に小さくなります。
発達障害とは③LD(学習障害、SLD)
LD(学習障害、SLD)とは、知的な遅れや視覚・聴覚に問題が無いにも関わらず、読み・書き・計算のいずれか1つ以上の技能に困難がある発達障害のことです。
LDは、読み・書き・計算のどれに困難があるかによって、さらに3つに分類することができます。
- 読みの困難…読字障害(ディスレクシア)
- 書きの困難…書字障害(ディスグラフィア)
- 計算の困難…算数障害(ディスカリキュア)
「読む」ことは全ての勉強の基本となるスキルですので、読字障害のお子さまは全体的に勉強が苦手で成績が下がる傾向にあります。
ただし、知能面での問題は無いため、問題文を音声で読み上げると理解できるなどの特徴があります。
また、教科書やプリントの視認性を上げる(文字を大きくする/行間を広くする/字と背景色のコントラストを下げる)ことで理解のスピードが上がる場合も、知能の問題ではなく読字障害の可能性が考えられます。
書くことの困難(書字障害)は読字障害と併発することも多くなっています。
手先の不器用さが影響しているケース(発達性協調運動障害)のほか、文字と音を結びつける脳の働き(音韻処理)の不全が関係している場合もあります。
字を書くとマス目に収まらなかったり、筆圧が強すぎたり弱すぎたり、鏡文字になったりするお子さまの場合は、書字障害の可能性を検討します。
算数障害については、ただ計算が遅いというよりは、数という概念そのものが捉えづらいという特性になります。
「3個」と「3番目」の違いが分からず、「3か月は3倍すると9か月だけれど、3月は3倍できない」といった内容も理解するのに時間がかかります。
学年が上がっても指を使って計算する(全数え法)などの特徴が見られるほか、「九九が覚えられない」「時計が読めない」といった特徴が見られる場合があります。
LD(学習障害)は、勉強面でのハンデキャップだけでなく、日常生活でも支障が生じる可能性があるほか、本人の自己肯定感が下がりやすい傾向もあります。
ADHDやASDと比べると認知度も低く、周囲の理解が得づらい場合もありますので、より丁寧に見守り、サポートしていくことが必要です。
発達障害の勉強方法・教え方のポイント6選
発達障害のお子さまが持っている特性は一人一人異なるため、「○○すれば成績アップ!」というような万能な対策はありません。
ですが、どんなお子さまであっても“その子に合わせた丁寧な指導”を行うことが何よりも大切であり、この章ではそれを実践するためのポイントを紹介していきます。
この記事でご紹介するのは概論的な内容となりますので、ADHD・ASD・LDそれぞれについてより深く掘り下げたい方は、以下の記事などを参考にしていただければと思います。
発達障害の勉強方法・教え方のポイント6選①集中できる環境づくり
ADHDでもASDでも、集中できる環境づくりは大切です。
家で勉強する際には、テレビを消したり、他の兄弟の話し声をできる限り小さくしてもらったりして、できるだけ静かな環境を整えましょう。
視覚的にも、色々なものが目に入ると気が散ってしまうお子さまは多くいらっしゃいます。
机の上になるべく物を置かないようにしたり、本棚にも目隠しのカーテンを付けたりして、勉強しているときに目に入る情報を極力少なくする工夫が必要です。
私が受け持ったお子さまの中には、机の向きを変えて壁しか目に入らない状態にすることで集中できるようになった方もいらっしゃいました。学校や塾の自習室もパーテーションで仕切られており、集中しやすい環境が整えられていますので、上手く活用すると良いでしょう。
発達障害の勉強方法・教え方のポイント6選②やることリストで優先順位を可視化
発達障害のお子さまは、優先順位を決めて段取りよく物事を進めることが苦手です。
ADHDの方はあちらこちらに注意が行ってしまい、目についたものから手当たり次第に取り組んでしまうほか、ASDの方の場合は自分のこだわりのままに取り組んでしまい、一つの課題に時間をかけすぎてしまったり、「締め切りの早いものから手を付ける」ということができなかったりします。
いずれの場合も、やることリストを作って課題の全体像を可視化し、優先順位を整理することが効果的です。
お子さまの場合、慣れないうちはまず大人がやることリストを作成してあげましょう。やることリストがどんなものか理解できたら、次は大人とお子さまで一緒にリストを作成していきます。
さらに慣れると、お子さま一人でもやることリストを作成できるようになります。
課題や優先順位の整理は、大人になって働き出してからも非常に重要なスキルです。子どもの頃から慣れておくことで将来必ず役に立ちますので、ぜひ身につけていただきたいと思います。
発達障害の勉強方法・教え方のポイント6選③優位感覚を知る
人にはそれぞれ「優位感覚」があります。
例えば、目で見た情報を処理するのが得意な「視覚優位」の人や、耳で聞いた情報を処理するのが得意な「聴覚優位」の人、言葉での説明を理解するのが得意な「言語感覚優位」の人などが存在します。
発達障害のお子さまの場合は視覚優位であることが多いため、口頭で説明するだけでなく、イラストや図を使って説明すると理解が進みやすいと言われています。
また、発達障害のお子さまであっても、「聴覚優位」「言語感覚優位」の方はいらっしゃいますので、そのお子さまが耳で聞いた方がわかりやすいのか、言葉で説明した方がわかりやすいのかを見極め、優位感覚を活かしながら勉強に取り組むことが重要です。
発達障害の勉強方法・教え方のポイント6選④興味のあるものを入り口にする
「勉強が楽しい」「勉強ができそう」と感じることは、発達障害のお子さまだけでなく、定型発達のお子さまや大人にとっても大切なポイントです。
勉強が苦痛に感じてしまうのは、「頑張っているのに点数が上がらない」「勉強しなければならない理由が分からない」といったことが原因であり、これらを解決していく必要があります。
頑張っているのに点数が上がらない(だから勉強はつまらない)と感じているお子さまに対しては、小さな目標を立て、スモール・ステップを一つずつクリアしていくことを経験してもらいます。
「できた!」という達成感を感じることができれば、次もできるはずという自信につながり、勉強する楽しさを知ることにもつながっていきます。
勉強しなければならない理由が分からずモチベーションが上がらないお子さまに対しては、「志望校に合格した後にやりたいこと」を考えてもらったり、将来の夢との関連性を伝えたりします。
例えば、ゲームが好きで、将来ゲームの制作に携わりたいと考えているお子さまに対しては、「キャラクターやフィールドをつくるには物理演算の知識が必要で、数学や物理が関係する」「プログラミングには英語力や論理的思考力が必須」「ストーリーを考えるなら、国語力もあった方が良い」など、将来就きたい職業と関連させてモチベーションを上げると良いでしょう。
また、好きなものを入り口にする方法も効果的です。
好きなアニメの英語版を視聴して英語の勉強をしてみたり、ゲームのダメージ計算で算数の勉強をしてみたりと、勉強のきっかけとなる材料は日常生活の中にたくさんありますので、上手く見つけて活用していきましょう。
発達障害の勉強方法・教え方のポイント6選⑤褒める
発達障害のお子さまは、周りと同じように行動するのが苦手で、勉強面でも苦手を感じることが多いことから、自信を失ってしまいがちな傾向にあります。
本人は努力しているにもかかわらず「何でできないの!」と否定的な言葉を掛けられることもあり、自尊感情が大きく傷ついてしまうこともあります。
こうした心の負担が大きくなると、登校渋りや不登校になったり、うつ症状や適応障害といった二次障害を抱えたりするケースもあります。
食欲不振や不眠の症状は無いか、表情はどうか、いつもと違う様子は無いかなど、丁寧に見守るほか、心配なことがある場合はスクールカウンセラーや心療内科などに早めに相談するようにしましょう。
発達障害のお子さまに接する際には、できないことを指摘するのではなく、できたことや得意なことを褒めるように心掛けましょう。
もちろん、自分や他人を傷つける行動については厳しく指導することが必要ですが、基本的には「○○ができたんだね。次は○○するともっと良いかも!」など、先に褒め、改善点は後から付け足すような伝え方を意識すると良いでしょう。
発達障害の勉強方法・教え方のポイント6選⑥学校や支援機関との連携
発達障害のお子さまの保護者さまは、様々な面で心配や苦労を感じていらっしゃると思います。
お子さまのためを思って懸命にサポートされる姿に、私どもも日々感銘を受けています。
しかし、お子さまのためを思うあまりに保護者さまが疲弊してしまったり、ご家庭だけで何とかしようと抱え込んでしまったりすることは、必ずしもお子さまのためにはなりません。
力を抜けるときには抜き、「何とかなる」と気楽に構える姿勢も時には必要です。
また、発達障害のお子さまのサポートには、専門的な知識と指導経験が欠かせません。
保護者さまは教育のプロではなく、発達障害の専門家でもありませんので、ご家庭だけで問題を解決するのは非常に困難です。
学校の先生やスクールカウンセラー、療育の先生やお医者さまなど、様々な分野の専門家の力を借りながら、一緒にサポートしていくことが大切です。
お子さまのサポートと一口に言っても、「教育的な視点」「医療的な視点」「福祉的な視点」など、立場によって考え方は様々です。
色々な立場の人の意見を踏まえながら、最終的にはお子さまの意思を尊重し、お子さまの将来にとってより良い選択ができるよう支援していくことが大切です。
発達障害の子どもの勉強方法や教え方のまとめ
この記事では、発達障害のお子さまの勉強方法や教え方のコツについて詳しく説明してきました。
改めてポイントをまとめると、以下のとおりです。
- 発達障害は「ADHD(注意欠如・多動症)」「ASD(自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群)」「LD(学習障害、SLD)」の3つに分類できる
- 発達障害のお子さまは必ずしも勉強が苦手というわけではないが、発達障害の特性によって勉強に取り組みづらい場合がある
- ADHDの特性は「不注意」と「多動性・衝動性」であり、物事に集中しづらかったり、落ち着きが無かったりする
- ASDの特性は「コミュニケーションの困難」と「限定された興味・こだわり」であり、人間関係や集団生活に馴染みづらいなどの困りごとがある
- LDは知能や視聴覚に問題が無いものの、読み・書き・計算など特定の技能に困難がある状態を指す
- 発達障害のお子さまは、集中できる環境を整えることで勉強に向かいやすくなる
- 子どもの頃からやることリストを作成することを習慣づけると、大人になってからも役に立つ
- 発達障害のお子さまに対しては、できないことよりできることを褒め、自己肯定感を育てていくことが大切
発達障害のお子さまは、その特性から勉強に集中できなかったり、理解が進みづらかったりする場合があります。
ですが、特性を正しく理解し適切なサポートを行うことで、苦手を最小限にとどめ、得意な部分を伸ばしていくことができます。
私たちプロ家庭教師メガジュンでは、長年にわたり発達障害のお子さまの学習指導を行ってきました。これまで1500人以上のお子さまを支援し、90%以上のお子さまが第一志望の学校に合格しています。
発達障害だからといって、勉強や受験を諦める必要はありません。
どんなお子さまであっても、必ず昨日より今日、今日より明日へと成長していきます。
お子さまを信じ、丁寧に寄り添っていくことが、発達障害のお子さまを支援する際に最も重要なポイントです。
発達障害のお子さまの勉強に関してお悩みの方は、ぜひプロ家庭教師メガジュンまでご相談ください。
日頃の学習習慣の身に付け方から受験指導まで、幅広くサポートいたします。
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最後までお読みいただきありがとうございました。